美樹さやか&アーチャー◆ACrYhG2rGk





あたしって、ほんとバカ。



何が正義の味方か。
何が魔法少女か。

結局あたしは、美樹さやかは――マミさんのような本当の正義の味方には、なれなかった。
望んで魔法少女になったはずなのに。
一人で勝手に絶望して、ヤケになって。
まどかや杏子にもたくさん迷惑をかけた。
まどかはずっとあたしを心配してくれてたのに、ひどいことをたくさん言ってしまった。
杏子は何の関係もないあたしを助けようとして、命を捨てた。
二人とも、キュウべえの言うことを鵜呑みにして間違ったこんな馬鹿なあたしを、助けようとしてくれたのに。
結局、二人を裏切ってしまった。



もう何もかも嫌になった。
投げ出して、放り捨てて、消えてしまいたい。

なのに、何故。
まだ生きているんだろう。

答えはわかっている。
あたしの中には未練があるからだ。
諦めきれない、生きていたいっていう欲望……。
この聖杯戦争に勝ち残れば、全部やり直せる。
それに惹かれてしまったんだ。

でも、あたしにはもう立ち上がる力はなかった。
最期の瞬間ははっきりと覚えている。
魔女になったあたしを止めるために杏子が死んだ。
あたしが殺したのといっしょだ。
あの光景は、魔女になっていてもはっきりと覚えていた。

聖杯を手に入れれば全部なかったことにできる。
そうとわかってはいても、戦う気力なんて湧いてこない。
だって、あたしはもう、一人なんだから。
まどかも杏子も、ここにはいないのだから。

「しかし、私がいる」

俯き、膝を抱えていたあたしの頭上に影が落ちる。
それは、あたしに与えられたサーヴァント。
岩のように逞しい体の巨人。
その巨人が、あたしを見下ろしている。

「少女よ、そなたは一人ではない。そなたには私が……このヘラクレスがいる」

アーチャー、ヘラクレス。
それがあたしのサーヴァントの名前。
ヘラクレスといえば、有名なギリシャの英雄だ。
世界史がさほど得意ではなかったあたしでも知ってる。
実際……相当、強いんだろう。
サーヴァントの強さなんてあたしにはわからないけど、ほとんどのステータスがAで埋まってる。
それに、こうして向かい合って感じる圧力は下手な魔女の比じゃない。
それこそあたしが魔法少女の力で本気で戦ったって、勝負にもならないんだって確信できる……。

「望むなら、私はそなたの剣となろう。
 必ずや聖杯を掴み取り、そなたに捧げると誓おう」

ヘラクレスさんはあたしに戦えって言う。
でも、あたしはそれでも、立ち上がる気にはならなかった。
仮に聖杯で生き返ることができたとしても、あたしが魔女になった事実を消せたとしても。
あたしが覚えているのだから。
まどかを裏切ったこと、杏子を裏切ったこと、そしてマミさんをも裏切ったってことを。
いまさらどんな顔をしてまどか達に会えるって言うの。
あたしはもう、救いなんて信じない。
このままここで、ひっそりと消えていく。それでいいんだ。

「やり直せばいい。聖杯はそれを可能にする」

それは、ヘラクレスさんにも叶えたい願いがあるから、あたしが戦わないと困るんだろう。
でも、あたしはもう無理。
誰か他の人を当たってほしい。
たとえやり直せたって、こんな惨めな思いをずっと抱えていかなきゃいけないのは嫌。

「そうではない。裏切ったのなら、詫びれば良い」

詫びる……謝る?
そんなことしたって、許されるわけないし。
あたしのせいで杏子は死んだ。聖杯で生き返ったって、はいそうですかって水には流せない。

「許されなければ頭を下げられんか。そなたにとって、友とはその程度の価値しかないか」

……なによ。
なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ。


「過去を悔いているのなら、未来でそれを塗り替えるしかないのだ。
 たとえ許しを得られずとも、まずはそこから始めなければそなたはどこにも辿り着けぬ」

だから、なんであんたに説教されなきゃいけないのよ!
あたしは別に許してもらいたくなんて……!

「これは、本来有り得べからざる奇跡だ。
 そなたは今一度やり直すことができる。もう一度、友と向かい合うことができる。
 それはきっとそなただけではなく、そなたの友にとっても救いとなるのではないか?」

……っ、それは。
まどかと、杏子。二人にとっても……?
そうだ。考えてみれば当然だ。
二人はあたし以上に傷ついたはずだ。
あたしだけが被害者みたいな顔してたけど、二人はもっと辛い思いをしたはずなんだ。
心ない言葉で傷つけたまどか。
命を投げ出した杏子。
あたしが今、しなきゃいけないことって、一つしかない。

「二人に……謝りたい……!」

あたしってほんとバカ。
いつもいつも自分のことばっかりで、あたしを心配してくれる人のことを考えもしないで!

「ごめん……ごめん、まどか、杏子。ごめん……」

ボロボロと涙が溢れる。
こんな簡単なことからずっと目を背けてきた。
でも、気付いてしまったからにはもう、いじけてなんかいられない。
震える両足に力を込める。
赤ん坊みたいに手をついて、ゆっくり身体を起こしていく。
立つ。立てる。
もう、立てる……ってことはつまり、戦えるってことだ。
ヘラクレスさんを見る。
あたしのサーヴァントは、ここに現れた時からずっと同じポーズを取っている。
あたしに手を差し伸べたまま、動いてない。

「……ヘラクレスさん。あたし、やっぱり戦う。絶対に諦められない願いがあったって、思い出したから」
「ならば、この手をとれ。戦うのは私の役目だ。
 しかし一人では戦えない。私も、そなたも。
 我らは二人で一つ。故に、そなたが自らこの手を取らねば私もまた戦えない」

思えば、この人はずっとあたしが立ち上がるのを待ってくれていた。
強制されたからじゃなく、諦めからでもなく、あたしが自分の意志で立ち上がるのを。
この人なら……信じられる、かもしれない。
あたしは、ヘラクレスさんの手を取った。

「ここに契約は成った。
 我が名はヘラクレス、大神ゼウスの子なり。
 勝利をそなたに捧げると誓おう!」

雷かと錯覚するような声でヘラクレスさんが叫ぶ。
でも不思議と怖さや恐ろしさは感じない。
どこか温かい、安心できる声だった。
この人となら、あたしは……戦い抜けるかもしれない。
今度こそ、絶望に負けずに。


【マスター】
 美樹さやか

【出展】
 魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
 魔女もキュウべえもいない世界で、まどかと杏子に謝りたい

【参加時期】
 魔女化して杏子と相打ちになった瞬間

【weapon】
 ソウルジェム

【能力・技能】
 回復魔法を得意とする魔法少女。
 使用する武器は魔力で生成したサーベル。何本でも生み出せる

【人物背景】
 見滝原中学校に通う2年生で、鹿目まどか?と同じクラスの親友。
 幼馴染の上条恭介に一途な想いを寄せており、治療不可能な怪我によってバイオリン奏者になる夢を絶たれた恭介を救うため、巴マミの死後、キュゥべえと契約を交わして魔法少女となる。
 恭介と親友の志筑仁美との三角関係に直面したことをきっかけに、人間ではなくなってしまった自分は恭介と結ばれることができないと思い詰める。
 その後はまどかや杏子の言葉にも耳を貸さず、心身共に消耗しつつ無謀な戦いを続け、結果急速にソウルジェムに穢れを溜め込み、信念も見失った末に「人魚の魔女」へと変貌。佐倉杏子と相討ちになり消滅した。

【方針】
 ソウルジェムの汚染を避けるため、自分はできるだけ身を隠して戦闘は極力アーチャーに任せる。


【クラス】
 アーチャー
【真名】
 ヘラクレス@Fate/stay night

【属性】
 秩序・中庸
【パラメーター】
 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力A 幸運A 宝具A

【クラス別スキル】
 対魔力:B…魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
         Bランクは魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 単独行動:C…マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。Cランクならば1日は現界可能。
【保有スキル】
 神性:A…生前は半神半人で死後は神に迎えられた為、最高レベルの神霊適正を持つ。
 千里眼:B…視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。
 パンクラチオン:B…拳闘と組技を複合させた世界最古の総合格闘技。ヘラクレスの師であるケイローンが得意としていた武術であり、極めればセイバーの斬撃すらも受け流せるほど。
            刃物を通さない魔獣「ネメアーの獅子」を裸で絞め殺したことからスキルとして付与された。

【武器】
「ヒュドラの毒矢」
 ヘラクレス愛用の弓矢にヒュドラの毒を塗ったもの。弓はヘラクレスの身長ほどもある大型の弩弓。
 かつてヘラクレスは九つの頭を持った水蛇ヒュドラを討伐した。ヘラクレスはこのヒュドラの血が猛毒であることを知り、矢に塗って使うようになった。
 その後ヘラクレスは妻デイアネイラを襲おうとしたケンタウロスのネッソスをこの毒矢で射殺する。ネッソスの血はヒュドラの毒が回り、同じものとなった。
 ネッソスは絶命の間際、デイアネイラに自分の血は媚薬になること、ヘラクレスが浮気しそうだと感じたら使うようにと言い遺した。
 デイアネイラはこれを信じた。ヘラクレスがオイカリアの王女イオレーに心を奪われたとき、ネッソスの血を媚薬と信じて使用した。
 ヘラクレスはヒュドラの毒に侵され、癒やすこと叶わず死亡した。また、ヘラクレスの師ケイローンの命を奪ったのもこの矢とされる。


【宝具】
「十二の試練(ゴッド・ハンド)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自分
 生前の偉業で得た祝福であり呪い。十二の難行を乗り越えた褒美として、神の祝福(呪い)によって得た不死性。
 正確には、十二の試練を無傷で乗り越えたという逸話が昇華したタイプの宝具。自身の肉体が屈強な鎧と化したもの。いわば肉体そのものが彼の宝具となっている。
  1 Bランク以下の攻撃ダメージを無効化
  2 致死ダメージを受けても十一回まで自動蘇生。ただしHPは半減した状態で蘇生する
  3 一度受けた攻撃に対し完全な耐性を得る
 以上三つの効果を有する。
 さらにアーチャーとして現界したヘラクレスは生前の武芸を己の意志で行使できる。そのため一度その身に受けた攻撃は見切ることが可能となり、次回からは回避率に高いボーナスが加算される。
 マスターの魔力次第では消費した蘇生回数を再度増やすことも可能だが、一般的な魔術師では一生かかってやっと一つというところ。

「龍閃・射殺す百頭(ナインライブズ・ドラゴンエッジ)」
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人
 彼の持つ万能攻撃宝具。一つの兵装ではなく、生前の偉業「ヒュドラ殺し」で使った弓の能力を元にヘラクレスが編み出した、言わば「流派・射殺す百頭」。
 その本質は、攻撃が一つに重なる程の高速の連撃。状況・対象に応じて様々なカタチに変化する「技」であり、こちらは対人用の「ハイスピード9連撃」となる。
 一度に放つ九本の矢はそれぞれ違う軌道を辿り、ほぼ同時に敵に到達する。
   壱(いち)の矢:唐竹(からたけ)
   弐(に)の矢:袈裟(けさ)
   参(さん)の矢:右薙(みぎなぎ)
   肆(し)の矢:右斬上(みぎきりあげ)
   伍(ご)の矢:逆風(さかかぜ)
   陸(ろく)の矢:左斬上(ひだりきりあげ)
   漆(しち)の矢:左薙(ひだりなぎ)
   捌(はち)の矢:逆袈裟(さかげさ)
   玖(く)の矢:心刺突(しんぞうぬき)

「龍咆・射殺す百頭(ナインライブズ・ドラゴンブレス)」
 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:900人
 彼の持つ万能攻撃宝具。一つの兵装ではなく、生前の偉業「ヒュドラ殺し」で使った弓の能力を元にヘラクレスが編み出した、言わば「流派・射殺す百頭」。その本質は、攻撃が一つに重なる程の高速の連撃にある。
 状況・対象に応じて様々なカタチに変化する「技」であり、こちらは対幻想種用の「ドラゴン型のホーミングレーザーを9発同時発射」となる。

【人物背景】
 真名はギリシャ神話の大英雄ヘラクレス。神々や数多の怪物を倒したとされる世界屈指の英雄。
 彼を奉る神殿の支柱となっていた斧剣を触媒にアインツベルンのサーヴァントとして召喚された。
 アインツベルンが「バーサーカー最強!」と思ってしまっていることと、第四次聖杯戦争のことから手駒に余計な意思を持たせたくなかったためにバーサーカーとして召喚された(complete material IIより)。
 神話中で何度も発狂する伝承があることから「狂戦士」のクラスへの適正はそれなりに高いが、「魔術師」以外の全クラスに当てはまるほどの武芸百般を極めた武人である。

 今回はバーサーカーではなくアーチャーとして召喚されたため、喋れるようになった。
 ステータスとスキルも若干変化し、宝具に「射殺す百頭」が追加されている。
 本来ヘラクレスはアーチャーのクラスで最大限に能力を発揮することができるとされ、狂化した状態では失っていた戦闘技術も完全に再現できる。

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最終更新:2015年01月25日 20:49