ゴムと反射と悪党と◆dM45bKjPN2


「学校、かぁ・・・」

ゴゾゴソ、とポケットを探るとそこには学生証がきっちりと収まっていた。
裏を見ればこの殺し合いの場での自分の住所と、表には通っている学校が記載してあった。
学校の名をアッシュフォード学園───知らない名前だ。
この殺し合いの中でも学生は学園に通えと。
学生の本分を果たせと、天戯弥勒は言いたいのだろうか。
ふるり、とその小さな肩が震える。
どこにマスターがいるかわからない。
もしかしたら学園の中で狙われるかもしれない。
そうなったら、相手を、どうすれば───と、その時。
思考がマイナスに傾きかけた時、傍らのライダーが声をかける。

「いはならへふにいかなひゃいいひゃねぇか(嫌なら別に行かなきゃいいじゃねぇか)」
「・・・あの、食べ終えてから言って貰ってもいいですか?」
「ぼべん、ぼーばな(ごめん、そーだな)」
「・・・」

ずぞぞぞぞ、と残りの弁当を吸い上げて口に含むライダー。
ぷくりと膨らんだその頬は、例えるならばリスのようだった。
まず彼らがスタートしたのは、森の中だった。
当たりを見回せば木、木、木───とりあえず森を出ようとした結果、森を抜けた先にあったのは24時間営業の、頼れる味方コンビニエンスストアだった。
腹が減っては戦は出来ぬ。
ライダーも腹ごしらえがしたいと言うので、とりあえず早めの朝ご飯にと鹿目まどかはそのコンビニエンスストアに立ち寄ったのだ。
購入したのは、まどかのコンビニ弁当一つとお茶のペットボトル一本と───ライダーの弁当六つ。
学生には痛い出費だったが、これでもライダーに我慢して貰ったぐらいなのだ。
とりあえず弁当を山ほど抱えてレジに持っていこうとしたライダーを、まどかは慌てて阻止したのだ。
そんなに買われては金が幾らあっても足りない。
殺し合いよりも先に食費をどうにかしなければいけないのかもしれない、と少し思ったほどだ。
何とか六個で我慢してもらい(ここに彼女の並々ならぬ努力と説得の物語があったことは彼女の名誉のために明記しておく)、今それを一緒に食している途中なのだが、まどかが半分も食べ終わらない内にライダーは全て食べ終えてしまった。

「はー・・・嫌なら別に行かなきゃいいじゃねぇか」
「でも学校にマスターがいたら、疑われるし───」
「んじゃそのがっこう、ってのに行ってサーヴァントをブッ飛ばせばいい!そんで仲間にしよう!」

にしし、と笑うライダーの顔には、一点の曇りすらない。
本気で倒した後に仲間にすればいいと思っているのだ。
荒唐無稽だ。
出来るはずがない。
マスターとサーヴァントも、ここには願いがある人間が呼ばれているのだから。
───でも。
ライダーのその言葉は、何故かとても頼もしさがあり。
まどかは心の何処かで『もしかしたらこのライダーならばやってのけるかもしれない』と、考え始めていた。

「じゃあ、ちょっと行ってみようかな・・・学校」
「おう!」

空を見上げる。
まだ星が瞬き、お月様が空で輝いている、そんな時間。
学校まではまだ時間がある。
ならちょっと、このライダーと辺りの散策でもすると、面白いかもしれない───











○○○ ○○○







「ハァッ、ァア、ハァッ───」

彼の聖杯戦争が始まった地点───間桐邸にて、彼は荒い息で胸を抑えていた。
魔術回路の代用品として働いている体内の蟲は、現在は大人しくなっている。
比較的身体も落ち着いた状態。
しかし、これも長くは続かない。
もとより身体は長くは持たないのだ。
マスターを見つけ次第、早々に消さなければ───長期戦になればなるほど、間桐雁夜の聖杯は遠のくのだ。
選ぶ戦法はただ一つ。
見敵必殺。
Search & Deathtroy。
発見次第、障害は全て叩き潰す。
バーサーカーは現在霊体化させている。
魔力消費を抑えるためだ。
こちらは無駄に使える魔力はない。

(とりあえず、マスターを探そう)

みすぼらしく白く染まった頭髪と、引きつった顔面をフードで隠し、彼は立ち上がる。
ガタン、と椅子が揺れる。
まず、何処からマスターを探すかと窓から外を覗いた瞬間───彼の目に入ったのは。
平凡で気弱そうな少女と。
あの威圧感、そして霊体化しているバーサーカーが反応していることから───サーヴァントであろう、麦わら帽子が特徴的な胸に傷を持つ男。

───ああ、ちょうどいい。
此方から探さずとも、餌が向こうから歩いてきてくれたのだ。
暴虐の限りを尽くして、あのサーヴァントを消す。

「■■、■■■」

その唸り声は、果たして何を意味するものなのだろうか。
実体化したバーサーカーから漏れるその言葉は、誰にも理解できない。

「行くぞ」

軽く声をかける。
戦闘の始まり。
それを理解したのか、バーサーカーの口が三日月のようにニヤリと歪む。
ああ、殺そう。
相手がマスターなら、サーヴァントなら容赦はしない。
徹底的に捩じ伏せ、引き千切り、地面に刻む愉快なアートになるまで叩きつけよう。
目の前のサーヴァント潰し、そのマスターの願いを踏み躙り、ありとあらゆる残虐な行為を行い、その命を生贄に───求める『光』を守り通そう。
そう、それが彼等。
───『悪党』という、存在なのだから。

「殺せ───バーサーカー」
「■■■■■■■■■■■■───!!!」














○○○ ○○○




「んでまどか、学校って何だ」
「え、知らないんですか?」
「ああ、知らねぇ」

ライダーの問いに、さてどう説明したらいいものか、とまどかは頭を捻る。
ライダーが知らないのも無理はない。
ライダーが生きた時代と、今ここの時代では世界の構造そのものが違うのだ。

「えっと、大きい建物で、そこで皆で勉強したりするんです」
「勉強ォ?」
「例えば国語とか、数学とか社会とか理科とか・・・」
「???」
「んーと、理科なら、何て説明すればいいのかな、植物の中とか動物の細胞とか勉強するんです」
「ああ、つまり不思議動物ってことか」

      • 本当に理解したのだろうか。
ある程度歩いていると、住宅地なのだろうか、ぽつぽつと家屋が発見できた。
何の変哲のない、一般的な家屋ばかりだったが、その中で一つだけ。
悪い意味で一際目立つ、大きな屋敷があった。
数世代が楽に暮らせそうなほどの大きさの西洋風の館。
きちんと手入れされていれば、女の子なら一度は住みたいと夢見るであろう屋敷。
しかし実際は窓は割れ、カーテンは千切れ、中からは明かりすらついている気配はない───例えるならば、お化け屋敷のような風景だった。
まどかの背筋にゾクリとした感覚が駆け巡る。
嫌な予感がしたからなのか、それともその雰囲気に恐怖したのか───それはわからないが、近寄って得はしなさそうだった。

「ライダーさん、ちょっとあっちの方に行きま「おじゃまします」えー・・・」

とりあえずここから離れよう、と提案しようとしたまどかよりも先にライダーは、屋敷のドアを開いていた。
速い。そして不用心。何より失礼。

「え、ちょっと、ライダーさん知らない人の家なのに・・・!?」
「バカだなまどか、これはどう見ても不思議家じゃねえか。だったら冒険するのが普通だろうが!」
「訳がわからないよ・・・」

謎の理論と謎の迫力に気圧され、何処かで聞いたような言葉を漏らしてしまう。
ライダーのこの自由奔放さは生前から受け継がれているもの───彼と旅を共にした仲間も、彼の自由さには困らせられたのだ。
それはこの場においても、変わりはなかった。
この場が聖杯戦争でも、相手がマスターだったとしても───彼は変わらない。
この世で一番自由なヤツが海賊王。
その持論は、今でも変わらない。

「もしかしたらなんかブルックみてぇなのもいるかもしれねぇしな」

にししと笑う彼の笑顔に釣られて、まどかも笑顔が零れるが───それとこれは別、人様の家に乗り込む前に止めなければいけない。
手をちょいちょい、と招き猫のように動かし、ライダーに告げる。

「ライダーさん、でもそっちは人の家だか、ら───?」

その時、見えた。
いや、見えてしまった。
快活に笑うライダーのその背後。
何かが、見えた。
最初は赤い二つの点だった。
何かのライトだろうか、と思っていた。
───しかし、それが勘違いだと気づいた瞬間には、もう遅かった。
次に見えたのは、白熱し、白濁し、白狂したその姿。
白い頭髪。白い肌。細い身体。紅い瞳。
そしてその白い腕がゆっくりと振り上げられ───

「───ライダーさん、後ろッ!!」
「へ?」
「■■■■■■!!」

ドゴン!と。
まるでダンプカーが追突したかのような、人体が発するべきではない轟音をあげながら、ライダーはその身体を弾丸のように吹き飛ばされた。

吹き飛ばされたライダーの体は、そのままの勢いを保ちつつ───屋敷の正面の民家へと突っ込んでいく。
ガラガラ、と音を立てながら、ライダーが突っ込んだ民家が崩落する。
───それがほんの、数秒の出来事だった。

「ライ、ダー、さん・・・?」

恐る恐る、ライダーが吹き飛ばされた民家へと声をかける。
返事は、ない。

「ライダー、さん・・・?
ライダーさん、ライダーさん!ライダーさんッ!!」

幾ら呼びかけても、幾ら叫んでも返事はない。
まさか───死んでしまったのか。
こんな、簡単に。
こんな、呆気なく。

「■■■、■■■」

ニヤリ、とその顔面を愉快に歪ませながら、ライダーを吹き飛ばしたサーヴァント───バーサーカーは、まどかにゆらりと近づく。
ゆらり、ゆらり、と。
まるで、夢遊病者のように。
悲痛に叫ぶ少女を見て、楽しんでいるかのように。

「ぁ、いや、こないで・・・」

近寄るバーサーカーに気づいたのか。
まどかはじりじりと、後ずさりする。
そして、すとん、と。
恐怖でその場に腰が抜けて、座り込む。
そんなまどかをお構いなしに、バーサーカーはその腕をゆっくりとまどかに近づける。
バーサーカーの腕は触れただけで人を殺す。
血流を、生体電気を逆転させるのだ。
それだけで───人は簡単に死ぬ。
それを可能とする腕が、今、まどかの体に触れようと───

「■■■■■■、■■■───!!」




「───何やってんだお前ェッ!!」

───怒号。
その声量に、バーサーカーが腕を止める。

「ゴムゴムの、”回転弾”ッ!!」

次に飛来したのは、回転力とゴムの性質を利用した反動の威力を秘めた、必殺の拳。
しかし、バーサーカーには当たらない。
軽く地面を足で叩いただけで───バーサーカーの身体は、遥か後方に跳ねて行ったのだ。
ライダーの拳は虚しく空を切る。
倒壊した家屋の中から現れたライダーはパンパン、と己の体を叩きながら、言う。

「ライダー、さん・・・?」
「おう、大丈夫か?」
「え、あ、はい」
「ちょっと下がってろ。───あいつ、ぶっ飛ばしてくる」

未だ状況の把握が出来ていないまどかを置いて、ライダーはその莫大な脚力を使って、バーサーカーの元に飛び掛かる。
ポツリ、と残されたまどかは、たらだ呆然とするのみだった。

「ゴムゴムのォォォ、”スタンプ”!」

飛び掛かったライダーから放たれるは、神速の蹴撃。
並の存在ならば、一撃で意識を刈り取るであろうその蹴撃。
───しかし。
バーサーカーには、通じない。

「■■■■───!!」
「うおっ!?」

その蹴りが、バーサーカーに触れた瞬間。
蹴りの威力がそのまま、ライダーの脚部に返ってきたのだ。
常人ならば、その時点でその脚部は砕け、自立歩行すら不可能になるが───しかし、ライダーはゴム人間なのだ。
打撃の類いが、効くはずもない。

「と、”槍”ッ!」

足裏を合わせ、刺突。
あらゆる物を貫くそれは、バーサーカーにはやはり届かない。
しかし、それだけでは終わらない。
反射されたその勢いを利用し、跳躍。
そして。

「なら───ゴムゴムの”銃乱打”!!」

一撃が返されるならば、数でカバーしてやろう、と。
拳の数が増えたのではないかと錯覚するほどの拳の連打をバーサーカーに放つ。

「■■■■!!」

しかし、それも通らない。
バーサーカーに触れた瞬間、全ての『力』は反射されてしまうのだ。
そして。
バーサーカーも、黙って攻撃を受けてくれるほど優しい存在ではない。
少し大袈裟に、腕を振るう。
そうしただけで───巻き起こるのは、全てを切り刻む鎌鼬の旋風。
ライダーの打撃の無効化を理解し、斬撃に移行。

「危ねぇっ!」

すんでのところで回避する。
そのままの勢いでゴロゴロと転がるライダー。
回避だけでは終わらない。
更に連撃を叩き込もうと、体制を立て直す。
そして。
バーサーカーも、ただ突っ立っているだけではない。

「■■■■■■───!!」
「うわやべ、きたっ!」

バーサーカーが行ったのは、突進。
何の力をどう変換したのかは不明だが───その体が、弾丸のような速度でライダーに迫る。
体制を立て直したばかりのライダーでは避けられない。
いくら打撃が効かないとはいえ、限度はあるのだ。
規格外の質量で押し潰されれば、ゴム人間と言えどひとたまりもない。
それを、バーサーカーは理解していた。
いや、理解というより『計算』と言った方が正しいかもしれない。
スキル───『絶対能力』。
狂気に堕ちて尚その頭脳は、レベル5としての威厳を保っているのだ。
能力行使に必要なあらゆる演算を可能にし。
己が選択できる戦法から相手を殺せる方法を選び抜き。
その方法を、確実に、叩き込む。
クソッタレな世界と戦い続けた彼の能力は───狂気に染まって尚、未だに猛威を振るい続けるのだ。
ググ、と握ったその拳に、あらゆる力のベクトルが収束される。
一点集中。
この一撃にて、ライダーを貫く───!

「にしし、きたきたッ!」

しかし。侮ることなかれ。
優れているのはバーサーカーだけではない。
それと対峙するライダーも───万夫不当の豪傑、海賊の英雄なのだ。
簡単にやられるほど、柔な存在ではない。

「ゴムゴムの───”網”!」

バーサーカーの視界に浮かび上がる、それは。
異様なほどにまで伸びた、ライダーの交差した指。
丁寧に網目にしてあるその指のその隙間にバーサーカーは飛び込む。
一撃に込めた必殺の威力も───当たらなければ意味がない。
バーサーカーのその拳は、ライダーには届かない。
ベクトルが集中したその拳には触れず、ライダーの網はバーサーカーを優しく絡め取る。
力をそのまま跳ね返されるのならば、優しく掴めばいいのだ。
勿論、そのような簡単な戦術で打ち破れるほど、バーサーカーの能力はチャチなものではない。
この網が鉄製や鋼製のものだったなら、即座に引き千切っていただろう。
しかし、彼を絡め取ったその網は───ゴムなのだ。
ある程度の衝撃───ライダーが優しく掴んだ力を返された程度の衝撃ならば、吸収してしまう。
そして。
その絡め取ったことにより生まれた一瞬の隙を、ライダーは見逃しはしない。

「大漁大漁っ!殴って効かないなら、このまま投げてやるっ!」

ギュルギュルギュルッ!と。
その場で猛回転し、体を巻いたのだ。

「ゴムゴムのォォォォォッ!!」

そして。
次に起こったのは───ゴムの性質を生かした反動、遠心力。
伸びたゴムは、元の形に戻ろうとするのだ。
回転した数だけ倍増していくその威力は、最大にまで溜められ───その力を、解放した。

「”ボーガン”ッッ!!」

大地が、揺れた。
地面に叩きつけられたバーサーカーの衝撃が、地面を伝わりそれでも尚打ち消し切れずに大地を揺らしたのだ。

「にっしっし、どーだ!今のは痛ェだろ」

スタリ、と地面に着地し笑顔で語りかけるライダー。
並の英霊ならば、この時点で既に立てない筈のダメージを負っているはずなのだ。
ライダーもそれを理解している。
理解しているからこそ───目の前で立ち上がったその存在を、理解できなかった。

「■■■───」

ゆらり、と立ち上がったバーサーカー。
その体に傷は無いどころか───埃一つ、ついてはいなかった。

「なんだアイツ・・・こっちの攻撃全部跳ね返されちまう」
「■■■、■■■」

バーサーカーは答えない。
答える理性など、最初から存在していないのだ。
ただ此方を見定め、あらゆる演算能力を利用し、殺害方法を導き出すのみ。

「・・・そうだ。跳ね返されちまうなら───」

そのバーサーカーの様子を見たライダーは、すうっと勢い良く息を吸い込む。
そうだ。
攻撃をして跳ね返されるならば───その逆をすればいい。

「ゴムゴムのぉ・・・”たこ”」

だらーん、と。
その場で全身の力を抜いた。
攻撃をして跳ね返されるのならば───しなければいいのだ。

「・・・”たこ”」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ダメだ、これ俺も攻撃できねぇ」
「今更・・・?」

逃げる訳にもいかず、観戦していたまどかからささやかなツッコミが入ったところで、ライダーの四肢に力が戻る。
それと、タイミングは同時だった。

「■■■■、■■■───」

すううぅぅ───と。
バーサーカーのその姿が、消えたのだ。
霊体化───つまり、逃げられたのだ。

「あれ?アイツどこ行った」
「なんか、逃げちゃったみたい・・・」
「えー!俺まだアイツぶっ飛ばしてねぇぞ!」
「そんなこと言われても・・・」

悔しいのか、不機嫌そうな顔で叫ぶライダー。
それも当たり前だろう。
億を超える賞金首として数々の海を冒険し、磨いたその技術で一切ダメージを与えられなかったのだ。
宝具を使用していないとは言え、勝てなかったことに変わりはない。

「よし、まどか。俺決めたぞ」
「決めたって、何を・・・?」
「次あったら、あの真っ白バリアは俺がぶっ飛ばす」

パシン、と拳を握る。
ああ、そうだ。
やられっ放しは───性に合わないのだ。







○○○ ○○○





───間桐雁夜は、『聖杯戦争』を学んだ。
この本来とは異なる場所での聖杯戦争において、それは最大の利点だった。
経験、というものがあるのは何よりも有利。
聖杯戦争を一度経験した雁夜は、バーサーカーとライダーの戦闘を観察し、撤退を選んだのである。
何故か。
何故か───それは、明らかに相性の悪いサーヴァントだということが、魔術師としては並以下の雁夜でもわかったからだ。
あのサーヴァントは、打撃に関する攻撃が一切通じていなかったのだ。
そして、攻撃が跳ね返されたことによるダメージも受けてはいなかった。
最初はライダーの攻撃を一切受けつけないバーサーカーの戦力に歓喜したが───それがむしろマイナスに働いていると気づいたのは、魔力の消費により活性化した体内の刻印虫が己の肉を食い始めた時だった。
バーサーカーの反射は、ライダーには通じない。
ライダーの攻撃は、バーサーカーに通じない。
バーサーカーの打撃攻撃は、ライダーには通じない。
しかし、バーサーカーには風を操作した切断攻撃や他にも色々な戦術がある。
その中なら、あの何故か打撃の効かないライダーにも通じる技もあるだろう。
しかし───打撃攻撃という攻撃手段の一つが封じられた以上、長期戦は避けられない。
長期戦になったら不利なのは、此方なのだ。
だから、撤退を選んだ。
しかし、無策に撤退した訳ではない。

(そうだ───バーサーカーと相性が悪いなら、他のヤツらにあのライダーを殺させればいい)

苦手なヤツなら別に相手をする必要はないのだ。
他のサーヴァントにでも殺させておけばいい。
ライダーのマスターが遠坂時臣だったなら───間違いなくそんな冷静な思考はできなかっただろうが、幸運なことにマスターは気弱な少女だったのだ。

「行こう、バーサーカー」

霊体化し、己の元に帰ってきたサーヴァントに告げる。
返答はない。

「待ってろよ」

ズリズリと、その足を引きながら、彼は歩く。
彼の願いの根底はとても醜く───とても利己的なものだ。
あったはずの道に背を向け。
届かないはずのものに憧れ。
他人の幸せを手に入れようと、その手を伸ばした。
どうしようもない『悪』。
蔑まれることはあれど、賞賛されることはないであろうその存在。
しかし。

「───桜」

この気持ちだけは、本物なのだ。
己の幸せのためでもある。
己の自分勝手な理想のためでもある。
様々な下心も否定はできない。
だが。
あの少女を、あの地獄から救いたいと思ったこの心だけは、その想いだけは───本物なのだ。

間桐雁夜は闇へと歩き出す。
その道は、茨の道だ。
『悪党』に相応しいのは、醜い闇に染まった泥の道。
しかし。
間桐雁夜は、止まらない───止まることなど、今更あり得ない。
彼の道は、既に一方通行なのだ。
引き返す道など、もう存在しない。



【D-4・間桐邸裏(少し離れている)/一日目・未明】

※間桐邸正面の家屋が倒壊しました。

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1.見敵必殺。見つけたサーヴァントから攻撃。
2.ライダー(ルフィ)相手は不利、他のヤツに倒されるまで待つ。
3.この場から離れる。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。

【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1.───(狂化により自我の消失)
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。

【D-4・間桐邸前/一日目・未明】

※間桐邸正面の家屋が倒壊しました。

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:叶えたい願いはあるが人を殺したくないし死にたくもない。
1.聖杯戦争への恐怖。
2.学校へ行く・・・?
[備考]
※バーサーカー(一方通行)の姿を確認しました。
※ポケットに学生証が入っています。
表に学校名、クラス裏にこの場での住所が書かれています。
※どこに家があるかは後続の方に任せます。
※登校するかは思案中です。
しかし今は少し登校する側に傾いています。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康、腹二分目
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを守る。
1.バーサーカー(一方通行)に次会ったらぶっ飛ばす。
2.バーサーカーに攻撃がどうやったら通るか考える。
3.肉食いたい。
[備考]
※バーサーカー(一方通行)と交戦しました。
攻撃が跳ね返されているのは理解しましたがそれ以外のことはわかっていません。




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017:Vのため闘う者/老兵は死なず 時系列順 016:LIKE A HARD RAIN


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014:間桐雁夜&バーサーカー 間桐雁夜&バーサーカー(一方通行 022:気絶するほど悩ましい

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最終更新:2014年10月27日 22:14