火種 の オカリナ◆dM45bKjPN2




そろり、と。
抜き足差し足、気配を殺す。
目の前の建物───アッシュフォード学園を見上げる。
校舎の中からは、生徒の声は聞こえてこない。
授業中なのだろうか。
授業開始までには間に合わせるように登校する予定だったが、あのアーチャーとの交戦により遅れてしまった。

「・・・ここに戻ってくるなんてね」

恐らく、このアッシュフォード学園は本物のアッシュフォード学園ではないだろう。
アッシュフォード学園の姿形を模したもの。
要するに、きっと偽物だ。
───それでも、己の意思で別れを告げた場所には違いはない。
しかし、感傷に浸っている場合ではない。
するべきことは決まっている。
そのためにまずは、学校への登校が不可欠で───

「───待て」

そこで、声をかけられた。
ゆっくりと声の発した元を見ると───そこには、褐色の肌をした女性がいた。
頭髪は白。見るからに、日本人ではない。

「今、何時だ」
「え、え?」
「今何時だ、と聞いている」
「え、すいません、わかりません」

高圧的な態度で質問を投げかけたその女性は、とても丈夫そうな竹刀を地に突いていた。
マスターかと思ったが、こんなところで戦闘を始める訳にはいかない。
どうにかして、やり抜こう───と考えた時、女性は低い声で言い放った。

「十時だ」
(・・・だから?)

だから何なのよ、と口を飛び出しかけた言葉を無理やり押し込む。
知ってるなら聞かないでよ、とも思ったが黙っておいた。
すると女性は、左腕についている腕時計をコンコン、と指で叩きながら、

「───遅刻だ。何か言うことは?」
「え」

シュンッ、と。
紅月カレンの首筋の真横を、何かが通過する。
カレンの頭髪を数本削り取って行ったソレは───竹刀だった。

「生徒指導部教員兼警備員長───インパだ。クラス、名前、遅刻の理由、その他諸々を話してもらおう」


生徒指導部。
第一の敵との交戦の後に現れた第二の敵は、一番面倒な部類の存在だったらしい───







◆ ◆ ◆






響き渡る音色。
それは何よりも優しく───儚い、追憶のメロディ。
時の流れは残酷なもの。
過去に戻ることはできず、時の流れは人それぞれ。
決して変わることのない、原則。
よって過去に起きたことは戻すことはできず───過去に救えなかったものは、救えない。
だからこそ、この戦争に身を投じた。
しかし。
今この時だけは、戦争とは無縁の空間が存在していた。
時の流れは移りゆけども、変わらぬは幼き日の記憶。
思い出の場所へと誘う調べ───『森のメヌエット』。
そこで、メロディは変わる。
変わると同時に噴き出すは───炎。
情熱の如き、赤い炎。
その炎の向かう先がサーヴァントであるならば、そのサーヴァントは決して無傷ではいられないであろう、その業火。
真実の友情は時を経て尚その熱を失わず、より強い絆として君臨する。
その熱い心は何よりも眩い光となり、正しき者の、彼の道を照らす。
そう。
この友情を、救いたいがためにこの戦いに乗り込んだ。
友と誓った者から受け継いだハンマーはこの場には持ってこられなかったが、それでも。
友との思いは、今もこの胸に。
業火を生み、その強き心を確かめる音色───『炎のボレロ』が、辺りに鳴り響く。

「───」

ふぅ、と。
彼の宝具───『時を操りし王家の秘宝』の調子を確かめるように、彼はその音色を辺りに響かせた後、その宝具を懐に仕舞う。
音色が止まると同時に、業火も姿を消す。
音色によって様々な力を呼び起こすこの宝具は、生前の彼を何度も助けてくれた。
この宝具も、この音色も、教えてくれたのは救えなかったはずの『彼女』で───
そこで、思考を切る。
そろそろ、霊体化して己がマスターの元に帰った方がいいだろう。
与えられた任務は、既に終えた。
そうこうしてるうちに───アサシンやキャスターの襲撃を受けたら、ひとたまりもないのだ。
彼の姿は、風に乗ってかき消える。
アッシュフォード学園、屋上。
もうその場には、緑衣の勇者の姿はなかった。


◆ ◆ ◆











ガラリ、と扉が開く。
まず目に入ったのは、白い床。
辺りを見回すと、ベットに体重計などがその場に佇んでいた。
そう、この場は一般的な学校で言う、保健室なのだ。
保険医は不在らしい。

「追ってきてない・・・よね?」

生徒指導のインパに捕まった後のカレンは手慣れた、本来のアッシュフォード学園で使っていた演技を行った。
───そう、病弱設定だ。
はたから見れば大人しそうで、少し触っただけで壊れそうなくらいに繊細そうな病弱少女。
それを演じきることで、生徒指導の魔の手から見事逃れてみせたのだ。

「今のうちに、っと」

保健室に訪れたカレンがまず向かったのは───保険医の、教卓。
ガタリ、と音をたてて開いた引き出しには、大量の書類が入っている。

「・・・違う。これも、違う」

一つずつ、流れるように目を通し、確認する。
隅々まで読んでいる暇はない。
ほぼ流し見のようなものだ。
不要な情報と判断しては、すぐに次の書類に目を移す。
探し求めているのは、一つ。

「───あった」

カレンが見つけたのはアッシュフォード学園生徒の、健康情報が書かれた名簿。
身長、体重、視力、聴力───その他他人には見られたくない数値までが、記録されている。
その名簿をペラペラと捲り、目当てのページを開く。
開かれたページには───紅月カレンと記されていた。

「・・・ここではそっちなんだ」

紅月カレンには、名が二つある。
一つは今名乗っている日本人としての、紅月カレンという名。
もう一つはブリタニア人としての、
カレン・シュタットフェルトという名。
ここでは、日本人としての名を使うらしい。

「生徒会は───あ、所属してるのか」

役職は、会計。
どうやらここでも自分は生徒会にいたらしい。
そう、これが目的。
カレンが保健室にきたのは───この学園における、己の把握だ。
学年、クラスなどは覚えていたのだが、詳細な設定までは記憶していなかったのだ。
中途半端な記憶では、いつかボロが出る───それを回避するための、調査だったのだ。

『───』
「セイバー?」

その時、霊体化したセイバーが紅月カレンの元に帰還した。
その姿こそ見えないものの、気配は感じ取れたのだ。
己のサーヴァントの気配はわかるらしい。
マスターの特権、というものなのだろうか。


「セイバー、やってくれた?」
『───』

返ってきたのは、肯定。
アクシデントなく、成功したらしい。

「じゃあ後は他のマスターが釣れるのを待つだけ、か」

カレンが呟く。
セイバーがカレンの命により先ほど行ったこと───それは屋上での、他のサーヴァントに対する牽制だった。
セイバーはこのアッシュフォード学園の屋上にて、『時を操りし王家の秘宝』の能力の一部を使用したのだ。
魔力も少しだが消費した。
本来であれば、無駄な行動。
魔力の無駄使い。
だが、しかし。
サーヴァントが近くにいるならば───この行動に、必ず反応するはずなのだ。
簡単に罠に引っかかり、のこのこと屋上に上がってくるようならば、セイバーと共に倒す。
引っかからないならば、それはそれで新たな手段を考えるまでだ。

「さて、どうなるかな───」

ボスン、と保健室のベッドに腰掛け、カレンは呟く。
恐らく戦いは激化する。
ならば、少しここで休憩するのも手だろう───



【C-2/アッシュフォード学園・保健室/1日目 午前】

※屋上にてセイバーがオカリナを使用した。
学校にいるサーヴァント、マスターなら気づくかもしれません。
※生徒指導部教員兼警備員長のNPCとして【インパ@ゼルダの伝説 時のオカリナ】が存在しています。

【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.暫くは保健室で休憩した後、学校での調査をする。
2.屋上にサーヴァントを誘い込めた場合、相手をする。
3.学園終了後、街を探索。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※学校内での自分の立ち位置を理解しました。
※生徒会の会見として所属しているようです。



【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。



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最終更新:2014年10月28日 22:14