セカンダリア各地をふらふらしては、都市により商売をして暮らす行商人。
彼が各地で有名になるわけは、扱う商品の珍しさと、そのナルシストな性格にある。
ただ、彼は珍しい【男性のビューエラ】であり、名前は奇妙だが、その美貌は確かなものだ。
黙っていれば。
ある程度の荒事の心得はあるようだが、調律者ではないようだ。
彼の商売は、非常に独特だ。
まず、値段が時価だ。というか彼の気分で決められる。商品も、勿論その場の気分だ。
そして一見、露店に並べられる物はガラクタだらけだ。普通の人は、まず近寄らないだろう。
だが、彼はそれでいい。
本当に見る目のあるもの、力のある者。そういう相手に商売をしたいのだ。
金銭感覚、バランス感覚に天性の勘を持っている。
最近のスタイルは、知ったかぶりの奴に高値で本当のガラクタをふっかけることだ。
彼は旧世界、失われた古代文明に想いを馳せる、いわゆる『アーティファクトマニア』とでも言おうか。
意外ではあるが、貴重な品の為ならば、命の危険も考えないところがある。
その志向は、商売にも現れている。
実は彼の扱う商品の大半が、ピンからキリまではあるが【アーティファクト】だ。
そして彼は、使い方が分かる物しか人には売らない。
交渉や何かで彼を唸らせる事が出来れば、とんでもない品を破格で入手できるかもしれない。
多少の戦闘技術や自分の力を過信して旅に出た者は、数分後には鳥のエサになるセカンダリア。
調律者でもない彼が、どうやって各地を周っているのか?
簡単だが、各地に彼を慕う女性が居て、その協力を受けているのだ。
その中には、調律者の女性も居るので、もっぱら護衛を請け負ってもらっているそうだ。
ただ、どうしても避けきれない危険には、所有する【アーティファクト】の力を使う。
本人は、使うのがイヤなようだが、命には代えられないから、という事だ。