本編B-5

生田が話すにはどうやらこんなことの様だ。
葉廊高校には昔、へっぽこ部と言うものが存在していたらしい。
ただそれは、何らかの事情で廃部になってしまった。
けれどへっぽこ部では人生を変えるような素晴らしい体験ができる。
そんな部活動なんだから、ウチらが復活させないわけにはいかない。
よくわからない論理を展開させながら生田が力説する。
「それと、ただのへっぽこ部じゃないっちゃけんね。『ハロプロヘッポコ部』っちゃけん!」
生田の勢いに押されて押し黙っていた一同であったが、たまりかねた宮崎が口を開く。
「あのー生田さん、色々伺いたいことはあるんですけど、とりあえず『ハロプロヘッポコ部』と言う名前なんですが…」
「なにっちゃ?」
「ヘッポコについては確かに私たちならそう言われても仕方ないので良しとしましょう。
ハロについても葉廊高校を略してハロ高なんて呼ばれますからわかります。でも『プロ』ってなんですか?」
一同の目が生田に注がれる。
「…プロフェッショナルっちゃ。」
「いやそれ絶対今考えたっすよね!適当でしょ適当!」
ここぞとばかりに工藤の容赦無いツッコミ。
「しょうがないっちゃやろ!ウチだって昨日聞いたばかりでちゃんとしたことはわからんっちゃ!」
「で、その話、誰に聞いたの?」
「え?りなぷーいたと!?」
「ばくわら」
「ごめんごめん。そう、それなんっちゃけど…。」



「最近どう?ダンス部は。清水センセ。」
「もう、やめてくださいよ。道重さんに先生なんて言われると何かくすぐったいです。」
「あはは、だって先生なんだもん。いい加減慣れないと。でもそうね、やっぱり『キャプテン』の方があなたらしいわ。」
「そう呼んでいただいたほうがまだ気が楽です。そうですねダンス部…。
やっぱりあの頃のような、なんて言うんでしょう輝き…みたいなものを出すのはなかなか難しいですよね…。
最近は叱ってばっかりで、生徒達には嫌われるし、自分で自分のことも嫌いになっちゃいそうです。」
「何言ってんの。大丈夫よ。ちゃんとあなたの熱意は伝わってるから。」
「それならいいんですけどね…。でも…やっぱりもう一つ、足りないんですよね。」
「何が?」
「ヘッポコ部ですよ。ハロプロヘッポコ部。」
「それは関係ないんじゃない?」
「ありますよ!あの時私たちが輝けたのは、間違いなくハロプロヘッポコ部のおかげですから!」
「そう言ってもらえると嬉しいけど、私たちは何もしてないわ。あれはあなた達の努力の成果よ。」
「何言ってるんですか道重さん!ハロプロヘッポコ部がいてくれたから私たちは気付かされた。
ハロプロヘッポコ部がいてくれたから全国優勝なんて成果が出せた。誰が見たって明らかです。
何より、私が一番それを感じたんだから間違いありません!」
「ありがとうキャプテン。確かに…私たちもね、あなた達と張り合うのとても楽しかったわ。
私自身がハロプロヘッポコ部のお陰で人生を変えてもらった。そんな気もしてるもの。
今の生徒達にもあんな気持ち、味あわせてあげたいけど…ね。」
「廃部になった以上、今の学校事情じゃ立ち上げ直すのはなかなか難しいでしょうね…。」
「そういうことなの。」


「それって盗み聞きじゃないっすか!」
ツッコミ担当なのか工藤。
「失礼っちゃね。放課後、音楽室の前通りかかったら聞こえてきただけっちゃ!」
二人が喧々諤々と言い争ってる中、冷静に飯窪が話し始める。
「ダンス部が昔すごく強かったっていうのは知ってましたけど、その、ハロプロヘッポコ部っていうのは初めて聞きましたね。
ダンス部の優勝に関わってたり、何よりそんなに素敵な部活だったら道重先生もお話してくださっても良さそうなのに。」
「そうやろ、ウチもそれは思ったっちゃ。だからな、詳しい話を本人に聞きに行こうと思う。」
「道重先生にですか?」
「そうや!放課後みんなでいこう!ほらあーりー、起きな!」
いつの間にか寝ていた植村を起こしながら皆に同意を求める。
しかし返事を聞く前に始業ベルがなる。一様に納得したともしないともとれない曖昧な表情を抱えながら各々が教室へと帰っていった。




本編B-4 本編B-6

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年07月12日 01:58