太陽系の地球軌道周辺は、小惑星などの天体で混雑している。NASAが公開した画像からそれがよくわかる。太陽を中心に、内側から水星・金星・火星の軌道がグレーで、地球の軌道が目立つグリーンで示された上に代表的な地球近傍小惑星(NEA)の軌道が青、地球に衝突する恐れのある小惑星(PHA)の軌道がオレンジで描かれている。

 PHA(Potentially Hazardous Asteroid)はNEA(Near Earth Asteroid)の一部で、地球から約740万キロ以内まで接近する軌道を持ち、大気圏を抜けて地表に衝突すれば地域的に大きな被害をもたらす可能性がある小惑星を意味する。NASAの広域赤外線探査衛星WISEミッションの小惑星探査パートであるNEOWISEプロジェクトでは、PHA107個のサンプル調査から、PHAは全体で4700個(誤差プラスマイナス1500個)と算出している。

 背景のドットは、WISEが2011年2月の運用停止前に行った2回の掃天観測データに基づいてサイズ100メートル以上のNEA(青)とPHA(オレンジ)の密度を示している。下の画像はこれを横から眺めたもので、地球の軌道だけが示されているが、混雑ぶりがさらに際立って見える。




 NEOWISEでは、これまでで最も詳細なPHAの全天カタログを提供しているが、その個数、サイズ、軌道のタイプ、潜在的な危険度に関する精度をさらに高めようとしている。NEOWISEチームの今年5月の発表によると、これまで実際に見つかったPHAは1300個あまりで、まだ全体の20~30%程度という。

 地球の周囲を回る天体は月だけではなく、いまだに観測されていない無数の小型の天体が地球周回軌道に存在する可能性が出てきた。さらにこれらの微小な衛星は、時に地球の大気圏に突入し、明るく輝く火球を発生させることがあるという。1月20日に関東エリアで見られた隕石らしきものや、ロシアのチェリャビンスク州に落下した隕石も、この地球周回軌道の小惑星が大気圏に突入をした可能性が高い。

 この発見は、地球と月の間を通る既知の小惑星10万個を対象にしたコンピューター・シミュレーションを踏まえたもので、このモデルによって地球の公転軌道に近い軌道を持つ小惑星は地球の重力に捉えられ、小型の衛星となる可能性が高いことが明らかになった。

 私共では、ハワイ大学の天文学者ロバート・ジェディキ氏に話しを聞くことができた。博士の説によるとこれらの小惑星の動きを正確に追跡して、太陽や、地球以外の惑星、さらには太陽系内の大型の小惑星の重力が与える影響についても考慮している。その結果、調査対象となった小惑星のうち1万8000個が地球の重力に捉えられ、短期間ながら地球を周回する軌道に入ることが判った。

 ロバート・ジェディキ博士の試算によれば、任意の時点において、洗濯機サイズの小型の衛星が1個か2個、さらに約1000個のソフトボール大の天体が地球を周回していることになるという。地球の重力に捉えられた天体の周回軌道は、複雑に入り組んだものとなる。実際、今回のシミュレーションによると、大多数の小型の衛星が地球を回る期間は1年に満たない。その後はまた太陽を周回する軌道に戻るか、地球に激突するか、いずれかの道をたどると博士は述べている。

 こうした微小衛星は、1000個に1個の割合で月の重力の干渉を受けて軌道が変わり、地球に激突する。夜空で目にする流星の一部は、実は地球に落ちてくる小さな衛星だ。ただし、今回の新たなシミュレーションの結果をもってしても、実際にさらに多くの微小衛星を確認するのは難しいだろうと研究チームでは指摘している。これらの天体が比較的小さく、暗いことがその理由だ。

 加えて、地球を回る軌道に捉えられる際に働く重力の作用から、こうした天体は高速で地球を周回するケースが多く、そのため確認はさらに難しくなる。天文観測のデータを用いて、こうした天体を定期的に特定する方法を現在検討中だとロバート・ジェディキ博士は述べている。

 例えば、最も大きいタイプであれば、直径50センチの天体望遠鏡を持つトップクラスのアマチュア天文家でも観測できるはずだと博士は言う。しかし、新たな微小衛星を見つけるためには、全天のかなりの部分を対象とした小惑星観測を一夜のうちに行い、非常に暗い天体を特定する必要がある。

 実際に地球の周辺には、無数の小惑星が存在をしていることは判っていて、直径が数メートルから大きいものになれば100m以上のものまである。今回ロシアに落ちたような小惑星がいつまた地球上に落ちてきても不思議ではない。直径17mの小惑星でも、地球へ突入をして時の衝撃波は、広島の原爆の30倍に匹敵をしたということは、もし今後これ以上の小惑星が地球に衝突をすれば、未曾有の被害がでることも必至となる。


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最終更新:2015年01月01日 21:49