MY TIME TO SHINE◆wd6lXpjSKY




 太陽が天から世界を照らすこの時間帯は午前十時といった所だ。
 人の通りも少なくはないが、朝の通勤や通学の時間が過ぎたため比較的大人しい。
 虹村形兆、学生の身である彼はサーヴァントとの初戦を終え自宅に帰宅していた。

 していた。現在は再び外に出ておりその理由はある物の確認だ。
 本来ならば学園に通わなければならないのだがそんな場合ではないと判断。
『体調不良で休む』この一言を学園側に伝えただけ。簡易だが無断で休むよりかはマシだろう。

 どうやら設定では成績は上から数えた方が早く、特に休むこともない優等生……らしい。
 聖杯戦争を行う中で無駄な行動は避けたい所、何時何処で襲われるかなど余地は不可能に近い。
 学園に趣き日常を過ごす、仮にマスターが潜んでいる場合、危険な状況に陥る可能性がある。
 学園に行かず、情報収集に務める、仮にマスターが学園に潜んでいる場合、感付かれる可能性があった。

 結果として安息な時間など存在しないのだ。気を抜けば負ける、殺される、お終い。
 選んだ道は後者、一日程度ならば問題ない、と判断し彼は表に出る。
 この用意された空間の中でも確かめなかればならない重要事項だ、ソレを確認するために彼は動く。

 勝ち抜く術を磨くのも必要かもしれない→一理ある。だが王道少年漫画のように都合よく覚醒はしない。
 生き抜くために無闇に動かない事が重要だ→一理ある。だが止まっていては真実に辿り着けない。
 敵を見つけたら戦わず協定を結ぶべき→一理ある。だが戦闘を必ず避けれるとは限らない。
 己の保身のためにアレを確認するべき→一理ある。だが理由は保身だけではない――。


 そして彼が辿り着いたのは公衆電話。
特に特徴が感じられない、緑で、ボックスの中に収まっている、あの公衆電話だ。
 だがこの公衆電話こそが聖杯戦争において重大な要素に絡んでくる、確信ではない、本能だ。


 参加者――マスターは聖杯戦争に参加している、これは周知の事実であり必役の状況である。
 参加方法、と言うべきか。参加者に共通している事は紅いテレホンカードを所持していること。
 自ら手に入れた者も居れば、気付けば所持していた者も存在する。
 言い換えると、自らの意思で参加した者も居れば、巻き込まれた、状況の把握に困惑する者も存在する、と言うことだ。
 彼、虹村形兆は前者である自らの意思で参加した、言わば願いを持った参加者だ。

 しかし巻き込まれた者が願いを持っていない、という事実には繋がらない。
 彼は知る由もない。無論他の参加者を把握していない現状で考察など空想の域を出ないのが結末。
 唯一出会った老人と吸血鬼のサーヴァントからも参加の経緯までは考察不能に近い。
 天戯弥勒の戯言を引用するならば『参加者は選ばれた者』になる。

 この選定者は天戯弥勒か、それとも聖杯か。現段階で答えを出すべきではない。

 永遠の迷宮に迷い込んだようだ、出口の光など一切見えて来ない心理への探求。
 今行うべき行動は、違う。その妖かしに構っている時間ではないのだ。

 参加者には聖杯戦争の記憶が自然と宿っている、仕組みは不明だが天戯弥勒が仕込んだ可能性が高い。
 その中にはサーヴァントと呼ばれる召使や令呪、絶対命令権であるマスターの証……生活上必要ない知識が脳裏に刻まれている。

 そして、一つ。参加者に置いて把握しておくべきことが一つ。

『サーヴァントを失ったマスターは紅いテレホンカードを公衆電話で使用すれば元の世界へ帰れる』

 元の世界……つまりこの街は『世界』が違う事になる。
『世界』。忌々しい響きだが今は関係ない、必要なのは『別の世界に召還された』と言うSFな事実。
 サーヴァントが実在し現世に現界している以上、どんな謎も可能性の視野に入れるべき、そう割り切るべき。

 此処で重要なのは『サーヴァントを失ったマスター』。つまり参加資格を失った無力の敗者を指す。
 スタンド能力。虹村形兆に備わっている異形の力、その力は絶大ながらもサーヴァントには効かない。
 効かない、では語弊があるようだ、訂正する。想像や見た目よりも損傷を与えられないのだ。
 先の吸血鬼少女には思ったよりも効いていなくサーヴァント同士の戦闘に割って入るのは至難の業と判明。

 実戦ではマスターはマスター同士で争うのがベター、しかしサーヴァントは割って入れる。
 マスターを潰せばサーヴァントは消える、単独行動のスキルでも付加されていない限りこの世を去る。
 マスターは願いを求めるならば何が何でも生に執着しなければならないだろう。

 最初から己が脱落することを視野に捉えている者が聖杯戦争を勝ち抜けるのか。
 それは不明だ。雑に説明すると運命は何が起きるか解らない。この聖杯戦争も相当な異分子に当たる。

 何もかもが手探りだ……もう本題に入ってもいいだろう。

 霊体化しているライダーには見張りの役目を。
 公衆電話のボックスと言う個室を攻められればとてもではないが対策の立てようがない。
 霊体化しているライダー、道端の影やコンクリートの隙間にスタンドを展開させ安全を確保、のつもりでいる。

「あぁ、今は特に何もねぇな」

 ライダーの言葉だ。
『特に何もない』此処では敵が居ない状況を指す言葉になる。
 退屈な返答、それでも言葉の響く重低音はしっかりと確認してくれているのだろう。
 その返答に反応するように軽く首を縦に動かすとボックスの扉を開け内部に踏み込む。

 密閉されていた扉を開いたためか、熱気と呼ぶ感じたくない、人間の嫌な部分を凝縮した風が彼を向かい入れる。
 こんな状況では出来る事も出来ない、そう思いつつガムを口に入れ匂いの緩和に。

 クチャクチャと音を鳴らしながら受話器を取ると無造作に紅いテレホンカードを突っ込む。
 若干苛立ちを覚えたのか、差込口から少しずれ丸みを帯びながらも押し込んだ。

「……さあて」

 今の状態はサーヴァントを失っていない正規の参加者だ。
 今回の確認事項――『サーヴァントを失っていない状態で元の世界で帰ろうとするとどうなるか』

 天戯弥勒はサーヴァントを失った、これをわざわざ宣言する事実から察するに失っていないならば――帰れないだろう。
 無論、帰る事になれば奇跡に辿り着くための足掻きも実行不可能になるため困るのだが。

 受話器を耳に当てる。
 流れてくる雑音は普段聞くようなボダンを待っている音、しかし番号など知らない。
 帰るための番号。考えてみれば『公衆電話で元の世界に帰れる』不思議な話だ、鵜呑みにするのは馬鹿か阿呆か。
 だが――何も起きない。

 適当に電話帳に載っているタクシー会社の番号を押すも繋がらない。
 この話は摩耶香しの幻想だったのだろうか? それともサーヴァントを失っていないためなのだろうか。
 答えは得られない、まだ辿り着くには早過ぎるらしく、超えなくてはならない山を飛び越えてしまったようだ。

 結論を述べると今回は時間を浪費してしまったようだ。

 受話器を強めに戻し出てきたカードを手に取る。
 通話していないため数字が減っていない新品のままだ。

 ライダー、そしてスタンドを展開し周辺を警戒していたが、敵は見当たらない。

 この場に居ても仕方がなく虹村形兆は次の行動を考えながらも公衆電話を後にした。



【B-3/公衆電話前/1日目 午前】


【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな…
1.次の行動を考える
2.登校するかどうかは気分次第。
3.公衆電話の破壊は保留。


[備考]
※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。


【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]疲労(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.刑兆に併せる
2.できれば海に行きたい


[備考]
※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。


[共通備考]
※ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
※B-2の近辺にこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。


 虹村形兆が公衆電話ボックスに入り受話器を手にしていた時。
 一つの影が人混みに紛れ、消えていく。その後姿は布を纏いし暗殺者――アサシン、ジャファル。

 ジャファルのマスターはエレン・イェーガーと呼ばれる少年だ。
 容姿やネームからはドイツを連想させるが彼は壁の中の住人である。
 壁の中――天戯弥勒の言葉で表わす『別の世界』、天戯弥勒や虹村形兆とは別の世界の人間。

 天戯弥勒の世界は超能力が存在していた。
 虹村形兆の世界も超能力が存在していたが、その具現は全くの別モノ。
 エレンの世界に超能力は存在しないが巨人が蹂躙していた。

 人々を喰らう人類の敵、それが巨人。

 彼の願いは巨人を駆逐すること、そして選ばれた聖杯。
 人類が成し得ない奇跡をたった、ほんのたった。数人殺せば叶えることが出来る、そう、選ばれたのだ。
 エレンは人を殺せるのか――彼のために何人の人間が死んでしまったか。
 考えれば考えるだけ地獄の千手に足を掴まれ引きずり込まれてしまう。

 甘いことは言わない……つもりでいる。
 所詮は人間、固い決意も情の前では鈍り、脆く、時には己を滅ぼす。
 彼がこの先、生き残るには『悪』以外の存在を殺せるか、否か。この一点に懸かっている。

 そんな彼に与えられた役割は留学生。
 アッシュフォード学園中等部に留学生として……明日から通うことになっていた。

 学園に他のマスターが居る可能性……そんな事を考える余裕などエレンには存在しない。
 自分が今まで生活していた空間とは全く異なる世界。
 海、高層ビル、公共機関。全てが全て彼にとっては新しい、未知との遭遇。
 生活に馴れるだけでも苦しい彼に他の参加者を気にする余裕など、無い。

 サーヴァントであるジャファルは一言、冷たく一言だけ彼に告げていた。

『――偵察だ』

 その一言を残し、彼は闇の中に消えていった。

 エレンにとっては有難い、彼ならば外に出るだけで迷う可能性があるからだ。
 最近はコンビニで買い物を済ませる程度には生活に慣れてきたが適応は完全ではない。

 登校は明日、ならば今日はアサシンに情報収集を頼み自分は大人しくする、彼が辿り着いた今の解であった。


【A-4/エレン自宅(マンション)/1日目 午前】


【エレン・イェーガー@進撃の巨人】
[状態]
[令呪]残り3画
[装備]立体機動装置
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り巨人をこの世から駆逐する。
0.アサシンの帰りを待つ。
1.今後の方針を考える。
2.明日になったら登校する。
3.生きている人間を……殺す?
[備考]
※アッシュフォード学園中等部在籍予定です。


 マスターの命令で……ではないのだが、己の意思で偵察に足を運ぶアサシン。
 暗殺者として生きていた彼にとって気配を消すなど造作も無い。
 そして生命の灯火を根本から抉り取る事に戸惑いも存在しない。

 故に悩んでいるエレンは彼にとって理解し難い存在に近い、そう、近い。
 完全に理解出来ない、の段階には至っていないが彼の願い、境遇を聞けば喜んで聖杯に飛びつくだろう。
 他者を蹴落としても……叶えたい願いがあるならば。

 ジャファルは冷たい殺人鬼だった、だった。過去の姿。

 冷たい大地に陽気を与える太陽が彼に近づいた。
 氷はそれを拒む、溶けてしまっては己が崩れるから。
 拒んで、拒んで、拒んで……。

 それでも太陽は氷に光を与える、彼に心を開いていった。

 光に当てられた氷、溶け出す心、次第に開く、しかしそれは崩壊。
 機会的に行動を繰り返すだけの暗殺者にとって、心を持たない機械にとってそれは辛かった。

 光は心地良い、されどその光は闇にとっては許されない。
 氷は溶けたら水になる、形は残らない――彼という人間の像が崩壊する。

 ……彼に関する記述は必要ない、彼という人間が、サーヴァントが聖杯戦争に身を投げるなら。
 それは暗殺者として輝かしい、闇としての栄誉を授かるかもしれない。
 そして、もしも、もしもの可能性。再び太陽と呼べるべき存在に出会ったら……もしもの話だが。

「……」

 彼が持ち帰る情報。一つは交戦した少女と高齢の大男のサーヴァント。
 一つは奇妙な小さい兵隊を使役する学生、そして公衆電話の一部始終。

 念話でもいいだろうが背中を取られてしまっては意味が無い。
 ――彼なら背中を取られる事は無いだろうが念には念を押すべき。
 拠点へと足を動かし再び人混みの中に消えて行く。

 必要なのは確実に仕事を熟す事、過信など要らぬのだ。


【B-3/東/1日目 午前】

【アサシン(ジャファル)@ファイアーエムブレム烈火の剣】
[状態]
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:獲物を殺す
1.情報をエレンに持ち帰る。
2.甘さは捨てろ……。
[備考]
※ランサー(レミリア)、ウォルター及びライダー(白ひげ)、虹村形兆の姿を確認しました(名前は知りません)
※奇妙な兵隊(バット・カンパニー)を視認しました。
※公衆電話の異変を感じ取りました。



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最終更新:2015年12月31日 21:53