誰がために命を燃やす◆A23CJmo9LE


穹撤仙は己がマスター、浅羽直之を背負い病院に向かっていた。
止まらない鼻血、充血した眼、発熱、加えるならなぜか向上した魔力など多くの病状を発症しておりこのままでは聖杯戦争どころではないと考え、その足を早める。
病院のあるであろう都市部を目指しつつ、ついでに個人経営の医者でもないかと目を配っていた。
しかし都市部は遠く医院も見つからない。一応駆けてはいるが病人を抱えてサーヴァントの速度で全力疾走するわけにもいかず、今もなお垂れる鼻血の感触に些か焦りを覚える。

「ほ゛んとに、す゛み゛ません……」
「そんな、謝るようなことじゃないよ」

足手纏いになっていることに、血で汚してしまっていることに申し訳なさを覚えまた詫びる。
といっても背負う側としては大して気にしていない。病人を責めても仕方ないし…意味は違うが血に汚れるのもなれたモノだ。

そんな彼らの耳にサイレンが聞こえてきた。
この地へと招かれた時のような電話のベルではなく、ありふれた救急車のものだ。

「ん、救急車か…浅羽君、いったんあちらに向かうよ」
「はい…」

発熱はともかく、止まらない鼻血が尋常ではない。意識の混濁も僅かに見られ、造血剤など必要なんじゃないかと思える。
便乗などするつもりはないが、専門家の意見や処置を一足早く受けられる可能性があるならそれに縋りたい。
正確な病院の場所も把握したいところだ。

そう考え、二人はサイレンの方へと向かう。
そこで待つ狂戦士のことも、追い駆ける別の狂戦士のことも知らず。



◇  ◇  ◇

その救急車の行き着いた地、D-4地区の公園。
そこで救急車を呼び出された主従と、それを追ってきた主従が対峙していた。

「■■■■■■!!」

雄叫びをあげ、飛びかかるバーサーカーのサーヴァント、一方通行。その姿は人のそれ、しかし言動は獣のそれ。
敵の側に己がマスターがいる……人質にされようものなら勝機はない……だからこそ勝負を仕掛けなければならない。
一刻も早く敵の手の内から回収しなければ。バーサーカーらしからぬ、ずば抜けた知性の判断に従い主君に手を伸ばす。
せめて損傷を与えないよう飛び道具の使用は避け、マスターの救出と敵の殲滅のためにその力を振るわんとする。

「おおおおおおお!!」

対峙するのもまたバーサーカーのサーヴァント、不動明。宝具、『悪魔の体に人の心持つ戦士(デビルマン)』を開放し人の姿を捨て悪魔の力を露わにする。
狂戦士でありながら人を信じる強い思いで狂える人格を抑えた、理性あるバーサーカー。
心優しいマスターに従い交流を第一とするもマスターの障害となるならば、敵と判断したならば容赦はない。
突撃する敵影に合わせてカウンターの拳を合わせんとする。

規格外とも言える狂戦士二騎は向かい合い、そして互いに殺意をもって、今交錯した。
その初撃は……

「ぐうっ…!」
「■■…」

一方通行の胴体にデビルマンとなった明の拳が吸い込まれたと思いきや折れたのは明の手首。
ひるんだ明に追撃を入れようと一方通行が手を伸ばすが僅かに距離をとりそれを回避する。

(耐久がEXクラスだったとしてもこうも一方的になるものか…!?)

さやかに念話でステータスを確認したいところだが戦闘のさなかに意識を裂くのは厳しい。
直接の肉弾戦を避けるために翼でもって飛翔し、敵頭上から電撃を放つ。確かに当たったと思ったが…命中寸前で軌道を変え、七色の光になって消失した。
何が起きたのかはその場にいた多くの者に理解できるものではなかったが、少なくとも一方通行にダメージはない。
事実何事もなかったかのように中空に座す明目がけて手を伸ばす。血液、生体電流、はたまた魔力か、体を流れる何かの流れを乱す魔の手が迫る。
それを横からたたきいなそうとするが、何かに阻まれ逸らすこと敵わず、しかたなく宙を舞い回避する。

(おれの超能力も効かない…触れることも叶わない、か)

自己改造のスキルでもって折れた骨を繋ぎながら思考する。一見無敵にも思える敵の能力に隙はないか考える。
どうやらバリアーのようだが本当に触れることはできないのか?通り抜けるものは何一つないのか?力ずくで破れるものか、なんらかの攻略法があるのか。

「■■■■■ーーー!」

飛翔する敵を追い自らも重力のベクトルを操作・増幅させ跳ぶ。
少しでも離れたのならばマスターの下に行きたいところだが今の一撃を見てはそうはいかない。
かつてロシアで魔術を反射した時には今のように完全に反射することはできずに乱反射する現象が起こった。
サーヴァントと化し魔力でその身を形成するようになったためか、生前よりも対応できる魔術の範囲は広がったが、敵の一撃は解析不能な能力。
雁夜のもとへ向かい、攻撃が乱反射して当たってしまう…そうなる前に奴を仕留める。
本能的な戦意と理論的な殺意が噛みあい、救出よりも戦闘を優先する。幸いか先の敵のように打撃を無効化されることはない。





「ぐ、痛ぅ………ふふ、ははは…いいぞ、殺れ、バーサーカー!」

異形の戦士に対しても優位に立ちまわる己がサーヴァントを見て高揚する雁夜。
肉体に巣食う蟲は魔力供給のために今も彼の肉体を文字通り蝕んでいるが、その苦痛も意に介さないかのよう。
先の戦闘での相手が相性が悪かったこともあってその興奮はひとしおだ。やはり俺のバーサーカーは強い、と充実感に酔う。
敵の前に身をさらしている状況は賢明とは言い難く、できるならば一方通行と合流を試みるべきなのだが、障害を抱えた身でサーヴァントの闘いに割って入ることなど望むべくもない。
しかたなく敵マスターである少女への警戒をしつつも現状に甘んじる…そこまで深い思考が出来ているかは怪しいところだが。

「待ってください!私たちにはまだ戦わない選択もあります!聖杯がちゃんと願いを叶えるものであるとまだわかったわけじゃないでしょう!?もう少し、調べて、考えてからでも……」

その少女は交戦を始めたサーヴァントをよそに未だ対話を試みようと続ける。
サーヴァントと二人論じてきた聖杯への不信論を唱え、一時休戦を申し入れる……もし聖杯が真であるならば自らの手に収めることも考えているが、いったんは話をしようとする。
それを耳にした雁夜も消耗を少しでも抑える意図あってか、戦端は開かず口を開く。

「俺には、もう時間がない……一刻も早く聖杯を手にしなければ…」

そう言ってフードをとると、その下から現れた異様な風貌に少女は驚きの声を漏らす。
顔半分の壊死しかけた皮膚には内側から切れたような出血痕もあり素人目にも尋常ならざる容体…長くはないことが見て取れた。

「それに、聖杯の真偽なんて俺にはどうでもいい。あいつは…臓硯は聖杯さえ手にすれば桜ちゃんを解放すると約束、したんだ…」

肉体精神両面から押し寄せる苦痛に耐えるように、自らに言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「聖杯さえ渡せば、桜ちゃんを助けられるんだ。あいつはあの娘を利用して聖杯をとろうとしている……だから聖杯さえあれば彼女は必要ない。
彼女のために聖杯が必要なんだ。俺は…俺はそのために聖杯戦争に参加した!」

血を吐くように言霊を吐く。辛苦にさらされ、身を削り、生を投げだしてでも一人の少女を救おうと言うのは美しい誓いに見える。
しかしかつて近似する願いをかけたさやかにそれはある種歪に映る。

「あの、ちょっと…」

僅かなトゲ、小さな疑問、それを投げかけようとするが



――――聞こえるか?聞こえている筈だ――――



その場にいる全員の頭に響き渡る念話。
予想外の展開にマスターは問答をやめ耳を傾ける。明はもちろん、一方通行まで拳を収め一時休戦の構えだ。

「うそ、もう脱落者が出てるなんて……」

出遅れた。こちらはようやく一人目の参加者と接触したばかりだというのに、他所ではもう積極的な戦闘が行われているというのか。
放送が終わり、その内容に無力感と焦燥感がこみ上げる。

「ぐぅッ、がぁぁぁぁッ…!」

それとほぼ同時に突然、間桐雁夜が悲鳴を上げる。
脱落者が出たことで安堵し、気に止めていなかった苦痛に気付かされた?否。
想定の倍いるという敵の数に絶望した?否。
ただその身の蟲が貪り喰らう速度と量を増したのだ。
脊髄を食む蟲、神経を溶かす蟲、血管をかじる蟲、臓腑を侵す蟲、蟲、蟲、蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
その身を走る苦痛と嫌悪感に耐え切れず声を上げる。

それが意味することとは…魔力供給、ひいては戦闘の激化。
それを朦朧とした意識で感じ取りサーヴァントの方に視線を向けると放送を聞き終えた二人がマスターから距離を置き再び闘争を始めていた。




蒼のバーサーカーの一撃は、宝具と狂化による上昇がなければ虚弱な一方通行には悉くが必殺の死の嵐。それらを能力ですべて無効化する。
白のバーサーカーのチカラを宿した腕は触れれば命を刈り取る死神の鎌。近接戦の戦闘技能で勝るゆえ明に回避は難しくないが、一撃受ければただでは済まない。
互いの攻撃、全てが必殺。
命を、殺意をむき出しにただの一撃を浴びせんと、千載一遇の機会をものにせんとしのぎを削り合う。



それは神話の再現であった。



かたや《神ならぬ身にして天上の意思に辿り着くもの(レベル6のさらにその先)》に最も近い《最強の超能力者(レベル5第一位)》
迎え撃つは《かつての神の片腕(ルシファー)》と戦乱を繰り広げた《デーモンの勇者を宿す悪魔人間(デビルマン)》

充分に発達した科学は魔法と見分けがつかない…超一流の魔術師にして科学者、アレイスター・クロウリーにより調整された一方通行の能力はもはや魔法の域。
神の跋扈する時代、世界は神秘に満ちていた…数百万年前に地上を席巻したデーモン族、その中でも最強の勇者を支配してのけた不動明の能力は正しく神代のそれ。
超常たる力は尋常ならざる現象を生み出す。

大地よ、裂けよ…ベクトルを操作して地を砕き、石礫を放つも飛翔により回避する明。
雷よ、あれ…再び電撃を放つが、一方通行が不完全とは言えそれを反射する。
旋風よ、あれ…一方通行が空気を操作し刃のように放つが、雷光を目晦ましとして明はそれを回避する。
炎よ、あれ…明が口腔から火炎を放ち一方通行の周囲一帯を焼き尽くそうとするも、電撃と同様乱反射されダメージには至らない。

魔術に理解ある聖杯戦争の参加者は呆けたように見入り、巻き込まれた形になるNPCの救急隊員は余波ゆえか埒外の事象ゆえか意識を失っている。


……突然炎の中から右手を突き出し白い影が駆けた!
まるでそれが有効打であったかのように炎を懸命に払い、勝負に出る。

それは『一方通行』の数少ない隙の一つ、生前格下の能力者であってもダメージを与え得た菩提樹の葉。
電気系の能力者が酸素を放電現象によりオゾンにしたように。周囲一帯が燃焼し酸素が消耗したように。
脳に十分な酸素が行きわたっていなければ能力者は十分な演算ができない…素の身体能力では劣る一方通行にとってそれは急所となる逸話だ。
そのために広範囲の火炎による攻撃には全力で対処する。
完全な反射は叶わないため、右腕に知る限りの神秘の法則を纏いそれで敵の攻撃に触れ、ひねりいなして進む…まるで憧憬するヒーローのように。
そして変わらず左腕は神秘を持たぬものすべての流れを乱す死神の鎌として振るう。

「■■■■■ーーー!」

右の好敵手、左の毒手。
触れただけであらゆる法則を乱す両の手でもって決着を狙う。
……だが拳打の戦で明が上回るのはすでに示された。最低限の動きでそれを回避し

「狂ったせいで馬鹿の一つ覚えか!?優秀な能力が泣いてるぞ!」

ゴウッ!と風切音を立てて蹴りを放った。工夫のない蹴り、このままでは『反射』され折れるだけのはずだが…
ビッ、と一方通行の頬に小さな傷が出来た。

「やはり空気は通るようだな!」

視覚がある、つまり光は通る。聴覚もある、ならば振動と媒体である空気も通る。その仮説は真であった。
確信をもって手刀、足刀を続々と当らないように、掠めるように放つとそのたびに僅かに、しかし確かに傷が刻まれる。
超高速の白打によリカマイタチ現象を引き起こし皮膚を裂く。それがこの裂傷の原因だ。
空気の流れは『反射』しても引力に従い別の箇所に真空が発生するためにダメージそれ自体を回避はできない。
喉元や目と言った急所から外すことが出来ているので無意味ではないが。

ただのカマイタチでサーヴァントが傷つくのか?それは原因による。
アーサー王の風の鞘による烈風、一方通行のベクトル操作による旋風など高位の神秘を宿す事象ならばダメージとなり得る。
明の肉体は悪魔アモン、数百万年の時を刻むデーモンの力を顕現したもの。
蓄積した神秘だけならば半世紀を戦い抜いた大海賊や傾奇者も、数百年の時を生きた吸血鬼やサキュバスも凌ぐ。
加えてD-4、この地区はサイキッカーを覚醒させるPSI粒子に満ちた一種の異界だ。
ゆえに、不動明がこの地で放つ真空波は十分にサーヴァントを殺傷すると言えよう。

距離をとれば火炎、近接戦ではわずかながら裂傷。
現状は近接技能の差でわずかに明が有利、法則の把握が出来れば一方通行有利に傾くが……

「あッ、ぐ…ぅ」

長期戦はマスターの才覚的に極めて不利。魔力以上に精神肉体面での消耗が激しい。

「ッ、そのままじゃ本当に死んじゃいますよ、私の魔法なら少しなら治せるはずです。あのサーヴァントを止めてください!
これで聖杯が偽物だったら無駄死にですよ!」

明らかに苦しむ雁夜に対して癒しの術を交渉材料として話を続ける。

「必要、ぐっ…ない。数が多いなら急がないと……俺は聖杯を手に入れて彼女を助けるんだ!」

朦朧とした意識でもはっきりと否定する。容易く交渉に乗るような軟な覚悟で臨んだ戦争ではない。
根底に根付いた魔術師への差別意識もありほぼ聴く耳を持たない。

「ああ、もう!彼女のため彼女のためって!自分は無いの!?だいたいホントに彼女のためになるの!?」

拉致のあかない問答にさすがに苛立ち、感情露わに怒鳴りつける。
子供っぽく当り散らしてしまったのもあるが雁夜にかつての自分と似たものを感じたせいもある。
誰かのために身を削り尽くす…それを純粋に行うことは難しい。自分の本当の望みを見失い、誰かを救った分誰かを呪わずにはいられなかった愚か者だった故の問い。
加えて言うなら強い思いゆえに世界改変までやってのけた悪魔のこともあってだ。

「?当然だろう。彼女だけじゃない、彼女の家族だって―――」

凛ちゃんだって彼女を助ければ喜んでくれるだろう。そうでもしなければあの娘には顔向けできない。
だって俺は葵さんを……


ち が う


俺の想いが痛否定されていいはずがない痛あれが葵さんであるはずが痛ない許され痛るわけがない彼女痛のため痛に戦って痛幸せに痛なって
彼女を痛助ける痛痛ためならどんな苦しみにも痛耐えて痛俺には痛好きな痛痛人が痛彼女のことが痛何よりも大切だ痛からどんな痛こと痛も
俺は痛なんの痛ために痛痛痛誰痛のせいで痛誰だ?彼女痛痛って?桜痛ちゃんを助け痛る葵さんに痛痛痛時臣が痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛
俺の痛痛痛痛痛痛助け痛痛痛痛痛痛たかった痛痛痛痛痛彼女って痛痛痛痛誰痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛だっけ痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛

「あ、あああアアアァァァ!!!」

想いを否定する敵を理解しない女を聖杯戦争の参加者を排除する
人の持ちえるあらゆる感情が脳内に渦巻き本能的に翅刃虫の群れを放って目の前の敵を殺そうとする。

「ちょっ、なになに!?」

逆鱗に触れてしまったことは察するが、突然の攻撃に驚き慌てて迎撃。
魔法少女の姿へと転身し、剣を振るって蟲を落とす。
グロテスクな外観と不気味な羽音、顎の音に嫌悪感を覚えるが、そこは魔女退治に慣れた身。難なく撃退する。

「あ…が…あぁぁぁ…」

そんな魔術師としては半人前にも満たない術の行使でさえ彼にとっては文字通り身を削る必死のもの。
激痛に苛まれもはや体は痛みでできているのではと思える域にまで達し、耐え難い痛みで視界が白く染まるとともに、間桐雁夜は意識を喪失した。



そして夢を見た。
病的なまでに白い肌、杖をついた一人の男…雁夜に従うバーサーカーのサーヴァント、一方通行が栗色の髪をした少女と歩いていた。
自分と同じく少女を大切に思っているのだと、字の如く夢うつつに考えていた。
場面が変わる。
再び白く染まる視界…今度は苦痛による明滅ではなく本当の意味での白、一面の雪景色。
そこにバーサーカーがいた。そしてその目の前には栗毛の少女が成長したような娘が

血に ま み  れ て

『……あ、な、た、の、せ、い、だ』

その言葉と共に先ほどまで頭を塗りつぶしていたあらゆる感情が、肉体を責め苛む苦痛が、自分のものともバーサーカーのものともつかぬダメージがフラッシュバックして




「うわぁァァァ!!!」

痛みによって意識を失った罪人は、悪夢によって意識を取り戻した。
現実にも夢にも安息の地がなくなった彼には

「…こ、ろせ。殺せ殺セコロセコロセ!バーサーカァー!!」

あらんかぎりの力でもって目の前の現実を否定することしかできなかった。
そしてその命をうけ、マスターの危機を知りサーヴァントが動く。

「■■…■■…mnbf殺wq」

既知の法則では目の前の敵は理解できない。
可能と不可能をもう一度再設定。
目の前にある条件をリスト化し、その壁を取り払う。

「■■■…■■■!!!」

一方通行の背からナニカが噴き出す。
黄昏よりも昏き色、宵闇よりも黒き色。『黒キ翼』、この世に存在するあらゆるベクトルを支配下に置く、科学の頂点が持つ最強の非科学。
現状の攻防でじわじわと削り合うよりは大技で決めた方がマスターへのダメージは少ないと判断し、力を開放する。
その異様な翼に、暁美ほむら/ルシファーと近似するものを感じた二人は警戒心を強めるが

ギュガッ!!

とその翼が振るわれた後には敢然たる闘いをみせていた不動明の姿はなく
彼方に吹き飛ばされた敗者がいた空間だけがポツンと存在していた。

「……………………え?」

ステータスに大きな差はなかった。事実先ほどまで互角に、むしろわずかながら明の方が優勢だった。
にもかかわらずあの翼が出た瞬間に決着はついてしまった…圧倒的な力。
絶望を通り越して放心する。

ドサリ、と人の倒れる音。
『黒キ翼』への供給で大きく消耗した間桐雁夜が今度こそ完全に意識を失ったのだ。
それを見たか、二人の方へと歩む一方通行。

「…あ」

翼はすでに収まっているが、それ抜きでも先ほどまで繰り広げた神域の闘争は記憶に新しい。
仮に抵抗しても無意味だろうが、その意思はすでに死んでいる。
可能性があるとすれば倒れた雁夜に刃を向けることだが、そうする前に一方通行なら大多数のマスターを百度は殺せる。
そうして歩み寄った一方通行は

轟!!

と腕を振るい……

間桐雁夜を支えて足裏にかかる重力のベクトルを操作しいずこかへと飛び去った。




「…………なん、で?」

そこには美樹さやか一人が取り残された。
サーヴァントを失ったマスターを殺すまでもないということか?

「僕の足止めと令呪の消耗を狙ったんじゃないかな。呼び寄せるので一画、回復で二画」
「!」

背後から声をかけられ驚いて振り向く。
そこにいたのは肩まで髪を伸ばし、人を背負った美丈夫…サーヴァント。
慌てて剣を構える。

「警戒しなくていいよ。やる気なら彼は置いてきてるし、なにより…」

キュン、と音を立てダーツが地を抉る。その初動も軌跡も、人の眼には映らぬ英雄の技巧。

「話しかけずに君も彼も一撃で射抜いてるさ。いくつか聞きたいことがあってね。まず、あの救急車は誰用?空いてたりする?」
「……多分さっきまでいたあのマスターが乗るはずだったんだと思う。見るからに死にそうだったし。使いたきゃ使えば?」

ぞんざいに対応しながら隙を窺う。退避できないか…あわよくば令呪を奪い、このサーヴァントのマスターとして復帰することはできないか。

「そんなに殺気立たなくても、たぶん君のサーヴァントはまだ無事だよ。あの黒いのに対して反射的にガードしていた。いい腕だ」
「え、うそ!?」
「嘘だと思うなら自分で確かめてみなよ。令呪を通じて自分のサーヴァントのことはある程度分かるだろう?」

吹き飛ばされ、生存を絶望視していたサーヴァントが生きている。
その可能性に縋るようにソウルジェムを通じて魔力のラインをたどると…たしかにある!まだ生きている!
しかしダメージも尋常なものではなかったらしく念話に一切応じない。急いで治癒にむかおうとするが

「おっとまだだ。最後の問いが残ってる。君は、誰のために戦う?」

進路を阻み、問いかける。奇しくもその問いは先ほど美樹さやかが投げたものと、かつて友人から送られた言葉と近似している。

「…願いを阻まれた親友のため。そしてそのコに救われたあたし自身のため」

最早詳細は定かではないが自分は大きな何か…まどかが元となった何かの一部となり、その力に救われたのだ。
そしてその願いを壊したのが暁美ほむら。それを打開するために、ここに来た。
確実に願いを叶えるために、歩む道を誤ることのないよう、慎重を期して進んでいる。

「はは、願いを叶えに来たのにさっきのマスターに停戦を申し出てたり、随分とまわりくどいことをするんだね」
「うっさい。じゃあついでにこっちも同じ質問そのまま返すよ。あとなんでさっきの勝負にしろ手出ししてこなかったの?三つ巴にすれば話も出来たろうに」

明の下へ行くのを邪魔され苛立ったか雁夜に対してのように真摯な交渉とはいかない。
それでもこちらが何の情報も得ずに立ち去るわけにはいかないと考え少しだけ話をしようとする。

「僕は生前の主人、そしてこの地での主人で良き友人候補の彼のためさ。介入しなかったのは派手で見とれたのもあるのと…えと、知り合い?がタイマンの邪魔はするもんじゃないと言ってたし、僕自身マスター狙いなんて弱い者いじめみたいな真似はテンション上がらなくてね」
「…そう」

前置き程度のキャッチボールを済ませ、立ち去る用意をしながら本題に入る。
お互い怪我人病人が待っているのだからこれ以上の長話は避ける。

「私は美樹さやか。ここの聖杯が本当に信用できるか疑問に思ってるから、その真偽を確かめてから戦いを進めたいと思ってる。病院で待っててくれれば相棒拾って話に行くよ。
……それから敬虔な信者らしき私の友人のありがたいお言葉、誰かのためだけに戦うんじゃ、願いに挫折した時にその人のせいにしちゃうよ」
「僕はアーチャー、おっと二人いるのか…じゃあ、そうだな…フェザーとでも呼んでくれ」

そう言って吹き飛ばされたサーヴァントの下へ走る少女を見送る。

「行っちゃったか」

最後に少し面白いことを言い残していった。彼女たちへの対応についてマスターと話したくはあるがそれよりも。

「起きて~おじさ~ん。患者ですよ、と」

気絶した救急隊員の一人を頬をぺしぺし叩いて起こす。

「う…むぅ…お、おい起きろ!」
「…ん、あ。あ、れさっきまでのその、えと怪物…は?」
「……何を言ってるのかは分からないけど、彼を診てもらえないかな?」

先ほどの事件とは無関係だと装いながら浅羽を降ろす。
余計なフォローを入れるよりも仕事を与えた方が人は冷静になりやすい。

「……お、おお。彼が通報にあった『今にも死にそうな患者』か!確かにすごい熱だ…」
「え?いやでもさっきの……」
「いいから!患者を運ぶぞ!」

NPCの仕様か、現実逃避したのか先ほどまでの出来事は夢の中のもの、としたいようだ。あの闘いを目にしたならさもありなん。
浅羽の治療をしてくれるならありがたいし、本来の患者があの敵マスターだったというなら余計な罪悪感もないので乗り込んでしまう。

「これは…この地域で時折ある風土病だね。お兄さんたち引っ越してきたばかり?」
「え、あ、まあそんなとこです」

病状や前後の様子など車内で話す。この地での設定がよくわからないので怪しい対応になるが。

「この辺出身の人はまずかからないんだけどね、この土地固有のものなんだ。と言っても栄養点滴して寝てればすぐ治るようなものだけどね。
あと、あくまで噂だけれど町の北部の温泉に浸かれば一時間しないうちに完治するとか。まあ医療従事者としてそんな眉唾を信じるわけにはいかないけど」
「へえ、そんなものが」

この病状が発生して浅羽君の魔力は確かに増した。そしてNPCがそれを風土病として認知しているということはコレはあの男にも予定内の事象なのだろう。
と、なると温泉とやらの話も信憑性は高いな。

話も切りあがり、あとは病院に向かうだけとなる。病院にベッドも手配できたしあとは休んでればいいだろう。

『あの、アーチャー…さん』

突然の念話。魔術の才などなかったマスターからのそれに驚く。

『さんはいいって。…念話、できたんだ』
『なんか点滴受けて少し楽になってきたら、こう、糸電話の糸みたいなのを感じるようになって……』
『まだ無理はしなくていい…けどせっかくだから少し話そうか。さっきの闘いを見ていてどう思った?』

休ませた方がいいのだろうが、病人がただ寝ているだけと言うのは退屈なものだ。
すぐ治る類のようだし、話に興じるくらいならいいだろう。念話に慣れておけば連携も取りやすい。

『……正直、何が何だか。すごい、おっかないくらいしか……』

サーヴァントの闘いっていうのはあんなに凄まじいものなのか。
終ぞ目にしなかった、まさしく《戦争》。
救急隊員のまるで避難訓練と現実の区別がつかない振る舞いはとても無様で、滑稽で……笑えなかった。
銃弾飛び交うでもなく剣戟が交差するでもなく、まるでファンタジー染みた戦争は熱に浮かされた頭でも埒外の物と教えてくれる最高に最悪な教材だった。

『あれが聖杯戦争なんですね……サーヴァントだけじゃなくマスターまで……』

伊理野もそうだが、自分とさほど年の変わらない女の子が闘っているのを見ると無力感が強まる。
覚悟を固めようとした矢先に病院行きとなった現状もあって沈んでいると

『闘って殺すだけが力じゃないよ、浅羽君。今君はこうして僕と話している、これもまた一つの能力、力だ。君はこれを糸電話のようと例えたね。
一度放たれた矢は弓を離れたらもう二度と戻れないものだけど、僕が矢で君が弓ならばこの力は君と僕を繋ぐ絆となり得るだろう。きっと闘いを勝ち抜く上で役立つはずさ』

魔力の向上、力の覚醒。病状に見合うだけのものは得られた…はずだ。
でもまずは体を癒し、そのうえで……放送の件も含め色々と話し合おう。
特に美樹さやか……まわりくどいながらも己がため、友のために我が道を行くあの子と、闘うにしろ話すにしろ。

【D-4・北部、病院に向かう救急車内/一日目・午後】

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]発熱、鼻血
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得を目指す
1.病院へ
2.体調が戻ったら今後の対応について穹と話す
[備考]
※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。
→念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。

【穹徹仙@天上天下】
[状態]健康
[装備]NATO製特殊ゴム
[道具]ダーツ×n本
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を目指す
1.病院へ
2.浅羽の体調が戻ったら今後のことを話しあう
[備考]

[共通備考]
※美樹さやか、不動明、間桐雁夜、一方通行の戦闘を目撃しました。







見つけた!

マナラインをたどりどうにかボロボロの明を見つけ、今は治癒魔術を必死に施している。
ようやく動ける程度に傷が癒え、意識を取り戻す頃にはソウルジェムは幾度も濁り、グリーフシードを一つ使い切ってしまった。

「すご…普通グリーフシード一個で何回か使いまわせるはずなのに……」
「俺の宝具の消耗もあるだろうが……それだけあの翼がすさまじかったということか。アレは英霊どころか天使の領域だったぞ…信仰の加護がなければやられていたかもしれんな」

予想以上のダメージに戦慄する二人だが、終えたことはそれまでに今後のことを話し合おうとする。
戦闘に接触、そして放送と考えることは色々あるが……

「そういえばどうしよう、これ…」

濁りの溜まったグリーフシードは魔女を孕み、いずれ孵る…いや魔女ではなく魔獣かもしれないがいずれにせよ放置はできない。
いつもならインキュベーターが食べるようにして処理してくれるのだが生憎とここにあいつはいない。

「グリーフシード…もとは人間の魂がソウルジェムになり、それが濁って魔女として果てるとそいつになる、そしてあの白いのはそれをエネルギーとしているんだったな?」
「え、うん。そうだけど…」

それを確認すると穢れきったグリーフシードを手に取って放り……噛み砕く!
穢れが怨霊のように漂うが、それも取り込むように吸い込んだ。

「やはり『魂喰い』できるな…魔力源としては微々たるものだが、まあエネルギーとして採用するのも分からなくはない」
「だ、大丈夫なの?グリーフシードってソウルジェムの負の感情を移したものなのに……」
「人間の悪意など俺も君もよく知っているだろう。今さらだ。それより、今後の動きについてだ」

と獰猛な笑みを浮かべ健常であると示すと、すぐに検討に移る。

「結論から言うと俺は今すぐにあの主従を追い、叩くべきだと考えている」
「え?っとその…言いにくいんだけどさ、今さっきふっとばされて大ダメージを負わされた相手、だよ?あの翼また出されたらキツイと思う…けど?」

おそるおそる、といった様子で反対する。
なすすべなく、とまでは言わないが最後は正しく一蹴されたといっても過言ではない。てっきりやられてしまったと思った。
あのアーチャーの言うようにガードしていたというならそれはすごいと思うし、プライドにかけてリベンジをしたいというのも分からなくはないけど…

「だからこそ、だ。あのサーヴァント…放送によると同クラスが二騎存在するようだからまず間違いなくバーサーカーだろうが。
バーサーカーのクラスは劣悪なマスターでもかなりのステータスのものを従えられるが、その代価として激しく魔力を消耗する。
あのマスターは優秀とは言い難いが、それでもあれだけの力を振るうのだ…もし強力なマスターがあれと契約し、ステータスの上昇や翼の乱打などされたら並のサーヴァントなど容易く蹴散らすだろう。
放送でアサシンが脱落した、そのマスターがまだ残っていると言っていたな。もし、そのマスターが優れた魔術師でバーサーカーと再契約、俺達の話に耳を貸さないなどとなれば最悪だ。
あの死にかけの男をマスターとしているうちに仕留める……最悪あのマスターを殺すことも考えている」
「殺…す…」

魔女を倒したことはある……アレは魔法少女だったのだからすでに人殺しは咎は背負っている。
ほむらに対抗するため、まどかの願いを無碍にしないためここにきた。それでも……

「真偽のわからない聖杯のために死ぬのは無駄死にになりかねない、か。その通りだがマスターの方に交渉の余地は無かったように映る。将来仲間になり得る誰かを守る意味でもあの手合いは殺しておくべきだ。
……まあ戦力的な不安と言うのは分からなくもない。ヤツの力についての分析や戦力増強を優先するというなら強く反対はしない」
「あ、そういえば戦力になるかは分かんないけどアーチャーが接触してきたよ。フェザーって名乗ってたけど」

話題から逃げるように報告。容姿やステータス、病院に行くと言ったことを伝える。

「ふむ、あの闘いを見ていたのか。戦力や意見を求めるのは有用ではあるな……それならヤツの能力について意見を求めるのも一つの手ではあるか。
……と、さやか、こっちへ。何か来る…!」

話を切り上げ病み上がりなりに戦闘態勢をとる明。そこへ現れたのは……

「はあ~やっと追いついた。伝達くらい何もオレを使わなくてもいいだろうによ~」
「人、形…?」

頭に生えたプロペラで空を飛ぶ人形。サーヴァントではない、さほどの警戒は必要ないだろうか。

「へい、オレはケニス。偉大なる造物主様に産み出された自動人形でさ。此度は伝令を承っております」
「オートマータね。その道化染みた悪趣味な振る舞いは造物主様とやらの意向か?」

ペコリ、と慇懃無礼な態度をとる人形を明は嘲り、それに怒りを僅かに見せる人形だがぐっと堪え、命令を果たすために渡されたものと伝言を贈る。

「預かりものです。それと、『彼女を助けるのに協力してほしい。遊園地で待つ』と言っている魔法少女がいます」
「これって…グリーフシード!?」

消耗したところで都合よく補給されるそれは天恵よりも陰謀染みたものを感じる。疑いの目を人形に向けるがへらへらとした態度からは何も読み取れない。

『交渉の意図はあるようだ、派手に動いた甲斐はあったようだが……どうする?俺たちに気づき、遠方から接触してきたということは何らかの監視の目を持っているはずだ。
キャスターの可能性が高い……虎穴に入るか否か、だな。対魔力を持つアーチャーに先に接触するか、リスクを承知で飛び込むか、先の俺の提案か……さやか、君はどう動く?』
『グリーフシードを持ってる、加えてあの伝言あたしの知り合いっぽい、んだよね……』

だがこんな回りくどい真似をするような知り合いがいるだろうか?
まどかは記憶が戻ってないはずだし、杏子やマミさんはこんなことしなそうだし……渚?殆ど接点ないけどゆまとか、えーと織莉子とかいうのもいたっけ?世界の外側にいたころの知り合いとか?
まあほむらの奴ならやりそうだけど、あいつが協力を求めてくるわけないし……
じゃあ私の採る選択は……



【D-4・西部/一日目・午後】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]ソウルジェム
[道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.伝言の相手に会いに行くか、バーサーカーの言うように追撃するか、病院のアーチャーのところへ行くか……
2.与えられた役柄を放棄し学校に行かないことに加え、あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う

[備考]
※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。



【不動明(アモン)@デビルマン】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる
1.さやかに従い行動
2.あえて目立つ行動をとり天戯弥勒や他の参加者の接触を誘う
3.マスターを守る

[備考]
※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。
※盗品のバイクは戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました。


[共通備考]
※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています
※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています
※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。









「■■■……」

跳ぶ。跳ぶ。跳ぶ。
主人を抱え、安息の地を求め駆ける。

引き際の彼の行動には疑念が残る。最後に腕を振るった意味は?そもそもなぜ撤退したのか?

かつて彼のいた都市では滞空回線(アンダーライン) というナノサイズのシリコンチップが一種の監視装置として用いられていた。
間桐雁夜は半人前とは言え蟲使いの魔術師であり、一方通行はその魔力供給によって現界している。
その経験が、流れる魔力の性質が宙を飛ぶ機械の蟲『アポリオン』に気づき、それを破壊させることを可能にしたのだ。
滞空回線(アンダーライン)を確保・記録された情報を読み取るには『ピンセット』とよばれる専用の機材が必要となるが、人がミジンコを視認できるように存在をを認識し破壊するだけならば不可能ではない。
剣術の達人が額の上の米粒だけを切ることができるように、一方通行ほどの能力者ならばナノマシンを破壊することも可能である。
監視の目があるならば潰しておかなければ撤退先に襲撃を受ける可能性があるゆえの本能的な判断。

では撤退の理由は?
穹の言うように敵を足止めさせるため?放送の意味を理解し、マスターを殺す必要がないと判断したから?
あるいは……彼の歩む道に、無辜の少女の血を流すことはしたくなかった?
それとも……

「う、うぅ……」

彼の腕の中で眠る、ヒーローにも悪党にもなりきれない罪人を守るためだろうか。
激しい消耗に疲弊し意識を失った……熱まで出ているし、鼻血もひどい。

その様を確認した一方通行が路地裏に降り立つ。
間桐雁夜の体を走査し異常を探す……この症状は尋常ではない、闘うにはまだこのマスターには生きていてもらう必要がある。
………………見つけた。脳内の一部分が異常覚醒している。まるで学園都市で能力開発を受けたかのよう。
脳内の電気信号をベクトル操作し症状を抑える……それに伴い所謂能力も覚醒し、間桐雁夜に宿る魔力量が大きく増す。

目覚めたとき間桐雁夜は自らにやどる魔力に驚くかもしれない。
一方通行の宝具を振るって余りあるその力は彼を勝利に近づけるものだ。
魔力・体力を激しく消耗した状態であの症状が長く続けば間桐雁夜の長くはない身がさらに死へと歩みを大きく進めただろう。
治癒を施した彼の判断は間違いなく正しい。

しかし学園都市の能力者が魔術を使えばどうなるかは一方通行も身をもって知っている……能力者が魔術を行使すれば、その身には大きなダメージがあるのだ。
PSI粒子によって能力に目覚めた彼にそのリスクはあるのか。そしてもしそのリスクがあったとして、身を削らねば魔術を行使できない彼がそのリスクに気付くことはできるのだろうか。


【D-4・南西部/一日目・午後】


【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(大)、精神的消耗(中)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.気絶中
2.俺は……何のために……

[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。今後何らかの能力を身に付けるか、魔術行使によるダメージの有無などは不明です。
※お茶は戦闘を行ったD-4の公園に放置してきました


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
2.マスターを休息させる
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。




[地域備考]
※D-4の公園で不動明と一方通行が戦闘、閃光や爆音、旋風などが発生しました。また地面には抉れた跡なども残っています。
※D-4の公園に不動明が盗んだバイク、纏流子が間桐雁夜に買ったお茶、穹撤仙の放ったダーツが残っています。
※PSI粒子による病状はNPCには風土病として認識されています。病院に行けば栄養点滴とベッドでの休養が提供され短時間で復帰できるようになります。
またA-4の温泉に一時間もつかれば治るとも言われています。




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035:CALL.1:通達 投下順 037:近くとも遠く
035:CALL.1:通達 時系列順 037:近くとも遠く


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028:あの空の向こう側へ 浅羽直之&アーチャー(穹徹仙 043:裏切りの夕焼け
032:これって魔法みたいだね 間桐雁夜&バーサーカー(一方通行 042:魔科学共存理論
美樹さやか&バーサーカー(不動明 041:機械仕掛けの運命―回る歯車―

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最終更新:2015年04月05日 21:27