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しおれる花束

ずっと好きだった。
恋なんて身勝手なもので、私は勝手に恋をしていた。
見つめていた。クリームの制服に、ミルクティーブラウンのお団子頭を探していた。ある時、元は同じだったろう制服の、あの軽やかな足捌きの人が隣にいることが多いことに気付いた。恋人同士の視線というものがある。雰囲気がある。幼馴染だという。私が知らない年月がここにはあった。
部活の都合で、三人で話をすることも多かった。はっきり言って、地獄だった。上手く笑えている気はしなかった。二人の話には知らない人、知らない場所がたくさん出てくる。二人は知ってる人と場が。教えてもらったって、私は入れやしない。学年も違うのに、先に卒業して行かれるのに、勝ち目なんてない。
だから私は賭けをした。いつか、いつか私の視線にあの人が振り向いてくれるかどうか。
淹れてくれた紅茶に溶けてゆく砂糖のように、恋は消えてゆく。
私は甘いものが好きじゃない。
砂糖なんていらない。
それなのに、馬鹿みたいに砂糖を入れて紅茶を飲んだ。良い香りね、そうやって微笑んで。
振り向いてくれないならば、私に優しくなんてしないでほしい。あなたの飼っている鳥でも何でもないのに、慈しみの目線なんて、やめてほしかった。私は、あの人になりたかった。恋い焦がれる目で私を見て、その声で名前を呼んでくれたら。悩めば何も食べたくなくなる。周りに心配される。地獄だった。

振り向いてほしい?
−−いいえ。

あなたと私で、あなたはあの人といる時みたいに朗らかに笑ってくれる?
私の部屋の枕であなたは眠れるの?
−−答えはきっと、いいえ、だ。
わかっている。
あなたが眠れるのは、あの人のそばだけで。同じ布団で眠るなんて、神経質なあなたにはきっと耐えられない。
勝ち目なんか、どこにもない恋だった。
初めから終わっていたのだ。
私の涙でセーラー服は黒く染まる。どこか翳のある子だ、と揶揄られる。

でも、私に後悔はなかった。
人を好きになることに後悔なんて、あるはずない。

共に過ごした二年間は、私の手の中でしおれてゆく花と同じだった。
ぼろぼろになって、枯れて、散ってゆく。記憶にしか残らない。記憶さえあればいい。
どうかお幸せに。
どうかどうか、お幸せに。
−−入学式のあの時、あなたのそばで羽根を休めさせてくれて、ありがとう。

泣き腫らした目の私に、私の腐れ縁の指が伸びる。
つらかったな。
今まで一切触れられたことなんてなかった、労りの言葉に、私はまた泣いた。