PSYREN聖杯戦争
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PSYREN聖杯戦争
ja
2019-07-11T23:27:13+09:00
1562855233
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虹村形兆&ライダー
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***虹村形兆&ライダー◆A23CJmo9LE
装飾の少ない部屋に学ランを来た大柄な青年が一人。
飾りと言えるのは壁にかかった古い木製の弓くらい。机もベッドも本棚も壁の角にあわせられており、シーツはキチンと。本は上下正しく、順番通りに。机の上も整頓されている。持ち主の几帳面さがうかがえる。
その部屋の主であろう青年は壁の方を向いている。視線の先にあるのは『弓』。それをまるで親の仇でもあるかのように睨みつける。 そして視線を振り、本棚の中身を検める。
文庫の小説。……ドラキュラ。この段は吸血鬼関連の本や資料があふれている。埋葬機関、アトラスの錬金術……吸血鬼の滅ぼし方について執着しているようだ
ハードカバーの学術書。……ウイルス進化について。病から生還し超脳力を得たもの、血液感染する病人こそ吸血鬼の原初?トンデモ学者の妄言だろうか
古文書らしき古い文献。……古代アステカのものらしい。不気味な仮面に赤いしるしがしてある
分厚い本。……アーサー王物語にパルジファル。聖杯に関する書物がまとめられている
後ろの方が破られた薄いノート。天国に至る方法と書いてある
そのノートを手に取り、何度も読み込んだ痕跡のあるページを再び熟読する。
(聖杯戦争……万能の願望器、それを手にするための闘争。天国……人類すべてが覚悟を決めた幸福な未来。サイレン……文明が崩壊し、天国へと至れなかった可能性の未来、それを覆すゲーム。そして全てを繋ぐ赤いテレホンカード、か)
英語で書かれた文章はかすれ、内容の難解さもあってほとんど理解は進まなかったが、概要は掴んでいる。そして、目的のためのカギもまた、この手に掴んでいる。
(神隠しのきっかけになる赤いテレホンカード、ね。眉唾もんだが、こいつからは弓と矢のような何かを感じる気がするぜ)
ノートとテレカを手に部屋を出る。廊下を歩き別室に向かっていると
「なあ、兄貴……本当にやるのかよ?」
父親を追いやった弟が心配げに声をかける。
「くどいぞ、億泰。お前はおやじとここで待っていろ」
足手まといはいらない、そうも口にしようとするが……
「お前が来たところで死ぬだけだ」
予測を口にするにとどめ、態度と言葉で来るな、部屋に戻れとそう伝える。
そして自身は先ほどまで父のいた部屋に入り、魔方陣を敷く。
(ち、床の傷が邪魔だが……俺たち家族の意思の篭ったこの部屋が、化物の痕跡のある空間こそが最も魔力に満ちている。召喚するならここだ。召喚される英霊があのくそ吸血鬼に成りかねねェのが警戒点だが……おれとあいつが性質的に似通っているとは思いがたい)
ノート片手に吸血鬼……父親の血を混ぜた鶏の血で陣を描き、そして文言を唱える。
「素に銀と鉄。素に石と契約の大公」
憎らしげに、しかし闘志を籠めて英霊を呼ぶ。
「祖には我が敵、ディオ・ブランドー」
「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ満たされる時を破却する」
思い浮かべるのは化物となった父の姿。在りし日の姿が目に浮かぶ。
「告げる。汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うなら答えよ。誓いをここに。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷くもの。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ……天秤の守り手よ!」
手の甲に輝きとともに何かが浮かびあがる。髑髏と、交差した二本の骨……海賊旗の如き三画の令呪だ。
そして現れたのは青年と比してなお大きい老年の男。常人の倍はあるか。素肌の上半身に丈の長いコートと三日月状のひげ、そして何より放たれるその王気(オーラ)が特徴的だ。
「お前が俺のサーヴァントか」
手にした令呪を確かめ、サーヴァントと向き合う。
英霊と対峙してなお恐れず、それを品定めするような視線は几帳面さゆえか、冷徹さゆえか。
「おォ、ライダーのサーヴァント、エドワード・ニューゲートだ。海賊白ひげって言った方が通りはいいか?」
「白ひげ?黒ひげじゃなくてか?」
「あァ?ティーチのバカのことは知ってんのに俺のこと……あぁ並行世界ってやつか」
自分を知らないという青年の態度に些かの苛立ちを見せるライダーだったが、思い当たる節があったのか落ち着きを見せる。黒ひげという通り名がありふれたものであるのにくわえ、何かを【聴いた】ようにも見えた。
「……海賊エドワード、か。俺の知る黒ひげと同じ名だ。ティーチだかサッチだか言う姓だった気がするが、まあどうでもいい。ステータスは…まあまあかな」
「グララララ!!言うじゃねェか、若僧が。名は?」。
「虹村刑兆」
「こんなとこ来てまで聖杯に何を望むってんだ?若ェのに急ぐ必要は無ェだろ」
「……ヒントはこの部屋にあるぜ。当ててみろよ」
引き続き己が使い魔を見定めようとするマスター。
対して因縁ある名を聞いても揺らがず、こちらも年若いマスターに問いを投げる
まるでマスター……刑兆を通じて別の誰かを見るように。
そして生意気な口叩きやがる、とぼやきながらほとんど物のない部屋を見て回るライダー。
唯一の装飾品らしき箱の中身を確認して、部屋の隅の鎖の跡、床に付いた傷を確かめる。
部屋を探し回るライダーはまるで宝探しをする少年のようにも見えた。
「……この箱の中身は写真の欠片だな。箱にしまう宝としちゃ上等だ。で、箱の周りにひっかき傷が多い。
傷の並びからして五本指の霊長類、おそらく人間で立って歩くことか思考に何らかの障害がある。その障害を治してやりたいってとこか?」
推論を述べるライダー。それを聞いた刑兆は少々驚いたように
「箱の中身は俺もしらねぇが、他はいい線行ってるぜ。肝心なとこが違うがな」
「海賊だって言ったろ?興味は薄いが宝探しの経験は豊富なんだよ。で、答えは?」
自慢げなライダーの評価を内心向上し、悩んだ末に答える。
「……不死身になっちまったうえに、知性や尊厳をなくしたおやじを、フツーに死なせてやりてぇのさ」
それを聞いたライダーは先ほどとはくらべものにはならない怒りを露わに
「仮にも親に殺意向けるとはとんでもねェバカ息子じゃねぇか!!それでも家族か!?」
猛る英雄を前にして刑兆も怯まずに言葉を返す。10年分の悲哀と怒りと僅かの家族愛を籠めて叫ぶ。
「ああ…そうだよ…実の父親さ…血のつながりはな…だが、あいつは俺や弟に暴力を振るう最低のクズ!おまけに化物に魂を売った自業自得の男さッ!
だからこそやり切れねーんだよ!フツーに死なせてやりてぇと思うんだよ!それが終わったときやっと俺の人生が始まるんだッ!」
情念の籠められた言葉にライダーも思うところがあったのか矛を収め、改めて問う。
「治すんじゃあダメなのか?」
その言葉には家族を想う男の優しさが込められていた。
息子に殺されようとする父親への思い。父に刃を向けようとする息子への思い。
刑兆もその言葉にすがりたくなるようなものだったが
「おれは何があろうと後戻りすることはできねえんだよ…もう何人も殺しちまった。弟すら利用したクズがまっとうに生きようなんざ虫のよすぎる話だ…」
掲げた目的を失っては奪った命に申し訳が立たない。億泰のためにも、俺の納得のためにも引き下がるつもりはない。
涙を浮かべ、決意を口にする。
するとライダーは
「グラララ…!若ェくせに知ったような口叩いてんじゃあねぇよ。正義掲げた海軍にだって人殺したやつなんざいくらでもいる。それに聖杯に願わなくともお前の親父をどうにかできる能力者もいるかもしれねェ。
身の振り方をいろいろ考えてみるいい機会じゃねェか、この戦場はよ」
改めて誓う。
「俺自身に聖杯に託す願いはねェ。息子たちやロジャーの意思の結果、そして聖杯を手にした奴が世界をどう変えるのか見に来ただけだ。そういう意味じゃどうなるか読めねェお前の未来は偉大なる航路の船旅みたいで面白そうだ。付き合ってやるよ、最後までな」
主従の契りを結ぶことを。願わくはこのマスターの旅路を見届けることを。
誓いを聞き届けたマスターは涙をぬぐい
「老人らしー枯れた考えだかロマンあふれてんだかわかんねーな、てめーはよ。まあ願いがねーなら丁度いい。せいぜい役に立ってくれよ、ライダー」
子供のように強がり、闘いに臨む。
「俺に指図するなんざ100年早ェよ、アホンダラ」
ライダーのその笑顔はまるで子を見守る父親のようだった。
「……それじゃ、行こうぜライダー。戦争の始まりだ」
そういって赤いテレホンカードと携帯電話を手に取った次の瞬間……
二人の姿はどこにもなかった。
【クラス】
ライダー
【マスター】
虹村刑兆
【真名】
エドワード・ニューゲート@ONE PIECE
【パラメータ】
筋力B+ 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具EX
【属性】
混沌・善
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力
【保有スキル】
嵐の航海者:A
船と認識されるものを駆る才能。軍団のリーダーとしての能力も必要となるため、Bランク相当の軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
生前の逸話より船に加えて不死鳥種、巨人種に騎乗することも可能。
悪魔の実の能力者:A
悪魔の実を食べたことにより異能の力を手に入れた者に与えられるスキル、彼はグラグラの実。
体から震動を発し、建物を倒壊させたり海震を発生させるなど地震をおこすほか、薙刀の先から衝撃波として放ったり拳に纏い威力を収束させるなどの応用も可能。
本来なら島一つひっくり返すような威力だがサーヴァント化に伴い建築物を倒壊させる程度が限界。
動かずとも震動を発することが出来るため氷漬けや気圧による拘束などからは容易に脱出できる。
能力者は全員泳げない特性を持っており、海に由来する宝具や力の前には弱くなってしまう
覇気:C
全ての人間に潜在する気配・気合・威圧、それらを極めた技能。ただし老いと病により今の体では十全に効果を発揮できない。
見聞色は気配をより強く感じる力。かつては就寝中の攻撃や不意打ちも感知できたが、ほぼ使用できなくなっている。
武装色は気合を鎧のように纏う力。筋力や耐久、武器の威力を1ランク向上させることが出来、実体を捉えることで液体化や気体化はもちろん霊体化したサーヴァントへの攻撃も可能となる。
覇王色は使用者の気迫そのもの。数百万人に一人しか身につけることができない、特殊な覇気。天性的な物である。圧倒的な実力の差が存在する相手は戦うこと無く気絶してしまう
心臓病:B
自身と家族の死の遠因となった病。一部のスキルの効力とステータスが低下し、あらゆる行動のファンブル率が上昇する。
【宝具】
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:20~40 最大捕捉:前方展開20船
長きにわたり白ひげ海賊団を支えた船。
海戦に対応した武装、コーティングによる海中移動、外輪による陸走などが可能。
『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:0~50 最大捕捉:上限なし
多くの海域や島を庇護した逸話の再現。ジョリーロジャーを掲げ、彼の庇護下に入った土地の龍脈やNPCから膨大な魔力を供給可能になる。
NPCを庇護しなければ一切の効果を失うが、庇護対象の護衛戦においては全ステータスが1ランク上昇する。
『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』 ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
死してなお白ひげに忠誠を誓い、船長とともに英霊化した海賊団をサーヴァントとして現界させ、白ひげ海賊団および傘下の43の海賊団が集結したマリンフォード頂上戦争を固有結界として再現する。召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の『単独行動』スキルを保有し、 最大30ターンに及ぶ現界が可能。
この宝具は忠誠を誓うすべての海賊を召喚するもののため、海軍や七武海はもちろん多くのインペルダウンの脱獄囚らも現れることはないが、海侠のジンベエや4番隊長サッチ、2番隊長エースらは馳せ参じる。
『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』 ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
マリンフォード頂上戦争の最終局面、ライダーが殿となった撤退戦を固有結界として再現する。この宝具の使用中にマスターの魔力は用いず、自身と『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』でつながる息子たちの魔力を用いる。
発動中はEXランクの単独行動スキルと戦闘続行スキルを獲得する。ライダーの前面に敵を置き、背後に地割れを発生させ不退転の戦いを繰り広げる。
この地割れは宝具の効果により空間的に断絶されており、対界宝具か高ランクの追撃系スキルを使わなければ抜けることは不可能。
この宝具の終了とともにライダーも消滅し、味方として逃がした全ての者の幸運をEXランクに上昇させる。また自身のマスターだった者はサーヴァント不在時の消滅期限が6時間から12時間になる。
【人物背景】
‘偉大なる航路’後半の海‘新世界’に皇帝のように君臨する海賊『四皇』の一人、その筆頭。通称「白ひげ」「世界最強の海賊」「ひとつなぎの大秘宝に最も近い男」「海賊王とわたり合った伝説の怪物」。
若いころから海賊であり、自身が独立して船長となったのちは「海賊王」ゴール・D・ロジャー、「海軍の英雄」モンキー・D・ガープをはじめとする同時代の海の男たちとしのぎを削りあい、名をあげていった。
財宝や名誉以上に家族を求めており、気に入ったものを敵味方や種族を問わず船員(ムスコ)として勧誘し、大切にする懐の深さはまさしく船長(オヤジ)。
その威厳はすさまじく、白ひげのナワバリや船員に手を出す者はまずなく、魚人島など多くの島を自身の名で庇護するなど一海賊でありながら、その戦力と影響力は世界の平穏に大きく関与していた。
しかし船員の一人、マーシャル・D・ティーチが同じく船員のサッチを殺害、船を降りる。ティーチの上官的立場であったポートガス・D・エースもそれを追うため独断でとび出すも返り討ちに合い、海軍のもと公開処刑が宣言される。
エース救出のため一味総出で海軍と開戦、モンキー・D・ルフィをはじめとするインペルダウンの脱獄囚なども交えた『マリンフォード頂上戦争』となる。様々な思惑や戦力の交差する戦場で一時はエース救出に至るも、海兵の挑発と弟をかばったためにエースは命を落とす。それでも船員(ムスコ)たちを未来に送り届けるため、ここを死に場所として奮戦。‘ひとつなぎの大秘宝’の実在を宣言し、家族への感謝を胸に72年の人生を閉じた。
死後にその遺志は息子たちに、意思なき力はかつて息子と呼んだティーチに受け継がれた。
本来サーヴァントは最盛期の肉体で呼び出されるものであり、海賊エドワードの全盛期は当然若かりし頃であろうが、海賊白ひげとしての最盛期はサッチ、エースといった息子たちとともに生きた頃であると望んで老齢で参戦した。ステータスやスキルでは寄る年波による影響があるが、宝具として固有結界を持つ。固有結界が二種類あるのはマリンフォードという一つの地を1人の海賊としてみるか、船長としてみるかで見え方が変わってくるからであり、複数の心象風景を有するわけではない。
【サーヴァントとしての願い】
願いはない。
‘ひとつなぎの大秘宝’しかり聖杯しかり世界を変える何かが誰かの手に渡ったとき、どう世界がひっくり返るのか少し興味がある程度。
召喚されたのは父親の愛に飢えている誰かの呼び声に応えたため。
【weapon】
むら雲切り
最上大業物12工の一振り。 ライダーの巨躯と比してなお大きい薙刀。
覇気を纏わせればマグマの塊に触れても、巨人族の袈裟切りを受けても刃こぼれすらしない強度を持つ。その逸話から対熱、巨人殺しの概念を僅かに持つ。
グラグラの実の振動を飛ぶ斬撃のごとく放つことも可能。
【基本戦術、方針、運用法】
近~遠距離全てにおいてグラグラの実と薙刀で戦えるオールラウンダー。ステータスはアベレージといったところなので燃費のいい武装飾の覇気と震動を中心に戦いを組み立てる。
覇王色の覇気による無力化も有効だろうが、条件的にほぼサーヴァントには通用しないだろう。本人の希望的にも打って出ての接近戦が中心になる。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』はサイズ的に市街戦には不適。本来帆船の操作には多くの船員が必要だがスキル:嵐の航海者により魔力によって動かすことが可能となっている。
‘ナワバリ’を示威すればNPCや土地から魔力を徴収できるが、真名ばれのリスクが格段に上昇する。燃え落ちた船や病など弱点の逸話がばれることを考えると安易には使えないか。またNPCを庇護する必要があるので動きが制限される欠点も。
固有結界はとっておきの手。王の軍勢のパク……オマージュ。
格上の相手や集団を相手にするときに『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』、死に場所を見出したなら『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』 。
【マスターステータス】
【名前】
虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険
【参加方法】
DIOの手記や都市伝説より聖杯戦争とサイレンドリフトのことを調べ望んで参戦。
【マスターとしての願い】
DIOの影響で怪物となってしまった父親に尊厳ある死を与えてやりたい。
【能力・技能】
いわゆる超能力者、スタンド使い。群体型のスタンドであるバッド・カンパニーを有する。スタンドエネルギーを魔力の代替として供給可能であり、持続力は高いのでそこそこ優秀なマスター。
肉体的には長身で相応に逞しい。男子高校生を引きずって二階まで即座に上るだけの体力はある。
また長年『弓と矢』を用いてきたため、中距離における弓術はなかなかのもの。
【weapon】
スタンド名・バッド・カンパニー
破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:B 精密動作性:C 成長性:C
歩兵60名、戦車7台、戦闘ヘリアパッチ4機からなる軍隊のスタンド。
サイズはミニチュアだが威力はまともに当たれば手足は吹き飛ぶ破壊力。
群体型のスタンドであるため、歩兵の数体程度ならつぶされても本体への影響はほぼない。
地雷の設置、ミサイルなど装備も戦力も本物の軍隊さながら。
おそらく軍略スキルの影響を受けると考えられる。
群体系のスタンド保持者は精神的な欠落を抱えており、刑兆は目的のために手段を選ばず、また家族の愛に飢えている節がある。
【人物背景】
S市杜王町に住む男子高校生。家族構成は父親と弟1人。
幼少期、父親は膨大な借金を抱えており母親も病で帰らぬ人となっていた。
そのさみしさか金のためか、父親は世界を掌握しようとした吸血鬼DIOの手下となっており、吸血鬼の体細胞を埋め込まれていた。DIOの死後にその細胞が暴走、一年足らずで息子のこともわからない怪物になってしまう。
刑兆は父の遺産を使い10年かけてすべてを調べ上げた。「スタンド」のこと、「DIO」のこと、「DIOを倒した男」のこと、スタンドを目覚めさせる「弓と矢」のこと。
そして父親がもはやどうしようもない状態になってしまったことを確信し、父のためにも殺害を決意。
自身と弟もスタンド能力に目覚め殺害を試みるも失敗。協力者を作ろうと町民含む多くの人物を「弓と矢」で射抜き、スタンドに目覚めさせたり殺害したりする。
スタンド能力については調査を続け、凶悪な犯罪者ほど目覚める強い魂を持ち、能力に目覚める可能性が高いことをDIOの手記より知る。それは何かの下書きらしく『天国へ至る方法』の候補がいくつ書かれており、採用案は破り取られていたようだが選択肢の一つとして願望器、聖杯のことと失われた未来、サイレンのことが記されていた。
神の敵である吸血鬼の呪いをこえるため、聖遺物を手にして目的を果たすために参戦を決意。
【方針】
聖杯で願いをかなえるつもりだったが、ライダーの言葉にあるようにおやじを殺せる能力者なら同盟を組んでの生還も視野に入れる。
治す能力者の場合は保留。
打って出るよりもナワバリにこもってバッド・カンパニーによる暗殺の方が戦術的には好みだが、軍略に精通したライダーの意見をないがしろにするつもりはなく、それなりに動くつもり。
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|BACK||NEXT|
|008:[[鹿目まどか&ライダー]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|010:[[犬飼伊助&キャスター]]|
|008:[[鹿目まどか&ライダー]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|010:[[犬飼伊助&キャスター]]|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|&color(yellow){参戦}|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])|017:[[Vのため闘う者/老兵は死なず]]|
2019-07-11T23:27:13+09:00
1562855233
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エドワード・ニューゲート
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/39.html
**【クラス】
ライダー
**【マスター】
虹村刑兆
**【真名】
エドワード・ニューゲート@ONE PIECE
**【パラメータ】
筋力B+ 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具EX
**【属性】
混沌・善
**【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力
**【保有スキル】
嵐の航海者:A
船と認識されるものを駆る才能。軍団のリーダーとしての能力も必要となるため、Bランク相当の軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
生前の逸話より船に加えて不死鳥種、巨人種に騎乗することも可能。
悪魔の実の能力者:A
悪魔の実を食べたことにより異能の力を手に入れた者に与えられるスキル、彼はグラグラの実。
体から震動を発し、建物を倒壊させたり海震を発生させるなど地震をおこすほか、薙刀の先から衝撃波として放ったり拳に纏い威力を収束させるなどの応用も可能。
本来なら島一つひっくり返すような威力だがサーヴァント化に伴い建築物を倒壊させる程度が限界。
動かずとも震動を発することが出来るため氷漬けや気圧による拘束などからは容易に脱出できる。
能力者は全員泳げない特性を持っており、海に由来する宝具や力の前には弱くなってしまう
覇気:C
全ての人間に潜在する気配・気合・威圧、それらを極めた技能。ただし老いと病により今の体では十全に効果を発揮できない。
見聞色は気配をより強く感じる力。かつては就寝中の攻撃や不意打ちも感知できたが、ほぼ使用できなくなっている。
武装色は気合を鎧のように纏う力。筋力や耐久、武器の威力を1ランク向上させることが出来、実体を捉えることで液体化や気体化はもちろん霊体化したサーヴァントへの攻撃も可能となる。
覇王色は使用者の気迫そのもの。数百万人に一人しか身につけることができない、特殊な覇気。天性的な物である。圧倒的な実力の差が存在する相手は戦うこと無く気絶してしまう
心臓病:B
自身と家族の死の遠因となった病。一部のスキルの効力とステータスが低下し、あらゆる行動のファンブル率が上昇する。
**【宝具】
**『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:20~40 最大捕捉:前方展開20船
長きにわたり白ひげ海賊団を支えた船。
海戦に対応した武装、コーティングによる海中移動、外輪による陸走などが可能。
**『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:0~50 最大捕捉:上限なし
多くの海域や島を庇護した逸話の再現。ジョリーロジャーを掲げ、彼の庇護下に入った土地の龍脈やNPCから膨大な魔力を供給可能になる。
NPCを庇護しなければ一切の効果を失うが、庇護対象の護衛戦においては全ステータスが1ランク上昇する。
**『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
死してなお白ひげに忠誠を誓い、船長とともに英霊化した海賊団をサーヴァントとして現界させ、白ひげ海賊団および傘下の43の海賊団が集結したマリンフォード頂上戦争を固有結界として再現する。召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の『単独行動』スキルを保有し、 最大30ターンに及ぶ現界が可能。
この宝具は忠誠を誓うすべての海賊を召喚するもののため、海軍や七武海はもちろん多くのインペルダウンの脱獄囚らも現れることはないが、海侠のジンベエや4番隊長サッチ、2番隊長エースらは馳せ参じる。
**『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
マリンフォード頂上戦争の最終局面、ライダーが殿となった撤退戦を固有結界として再現する。この宝具の使用中にマスターの魔力は用いず、自身と『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』でつながる息子たちの魔力を用いる。
発動中はEXランクの単独行動スキルと戦闘続行スキルを獲得する。ライダーの前面に敵を置き、背後に地割れを発生させ不退転の戦いを繰り広げる。
この地割れは宝具の効果により空間的に断絶されており、対界宝具か高ランクの追撃系スキルを使わなければ抜けることは不可能。
この宝具の終了とともにライダーも消滅し、味方として逃がした全ての者の幸運をEXランクに上昇させる。また自身のマスターだった者はサーヴァント不在時の消滅期限が6時間から12時間になる。
**【人物背景】
‘偉大なる航路’後半の海‘新世界’に皇帝のように君臨する海賊『四皇』の一人、その筆頭。通称「白ひげ」「世界最強の海賊」「ひとつなぎの大秘宝に最も近い男」「海賊王とわたり合った伝説の怪物」。
若いころから海賊であり、自身が独立して船長となったのちは「海賊王」ゴール・D・ロジャー、「海軍の英雄」モンキー・D・ガープをはじめとする同時代の海の男たちとしのぎを削りあい、名をあげていった。
財宝や名誉以上に家族を求めており、気に入ったものを敵味方や種族を問わず船員(ムスコ)として勧誘し、大切にする懐の深さはまさしく船長(オヤジ)。
その威厳はすさまじく、白ひげのナワバリや船員に手を出す者はまずなく、魚人島など多くの島を自身の名で庇護するなど一海賊でありながら、その戦力と影響力は世界の平穏に大きく関与していた。
しかし船員の一人、マーシャル・D・ティーチが同じく船員のサッチを殺害、船を降りる。ティーチの上官的立場であったポートガス・D・エースもそれを追うため独断でとび出すも返り討ちに合い、海軍のもと公開処刑が宣言される。
エース救出のため一味総出で海軍と開戦、モンキー・D・ルフィをはじめとするインペルダウンの脱獄囚なども交えた『マリンフォード頂上戦争』となる。様々な思惑や戦力の交差する戦場で一時はエース救出に至るも、海兵の挑発と弟をかばったためにエースは命を落とす。それでも船員(ムスコ)たちを未来に送り届けるため、ここを死に場所として奮戦。‘ひとつなぎの大秘宝’の実在を宣言し、家族への感謝を胸に72年の人生を閉じた。
死後にその遺志は息子たちに、意思なき力はかつて息子と呼んだティーチに受け継がれた。
本来サーヴァントは最盛期の肉体で呼び出されるものであり、海賊エドワードの全盛期は当然若かりし頃であろうが、海賊白ひげとしての最盛期はサッチ、エースといった息子たちとともに生きた頃であると望んで老齢で参戦した。ステータスやスキルでは寄る年波による影響があるが、宝具として固有結界を持つ。固有結界が二種類あるのはマリンフォードという一つの地を1人の海賊としてみるか、船長としてみるかで見え方が変わってくるからであり、複数の心象風景を有するわけではない。
**【サーヴァントとしての願い】
願いはない。
‘ひとつなぎの大秘宝’しかり聖杯しかり世界を変える何かが誰かの手に渡ったとき、どう世界がひっくり返るのか少し興味がある程度。
召喚されたのは父親の愛に飢えている誰かの呼び声に応えたため。また怪物と呼ばれ、子に刃を向けられてなお息子を想う父親の気持ちの篭ったその血が触媒になったとも思われる。
**【weapon】
むら雲切り
最上大業物12工の一振り。ライダーの巨躯と比してなお大きい薙刀。
覇気を纏わせればマグマの塊に触れても、巨人族の袈裟切りを受けても刃こぼれすらしない強度を持つ。その逸話から対熱、巨人殺しの概念を僅かに持つ。
『大地を震撼させる悪魔の力(グラグラの実)』の振動を飛ぶ斬撃のごとく放つことも可能。
**【基本戦術、方針、運用法】
近~遠距離全てにおいてグラグラの実と薙刀で戦えるオールラウンダー。ステータスはアベレージといったところなので燃費のいい武装飾の覇気と震動を中心に戦いを組み立てる。
覇王色の覇気による無力化も有効だろうが、条件的にほぼサーヴァントには通用しないだろう。本人の希望的にも打って出ての接近戦が中心になる。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』はサイズ的に市街戦には不適。本来帆船の操作には多くの船員が必要だがスキル:嵐の航海者により魔力によって動かすことが可能となっている。
‘ナワバリ’を示威すればNPCや土地から魔力を徴収できるが、真名ばれのリスクが格段に上昇する。燃え落ちた船や病など弱点の逸話がばれることを考えると安易には使えないか。またNPCを庇護する必要があるので動きが制限される欠点も。
固有結界はとっておきの手。王の軍勢のパク……オマージュ。
格上の相手や集団を相手にするときに『白ひげという名の時代(オックスベル・シンギング)』、死に場所を見出したなら『時代は変わる(ニューゲート・トゥ・ネクストエイジ)』 。
2019-07-11T23:23:38+09:00
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恋見てせざるは愛無きなり
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/161.html
***恋見てせざるは愛無きなり◆A23CJmo9LE
◇ ◇ ◇
金のキャスターが、消えた。
唐突にその事象を理解したのは様々な記憶が濁流のように押し寄せてきたからだった。
召喚した相棒の姿。名。素姓。能力。
食蜂操祈が己に繋がる可能性として封じた記憶が人吉善吉の脳によみがえる。
記憶の回帰に僅かな爽快感は覚えた。
だがそれはまるでパンドラの箱のように。
底にある希望以上に多くの絶望が、封じられていた匣から這い出てくる。
――――――視界が、銀に染まる。
裡から湧き出る悪鬼の記憶が善吉を染めていく。
だからきっと。
「一方通行ァァァァァアァァァァ!!!」
その瞬間に再会できたのは幸運なのだろう。
不気味に輝く銀色に変わり果てていたとはいえ、死んだはずの相棒を認識できたのは。
「――――――アサシン……?」
◇ ◇ ◇
「アァ?お前……あれか。人吉、か」
狂気を付与され、復讐に視界を曇らせても召喚に応じたマスターを前にすると僅かに理性の光が灯った。
サーヴァントであるがゆえか。あるいは善吉の持つ、異常者へのある種の魅力か。
だがそれも一瞬でしかない。
羽を震わせ、宿敵一方通行のマスターである男に牙を剥こうとする。
が
(……どこだ?野郎、逃げるにしてもマスターを放り出すわけがねえ)
サーヴァントはサーヴァントの気配を感知する。
不倶戴天の敵であり、これまで幾度も刃を交えたのもあり、一方通行の気配を垣根が見逃すはずもない。
だがその気配を全く感じない。
バーサーカーとしての召喚では気配遮断などできるはずもなし。マスターを放っておいては逃げる意味もない。
何かの策かと警戒を深める。
「おい、一方通行はどこだ」
マスター、間桐雁夜を睨みそうすごむ。
出さなければ殺すとそう言葉にせずとも伝わるだろう殺気も纏い。
だがその問いに対する答えは怯え以上に困惑の混ざったものだった。
「な、何を……?あんたが。アイツを…バーサーカーを殺したんじゃないか」
その言葉に、垣根は放心してしまった。
怒りでもない。呆れでもない。ましてや悲嘆などであるわけもない。
理解はできる。納得もできる。
あの第一位を倒せるなど、幻想殺しでなければこの垣根帝督以外に誰がいるのだ、と。
だが実感はまるでない。
未元物質の意識に主体はなく、ミサカネットワークのように一つの意思のもと制御・統一されているわけでない以上全ての端末の行動を把握できるわけではない。
自分とは別の自分が殺したのだろう、というはありえなくもないしすぐに思いつく仮説だ。
一方通行を殺した固体が何をしているのかという追及も、この問答がブラフである可能性も抜け落ちるくらいに、垣根は寄る辺を失ってしまった。
そこに真っすぐ手が伸ばされる。
「助けてくれないか、アサシン」
人吉善吉が真っすぐと見据えて問うたのだ。
「何でお前が生きてるのかは分からないけど。お前とのつながりを失って俺はここで一人ぼっちになっちまった。
厚顔無恥と言われてもしょうがねえ。お前にしたことの代償を払えと言われるのも当然だ。
……それでも!俺はまだ生きている。だから戦うことを諦めるつもりはない」
垣根はそう述べる善吉の顔をじっくりと眺める。
そして伸ばされた手に残った令呪が残り一画しかないことも確かめる。
それから大天使とやらに引き合わされた少年のことを思い返し…………数秒の沈黙を経て垣根は善吉の手を取った。
「バーサーク・アサシンの名に懸け誓いを受ける。今一度、お前を主と仰ごう」
契約がなされ、二人の間にパスがつながる。
―――――瞬間、垣根が白い翼を纏い、その一部を善吉の腕に滑り込ませる。
それは浅羽に仕込んだサンプル・ショゴスと同じように、人の肉の下に潜み、魔術回路に干渉する未元物質。
だが今度のそれは魔力の流れを妨げるものだ。
「まだ第五位に操られてんのかと思ったが違うな。誰だ、お前」
令呪は一画しか残っていなかった。サーヴァントと契約もしていない。
ならば窮地にあるのは事実。
サーヴァントとの契約を求めているのは偽りではない。
だが。この男は一時友誼を結んだかつての主ではないと垣根は直感した。
「科学者だ。&ruby(オレら){超能力者}をモルモットにしか見てないあのクソどもの匂いがする……!
その髪もイメチェンなんて可愛いもんじゃねぇよなァ?」
また別の精神系の能力者か。
あるいは肉体変化≪メタモルフォーゼ≫のような能力。
それらに近いスキルや宝具、あるいは魔術か。
あらゆる可能性を想定し、ますは魔術回路をショゴスで犯し、令呪や魔術を封じた。
その行動、その問いに善吉の姿をした名伏しがたきものは笑みを浮かべて対応する。
「抑えろ、アプ・チャー」
人吉の口から発せられた命令によって、アプ・チャーは何が起きているのか『理解』する。
ここにいるのは誤解でも何でもなく、紛れもないフェイスレスなのだと。
「テメェ、この…!」
人形の機構露わに垣根へと控えていたアプ・チャーが組み付く。
人外の異形も相まってだろうが、上物として設計された彼女は垣根の動作を毒づく程度に抑えることに成功した。
その一瞬で&ruby(フェイスレス){人吉}は銃人形のリボルバーを引き抜き、即座に発砲。
銃口の先は間桐雁夜の右腕……令呪の宿るその部位だ。
そして出来た傷口へと指を伸ばし、雁夜の体内からあるものを奪った。
数体の刻印虫、間桐雁夜の魔術回路を代替していると言って過言でない生命線を。
フェイスレスは錬金術師としてはともかく、メイジとしては雁夜にも劣り令呪の移植などの霊媒術は専門外である。
もし彼が他者から令呪を奪うとすれば宿った部位ごと奪う以外にほぼ選択肢はない。
しかし外科医としての優れた知見と、雁夜の魔術特性が少しだけ幸いした。
現在の雁夜は瀕死の上にPSI粒子の影響を受け、ほぼ機能を止めた魔術回路ではなく刻印虫が生成する魔力によって命を繋いでいる。
刻印虫は唯一残った魔術師としての特性であり、魔術回路に宿る令呪も実質刻印虫に依存している状態だ。
腕ごと奪わずとも、令呪に巣食う刻印虫を奪うことでフェイスレスはその機能を手にした。
&ruby(フェイスレス){雁夜}と&ruby(フェイスレス){善吉}の手と口が動く。
「「令呪を以て命じる。お前も&ruby(フェイスレス){僕}の記憶を受け入れろ」」
己の令呪を封じられたなら、外付けの魔術回路で代用する。
銃創から流れる血をそのままに雁夜の手が垣根を掴み、PSIを発動した。
それが契約した善吉から下される命令によって強化されて垣根の脳髄を犯していく。
「アサシンのサーヴァント、垣根帝督。&ruby(おれ){人吉善吉}は君に詳しくないが、&ruby(ぼく){白金}は多少なり君のことを座よりの知識で知ってるよ。
例えばそう、独立したネットワークで発生した自分以外の人格に主導権を奪われた逸話とかねェ!」
そしてフェイスレスは親族の少年や無関係な一匹の犬の意識を奪った逸話を持つ英霊である。
令呪と超能力による助けも加えれば、勝てると彼は見積もった。
「何にでも名前はある。聖書の一節にもあるだろォ、垣根くん。『言葉は初めに神と共にあり、総てのものはこれによってできた』のさ。
魔術に依るサーヴァントならなおさら大事なことだよ。真名の解放、知名度による補正……名前というのは力を与えてくれる。
だからこの能力にも名前を付けよう……ダウンロード。そう、転送≪ダウンロード≫だ。さあ&ruby(ぼく){白金}を受け入れろ、新たなる&ruby(フェイスレス){垣根帝督}!」
&ruby(フェイスレス){雁夜}が左手も伸ばし垣根へとより深く潜ろうとする。
令呪による縛りがそれに抗うことをを許さない。
だがそれを安穏と受け入れるような諦めのよい性格を垣根がしているはずもなく。
善吉の腕を捉えていた未元物質が頭部へと伸びた――――
◇ ◇ ◇
「よォ、邪魔するぜ」
そこは扉がぽつぽつとあるだけの空虚な部屋だった。
垣根帝督はまるで今あつらえましたよ、と言わんばかりに真新しくミスマッチなデザインの扉をくぐり、そこに入場した。
「……君とこの記憶の部屋で会うのは二度目かな」
「あ?どっかで会ったかオッサン」
「いや、こっちの話さ」
垣根は我が物顔で部屋の中心に君臨する髭の男の話に鼻を鳴らし、軽く部屋を見渡す。
死にかけたフードの男、一方通行のマスターがいるがそれは無視。
目を付けたのは半ば放心状態となっている人吉善吉だ。
「男の一人暮らしにしても殺風景すぎるだろ。少し俺好みに模様替えしてもいいよな?例えばそうだな……そこの髭と死にかけを生ゴミに出すとかどうだ」
部屋で一番の新参ながらこちらもまた我が物顔で闊歩し、髭の男と睨み合う。
「お前がフェイスレスだな。俺は垣根帝督。じゃ、自己紹介も済んだところで早速出て行ってもらおうか」
「記憶の転送が順調なようで何よりだね。ところでどうしてここに?」
フェイスレスの手に工具が握られる。
垣根の背に白い翼が表れる。
「“生命の水”とかいうものの原理はよく知らねえが、体液が記憶に影響するってのなら第五位の液体操作と似たようなもんだろ。なら俺の未元物質で似たようなことができない訳がねえ。脳味噌にアクセスして記憶を弄るくらい、体液を利用せずとも電気やベクトル操作で似たような真似できる奴はいるしよ」
「手段に興味はあまりないかなぁ。招かれざる客に、何をしに来たと聞いてるんだけども」
「招かれざる客はテメエもそうだろうが。人吉の方に重きを置いてるみたいだから来てみれば案の定だ」
令呪が潤沢な雁夜ではなく一画しか持たない善吉に契約させたのは、それが話の流れとして自然というのもあったかもしれない。
だが雁夜の肉体にダメージを与えて令呪を移すリスクを負ってまで従うほどのものだったか。
さらに一度垣根との契約を失ってからすでに6時間以上経つ善吉が今も残っている以上、何らかのサーヴァントと契約をしていたはずだ。
そこからフェイスレスの大本は現在善吉に根付いていると考え、それを排除できればダウンロードも無効化できるかもしれないと乗り込んできたのだ。
翼が振るわれる。
工具がそれを受け止める。
そしてそれを合図にしたように、寂れた空間がそこら中から湧いて出てきたフェイスレスと垣根帝督によって埋め尽くされていく。
善吉の脳髄を犯すフェイスレスの記憶、雁夜の能力によってダウンロードされるフェイスレスの記憶、それらを未元物質によって削除や隔離していく垣根の戦いを可視化したものがそれだ。
本来ならばサーヴァントの戦闘に只人ができることなど殆どありはしない。
だがこれは善吉という器を奪い合う特殊な戦い。鍵を握るのは善吉の強さになる。
それの助力をする垣根に対抗してはいるものの、生命の水という有限の兵力に対してフェイスレスが追加で期待できるとしたらそれは雁夜の転送≪ダウンロード≫のみ。
故にこそニ騎のサーヴァントは
「「マスター」」
と二人をそう呼び、戦場へと誘う。
「俺は、一方通行に勝つために聖杯なんてものまで求めた。何の因果か、あいつもサーヴァントになって召喚されてたんだ。それを知った時の喜びったらなかったぜ」
二人が初めて会った時に語った願い。
狙い定めた仇敵との再会が、善吉との別離の後に叶ったのを報告する。
奇しくもその相手が善吉の協力者だったのは偶然か必然か。
「これであいつと戦える。今度こそあいつに勝てる。そのためならなんだってしてやるってな……で?俺は勝った?本当に勝ったのか?」
幾度にもわたる闘争、攻防。
過程はどうあれ結果だけを見れば一方通行は消え、垣根帝督は残っている。勝ったと言えるだろう。
――――――だがそれに納得がいくかは別の問題だ。
「覚えてねえとかそういう話じゃねえ。狂化して、獣に堕ちてアイツの喉笛を食い破った記憶がねえとかそういうんじゃねえんだ」
今の垣根帝督は生前死後合わせて最も穏やかだ。穏やかで、純粋に、妄信的に、狂的に……ただ勝利を追い求めている。
「アイツに勝つってのは……アイツが負けるってのは何だ?俺もアイツも死んでもやりたいことがあるから、聖杯戦争に来たんだ。ならそいつを殺したところで、何のこともねえじゃねえか。アイツの死んでもやりたかったことの上を行かなきゃ勝ちにはならねえだろ」
では何をやりたかったのか。
一方通行は何をしに来たのか。
…………何をするために召喚に応じたかは分からないが、それでも最期に何をしようとしたのかは察しがつく。
――これが悪党だ――
いつまで経っても変わらない、死んでも治らないバカだ。
僅かでも気を逸らせば致命的な隙となる戦場でなおも誰かを守ることに力を費やすのが一方通行だった。
ならばそれの上を行かねば。
「なぁ人吉。お前はどう思う?ああ、いややっぱそれはどうでもいいわ。
だが、お前は何しに来たんだ?そこで寝っ転がりにきたのか。負けたまんまじゃいられねえんじゃなかったのか」
激励の言葉で善吉の眼に光が灯った。
やおら立ち上がって垣根に並び立つと、それに応えるように垣根もまた眼光を鋭くする。
「お前は俺たちを邪魔するんだよな?」
「君も善吉君もまだ僕に染まりきってない以上、&ruby(マスター){雁夜君}は唯一の砦だ。渡せないなァ」
「なら、やっぱお前は俺の敵だよ」
その言葉を引き金に戦端が加速した。
無数の垣根が形をカブトムシに変え、数多のフェイスレスを砕いていく。
増殖するフェイスレスよりも、それを駆除する垣根が優りだした。
「俺を、マスターと呼んだのか……?」
消耗とショックに朦朧としていた雁夜がフェイスレスの声にゆっくりと答える。
「そうさ。恐らくキミが一番、僕のことを理解してくれるだろうからね」
垣根と刃を交えていたフェイスレスの一人が戦場を離れ、雁夜のもとへと戻っていく。
「さて、直接話してはいなかった。先ほど盟を結んだキャスターが僕だ、真名はフェイスレスでも白金でも何でもいいさ」
サングラスも外して雁夜の顔を覗き込む。
その表情は今までにないように真面目なものに映った。
「僕たちが結んだ条件では人形の目と足を提供する代わりに、狂戦士の戦力を貸すギブアンドテイクが成り立っているはずだった。だがお互いサーヴァントは失い、その前提が立ち消えてしまった。
生憎と僕は最早ただの残渣で、同盟なんて何の意味もない関係に成り下がってしまった訳だ」
顔無しという異名に相応しくない、苦渋に満ちた表情を浮かべて現状を口にする。
反省のような……あるいは非難するような言葉を。
「それでもまだ善吉君との敵対は後ろめたいのかい?忘れていないと思うが、あの同盟には時間制限がある。残りサーヴァントが半数になるまでというね。
あれから脱落したのは、そう……僕に、君のバーサーカー。
それから僕が面に出ている間に美樹さやかちゃんの悪魔がちょいと暴れていた。その戦火でもう一人のキャスターが脱落したのは確実だ。でなければ僕はここにいない。一緒にいた大柄なサーヴァントも無事ではないだろう。
そして君のバーサーカーが敗れた戦場に残ったサーヴァント二騎は、あの怪物相手にいつまで生きていられると思う?」
「ぅ…それ、は」
雁夜が最強と信じたバーサーカーの脱落は記憶に新しい。
惜敗などと呼べるものではない、惨敗。それを相手にしてステータスでバーサーカーに劣った二人のサーヴァントで勝てる相手とも思えない。
雁夜のその考えが表情から透けて見えたか、フェイスレスの笑みが厭らしく深まる。
「…ああ。半数、落ちたね。同盟は終了だ」
義理だてるものはなくなった。
間桐雁夜に残っているのはフェイスレスからの言葉と、垣根帝督からの害意。
そして
「僕はね、愛する人がいるんだ。ある男に奪われた人をこの手にかき抱くため絶対に負けられないのさ。共に戦ってはくれないかい、間桐雁夜」
■■■への想い。
それを想起するサーヴァントの言葉に、間桐雁夜は久方ぶりとなる闘争心を燃やすことになった。
「ぅ、ああああああああァァァァァあ!!!」
雁夜の周囲に虫が蠢く。
アポリオンのような銀をした、翅刃虫のようなフォルムの獰猛な虫。
善吉の記憶を犯す雁夜の転送≪ダウンロード≫がそのように視覚化されて、記憶の部屋を穢していく。
転送≪ダウンロード≫と未元物質≪ダークマター≫、二つの能力が脳内の記憶を食い合う様が蟲の争いとして再現されている。
カブトムシの砲撃を翅刃虫が躱し、装甲を刃が抉る殺し合い。
フェイスレスや垣根帝督の人型も入り混じり、戦況は凄惨の一言だ。
やはり戦場として記憶の部屋を提供させられている善吉はそれだけで負担が大きいのか、言葉を発することもできずただその行く末を見つめるだけ。だがその眼に諦めの色はない。
……最初に表れた変化は兵の種類が増えたこと。
「ゴイエレメス!」
黒髪の人形遣いが巨大なゴーレムモチーフのマリオネットで、カブトムシを打ち砕くのが散見され始めた。
それが何者かを垣根も善吉も流れ込んだ記憶で知っている。
才賀貞義と呼ばれる男、&ruby(フェイスレス){顔無し}の顔の一つ。
未元物質による対処が追い付かなくなっていることの表れか、あるいはより深くフェイスレスの記憶が根付いている証拠か、新たな形で善吉の脳内でフェイスレスが猛威を振るう。
それはまるで病原体が変異や進化をするよう。
次に表れた変化はカブトムシの動きに統一性がなくなってきたこと。
フェイスレスの軍団や転送≪ダウンロード≫の蟲に規則的に攻撃を加えていたのが乱れ始めたのだ。
チカチカと緑色の複眼を光らせ、首をひねるような所作を見せたかと思うと、羽を振るわせて音を発し乱れの原因となった疑問の答えを求める。
「現時点での口頭オーダーを再確認。『一方通行への勝利』。同一行動中の全機へヘルプオーダー。自立作戦オーダーの目標設定に関する情報が不足しています。情報の穴埋めをお願いします」
周囲のカブトムシが戦闘行動を続けながらもそれに応答する。
何を分かり切ったことを。
そんな軽口のように異口異音に言葉を紡いだ。
「一方通行が守ろうとしたマスターを殺害することが勝利です」
「一方通行の成せなかった聖杯の獲得こそが勝利です」
「一方通行に優るサーヴァントを倒すことが勝利の証明になります」
「一方通行に代わってマスターを保護することで彼奴の無力さを知らしめることができます」
「一方通行を殺害した個体を降すことで一方通行以上であることが示せます」
「あk 」
「勝利を 」 「 殺 」
幾つかは重なるものもあった。だが、意思の疎通は成されていなかった。
カブトムシの軍団が僅かに動きを止める。
直後、ターゲットが激しく切り替わる。
引き続きフェイスレスと戦うもの、総て跳び越えて雁夜に攻撃を加えるもの、他のカブトムシを妨害するもの、あげくの果て垣根や善吉にまで砲口を向けるものもいる。
一瞬、戦場は激しい混乱に包まれた。
だがそれを指揮官が放置するはずもない。
独立したネットワークを築くカブトムシだが、それでも結局は垣根帝督のスレーブだ。
垣根帝督が改めて命令をプログラムすることで暴走する危険な兵器は忠実な兵団へと戻る。
すぐに全てのカブトムシがフェイスレスとの戦いに傾注する……はずだった。
一体のカブトムシが垣根の命令に抗うように身を震わせ、戦闘行動を中断する。
その蟲の登場を待っていた男がいた。
「――――――私は」
動きを止めたカブトムシが声を発する。
フェイスレスとの戦闘命令を受けてなお動かず、砲門をふらつかせて抵抗を示す。
「私は」
スレーブである以上、垣根帝督の一部である以上、その命令には抗えない。
抗うためには垣根帝督以外のパーソナリティーを獲得するしかない。
だがスレーブでしかないカブトムシは垣根帝督という柱を失えば即座に自己崩壊してしまう。
故に命令を拒むことはできない。
「私、は……!」
ビキリ、とカブトムシの体表にヒビが走る。
何かに抗う代償というように。
緑色だった複眼も危険信号のように赤く染まっていく。
……そして、その光も消えた。
機能停止、ではない。
「私は、垣根提督など関係ない!」
羽化、だった。
蛹が体だったものを打ち破り世に出でるように、カブトムシの体内から新たな人型が生まれた。
銀色の髪。銀色の瞳。
全身全て銀色だが、なぜだかその二ヶ所の銀色が目に付いて見えた。
「&ruby(ぼく){私}はフェイスレスだよ~ん」
そう。
新たにフェイスレスという柱が部屋を乗っ取り、垣根帝督という柱を引き抜いてしまったのだ。
無限の可能性を持つ未元物質であるがゆえの未来の一つ。令呪に破れ、霊基を犯された可能性の具現がそこにあった。
そしてそれをきっかけに己をフェイスレスの一部と認識した未元物質が続々と産まれ出でる。
まるで一つバグを起こすと次々に増えていく癌細胞のように、善吉の脳内からフェイスレスを排除するはずの存在が害をなす存在に転じたのだ。
それをきっかけに情勢は大きく傾いた。
ゴイエレメスの拳が、キャプテン・ネモの剣が、そして未元物質の砲撃が、フェイスレスの武器となって垣根を排除していく。
対抗して垣根も未元物質の増産ペースをあげるが……数が増えた分だけ、一定の割合で混ざる&ruby(フェイスレス){不良品}が敵に回る。
いや、すでに数で論じるならば垣根帝督とフェイスレス、どちらが主でどちらが従かは逆転していると言えるだろう。
僅かに残った垣根制御下のカブトムシも兵力の差に蹂躙され、決着は間近。
…………僅かの時間で大勢は決し。
人吉善吉の記憶の部屋には無数のフェイスレス、そして人吉善吉と間桐雁夜、一人きりとなった垣根帝督を残すのみとなった。
「さあ、これでこの部屋も、君の部屋も僕のものだ」
フェイスレスの一人がゆっくりと前に出る。
あとは勝利宣言と、作業のような鏖殺。それだけだ。
――――――それだけだと思っていた。
「……?なんだ。何をしている?」
歩み出たフェイスレスの足が止まる。
取り囲む&ruby(フェイスレス){貞義}や&ruby(フェイスレス){白金}もまたエラーを起こしたように動かなくなった。
そうしてすぐに自分が保てなくなったようにして崩れ落ち、白い灰のようなものを残して消える。
「あァ、ようやくか」
納得したように言葉を発したのは垣根帝督だった。
勝ち誇った笑みも浮かべている。
例えるなら、そう。時限爆弾の起爆に成功した爆弾魔か。遅効性の毒を盛り、ターゲットの死を確認した暗殺者か。
垣根が指揮者のように腕を振るうと、灰のようなものが再び形を成す。
其れはカブトムシを経て垣根帝督へと。
そう。
フェイスレスに乗っ取られた垣根が主導権を取り戻した、いや
「白金、ディーン・メーストル、才賀貞義、フェイスレス司令。そして……『垣根帝督』。すべてこの俺だ」
未元物質は無限の可能性を内包する。
ならばフェイスレスという反英雄もまた、無限の可能性の一つに過ぎないということ。
「ば、か、な………………」
天秤の傾きはフェイスレスにも伝わった。
なるほど、この戦いの勝者はフェイスレスだ。
ただし、そのフェイスレスとは一体誰のことだ?
ディーン?白金?それとももしかして垣根帝督?
――――――もとより真名ではない偽りの名、誰が名乗ったところで不足はない。
「ば、馬鹿にするなあああああああああああ!!」
フェイスレスの顔が恐怖に歪み、悲鳴を上げる。
今まで数多の人生を乗っ取ってきた男が、死して初めて自分の記憶と人生を奪われる体験を味あわされていた。
「ぼ、くが……僕がフェイスレスだ!僕が、僕なんだ!
この記憶が、積み上げた人生が、英霊としての体験が!それが僕だ……!こ、んな。こんなことが、許されると――――――」
言葉を紡ぎ、抵抗する。
それでもそれは海水の中に純粋を垂らすような儚い足掻きに過ぎない。
「お前は記憶をアイデンティティーとして多くの肉体を渡り歩いてきた。
白金のパーソナリティーを維持し続けたのは大したもんだ、そこは褒めてやる。
だがな、サーヴァントってのはみんなそうだが、お前の場合生粋のスワンプマンなんだよ。白金の記憶を持ったものが白金であるという自己定義は、記憶を維持する限り己を維持できる、俺とは違った不死性ではある。
だがそれは同時に、白金の記憶を持った他者が産まれた瞬間に己の存在があやふやになる脆さも内包している。
ようするに、だ。お前の人生の記憶をそっくりそのまま手に入れた、俺が今から白金でも構わないだろ?ってことだよ。もっとも俺はフェイスレスだのディーンだのセンスのない偽名を名乗るつもりはないがね。今まで通り垣根帝督として生きていくさ」
言葉を紡ぐたびにフェイスレスの姿をとっていた未元物質か垣根帝督の姿へと戻っていく。
部屋の主が誰なのか、言葉にせずとも誰しもに理解できる形で示されていく。
「覚えとけ。レベル5を甘く見るな。『未元物質』はお前なんかにゃ勿体ねえ代物だ。制御できる範囲を大きく超えている。
転送≪ダウンロード≫とか言ってたか?強能力未満のおもちゃがお前にはお似合いだよ」
悲鳴を上げていたフェイスレスが最後の一人。
それもまた溶けるように崩れ、未元物質に還っていく。
それを確かめると無数の&ruby(フェイスレス){垣根}も形を失い、記憶の部屋には垣根と善吉の二人が残るのみ。
だがそれでもまだ、善吉は脳髄を犯されるような感覚からは抜けられずにいた。
「待たせちまったな、人吉……お前がまだ令呪を一つ残していてよかった」
その善吉を慈しむように垣根が傍に立ち、声をかける。
「答えはでた。俺の中での……いや、今主導権を握ったこの垣根帝督なりの一方通行への勝ち方ってのがな」
善吉の手。
そこに宿った令呪を握り、善吉の視界へと掲げさせていく。
「サーヴァントとして、俺がアイツより優っていると証明してみせる。だから人吉、この令呪で俺に……自害を命じてくれ」
それは人吉にとっても忘れ難い罪、その再現。
苦しみながらも人吉は表情に驚きを浮かべる。
「俺は、&ruby(フェイスレス){垣根帝督}だ。お前の体を流れる生命の水に溶けた記憶の主だ。
俺がいる限り、お前はその呪縛から逃れられない。
だが契約した今の俺なら。生命の水の中の&ruby(フェイスレス){俺}まで一片残らず消し去れる。だから、命令をよこせ人吉」
できるわけがない。
必死に首を振り、それを拒絶しようとする。
だがそれも予期していたと、垣根は一つの真実を告げる。
「通常聖杯戦争に呼ばれたサーヴァントの記憶が座の本体まで影響を及ぼすことはない。
だがな、例外はある。今の俺は令呪で命じられ、フェイスレスであることを受け入れた。この事実が世界に記録されれば、俺は今後フェイスレスという悪性を抱えていくことになる」
サーヴァントは複数の聖杯戦争で記憶を跨ぐのもまれだ。
だが例外もある。
サーヴァントの在り方をゆるがすほどの何かであれば、それは座にまで記録されてしまうのだ。
良し悪しは別に価値観を書き換えるような経験を得た者であったり。あるいは獣の資格者たる根源接続者が関わった聖杯戦争で霊基に多大な損傷をきたしてしまったり。
「頼むよ、人吉。俺を、&ruby(オレ){垣根帝督}でいさせてくれ。令呪によって汚された霊基を令呪による攻撃で一掃できる可能性が残っているうちに」
その言葉が引き金となった。
涙を浮かべながらも善吉は唱える。
「令呪を以て命ずる、アサシン――自害してくれ」
その言葉によって、記憶の部屋の主は生き残った一人に決まった。
そして人吉善吉は意識を取り戻す。
◇ ◇ ◇
「起きたのね。気絶したのは記憶を取り戻した、それとも失くしたショックかしら?」
善吉の目の前にはどこかで見たような女性の姿。
それが間桐雁夜を膝に抱いて、たおやかに控えていた。
「あ。アプ・チャー?その姿は……えーと、えー。そうだ葵さん!」
「知らないわ。あのアサシンの翼を押し付けられたらこの姿になったのよ」
遠坂葵。間桐雁夜の焦がれた人で、罪と後悔の象徴。
雁夜の転送≪ダウンロード≫は記憶を共有する超能力だが、身に着けて短いその能力は熟達とは言い難くフェイスレスの記憶諸共に雁夜の記憶もまた垣根と共有することになった。
その知識を垣根が望まず得たときに、状況は変化した。
――フェイスレスなど、私には何の関係もないわ!――
垣根に組み付いていたアプ・チャーが糸を断ち切り、自らの足で歩んだ瞬間だった。
造物主への叛逆。
そこにある事情までは垣根には汲み切れなかった。
だが事態の変化を見逃すような愚鈍ではなく。
転送≪ダウンロード≫の手を止めるために、間桐雁夜の最大の古傷を最小限の手で抉ったのだ。
未元物質を材料に、フェイスレスの知識を用いた変装術。それによってアプ・チャーの姿は間桐雁夜の記憶そのままの遠坂葵のものになった。
それを目にした雁夜のショックは尋常のものではない。
いくら表層がフェイスレスに乗っ取られていたとはいえ、能力を行使できるような精神状態を保つことはままならず。
転送≪ダウンロード≫は停止し、援軍を失った記憶の部屋のフェイスレスは敗北を喫することになった。
そして流れるように垣根もこの世を去り、この二人と一機が残されたというわけだ。
アプ・チャーは記憶の部屋のやり取りを、善吉は現世での駆け引きを知らないためその全てを察することはできない。
それを踏まえて話ができるのは
「よう、フェイスレスはくたばったか人吉」
転送≪ダウンロード≫を受けていた只一人。
だがその口調には違和感を善吉は覚えた。
むしろこの雰囲気は……
「察しはつくか?俺だよ、垣根帝督だ」
転送≪ダウンロード≫。それにより雁夜も逆に垣根の記憶を得ていた。
加えて垣根がフェイスレスの主人格として己を定義したために、雁夜の表層でもまた支配権を獲得していたのだ。
だが目にも体にも力はなく、こと切れる間近なのだろうと感じられた。
無理もない。
刻印虫に巣くわれ、余命幾ばくもなく。
サー・ランスロットという一流のサーヴァントをバーサーカーとして従えること数日。
そのうえに今度は一日程度とはいえ一方通行というこれまた魔力食いのバーサーカーを従え。
PSI粒子と一方通行による肉体改造。
にわか仕立ての能力の行使。
魔術と超能力の反発。
サーヴァントの記憶を二人分体に無理矢理に流し込まれ。
健常な人であっても命を落としかねない激動の運命に晒され、今生きているだけでも奇跡と言えよう。
その肉体に自害を命じられたサーヴァントの残渣が宿っている、死にぞこないの結晶体。
そんな無様を晒しても最期に伝えなければならない言葉があると、この世にしがみついているのだ。
「人吉。お前は聖杯戦争に何をしに来たって聞いたよな?その答えと本当の意味が、今なら分かるんじゃねえか?」
召喚時にも、記憶の部屋でもした質問。
黒神めだかに『勝つ』ということ、その意味するところ。その動機。
……善吉も自覚はしていた。させられていた。
無理矢理に重ねられた人生経験が、善吉に教えてくれた。
それは、善吉には認めたくないものだったかもしれない。
それを察しているのだろう、垣根の表情が変わる。垣根帝督のものから間桐雁夜のものへ。
「僕は、本当に好きだった。葵さんのことを心から愛していたんだ。でもその結末は……」
――あなたなんか……誰かを好きになったことさえないくせにッ!――
言葉にしなかったから。伝えたことがなかったから。
分かってもらえなくて当然なのだけれども、それでも文字通り命を削り人生を懸けた果てに得たものがその言葉と拒絶ではあまりにも報われない。
フェイスレスもそうだった。
――フランシーヌは僕が最初に好きになったんじゃないか…――
ああ、それは真なのであろう。
しかしフランシーヌに最初に愛を告げたのは銀で。
きっと二人の差はそれだけだった。
「だから、君が命を懸けるのはきっとここじゃあない」
人吉善吉は、黒神めだかを愛している。
その想いも能力によって共有され、周知のものとされている。
その事実にも、自らの想いにも恥らいを覚えるのが正しい人吉善吉のリアクションなのだろう……が。
今の彼は羞恥以上に嫌悪を覚える。
なぜならば、一人の女性の面影を200年以上追いかけた男の妄執と、それによってもたらされた悲劇を知ってしまったから。
生命の水は、未元物質によって排除されているが自前の脳細胞に焼き付いた記憶まで抹消されるわけではない。
だから反射的にその想いも否定しようとして―――
「何を恥じることがあるの?」
その必要はないと諭される。
「人が人を愛することにおかしな点などないでしょう?」
そう告げるアプ・チャーの眼は真っすぐで、そう。
ここではないどこかを見てるかのよう。
「人間は変わっていくものだと、誰かを愛せる生き物だと言っていた…いえ、教えてくれた人がいたわ。
人は幸せになった時笑うのでしょう?なら笑顔になるにはきっと、愛が不可欠なのでしょう。
私のような人形でも人や主人を愛せたというのに、あなたのような人間が誰かを愛するのに何の不思議があるというの」
フランシーヌを笑わせるために感情の機微を学んだ人形の中でもアプ・チャーは極めて優秀な存在である。
そんな彼女が最期に学んだ愛。
短い触れ合いだったが、善吉が人を愛することのできる存在だと深く理解していた。
だから恥じる必要も、怯える必要もない。
だって
「フェイスレスなど、あなたには関係ないわ」
其れは彼女にとって大きな意味を持つ言の葉。
アプ・チャーの言葉には強い感情は乗っていない。
それでも、人吉にはその眼で分かる。彼女の真摯な言葉が、その愛が真であることが。
ああはならない。なるはず愛を得られないからと悲劇を起こす反英雄のことを知っても、いや知っているからこそああはならないと信頼を寄せてくれているのだと。
「だから、行きなさい。幸せになって、愛する人にいい笑顔を見せてあげなさい」
「おう、そうだ。帰れ帰れ」
アプ・チャーの激励に便乗するように力なく雁夜(かきね)も善吉の背中を押す。
その言葉に背を押されてようやくゆっくりと、迷いながらだが善吉は帰途に就いた。
不幸中の幸いか、現在地から僅かに南下すれば公衆電話があるのは確認していた。
そしてその目的地にたどり着いたときには彼の背には迷いなく、真っすぐに立っている。
例えるなら、凛という空気を纏うのが似合うような。
&color(red){【人吉善吉@めだかボックス 退場】}
「行ったわね」
「ああ」
残された二人は善吉を見送った姿勢のまま、力なく地に腰掛けている。
事実として二人はもうこれで限界だ。
間桐雁夜の肉体はもとより。
自害を命じられた垣根帝督の記憶も。
造物主に抗い、もう一人の造物主との縁も消えたアプ・チャーとて。
「私は作られた人形に過ぎないからまだしも。サーヴァントというのはそんなに諦めのいいものなの?」
アプ・チャーにとっては身近なサーヴァントの例として挙がるのがフェイスレスだ。
只では死なない。死んでも聖杯を諦めることなどないイメージで、垣根の行動には疑念を隠しきれなかった。
「目的は達したからな。一方通行には勝ったぜ」
そう言いながら&ruby(おのれ){間桐雁夜}の体を検める。
「見ろよこいつのボロボロの様をよ。多少体を弄ったところでどうしようもねえ。レベル5の力でも治せねえくらいだぜ」
はは、と皮肉な笑いを浮かべる。
それは一方通行でもどうしようもなかったという蔑みで。
未元物質でもなにもできないという自虐でもある。
フェイスレスの医療知識を獲得してしまった善吉もまた、雁夜が助からないと確信してしまったからこそ帰路に就いたのだろう。何もできない無力さを垣根同様噛みしめて。
「だが、人吉は生還した。フェイスレスという邪魔者も取り除いて、俺のマスターは無事に帰ったんだ!」
一方通行は、マスターを助けることができなかった。
垣根帝督は、マスターの生還に成功した。
二人とも数多の害悪をまき散らし、聖杯を得ることは敵わなかったが、それでも決定的な悪としての差がそこにはある。
この垣根帝督はそれをもって自らの勝利を定義した。
「だから、いい。願いは叶った。助力感謝するぜ。
そういうお前こそなんでまあ入れ込んでたのか分からんもんだが。フェイスレスの人形じゃあないのか」
フェイスレスなど関係ない、と改めて口にしそうになるが。
今更そんなものに意味はないだろうと、一度目を伏せ、自分でもよく分からないところのある行動を振り返ってみる。
遊園地での問答の借りもあるだろうが
「……昔、ショートカットの似合うサイテーなお姫様がいたわ。今思い返すと彼女も人吉と同じ目をしてた。誰かを愛した人の目を」
アプ・チャーに只一人拳を浴びせた人間。
10年観察を続けたのに、一人のしろがねに恋をして変わった女。
アプ・チャーの最期に、愛を語った強く美しい女。
彼女と同じ、恋をする者だからだろうか。人吉に協力的だったのは。
「あるいは私のこれも……愛だったの、でしょうか?」
キリキリ、と音を立てて歯車の動きが鈍くなる。
思考も鈍化し、アプ・チャーもまた二度目の活動停止を迎えた。
「ああ、終わりか……俺も、だな」
アプ・チャーが遠坂葵の変装に用いていた未元物質が剥がれ落ちた。
そしてそれが間桐雁夜の肉体に触れると、その最期の命令を実施する。
「せめてもの情けだ。すっぱり逝こうぜ間桐雁夜」
未元物質も垣根帝督の一部……つまり令呪の命令に忠実だ。
垣根帝督の記憶を受け継いだ間桐雁夜も垣根帝督のスワンプマンならぬ本人とみなし、『自害』する。
そうして戦場には誰もいなくなった。
&color(red){【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録 死亡】}
&color(red){【間桐雁夜@Fate/Zero 死亡】}
&color(red){【アプ・チャー@からくりサーカス 機能停止】}
[全体備考]
※B-3北西部にアプ・チャーの残骸(暁美ほむらの外見)が残されています。マスターであった人吉善吉の退場に伴い灰化などするかは後続の方にお任せします。
※B-3北西部にて間桐雁夜の刻印虫(令呪ニ画分の魔力あり)が放たれています。間桐雁夜の死亡に伴い灰化などするかは後続の方にお任せします。
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|~|[[間桐雁夜]]|&color(red){DEAD END}|
|~|バーサーク・アサシン([[垣根帝督]])|~|
2018-12-25T00:38:00+09:00
1545665880
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魔なる柱雷のごとく出で
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/155.html
**魔なる柱雷のごとく出で◆A23CJmo9LE
「もう一度聞くぞ。鹿目まどかは、どこにいる」
悪魔の襲撃に、即座に反応をとれたものはいなかった。
操祈がこれまで出会ったサーヴァントは殆どが人間であった。
前田慶次や纏流子はもとより、モンキー・D・ルフィも言わずもがな。
モリガン・アーンスランド、一方通行、垣根帝督は人間離れしていたが、それでも人の形は保っていた。
目前の青い肌のサーヴァントは、紛れもない化生の類だ。
刑兆が会ったサーヴァントはみな怪物ではあった。
吸血鬼レミリア・スカーレット、夢魔モリガン・アーンスランドも翼を生やし、ニューゲートを翻弄する怪物だった。
しかし、そのどちらも気品と美しさに満ちていた。
貴族然としたレミリアも王気を発するモリガンも美しく、敵ながら魅せられるものがあった。
今現れたこの悪魔からは、ひたすら戦いにだけ生きた獣の匂いしかしない。
コウモリのような黒い翼で空に浮く不動明。その小脇に抱えられた美樹さやか。
さやかの存在が少しだけ雰囲気を和らげはする絵だが、美女と野獣というには青い野獣の獰猛さに比して少女では役者が些か落ちる。
圧倒的な戦力差がそこにはあった。
ニューゲートがいない現在、刑兆たちにデビルマンに立ち向かうすべはない。
恐れ、気圧され、それでもさすがにサーヴァントか、操祈が一歩前に出る。
「なぜ私たちに鹿目まどかさんのことを聞くのかしらあ?」
「金髪に白い手袋をした女サーヴァントに攫われたと聞いた。お前のことだろう?」
肉食獣の眼光が操祈を貫く。
冷や汗が操祈の背中を滝のように流れるが、ここで引いては全滅だ。
唾をのみ必死に話し続ける。
「その情報古いわよ☆もう彼女は麦わら帽子の仲間の手で助けられたから私は知らない――」
「空とぼけるな。そのあと人形が彼女を攫って行った。お前のところに届けると言っていたぞ」
ここで操祈の知らない情報が出てきて驚きが内心を満たす。
全く心当たりがない。人形という単語にも覚えがない。
「それ、誰に聞いて」
「誰でもいい。俺たちの協力者だが、それ以上教える必要性は感じないな」
取り付く島のない明の様子に操祈はこれ以上の追及をあきらめる。
有利な立場の者がみだりに情報を明かさない判断をするのは当然だろう。
誠意がない、と弾劾できなくもないが、生殺与奪を握られている状況で生きているだけ御の字と言われればそれまでだ。
「私たちは人形を使っての誘拐なんて覚えがない。人形を使う技能なんてない、と言っても聞いてもらえないわよねえ」
「そうだな。二つの情報に矛盾があるときどちらを疑うかといえば、味方の発言より敵のそれを重んじるわけがない」
それもまた当然の判断だ。
操祈たちの潔白の証明には鹿目まどかがここにいないと示すか。あるいは邪道だが情報提供者の信用を損なうかしかない。
徹底的にまどかを探すか、矛盾を追求するための議論をするか。
(あの娘、マスターよね。鹿目さんの記憶で見た美樹さやかさん……?魔女になったんじゃないの?
そこはよく分からないけど、鹿目さんを助けようというのは納得。となると情報源は暁美ほむらさん、かしらあ?)
思考は刹那に纏める。
会話は少しでも冗長に時間を稼ぐ。
「あなた美樹さやかさんよね?話を察するに情報提供者っていうのは暁美ほむらさんだと思うんだけれども、あなた彼女のことをそこまで信用できるの?」
「え?なんで私とあいつのこと――」
ここまで会話に入っていなかったマスター、美樹さやかに話を振る。
うまく会話を誘導できれば優位に立て直せると操祈はたくらむが
「マスター。奴の問いに答える必要はない。質問するのは俺たちだ。奴に主導権を譲ってやる義理はない」
当然それは明が許さない。
圧倒的な武力で議論のテーブルをいつでもひっくり返せる彼の発言は当然この場で最も力を持っていた。
その言葉で少し慌てたさやかも自身を取り戻して言葉を口にできる。
「ああ、うん、そうだね。でもさ、これだけは言わせて。キャスター、あんたなんかよりほむらの方がずっと信じられるよ」
強制的に議論の段階は進む。
あとはもう見苦しくやったやっていないの不毛な議論を繰り返すくらいしかできない。
明は実のところ内心悩んでいる。
彼は未だに暁美ほむらを心底信用したわけではない。
さやかには悪いと思うが、鹿目まどかを利用する手を打とうともしないキャスターを見ていると、ここにはいないのではないかと思えてしまうのだ。
(人を操る力があるといっていた。それが正しいならそれこそ鹿目まどかを操り、俺たちを追い返すこともできるだろう。
鹿目まどかに何らかの耐性や操りたくない事情があるにしても、誰か別の人間を使って逃げるための囮に位はできる。
俺の沙汰を待つような行儀のいいやつには思えんというか、そんなやつが誘拐など企てるわけもなし)
恐らく犯人ではないだろう。
人形に攫われた鹿目まどかは恐らく別のところにいる。時間を浪費しないで、急いで捜索に戻るべきだ。
となると人を操れるというこのキャスターの手を借りて効率的に探すという選択も出てくる。
ただ探すだけならそちらの方が効率的だ。しかし当然問題もある。
(そもそもコイツをそれだけ信用できるのか。真面目に探すとも限らんし、寝首をかかれないとも限らない。
……いや、無理だな。余計な心労を抱え込むだけだ)
ならば選択肢は二つ。
彼女たちを見逃して捜索に集中するのか、倒してから心置きなく探すのか。
敵対するキャスター、そのマスターらしき少女、もう一人の男を明は観察する。
(キャスターと比してもあの男の方がまだやれそうだが、纏めて10秒もいらんな)
そもそもが聖杯戦争の敵。
見逃す理由があるとしたら時間と体力の消耗を惜しむかどうか。
どちらの浪費もないというならわざわざ見逃してやる道理もない。
明の全身の筋肉に力ある緊張が走る。
目の前の敵を片付けて、暁美ほむらと合流するか単独で探すか改めて相談しようと――
「バーサーカー!前、前!なんか飛んできてる!」
さやかの声に前方へと注意を向ける。
どん!と音を立てて巨大な斬撃が飛んできていた。
手刀で弾けるか、とも思うが震動するその刃にはかなわないだろうと判断し、身を大きく躱す。
それによって操祈たちからは少し離れてしまった。
「何者だ…!?」
デビルマンの認識能力でもって刃の出どころを探る。
するとサーヴァントの感知能力の外に巨大な影があるのが見えた。
それが大きな薙刀のようなものを振るうと再び斬撃が飛来する。
「ちぃッ!」
さやかを抱えているため人外の速度で動くことはできない。
仕方なく余裕をもって大きく躱すざるを得ない。
その間に攻撃を仕掛けている大きな影との距離は詰まり、襲撃対象である三人との距離は広がる。
『おい、刑兆おれは狙撃手じゃねえぞ!』
『それ言うならおれだって観測主じゃねーよ!てか逸れてる右に五度修正!』
攻撃を放ったのは当然、刑兆のサーヴァントであるエドワード・ニューゲートだ。
霊体化して向かってはいたが、刑兆からの念話で間に合わないと判断して遠方からの攻撃に移った。
残念ながら弓兵でないニューゲートに遠見の技能はなく、刑兆と視覚を共有し、マスターに誘導される形で斬撃を飛ばす。
大雑把な狙いではあるが、バッド・カンパニーの操作で多少は馴染みがあるのか刑兆の指示は悪くない。
飛来する斬撃に翻弄され、明は今一歩攻撃に移れない。
明単身ならばそうでもないのだろうが、いまさやかを放り出せばキャスターの脅威にさらすことになる。
それでも少しづつ射程圏内に刑兆たちを捉えていくのだが
「間に合った、な!」
大きな足音を立て、ニューゲートが合流する。
刑兆たちの前に仁王立ちし、その背には一歩も通さんと構える。
こうなれば一方的な虐殺ではない、対等の闘争へと場は切り替わる。
再び明は選択を迫られる。撤退か、戦闘か、協力要請か。
「ダメもとで聞いてみるが。俺たちに協力し鹿目まどかを捜索するか、それができなくとも俺たちが退くのを黙って見逃すつもりはあるか?」
「無理だな。喧嘩吹っ掛けといて協力なんざ論外だ。見逃せってのもな、周りにバーサーカーだのセイバーだのよくわからんカブトムシだの敵が多い。ここらで少しばかり減らしておきたい」
ニューゲートは薙刀を送還し、空手で構える。
その様子を空から明は観察している。
(右手に…あれは矢傷か。薙刀は十全には扱えんと。それにバーサーカーに、セイバー。どうやらずいぶん混迷としているようだ)
ゆっくりと明も戦意をニューゲートへとたぎらせていく。
「た、戦うの?バーサーカー?」
「逃がしてはくれないそうだからな。仕方あるまい」
「それはいいんだけど、私はいつまで抱っこされ、わぷっ!」
声をかけたさやかを明が翼で覆う。
そこに操祈がリモコンを向けていたのだ。
心理掌握がさやかを庇った明に機能することになる。
「…なるほど。体液を弄るのか?それで脳の機能に影響をもたらすわけか。些か気分が悪くなったが、大して効かんな」
&ruby(レベル5){超能力}の力をまともに浴びて少し気分が悪い、で明は済ませた。
コウモリや山羊などを吸収したデーモンの勇者アモン、彼と合体した明の体は生物的にも人間ではない。
対人間に特化しすぎた操祈の宝具では僅かの影響を与えることしかできなかった。
だがそれもさやかに対しては厄介な能力だろう。まさかこのままさやかを抱えたまま白ひげのサーヴァントと戦うわけにはいかないが、さやかと別れるのも避けたい。
「……仕方ない。マスター、少し悪いが協力してもらうぞ」
「え?バーサーカー、何を、ああぁぁぁぁぁっ!!!」
バーサーカーの肉体が白く輝き、その光が剣のようになってさやかの体を貫いた。
その切っ先に触れたところからすさまじい痛みと快感が同時に流れ込み、さやかに艶やかな悲鳴を奏でさせる。
仲間割れか、と周囲は観察していたが。
光が晴れるとそこには一つの影があった……否、一つしか影がなかった。
ファンタジー世界の軽装な剣士のような服装。左右非対称なスカートにビスチェ風のトップ、フォルテッシモを模った髪飾りといつもの魔法少女の装い。
それに背中から生えた翼で空を飛ぶ、青い鎧のようなものを纏った美樹さやかの姿があった。翼を扱うためかマントは取り払われていた。
体を駆け巡っていた感覚の余韻に上気しながらも己の変化を確かめる。
「これって……」
『デーモンアーマー、いやデビルマンアーマーといったところか』
さやかの脳裏に念話が明から送られてくる。送り主は鎧だった。
『バ、バーサーカー!?あたしの体になにしたの!?」
『端的に言うと君の体と俺の霊体が合体している。能力は説明したし、昼に見せたな?ソウルジェムとは合体していないから君が主導権を握ることもできる』
デーモン族の合体能力により二人の体は一つになった。
鎧は完全に肉体と同一化し、美樹さやかの体も人外たらしめていた。これでもう操祈の精神操作も効かない。
『キャスター対策だ。それにあのサーヴァントによると、どうやら暁美ほむらとそれを襲ったバーサーカー以外にも敵はいるらしい。
奇襲を避けるためには俺が君の身を守る騎士になるよりも、こうして鎧となった方がいい』
『あ、うん。それは、まあいいんだけどね』
戦術的な意味は納得できたが、それに伴う作用を思い出してさやかの頬が再び熱を持ち出す。
体の感覚は消せるといっても程度はあるし、また何度もやられるとクセになってしまわ……
『ない!それは超えちゃダメなやつだから!』
『…気にするな。俺はアモンを拒絶したから分からないが、大きな意思と一体化するのは心地のいいものだそうだ。
とにかく今は戦う時だ。さやか、今更だが君の体と力を俺に貸してほしい』
『……前半は聞かなかったことにするよ。で、あとはオッケー、任せるよ。やっちゃって、バーサーカー!』
その声と共にさやかの表情に意図しない獰猛な笑みが浮かぶ。
そして鎧がどんどんと体の表面を覆っていき、そして巨大化していく。
そして青い鎧が改めて、魔神と謳われたデビルマンの形へと変じると、ニューゲートの前に並び立つ。
巨大化はしたが、それでもまだニューゲートより一回りは小さい……いや、建物を見下ろすサイズのニューゲートと一回りしか違わない巨体となっていた。
言葉もなく二人は組み合う。
がっぷり四つでの力比べ、はじめのうちは拮抗していたそれだったが
「ここにきて、サイズで拮抗するのも力負けするのは初めてだな……!」
ニューゲートが押され始める。
この聖杯戦争では吸血鬼やサキュバスといった人外、生前は巨人すら力で捻り潰した男が悪魔を相手に力で劣る。
右手の負傷もあるが、2万年以上の神秘を積み重ねたアモンの魔性がそれだけ優れていると言えよう。
咄嗟に頭突きを喰らわせいったん体制を整えようとする。
だがそれを見越したように明が口腔から火炎を放射した。
「ぐぁっ!」
顔面が焼かれる。
咄嗟に武装色の覇気を鎧とし、突き飛ばして距離をとろうともするが、掴んだ腕を明は放さない。
ならばとニューゲートが膝蹴りを繰り出す。
明は容易にそれを受け止めるが、膝からグラグラの実の力が放たれ、あえなく吹き飛ばされる。
「妙な能力を持っているようだな!」
「口から火ィ吹く化け物がほざきやがる!」
距離が空いた拳を振るい、続けて震動をニューゲートが打ち出す。
先刻までのように避けるだろうと予測したが、明はそうは動かない。
何かを握った右手を振るうと、震動が切り裂かれる。
そしてそうして開けた突破口を真っすぐ駆け抜け、ニューゲートに斬りかかった。
明が手にしたのは合体したさやかの魔術で生み出した刀剣だった。
さやかが握れば長剣といったサイズになるが並外れた巨漢となったデビルマンの手にあってはせいぜいがジャックナイフのように見える。
今のニューゲートは薙刀を振るえず、力では明が勝る以上まともに受けるわけにはいかない。
武装職で硬化しても止められるかは未知数のそれを回避しようとはするが、翼も用いた機動で明の方が速度でも優れる。
刃がニューゲートに届くその刹那
「バッド・カンパニー!」
小型の戦闘ヘリからありったけのミサイルが飛んだ。
それがジャックナイフに着弾すると、震動を受けてダメージの蓄積していたためにあっけなく折れる。
「よし、いけるぞライダー!」
「おう、よくやった刑兆!」
ナイフで斬りかかっていたのが空振った隙をついてカウンター気味に震動を纏った拳を打ち込む。
顔をもろに捉えたそれは明の首を大きく揺るがせ、乾いた木が砕けたような音を立てて吹き飛ばす。
人がしてはいけない領域にまで顔をのけぞらせ、柳のように揺れる。
首をへし折られた魔人が地に伏せた。
「やったか」
刑兆が息を漏らす。
戦闘に介入できたのは奇跡的だ。同じことをもう一度やれと言われても無理だろう。
あの吸血鬼やサキュバスよりも強いかは分からないが、恐ろしさでは勝るなと内心ぼやく。
「とっとと行こうぜ。ただでさえ連戦だ。追い打ちなんざ御免こうむる」
そういって歩き出そうとする刑兆をニューゲートが制した。
何だよ、と言いそうになるがそこで気づいた。
サーヴァントの死体が消える気配がない。
……倒れていた明が幽鬼のように立ち上がった。
グキリグキリと音を立てて首の骨が繋がり、真っすぐにこちらを煌々と光る目で見つめていた。
「やってくれたな。顔を狙ったのはさっきの炎の意趣返しか?」
「はっ。あんな程度、ウチの息子の方がよっぽどいい火加減だったぞ」
強気な言葉を吐くがさすがにニューゲートも不気味な感覚を覚えていた。
人間兵器パシフィスタも、他にも生前あったあらゆる怪物どもも、さっきまでやりあっていた垣根なる怪人も首を折ればさすがに絶命していた。
そこからの復活も生理的に嫌悪感を示すような音を立ててのものでは、いかな武人と言え完全に平静を保つのは難しかろう。
『ちょ、大丈夫なのバーサーカー!?』
『問題ない。首が折れても生き延びるデビルマンの生命力と君の回復力の賜物だ。感謝する。
確認するが痛みはないな?ソウルジェムにまで伝わらないよう気は配っているのだが』
『いや私は大丈夫だけど!バーサーカーは!?首が折れるとか痛くないの!?』
痛いに決まっている、という言葉をぐっと飲みこむ。
そんなものは些末事だと。そんなものより痛いことがあると。
内心でさやかには慈愛に満ちた笑みを向け。
外面で敵に対して獰猛な笑みを浮かべる。
それに敵が気圧されたのを見て改めて手中に剣を生み出そうとする。
そこへ飛来物。そして言葉。
「キャスターさまぁ~!いざ首実検をぉ!ひゃっはははあははははは!!!」
歯車の軋む音。不愉快な笑い声。
キャスターに向けて何かを掲げて突撃する人形だ。
長い棒のようなものの先に何かが刺さっている。
それは
! 鹿目まどか 表情が
美樹ちゃん 小柄な
死臭 怒り
憎悪 キャスター 人形が
血
が
首から 出て
死 うそ ここで
ぬ の?
―――――まどかぁっ!!!
巻き起こった混乱を最後に二人の人間的な思考が失われていく。
美樹さやかの心中を絶望が満たす。ソウルジェムが穢れていく。
不動明がかつてのトラウマを刺激される。人の善性に、自らの弱さに失望していく。
魔神が、生まれる。
それはある魔術師の策謀の結果。
□ ■ □
「さて、お久しぶりでございます。目の離せない活劇に再度、この道化の登板をお許しくださいませ」
「なぜ人形が少女の首を高らかに掲げ、現れたのか。賢明な皆様ならお気づきの方もおられるかと思います」
「歴史の影に女あり。では人形の影には誰がいるのでしょうね?」
「答えは、これより語られます演目に。どうかお見逃しのありませんよう」
□ ■ □
「おい、間桐雁夜。だいぶ離れたし、いい加減起きてくれ」
「ぇ、ああ……?」
消耗し、侍に投げられ意識をなくしていた雁夜に声がかかる。
どこかで聞き覚えのある声に疲労で霧のかかった頭を必死に巡らせて答えを出す。
「人吉善吉か?」
「おっ、そうだよ。分かってくれたか。助かるぜ」
「それじゃあもう降ろしても構わないかしら?」
どうやら自分は女性に背負われているらしい、と気づく。
さすがに普通なら人吉善吉と役割が逆だろうから、彼女がサーヴァントなのだろうかとそちらに意識を向けると、見覚えのある姿に度肝を抜かれた。
「お前、セイバーのマスター!?」
「ああ、違うんだ。話せば長いんだが彼女も人形なんだよ」
「な、人形?これでか」
背負われ、密着している相手には体温や鼓動も感じる。
首筋からは女性特有のいい香りも
「ぐぇっ!」
「おい、アプ・チャー、何してるんだ!重症人だぞ!」
「ごめんなさいね。暁美ほむらの体を再現しているから身体データは完全に彼女のものだけども、それでもセクハラというものを私が主張してもいいものかしら?」
え、と男二人の声が揃う。
雁夜は消え入るように小さくなる。
善吉はあの時の感触は、などと思い出して悶々とするが
「っだ、大丈夫か雁夜!?立てるか?」
「いや、まあ厳しいが何とかする。ありがとう」
善吉が誤魔化すように地面に転げ落ちた雁夜に手を伸ばす。
その手を雁夜が弱弱しくとる。
「うゎっ!」
「な!?」
二人の間に電流のようなものが駆ける。
そして走馬灯が雪崩れ込むように脳内を犯す。
禅譲葵への想い。黒神めだかへの想い。
遠坂時臣への憧憬と嫉妬と失望。めだかと渡り合うあらゆる人への些細な嫉妬。
蟲に体を蝕まれる苦痛と快楽。しろがねへと体が変えられていく恐怖。
互いの経験が、間桐雁夜のPSIを通じて交換された。
「うわぁ、今のは……?」
「大丈夫かい、人吉君?」
「な、何とかな」
突然の事象に混乱する。
雁夜自身もこの現象についてはまだよく分かっていないのだから当然と言える。
「以前もこんなことがあったが、まあお互いをより深く知ることができたということでここはひとつ、ね?」
「制御できねえのかよ……まあ俺もあまり人様のこと言えたもんじゃねえが」
未だに脳裏に巣食うフェイスレスの残照に怯える身としては笑えない。
アプ・チャーたちを維持するだけでも怪物のことを『理解』し続けなければならないのは人吉にとっても厄介な状態だった。
「どうやらお互いほぼ身一つになってしまったようだね」
「ああ、そうだな……」
「一応私を忘れないでもらいたいのだけども」
アプ・チャーが僅かに口を挟むが、それでも苦しい現状は変わらない。
その欠けを補いたいと間桐雁夜との合流を、そして何か惹かれるところのあった白いサーヴァントのことも求めてきたのだがより追い込まれた事態になっている。
「人吉君、人形を作ったりはできないのかい?」
「人形造りか」
そう。
たしかにそうすれば手ごまは増やせる。
仮に人吉が作れずとも、自動人形の中に自動人形を作れる固体は少なくない。
「一応私が低級のなら作れるけれども。体液も血液があれば私から増やせるし」
しかし、まず材料の問題に突き当たる。
人形の体液を機能させるには人間の血が必要であり、NPCの被害が出る。
あまり積極的に取りたい方策ではない。
それにあまり多くの人形を維持するのは人吉の精神が持つかどうかも自信がなかった。
あまりにも自らをフェイスレスと『誤解』させていては、自分自身がいつかフェイスレスこそが自分だと誤解してしまいそうで恐ろしかった。
「できて一体、位が限界だと思う。それ以上は俺がもつかどうか……」
「そうか。それじゃあもしその時は極上の一体を作らないとね」
雁夜が力づけるように笑みを浮かべる。
善吉もつられるように笑った。
「じゃあしばらくは僕が蟲を飛ばして周囲を探ろう。そしてどこかで休みながら方策を練ろうじゃないか。お互い疲れているようだし」
そう言って手を振ると数匹の蟲が飛ぶ。
同時に何度も咳き込むが、それを何でもないことのようにゆっくりと歩き始めた。
「ちょ、大丈夫なんすか!?」
「気弱なことは言ってられないよ。あまり時間もない」
サーヴァントを失くしたものは6時間後に灰になる。
二人はそのリミットにも怯えなければならないのだ。あまり呑気にはしていられない。
「最低限の休養をとったら動こう。少なくとも一騎はサーヴァントを確保しなければ」
「一騎?」
「ああ、そうだ」
雁夜の顔が自信のある表情へと変わる。
「まず君が3時間そのサーヴァントと契約する、それから僕が契約しなおす。そのリレーでどうにか命を繋げるんじゃないかな」
盲点だった。
誰かとサーヴァントを共有するようなその同盟には極めて密な協力関係が必要となる。
サーヴァントの同意も必要となると、容易く行くとは思えないが、二体を確保するよりはまだ現実味があるように聞こえた。
「ろくに眠れなくなるという欠陥はあるがね。だからこそ少し休養が必要だ。
時間がたてば、さっき僕のバーサーカーを倒した戦場も動く。あそこを蟲で見ておくからその間休むと言い」
最初に話した時とは打って変わって頼れる調子の雁夜に善吉は感心する。
さすがに年の功だろうか。
「ああ。頼りにさせてもらうぜ」
深く頷き、少し気が楽になったように感じながら。
改めて前を向き善吉は歩き始める。
【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]中度のしろがね化
[令呪]残り一画
[装備]箱庭学園生徒会制服
[道具]銃人形のリボルバー(6/6)
[思考・状況]
基本行動方針:キャスター(操祈)を討伐し、最後には優勝する
1.間桐雁夜と協力し、打開策を練る
2.モニター越しに見えたどこかで見たような気がする、しかし知らない男(垣根)が気になる。
[備考]
※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。
※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。
※屋上の挑発に気づきました。
※学園内に他のマスターが居ると認識しています。
※紅月カレンを確認しました。
※キャスター(操祈)を確認しました。
→加えて操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。この効果は未だ続いています。
※セイバー(リンク)を確認しました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※フェイスレスと再契約しました。
※フェイスレスの血液を飲んだことでしろがね化が進行、記憶や知識も獲得しています。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』による操作と『欲視力』により得た他者認識力により、フェイスレスの乗っ取りに抵抗しています。現状精神は乗っ取られていませんが、キャスター(操祈)が脱落し、宝具の効果が消滅した場合は精神が乗っ取られる確率が極めて高くなります。
※バーサーカー(一方通行)陣営と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。
※現在フェイスレスの記憶を利用し、自動人形に自らが造物主だと誤解させ魔力供給することで維持しています。
ただしそのせいで記憶の浸食はフェイスレス消失以前と同等以上の脅威となっています。
※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより四時間以内に帰還しない場合灰となります。
(ああ、もっと僕の力に頼ってくれてもいいんだぜ。元マスター)
雁夜の顔にどす黒い太陽のような笑みが浮かんでいた。
目覚めたPSIにより、雁夜は善吉の記憶の一部が流れ込んだ。
そう、生命の水に溶けていたフェイスレスのものさえも。
一部とはいえ膨大な年月の重なったそれは雁夜の生涯の記憶よりも重く、大きい。
人吉善吉は欲視力という規格外の千里眼に近しい異能により獲得した強靭な自我と、食蜂操祈の能力の影響によってかろうじて凌いだ。
だが間桐雁夜にそんなものはない。
蟲により人より軟になった体と心があるばかりだ。
幸いだったのは生命の水と、PSIという二つのフィルターを介していたことくらい。
疲弊しきった雁夜の表層に浮き出る第二の人格程度に今はとどまっている。
(まあ雁夜くんの人生は僕と同じ失恋の悲劇だし、そこまで話が合わないということはないだろう。夢の中で、ゆっくりお話でもしようじゃないか)
道化師は再び目覚め、今は時を待つ。
だが起き抜けの運動が一つ。
&ruby(フェイスレス){雁夜}は確かに蟲を使ったのだ。
アポリオンという蟲の使い方を彼は誰より『理解』している。
フェイスレスが消失し、人吉がその後を継ぎはしたが、ディアマンティーナのように誤解をせずに止まった人形も多数いた。
ケニスと鹿目まどか人形もそうだった。
彼らは一時機能を停止することで、偶然にも完全に明たちから姿も気配もくらましていたのだ。
そして今フェイスレスの意識の目覚めと共に再び動き始めた。
蟲を通じてフェイスレスの指令を受け、鹿目まどかを模した人形の首を高らかに掲げて金のキャスターのもとへと駆ける。
あたかもそれが金のキャスターの指示であるように。
道化師は夢半ばの存在であっても戦場をかき乱すのだ。
だが、もう一人の死にぞこないが知らず脅威となる。
今はまだ誰も気づいていない、一方通行の負の遺産。
(一方通行ァ…!!どこ行った。あのマスターの行ったほうか……!?)
垣根帝督が最期に放った未元物質のカブトムシの欠片が、舞い落ちた未元物質を喰らい再生しつつある。
未元物質のネットワークは独立している。
聖柱テイトクとは別の存在を確立している未元物質の中に、未だに垣根帝督は生きている。
一方通行が消えたときには意識が確立していなかったが、再生する過程で意識を生み出した。
彼は未だにアサシンである。
再起した時、聖柱テイトクとは別の思惑を持って動き始めるだろう。
【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒、第二人格フェイスレス
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
0.夢の中でいい協力関係を築けるといいなぁ
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:バーサーカーに代わるサーヴァントを手に入れる
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。
※サーヴァント消失を確認(二日目夜)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。
【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】
[状態]魔力消費(大)、ダメージ(大、再生中)
[装備]天使の装い
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:一方通行を殺す。
0.間桐雁夜を追う。
1.一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。
2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。
[備考]
※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
※屋上の異変に気付きました。
※夜科アゲハがマスターであると断定しています。
※リンク、犬養、食峰を確認しています。
※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。
※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。
なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。
※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。
ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。
※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。
※雁夜の暗殺失敗から雁夜が投げられる間の出来事は一切把握しておらず、狂化に伴う視野狭窄で間桐雁夜と一方通行のことしか意識していません。
(待って待って待って待って待って待って、何よあの人形!?あんなの私の知識力に一切ないんですけどお!)
人形の技術自体は学園都市でいくらでも見られそうなものだが、やってることがあまりにいただけない。
鹿目まどかの首を掲げて駆け寄るなど、どう見ても自分が黒幕のようではないか。
(これ最悪ライダーたちにも愛想つかされかねないじゃない!いくら何でもマズいゾ)
「ちょっと、あんなの私知らない――」
「■■■■ーーーーーー!!!」
獣の声が響き渡った。
恐ろしい風貌に似つかわぬ知的な振る舞いをしていた青い悪魔が雄叫びをあげ、一瞬で人形を歯車に還す。
ニューゲートにも目をくれず、人形の掲げていた首を検めるように手に取った。
フェイスレス渾身の人形は巧であった。
月明かりしかない夜とはいえ、半ば理性を喪失していたとはいえ、不動明と美樹さやかの二人を欺きとおしたのだから。
鎧の内側で輝いていたソウルジェムが穢れに満ちた。
美樹さやかの性質が反転する。
彼女と一体となっている明の体内で、先刻呑み込んだ穢れが鈍く反応する。
ソウルジェムに満ちた穢れとは、インキュベーターが地球の生命に見出した負の感情である。
それをエネルギーとするのが彼らの技術。
では、そもそも穢れとは何なのか。
地球の生命のみが持つもの。地球の生命全てを生み出した母なる存在がもたらしたもの。
原初の母ティアマトがあらゆる生命の基とした土壌にして母なる海の名残。
魔術王は、その土と水の混ざった泥をケイオスタイドと名付けた。
美樹さやかの魂に、不動明の霊器にケイオスタイドが満ちていく。
塩基契約(アミノギアス)を起こしたように、二人の体が反転し溶けて混ざり合う。
より巨大に。より強力に。より醜悪に。
現れたのは肉の柱だ。
バベルの塔のように聳え立つ、雄々しく禍々しい怪物の柱。
千を超える眼が全身至る所から敵を睨む。
これにより彼らは名と姿を変えることとなる。
魔女Oktavia von Seckendorffも、大悪魔アモンもいまや偽りの名。
その名を魔神柱アモン。
七つの人類悪が一つ、憐憫の理を持つ獣の一端である。
&color(red){【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 合体】}
&color(red){【不動明(アモン)@デビルマン 合体】}
&color(blue){【魔神柱アモン 出現】}
伊介も。刑兆も。操祈も。ニューゲートですら。
目前の異様に対処しきれずにいる。
青い悪魔が先ほどまでのように姿を変えただけ……ではないのだ。
(感じる魔力がサーヴァントのそれじゃあねえぞ……!くそ、せめて見聞色がマシに使えれば)
ひとまず攻撃をしかけようと構えたニューゲートを、肉の柱が『見下ろす』。
それだかで、ニューゲートの体に衝撃が走る。
瞬きもなく、何かを放ったわけでもないのに、発生した攻撃にさしものニューゲートも対処しきれず負傷する。
「くっ…!」
それでも倒れることはなく、必死に堪えて忠告を飛ばす。
「お前ら逃げろ!奴の視界に入るな!」
「視界に入るなって…こんな多くて目も多い奴相手にどうやって!?」
そう言っている間にもアモンが視線を走らせる。
その眼に映るものが片っ端から焼き払われる悪夢のような光景。
ニューゲートが仲間の前に立ち塞がって決死にそれを防ぐ。
「なんなのよもうこれぇ!」
「あれは魔神柱と呼ばれるものだそうだ」
疑問のような伊介の悲鳴に律儀に答える声があった。
美しい金髪の少女がうっすらと笑みを浮かべて、新たに現れていた。
「あんた、だれ?いつの間に……?」
「失礼。私はルイ・サイファー。そこの魔神柱になってしまった彼とはいささか複雑な関係の者さ。
で、あれが何かという話だが……魔術王の持つ術式が変異したものらしいよ。私も詳しいことはよく分からない。何やら獣の匂いもするしね」
魔術王と獣という単語に操祈の顔色が目に見えて青くなる。
それを愉快そうに眺めながらルイは言葉を続けた。
「まああれ単体なら冠位級のものじゃあない。トップサーヴァントであれば単騎で相手取れるし、並のサーヴァントでも数騎がかりなら渡り合えるだろう。数騎がかりなら、ね。
視線そのものが攻撃となっているあれは恐らく『邪視』だな。視線に呪いが宿るというやつだ。
極めた指差しの呪いが物理威力を伴うように、究極の邪視は見ただけでそのものを焼き尽くす。ガンドの究極がフィンの一撃と呼ばれるなら、あれはさしずめバロールの一瞥といったところかな」
巧みに視線を躱しながら、ルイは朗々と語った。
そして操祈はその言葉の意味が分かるだけに戦力差に絶望を深める。
「……おい、ライダー」
必死に逃げながらも刑兆はまだ諦めない。
真っすぐ己がサーヴァントに期待を向ける。
「聞いたか?たかがサーヴァント数騎でいいんだってよ。だったらお前なら大丈夫だろ」
負傷した体で悩むようなニューゲートに檄を飛ばす。
「迷ってんじゃねえ。さっき失敗したんなら今度こそやり遂げろ。黙って死ぬ気かよ」
「そうよ!!伊介まだこんなとこで死にたくないんだからーーー!!!ないかあるならやりなさいよダメ親父ーー!!!」
「……グララララ。言うじゃねえか、クソガキどもが」
叫ぶ二人の若者に背を押されるように、呪いの中へ一歩踏み出す。
「感謝するぜ、キャスター。お前がここらから人を払ってくれたから全力でやれる。そしてお前たちにもだ、刑兆に伊介。ガキどもに急かされてちゃせわねーよなァ!」
潮風が吹き抜けた。
海が近いとはいえ、それでもあまりにも濃い潮の香り。
世界が歪む。
かつて世界の頂に手をかけた男の力で、今再び世界が傾く。
「おれは、白ひげだ!おれこそが、この時代の名こそが、白ひげだァ!!!」
アモンも、ルイも、その場の全員が新たな世界へと導かれる。
歴史上で数えるほどしかない、その中でも唯一初代海賊王の息子が参戦した白ひげ海賊団の総力を結集した戦の地。
そこは崩落した正義の砦、マリンフォード。
正義の代わりに自由の旗印を掲げる荒くれ者どもが集う。
「来たぜ、おやっさーん!」
「また会えて嬉しいぜお前らぁ!!」
「いくぜ野郎どもォ!!!」
空気を震わす鬨の声が響き渡る。
異形の化け物を前にしてなお気圧されぬ、何より誇らしい大海賊白ひげの息子たち。
不死鳥が飛んでいる。
魚人が泳いでいる。
炎がいきり立っている。
金剛石が闊歩している。
魔神柱に勝るとも劣らぬ巨大な戦士がいる。
「すげえ……これが全員サーヴァントか」
「おれの息子たちよ」
宝具、『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』を展開して刑兆、操祈、伊介とともにそこで悠然と構える。
懐かしい仲間の姿に目頭を熱くしながら、船にある小電伝虫で指示を下す。
海賊団が一斉に、魔神柱へと攻撃を開始する。
砲撃が飛び、カトラスで斬りかかり、魔神柱といえど耐えきれないと思われた。
だが突如、魔神柱は姿を消した。
消滅したかと思うがあまりに早すぎる。
そして再び魔神柱が出現する。
『海征し陸駆ける白鯨(モビーディック号)』の浮かぶ海面のすぐ近くに。
それはアモンが新たに得た力。
合体した魔女Oktavia von Seckendorffの持つ、水から水へと転移する能力。
白ひげの固有結界は海の上を主に再現するものであったため、ニューゲートにとってのホームはアモンにとっても得意な戦場へとなってしまったのだ。
一斉攻撃の隙をついて背後に回られ、もはや出せる札はニューゲートたちにはない。
固有結界の内部では助けも望めない。結界を破り侵入するなど、できるものではない。
だがここに例外が存在する。
マリンフォード頂上戦争という未曽有の嵐に飛び込むことのできる規格外の男が歴史上に恐らくはただの一人だけ。
はるか上空から勇ましい雄叫びが響く。
その男は間違っても頭脳明晰とは言えない。善人でもない。
だから目の前で誰かが危機に陥っているのなら、きっと。
「ゴムゴムのぉーーーー!!!」
雄叫びを上げて、男が上空から落ちてくる。
男の右腕が黒く染まり、同時に巨人のように大きく肥大する。
その声を聞いて、先ほどまで前線にいたはずの男が飛んで戻る。炎へと姿を転じ、父と慕う男のもとへ。杯を交わした弟のもとへ。
「“&ruby(レッドホーク){火拳銃}”!!」
「“火拳”!!」
二つの拳が魔神柱を吹き飛ばす。
「なんとなく殴っといた!」
「変わらねえなあ、ルフィ!」
戦場はより自由に、混沌になっていく。
【A-4/南部、白ひげが固有結界展開/二日目・未明】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔神柱アモン、魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0:まどかの死に絶望
1:■■■ーーーーーーーーーーー!!
[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。
※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。
※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。
※まどかへの連絡先を知りません。
※ほむらと連絡先を交換しました。
【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]魔神柱アモン、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
0:マスターの友人を守れなかった無力さとその死に様に絶望
1:■■■ーーーーーーーーーーー!!
[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
→ケイオスタイドとして内側から明を侵食し、霊器を魔神柱に変えるきっかけとなりました。
※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。
※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。
[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました
※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。
※学園の事件を知りました。
※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。
※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。
※現在合体して魔神柱アモンになっています。
【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1:目の前の悪魔染みた怪物に対応。
2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4:公衆電話の破壊は保留。
[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。
【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(小、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.魔神柱なるものの撃退。
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。
※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。
【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(微小)微熱、PSIに覚醒
[令呪]残り三画
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす
0:食蜂操祈に心を許さない。
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。
2:学園と家にはあまり近付かない。
[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。
※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。
[共通備考]
※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。
※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。
※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。
※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。
※ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による)
【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】
[状態]ダメージ(大)、魔力消費(大)
[装備]
[道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆
1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。鹿目まどかとか今更……?
2:犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。
3:図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。
4:犬飼には一応警戒する
[備考]
※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。
※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。
※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。
※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。
※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。
それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。
※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。
※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。
※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。
※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。
※伊介の能力を心理系(PSIでいうならトランス系)のものと予測しています。
※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)、操祈は共有しています。
•アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。サーヴァントならパラメータも把握。
•アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。
•アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。
•ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。
•善吉の技能と『欲視力』。
•カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。
•まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。
•ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。
•タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。
•ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。
•ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。
•セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。二刀流の可能性を警戒。
•セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。
•アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。
リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。
何かを撃ち出す宝具を持っているはず。
•ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。
•ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。
•刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。
•ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。
•キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。
•能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。
•麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。
•魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。
•天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。
•アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。
•魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。
•スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。
•幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。
•不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。
→以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。
それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。
【ルイ・サイファー@真・女神転生STRANGEJOURNEY】
[状態]健康
[令呪]???
[装備]???
[道具]???
[思考・状況]
基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を
1.基本的に観客に徹する
2.受肉したアモンこと明を同胞の待つ地獄に送る
3.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい
4.神々との闘争に備えて準備
5.戦力増強のため了と子を産むことも考える
[備考]
※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。
両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。
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|~|バーサーク・アサシン([[垣根帝督]])|~|
|061:[[Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー]]|[[人吉善吉]]|~|
|~|[[鹿目まどか]]&ライダー([[モンキー・D・ルフィ]])|066:[[REBIRTH~女神転生~]]|
|062:[[英雄たちの交響曲]]|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])|~|
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|~|[[美樹さやか]]&バーサーカー([[不動明]])|~|
|~|ルイ・サイファー|~|
2018-12-25T00:15:33+09:00
1545664533
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おかえり聖杯戦争
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/160.html
**おかえり聖杯戦争◆wd6lXpjSKY
夜の街を駆け抜ける二つの影。
夜科アゲハは奥歯を噛み締め、月に照らされながら北を目指していた。
靴裏とアスファルトの擦れる音が耳に残る中、彼は自分の記憶に振り回される。
「呑気に寝ている場合じゃねえ……!」
起床時には学園の崩壊という一報に驚き、覚醒せぬ頭では思考が回らなかった。
異形の化物の襲来により、考えるよりも先に身体が動いていた。
戦場へ向かう真っ最中であるが、火蓋が切って落とされるのは数刻先である。故に脳に安らぎの一時が生まれていた。
夜科アゲハの記憶に差し込まれるは主催者――天戯弥勒の声だった。
時計の針が十二と重なりし瞬間、彼の声が聖杯戦争の参加者に届いていたが、肝心の夜科アゲハは瞳を閉じ、寝てしまった。
「アサシンの脱落――人吉のとは別のサーヴァントが落ちた。
変な化物が動いていることを考えれば、昼よりも他の奴らが活発になっているのは明らかじゃねえか……っ!」
目覚めと同時に記憶に混在する天戯弥勒の声はやけに透明だった。
聞いていない言葉は間違いなく不純物である。他人に記憶を改竄されたような、一種のトランスに陥ったとも捉えられる。
しかし、感じぬ違和感が夜科アゲハの心を静かに侵食する。まるで聖杯戦争の記憶を自然と理解していた始まりと同じ感覚である。
「学園がぶっ壊れたってのはフェイクの可能性もあるが……テレビでやってんならマジだよな。
巨人がいたのも多分……今更俺らより馬鹿デケえ奴がいたって、ロボットが出ても不思議だなんてことはありえない」
太陽が昇っている間に通っていた学園の崩壊は、偽りの学び舎ながら夜科アゲハの興味を惹くには十分過ぎる情報だった。
複数の聖杯戦争参加者が集う規格外の火薬庫が弾け飛んだ。そう考えれば理解し難い話ではあるまい。
問題は戦闘が行われていたことである。彼は全てのマスターやサーヴァントと出会った訳ではない。
未だ見えぬ脅威、或いは仲間になり得る存在かもしれないが、何よりも圧倒的な情報不足である。
寝ていた自分を殴りたい気持ちに駆られ、過去に飛べるならば睡眠を妨害していただろう。
そして極めつけは――
「俺は――落ちる前に全てを片付けてやる」
夜空を見上げれば満月が世界を嘲笑っていた。
天戯弥勒の言葉の幕切れは比喩でも無ければ、詩的に表した訳でも無かったのだ。
偽りないその意味は月が世界の崩壊を物語っていた。彼曰く聖杯戦争のリミットである。
世界の終わりが見えたこと。
聖杯戦争に新たな脱落者が現れたこと。
アッシュフォード学園が崩壊してしまったこと。
謎の巨人が現れたこと。
地震や津波の類が発生していること。
異形の化物が現れたこと。
――金のキャスターの手先が接触してきたこと。
眠気を吹き飛ばすには充分だろう。
脳に叩き込まれた多くの情報が夜科アゲハの脳を刺激し、彼の意識を覚醒させる。
次に自分が行うべき行動は何か。場所は、敵は、味方は、天戯弥勒は――人吉善吉は。
大地を蹴り上げる足に自然と力が籠もる。
肌で風を切り、ちらほらと視界に入り込む通行人を避け、着実に北へ向かう。
金のキャスターによって操られた人間が怯えていたのは何故なのか。
幾つかのパターンが考えられるが、夜科アゲハの思考は唯一つの答えを最速で弾き出していた。
不敵な笑みを浮かべ、少々ではあるがこんな答えに満足してしまう自分に恥ずかしさをも覚えてしまう。
「辿り着けば、全てがわかるんだよ……!」
などと、思考を放棄出来ればどれだけ楽だっただろうか。
言葉では簡単に吐き捨てるが、彼の脳内は未だに出口の見えない迷路を彷徨っている。
情報の処理と理解を締め付けるは寝ていた自分への愚かさである。
少しでも動いていれば――状況は全てが変わっていたかも知れない。
彼は全てを知らず、未来の海賊王が固有結界を発動したことも、とある世界の頂点と天使と悪魔の世界に踏み入った二番手の決戦も。
世界の壁を超越した対立も、全てに出遅れている。彼がその事実に辿り着くことは無いが、取り残される感覚だけが心を埋め尽くす。
故に少しでも前へ。
北上すれば人吉善吉や金のキャスターとの接触する可能性が高い。
月が世界に迫ろうが、夜科アゲハの行動は変わらず、彼は己の為すべきことを――天戯弥勒の元へ辿り着け。
「そこら辺から盗ん……拝借してきたぜっ! 早く後ろに乗りな!」
考え事に夢中になっていたのか、夜科アゲハはバイクが並走するまでエンジン音にすら気付かなかったようだ。
横目を流せば相棒であるセイバー纏流子がヘルメットも被らずに、じゃじゃ馬に跨っていた。
窃盗に注意する筈もなく、夜科アゲハは右足を振り上げ宙へ跳び、纏流子が待ってましたと言わんばかりに軽くブレーキを握り締めた。
彼らは所謂、不良の類。窃盗の一つや二つ、違法走行程度に口を挟む人種とは掛け離れた存在である。
「飛ばしてくれ! 俺達の出遅れた分を一気に回収してくれ!」
「言われなくても飛ばしてやるさ、舌を噛むなよ手を離すなよ? そんじゃあ――飛ばすぜぇ!!」
夜科アゲハが後ろに跨った瞬間、バイクは唸りを上げ一瞬でフルスロットルへ。
アスファルトに焦げ付くは彼らの思いか、溢れ出る熱を表現するかのようだった。
「昼も大概だったけどよ、夜になると一層暴れてやがる」
「なあ纏、アサシンが脱落したって話だけど、他に何体のサーヴァントが落ちたと思う」
「あー……知らねえな。エスパーじゃねえし。でも、確実に他の奴もくたばってるさ」
「一応聞くけど、根拠はあるのか?」
「――しっかり捕まってろ、ちょいとこっちも暴れるぜ」
マスターの問を中断し、サーヴァントたる纏流子はハンドルを傾ける。
身体を襲う衝撃に夜科アゲハは顔を歪め、文句の一つでも言い放とうとした瞬間だった。
先程まで走っていた地点に何かが降って来た。
ハンドルから離れた纏流子の右腕が掴むは紅き鋏の片割れ――片太刀バサミ。
その刀身はハサミの冠に似合わず刀と同義かそれ以上。月夜を反射し紅に纏流子の鋭い瞳が浮かび上がる。
「ん~、誰だお前?」
不気味な襲来者を夜科アゲハは壊れた人形のような存在だと感じ取る。
人間を型どってはいるが、疎らに歪な造形、見た者を不安にさせるような表情や挙動。
寝起きの襲撃者はどこかファンタジーやメルヘンらしさを匂わせていたが、今回は違う。
生理的な恐怖や悪寒を引き立たせる存在は、奥に製作者の顔を覗かせているようにも感じてしまう。
「お前が誰だって話じゃねえかぁ!!」
空から降って来た人形が地面に着地する寸前の出来事である。
纏流子は片手運転で器用に体勢を整えたまま接近すると、空いた右腕を空へ伸ばす。
握られた片太刀バサミが振り下ろされ、人形はあっという間に一刀両断。
バイクが道路を走り抜け、からんころんと飛び散った部品が大地を転がる音だけが人形の結末を演出する。
「……なんなんだよ、あいつ」
「さあな。どうやら人違いっぽいから誰かを狙ってたみたいだったけどな」
「喋る服に戦国武将に悪魔に人形か……なんでもありだよな」
「わけが分からねえのがサーヴァントみたいなところあるからな」
あの人形はサーヴァントじゃないからな。
そう付け加えた纏流子は一切振り向かずにバイクを走らせる。
襲撃者は確実に誰かを狙っていた。それは恐らく創造主に命令されていたのだろう。
推測ではあるが魔力に反応しこちらを襲って来たのだろうか。
真実を包む闇を晴らすのは現状じゃ不可能だ。だが、下っ端を使役し暗躍している存在は認識した。
人形を使役するサーヴァント――話に聞いていたキャスターであろう。
金のキャスターとは異なる存在に纏流子は遭遇しておらず、ランサーである前田慶次らからの又聞きでしか把握していない。
しかし、碌でもない人物であることは確かであり、キャスターの英霊は揃いも揃って悪趣味な連中なのだろうか。
ふと夜空を見上げれば月。
生前の纏流子は大気圏を突破し宇宙へ到達したことを思い出す。
最悪の結末を迎える前に自分が正面から破壊することも視野に入れるべきだろうか。
などと考えていると、必要以上に黙るマスターに気を取られてしまいため息を零す。
「睡眠も大切だって」
「……うるせえ」
「出遅れた感じはあるけどよ、目的はドンパチすることか? 見境なしに喧嘩をふっかけることか? 違うよな」
いつまでもくよくよすんな、らしくない。
そう言葉を投げ、纏流子の笑いが風に流れて後方へ。
「絶対に姉キのところへ帰るんだろ? だったら止まらねえで、やることがあんだろ」
振り向いた彼女の口から歯が覗き、無邪気な笑顔を見れば夜科アゲハは考えることが馬鹿らしくなっていた。
最も自分のやるべきことを見失ってもいなければ、落ち込んでいた訳にも非ず。ただ、ケジメが必要だった。
睡眠の選択は戦局を長い目で見据えれば悪い訳ではなく、体力温存の面から考えれば最善の可能性すらある。
結果的に人吉善吉の捜索を打ち切ったこと。言い換えればダチを見捨てたことが、夜科アゲハの心を静かに苦しめていたのかもしれない。
「そうだな……あぁ、そうだよな。
さっさと行こうぜ。俺にはやらなくちゃいけないことがまだまだあるんだ……こんなところじゃ止まれねえ」
「全くだ。これまで散々寝てた分を取り返してやろうぜ! 盛り上がっているところに悪いが、まだあたし達がいるんだよ」
人知れず輪から取り残された彼らがバイクに跨がり夜を駆け抜ける。
舞台を照らす灯りが増え、カーテンの切れ間から覗く役者も舞台に躍り出た。
だが、彼らが残っている。参加者にして唯一、主催者たる天戯弥勒を知る彼が残っているのだ。
之より戦場に帰還するは一人の男。
夜科アゲハ――沈黙を破り、再び舞台の上で踊り狂う。
【B-4/二日目・未明】
【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[装備]なし
[道具]グリーフシード×1
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
※グリーフシードを地球外由来のもの、イルミナに近い存在と推察しています。
【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(小)
[装備]バイク@現地調達
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
3.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
4.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
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|067:[[We go! ……and I'm home]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|069:[[とある少女の前奏曲]]|
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|064:[[きっとどこかに繋がる世界]]|[[夜科アゲハ]]&セイバー([[纏流子]])||
2018-12-24T23:53:09+09:00
1545663189
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きっとどこかに繋がる世界
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/153.html
*きっとどこかに繋がる世界◆A23CJmo9LE
「さっさと起きなアゲハ!」
自室でまどろむアゲハの耳に響いたのは姉、吹雪の声だった。
切羽詰まった様子のそれに寝過ごしたかと瞼をこするが、部屋の時計を見ると眠りに落ちて数時間、まだ夜明け前の時間帯だった。
「ンだよ、姉キ、こんな時間に」
「地震があったの!津波の危険があるから高台に避難!」
「はあ!?マジかよ!?」
聖杯戦争の最中だってのにそんな面倒くさいことまで起こるのか、と突然の事態に寝ぼけた頭を覚醒させる。
思考を整理するだけの意識が戻ると、アゲハは真っ先に窓から外を確認した。
その視界に映ったのは恐らく避難しているであろう人影がいくつか、そして空に輝く不気味な貌を浮かべた月。
「おい、これ……夢じゃねえよな?」
起きてみると通達の情報がなぜか認識できていた。
それだけでもなかなかファンタジーだが、アサシンの脱落はともかくとして、迫りくる月の脅威は文字通り天を仰ぐものだった。
(トランスの応用か?そんなこともできたのかあいつ)
今まで見せていなかった能力の可能性に疑問を覚えるが、それはそれとして避難している人たちが見えたことで事態に現実味を覚える。
欠伸をしながら適当に上着を見繕い、外に出られるように心身ともに整えていく。
「チンタラしない!急ぐ!」
「うるっせえよ、着替えくらいさせろ!」
バタバタと寝間着を脱ぎ捨て、最低限の防寒具と貴重品を持って避難の準備を進める。
即座に支度を済ませて玄関へ向かっていくと、その道中にはテレビのチャンネルを回している流子がいた。
「何やってんだよ、纏。急いで避難――」
そこまで口にして疑問が湧く。
サーヴァントに地震だの津波だのは有効なのだろうか、と。
もし効かないならこれだけ呑気しているのも納得するが、人間である自分たちはそうはいかないのだからそのあたりは気にしてほしいとアゲハは少しだが口を尖らせた。
「おい、纏。こっちは津波とか避難案件なんだ。頼むよ」
寝起きなのもあって少しばかりキツイ言い方になってしまう。
流子は少しだけそちらに視線をやるが、すぐにテレビに視線を戻し、少しおいてまたリモコンを弄り始める。
「さっきからニュース漁ってるけどよー、津波の危険なんてテロップ出てこねえぞ。
それどころか地震に関してもほとんど取り上げてねえし」
現代人ならば半ば習慣にまでなっている行動、地震が来たらニュースを確認する。
近現代の英霊である流子も当然のようにそうした。
しかしどこを見ても津波という単語は出てこないのだ。
流子、アゲハは揃って首をひねる。
「姉キ、津波が来るから避難しろってどこから聞いたんだ?」
「え?さっきお隣さんが荷物纏めてそう言ってきたのよ」
吹雪の返事を聞き終えると即座にアゲハは外に飛び出した。
そして外を歩く人を捕まえて同じように掴みかかるようにして質問する。
「おい、アンタも避難してるんだろ?誰から津波が――」
来るなんて聞いた、と口にしようとしたところで言葉に詰まる。
そして咄嗟にライズまで発動して一足で大きく距離をとる。
「津波…そうですよ。津波が来るから早く避難しないと」
そう答える男性はアゲハの態度を気にも留めないように、穏やかな調子で答えた。
その目の中に、星のようなものを浮かべて。
夜科アゲハはそれを何度か見た覚えがあった。
購買に並んでいた、大量の食品を買い占めていった生徒にも。
危うく舌を噛み切りそうになった人吉善吉の瞳にも浮かんでいたもの。
――――あのキャスターの、痕跡。
(なんだ!?あいつ、地震と津波なんてデマ流して何しようとしてんだ?)
人を避難させて……人払いで、いなくなった隙に何かするつもりなのか。
あるいはどこか避難場所に人を集めて何かするつもりなのか。
とりあえず目の前の男にどういうつもりなのかダメもとで聞いてみるかと、拳を握ったところで。
「はああああああ!?学園が壊れたあ!?」
家の中からやかましい声が響く。
纏の声だ、そう思ってそちらに視線をやる。
その振り向きは偶然だった。
故に、それに気付いて反応できたのも偶然だった。
視界に飛び込んできた異形の化け物。
不気味に赤い、芋虫のような体。
その背には薔薇の花弁のような蝶の羽。
随所から飛び出た茨のような無数の足。
全身で主張している無数の眼。
禁人種(タヴ―)ともどことなく違う化け物が高速で、何かから逃げるように飛来してきた。
アゲハは再びライズを発動し、その軌道上から避難する。
飛来する化け物のコースが操られているらしき男へと向かっているのに気付き、交差する瞬間反射的に化け物に蹴りを入れた。
それによって化け物の軌道は僅かに変わり、地面へと向かう羽目になるが。
それでも、男を巻き込むコースであることは変わりなく、接触と同時に車に人が撥ねられるような音を立てて男を吹き飛ばす。
化け物はアゲハの蹴りで地面へ叩きつけられ大きな音を立てて損傷し、男は化け物に轢かれて悲鳴を上げる。
「痛ッ…!あ、ひ、うわあああああああああああ!」
ぶつかった衝撃で折れたか外れたか、右肩から先を力なくぶら下げて逃げ去っていく男。
怪物もその声に反応するように唸り声をあげて起き上がる。
「おい、何の騒ぎだ!?」
その風景を家から顔を出した流子が目にする。
逃げている男の背中、謎の怪物、それと向き合うアゲハ。
危機と察し、即座に片太刀バサミを取り出して怪物へと斬りかかる。
「おらッ!」
起き上がったばかりの怪物、魔女Gertrudには躱せない一閃だった。
だがそこに別の存在が割り込み、怪物を救う。
カイゼル髭を蓄えた、タンポポの綿毛のような怪物、使い魔Anthonyという新たな怪物がその手に持ったハサミで流子の一太刀を受け止めた。
一体では力負けするが、十数体の使い魔が力を合わせて造園用のハサミを束ね、片太刀バサミに拮抗し弾き飛ばす。
それによって僅かに空白ができ、その瞬間を利用してアゲハと流子は並び立ち、Gertrudは態勢を整える。
「何だ、あれ?」
「分かんねえ。いきなりどっかから飛んできやがった」
間違っても吹雪のもとにはいかせない、と二人して意気込むが。
Gertrudはそれを無視するように反転し、かなたへと飛び去ろうとする。
「あ、逃げんのかテメエ!」
「いい、纏!俺がやる!」
叫びとともにアゲハの右掌に小さな黒い星が顕現する。
それを見た流子はとっさに霊体化し、魔力をできる限り抑える。
「暴王(メルゼズ)」
小さなつぶやきと共に流星を開放すると、それは真っすぐにGertrudへと向かって放たれる。
そして着弾、内部の一切を蹂躙し呻き声をあげる暇もなく魔女は絶命した。
主を失った使い魔たちも後を追うように姿を消していく。
「やった、か」
「ああ」
再び実体化した流子が確かめるように小さく語り掛けた。
歯を食いしばるように、アゲハも小さな声でそれに答える。
カラン、とそんな言葉に重なるような小さな音がした。
コンクリートの地面に何かが落ちて転がる音だ。
二人して足元に目をやると、小さな球体を中心とした奇妙な物体が転がっていた。
茨模様の黒い玉、下に針状の金属が伸び、上部には蝶のようなエンブレムが刻まれている、見たこともない材質のオブジェ。
特に危険物ではないだろうとアゲハは手に取って観察し始める。
「敵を倒したら落としたアイテムって……ゲームかよ」
しかし一体何なのか一見してわからない。
武器の類ではない。
インテリアなら必要ない。
一通り手の内で弄び、覗き込んできた流子に投げ渡す。
受け取った流子も首をかしげるばかりだが
『これは恐らくこの星のものではないな。おそらく生命戦維(われわれ)に近い、地球外のものが基になった存在だ』
「鮮血?」
何かに気付いたのは流子の身に着けたセーラー服、鮮血だった。
その言葉を受けて流子もアゲハも思い至る。
先ほどの怪物は禁人種(タヴ―)/カバーズに近い存在で、この球体はイルミナ/極制服のようなものかと。
「うまく使えば何か役に立つかもな……鮮血、これも吸収できたりするか?」
『何だかよく分からないものを無闇に口にするのは、あまり……そもそも繊維でないからな』
用途には悩むが何かに使えるかもしれないとひとまずアゲハが持つことにする。
一段落ついたところでアゲハの放り出した荷物などを纏めて吹雪が家から出てきた。
「アゲハ、あんたニュース見てなかったけど。何だかアッシュフォード学園が壊れちゃったらしいのよ……」
「はぁ?なんだそ、れ」
ぶっ飛んだニュースに怪訝な顔をするアゲハだったが、今が聖杯戦争のただ中ということを考えればなくはないかと思い返す。
腕利きのサイキッカーなら成し得る事象だ、サーヴァントなら容易くやってのけるだろうと空恐ろしく思いながらも納得する。
「深夜だったから幸い被害者はいないみたいだし、流子ちゃんのお姉さんも大丈夫だとは思うけど。
災害時の避難場所ってあの学園じゃない?だからどうしようかと思ってたんだけど、どこか思い当たる場所ある?」
行く当てを失って三人は悩むことになる、ように傍からは見える。
吹雪は避難先に思考を巡らせ、他二人は聖杯戦争について考えているが。
「てか壊れるって……何があったんだ?」
「さあ。巨人とか意味わかんない目撃情報もあるみたいだけど、たぶんこの地震のせいじゃない?」
考える吹雪をよそに、アゲハもまた思考する。
避難するべきなのか否か。しないとしてもどうやってこの姉を説得するのか。
ひとまず状況を共有すべきかと流子に念話を繋ぐ。
『あ~、纏。伝え損ねてたんだけどさ、さっきの男はあのキャスターに操られて地震とか津波から避難しろって言ってたみたいなんだよ』
『はあ?どういうことだよそれ』
『いや俺にもよくわかんねえけど、あいつが何かやってるってことは下手に避難とかしてあいつの思い通りに動くのはまずいんじゃねえか?』
策謀の気配を感じる。
学園で暗躍し、多数の主従に囲まれた窮地においても逃げ延びたあのキャスターの思う通りに動くのはあまりに危険に思えた。
『避難場所が学園でそこが壊れたってことは、そこに人を集めて一網打尽にしようとしてたとかさ』
『お前は寝てたから分からないかもしれねえけど、地震があったのはついさっきだ。さすがにこの短時間で学園まで人集めるのは無理だ』
頭をひねるが、お世辞にも頭脳派とは言い難いと自覚する二人、相手の思考を読むというのは難しいとすぐに労力を別方向に向ける。
自分たちはいかに動くべきかに。
先に定めたのはアゲハだった。
「で、考えてるみたいだけど二人はどこか避難のあて浮かんだ?」
その様子を察した吹雪がそれを促す。
一応は姉、ということか弟の変化に敏い。
「悪い、姉キは先にどっか避難しててくれ」
「ちょっと何言ってんのアゲハ!?」
しかし答えた内容は予想できるものではなかったか、怒声に近い声が吹雪の口から洩れる。
流子も疑問を表情に浮かべ、問いただそうとするがアゲハが念話でそれに先んじる。
『あの化け物、明らかにやる気がなかった。っつうか何かから逃げてた。
いるんだ。海の方に、あの化け物が逃げ出すようなおっかねえ奴……多分地震を起こした奴と、もしかするとあのキャスターが。
あのキャスターたちが川に飛び込んだならたどり着くのは多分海の方だろ。
地震だとか広めてるってことは誰か来たらあいつらにとって都合が悪いってことかもしれないし。
何よりあいつらがそこにいるなら、もしかしたら人吉の奴も向かってるかもしれねー』
とうに人吉の消失までのリミットは過ぎている。
通達の情報によると誰か一人帰還したらしいが、あの男が負けたまんまでいられるとは、リベンジもせず帰るような男には思えなかった。
拳を交えたアゲハだからこそ、そう思えた。
ならば新たなサーヴァントを得た彼が何をするか……あの金のキャスターに挑むのでは、この先に彼がいるのではとそう思えてならなかった。
「友達が取り残されてるかもしれないんだ。だからそれだけ確かめたいんだよ」
二人に向けてアゲハはそう告げる。
当初の目標としていた学園にいくのは最早叶いそうにない、と流子は押し黙る。
対照的に吹雪は感情を抑えるようにだが、アゲハに対してはっきり反対の言葉を告げた。
「アンタね……気持ちは分かるけど、そういうのはまず自分の安全を確保してからでしょ。アンタが無茶してどうすんの」
弟を心配する色を目に浮かべて、力づくでも連れて行くとアゲハに手を伸ばす吹雪。
そこへアゲハを庇うように、自信に満ちた笑みを浮かべて流子が割り込んだ。
「大丈夫だよ、あたしもついてく。いざとなったら、あたしが首根っこ掴まえてでも避難させるからさ」
その雰囲気にどこか頼れるものを感じ、吹雪の心境が和らいでいく。
そして小さくため息をつくと、ついにはアゲハへと伸ばした手を引いた。
「本当に、いい娘を彼女にしたね。あんたにはもったいない」
「「だから彼女じゃないって!」」
何度目かになるやりとりを繰り返し、そのむず痒い空気を払拭するようにアゲハは話題を戻した。
「で、姉キはどこに避難するか思いついた?」
津波の情報はデマだとしても、避難を止めるほどの説得力のある材料はない。
いや、地震があったのは流子も確かだと証言しているし、実際に起こる可能性はある。
ここで吹雪の避難を止めるのはあまりにも不自然で、まず納得しないだろうと、ひとまずの合流地点をさだめようとする。
投げっぱなしな発言に吹雪の顔に呆れた笑みが浮かぶが、少し考えて思いついた案を述べた。
「ホテルや病院の方に行きたいけど、川に近づくのも津波だと危ないし……あそこ。この道真っすぐ行ったところに結構大きな公園があるでしょ。
間桐さんっていう大きなお屋敷が近くにあるやつ。そこにひとまず避難しているから、アンタも友達見つけて急いで合流しなさい」
この地で過ごした時間のあまりに短いアゲハにそれが具体的にどこかは浮かばなかったが、それだけの情報があればなんとかなるだろうと高を括り、頷く。
「いってらっしゃいは言わないわよ。どうせすぐにまた会うんだし……でしょ?」
「…ああ、当たり前だろ」
それだけ言葉を交わして、歩き出した姉の背中を見送る。
余計な騒ぎは避けられた、と安堵し。
そしてこれから新たな面倒ごとに首を突っ込むことを考えて少し気が重くなる二人。
「……悪いな、俺の勝手で」
「何かしこまってんだよ今さら。気にすんなって」
仮初とは言え姉を心配する、その気持ちはアゲハにもよく分かる。
未だ視界に映る姉……のことも複雑な思いはあれど気にかけているのだから。
それを事態が急転したとはいえ、後回しにする判断をしたのに罪悪感が湧き上がるが。
「さっきのバケモノが逃げてくるようなやべー奴、たぶん地震を起こすやつがいるんだろ。
もしかしたら学園をぶっ壊したのにも関係あるかもしれねえし。
少なくともあのキャスターが関わってるんなら、人吉のためにも放っとけないだろ」
軽くアゲハの背中を叩いて、口の端に笑みを浮かべてそう言葉を紡ぐ。
言葉以上に、その思いに俯きそうだったアゲハの視線を目指す地、前方へと向く。
流子もまた視線をアゲハと同じ方角へ向け、肩を並べて歩き始める。
――――最後に、思い出したように一言述べた。
「ああ、でもこれだけは言っとく。姉さんのこと、大事にしろよ」
それをきっかけに現代で交わした姉との最後のやり取りがアゲハの脳裏に蘇る。
エルモア・ウッドを出て未来へと向かった日、吹雪のもとへと帰る約束をした。
その約束は、本当の意味では未だに果たせていない。
「どうした?」
「いや、絶対姉キのところに帰らなきゃなって、考えてた」
「当たり前だろ……じゃ、行くか」
「おう」
待っていてくれ、と心中で姉に向けて呟き。
待っていやがれ、と天戯弥勒への決意を新たにした。
【B-4/アゲハ自宅/二日目・未明】
【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(小)
[装備]なし
[道具]グリーフシード×1
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
※グリーフシードを地球外由来のもの、イルミナに近い存在と推察しています。
【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(小)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。
2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。
3.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
4.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
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|063:[[呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|065-a:[[聖なる柱聳え立つとき]]|
|063:[[呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|065-a:[[聖なる柱聳え立つとき]]|
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|055:[[僅かな休息]|[[夜科アゲハ]]&セイバー([[纏流子]])|068:[[おかえり聖杯戦争]]|
2018-12-24T23:47:05+09:00
1545662825
-
僅かな休息
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/152.html
*僅かな休息 ◆wd6lXpjSKY
誰にも罪は無いが、渋滞に巻き込まれると苛立ちが生まれてしまう。
罰を与えるわけではないが、一人の運転手は八つ当たりのようにクラクションを鳴らす。
「あーあー! さっさと進めや……」
悪態をつきながら一向に進まない前方の乗用車を見つめる纏流子。
邪魔なモンは斬る――そんな方針ではあるが、常識の範囲内では関係ない。
車から降りてぶった斬って道を空ける。そんなことが許されるはずが無い。無論、するつもりも無い。
「もう人吉の姿も見えなくなっちまったな」
「見えなくも何も最初から見えてやしねえだろ。
なぁアゲハ。こっから人吉を見つけるってのは流石に無理がある」
「解ってるよ……これじゃあ橋の向こうに行ってる可能性もあるしな」
人吉善吉を捜索するために車を走らせていた夜科アゲハとセイバー、纏流子。
人形を使役するキャスターに連れ去られたようだが、完全に追跡するアテが無くなってしまった。
車を飛ばせば少しは姿を発見出来るかと思っていたが、まさかの渋滞に巻き込まれてしまう。
夜という仕事帰りの時間と重なってしまったこと。
もう一つは彼ら――聖杯戦争参加者が起こした戦闘の余波で交通規制が始まっていた。
麦わら帽子のライダーが一般人を気絶させてしまったこと。
他にも響く銃声や轟音は日常に似合わない不協和音であり、住民にとって大きな恐怖となっている。
一種のパニック現象に近い今、マスコミも多く集まっており自由に身動きが出来ない。
「なぁ纏。これ盗んできた車だよな?」
「当然だろ。あたしが車持ってる訳ないだろ」
「足が付いたら面倒だ。そこら辺に乗り捨てて、単車でも何でもいいから新しいのパクって帰るぞ」
助手席に座っているアゲハが提案した内容は正直に言って褒められるものではない。むしろ罪である。
しかし盗難届を出されれば警察が動き、拘束されるかもしれない。此処で車を捨てる判断は懸命である。
しっかりしていないようでしっかりしているような。勉強は出来ないが馬鹿ではないような。
(悪いな人吉……明日、またお前を探すからよ)
聖杯戦争に巻き込まれた夜科アゲハが最初に接触した他の参加者が彼、人吉善吉だ。
助ける、救うなどと自分の生命を肩入れしてまでの仲ではないが、黙って見捨てる訳がない。
一度ぶつかった男だ。もう他人ではない。この手が届くなら救ってやる。
(それでも見つからなかったら――俺は先に行くからな)
もしその手が届かなかったら、それは物語の分岐点である。
生きていることを願い、夜科アゲハはその足を進めるだけ。立ち止まってはいられない。
天戯弥勒を止めるために。仮初であろうがこの世界を救うために。
脇道に車を滑らせ、ギリギリ車線が存在するかしないか程度の広さしかない小道を進む。
聖杯戦争の舞台は比較的都会であり、ちょっとした移動でも混雑で足を取られてしまう。
座席にだらしなく腰を預け、片手でハンドルを切りながら流子はルームミラーを調整する。
後ろから来ている車は無い。このまま大通りに合流すればすんなり帰れそうだ。
「なぁアゲハ。お前、魔力の貯蔵は充分か?」
「なんだよその言い回し……心配すんな。ちっともへばってないぜ?」
「そっか……ん! ならいいぜ、とっととバイクかっぱらって帰るぞ!」
先の戦闘ではアーチャー相手に苦戦を強いられた。予定よりも大幅に魔力を消費してしまった。
サーヴァントなるシステム上、自分の戦力はマスターに依存し、力を振るえば振るう程マスターを蝕んでしまう。
アゲハに対して流子は申し訳無さを、自分に対する情けなさを感じていた。
しかしそれは既に流れており、両者は通じあっていた。それでも気になる物は気になる。
人吉善吉の件もある。
なるべくアゲハに負担が掛かる事は回避したい……しかし彼は強い。或いは強く振舞っている。
なら必要以上に心配する必要は無い。
話題を勢いで切り上げた流子はアクセルを踏み込み、適当な駐車スペースに車をダイレクトに決める。
決めるとは駐車を行ったことを彼女なりの言葉で表現したものである。
「荒いぞお前!」
シートベルトで抑えられていた身体に重力が襲い掛かり、不満を叫ぶ。
当の本人である流子は特に反応もせずに扉を開けると、停まっていたバイクに手を掛ける。
「これなら走れるぞー」
するとカギも無いのにエンジンが掛かり、誰も触れていなかった無機の械に息吹が吹き込まれる。
ようはちょっとした魔力の応用で、自らのバイクになった。
「ったく……さっさと帰るぞ」
手を振る流子に対しアゲハはぶっきらぼうに扉を開け、彼女の元へ進む。
今日は色々なことがあり過ぎた。シャワーでも浴びて早く眠ろう。
そう思いながらバイクに跨り、若い男女は出発した。
『洗濯してもらいフブキにはアイロンも掛けてもらった。幸せだ』
「それはよかったな鮮血」
(ハンガーに掛かってる姿見てるとやっぱ服だよなコイツ……)
アゲハの家に無事帰宅した彼らは、彼の部屋に入り浸り適当に会話をしていた。
既にシャワーや歯磨きは済ましており、もう寝るだけと言った段階である。
フブキ――アゲハの姉が昔使っていたパジャマを着せられた流子はアイスを食しながら学園の生徒名簿を見ていた。
単なる暇つぶしであり、特に意味は無い。
『流子、もう歯磨きをしたのに物を食べるのか』
『うるへーほ、ふぇんふぇふ』
まるで親子のような会話をしている流子達を無視してアゲハは窓から空を見上げていた。
仮初の架空世界でも星は美しく輝いている。
手を伸ばして掴み取れたらどれだけ強く輝いてくれるだろうか。星はどの世界でも輝いている。
(月が綺麗だな……今日は満月か)
雲一つ無い美しい月夜。
これで雨宮でも居たら良い雰囲気に……なんて考える余裕や発想出来るほど頭も回っていない。
とりあえず明日は学園に行く。其処にルキアが来れば改めて情報交換でも行うか。
人吉善吉は来るのか、来て何を話すか。紅月カレンとも接触するかもしれない。
そもそも天戯弥勒の手掛かりを掴まなくては……やることが多過ぎる。
(俺は結局何も手掛かりを掴めちゃいねえ……祭先生や影虎さんに笑われちまう。
雨宮やヒリューにもボロクソ言われるだろうな……情けねえ、俺には帰る場所があるのに――っ)
「はああああああああああああああああああ!?」
「うるせーぞ! 纏!」
「なあアゲハ、お前アッシュフォード学園の生徒会長に会ったことあるか!?」
「あ……たしか鬼龍院皐月だろ? あるぜ」
「これ、あたしの姉さんだ……まさか姉さんも聖杯戦争の参加者に!?」
「いやあの人から魔力を感じなかったけど……姉妹なのに似てねえなお前達」
「うるせえ! んなことより明日はあたしも学園の中まで付き合うからな!
NPCにわざわざ知り合いを用意する糞野郎の気持ちなんて解りたくも無いけど、一応姉さんの無事を確かめるからな!」
「はいはい……んじゃ電気消すから戻れ」
センチな感傷に浸っていた自分は何だったのか。騒ぐ流子を見てアゲハの弱い考えはぶっ飛んだ。
悩むなんてらしくない。道があるなら黙ってでも走る。それでいい。
纏流子に助けられた。考えてやっているならたいしたもんだが……どうなのやら。
電気を消したアゲハは窓を締め忘れていたことに気付き、鍵をかけた。
彼らは明日、学園で一つの噂を知ることになる。
『満月の夜に現れた巨人伝説』
今日の満月は一段と綺麗で、不気味であった。
【B-4/アゲハ自宅/一日目・夜】
【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】
[状態]魔力(PSI)消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.寝て学園に行く。
2.人吉善吉捜索再開。
[備考]
※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※ランサー(レミリア)を確認しました。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
【セイバー(纒流子)@キルラキル】
[状態]魔力消費(中)疲労(中)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。
1.寝て起きたら学園に行って皐月に会う。
2.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり
3.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す
[備考]
※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。
※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。
※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました
※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。
※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。
※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています
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|054:[[MEMORIA]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|056:[[CALL.2:満月]]|
|053:[[運命「ミゼラブルフェイト」]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|054:[[MEMORIA]]|
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|047:[[Cat Fight!!!]]|[[夜科アゲハ]]&セイバー([[纏流子]])|064:[[きっとどこかに繋がる世界]]|
2018-12-24T23:42:45+09:00
1545662565
-
We go! ……and I'm home
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/159.html
**We go! ……and I'm home◆A23CJmo9LE
魔神柱との戦いを終えて、生き残った5人のうちの3人は東へと歩を進めた。
虹村刑兆、エドワード・ニューゲートが犬飼伊介(を操る食蜂操祈の残渣)を元居た世界に送り届けるための、最後の道連れになる。
「鹿目さんとは別行動になっちゃったわねぇ☆どう、残念?」
「いや、別に。本来は敵対関係だ」
強敵相手に一時轡を並べはしたが、まどかと刑兆は本来なら聖杯を巡る競争相手になる。
ニューゲートとルフィは知らない仲でもなく、ジンベエやエース、イヌアラシにネコマムシなど繋ぐ縁はあれど、結局は海賊。
時が来れば剣を交えるのに戸惑いはない。
「まあそう言うとは思ってたけど。虹村さんはともかく鹿目さんもやる気満々そうだったのは意外かも☆」
「分かってただろ、お前は。犬飼が麦わらを奪いにかかりでもしたらブン殴られるのがオチ。おれがライダーを譲るわけもない、ってな」
別れ際、鹿目まどかはまだやることがあると戦場の跡地に残る判断をした。
共闘の申し出も、最悪その場での開戦も予期していたが、情報の交換も何もなしの別行動。
互いを知る必要はない、ということか時間を惜しんでいるのかはわかりかねたが……離脱の意思がないのは見てとれた。
別れ行く刑兆たちを見送る姿は健気、というよりも敵の射程内にいる限り警戒を解かない射手のようなもので。
まさしく戦う動機を持つ戦士のものという他ない。
「英霊となってみると鹿目さんも犬飼さんも、そういうのには少し早い歳だと思うんだけど……」
「エースや麦わらも若けェし、お前も大概だろキャスター」
「それは……まあ学園都市育ちだもの。10代でもそこらの子と一緒にしないで?というか私はちゃんと成長もしましたしぃ。学生時代の姿で召喚されたのは乙女心力が全盛期の年代だったからで大人の姿で召喚されることもあるわよぉ、多分」
「ライダーが歳食ってるのもそうだが、結構何でもありだなサーヴァントの全盛期ってのは」
一歩一歩進みながらも言葉を止めることはない。
刻一刻とすり減る操祈の残渣の遺言のように。
「戦わせるためなら何でもするのが英霊の座だもの☆」
守護者とならずとも、呼ばれれば応じざるを得ないのが大抵の英霊だ。
上位のトップサーヴァントであればまだしも近現代の人間の霊格では、強制された戦いを断るすべなどほぼない。
「私にとって最も大きな戦う動機は間違いなく好きな人のため。中学時代の姿で召喚された私は、まるでイアソンを愛したメディアのように、何をしてもおかしくない超能力者として現れるわぁ。もともと身体能力に頼るタイプじゃないし、レベル5は人格破綻者の集まりっていう風評被害も込みで、常盤台学園で派閥を築いた年代が闘うのには適している。
鹿目さんはあれで結構重いもの背負ってる。乙女の秘密を勝手につまびらかにはできないけどぉ、彼女が帰らないのは理解できる。
犬飼さんは家族と幸せに過ごす資金力を聖杯に願う。もっと深刻なものならこんな風に無理矢理連れ帰ることはしなかったかもしれないけど、命がけの聖杯戦争で得られるものがそれじゃあ割に合わない。彼女はここで脱落すべきよ☆
……あなたは?虹村さん。あなたはここで犬飼さんと共に帰る選択肢はないの?何のために戦うの?」
だからこそ、戦う意味と理由を忘れないでほしい。
それは先達からの、最期の問いかけになる。
犬飼伊介へと同じように、虹村刑兆のことも気遣って。
戦いの果てに得るものはあるのか、それは命をかけるに値するものなのか。
「ッ、そろそろ令呪の効果も、私も消えるわぁ☆
公衆電話に着く前に、結論を出したほうがいいと思う――」
「帰らねェよ」
その問いは虹村刑兆には意味をなさない。
「おれ達は行く。おやじがイカれたあの日から、おれ達の人生は置いてかれたままだ。前に進むにはあの悪夢を消し去るしかねえ。
化け物の一部を取り込み、乗っ取られたおやじをこの手で殺してやるまでおれ達の人生は始まらねえんだ」
「ふーん、そうなんだ♡」
伊介の眼から星が消えた。宿主が目覚め、これで本当に食蜂操祈は欠片も残さず消えたことになる。
刑兆の答えを操祈が受け取ることはなく、代わって聞いたのはニューゲートと伊介の二人になった。
ニューゲートはすでにそれを聞いたことがあって、個人的にあまり好意をいだいてはいない。しかし伊介の反応は
「いいんじゃない?いらないものはさっさと捨てて自由にならなきゃ♡」
肯定的。
彼女もそうして生きてきたから。
「親殺しねー。報酬があれば伊介が引き受けても、って言いたいけどアンタの変な兵隊で殺せないのってナニ?怪物?」
「ほぼな。頭を潰そうが、体を粉微塵にしようがくたばらねえ不死身の化け物。そんなもんに成り下がっちまった」
「えっぐ♡父親にそれって心が痛んだりしないのー?」
笑いながら伊介の歩調が気持ち速まる。
操祈の人格が消えても、帰還という目的は変わっていないようだ。
刑兆もそれに追いつくように少しだけ足を速める。
「まさかだろ。おれや弟を無意味に殴るクズにどう罪悪感を覚えろってんだ?」
その言葉で、今度は伊介の足が止まる。
「ンだよ?」
「アンタ弟いたの?」
「いるが。ああ、弟のスタンドも試したよ。脳天を削っても踏みつぶしても再生する。恐ろしいスタンドだが、おやじを殺すには至らねえ」
あっそ、と投げやりに答えて、一瞥もしないままに伊介がまた歩き始める。
(ホントに何なんだよ)
マイペースな伊介に苛立ちつつも、キャスターへの義理があり放り出すのも癪だ。
仕方なく刑兆も止まった足を再び動かす。
「犬飼伊介っていうのはねー、ママからもらった名前なの。カッコいいでしょ?」
刑兆が横に並ぶと伊介の口から言葉がゆっくりと紡がれ出す。
表情はらしくなく、愁いを帯びたようなもので。
「ママは犬飼恵介っていって、殺し屋をやってるの。でー、伊介がまだ小っちゃいときに助けてくれた」
伊介も刑兆も歩みを止めることはしない。
目を見て話しもせず相槌もなく、互いにどんな表情かもわからない。
「認めたくはないけど、まあ一応生物的に血がつながっているらしいので嫌々だけど母親と呼ぶざるを得ない生き物が伊介にもいたんだけど。
そいつに…えーと、あれ世話放棄されるやつ。アレされたせいで伊介は死にかけ。で」
彼方に公衆電話が見えてきて、少しだけ伊介のペースが落ちる。
刑兆も合わせて歩みを緩める。
「弟は死んじゃった。そいつをママが殺して助けてくれた。そして新しく犬飼伊介って名前をくれて、生まれ変わらせてくれたの♡」
歩調が緩むのに対して口調は少しだけ早まった。
たどり着く前に全て語りつくそうとする意志の表れのように。
「伊介はねー♡伊介、って名前で呼ばれるの好き。パパもママも、伊介も伊介のことを伊介って呼ぶの。そのたびに伊介じゃないアタシなんてもういないんだって感じるから」
ついに電話機の前にたどり着き、後は帰るだけとなっても語り口は止まず。
「いらないものは、捨てちゃいなよ。童貞の粋がりじゃなくて、本気で父親を捨てようとしてるなら他のも。
伊介は名前とか罪悪感とか過去も色々捨てた。いつまでも引き摺ってないで、アンタもそうすればいいじゃん」
テレホンカードを出すのにやけに手こずり。
さらに喋りながらなのに加えてほとんど見たこともなく、ましてや使ったことなど全くない公衆電話という時代の遺児の操作にもまた苦戦し。
「えーと、エドワード・ニューゲート……おじさん?ガテン系でナイスシルバーで、ちょっと萌えるかも。ママがいなかったら、パパって呼ばせてもらったかもね♡」
ようやくテレホンカードを取り出すと、キチンとニューゲートの方は振り向いて述べた。
心情を語る方が昔話よりしこりが少ないのだろう。
そして不慣れな公衆電話にもたつきながらもテレホンカードの挿入口をようやく見つけた。
「いっぱい捨てたけど、パパとママのことは大好きだし♡
…………弟のことは、別に嫌いじゃないし。家族は捨てないで大事にするといいんじゃない?血よりも濃い水ってあるものよ♡」
それだけ言ってテレホンカードを電話機に滑り込ませると伊介の姿が消えていく。
語った言葉は意味のない過去語りっだったのか、キャスターの宝具の影響か、彼女なりのアドバイスのつもりだったのか。
その意図を伝えることはないままに。
&color(red){【犬飼伊介@悪魔のリドル 退場】}
「済んだな。これでキャスターへの義理立ては終わりだ」
「ああ。ところで刑兆、体の方は大丈夫か?」
セイバーやバーサーカー、何より魔神柱との連戦ではかなりの消耗をした。
ニューゲートの負傷もあるが、やはり魔力面の心配は大きい。
刑兆は体の調子とスタンドの様子を確かめて幸先を占う。
「……問題ない、とは言えねえが。おれ達の知らないところでも戦闘は起きているのは放送で分かってる。
それにあのルイとかいうやつが南でもあの魔神柱級の化け物が暴れてるといってた。サーヴァント数騎がかりじゃねえとどうしようもねえやつが、だ。
勝ったとしてもおれ達と同等以上に消耗してるはずだ。なら回復しきらないうちに叩く方がいい。
蹂躙されているとしたら、改めて組む相手を探さねえとならねえ。おれ達だけじゃ魔神柱は倒せねえ。どっちにしろ、他の陣営との接触が必要になる」
消耗は激しく、宝具の発動は令呪なしでは厳しい。
ニューゲートの負傷もあり、難敵との真っ向勝負や魔神柱クラスと渡り合うのは厳しいと言わざるを得ない。
本来なら休息に徹したいところだ。
しかしこの聖杯戦争にはあまり時間がない。
頭上に輝く月というリミットがある以上、拙速を求められる。
故に、刑兆は敵もまた同等の消耗を強いられている可能性にかけ、動くことを選ぶ。
「…わかった。それはそうとキャスターの――」
「ああ。宝具の影響か?問題なさそうだ。エピソード記憶と意味記憶の違いだったか?記憶喪失になっても食器の扱いや字の読み書きを忘れることはないとかいう。
一方通行と垣根帝督についてははっきり覚えてるから安心しろ。一応話しておくか?」
「――そうだな。歩きながら聴こう」
父殺しを願う子と、あらゆる荒くれ物の父親は、水の流れに乗るように再びの戦場へ。
【A-4/公衆電話近く/二日目・未明】
【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(大)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1:南の戦場とやらが気にかかる
2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4:公衆電話の破壊は保留。
[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。
※心理掌握により、一方通行と垣根帝督に関する知識を一部得ました。
【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(中、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(大)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.刑兆に従う
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。
※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。
寄せては返す波の音の中を鹿目まどかは揺られていた。
陸地からさほど離れてはいないが、街の明かりもなくなるほどに更けた夜ではすでに岸の名残も見えない。
それでもまどかたちはゆっくりと、船を沖へと進めていく。
「……このあたりでよろしいでしょうか?」
「はい。ありがとうございます、ブルックさん」
乗り込んだ船の名はソルジャードッグシステム2、ミニメリー2号で、操縦は碌にできないルフィに代わってブルックが召喚されている。
心象風景を投影する固有結界は、一部だけならば結界を張らずとも現実を侵すことができるため、ブルックとサニー号の一部だけ宝具から呼び出したのだ。海は彼らにとって何より見慣れたもので、心象風景ともよくなじむ。
船の扱いであるが、船大工のフランキーや操舵主のジンベエがいない理由の一つは魔力の倹約。そしてもう一つは
「バイオリンでよろしかったでしょうか?楽器は全般いけますが」
「はい……きっとさやかちゃんはバイオリンを一番聴いてきたと思うから」
「それでは一曲。葬送の調を」
美樹さやかを、見送る礼のため。
ブルックのバイオリンから哀しくも優し気な音が奏でられると同時にまどかがポケットからハンカチを取り出し、それに包まれた灰を一部海へと流す。
虹村刑兆たちと別れたまどかが最初にしたことはさやかの遺灰と遺品を搔き集めることだった。
もはやさやかだと分かる面影などない。
聖杯戦争を終えて帰還したとして、まどかのいた世界ではとうにさやかは命を落としている。いや、亡骸と墓標があるならまだいい。
円環の理になったことで彼女の存在そのものが人理から消失してしまっているかもしれない。
それでも忘れてはいけない、その痕跡をなかったことにはしてはいけないと強く思った。
せめて生きた証を。戦った印を。
できるなら彼女の育った見滝原に残してあげたい。けれども、この戦いの果てでまどか自身が生きて帰れる保証はない。
無論生きるのをあきらめるつもりも毛頭ないのだから、故郷の土で弔うため一掴みの遺灰は残している。
それでも万一に備えて葬送だけは行ってしまうことにしたのだ。
とはいえ街中に埋めて適当な墓標を立てるというのは些か抵抗がある。
……思い至ったのは共にいる英雄のこと。そして美樹さやかが人魚へと転じたこと。
円環の理となった以上、魔女の姿もまた彼女の一面であるのだから、人はみな海の子なのだから。
魔法少女が円環の理へ還るように、人の命は海へと還るのがよいのではと。
沖に出て遺灰を撒き、その周囲を葬送曲を奏でながら一周。そして黙祷を捧げるだけの簡素な水葬。
それでも年若い少女の死に、かけがえない最高の親友との永久の別離に船上の三人は心から哀悼の意を示していた。
そしてルフィもブルックも帽子を脱いで、まどかは両手を合わせて静かに黙祷。
聞こえるのは波の音だけの静かな儀式…………だった。
海面を裂くような音が小さく聞こえた。
次の瞬間に、そこには異形の怪物が何体も現れていた。
ウミヘビのようなもの、翼竜のようなもの、人型を留めた者……すべての個体が体のどこかに球体のようなものが嵌まっている。
&ruby(タヴ―){禁人種}と呼ばれるその怪物はこの地では一度だけ美樹さやかが観測していた。
それらはこの聖杯戦争の地の外に出ようとするものに干渉する。
波に揺られるうちにミニメリー2号は戦場の外へと流れつこうとしていたのだ。
&ruby(タヴ―){禁人種}が一斉に船へと向かいくる。
度重なる戦闘のダメージがたたったか、黙祷のさなかだったからかルフィの見聞色はそれに出遅れてしまう。
先制を許すか、と思われた瞬間
「鼻歌三丁…いえ、“鎮魂曲・ラバンドゥロル”」
剣戟一閃、冷たい黄泉の風が吹き荒れ&ruby(タヴ―){禁人種}のことごとくを凍てつかせた。
「申し訳ない。私お二人が黙祷してる間も目、閉じてなかったんです。瞼がないので」
ヨホホ、スカルジョーク。とさすがにブルックも空気を読んで小さくつぶやく。
……瞼どころか眼球もないのでは、と指摘するものは残念ながら誰もおらず。遅れて構えたルフィも息をついて麦わら帽子をかぶりなおす。
だが、今度はまどかが遅れて構えた。
「まだです」
腰に下げた一振りの剣を抜く。
それもまたさやかの形見。最後にキャスターの胸を貫いた、まどかを守るために戦い続けた末期の遺志。
危なっかしい素人剣術未満だが、凍って動きを止めた&ruby(タヴ―){禁人種}にはそれでも十分だった。
ゆっくり、真っすぐに突き出された剣が&ruby(タヴ―){禁人種}の核を貫き、その一体を灰に還す。
「……うん、やっぱり。&ruby(わたしたち){魔法少女}のソウルジェムと似てる」
それを見てブルックとルフィも続いた。
改めて抜き放った剣で、シンプルなブローで&ruby(タヴ―){禁人種}の核を砕いていく。
まどかではさすがにそれには続けず、剣に刺さった核の欠片を回収し、じっと確かめることにする。
「まどかさん、あれのことご存じだったんですか?」
&ruby(タヴ―){禁人種}が全て灰になったのを確かめ、剣を鞘に納めながらブルックが質問する。
まどかはその問いに困ったように首を傾げ、剣先の核から目線を外して首を横に振った。
「いいえ、知りません。見るのも初めてです……&ruby(わたし){円環の理}は、インキュベーターが人類史に関わるのをずっと見てきたのに、これは見たことがないんです」
先刻まで、まどかは一時だが円環の理という女神の疑似サーヴァントになっていた。
そのためグランドキャスターの視界と知識を一時共有し、今も一部だが記憶はしている。
その記憶の中に&ruby(タヴ―){禁人種}は存在しなかったと断言できるのだ。
「だから多分、あれはインキュベーターと同じ星の外から訪れた外なるもの……&ruby(フォーリナー){降臨者}」
「フォーリナー……?エクストラクラス、ですか」
再び船の上に沈黙が下りる。今度は悼みからでなく、思考に囚われて。
しばらく皆身じろぎもせず佇んでいたが、波に揺られるままでまた怪物の襲撃を受けては厄介、とブルックがゆっくりと岸に戻るよう船を操作し始める。
「見送りは、このくらいで?」
「はい。ありがとうございました」
パドルのまわる音を立ててミニメリーが水面を走る。
波にも乗ってすぐに陸へたどり着き、三人が船から砂浜へと降り立った。
ルフィはミニメリー号を固有結界へと送還し、ブルックも戻ろうとまどかに声をかけようとするが、彼女は未だに海の彼方を眺めていて些か声をかけにくい。
……逡巡するブルックにまどかが気付くと、小さく笑みを浮かべてまどかから話しかけた。
「ありがとうございました、ブルックさん。もう一つお願いしてもいいですか?」
「ヨホホ、麗しいお嬢さんの頼みとあれば断れませんよ。何でしょうか?」
快く引き受けたブルックに、まどかは先ほど振るったさやかの剣を差し出した。
「やっぱり私に剣は向いてないみたいです。持ってても多分荷物にしかならないだろうから……」
ブルックに剣を渡し、その最後の用途についてぽつぽつと話す。
ルフィとブルックが一度だけ本当にいいのか、と確認するがまどかが肯定して、最後の弔いは実行に移された。
「では、これで」
ブルックが剣を走らせ、まどかの髪を僅かに切る。
そしてそれをまどかの髪を括っていたリボンと一緒に副葬品として剣に結びつける。
最後に剣を海に向かうように地面へと突き立てた。
「…それじゃあ、行ってくるね。さやかちゃん」
月影の下、海を臨んで墓標のように真っすぐに刺さった剣を背にして砂浜を後にする。
海岸に突き立てられた剣などいずれ処分されてしまいかねない、と普通なら思うが、この世界には月が接近している真っ最中だ。
長くはないこの世界では墓標を用意しても一時しか持たない。それでも、送る標としたいと思ったのだ。
遺灰の一部と剣で弔ったことで形見も残りは半分ほど。
残った遺灰はハンカチに包んでポケットにしまった。
持っていたグリーフシードも放っておいて万一魔女が孵っては困るし、使い道もあるので回収してある。
それから最後にもう一つだけ。
さやかの身に着けていた衣服までも灰になったが、何の因果か制服のリボンだけが残っていた。
剣に手向けた桃色のリボンの代わりに、それで新たにまどかは髪を纏めることとする。
「ん、どこか変じゃないですよね?」
「ええ、よくお似合いですよ」
手癖で整えられるが、念のため鏡がないので確認を。
ブルックの答えに安心したような笑みを少しだけ浮かべて、まどかは砂浜から街の方へと戻っていく。
「まどかさん、しつこいようですが本当に聖杯戦争を続けるのですか?海賊が&ruby(たから){聖杯}を求めるのに理由は必要ありませんが、あなたは違います。
ご友人の弔いのために故郷へ帰るというなら私もルフィ船長もそれを止めは致しませんよ?」
もとより願望機に託す願いなどなく、夢は自力でつかみ取っていく信条だ。
手に入れれば金銀財宝や書物などを願いはしそうだが、少女に殺し合いを強制してまで手にしたいとは思わない。
令呪で自害、はさすがに御免被るが契約を解除しての消滅くらいなら別に受け入れるも吝かではないのが一味の正直なところだったが
「いえ……まだ私はこの戦いをやめられません。円環の理を、私とさやかちゃんの願いを守らないと」
まどかははっきりとそれを否定した。
今の自分には戦う理由がある、と。
「おかしいんです。円環の理が機能してるなら魔女は産まれないはずなのに」
円環の理の疑似サーヴァントとなり、その規格外の千里眼で世界を見た。
目に映ったのはこの世界で穢れに満ちた者たち……契約したサーヴァントの悪意により魔女へ転じかけたほむら、穢れに染まり切ったうえに悪魔との繋がりと因果によって魔人柱へと変生したさやか、そしてほむらの手にしたグリーフシードから孵った魔女Gertrudなど見知った顔だ。
魔女になり切らなかったほむらに、外的要因が混在したさやかだけならば円環の理の適応外だったということも考えらるが、Gertrudの誕生は円環の理の不調を意味する。
ならばその原因は何か。
「多分、無理矢理に単独権限することでここに介入していたけれど本来の円環の理として現れるのにはこの世界のリソースが足りてないんだと思うんです」
つい先ほどまでのまどかでは理解の及ばない世界のルールの一端を、ひと時円環の理と化したことで認識していた。
とはいえ彼女が千里眼によって得た知見をルフィもブルックも一片たりとも理解はせず首をかしげるだけ。
しかしそれを気には止めず。
口にしているのはただ思考を言葉にすることで整理しているのにすぎないのだろう。
そういう意味では理解せずともルフィもブルックも余計な口を挟まないでくれるのはとても助かる。
「この聖杯戦争は一クラス一騎が原則のサーヴァントに同じクラスがニ騎いる。だからこそ来ることができた。それでもすでに埋まっている一枠にリソースを裂いているからその隙間に単独顕現するしかなかった……」
聖杯戦争の本来の形は決戦術式、英霊召喚。それにより冠位の英雄を揃え、獣を討ち果たすものだ。
いくら歪んでいるとはいえ、その原型に近づくグランドクラスの顕現とあっては複数同時召喚は不可能に等しいだろう。
「いるんです…ううん、まだちょっと顔をのぞかせてるくらいだと思うけど。すでにこの聖杯戦争には円環の理以外のグランドキャスターが」
型落ちした聖杯戦争の術式では本来グランドクラスの召喚など望むべくもない。
しかし対となる獣がいて、それが主催側に立っているなら討滅すべく世界は動く。
さらに、もし獣の数を多数誤認させることができれば確率は増すだろう。
「この、テレホンカード。『単独顕現』なのかも」
原理は分からないが、現在過去未来並行世界問わずさまざまなマスターを集め、また送り返す。
獣の顕現のように。あるいはとある機関でレイシフトと呼ばれる技術のように。
マスター全てが獣の資格者である、と世界に誤認させることができればそれはグランドクラスの顕現に繋がる。
この儀式は全てグランドキャスターの召喚のために行われていた。
それも円環の理とはまた別の。
「うーん……オティヌスちゃん。でも本人じゃない、かな。多分……天戯弥勒。彼が一部を呼び寄せてる」
真意は分かりかねるが、ここにグランドキャスターが現れつつあるのは、まどかには分かっていた。
グランドキャスター、冠位の資格を持つ魔術師はみな優れた千里眼を保有する。
そして千里眼の保有者は時を超え世界を超え視線を交わらせるため、直接の面識はなくとも互いを認識している。
つまりそこに誰がいるのか、真名から能力まで互いに分かるのだ。
魔法少女を救うために現在過去未来、そして世界の壁も超えて魔法少女を見通す円環の理。
世界樹の頂からその根元まで見通すように、数多の可能性世界を作り出し渡り歩くためにあらゆる並行世界を監視する魔神オティヌス。
友でもなければ同胞でもない、ある種の連帯感を抱く相手。轡を並べることはなくとも刃を交えることもないと思っていた。
それでも
「グランドキャスターが一騎しかいられなくて、この世界で円環の理が機能しないなら……還ってもらわないと。それに」
ちらり、と地面に突き立ったさやかの剣を見る。
これがヒントになって今いるこの世界が何なのか予想はついた。
「テクスチャが張り替えられてる。本来どこだったのかは分からないけど、オティヌスちゃんの力で聖杯戦争の戦場のテクスチャを張り付けたのがこの世界」
それはオティヌスの得意分野だ。
世界を一度リセットし、その上から改めてifの世界を用意して、最果ての槍……『&ruby(グングニル){主神の槍}』でテクスチャを固定する。言うなれば人理の再編。
其れはさながら神話の一節。
神々が洪水によってテクスチャを一掃し、方舟に乗り込んだものによって人理が形作られたように。
あるいは神の子が自らの肉体ごとテクスチャを槍によって貫き、人理を強固にしたように。
そしてそれはかつて円環の理も成したこと。
魔法少女が魔女へと転じる世界を否定し、円環の理によって救済されるようテクスチャを張り替えた。
オティヌスの持つ主神の槍、ノアの一族が乗り込んだ方舟、円環の理が携える弓……すなわち人理の再編を成し、そして乗り越える『ゴフェルの木』を持つ者。
誰かがゴフェルの木を使いこなし、&ruby(テクスチャ){世界}を変え、そしてそれが円環の理が適さない世界であるのかもしれない。
「今いる世界をさっきのフォーリナーが過ごす世界に変えようとしてるなら、それは円環の理への宣戦布告に等しいよ」
剣に刺さっていた禁人種の核。
外なるもの、降臨者の証。
まどかは知らないが、それは外宇宙より飛来したクァト・ネヴァスの力によって人類が進化する力の源だ。
ある歴史においてはこれにより進化した存在が地上を闊歩する霊長の祖となっていた。
また別の歴史がある。
宇宙より飛来したウイルスにより人類含む一部の生命体が進化を遂げ、スタンドと呼ばれる超能力を身に着けた世界。その一人が人類を天国と呼称される新たな領域へと導いた、スタンド使いという進化した人類が基盤を築いた人類史。
あるいは太古、衣服によって進化と発展を遂げ、衣服に支配された人類史であったり、悪魔と融合した人類が地球の主となっていたり、魔術により進化したヤガという新人類が歩む世界であったり。
それらは全て円環の理の千里眼の及ばない世界。
そして本質として円環の理が焼却した歴史、魔法少女という人理の礎が絶望の果てに魔女へ転じてしまう世界と同じ、消え去るべき歴史。
オティヌスの力によって、この世界は円環の理でも救えないテクスチャに張り替えられつつあるのだ。
もしもその改変がこの地に留まらずまどかの故郷に及んでしまえば、あるいは及ばずともこの地に救うべき魔法少女がいては。
円環の理が、まどかとさやかの願いが否定されることになる。
それは、絶対に許してはいけない。
すなわちオティヌスの生み出す&ruby(せかい){異聞帯}と、円環の理が作り出した&ruby(せかい){汎人類史}の生存競争と言えよう。
「……全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で生まれる前に消し去る。それが私と、そして今はさやかちゃんの願い。その願いのために、私はほむらちゃんの願いを否定した」
後悔はある。それでも、友達を含めたすべての魔法少女を救うことを間違っているとは思わない。
もはや円環の理は鹿目まどか一人のものではないのだから。
「たとえ力を失くしたって、それでも私は円環の理なんです。だから、魔法少女を救うために私はオティヌスちゃんが相手でも闘います。一緒に、来てくれますか?」
令呪によって縛ることもできただろう。
とっくにルフィはバーサーカークラスとしての適性もあり、狂化して従える素質もまどかにはある。
だが、遊園地での戦いで……否、最初からそんなものは必要ないことは分かっている。
「あたりまえだろ!」
と、満面の笑みでルフィが答える。
見聞色の覇気などなくとも容易く見える未来だった。
「改めてよろしくお願いします。あ、報酬は&ruby(たから){聖杯}払いで、ってナミさんに伝えておいてください」
と付け加えると
「あ、これ断りようがなかったですね!ヨホホ、誰と話せばいいのかご存じでいらっしゃる!」
と、笑いながらブルックもミニメリーに続いて帰還する。
代わって現われたのは
「アウ!それじゃあ、ここからはおれが力になるぜェ!」
水色のリーゼント、サングラス、アロハシャツ、海水パンツ。
全身に機械が仕込まれ人間離れした体格の、端的に言って変態が巨大なバイクに乗ってそこにいた。
「こいつはソルジャードッグシステムチャンネル4、クロサイFR-U4号!そしておれは麦わら大船団の船大工フランキーだ、よろしくな嬢ちゃん」
サングラスを上げてあいさつをするフランキー。
記憶の共有で知ってはおり、さらに円環の理の知見を得て精神的に成長したまどかではあるがブルックとは違う意味の異様に少し引いた。
それでも失礼のないように一礼をして、バイクの後ろにルフィと一緒に乗り込む。
「真名の秘匿だの、目的地が不明瞭だの、魔力節約だので出てこれずにいたが地上を走るならコイツがスーパーだ。
そいじゃどちらへ、キャプテンにレディ?夜通しの移動になるが大丈夫か?」
本来のルフィなら一日程度活動を続けたとて心配はいらない。
新世界の猛者ともなれば数日間闘い続けることもある。
5日間闘い続けたルフィの兄と仲間、エースとジンベエや10日間に及ぶ決闘をつづけた赤犬と青雉など同様、ルフィもその域には達していた。
四皇ビッグマムの幹部である将星クラッカーやカタクリとの闘いを一昼夜続けたように、この聖杯戦争も超えられなくはない。
だがそれもサーヴァントなっては十全な魔力補給あってこそ。
そしてその負担は小さなまどかの体にかかる。
気力充実成れど体力、魔力の問題は生じるだろうと当然考えた。
だが
「大丈夫です。少しの間ですけど睡眠のいらない疑似サーヴァントになってたからか、疲れは全然ないんです。魔力は厳しいかもしれないですけど……令呪があります。
私のことは大丈夫です。少しでも早くほむらちゃんと合流したいから、お願いしますフランキーさん」
その言葉が終わるか終わらないうちにエンジン音が鳴り響いた。
加速した重機が人気のない街の中を走りぬけ、彼女らも今再びの戦場へ。
【A-4/海岸近く/二日目・未明】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(大)、フランキーのバイクに同乗
[令呪]残り3画
[装備]さやかの形見のリボン
[道具]さやかの遺灰(ハンカチに包んでいる)、グリーフシード×5
[思考・状況]
基本行動方針:さやかと自分の願いである円環の理を守るために戦う。
1.ほむらを探す。ほむらの力になりたい。
2.タダノとも話がしたい。南で戦ってる……?
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』は決まった。
4.魔女のような危険人物、何より円環の理に仇をなすものは倒すのも厭わない
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。
※夢を通じてルフィの記憶を一部見ました。それによりニューゲートの容姿を垣間見ました。
※一時的に円環の理の疑似サーヴァントになっていたことで座及び円環の理に由来する知識を一部得ています。
【モンキー・D・ルフィ@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(中、応急処置済み)、フランキーのバイクに同乗
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1..バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
4.肉食いたい。ギア4使って腹減っちまった。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※見聞色の覇気により飛鳥了の気配を感知しました。もう一度接近した場合、それと気づくかもしれません。
※フェイスレスを倒したと考えています。
[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
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|066:[[REBIRTH~女神転生~]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|067:[[おかえり聖杯戦争]]|
|~|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|~|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|066:[[REBIRTH~女神転生~]]|[[鹿目まどか]]&ライダー([[モンキー・D・ルフィ]])||
|~|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])||
|~|[[犬飼伊介]]|&color(blue){退場}|
2018-12-24T23:32:16+09:00
1545661936
-
【2日目】
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/139.html
*2日目
**■正子
|056|[[CALL.2:満月]]|天戯弥勒&br()(エレン・イェーガー)|不明|正子|[[◆wd6lXpjSKY]]|
**■未明
|057|[[未知との再会]]&br()[[翼をください]]|天戯弥勒&br()タダノヒトナリ、アーチャー(モリガン・アーンスランド)&br()浅羽直之、アーチャー(穹徹仙)&br()鹿目まどか、ライダー(モンキー・D・ルフィ)&br()???|C-7|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|058|[[真夜中の狂想曲]]|暁美ほむら、セイバー(リンク)&br()美樹さやか、バーサーカー(不動明)&br()間桐雁夜、バーサーカー(一方通行)&br()人吉善吉、キャスター(フェイスレス)|B-3&br()B-5&br()B-6|未明|[[◆lb.YEGOV..]]|
|059|[[心波のトランス]]|暁美ほむら、セイバー(リンク)&br()間桐雁夜、バーサーカー(一方通行)|B-3|未明|[[◆wd6lXpjSKY]]|
|060|[[Deep Night ]]|ウォルター・C・ドルネーズ、ランサー(レミリア・スカーレット)|B-1|未明|[[◆lb.YEGOV..]]|
|061|[[Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー]]|タダノヒトナリ、アーチャー(モリガン・アーンスランド)&br()朽木ルキア、ランサー(前田慶次)&br()鹿目まどか、ライダー(モンキー・D・ルフィ)&br()人吉善吉、キャスター(フェイスレス)|B-6|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|062|[[英雄たちの交響曲]]|暁美ほむら、セイバー(リンク)&br()虹村刑兆、ライダー(エドワード・ニューゲート)&br()犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)&br()美樹さやか、バーサーカー(不動明)&br()間桐雁夜、バーサーカー(一方通行)&br()浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)&br()ルイ・サイファー|A-4&br()B-3|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|063|[[呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」]]|ウォルター・C・ドルネーズ、ランサー(レミリア・スカーレット)|B-1|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|064|[[きっとどこかに繋がる世界]]|夜科アゲハ、セイバー(纒流子)|B-4|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|065|[[聖なる柱聳え立つとき]]&br()[[魔なる柱雷のごとく出で]]&br()[[太陽は闇に葬られん]]|タダノヒトナリ、アーチャー(モリガン・アーンスランド)&br()朽木ルキア、ランサー(前田慶次)&br()鹿目まどか、ライダー(モンキー・D・ルフィ)&br()虹村刑兆、ライダー(エドワード・ニューゲート)&br()人吉善吉&br()犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)&br()美樹さやか、バーサーカー(不動明)&br()間桐雁夜、バーサーカー(一方通行)&br()浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)&br()天戯弥勒&br()マンセマット&br()ルイ・サイファー|A-4&br()B-3|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|066|[[REBIRTH~女神転生~]]|鹿目まどか、ライダー(モンキー・D・ルフィ)&br()虹村刑兆、ライダー(エドワード・ニューゲート)&br()犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)&br()美樹さやか、バーサーカー(不動明)&br()ルイ・サイファー|A-4|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|067|[[We go! ……and I'm home]]|鹿目まどか、ライダー(モンキー・D・ルフィ)&br()虹村刑兆、ライダー(エドワード・ニューゲート)&br()犬飼伊介|A-4|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
|068|[[おかえり聖杯戦争]]|夜科アゲハ、セイバー(纏流子)|B-4|未明|[[◆wd6lXpjSKY]]|
|069|[[とある少女の前奏曲]]|暁美ほむら、セイバー(リンク)|A-4|未明|[[◆wd6lXpjSKY]]|
|070|[[恋見てせざるは愛無きなり]]|間桐雁夜&br()人吉善吉&br()バーサーク・アサシン(垣根帝督)|B-3|未明|[[◆A23CJmo9LE]]|
2018-12-03T01:05:03+09:00
1543766703
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REBIRTH~女神転生~
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/157.html
**REBIRTH~女神転生~◆A23CJmo9LE
「■■■ーーーーーーーーー!!!」
建造物が崩れるような轟音と、野獣のような悲鳴を上げて肉の柱が吹き飛ばされる。
城を打ち崩す砲撃のような二つの巨大な炎の拳がそれを可能にしたのだ。
一時だが魔神柱の危機を退け、海賊船モビー・ディック号の船上で多くの戦士が息をついた。
鹿目まどか、虹村刑兆、犬飼伊介。
モンキー・D・ルフィ、エドワード・ニューゲート、食蜂操祈。
それとニューゲートにより召喚されたポートガス・D・エースに、完全に部外者のルイ・サイファー。
「久しいな、麦わらァ。しばらく見ねえ間に随分と覇気を上げたようだが」
「おー、やっぱり白ひげのおっさんか。また会えるとは思わなかったなー。エースも!ところで、なんだ?あれ」
やはりいたか、とお互いに何となく感じていた事実を改めて確認する。
さほど深い因縁という仲ではないが、それでも。
このマリンフォードという戦場が互いの人生に与えた影響はあまりに大きく、穏やかな邂逅で済んだのは誰しもが予想だにしていなかっただろう。特に、ニューゲートは。
「……意外だな」
「ん?」
「エースと会って淡白な反応なのが意外だと言ったんだよ」
ルフィがインペルダウンやマリンフォードで命を削ってまで乗り込むほどに敬愛していた家族を目の前で失ったのをニューゲートは知っている。
ニューゲート自身その苦しみを共有出来る一人でもある以上、平静を失ったとしてもそれを責めるつもりは毛頭ない。
だがルフィは感情を乱すことなく殴り飛ばした魔神柱を静かに睨んでいる。
「あれから目を離せねェから」
もしここが戦場でなかったなら、もう一人の兄と再会したときのように涙を流していただろう。
だが今は視界を曇らせてはならない理由がある。見据えるべき敵がいる。
「おれは弟で、エースは兄ちゃんでそれは変わらねえ。また会えてすげえ嬉しいよ。
でもあの変なデカいのを放っておいたらまた誰かが殺されちまう。だからおれはあれから目を離さねェ!」
かつて宣言した、いつかエースも超えて見せると。
エースは応じた、今はまだおれが守ろうと。
ならば今度こそ、自分がエースを守るのだと先陣に立とうとする。
「一端の船長やってるじゃねえか、ルフィ」
それはエースがかつてしていたことで、ニューゲートに下ってからはすることの少なくなった行動だった。
兄としての誇らしさと少しばかりの憧憬が胸をつくが、唇をかみしめてルフィに倣い魔神柱を見据える。
二つの拳に吹き飛ばされた状態からアモンは立て直りつつあるが、転移したそれに白ひげ海賊団が我先にと襲い掛かる。
先陣を切るのは二人の戦士、魔神柱を見下ろす巨躯の戦士リトルオーズJr、そして白ひげ海賊団の中でも中心人物である不死鳥マルコが空を舞い攻める。
それに続いて続々と益荒男たちも戦列に加わり状況は拮抗。その間隙で船上の中心人物たちが情報を束ねていく。
「それじゃあ私が少しお話しさせてもらうわぁ☆」
モビーディックに偶然集った因縁ある陣営、その中でも一番の知恵者であろう操祈がまず口火を切った。
「まず紹介するわね。彼女が鹿目まどかさん。先刻私がそちらの…えー、ルフィさんとお話しするために拐かしたマスター。
ただし交渉は決裂したので、私たちは川に跳びこんで逃げ出して、別のマスターに襲われていたところを虹村さんたちに保護されたの。
つまり彼女にケガをさせたりはしていないし、するつもりもない。ここまで理解力は追いついてるかしらぁ?」
同盟者である刑兆とニューゲートに未知であろう乱入者のことを伝える。
一応の頷きを確かめたら今度は逆だ。
「こちらは犬飼伊介さん」
「伊介様、ね♡」
「もう、急いでるんだから細かいこと気にしてないでよねぇ。伊介様、私のマスター。
学ランの男の人が虹村刑兆さん、ライダーこと『白ひげ』エドワード・ニューゲートさんのマスターで私の同盟相手よ、鹿目さんにモンキー・D・ルフィさん☆」
刑兆が少し眉をしかめたのを見て宝具からようやく看破した真名は当たりだと検討をつけつつ。
最も大きな問題について、最後の一人に話を振ってみる。
「あの大きな怪物は…ええっと魔神柱でよかったかしらぁ?できれば知識力豊富そうなあなたに解説願えるかしら、ルイ・サイファーさん」
「私かね。君たちの仲間でも何でもないただ固有結界に巻き込まれただけの私に聞くか」
不機嫌という風ではない。観劇中に舞台に上がる羽目になってしまっとでも言うような当人意識のなさでルイ・サイファーは彼方を眺めながら答えた。
「あれの名は魔神柱アモン。ゲーティアに刻まれた悪魔の一柱、その一つと捉えてもらって結構。
&ruby(おれ){了}の親友であり、そして……鹿目まどか。君の友人、美樹さやかの成れの果てだ」
衝撃的、あるいは絶望的な真実。
かつて経験したこととはいえ、心優しい少女にとってそれは幾度も経験すればなれるというようなものではない。
「どういう意味ですか!?さやかちゃんがああなったって……なんでさやかちゃんがここで、あんな!?」
「願いを裡に秘めた魔法少女が聖杯を欲するのは不思議ではないだろう。加えて君は美樹さやかが異形に転じたのを見るのは初めてではないはずだ。
ソウルジェムに穢れが満ち、さらにサーヴァントの能力で擬似サーヴァント染みたせいで君も私も知らない姿になったようだが」
まどかを見ることもなく、かといってアモンを見るでもなく。
全く別のものを見定めるように、あるいは独り言のようにルイ・サイファーは語ってきかせた。
「私からは以上だ。本来は私が手を下すつもりだったのだが、やることができたので失礼。君たちがあれを無事に倒してくれるよう願っているよ」
「え、ちょっと!」
そして最後までまどかたちと視線を交わすことなく、ルイ・サイファーは身をひるがえして船から飛び降りて、次の瞬間には姿を消してしまった。
遺されるのは痛いほどの沈黙。
戦いの音だけが鼓膜に響く中、沈黙を破ったのは最も幼い少女だった。
「白ひげ……エドワード・ニューゲートさんですよね?初めまして。鹿目まどかといいます。
ライダーさん、いえルフィさんの夢の中であなたのことは見せてもらいました。
ルフィさんと、私と一緒に。さやかちゃんを助けるために戦ってくれませんか」
まどかはまっすぐとニューゲートを見据える。
体躯も力も比べるべくもない相手に確かに恐れを抱きつつも、友達を助けたいという意志が彼女をそこにとどめていた。
それはまるで頂上戦争の一幕の再演。
白ひげ相手に兄を助けると威勢よく述べた麦わらのように、今度は麦わらのマスターである少女が言葉少なに主張する。
「……へえ、上等じゃねェか」
言外に言うのだ。助け戦いでなければ協力する気はないと。
ルフィの武力を前提とした打算的な申し立てではあるが、それでも懇願でなく交渉の体をとれる度胸にニューゲートは感服する。
何よりそういう無謀な若者は嫌いじゃない。
「キャスター。疑似サーヴァントとかいうのに覚えは?」
「え?本来サーヴァントになれない存在が人間を依り代にして無理矢理現界するもの、だと思うけど……アモンというのが本当ならエジプトの神霊が大本でしょうし、その一面力だけを美樹さんを通じて再現しているんじゃないかしらぁ」
「あー……いつだか聞いたジャケジャケの実みてえなモンか?」
敵の能力を思い返す。
合体して鎧のような姿をとっていた。鎧が変形するようにして悪魔染みた戦士へ転じた。あげく肉の柱へと成り果てた。
「なら核となるマスターはいるはずだな……キャスター、マスターの小娘が見えたらお前が能力で令呪を使わせて止めろ。おれ達で腹掻っ捌いてでも機会を作る」
「エドワードさん……!」
倒すでなく止める方針を提言したニューゲートにまどかは喜び、刑兆たちは渋い顔をする。だがニューゲートは腕の矢傷を見せてそれを制した。
緑衣のセイバーとの戦闘で受けた傷は無視できるものではなく、悪魔のバーサーカー相手の戦闘でも決め手に欠く要因となった。
ルフィが前線で暴れるならそれを補って余りある補強になる。
操祈と刑兆はそれを汲み、へそを曲げた伊介を抑える側に回った。
そしてニューゲートはルフィに向けて握りこぶしを真っすぐ突き出し明確に協力の返事とする。そこにルフィも拳を合わせようとする。
そこへ再度の危機。
魔神柱アモンが魔女Oktaviaの能力を行使し、モビーディックのもとへと転移。
そして刮目し、一瞥する……ただそれだけで多大な損害を与える、はずだった。
「“大炎戒、炎帝”!!」
そうはさせじとモビーディックとアモンの間に太陽の如く輝く巨大な火の玉が割って入り、アモンの視界を塞ぐ。
「ウチの家族が大事な話の最中だ。邪魔しねえでもらおうか」
その功労者はルフィの兄で、ニューゲートの息子であるポートガス・D・エース。
彼の手によってアモンは邪視には至れず、それどころか眼球のすべてを焼き尽くすほどの炎熱で迎撃されて初撃以上のダメージを負う。
それを横目にニューゲートとルフィはしっかりと拳をぶつけ合わせ、そして即座に戦端へと加わる。
「ゴムゴムのォ!!“&ruby(ホーク・ガトリング){鷹銃乱打}”!!!」
ルフィは前線へ。
ギア2も解放して、エースの攻撃で怯んだアモンへさらに追い打ちを仕掛けた。
だがアモンとて容易くそれを許すことはない。邪視により反撃を試み、それが通じないとなれば海面の水を通じて退避する。
いずこかへと転移し姿を消したアモンへの対処にはすでにニューゲートが対処にむかっていた。
子電伝虫を通じて傘下へと警戒・探索に当たるよう指示をとばす。
「こちら白ひげ。スクアードはいるな?よし、アモンの奴がどこから現れるか分からねえ。人間兵器のようなことにはならねェとは思うが、周囲の警戒を怠らず、遊撃と守勢のために部隊を編成しなおせ……今度こそ、全海賊団の指揮はお前がとれ」
通達を終えて子電伝虫を切るとニューゲート自身も視線を走らせ、アモンの警戒と捜索にあたる。
「&ruby(テレポート){空間移動}よねぇ?」
「おそらくはな」
どこへともなく姿を消し、どこからともなく姿を現すこと三度。
さすがに能力の大筋は掴めてくる。
「学園都市でも希少力高いわよ☆私が学生の頃は100人もいなかったはずだし、自分自身を移動させられる&ruby(レベル4){大能力者}級ならさらにレア。
というか空間移動って移動させる重量にも限りはあるはずなんだけど、あのアモンっていったい何トンくらいあるのよぉ……」
操祈に空間移動は専門外だが、身近に白井黒子というテレポーターがいたために多少の知識はある。
3次元から11次元への特殊ベクトル変換だとかはさっぱりだが、定期的に行っていた試験で飛ばせる物体の飛距離や質量の計測をしていたのは知っている。
つまりアモンの転移にも射程や載量に限度があるはずだと考えたのだが。
「スタンド能力なら重さに意味はない可能性もある。というか見た目はでけぇが、悪魔だのサーヴァントだのに重さはあるのか?質量保存の法則が成り立つならせいぜいあの美樹さやかってのと悪魔を合わせた程度の重量じゃねーのか?」
「んー、さっきおれとエースで殴った時は結構重かったぞ。オーズとかでかくなったモリアほどじゃなかったけど」
「オーズ?あそこにいるバカでかいやつか?」
「あいつと同じくらいデカいのだな」
「取り合えず相応の重量はあるってことか」
刑兆も前線に加われないなりに戦術面で役立とうと思索するが、戦場は待ってはくれない。
再びアモンが戦場に姿を現す。
「時間をかけて移動したわねぇ。距離と……え、それに魔力も稼ぐため!?」
モビーディックとも他の白ひげ海賊団とも離れた沖合に、まるで宝具の解放でもするかのような魔力の高まりを伴って出現したアモン。
その全身の眼が輝きを増し、魔術に疎い伊介や刑兆にもその脅威がはっきりと伝わる。
「覗覚星、開眼。数多の残像、全ての痕跡を捉える」
言葉も知性もなくしていたアモンから初めて意味のある言葉が漏れる。
それはまるで魔術の詠唱か宝具の真名解放のように。
ニューゲートたちもただそれを見ているだけではない。
砲撃、銃撃、能力の行使、さまざな手段で対抗を試みるがそれを見越して距離をとったアモンには当然足止めにすら至らない。
「焼却式アモン」
詠唱が終わる。
それとともにアモンの視線が一筋の光線となって世界を焼く。
其は全てを修めるものの一端。オリジナルのように人類の歴史全てを薪にするとまではいかずとも、『白ひげという名の時代』を焼き払うには十分であろう術式。
パシフィスタのレーザーすら些末に見える一閃が、白ひげ海賊団の放った砲弾銃弾その他の抵抗も些事と塗りつぶし一団に迫る。
それに対処しようとルフィは足元に手を伸ばした。
だがそこがモビーディック号、白ひげ海賊団の船であることに思い至り、さしもの彼も能力の行使に刹那ですらないが戸惑う。
その僅かの間にも危機は迫る。
そしてその僅かの間でそれに立ち向かう影があった。
美しく、黒く輝く金剛石が真っ先に焼却式アモンに立ち塞がる。
「“ブリリアント・パンク”!!!!」
白ひげ海賊団三番隊隊長、“ダイヤモンド”ジョズ。世界最“硬”峰の能力者だ。
異名の通り右半身をダイヤモンドに変え、さらに武装色の覇気を纏って硬度を増して突撃した。
激突。
世界一に斬撃すらものともせぬ男が、時代を焼却する光線に挑む。
ジョズもアモンも容赦なく敵をねじ伏せんと力を籠める。
しかし拮抗は一瞬だけ。
次の瞬間にはジョズの体が焼かれていく。
武装色の覇気を貫き、金剛の肉体を砕き、その命にまで危機が迫る。
一個の存在として根を下ろしたアモンと、サーヴァントの宝具で呼ばれたに過ぎないジョズでは霊基の差異があまりに大きく、矛を合わせれば自然そうなってしまう。
だがジョズは退かない。
皮膚を焦がし、肉を削がれ、骨を砕かれようとも立ち向かうことをやめはしない。
…………結果、相殺。
放たれた焼却式の全てをジョズはその身で受け止めた。
当然その対価は高くつき、かつてのマリンフォードと原因は違えど右腕がジョズの体からなくなっていた。
誰もが見惚れる勇姿であるが、誰もが目を背ける沈痛な光景でもある。
家族を守るためのジョズの献身は白ひげ海賊団の胸に義憤や悲しみ、様々な形で響いた。
「ジンベエーーーーー!!いるだろ!?」
一人、そうした感情に流されていない存在がいる。
モンキー・D・ルフィ、白ひげ海賊団ではない部外者であり、そして時に冷徹な判断を求められる一団の長である彼の行動は迅速だった。
「おう、ここじゃルフィ!」
呼び声に応えたのは一人の男。
かつての白ひげの傘下であるが故この戦場に馳せ参じた男。
元タイヨウの海賊団船長という一団の長であった男。
そしてルフィの船に乗った10人目の麦わらの一味。
見聞色の覇気によって彼もここにきているとルフィは感じていた。
「あいつのとこまで飛ぶからサンジが方舟にやった時みたいに頼む!“ゴムゴムのォ”!!」」
「心得た!魚人空手、“七千枚瓦回し蹴り”」
アモンとモビーディックの直線状に陣取ったジンベエが蹴りを構える。
そしてルフィがその足に向けて両手を伸ばしてしっかりと掴む。
「“JETロケット”!!」
「“ゴムシュート”!!」
ジンベエが振るった脚の勢いとルフィの突撃。二つの技が合わさった猛スピードでアモンへとルフィが突貫する。
二度目のビームを撃たせる前に、右腕を犠牲にしたジョズの覚悟に応えるために。
「“ゴムゴムの”!!」
アモンのもとにたどり着く寸前でルフィの体が黒く、大きく膨らむ。
迎撃、転移、アモンにどちらを許す間もない電光石火でルフィという砲弾が着弾した。
「“&ruby(ギガント・ジェット・シェル){巨人のJET砲弾}”!!!」
その一撃はまさに一騎当千。巨人すら見下ろす巨大な魔神柱アモンを吹き飛ばし、空中に舞わせた。
だが、ルフィは止まらない。
「“ゴムゴムのォーーーー”!!」
ルフィの体の膨らんだ部分が移動していく。
腹部から胸部へ、胸部から右腕へ。大きく逞しく膨らんだ腕はまるで巨人族の腕。
「“&ruby(エレファント・ガン){象銃}”!!!」
その巨大な拳でアモンを殴り、さらに大きく吹き飛ばす。
だがまだ終わらない。
ゴムの体を活かしてアモンに足を巻き付け逃がすまじとしがみつく。
そして左腕も右腕と同様に黒く大きく膨らませて
「と“&ruby(エレファント・ガトリング){象銃乱打}”!!!」
拳のラッシュを叩きこむ。
上体とゴムの弾力のみでの連打だが、それでも威力はすさまじくアモンは宙を舞い続ける。
さやかの持つ癒しの力とデーモン族の再生力で回復を続けようとも追いつかないダメージに、このままいけばアモンとて倒れただろう。
しかし悪魔アモンは万の時を重ねたデーモン族の大勇者。経験値の桁が違う。
アモンが海面を〈見下ろす〉。
すると魔力の炸裂が起こり、海面に大きな波濤が生じる。
波が立ちそれがアモンの末節に触れると、巨大な柱が溶けるように転移し、またもアモンは姿を消した。
「また消えやがった。ったく、ラチ明かねえ」
アモンがいなくなったことでルフィは空中に放り出される。
空を飛ばなければ海に落ちることになるが
「よっと。消える前にぶっ飛ばすか、消えた先に回り込んでぶっ飛ばすしかねえだろ」
「う~ん。エースもそれしか思いつかないか。おれ難しいこと考えるのだめだからな~」
エースが炎に転じて追いつき、そして二人してストライカーに着地する。
そしてアモンを探すため、スクアードを中心にして編成しつつある白ひげ海賊団に合流すべく動く。
――プルルルル、ガチャ――
そのタイミングでエースの持っていた子電伝虫が鳴り、応答することになる。
「魔神柱捜索なら私に考えがあるわぁ☆」
声はモビーディックにて待つ食蜂操祈のものだった。
「私の『派閥』に白ひげ海賊団の一部を加える。より正確に、無駄なく、リアルタイムで上方の共有ができる監視網を敷く。
発見次第それは私の知ることになり、場所の指示が即座に出せる。ルフィさんがその指示の前兆を感知すれば、襲撃までのタイムラグを極限まで減らせる。どうかしらぁ?」
それは極めて傲慢な要求だ。見ず知らずの女の指揮下に入るだけでなく、操らせろ、頭の中を晒せなど普通ならまず受け入れられることはない。
それを機器を通じて大衆に発したのなら怒号が起きかねない。
だが白ひげ海賊団は沈黙を守る。
答えるのは自分たちではない。決めるのは一船員のすることではない。ただ彼らは船長の命令ならばどんな無茶でもやるのだから。
「できるのか?」
子電伝虫から今度はニューゲートの声が響く。
実際、策は打たなければならない。固有結界は世界の修正力を受け、長く展開できるものではない。
いつまでもアモンが逃がしていては消耗戦で負けることになるだろう。
「『&ruby(エクステリア){外装代脳}』を宝具として持ってこなかったからぁ、令呪が必要になるけど。できる……いえ、やってみせるわ☆」
令呪を使う。それはこの戦いに間違いなく全力を尽くすという覚悟と誠意の表れだろう。
しかし伊介は賛同しないらしく、騒ぎ声がうっすらと子電伝虫越しに響く。
「犬飼さん。あの魔神柱を倒すのにサーヴァント数騎が必要というのは間違ってないわぁ。一方通行や垣根帝督なら分からないけれども、彼らも今はお互いぶつかり消耗している。
チャンスは今、この固有結界の白ひげ海賊団の力が必要なのよぉ。だから、まだあなたに生きる意志と聖杯を欲する理由があるなら。ここであなたも抗いなさい」
操祈はそれを静かに一喝した。
能力を使えば黙らせることも従わせることも容易いだろうに、それでも彼女は言葉を用いた。
さすがにその意味が分からないほど犬飼伊介も愚鈍ではない。
「……話は決まったわぁ。あとはあなたの決断次第よ、白ひげ海賊団船長『四皇』エドワード・ニューゲート!」
常盤台の女王が、同盟者である男に問うた。
ならば海に君臨する四皇として答えるのみ。
「スクアード。見聞色を扱える奴を選抜してキャスターにつけろ。
マルコ。エース。それにジンベエ、麦わら。機動力に長けたお前らが遊撃の中心になる。そのつもりで準備しとけ」
犬飼伊介の令呪が輝き、食蜂操祈に魔力が満ちる。
食蜂操祈の宝具によって白ひげ海賊団の一部の瞳に星が宿る。
再びアモンが姿を現した……それを見聞色により予見していた男が一人。
その情報は即座に操祈を通じて白ひげ海賊団に共有され、即時の対応が可能となる。
焼却式が再戦の狼煙のように放たれる。
脅威であった光線だが、予見できていたためにマルコが不死の能力を活用して受け止めきることに成功する。
悪魔を宿す者たちの戦端が加速していく。
◇ ◇ ◇
「さて、彼らは頑張っているかな」
固有結界を脱してルイ・サイファーは一人そう漏らす。
「彼らの手で明が地獄に送られるならそれでよし。もし叶わずとも私の手で行えばいい……だが、君には任せられない」
ルイの言葉に応えるように新たな影が現れる。
白と桃色を基調にしたドレス。どこまでも伸びて見える髪をツーサイドに纏め。花飾りのついた弓を携え。瞳を金色に輝かせて。
一人の少女が、光臨した。
「君の力を受けては穢れが払われ、せっかく受肉した明がまた英霊の座に還ってしまう。それは私も&ruby(おれ){了}も望まない。そうだろう?」
語り掛けられても少女は返事をしない。
ただ金色の瞳を虚ろに輝かせて、ルイのことなど視界に入っていないように振る舞う。
「……やはり私など眼中にないか。鹿目まどかという自我はなくしても、まるで抑止の守護者のようにひたすらに魔法少女を救い続ける。まさしく理というだけのことはある。
虚ろなその目で今も見ているのだろう?過去、現在、未来、美樹さやかや暁美ほむらも含んだ全ての時空の魔法少女を見通す規格外の『千里眼』の保有者……グランドキャスター、円環の理よ!」
円環の理と呼んだ少女に向けてルイが攻撃を放った。
刹那のうちに五月雨の如き銃撃の連打を放つが、その全てを円環の理は矢でもって打ち払ってみせた。
「さすがだ。だがいつまで私を無視できるかな。美樹さやかを救いに来たようだが、それとともに明を解放させるわけにはいかないのでね、ここは通せない。
そして君にも私を放ってはおけない理由があるぞ、グランドキャスター」
ルイ・サイファーの体に魔力が満ちていく。
そして美しい少女の姿から、三対六枚の翼と光と闇を暗示するような黒白の二本の魔羅を生やした魔王の姿へと転じて見せた。
「そう、ルイ・サイファーなど偽りの名。
我は人類を最も原初へと近づける大災害。母から離れ、楽園を去った罪から生まれた最も古い罪。人をあるべき起源に還す、遡及たる進化こそこの身の獣性。
我が名はルシファー!七つの人類悪が一つ、『回帰』の理を持つ獣の資格者である。さあ、冠位の術者よ。倒すべき敵がここにいるぞ!」
ルシファーがその正体を明かしたことで円環の理もついに目の前の存在を敵とみなし、無言で矢をつがえる。
グランドキャスター。ビーストⅡ。
聖柱や魔神柱、英雄と比してなお規格外の怪物が今ぶつかり合う。
◇ ◇ ◇
操祈の敷いた監視体制によりアモンと海賊たちの戦いは海賊有利に進んでいた。
一切の死角なく周囲を警戒し、アモンが姿を現した瞬間に誰かが襲撃することに成功を幾度も続けている。
飛行能力を持つマルコ、炎となって飛ぶエース、水中の移動速度ならば飛びぬけるジンベエ、巨躯に伴う歩幅を活かしたリトルオーズJr、そしてギア2の機動力で頭一つ跳びぬけたルフィ……どこに現れようと彼らのうち誰かが一番槍となり、そしてすぐにスクアードの指揮のもと白ひげ海賊団が続く。
圧倒的な力の源となるアモンの巨体だが、巨人討伐の経験もあるルフィ達には見つけやすく攻撃しやすい標的になってしまっていた。
「今のところは順調☆あとは時間との戦いねぇ。私の令呪、この固有結界。その二つが保てているうちに倒しきれるかどうか……」
魔神柱に転じる前のニューゲートとの戦いでアモンがずば抜けた回復力を見せたのは鮮明に覚えている。
首を折っても倒れなかったタフさを発揮し、現に白ひげ海賊団やルフィの集中攻撃にも未だに耐え続けているのだ。
それでも少しづつ魔神柱にダメージが蓄積しているであろうことは見て取れる。
あとは動きを止めることさえできれば心理掌握の影響下にマスターを置くことは不可能ではないだろう。
詰将棋のように少しづつ、確実に勝利に近づいていると操祈は考えていた。
(……あらぁ?派閥から何人か外れた?妙ね、令呪も切れてないし、魔神柱も姿を見せていない――)
突如として戦況に変化が生じた。
魔神柱の姿を確認する前に派閥内に犠牲者が出たのだ。
その事実にショックを受けながらも操祈は周囲を探っていく。透明化、超長距離からの攻撃などを想定してもあれほど大きな魔神柱の姿を捉えられないなどありえないのだから。
犠牲者が出たところを探れば、異変はすぐに見つかった。
そこには確かに脅威があった。魔神柱とは思えぬ、しかしその名残がどことなく見える怪物の姿が。
白と黄金と青を基調にした筋骨隆々の肉体。
陥没するように裂けた胸部から魔神柱の者を思わせる赤く大きな眼球。
頭部には世界樹の枝のように伸びる無数の黄金の魔羅。
見るものが見ればある者はデビルマンの、またある者は第一の獣の面影をその恐ろしくも神々しい姿に見出すであろう。
サイズは5mあるかどうか。その程度の大きさの者は白ひげ海賊団にも散見しており、魔神柱から姿を変えたことで気づくのに遅れが生じたのだ。
規格外の自己改造スキル、デーモン族の変身能力がより戦闘に適したカタチにその姿を変貌させ、改めて猛威を振るうアモン。
先ほどまでと比して矮躯と言えどその脅威は変わらない。
むしろ魔神柱の巨体に秘めた力が人型のサイズに圧縮されたようなパワーとスピードで白ひげ海賊団を蹂躙していく。
操祈が伝達するよりも先にそれに気づいたのは高みから戦場を俯瞰しているオーズだった。
雄叫びを上げ、隕石のように巨大な拳を叩きこむ。
だがアモンはそれを容易く真っ向から受け止め、カウンターの拳で大きくオーズを吹き飛ばす。
アモンが&ruby(エレファント・ガン){象銃}を受けて宙を舞ったように、オーズもまた宙を舞う。アモンも追って跳び、オーズの巨体を地面にたたきつけて白ひげ海賊団に甚大な被害を与えようとするが
「させねえよい!」
そこで操祈の伝達を受けた“不死鳥”マルコが割り込んだ。
人獣型へとその身を転じ、不死鳥の爪でアモンを切り裂く。オーズを追って空中に飛び出たアモンにそれを躱す術はないと断じていた。
だがアモンはデビルマンの持つ一対の黒い翼を背中から新たに生やし、飛行能力を得ることでマルコの攻撃を回避して見せた。
だがそこへさらなる追撃、オーズの肉体を足場にして新たな戦士がアモンに斬りかかる。
白ひげ海賊団5番隊長“花剣のビスタ”。世界一の剣豪とも渡り合う双剣がアモンに向けられた。
それを回避するであろう先にマルコが回り込み退路を断つ。
ビスタの刃を受け入れるか、マルコの爪に立ち向かうか……逡巡することもなくアモンはビスタを迎え撃った。
金属音。
刃が肉を裂く音でなく、刃と刃がぶつかり合う音が響いた。
ビスタの二刀、そしてアモンの両手にも二刀が握られ四刀がぶつかり合っていた。
さらにアモンの周囲にどこからともなく剣が現れ、弾丸のようにビスタに襲い掛かる。
それは美樹さやかの魔法少女としての力による刀剣生成、さらにデーモン族の持つテレキネシス。
召喚した二振りの剣でビスタの攻撃を受け止め、さらに無数の刃で反撃する。
「切断する」
技巧など欠片もない、ただ剣を叩きつけるだけの技未満の攻撃。
しかし並のサーヴァントなど置き去りにするアモンの力と速度で繰り出されればいくらビスタと言えども脅威となる。足場が不安定なオーズの体ではなおのこと。
ましてや撃ちだされる剣に限りはなく、弾いたと思っても再びそれがテレキネシスで襲い掛かるとなれば防戦一方にもなろうもの。
さらにその刃がマルコにも向けられた。
剣のないマルコは回避するしかないが、空を飛ぶことで巧みに避ける。
「我が眼を見よ。覗覚星、開眼」
その間隙でアモンが魔力を高め、胸部の眼球にそれが収束していく。焼却式の構えだ。
狙う先は今度こそ&ruby(キング){白ひげ}。
「おれがそれを許すかよい!」
襲い掛かる刃をその身に受けながら射線上にマルコが割り込む。
その瞬間に焼却式が放たれるが、十分な魔力を貯めていなかったのかマルコの翼と再生の炎によって防がれる。
「へっ、黄猿に比べりゃ温いにも――ぐっ!?」
焼却式の傷は即座に癒えた。
しかし裂傷は未だに体に剣が刺さっているため再生の炎があっても意味がない。
その刺さった剣をアモンがテレキネシスで再び動かし、マルコの体に新たな傷を刻む。
傷は消えても痛みは消えず、翼の裂傷は飛行から安定と速度を奪う。
その瞬間に飛びかかったアモンにはさしものマルコと言えど対抗できなかった。
悪魔の爪と牙が襲い掛かる。
突き立った剣によるダメージと合わさり、ついにはマルコの片翼を引きちぎるにまで至るアモン。
片翼を失くし、機動力と戦力を削がれたマルコの霊核を抉ろうとさらにアモンが牙をむくが
「魚人柔術、“海流一本背負い”!!」
アモンを呑み込むような勢いで水柱が立ち上った。
海侠のジンベエによる援護が放たれたのだ。
防御も迎撃も間に合わず、押し流されていくかと思われた。しかし海流にアモンが触れた瞬間、またも魔神は姿を消す。
そして即座に海流を投げてよこしたジンベエの目の前に転移した。
引きちぎったマルコの翼を口に咥えたまま、ジンベエも獲物にする気か両の拳を合わせて槌のように叩きつける。
ジンベエもかろうじて防御には成功したが、突如目の前に現れての不意打ちに耐えきれず大きく吹き飛ばされる。
それによってアモンの近くに戦士がいなくなり落ち着いたのか、咥えていたマルコの翼をバリバリと音を立てて咀嚼する。
嚥下音。
魂喰いなどでなく、悪魔が人を喰らい咀嚼するように、アモンがフェ二クスの翼を血肉にしていく。
魔力と腹が満ちたか、調子を確かめるように拳を開閉すると、再度海面に足をつけて転移する。
今再び、モビーディックへと。
モビーディック近くの海面に転移すると同時に大きく飛翔し、デビルマンの如く口腔から火炎を放射する。
「“鏡火炎”!!!」
だが本丸の守りは万全なもの。アモンの炎に勝る勢いでエースが炎の壁を作り叩きつける。
大悪魔アモンと言えど炎の扱いではエースに及ばず、吐き出した火炎の勢いも呑まれてエースの“鏡火炎”が目前まで迫る。
アモンはそれを避けることなく、なんと拳を叩きつけた。
「うわぁア!!」
メラメラの実は能力者の体を炎へと変える自然系悪魔の実だ。
すなわちエースの放った“鏡火炎”もまたエースの体の一部。もしその実体を捉えることができたなら、広範囲に広がる炎はあたかも魔神柱の巨体のように体のいい的になってしまう。
黒く染まったアモンの拳はエースの実体を捉え、鏡火炎ごと殴りぬいてみせたのだ。
「オイオイ、まさか武装色か?」
新世界では見慣れたものだが、それをまさか目の前の魔神までもが使うとは思いも及ばずニューゲートの口から驚嘆が漏れる。
魔神柱相手にはこれまでの戦闘で肉弾戦にはなっていなかったが、少なくとも正気を保っているようにみえた青いバーサーカーは使っているようには見えなかった。
姿かたちが変わっただけでなく、僅かな時間でそれまで習得したのかと脅威を覚える一行。
だがアモンの新たな脅威はそれに留まらない。
モビーディックの上空でエースを殴り飛ばした感覚を反芻するように拳を見つめると、さらに体に魔力を巡らせる。
起きた変化は二つ。
背中に生えた悪魔のような翼の他に、また別の雄大な鳥の翼が一対生えてくる。
そしてその翼から全身に青い炎が灯り、体に残ったダメージが癒えていく。
「……確かめたいのだけれども☆あれは一番隊長のマルコさんのそれ……不死鳥の能力だと思っていいのよねぇ?」
ニューゲートとエースと同様、船上でそれを見ていた操祈が二人に問うた。二人がほぼ同時に首肯したのを見ると操祈は彼女なりの推察を口にし始める。
「不死鳥……つまりはフェニクスね。ゲーティアに記された悪魔の一柱。序列は三十七位、爵位は侯爵。つまりはアモンと同一の起源力を持つということ。ついでに言うなら二柱ともにエジプト神話に由来するはずよぉ。能力の相性は悪くないでしょうね☆
悪魔は契約者に力を与えるもの。そして悪魔の実はそれを口にしたものに力を与えるもの、よねぇ?
神の子は自らの肉をパン、すなわち小麦になぞらえた。人の肉とは、すなわち穀。
マルコ隊長の血と肉と力……かつての同胞が宿る悪魔の実を口にしたアモンは新たにフェネクスの力をも得た。魔神アモン・フェニクスってところかしらぁ☆」
そう。
規格外の自己改造スキルによりデーモン族は無機有機、生体死体を問わず力を奪う。
アモンの超能力、明の経験値、さやかの魔術を持った魔神は今新たにマルコの覇気とフェニクスの能力を得たのだ。
「だがそれなら奴には明確な弱点ができたってこった。能力者になったのなら海に落とせばいい。能力者相手の経験値もおれ達は豊富に――」
「ライダー、少し聞いてくれ」
攻略を諦めないニューゲートに、ひたすらに考察を続けていた刑兆が意見を述べはじめた。
「魔神柱に質量があると聞いた時点で疑問だった。なぜあいつはおれ達の頭上に転移して押しつぶす戦術をとらないのかと。
それをやらなかったってことは、できねーんだろーよ。能力に制約があってな」
スタンドも、学園都市の能力も〈条件〉を満たせば強力なのであって当てはまらなければ真価を発揮はできない。
そして刑兆は近似とは言わないまでもアモンの戦術から連想する能力者がいた。片桐安十郎という弓と矢で射抜いた能力者が。
「水から水へ。それがあいつの空間移動の条件だと思うぜ」
海面から海面へ。波から波へ。ジンベエの放った海流からその出元へ。
空中に現れることは決してなく、常に操祈の監視網の視界の及ぶ範囲に現れた。
その仮説は操祈にも補強される。他の何かの位置情報によって能力を補強し、空間移動を可能とする能力というのは実例があり、アモンほどの大質量を転移するならそうした補助があった方が自然であると。
能力開発という外法の分野に秀でた二人の知見によってアモンの能力がついに露わになるも、それは一行を前向きにするような朗報とは言い難いものだ。
「つまり、なんだ。フェニクスの力を得たあいつは能力が発動できるならあらゆるダメージが即座に回復する。しかし奴の能力を封じるために海に放り込もうとしても水から水へ転移する能力によって退避されると」
「そう、なるわねぇ……」
加えて言うなら戦闘能力でもマルコやビスタら隊長格を制して見せた。
さらに派閥に入った白ひげ海賊団の幾人かが倒された影響で操祈の能力行使にもニューゲートの固有結界維持にも限界が近づいている。
風はここにきてアモンに吹いているようだ。
「ゴムゴムの“&ruby(ホーク・ライフル){鷹回転銃}”!!!」
だがこの男だけはそんなものはどこ吹く風と凍った海上でアモン相手に渡り合う。
自身の体とまどかの魔力のみが寄る辺であるため、二人と違ってほぼダメージはない。
イゾウやブレンハイムの銃撃、エースの火銃、ビスタの飛ぶ斬撃など援護を受けながらも蒸気を上げ、唯一アモンに優る速度を武器に互角の攻防を見せていた。
だがそれでは決定打に至らない。
人型になったアモンはルフィ相手に一方的に攻撃を受けることなく、ギア2の速さであっても直撃は避け致命打は回避する。
多少のダメージはあるが、さやかの治癒魔術とフェニクスの青い炎がそれを癒していく。
そしてダメージを負いながらルフィに追いすがり、覇気を纏った拳をルフィに振るう。
武装の扱いではルフィが優る故にそれがダメージになることはないが、剣戟や火炎が混ざればそれはルフィの身を削る。
魔神柱相手には回避続きの千日手、そして今度は回復能力による不毛な消耗戦。
「だったら!」
状況を打破しようと親指から空気を吹き込む。
魔神柱を追いすがる遊撃戦では解除していた宝具、ギア3を改めて発動するのだ。
「ゴムゴムのォ!!“&ruby(グリズリー・マグナム){灰熊銃}”!!!」
肥大化した両の腕にさらに覇気も纏わせて掌底を放つ。
アモンの全身すら覆いつくす巨人族の一撃。
だがアモンは真っ向からそれに渡り合う。
彼もまた腕に武装色の覇気を纏い、二本の脚と二対の翼でその身を支えて両の拳で迎え撃つ。
力は、互角。
だがその後の切り返しの速度が違う。
拳をぶつけ、威力を相殺した瞬間にアモンはルフィの腕を跳び越え本体の方へと踊りかかる。
伸ばしきった腕、何よりそれによって生じる隙はルフィの戦闘において必然生じてしまうものだった。
あわやアモンがルフィの首にたどり着くその寸前で
「“蛍火”!!」
「“群鮫”!!」
エースとジンベエが炎と水を飛ばして放つ。
相反する二種類の攻撃が同時にアモンに着弾し、ルフィの危機を救う。
「悪い!助かった!」
「礼はあとじゃ!こいつをどうにかんせんと」
二つの技のダメージも持ち前の回復力で癒えていく。
それを横目に、ついにエースやジンベエの体から光の粒子が立ち上り始めた。
ついに固有結界のリミットが刻一刻と迫っている。
――――――――ならばここで勝たねばならない。
「白ひげのおっさーーーーーーーーーーん!!!」
最も多く魔神アモンと拳を交わしたルフィは気付いていた。
こいつとて無敵ではない。回復を上回る量のダメージを叩きこめばそれは有効であると。
「おれが後は引き受ける!一気にコイツの体力削るから、援護頼む!」
ギア2ではいくら当てても倒し切れない。
ギア3ではいくら当てても押し切れない。
制限時間も残り僅か。ならば、ここで切るべきカードは一つ。
「まどかーーーーーーーーーーーーーー!!!」
だがこれは、今の自分一人でやれるものではない。
仲間の協力が必要になっている。
「ちょっと今までより疲れると思う!けど、お前もがんばれ!!」
「ッ!はいっ、ルフィさん!」
仲間の許しも得た。
真名を解放する。
覇気を纏い、草履を脱ぎ捨て、ゴムとなった筋肉を肥大・硬化して――――――
「ギア“4”――――“&ruby(バウンドマン){弾む男}”!!!」
ギア3のさらに先。さらなる宝具、ギア4。
アモンと並ぶ巨体。空をも蹴る弾力。刃も通さない硬度。
猛獣はおろか、神獣や幻獣クラスであってもなぎ倒しかねないモンキー・D・ルフィのさらなる戦闘形態。
「いくぞ怪物!!ゴムゴムのォーーーー!!」
拳を腕の中に収まるほどに収縮させ、アモンに向けて殴りかかるルフィ。
アモンは翼でもって空を飛びそれを回避しようとするが、空中を蹴ってルフィもまた空を飛び後を追う。
―――――速度ではルフィが優った。
追いすがる勢いそのままに拳を解放。アモンに向けて全力で殴りつけた。
「“&ruby(コング・ガン){猿王銃}”!!!」
アモンの防御は間に合った。しかしそれが効果を発揮するかと言えば話は別だ。
ガードの上から抑えきれなかった衝撃がアモンを彼方へ吹き飛ばす。
そして&ruby(バウンドマン){弾む男}の速度はアモンが吹き飛ぶ速度を上回る。手を緩めることなどなく、ルフィがさらに追撃を仕掛ける。
「ゴムゴムのォ!!」
「■■■ーーーーーーーーーーーー!!!」
アモンが雄叫びでそれに答えた。内に満ちるは怒りか、闘志か。少なくとも言葉など無意味と思っているのは伝わる。
獣のような声を上げて、しかし戦術はクレバーだった。
さやかの力で剣を召喚し、ルフィの体目がけて放つ。アモン自身も吹き飛ぶ勢いを翼で押し止め、武装した拳でもって迎撃に向かう。
剣閃。拳閃。いずれもルフィの体を捉えた。
されど&ruby(バウンドマン){弾む男}の壁は厚く。
覇気によって硬化した皮膚はその全てを無力と嗤うかの如く弾いてみせた。
そこへ返しの拳が繰り出される。
「“&ruby(カルヴァリン){大蛇砲}”!!!」
皮膚の張力すらも活かしたストレート。
放ったそれがさらに覇気の強弱によって伸縮を調節され、拳を繰り出したままに第二撃、三撃と追い打ちを繰り出す。
一つ一つがギア3の一撃すら凌ぐパワーで、アモンの体を彼方へと吹き飛ばし戦場を変えていく。
「おやっさーん!」
アモンを追って飛んでいくルフィを見送り、ニューゲートのもとへとジンベエが駆け寄る。
「あの姿は強力じゃが、覇気を消耗する故長くは持たん。それにいくらあの姿でも再生の炎の上からダメージを与えるには限界がある。ルフィの言うようにわしらも援護に向かわねば!」
麦わらの一味でもあるジンベエはギア4の強みも弱みも知っている。
ならばこそ助けが必要であるとも知っている。
固有結界の残っている残りわずかな時間が、ギア4の発動している短い時間が残された勝利へのリミットだと。
「分かってらァ。テメェら、尻を拭ってやれ!最後の一手だ、気合入れろよ!!」
鬨の声を上げ、船長に従う一味。子電伝虫を通じて白ひげの策が通達されていく。
「キャスター。おめェも――」
「もちろん☆いまさら盟約を反故にするなんてしないわよぉ……虹村さん、私にはあなたが協力してほしいんだけど☆」
白ひげ海賊団の作戦準備。
アモンとルフィの一騎打ち。
そのどちらもが佳境に入る。ギア4も、『&ruby(オックスベル・シンギング){白ひげという名の時代}』ももはや数分と保つまい。
「ゴムゴムのォ!!“&ruby(レオ){獅子}・バズーカ”!!!」
渾身の覇気を込めた一撃がアモンに入る。凡百のサーヴァントならばその一撃だけで座に還るであろう強力な一発。
だが、アモンはそれを受け止め耐える。
耐えてさえしまえば、新たに獲得した再生の炎により傷が癒え――――
ガチャン
と錠が閉じるような音がした。
発生源はアモンの右腕。発したものは枷のような形をした、冷たく大きな氷。
その氷に触れた瞬間、アモンの体から青い炎とフェニクスの翼が消える。
「そいつはおれの長年連れ添った悪魔だ。再生の瞬間も、その隙も誰よりおれが知ってるよい」
「凍った海面をくりぬくのが必要なのはいいが、片腕のおれにやらせる必要はあったか?」
「言うな、ジョズ。おれなど彫刻家でもないのに氷を刻まされた。そりゃ青雉の氷を切り刻むのは簡単ではなかろうが」
そう、ここはかつて頂上戦争が起きた地マリンフォード。
大将青雉が凍らせた海面の上に成り立つ戦場。
海の力に触れていれば能力者は力を発揮せず、そして水に触れていなければアモンは転移できない。
ジョズが氷を、ビスタが枷を用意し、そして復活したマルコが枷をアモンに嵌める。
環境と能力を最大限に活かし、アモンの能力の一部を封じたのだ。
その瞬間にルフィのギア4が終わりをつげた。
覇気と体力を消耗したルフィが落ちていく。
アモンがそれを見逃すはずもなく――右腕はマルコに極められているため左腕を振るい――追い打ちを狙う。
「“神火 不知火”!!」
「魚人空手“槍波”!!」
だが炎と水の槍がそれを阻まんと放たれた。
アモンはそれを幸いと態勢を整える。
炎で枷を溶かし、水で転移をしようとする……だがその狙いも予期されたもの。
二つの槍は空中で衝突して互いに打ち消す。炎は掻き消され、海水は蒸発し。
水蒸気爆発が引き起こされた。
二つの攻撃をあえて受けるつもりだったアモンはその衝撃をまともに受けさらなる損傷を負う。
ならばと口腔から火炎を吐き氷を溶かそうとするが、マルコがそれをさせるはずがない。
腕を決めたままアモンの口に脚を突っ込み、そのまま喉笛を貫かんばかり。
さすがにアモンも枷を溶かすのは無理と判断するざるを得ない。
ならば、と今度は空中から真っすぐ下へと猛スピードで降下していく。
海面にたどり着けば、アモンは転移ができる。そして能力者であるマルコを無力化できるはずだと。
神の杖が落ちたか、と言わんばかりの勢いでアモンが降下していく。
だがその行く先に、海はなかった。
周囲を見渡しても僅かばかりの水たまりすらなく、まるですべて干上がってしまったかのよう。
――――――視界に入るのは大気に走った巨大なヒビのみ。
「知らねえか?地震が起きると津波が来る。津波の前にどれだけ水が引いていくかで津波の大きさは予測できる…でけえぞ、この津波は。グララララララ」
グラグラの実。世界を滅ぼす最強の超人系。
放った震動は海震となり、津波を呼ぶ。海の水を引かせることでアモンの退路を断ったのだ。
せめてもの抵抗、と降下の勢いはそのままにマルコを地面に叩きつける。
躱すこともできただろうが、枷を残すことを優先してマルコはあえてその一撃を受け入れる。
地面に叩きつけられる衝撃の全てを自身とアモンの体に与え、氷の枷を砕かせない。
「■■■ーーーーーーーーー!!」
「ぅぅおッ!」
猛り狂ったアモンが勢いそのままにマルコを再度地面に叩きつけようとすると
「いい位置だ。キャスターの言ったとおりの場所に誘導してくれたな」
マルコの懐から姿を現したミニチュアの兵隊から声が響く。
それはニューゲートのマスター、虹村刑兆のもの。
「気ィつけな、バケモノ。そのあたりにはさきほどおれのバッド・カンパニーが地雷を敷設していた。下手に動くと吹っ飛ぶぜ?」
その言葉を合図にしたわけではなかろうが、アモンが一歩を踏み出した瞬間。
爆音。
バッド・カンパニーの地雷は常人の脚一本すら吹き飛ばすことはできない。
だからこそ火力の嵩増しにあるものを併用した。それは食蜂操祈が道具作成したリモコン、その炸裂による&ruby(ブロークン・イマジン){幻想壊し}。
しかしそれを合わせてなおアモンの強靭な肉体には大きなダメージにはならないだろう。
そのためさらに操祈は能力を上乗せした。
『&ruby(メンタルアウト){とある科学の心理掌握}』、その真価は微細な水分操作。
バッド・カンパニーの地雷の炸裂を目印に、による爆裂を機に、アモンの体内の水分子を操作して見せた。人ならざる怪物の精神の操作はできずとも、ただ水分を操るだけなら可能。
それによって起きた現象の名はキャビテーション。
水にかかる圧力の変化によって大量の気泡が生じ、その気泡が弾けることによって対象物に深刻な損害を与える現象だ。
操祈はアモンの体液に同様の現象を引き起こし、体内から大ダメージを与えた。
ルフィたちとの連戦のダメージもあり、ついにアモンが膝をつく。
そして操祈はアモンの体内の水分を操作したことで一つの確信を得た。
美樹さやかはそこにいると。
ならば残るは最後の一手だ。体内の美樹さやかを露出させることができれば『&ruby(メンタルアウト){とある科学の心理掌握}』の支配下に置き、アモンの暴走を止めることができるはず。
残る白ひげ海賊団の主力が一斉にかかる。
各隊長や、傘下の海賊団船長の刃がアモンに迫る。ルフィも覇気は使えないなりに全力で拳を打ち込まんと構える。
対してアモンもまたここまで見せていなかった切り札を投入してきた。
突如アモンの体内から泥のようなものが溢れた。その濁流でマルコも押し流され、アモンとの距離が離れてしまう。
それは魔術王がケイオスタイドと名付けた泥、すべての生命の根源足る混沌、インキュベーターがグリーフシードの穢れと呼ぶもの。
さらに泥から新たな影の軍団が姿を表し、アモンを守るように次々と周囲へ襲い掛かる。
其はインキュベーターたちが魔女の使い魔と呼ぶもの、魔女Oktavia Von Seckendorffが従える心象風景の一端。
――――――ケイオスタイドより生まれた新たな生命を魔術王はラフムと呼んだ。
繰り出された&ruby(ラフム){使い魔}は楽団員のような姿のHolger。
たかだか使い魔と侮るなかれ、原初の海より生まれたその力は群れになれば天の鎖に宿る邪神すら餌食とする。
Holgerの軍団が白ひげ海賊団の主力やルフィに襲い掛かり、アモンのもとへたどり着くのを阻む。
連戦の疲労、そして消えかけた固有結界の不安定さの相まって皆苦戦を強いられる。
アモンも気付いているのだ。もうこの固有結界は長くないと。
ならば、とルフィが地面に手を伸ばしさらなる能力を行使しようとするが
「よせ、ルフィ!ここはおやっさんの心象風景じゃ。それをお前さんの能力の支配下に置いてしまえばその瞬間に世界が上書きされてしまう!」
ジンベエが咄嗟にそれを止めた。
ダメもとの覇王色の覇気も通じず、サーヴァント級の戦力はみな抑えられた。
万事休すか。
伊介も、操祈も、刑兆も、ニューゲートやルフィですらもそう思った。
――――――そこに、一筋の希望が光臨する。
◇ ◇ ◇
円環の理とルシファーの衝突はまさしくこの世の物ではない戦いだった。
もし食蜂操祈の手による避難が進んでいなければ尋常でない被害が出たであろう。
その戦いにも決着が近づいていた。
「終わりだな、円環の理」
決着をつけようとするのはルシファー。
対する円環の理はボロボロになってしまったドレスを纏いながら堂々と向き合っているが、胸のソウルジェムには穢れが満ち、生半可でなく消耗しているのが見て取れた。
「正直、意外と手ごたえがなくて驚いているよ。核となる人格……鹿目まどかが抜けてしまえばそんなものか?暁美ほむらはこういう事態は想定していなかったのだろうが」
ルシファーの手に魔力が満ちていく。
円環の理も矢を一矢放つが、ルシファーは涼しい顔でそれを躱して反撃する。
「受けよ。我が座す地獄の最奥コキュートスの再現、絶対零度の一撃を!」
放たれた極大の氷魔法。
魂すら凍てつかせる一撃はソウルジェムを本体とする魔法少女にも致命的であろう。
ルシファーの放つ魔術の中でも極めて強大な其れが円環の理に直撃した。
「ふむ、やったか」
そう呟いて戦場をあとにする……はずだった。
だが絶対零度を受けてなお平然とした円環の理の姿が目に入った瞬間、ルシファーの背筋についぞ感じたことのないような寒気が走る。
「……そうか。妙だと思ったよ。結局君は私のことなど眼中にないのだな」
円環の理がその千里眼で見据えるのは、冠位の敵である獣ではない。魔法少女だ。
先ほど放った矢はルシファーに抵抗すべく放たれたものではない。エドワード・ニューゲートの固有結界に向けて放たれたものだったのだ。
穢れを払う存在である円環の理のソウルジェムがなぜ穢れをため込んでいるのだ?ダメージの表れではなく、武器とするものだったのだ。
「私の中から出てきて……」
円環の理が初めて言葉らしい言葉をつぶやく。
それに応じるようにソウルジェムの穢れが放出され、一つの像を結んでいく。
「……そうか!そうだな、君もまた私の同類というわけだ!ビーストⅡ、ティアマトの泥より産まれし仔よ!ラフムなどに留まらない力の一端を解放したか!
円環の理の&ruby(オルタナティブ){別側面}、鹿目まどかの&ruby(ドッペル){影法師}よ!
いや、あえてこう呼ぼう……ビーストⅠ、魔女Kriemhild Gretchen!」
そう。
救済の魔女。その性質は慈悲。
この星の全ての生命を強制的に吸い上げ彼女の作った新しい天国へと導いていく。
この魔女を倒したくば世界中の不幸を取り除く以外に方法は無い。
もし世界中から悲しみがなくなれば魔女はここが天国であると錯覚するだろう。
その功績をもって彼女のクラスは決定された。鹿目まどかも円環の理も、彼女の一面。グランドキャスターすら仮初の冠位。
其は個人が到達した、人類を最も端的(最短)に救う大災害。
全ての人類を天国に導き、この世を楽土へと作り変える慈悲深さこそ彼女の獣性。
その名もビーストⅠ。七つの人類悪が一つ、『憐憫』の理を持つ獣の資格者、その一人である。
円環の理はすべての魔法少女と魔女の力を振るうがゆえに、彼女自身の魔女としての力すらも&ruby(ドッペル){影法師}として発動したのだ。
目には目を。歯には歯を。獣には獣を。
放たれた慈悲のドッペルがルシファーの魔力を奪う。
命を生み出す母であるビーストⅡは、命を吸い上げるビーストⅠの力に敗れた。
そうなることは分かり切っていた、と無感動に円環の理は千里眼で彼方を見る。
固有結界の中、かつての友の成れの果てのために放った慈悲深い一矢の行方を見送り、彼女は再び責務へと還っていった。
◇ ◇ ◇
ラフムによって抑え込まれたのは白ひげ海賊団の実力者たちとルフィだけ。
操祈は眼中になく、マスターに裂く戦力などあまりに惜しいと無視されている。
それが、アモンの敗因となった。
固有結界にどこからともなく一本の矢が撃ち込まれる。
真っすぐに、真っすぐに鹿目まどかに向かってその矢は飛んだ。
それは&ruby(コネクト){繋がり}。魔法少女が仲間へと力を分け与える現象。
矢を受けると即座にまどかの様子に変化が生じた。
白と桃色を基調にしたワンピース。花飾りのついた弓。それはいつか夢見た、魔法少女になった自分の姿にそっくりだった。
疑似サーヴァントという概念がある。
神霊をはじめとしたサーヴァントとして召喚するにはあまりに強力すぎる存在を現世に喚ぶために、召喚対象を適した依り代に憑依させる召喚方法だ。
容姿、性別、その他様々な要素が似通っていたり適合していなければ依り代足り得ない。
もしもの話、神霊の域に達するであろう円環の理を疑似サーヴァントとして召喚するならば最も適した依り代は誰だろうか。
答えは一つしかない。それは『鹿目まどか』以外にありえないだろう。
円環の理の力の一部を受け取り、今のまどかは疑似サーヴァントと呼べる存在になっていた。
そうするべきだ、というように静かに弓を構え。
そうしなければならない、というように矢をつがえる。
まどかの脳裏に聞きなれた声が響いた気がした。
――――ひとりじゃないよ――――
だからはっきりとそれに答えた。
「うん、今だね!」
残心。
一流の弓兵は放つ前からその一矢が的に届くか分かるという。
円環の理を一部受け継いだせいか、まどかには矢を放ったその瞬間に必中の映像が浮かんだ。
放たれた矢は真っすぐと空を駆け、その風切り音にさらされただけの使い魔すらも浄化していく。
さもありなん、今の鹿目まどかはビーストⅡを撃つものグランドキャスターであり、魔女を浄化するもの円環の理である。
ただの一矢ですべてのラフムを薙ぎ払い……そしてその矢はアモンにも届いた。
それと同時に固有結界もついに限界を迎えた。
虹村刑兆、エドワード・ニューゲート、鹿目まどか、モンキー・D・ルフィ、そして倒れた美樹さやかが、元居た空間にそろって帰還する。。
そこはグランドキャスターとビーストⅡの決戦跡。
規格外の存在の衝突にしては一帯が更地になる程度で済んだのは軽微なものだが、つい先ほどまでの光景と一致しない様に面々は驚きが少なからず見え隠れする。
「浄化、されてしまったのか……!」
悲鳴のような声をあげたのは満身創痍のルシファーだ。
鹿目まどかの姿と魔力、そして倒れる美樹さやかの姿が己の敗北を悟らせた。
ダメージも相まって力なく地に膝をつく。
「さやかちゃん!」
さやかの姿に怖れ半分、期待半分の声をあげてまどかが駆け寄る。
獣の姿から浄化することはできた。だが命まで救うことができたかはわからない。
先ほどまで戦っていた相手に無防備に駆け寄るのにニューゲートとルフィが無警戒なわけではないが、連戦のダメージで初動が遅れ、疑似サーヴァントとなったまどかを止めることはできなかった。
「……ぁ、まどか」
「さやかちゃん!」
手を取ると小さくさやかが言葉を発した。
まどかは歓喜交じりにその声に答える。
しかしさやかはまどかの姿を目にすると悲し気な表情を浮かべ、そして何かを察したように目を細めた。
「今の私さ、バーサーカーと合体してるんだ」
「え?」
「円環の理の力でソウルジェムが浄化されて、本当なら私も円環の理の一部に戻るはずなんだけど。バーサーカーと一つになって、私の肉体と無理矢理つながることで現世に留まってる、地縛霊みたいな状態」
「それって……」
ぽつぽつと呟かれるさやかの言葉を咀嚼するたびにまどかの表情に悲しみが満ちていく。
「うん。ある意味で今のまどかと同じ疑似サーヴァントってやつかな。その状態をやめたら私はもう逝くことになる」
ようやく会えた友人との再会。しかしそれが一時のものでしかないのだと、二人の眼尻に涙が浮かぶ。
「でもさ、それはそれでいいんだよ。だってさあ、まどかは知ってるでしょう?私は本来はもうとっくにこの世にいないはずなんだ。
色んな偶然が重なってここにいるけど、それだって本当はあり得ないことなんだよ。恭介と仁美におはようって言えて。パパとママにただいまって言えて。でもって、こうして私の友達であるまどかにまた会えたんだから言うことないって。なーんだってアメリカ留学に行って私のこと知らないなんてことになるかなー、この子は」
さやからしい笑みを浮かべて、涙を浮かべるまどかの頭を励ますように撫でる。
「その姿……疑似サーヴァントになったなら分かるでしょ?円環の理のこととか、英霊のこととか」
「う、うん……やっぱり、それなら私は魔法少女にならないと――」
「ううん。それは必要ないよ」
迷いながらも一歩を踏み出そうとしたまどかの言葉をきっぱりとさやかは止めた。
そしてがっしりとまどかの手をとる。力になる、というように……あるいは逃がさない、というように。
「あんたの願いは正しいよ、まどか。正しくて、尊くて誰にも冒させたくない綺麗な願いだ。円環の理は絶対にこの世界に欠かせない。だからこそ私はこの聖杯戦争に参加したんだ」
さやかの眼が決意に満ちる。
やっと見つけた、自分の願いと友達の願いを踏みにじらない方法を実現するために。
「でもさ、ほむらの願いも分かるんだ。私だってまどかには一人の人間として生きてほしい。ママさんみたくバリバリかっこいい大人になってさ、パパさんみたいないい男見つけてさ。
立派になったタツヤくんと喧嘩したりしてもいい。魔法少女の幸せを願うだけじゃなくてあんたには自分の幸せを掴んでほしい」
さやかの手に力がこもる。
まどかの手を強く握る。
「まどかの願い。ほむらの願い。私の願い。その三つを矛盾なく叶える方法、やっと思いついたんだ」
「ッ、待って、さやかちゃん!私が裂けちゃう!」
二人の繋いだ手を通じてさやかの方へと魔力が、因果が流れ込んでいく。
それに伴い神秘に満ち溢れたまどかの桃色の衣装は失われ、対照的にさやかの胸に置かれたソウルジェムに輝きが満ち、衣装も青を基調にした魔法少女のものへ変わっていく。
「もともと私は鞄持ちまでやってたんだもん。だから、私はそこに還る力を利用すればいい。それに今の私はデビルマンの力だって使えるんだから――」
魔法少女の姿だったまどかが、完全に元の姿に戻る。疑似サーヴァントとしての力も失い、只人へと堕ちる。
対してさやかのソウルジェム――魂は神秘に満ち、肉体という枷を解き放たれて一個の概念へ進化する。
「答えは一つ。私自身が円環の理になることよ」
世界が、改変される。
悪魔により塗り替えられた円環の理は、その在り方を美樹さやかに乗っ取られ、新たな形へ。
大規模なものではない。ただ円環の理の一部だったものがその中心に収まるだけで編纂事象に及ぼす影響は微小なもの。
だが当事者であるまどかからすれば力と運命を書き換えられた大改編だ。
「……ごめんね、まどか。結局は私とほむらのわがままだ。私たちの思う幸せをあんたに押し付けちゃってるのかも」
新たな円環の理となったさやかがまどかに頭を垂れる。
別離と謝罪の涙を浮かべているが、それでも彼女の頭に後悔はない。
「これでお別れかな。大丈夫、円環の理はこの美樹さやかちゃんがしっかり務めるからお任せあれっ。あ、また私に会いたいからって魔法少女になるとかダメだよ~?」
「待って、待ってよさやかちゃん!こんなの、こんなのってないよ!!」
まどかの頭はぐちゃぐちゃだ。
円環の理を奪われたことを怒るべきなのか。さやかとの別れを悲しむべきなのか。
「―――――うん、まあまどかはそういう子だよね。私の理不尽に怒るよりも、別れを惜しんでくれる優しい子だ。自覚がないかもしれないけど、あんたのそういうところすっごくいいところだよ」
逝こうとしていたところ、振り返って目じりの涙を拭いまどかに語り掛けた。
「もう誰の役にも立てない、なんて悲しいこと言わないで。まどかの願いがあったから円環の理はある。今のまどかが円環の理じゃなくてもその始まりを作ったのは確かにまどかなんだから。まどかに助けられた私に、これくらいの恩返しはさせてよ。
だから。幸せに生きて、っていうのが負担ならさ。あれだ、ほむらの奴を幸せにしてあげてよ。あいつは間違いなくまどかなしじゃあ幸せになれない奴だから」
暁海ほむら。
その名を聞いてまどかの表情が変化する。
そう、彼女もまたこの聖杯戦争にきているのだ。
―――――ならば、せめて。彼女を助けるくらいのことはしなければ。
「お、凛々しい顔。やっぱりママさんの子供だ。うん、大丈夫だよね」
まどかのことはもう心配いらない、とさやかなりに確信できたのだろう。
美樹さやかとしてでなく、&ruby(グランドキャスター){円環の理}として目下最大の心配事の種へと視線を向けた。
「ルシファー。バーサーカー、不動明は私を支えてくれた恩人だからその友達のアンタに今はどうこうしないけど。
もしまどかやほむらに危害を加えようってんなら、恋慕の魔女の成れの果て……愛欲の獣として顕現してでもアンタを止めるから」
概念へ昇華しようとも、獣に堕落しようとも友を守ると誓いを胸に。
円環は理は昇天する。
これから無限に続く、救済の旅路に向けて。
「じゃあ、今度こそ。バイバイ、私の一番の親友」
人として最期にそう言い遺して円環の理は彼方へ消えた。
それと同時に残された美樹さやかの肉体が末端から灰になっていく。
天戯弥勒の施した処置によって、この地で死体は魂魄まで残さず消えてしまう。
一人の人間の痕跡が跡形もなく消えていく様を見るのは、まどかの悲嘆もあって周囲に沈痛な空気を振りまく。
そこへ風切り音。そして肉を裂くような音。
その場にそぐわない異音に皆の目がそちらに向く。
こぽり、と血を吐く音。
視界に飛び込むのは一本の剣。たった一つ残った、美樹さやかがこの地にいた物証。
それが食蜂操祈の胸に突き立っている光景だった。
「美樹ちゃん、の……さやかの願いに害なす者は、ここで俺と地獄に堕ちろ……!」
下手人の声が響いた。
それは灰へと還りつつある美樹さやかの亡骸から発せられたもの。
だが、その体の本来の宿主であった少女はすでに昇天している。ならば、そこにいるのは。
「明……!ケイオスタイドなしでも、美樹さやかの肉体と合体して受肉していたのか!」
その正体にルシファーが真っ先に気付く。
それは即ち彼の目的が達せられるということ。そして、親友がここで最期を迎えるということ。
浮かべる表情には歓喜と抑えきれない悲哀が混ざり合う。
「ルシ…ファー。お前がここにいる理由も、なぜ俺にそんな顔を向けるのかも理解できないが……いずれその理由を尋ねに、行くぞ。コキュートスで震えて待ってろ……!」
剣を一つテレキネシスで操り、言葉を発するだけで限界を迎えたのか。
美樹さやかの亡骸も不動明の魂も、灰へと還り風に舞った。
「ねむったんだね……明。もっとも、この眠りは永劫のものではないけれども」
それを見届けた、ボロボロのはずのルシファーの体に力が漲っていくのを一行は感じた。操祈への攻撃もあって空気が殺気立つ。
「おっと、そう警戒しないでくれ。円環の理に敗れ、最早私に余力はない。手出しをすれば愛欲の獣が単独顕現するなどとまで言われた以上、私は手を出さないよ。
Homulillyならともかく、Oktaviaにできるのかは疑問だし&ruby(おれ){了}は止まる気はないだろうが。これで私の観劇も幕引きだ」
そう言うと緊張の糸が切れたのか倒れるように地に伏せる。
「ビーストⅠ、Kriemhild_Gretchen。ビーストⅡ、ルシファー。もし本当にビーストⅢの資格者がOktavia_Von_SeckendorffかあるいはHomulillyならば。獣の顕現は連鎖する。
ヒトナリ。秩序と混沌の狭間で君は一体いずこに至る?天秤の英雄に上り詰めるか、比較の獣へ堕ち果てるか……」
無念ではない。だが未練はある。
「鹿目まどか。冠位の英雄に足る者よ。憐憫の獣たるものよ。これより南で君の仲間が、タダノヒトナリが闘っている。
相手は聖柱。魔神柱と比して劣らぬ怪物だ。興味があるなら行ってみるといい。&ruby(おれ){了}もそろそろ着いてもおかしくないころだ」
もう一人の自分と、二人の&ruby(けもの){英雄}に後を託して。
「コキュートスで明を待つのはダンテとゼノンでいい……私は一足先に『母』となって現世で待とう。&ruby(おれ){了}よ、後は君が見届けてくれ」
ルシファー……否、ルイ・サイファーも一時この世を後にした。
そしてもう一人。
食蜂操祈も今彼岸へと遠ざかりつつある。
心理掌握の応用で体液の流出を抑えようとも、霊核を貫かれては儚い抵抗にすらならない。
「犬飼、さ――」
だが食蜂操祈は死を無抵抗に受け入れるような諦めのいい性格ではなかった。
マスターの名を呼び、彼女が反応したところに。
リモコンを向け、宝具を使用した。
「残り二画、全令呪を以て命じる♡宝具を使って、記憶を刻め」
操られた伊介が令呪を行使させられた。
そしてその命令によって宝具の力はブーストされ、命令通り対象に記憶を深く刻み込む。
それによって力を使い切って食蜂操祈の霊基は消失した。
しかし宝具の力は令呪の後押しがあったために現存する。
変化が生じたのは二人。
「なッ…!んだこれ……!」
一人は虹村刑兆。突如送り込まれた知識に僅かながら混乱をきたす。
「落ち着いて☆私の知ってる一方通行と垣根帝督に関する知識力を送ったわぁ。死にかけの状態だったから一部しか送れてないと思うけどぉ、あのニ騎の攻略には役立つと思うわよ☆」
もう一人は犬飼伊介。
瞳に星を浮かべて、まるで食蜂操祈のように振る舞う。
「&ruby(わたし){食蜂操祈}の記憶を&ruby(ダウンロードし){刻みこん}た。基本が私になるから淑女力マシマシ、って感じだゾ☆」
「……それで、聖杯戦争を続ける気か?」
伊介の令呪は使い切り、サーヴァント食蜂操祈も消失した。
それでも操祈の頭脳を駆使して戦い続けるつもりなのかと、ニューゲートたちはそう思った。
「いいえ、そんなつもりは微塵もないわ」
だが操祈はそれにノーと答えた。
「令呪の魔力が残っている限りマスター、サーヴァントいずれが倒れてもその命令は影響力を及ぼし続けるわぁ。でも逆に言えば令呪の魔力が消えれば、人格の転送なんて複雑な真似泡沫と消えるでしょうね☆
つまり、私があと少しの命であることに変わりはないっていうこと」
「なら、なんでこんな真似を?」
遺言でも残すのか。最後に一花咲かすのか。
同盟相手とはいえ、頭を弄られた刑兆は敵意交じりに伊介(みさき)を睨んだ。
「あなたたちに頼みたいことがあるのよ、虹村さん、エドワードさん。報酬は先払い、あなたに刻んだ二人のサーヴァントの情報力。
それで犬飼さんを無事に元の世界まで……電話ボックスの向こうにまで帰してあげてほしいの」
口にした目的は傍若無人に振る舞ってきた操祈のものとは思えない、誠実で慈しみあるものだった。
「何よぉ、そんなに意外?」
「……多少はな。まあ百歩譲ってそれはいいとしても、なんで犬飼を操る必要がある?」
「彼女意地っ張りだもの。勝ち目がないって言っても、聞き耳もたないわよぉ。これでもプロの暗殺者らしいし、狙われたら虹村さんでも面倒よ☆
……もうすぐ私が表層にも出ていられなくなるけど、それでも犬飼さんには帰るという目的を刻んでおくからお願い……お願い、します」
伊介にしろ操祈にしろ、らしくもなく頭を下げる。
……押し付けられたとはいえ報酬の情報を受け取っている以上、刑兆も無碍にはできない。
「なんだってそこまでする?短い付き合いだが、仲がいいようには見えなかったが」
「サーヴァントだもの。死んだ先達が生きている後進を見捨てるわけにはいかないわぁ」
それに、と。
虹村刑兆の羽織っている傷ついた黒い学ランを見る。
彼もいつまでも学ランだったわけではないが、それでも。操祈の憧れる英雄の姿としてはそれが印象深い。
「仮にも英霊の端くれが、巻き込まれた女の子一人無事に返せないようじゃ、ヒーローに怒られちゃうわぁ☆」
「……こうまで言ってんだ。女子供を守りたいってんなら、それ以上は野暮だぜ刑兆。近くの電話ボックスの場所は分かるか?」
「ここから少し東へ進めばあるはずよぉ。あ、鹿目さん。あなたは……どうするの?虹村さんと一緒に闘うのかしらぁ?サーヴァントは知り合いみたいだけど」
虹村刑兆は己の意思で戦い続ける。
犬飼伊介は庇護者の意思で離脱する。
鹿目まどかは…………
悪魔は去りて、聖杯戦争は未だ続くのか。
それは戦士の決断にゆだねられた。
&color(red){【キャスター(食蜂操祈)@とある魔術の禁書目録 死亡】}
【A-4/南部/二日目・未明】
【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(大)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
1:ひとまず犬飼を送り届ける
2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。
3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。
4:公衆電話の破壊は保留。
[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
→アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。
→キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。
※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。
※学園の事件を知りました。
※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。
※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。
※心理掌握により、一方通行と垣根帝督に関する知識を一部得ました。
【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】
[状態]ダメージ(中、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(大)、『&ruby(ウィーアーファミリー){手出しを許さぬ海の皇のナワバリ}』発動中
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.ひとまず犬飼を送り届ける
2.刑兆に従う
[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。
※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。
※宿およびその周辺をナワバリとしました。
※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。
【犬飼伊介@悪魔のリドル】
[状態]疲労(中)魔力消費(大)微熱、PSIに覚醒
[令呪]なし
[装備]ナイフ
[道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争から脱落する
0:食蜂操祈ダウンロード。淑女力大アップ☆
1:電話ボックスから帰還する
[備考]
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。
※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。
※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。
→症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。
※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』のよって操祈の記憶をダウンロードされ、彼女の影響下にあります。ただし令呪の魔力が減ることでその影響も減っていきます。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によって目的を聖杯戦争の脱落に書き換えられました。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]魔力消費(大)
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:人を殺したくないし死にたくもない。けれど願いのために聖杯を目指す。
0.さやかとの別離に深い悲しみ。
1.ほむらを探す。ほむらの力になりたい。
2.タダノとも話がしたい。南で戦ってる……?
3.聖杯戦争への恐怖はあるが、『覚悟』を決める。
4.魔女のような危険人物は倒すべき…?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。表に学校名とクラス、裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※アーチャー(モリガン)とタダノは同盟相手ですが、理由なくNPCを喰らうことに少なくない抵抗感を覚えています。
※セイバー(流子)、ランサー(慶次)、キャスター(食蜂)を確認しました。
※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により食蜂に親近感を抱かされていました。
※暁美ほむらと自動人形を確認しました。
※夢を通じてルフィの記憶を一部見ました。それによりニューゲートの容姿を垣間見ました。
※一時的に円環の理の疑似サーヴァントになっていたことで座及び円環の理に由来する知識を一部得ています。
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]ダメージ(中、応急処置済み)、覇気使用不可(残り10分弱)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1..バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.タダノとの同盟や今後の動きについてはまどかの指示に従う。
4.肉食いたい。ギア4使って腹減っちまった。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。
※名乗るとまずいのを何となく把握しました。以降ルーシーと名乗るつもりですが、どこまで徹底できるかは定かではありません。
※見聞色の覇気により飛鳥了の気配を感知しました。もう一度接近した場合、それと気づくかもしれません。
※フェイスレスを倒したと考えています。
[共通備考]
※タダノ&アーチャー(モリガン)と同盟を組みました。
自分たちの能力の一部、バーサーカー(一方通行)の容姿や能力などの情報を提供しましたが、具体的な内容については後続の方にお任せします。
――ほむら、聞こえる?――
「!? 美樹さやか?どこに!?」
――あ、よかった。まだ念話通じた。ごめん、もう逝くから手短にすますね――
「行く?逝く、ってあなたまさか」
――うん、負けちゃった。でも大丈夫。円環の理は安定したから――
「円環、ってだからそれは何なのよ……?」
――それも詳しくは話してられないや。まどかに聞いて。西へ、まっすぐ。まどかと合流して。あとは、お願い――
&color(red){【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語 昇天】}
&color(blue){【円環の理 安定】}
とある世界で、一人の女の子が生まれ落ちた。
とある世界に、一人の青年が流れ着いた。
新たな物語が胎動を始める。
&color(red){【バーサーカー(不動明)@デビルマン 死亡】}
&color(red){【ルイ・サイファー@真・女神転生 STRANGE JOURNEY 転生】}
&color(blue){【To be continued 『デビルマンレディー』......】}
【A-4/南東部/二日目・未明】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(大)、焦り
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(一つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
0:すぐにまどかのもとへ。
1:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。
2:キャスター(フェイスレス)を倒す。
[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
→女神ノルンが死亡したことで制限が解かれています。本人はまだ気づいていない可能性が高いです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※さやかと連絡先を交換しました
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。
※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。
※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。
【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(中)、ダメージ(中、右腕は戦闘に支障あり)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※バーサーカー(一方通行)を確認しました。
※様々な音楽、魔術をヒアリングしたことで新たな音楽を習得しました。
時のオカリナで演奏することで主催陣営の空間(?)に転移することができるようでしたが、今後も同じように成功するかは不明です。
[共通備考]
※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました。
※浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※ライダー(白ひげ)を確認しました。
※ルイ・サイファーを確認しました。
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|~|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|~|
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|065-b:[[魔なる柱雷のごとく出で]]|[[鹿目まどか]]&ライダー([[モンキー・D・ルフィ]])|067:[[We go! ……and I'm home]]|
|~|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])|~|
|~|[[犬飼伊介]]|~|
|~|キャスター([[食蜂操祈]])|&color(red){DEAD END}|
|~|[[美樹さやか]]&バーサーカー([[不動明]])|~|
|~|ルイ・サイファー|~|
2018-06-19T00:04:14+09:00
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