古事記

国土創生

天地の始まりとともに、高天原に5柱の独神が現れた。しかし、神々はすぐに姿を消してしまった。その後、2柱の独神と男女の神々が現れた。2柱の独神は姿を消したが、男女の神々は地上に残った。

地上に残った男神イザナキと女神イザナミは、始めにオノゴロ島を生み出してその地に降り立った。その地でイザナキとイザナミは次々と島を生み出した。

国生みを終えたイザナキとイザナミは、その次に、さまざまな神々を生んだ。しかし、イザナミは火の神、ヒノカグツチを生んだときに大火傷を負い、黄泉国へと旅立ってしまった。イザナキは比婆之山にイザナミを葬った。イザナキの悲しみはやがて、ヒノカグツチへの怒りに変わった。イザナキは、十拳剣によってヒノカグツチの首を切り落とした。

イザナミのことが忘れられないイザナキは、イザナミを連れ戻すために黄泉国を訪れた。岩扉をはさんで再開を果たしたが、イザナミは黄泉の食べ物を口にしてしまったために、黄泉の神々の承諾がなければ戻れないことを伝えた。そして、しばらく待ってほしいと伝え、黄泉国の奥へと消えていった。

長いときが流れ、我慢できなくなったイザナキは黄泉国へと足を踏み入れた。そこで見たのは屍となったイザナミの姿であった。約束を破られ、醜い姿を見られたイザナミは怒り、逃げるイザナキに追っ手を差し向けた。剣と桃を武器に戦い追っ手から逃れたイザナキは、黄泉比良坂に巨大な岩を置いて黄泉国との境界をふさいだ。そして、追ってきたイザナミと決別した。千引き岩を隔てて、いつしか二人は憎しみ合った。

地上に戻ったイザナキは、黄泉国の穢れを祓うために禊を行った。川につかって身を清めた際に、脱いだ衣服、垢などから次々と神が生まれた。そして、最後に顔を洗ったときに、左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノヲの三柱の神が生まれた。

イザナキは、アマテラスには高天原を、ツクヨミには夜の国を、スサノヲには海原をそれぞれ統治するように命じた。アマテラスとツクヨミはこれに従ったが、スサノヲは母がいる根の国に行きたいと反発した。これに怒ったイザナキは、スサノヲを天から追放した。

天から追放されたスサノヲは、アマテラスに会うために高天原に向かった。ところが、スサノヲの荒々しい姿に警戒心を抱いたアマテラスは、国を奪われるのではないかと感じ、武装して待ち受けた。スサノヲは誤解を解くために誓約を交わすことを提案した。

アマテラスの勾玉と、スサノヲの剣をそれぞれ交換して神生みを行った結果、スサノヲの剣から女神が生まれた。これを見たスサノヲは、自らの身の潔白が証明されたと宣言し、やりたい放題の乱暴狼藉を働いた。ついには、機織女まで殺害してしまった。

そんなスサノヲに怒り、恐れ戦いたアマテラスは、天の石屋戸の中に閉じこもってしまった。すると、たちまち高天原や葦原中国は闇に覆われた。

困り果てた八百万の神々は、アマテラスをおびき出す手立てを考えた。まず、アメノウズメが天の石屋戸の前で神楽を舞い、神々がはやしたてた。外の様子を窺い知ろうとしたアマテラスは、アメノタヂカラヲに腕をつかまれ引きずり出されたしまった。こうして、世界は光を取り戻すことができた。

高天原を追放されたスサノヲは出雲国に降り立った。そこでスサノヲは嘆き悲しむ老人と娘に出会う。国つ神のオホヤマツミの子でアシナヅチと名乗る翁に理由を尋ねると、毎年、ヤマタノオロチに娘を奪われ、最後に残った娘のクシナダヒメも、今日、生贄にされてしまうのだと言う。

スサノヲは娘を嫁に貰い受けるとことを条件にヤマタノオロチ退治を約束。翁の同意を得ると、ただちに準備に取り掛かった。村人たちに八つの門を用意させ、それぞれの門に酒樽を置いた。そして、オロチが来るのを待った。

やってきたオロチは酒を飲み始め、やがて酔って寝てしまう。それを見たスサノヲは、剣で切り裂きオロチを退治した。退治したオロチの体の中から素晴らしい剣が現れた。スサノヲはこの剣をアマテラスに献上した。

こうして、オロチを退治したスサノヲは、クシナダヒメを妻に迎え、出雲国の須賀の地に宮殿を建てて暮らした。

天孫降臨

スサノヲの6世の孫、オオアナムヂには、八十神(多くの神々)の兄弟がいた。ある日、八十神たちは、ヤカミヒメに求婚するために、オオアナムヂに袋を担がせて、稲羽国(出雲の東にある国)へと出かけた。一行から遅れたオオアナムヂは、気多岬の海岸で泣いている兎と出くわす。聞けば、淤岐に住んでいた兎は、ワニ(サメ)をだまして本土へ渡ろうとしたが、計略がばれてワニに皮をはがされた。そのうえ、通りかかった八十神にもだまされ、体を塩水につけたため皮膚がひび割れたという。気の毒に思ったオオアナムヂは兎に治療法を教えて助けてやった。

その親切心が功を奏して、ヤカミヒメの好意を得るが、八十神の怒りを買ってしまう。二度も兄たちに殺害されたオオアナムヂだが、母の奔走で蘇生し、スサノヲのいる根の国へと逃げ込んだ。

根の国についたオオアナムヂは、スサノヲの娘、スセリビメに一目ぼれした。スサノヲはオオアナムヂの力量を確かめるために四つの試練を課した。

一つ目の試練では、ヘビが這い回る部屋に入れられた。しかし、スセリビメから渡された比礼(飾りの布)を振ってヘビを追い払い、切り抜けた。

二つ目の試練では、ハチとムカデの群れる部屋に入れられた。これも、スセリビメから渡された比礼でハチやムカデを追い払った。

三つ目の試練では、野原にある矢を取ってくるように命じられた。オオアナムヂが野原に入るとスサノヲは、野原に火を放った。しかしオオアナムヂは、ネズミに教えてもらった洞穴に入り難を逃れた。

四つ目の試練では、スサノヲの頭のシラミ取りを命じられた。しかし、実際にはシラミではなくムカデだった。しかし、これもスセリビメにもらったムクの木の実を口に含んでから吐き出し、あたかもムカデを噛み潰したように見せかけた。

こうしてスサノヲの試練を乗り越えたオオアナムヂは、スセリビメを連れて根の国を逃げ出した。追ってきたスサノヲはオオアナムヂに対して、娘と結婚し、今後はオオクニヌシと名乗るよう告げ、生大刀などを授けた。

葦原中国に戻ったオオアナムヂは、兄たちを倒し地上の王となった。オオアナムヂは、カムムスヒの子、スクナビコナや、オホモノヌシの協力を得て、国づくりを成し遂げた。

繁栄した葦原中国の様子を目にしたアマテラスは、わが子アメノオホシホミミにこの国を統治させようと考えた。ところが、どうも葦原中国が騒がしい。

そこでアマテラスはタカミムスヒらと相談して、国譲りの交渉役としてアメノホヒを差し向けた。しかし、アメノホヒは地上に降りるとオオクニヌシに懐柔され、高天原に何の連絡もしなかった。

今度は、アメワカヒコを使者として差し向けたが、オオクニヌシの娘、シタデルヒメと結婚して、自分こそが葦原中国の王になろうと野心を抱く。

アマテラスは、アメワカヒコからの連絡がないため、キジを使者として遣わした。

だが、アメワカヒコはこのキジを弓で射抜いて殺してしまった。キジを射抜いた矢は、天まで届き、タカミムスヒによって下界に返される。すると、その矢はアメワカヒコに当たり、アメワカヒコは死んでしまった。

ついにアマテラスは、武力に長けたタケミカヅチを遣わせた。

タケミカヅチは地上に降りると、実力行使に出る。オオクニヌシは、出雲に自分のための神殿を立ててくれることを条件に、国譲りに同意した。

ようやく天孫降臨の準備が整ったが、アメノオホシホミミは、自分よりも生まれたばかりのわが子、ニニギのほうがふさわしいと進言し、ニニギが降臨することとなった。こうして、アマテラスはニニギに八柱の神と三種神器を授けて天降らせた。

一行は、先導役のサルタビコに導かれながら、筑紫の日向の高千穂にそびえる峰に天降った。

ニニギは笠沙岬で出会ったコノハナノサクヤビメと結婚し、ホデリ、ホオリら三子を生んだ。

ホオリはホデリから借りた釣り針を紛失したことで対立する。ホオリは釣り針を探して海神の宮を訪れ、海神の娘トヨタマビメと結ばれる。そして水を操る力を得たホオリは、ホデリを服従させる。

ホオリとトヨタマビメの間に生まれたウガヤフキアエズは、タマヨリビメを娶り、四子を生んだ。

神武東征

アマテラスの子孫であるイワレビコは、兄のイツセと共に天下平定のため東に旅立った。豊国、筑紫、阿岐国、吉備を経て、浪速に上陸するが、そこで土地の豪族ナガスネヒコの攻撃に遭い、イツセが命を落としてしまう。

熊野へ迂回したイワレビコは、熊野で荒ぶる神を平らげる。さらに宇陀では豪族エウカシを、忍坂ではツチグモを討伐した。その後、イワレビコ一行は、兄の仇ナガスネヒコと対峙し、苦難の末、討伐を果たした。

こうして敵を討伐したヒワレビコは橿原で初代天皇に即位した。

最終更新:2014年06月12日 11:18