「心の読みとり(mindreading)」とも呼ばれる。
他者や自己の行動に心的状況を帰属させることを「心理化(mentalizing)」と言い、
他者の知識や意図、情動、欲求などを推測できる能力である。
「心の理論」は心理化、心の読みとりの基盤にあると過程されている心理学的な概念である。
もともとはチンパンジーの研究(「チンパンジーは心の理論を持つか?」)によって始まった。
1985年 Baron-Cohenらによって、自閉症の「心の理論」障害仮説が発表された。
▼「心の理論」をテストする課題
・誤信念課題 / 誤った信念課題 / 誤信課題
最も良く知られているのが、Baron-Cohenらの「サリーとアン課題」である。
第一次信念課題:サリーとアン課題
第二次信念課題:アイスクリーム屋の課題
第三次信念課題
サリーとアン課題
サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいる。サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行く。サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移す。サリーが部屋に戻ってくる。
スマーティー課題(Pernerら、1989)
前もって被験者から見えない所で、お菓子の箱の中に鉛筆を入れておく。お菓子の箱を被験者に見せ、何が入っているか質問する。お菓子の箱を開けてみると、中には鉛筆が入っている。お菓子の箱を閉じる。被験者に「この箱をAさん(この場にいない人)に見せたら、何が入っていると言うと思うか?」と質問する。
ストレンジストーリー課題「罪のない嘘」(Happé、1994)
ことばの表面的な意味と異なる話し手の意図の理解
妨害と欺き課題(Sodian & Frith、1992)
「鍵のかかる箱の中に、お菓子が入っています。 今から友達と泥棒が来ますが、友達の事は助けてあげて、泥棒は助けないようにしましょう。」 と説明した上で、回答者に以下の質問をします。
(妨害課題)
「友達がやってきました。あなたは箱に鍵をかけますか、それとも開けておきますか?」
「泥棒がやってきました。あなたは箱に鍵をかけますか、それとも開けておきますか?」
(欺き課題)
「今度は、箱に鍵が掛かっています。 友達がやってきて、『この箱は開けられる?』と尋ねました。あなたは何と答えますか?」 「泥棒がやってきて、『この箱は開けられる?』と尋ねました。あなたは何と答えますか?」
ジョンとメアリー課題(Perner & Wimmer、1985)
ふたりの前にアイスクリーム屋がいました。ジョンはアイスクリームを欲しいと思いましたが、お金が無かったので後で買いに来ると言って家に戻りました。その場に残っていたメアリーは「それまで駅前で売ることにしよう」というアイスクリーム屋のつぶやきを聞いていました。アイスクリーム屋は移動中に、ジョンの家の前を通りました。ジョンが「どこに行くの?」と聞き、アイスクリーム屋は「駅前に行くところ」と言いました。メアリーはアイスクリーム屋の行き先を教えてあげようと、ジョンの家に行きました。ジョンのお母さんに「アイスクリームを買いに行ったよ」と言われ、メアリーはどこに行ったでしょうか
▼心の理論通過年齢
典型発達児の場合
・第一次信念課題:4~5歳で通過(4歳で50%通過)
・第二次信念課題:6~7歳で通過
▼ASD児と心の理論
ASD児は心の理論課題につまづくことが知られている。
が、言語精神年齢9歳2カ月で50%が一次信念課題を通過できる。
ASD児の場合、直感的な心理化はできないが、言語による命題理解によって心の理論を形成する。
▼「心の理論」のトレーニング
Howlin(1999)のマインドリーディングトレーニング課題
感情理解課題
レベル1:写真からの表情の読みとり
レベル2:線が空の表所の読みとり
レベル3:状況の中での表情の理解
レベル4:欲求と感情との関係の理解
レベル5:信念と感情との関係の理解
視点の理解課題
レベル1:自己と他者の視点の違いの簡単な理解
レベル2:視点の違いの複雑な理解
レベル3:見ることと知ることの関係の理解
レベル4:他者の知識に基づく行動の予測
レベル5:事実と異なる信念の理解
▼「心の理論」サポートツール
○ソーシャル・ストーリー(ソーシャル・ナラティブ)
社会的な場面を理解するための手掛かり、適切な社会的行動についての情報を文章で提示する
○コミック会話
コミュニケーション上で問題となった場面で、他者や自己の言動と心的状態を得や分で表現し
行動とその背後にある意図・感情との関係を子どもとともに考える