…『序論』…



ジオン公国は、月の裏側のL2に位置するスペースコロニー群、サイド3が地球連邦から独立したものである。
サイド3は、L2を中心に太陽公転面に対して上下に長くのびる「ハロ軌道」上を周回している。
サイドを構成するコロニーはおよそ40基。全て密閉型と呼ばれるミラーを廃した特別な造りになっており
コロニー周辺や同じくハロ軌道上に設置されたSPS(太陽発電衛星)からエネルギーを供給されている。
ジオン公国の成立はU.C.0069年、前進は0058年に樹立されたサイド3の共和政権、通称「ジオン共和国」である。



…『ジオン公国設立』…



サイド3の動きに対して、連邦政府は経済制裁や連邦軍による示威行動で牽制しようとした。
その対抗手段として、共和国は樹立時に結成された国防隊を国軍に昇格させ、軍事対立も辞さない姿勢を見せたが
その戦力は微々たるもので、実際の武力闘争はありえなかった。
月の企業体やコロニーの商工業組織からの協力を得ることで、経済的に連邦政府を牽制し
各コロニーからも政治的な不干渉を取り付けた。
事実、初代首相となったジオン・ズム・ダイクンには、連邦と抗争するつもりはなく
あくまでも外交によって共和国を承認させ最終的には宇宙移民者全体の自治権を確立しようとしていたのである。

しかし、ジオン・ズム・ダイクンは志半ばにして病に倒れてしまった。
その後を受けて次期首相に就任したデギン・ゾド・ザビは、それまでの政策を転換し
共和国を公国制に移行させ、連邦との徹底抗戦を掲げ、ジオン公国の樹立を宣言した。



…『ザビ家の独裁』…



デギン・ソド・ザビは、ジオンのコントリズムに賛同し、国防隊の設立に尽力した共和国の功労者の一人であった。
ギレンもまた、ジオンの革命を支援し理想を人々に浸透させる役割を演じていた。
さらにザビ家は、財政的にも共和国の設立と維持にとって必要な人材であった。
ただし、彼らのような軍閥はあくまでジオンの理想実現のための必要悪として処遇されていた。
しかし、自ら公王となり、共和国の体制を転換したデギンは、ザビ家による独裁体制を敷き、ジオン派を追放した。
連邦政府は、ジオンの死に乗じてサイド3に揺さぶりをかけ、各サイドからの孤立化を謀った。
連邦は、国力に劣る公国が本気で武力闘争を考えているとは思わず、各サイドに駐留軍を派遣し、事態の鎮静化を待った。
しかし、公国は戦争のための準備を着々と進行させており、そのための秘密兵器の開発まで行っていたのである。



…『ジオン公国軍』…



ジオン公国軍は、宇宙世紀0058年に発足した国防隊を基礎に持ち、0062年に国軍に昇格した。
一年戦争開戦まで、10年近く連邦軍との対決のため鍛え抜かれてきた軍隊である。


【公国軍組織】



ジオン公国軍組織図 U.C.0079


ジオン公国軍はギレン・ザビ大将の下、ドズル・ザビ中将が実戦指揮を執る。
本国防衛軍以外の全ての戦力は戦略宇宙軍としてまとめられている。
このうち、重要拠点である月面を守る月面駐留軍と月方面艦隊(戦略防衛軍)を除いた戦力が、
攻撃のために使うことの出来る戦力である。

戦略宇宙軍は地球降下作戦発動後、大きく地球制圧軍と宇宙攻撃軍に組織分けされた。
もとは一つの軍であるため、地上部隊と宇宙部隊との間で組織間の壁というものはない。
装備や人材の移動も頻繁に行われる。
地球制圧軍の中には、連邦軍カリフォルニア・ベースの装備(潜水艦)を接収して組織された
潜水艦部隊「戦略海洋諜報部隊」といった変わったものもある。


また、キシリア・ザビ少将の直接指揮下で行動する「機動攻撃軍」がある。
これは、一年戦争で宇宙をほぼ制圧したジオン軍にあって、比較的余裕のある本国防衛軍
月の戦略防衛軍の一部を、キシリアがデギン公王の娘という立場を利用して可能な範囲で動かしているもので
正式な軍制上での区分ではない。
このような部隊には他に戦略海洋諜報部隊やフラナガン機関などがある。

フラナガン機関は、キシリア・ザビ少将によってサイド6に設立されたニュータイプ研究所である。
ニュータイプの研究は、キシリア・ザビが戦争初期におけるモビルスーツ部隊の高すぎる戦果に
注目したことから始まった。
初期のパイロットたちはジオン公国全体から選抜された優秀なものたちばかりであったが
一部のパイロットは高速で飛来するメガ粒子砲を回避するという、信じられない行動を示していたのである。
しかし、この報告が彼女のところに届けられる頃には、二度に渡るコロニー落とし作戦によって
ニュータイプの資質をもつパイロット達の多くが失われていたのである。


【戦力/装備】


開戦前、ジオン軍と連邦宇宙軍との間には、約5倍近い戦力差があった(連邦軍の地上戦力を含めれば約10倍)。
この戦力バランスを跳ね返して緒戦を優勢に進めたのは、ミノフスキー粒子による電波遮断状況に置ける
新戦術を確立していたからである。その中心となるのがモビルスーツである。
連邦軍に大打撃を与えた第一次ブリティッシュ作戦・コロニー落としも、工作機械としてのザクがなければ
実行不可能であったし、ルウム戦役では連邦軍宇宙艦艇を次々と撃破し、その力を見せつけた。
ジオン軍は、他にもモビルアーマー、コロニー爆弾、ソーラ・レイ・システム等
戦力バランスを逆転させるための奇抜な発想にもとづく兵器を投入した


【宇宙艦艇】


ジオン軍の主要艦艇は以下の通りである。
グワジン級戦艦、ドロス級超大型空母、チベ級重巡洋艦、ザンジバル級機動巡洋艦、ムサイ級軽巡洋艦、パプア級輸送艦。
このうち、ザンジバル級は大気圏突入能力を持ち、切り放し式のブースターを利用して大気圏離脱を行うこともできる。
またムサイ級の艦首に取り付けられたコムサイ連絡艇、艦橋下に取り付け可能なHRLS(大気圏降下用カプセル)が
大気圏突入能力を持っている。

また、ムサイ級はジオン軍の主力艦ともいうべき万能艦で、搭載したモビルスーツ小隊とともに機動大隊を形成し
単艦で作戦に従事した。
チベ級重巡洋艦はモビルスーツ搭載数でこそ勝ったものの、基本設計が古いために
ムサイほど母艦としての作戦継続能力がなく、火力を生かして専ら艦隊旗艦として用いられた。

ジオン軍の主要艦艇は、例外なくモビルスーツの搭載・補給能力を備えた母艦として建造されている。
チベ級、パプア級などモビルスーツが実用化される以前の旧式艦も改装され、母艦能力を持たされている。
モビルスーツは強力な兵器であるが、単独では十分に働くことは出来ない。
作戦目的地までの安全な輸送、作戦管制、修理、補給などの機能を持った母艦と組み合わせられたことが快進撃の秘密であった。


【モビルスーツ部隊】


モビルスーツはジオン軍の中核となる戦力である。
0073年に試作型、0075年にザクⅠ、0077年にザクⅡが完成し(量産開始は0079年)
およそ4000機をもって一年戦争に突入した。
モビルスーツ部隊は3機1個小隊を基本単位としている(隊長機+2機)。
戦前から研究が重ねられ、対艦戦術や、小隊内や小隊間での役割分担(前衛・後衛など)も明確である。
また装備や携行弾種を微妙に変えることによって、あらゆる事態に柔軟に対応した。


モビルスーツ部隊は、大きく師団所属のものと艦隊所属のものに分けられる。
1個艦隊はムサイ級軽巡洋艦4隻からなる「戦隊」4個で構成され、これに「モビルスーツ機動大隊」1個が付属する。
機動大隊は4個中隊、中隊は4個小隊で構成される。ムサイ1個戦隊(4隻)は1個モビルスーツ中隊の戦力を持つことになる。艦隊は通常、攻撃的任務に就くことが多く、機動大隊所属のモビルスーツパイロットも精鋭で固められている。
師団所属のモビルスーツは、特定の母艦とともに行動するわけではなく、任務によって、要塞に配置されたり
艦隊に配置(輸送)されたりする。1個師団は4個大隊からなり、大隊は4個中隊、中隊は4個小隊で構成される。
最終更新:2017年09月03日 07:53