ONE WAY HEART ◆wd6lXpjSKY
真実を手に入れるには求めなければならない。
これは摂理であり決して難解な事ではなく当たり前の事象に過ぎない。
行動を起こさなければ、それは己だろうが他者だろうが関係ないのだ。
手を伸ばさなければ、真実にも、夢にも、憧れにも――決して辿り着くことは出来ない。
紅月カレン――赤い髪をした彼女もまた真実を、夢を追い求めている。
追い求めている、この表現では語弊があるかも知れないが彼女は日本の解放を掲げ戦っていた。
彼女の世界の日本はブリタニアと呼ばれる国の植民地、実質的な支配を受けていた。
対向するために黒の騎士団と呼ばれるレジスタンス組織にて彼女達は戦い続けた。
だが組織と国家の争いでは規模が何もかも違う、ジリ貧であり勝利と呼べる物は手に入れられてない。
過去に一度、とある男が奇跡を成し遂げたらしいが彼女達には全く関係がない、『今』勝たなければならなかった。
そしてある日。彼女達の元に一人の魔人が訪れた。
名をゼロ、仮面で己を隠す記号、されどその手腕は一級品であり彼が来た事により圧倒的に基板を覆した。
魔術や奇跡。そのような記号でしか表せないような戦果を上げ――彼は――。
「ルルーシュ……」
記号を取り除いた仮面の主の真意は計り知れない、術もない。
己のためなのか、大義のためか世のためか。それすら解らないが言えるとすれば唯一つ。
利用されていたのだ、真意こそ不明だが日本解放という大義の元でカレン達は手駒にされていた。
果てしない闇の中で見えているかも解らない光を追い求めていた。
光刺す空間が崩壊した今、カレンには今までのように黒の騎士団を、いやゼロを見ることは出来ない。
タイミングが良かった――こんな一言で運命を片付けるのはどうかと思うが重なったのだ。
彼女が求めた時期と聖杯に召された時期が。
まるで最初から仕組まれていたように、彼女を誘うように。
天戯弥勒の声が響き、彼女はこの世界に降り立った。
そんな彼女に与えられた役職は学生、それも何の皮肉かアッシュフォード学園の生徒だ。
元々学園の生徒であるカレンにとってこれは苦痛か幸福か。
解放活動で登校頻度が少なくなっていた学園に登校出来る喜び。
こんな状況で与えられた仮初めの平和に浸る……今も戦っているであろう仲間に対する罪悪感。
揺れ動く感情は彼女を必要以上に責め立てていた。
足は重い、しかし学園に通わなければ違和感を覚える。
出来る事を自分勝手な理由で行わないのは失礼であり、意味の無い行為だ。
やれる時に出来る事を。其処に理由を付け足すならば不信感を無くすためだ。
もし学園に他のマスターがいれば。急に不登校になった生徒に対し疑問を抱くだろう。
NPCならば問題はないのだが情報収集を含め学園に顔を出す必要がある。
もしアッシュフォード学園が、彼女の知っている学園が構成されているとしたら。
天戯弥勒の用意した仮初めの世界でも――細やかな幸せとなるかもしれない。
「ん……?」
朝は少し早めに出ていたため人通りは若干少ない。
そのため通る人々はそれなりに顔を覚えているのだが目の前の女性は印象強い。
ホットパンツにタンクトップ、引き締まった身体に強調される胸部……朝からだ。
カレンはその美貌に一瞬目を奪われるが、登校中でもあるし趣味もないためそのまま歩く。
踵を数回トントンと。姿勢を正し視線を前に。
通り過ぎる人には視線が合えば挨拶を、彼女の人の良さが解る一場面だ。
「あら、可愛らしいお嬢さんじゃない」
通り過ぎるカレンに対して派手な女性は声を掛ける。
緑の長髪に女の武器を全面に出したその服装。
カレンも十分なスタイルと美貌を持ち併せているが、目の前の女性の方がミステリアスな雰囲気を出している。
可愛らしい、と言われ反応に困るが小声で「ありがとうございます」と呟き去ろうとする。
褒められるのは嬉しい事では在るが、情報も少なく、マスターである彼女は不用意に接触を起したくはない。
自分の存在を確立すればする程狙われる確率があるからだ。
「あらあら……ちょっとお姉さんとお茶? とかどうかしら」
颯爽と通り過ぎるのが理想だったが足を止められてしまった。
近くだと更に解るが纏っている空気や言葉と共に吐出される息は人のナニカを煽るようだ。
生憎お茶をする時間はない、在ったとしても今は不用意な接触や不安な懸案は避けたいのが本音。
カレンは会釈を済ますともう一度通りすぎようとするが女性が其れを止める。
「もう――肩の力を抜かないと簡単に負けちゃうわよ?」
「セイ――」
「ここじゃダメ、よ」
女性の言葉にカレンの警戒態勢は一瞬で最高潮にまで登り上げた。
この女は聖杯戦争の参加者だ、気付いた今ならば解る。この力は『人間』じゃない。
魔力などと呼ばれる概念に知識はないが目の前の存在が規格外であることは本能が理解している。
咄嗟に霊体であるセイバーを現界させようとするも静止を喰らう。
女はカレンの唇に人差し指を押し当て言葉を止める。
唇から首筋を辿るように指を降ろしていく女性。
カレンの身体には謎の刺激と悪寒が走るが女性は全く気にしていない。
首から指を離すと女性はその指を自分で咥え、堪能した後に言葉を紡ぐ。
「こんな所で始めちゃったら周りがうるさい……ふふっ。
初めては誰にも邪魔されない方がイイものよ?」
■
女のサーヴァントに招かれるまま路地裏に入るカレン。
敵の誘いを鵜呑みにするのは気が引けるがあのまま戦闘すれば目立つのは確実だった。
そのため結果としては好ましい展開だがもし女がキャスターならば。
カレン自身にサーヴァントに対する知識は豊富ではないが、もし結界を貼られていたら。
相手の得意な戦場に入り込むのはナンセンス、戦いをするに置いて余程の自信が無ければ出来ない。
「さぁ、此処ならいいんじゃないかしら? 焦らしてごめんなさいね」
女が誘ったのはビルに囲まれた空き地のような場所だった。
広い、とは言えないが対人戦闘を行うには十分過ぎる空間であり問題はない。
ビルもどうやら廃墟ビルらしく数分の間は誰にも気付かれることはないだろう。
「サーヴァントを出して、速く。
お姉さん、あんまり遅いと此方からイクわよ?」
出せ、と言ったにも関わらず女は言葉と同時に魔力を放出させる。
放出、と言っても衝撃波の類ではなく自身を闇に包み、闇が晴れると姿が変わっていた。
ホットパンツにタンクトップの格好から大胆に胸を強調し上半身全体的な露出。
下半身はレオタードのようになっておりその姿、異性を虜にするには十分過ぎる容姿であった。
「お言葉通り出してやる――セイバーッ!!」
挑発に乗るように叫ぶカレンの声に反応して何もない空間に何かが集まる。
その現象の終着点はサーヴァントの具現化。一刻前まで霊体化していたセイバーの現界。
その姿は緑を纏った一人の勇者だ。その蒼い瞳に迷いなど存在しなく無言で剣を構える。
「ふふっ、焦らしちゃってごめんなさい――ねッ!!」
妖艶なサーヴァントはセイバーの構えに対し己を動かす。
その奇抜な服装でカレンの視線は一点に固まっていたが相手は翼が生えている。
低空飛行で滑空するようにセイバーの元に迫る。
セイバーはマスターであるカレンを退かせると盾を構え女を見つめる。
『ゾクゾクしちゃう』そんな事を呟きながら繰り出される蹴りを盾で防ぐ。
響く重音は静かな空間に反響し、カレンは察する。『目の前の戦いは並の人間ではない』と言うことを。
盾から覗き込み相手である女が離れていることを確認したセイバーは大地を駆ける。
剣を握り締め立ち向かう姿は勇者の風格を漂わせている。
相手に近づくと横に一閃、しかし女は空中に移動し回避成功。
(あの剣は宝具――だけど真名は開放していない、ってとこかしら)
何やら考えている様子だがセイバーには関係など無い。
再び地上に降りてくる女目掛け距離を詰める。
(マスターも見えないし、それにあの女……クラスは一体?)
カレンはセイバーの戦闘を見ながら相手に対して考察を始めようとしていた。
セイバーの戦闘力は見れば安心出来る程、これなら考察に意識を回せると思っていたが情報量が少ない。
相手のマスターも近くに確認出来なければクラスも確認出来ないのが現状だった。
「――ッ!!」
セイバーは剣を振るう直前に一歩力強く踏み込み相手に自分の攻撃の機を狂わせる。
突然な縦の動作に普通の相手ならば気が引かれ注意を逸らさせるが英霊は伊達ではないようだ。
相手の女はそのタイミングに合わぜ身を低くし迫っていた。
「シャドウブレィッ!!」
その翼を鋭利な形状に代えセイバーの喉元を斬り裂かんと下から上に飛ぶように振るう。
セイバーはその翼を剣で受け止めるも、無理な体勢からか後ろによろけてしまう。
女は剣の上を滑走し上空へ、更に追い打ちを掛かんと腕を突き出す。
(私の能力を無効にする――折角の逸材なのに勿体無いわね)
「ソウルフィィスッ!!」
突き出された腕から放たれるは波動、その生業は蝙蝠。
セイバー目掛けて放たれた攻撃を簡単に避ける、そして此方から攻めようとするも――失敗だ。
避けたのは正解だが避けただけでは波動は沈まない。
そのまま進み続ける波動はセイバーではなくマスターであるカレンに迫っている。
カレンは気付くも避けられない、サーヴァントの攻撃に生身の人間が回避するには無茶がある。
規模にも影響されるが不意を突かれた今、自力で避けるのは不可能だった。
咄嗟に腕を交差するように前に出すが気休めにもならないだろう。
この攻撃を受けて生きているかどうかは解らないが痛いのは確実、それも度を越している。
真実を求めるまでは死ねないのだが――死ねない。
「え――!?」
気付けばカレンは宙に浮いている、これは現実だ、聖杯戦争も含めて現実だ。
まるで魔法使いのように空中に浮いているが自由には動けない。当然だ。
その身体を支えているのはセイバーだ、マスターであるカレンの身体を片手で抱く形で支えていた。
「あ、ありがとう……」
抱き抱えられる状況に赤面しつつ小声で礼を言うカレンだが安心は出来ない。
セイバーは己の道具であるフックショットを使用し壁に張り付いている形だ。
壁に叩きこまれたチェーンを辿り其れを基点にし身体を支えているのだが、対する女は浮いている。
相手は自由に飛行能力を駆使出来るため相手側が有利、カレンはお荷物になっていた。
このまま攻め入られればセイバーが不利なのは確実だが相手は攻めてこないようだ。
疑問を抱きセイバーに視線を送った後、女にも視線を送るカレン。
状況は何一つ理解出来ていなかったが一つだけ、一つだけ理解出来た事がある。
セイバーも女も――笑っていた。
「私はアーチャーよ……ふふっ、覚えた?
貴方達の事は覚えたわ、これからもよろしくね――憎いほど好きよ」
ウインク。
何の意味を含ませているかは計り知れないが目の前のサーヴァントはアーチャーと名乗った。
ならばあの蝙蝠の波動が宝具なのだろうか――それは違うだろう。
けれどセイバー、アーチャー互いに宝具を発動することはなく戦いは終わる。
カレンの初陣、その締めは一つの影で終わる。
アーチャーの頭上には一つの球体――爆弾が落ちかかっている。
これはセイバーの道具であり、フックショットを用いカレンを救出に向かう寸前に頭上に投げていた。
それがアーチャーの頭上に落ちるようにある程度角度を考えて投擲したが狙いは的中したようだ。
爆発の寸前、アーチャーは再度笑っていた――。
爆風が晴れた先にアーチャーの姿はない。
死んだ、その可能性は零だろう。セイバーも首を横に降っている。
手応えを感じていないらしく、この戦闘は互いに傷を追う事無く終了したようだ。
カレンにとってはサーヴァント同士の戦いに自分が割って入れないことを確認出来た良い教訓になった。
これから先。学園にも敵のマスターやアーチャーのマスターが潜んでいるかもしれない。
やはり何事にも今は情報を欲している。学園終了後には図書館に行ったり街を歩くなど行動をした方が無難だろう。
「助けてくれてありがとう、セイバー」
礼を再度告げるとセイバーは微笑み霊体に戻る。
セイバーから直接的な言葉は今まで無くカレンは彼と会話を成立させた事はない。
だが言葉は無くともその瞳からは絶対的な安心感を得ていた。
【B-2/市街地路地裏/1日目 早朝】
【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も))
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。
1.学園に向かい情報を集取する。
2.学園終了後、街を探索。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
1.マスターに委ねる
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
セイバーとの戦闘を終わらせたモリガンは再度ホットパンツにタンクトップな姿になり街を歩いていた。
爆弾が爆発する前に先頭領域から離脱していた彼女は実質無傷で初陣を完了した。
無論相手であるセイバーも無傷に近い形になってはいるのだが。
モリガンのこれから行うべき行動はマスターの元への帰還である。
情報収集を目的に動き適度に魂を喰らっていたが収穫はセイバーの情報のみ。
ある程度辺りの地形を把握したのも有益な情報となるだろう。
相手のセイバーの実力はクラスに恥じない物だった。
モリガン自身の魅力を、スキルを無効化していた辺り見えない所でも強い勇者に違いない。
お互いに宝具は発動していないが正面から戦っては分が悪いのは確かだった。
「此処なら私を絶頂へ誘ってくれる程の刺激がありそうね」
足取りはマスターの元へ。
しかし男共はモリガンを自由にさせない、彼女の魅力の虜となっている。
あらあら、指を咥えながらモリガンは一人の男と共にビルの中へ消えていった――。
【アーチャー(モリガン・アーンスランド)@ヴァンパイアシリーズ】
[状態]魔力消費(小)
[装備]タンクトップ、ホットパンツ
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を堪能しマスターを含む男を虜にする
1.NPCと遊ぶ
2.マスターの所へ戻る
[備考]
※セイバー(リンク)、カレンを確認しました。(名前を知りません)
※リンクを相当な戦闘能力のあるサーヴァントと認識しています。
※拠点は現段階では不明です。
※NPCを数人喰らっています。
※現在の外見はポイズン@ファイナルファイトシリーズ(ストリートファイターシリーズ)に近いです。
最終更新:2014年10月28日 22:22