Vのため闘う者/老兵は死なず ◆A23CJmo9LE





『天戯弥勒か、またうさんくせーのが出て来たな。おまけにうっとおしい立場まで与えてくれやがって』

暗闇の中で語られた聖杯戦争の概要。それは予想したものと大きく違う物ではない、そう思った。実際聖杯なんて物に縋るロクデナシども…ましてや親殺しなんて考えるおれのような奴が集う殺し合いなんて、殺伐としたものだと思っていたが……

『アッシュフォード学園の生徒だぁ?ちんたら学生生活送れってのかよ』

おまけにこのテレホンカードを使えば途中棄権可能ときた。存外ヌルイじゃねえか。

『本当に殺し合わせる気あんのかね、あいつ』
『おそらく何か意味があるんだろうよ』

念話での独り言に律儀に答えるライダー。生前の彼はなんだかよくわからないもの…‘ひとつなぎの大秘宝’を求めた者たち、そしてそこに眠る意思を知っている。ロジャーの遺志、Dの意思。聖杯もおそらく同じ、天戯のやつは何か目的をもっている。

『聖杯に必要なのか、あいつの目的に必要なのかは分からねェがな』
『邪魔なルールが多すぎるぜ、こいつは』

学生生活など今更送るつもりはない…ないが、欠席している生徒というのはあまりにも露骨にマスターだとばれるのではないか?真っ向からのバトルロイヤルを考えていた身としては回りくどくて仕方ない。
それにこのテレカ。おやじを殺せる能力者なら協力を求めるつもりだったが……これでどこぞに帰られちゃ人材確保は難しいんじゃないか?いっそ公衆電話の類をぶっ壊すか?
いや、それより聖杯をとることを考えるべきなんだろう……

『いくぞ、ライダー。学園とやらの下見だ。お前の戦闘は目立つようだからな』
『ああ、それで出てたのか。月も綺麗だし散歩かと思ったぜ、グラララ。戦闘なら海に行きたいもんだがそうはいかねぇか』

戦地で、すでに開戦したというのに散歩などと言ってのける男は器が大きいのか呑気なのか。
強力なサーヴァントゆえの自負でもあろうが、大型船の召喚に地震とその分目立つ。敵に目をつけられないためにも戦地は選ぶべきだろう。
敵がどのくらいいるのか、学園に登校した場合不利にならないか、それを考えるためにも戦地の偵察に二人は動いた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゆらゆらと、夜闇に溶ける黒衣の男……学生服の青年と、執事服の老人が夜の町で向かい合う。

「よい夜ですな、若僧(ボーイ)?」

語りかける執事(バトラー)。その目はすでに殺意でぎらついている。

「本当にいい夜。こんな夜ですもの、血もたぎるというもの。静かで…本当にいい夜」

継いで語る女吸血鬼(ドラキュリーナ)。学生服の男の傍らに感じる戦士のにおい……それを感じて霊体化を解き、彼女も闘争心をたぎらせる。
それを受けて伝説の海賊もまた姿を現す。

「コウモリのような翼、白い肌に赤い眼……お前、まさか吸血鬼か?」
「あら、よく分かったじゃない。そう、私はツェペシュの幼き末裔、永遠に紅い幼き月。此度はランサーのクラスとして現界したわ。あなたは…海の男ね?焼けた肌がとてもキレイ」
「あァ、それなりに名の通った海賊さ。おれはさっきまでマスターと吸血鬼について話してたんで分かったが、そっちはいい目してやがる」

穏やかに言葉を交わしながらも確かに戦意を酌み交わす。ただ在るだけで威厳に満ちた王のやり取りは多くの英霊が集うこの地でも希少なものだろう。

「吸血鬼の嬢ちゃん、聞きたいことがある」
「何かしら、人間?」

王の問答に割り込むはこの場で最も年若い青年。その目に宿す殺意の先は目前の敵か、遠き父か。

「吸血鬼の一部を取り込み不死身になっちまった奴を殺す方法、わかるかい?」

かつて尊属殺と言われた重罪を、罪人カインの子吸血鬼に問う。王の問答はとたん罪人同士の血なまぐさい会話に堕ちていく。場に満ちた殺意がそれをさらに醜く彩る。

「餓鬼が妙な質問するのね。日光や白木の杭じゃ死なない、のよねぇ。ただ吸血鬼に成ったわけじゃないなら、私少食だから眷属いなくてよく分からないわ。ドラキュラ殺しの執事なら何かわかるかしら?」

かわいらしい笑みを浮かべ、しかし残虐な文言を吐く。人がパンを食すように血を飲むのが吸血鬼(ミディアン)、吸血姫(ミディアン)、化物(ミディアン)。
彼女は執事にして主君である男に罪人の問いを渡すと

「ドラキュラ曰く、不死身の化物(フリークス)など存在しない。くたばるまで殺してやるのがただ一つの手段かと」

ただ、殺す。死神の回答は至ってシンプル。

「よく分かったよ。ありがたい助言(アドバイス)に礼を言うぜ、役立たず(ボンクラ)ども」

頭をつぶそーとも、粉みじんにしよーとも、削りとろーとも、死ななかったおやじがそれで死ぬなら苦労はない。
決別。その言葉を合図にするように4人は戦闘態勢に入る。

「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」

宣言と共に飛びかかる吸血鬼。狙いは敵マスター、虹村刑兆。
その速度は最速のクラス、ランサーに恥じぬものだが

「!」

目前に大きな薙刀が振るわれ、軌道を変える。薙刀を構えたライダーがこちらを睨むと


どん!!!


と音が響いたような気がした。
それは数十万人に一人のみが持つ天賦の才、覇王色の覇気…その強大な気迫。ライダーと圧倒的な実力差があるものは意識を保つことすら適わずその身を折るが

「ふん」

レミリア・スカーレットは意に介さない。彼女は屈する側ではなく膝をつかせる側だ。
己がマスターである虹村刑兆に効果を及ばさないくらいは老いた身でも難しくない。
残る一人は……

「ウォルター・C・ドルネーズ。ヘルシング家、およびランサー(お嬢様)の執事(バトラー)。元国境騎士団(ヘルシング)ゴミ処理係。行くぞ」

高らかに名乗りを上げ、刑兆に戦いを挑む。本来なら老いた彼では覇気に完全には耐え切れず一瞬ふらつく位の影響はあっただろう。
だが、カリスマ……ヒトラーに従う兵隊のような気持ち!邪教の教祖にあこがれる信者のような気持ち!
レミリアの持つそれは本来のものではないため団体戦闘において意味を持たず、人を引き付けるのみ。だが、その魅力は主君のため戦いに臨む執事の戦意の原動力となる。
ゆえに。あるじ(レミリア)と共にある限り、執事(ウォルター)は伝説の大海賊に対しても気圧されることはない。
それを確かめたライダーはマスターに視線を軽く送ると

「おれが相手してやろう。永い夜になりそうだな……!!」

ランサーの前に立ちふさがって、薙刀から震動を放ちつつ切りかかる。当然ランサーは回避し、二人ともマスターから距離をとって闘い始めた。

「バッド・カンパニー!」

マスターたちもまた戦闘を始める。飛ばしてきたワイヤーをグリーンベレーに防がせる刑兆。

「おもちゃの兵隊…?奇妙なものを…」
「見えて…いるのか?」

互いの呟きに疑問を覚えるも戦場は動く。
ワイヤーを飛ばし、切り刻もうとするウォルター。それに対して刑兆は後手に回るざるを得ない。
体にグリーンベレー含む多くの歩兵を纏わせて防ぎ、アパッチのローターでの防御も行う。時折戦車や兵隊からの銃撃を行うも容易く回避すされてしまった。

(小さな軍隊…なんだ?ワイヤーを防ぐ瞬発力はあるらしい。吸血鬼や魔術師が扱うという使い魔か…?こちらからの攻撃は効かないくせにあちらの攻撃は十分な威力がある、当たれば少々厄介だ)
(ワイヤーを飛ばす速度自体は人間のそれだ。スタンド…ザ・ハンドなんかに比べれば遅い。
遅いが…技量が半端じゃないし、人としてはかなりの速さだ。銃撃のタイミングも読まれているし、こちらは回避で精いっぱいだ。そもそもなぜスタンドが見えている?)

衰えたウォルターの技量と力では仕留めきれない。経験と速度の足りない刑兆もまた決定打に欠く。若さがあれば、億泰がいれば、とお互いにないものを求めてしまう。
膠着した状況を動かすのはサーヴァントの闘いと考え、闘いつづけながらもそちらの様子をうかがう二人。

巨躯の老人と殴り合う幼き少女。それは字面だけ見ればいろんな意味で警察沙汰だろうが…
小柄と翼から生じる音にも迫る速度を生かし、近接戦で体格の勝るライダーと渡りあうランサー。槍は用いていないが、得物の大きさゆえに近接戦に不利が生じるライダー相手には好判断と言えるだろう。吸血鬼の怪力でもって殴る、殴る、殴る、殴る。
だが対するライダーも歴戦の英雄。周囲を飛び交うランサーの攻撃を得物で、肘で、柄で受け、受けきれないものは震動と武装色による硬化、そして彼女を上回るパワーでいなす。僅かのダメージを受けつつも時折震動を放ち牽制する。回避は容易いが、これをマスターに向けて撃たれてはたまらないと攻めを急ぐランサー。
速度で勝るランサー、力で勝るライダー。夜の女王と海の皇の闘いは、侵略する女王と守る皇の形ではあるがこちらも概ね互角。開戦時の言葉通り、【永い夜】になるかと思われたが


「バッド・カンパニー!」

戦局が双方互角ならば、有効的な援護を決めた方が勝つ。ライダーの懐から現れ援護射撃を行うスタンド……視線と交換でマスターから借りていた隠し兵器。
レミリア・スカーレットは優れた戦士である。幻想郷という閉ざされた世界とはいえ鬼や天狗、様々な妖怪と闘い、数百年単位で積み上げた経験は人間の英霊では届くものではない。
しかし彼女が振るうは個の武勇。家族、仲間、友人、部下、様々な関係の者と肩を並べはしたが軍隊(カンパニー)を率いる闘いならばこの聖杯戦争においてエドワード・ニューゲートに並ぶものはない―――!

(避け―――――きれない!?)

必死に回避の姿勢をとろうとするが指揮が巧みか、銃手の腕かその軌道は見事に心臓に届く……かと思われたが

(何とも…ない?)

確かに直撃した。だがダメージはない。
バッド・カンパニー……スタンドは精神エネルギーのビジョンであり、幽霊ひいてはサーヴァントへも干渉可能である。しかしBランクの対魔力を持つランサーにダメージを与えるほどの高位の神秘を宿すには至らなかった。
しかしその銃撃は無意味ではない。

(くそっ、体勢が、まずい!弾幕を避ける癖が仇になった!)

一度回避のために崩れた姿勢は戻らない。その隙をつき、震動を纏った拳を

「ウェアアアアア!!!」

打ち放った。

「うぐっ…う…」
「お嬢様!!」

直撃を受け、吹き飛ばされるランサー。本人の飛翔スキルによる減速とウォルターの助力を受け、どうにか静止、体勢を立て直す。
それを見た刑兆は放たれたウォルターの牽制をいなし、ライダーの下へ合流する。形勢はライダー主従に傾いた。
戦局が変わった以上今までと同じ戦術はとれない、機動力の落ちたランサーでは今度は五分にならない可能性が高い。

(弾幕での遠距離戦?いや、あちらは衝撃波を放てるし、マスターの方もあの大量のヒトガタで援護が出来る。
ウォルターが遠距離攻撃できない、加えて魔術師ではない以上、手数でこちらが不利。ウォルターをかばうのも厳しくなるうえ、奴はライダーのはず。対魔力で弾幕が効かなかったらこちらが詰み)

(今のような不意打ちが何度も使えるわけがねェ。遠距離戦に持ちこんでもいいが、奴がそれに対応した武器があると厄介、また千日手になる。ランサーを名乗りながら武器を見せてねェのも気にかかる)

( (宝具を使うか…?) )

かたや逆転のため、かたや決定打のため、切り札の開帳を考える。
運命を操る必中の槍を。長き旅を共にした乗機を。己が居城の再現を。己が家族の助力を。

こんな緒戦から…?

『退くわよウォルター、序盤から消耗は避けたい。いったん撤退して傷を癒す』
『認識しました、レミリアお嬢様(ヤー、マイマスター)』

飛翔スキルでもってウォルターを抱え、あさっての方向へ飛び立つランサー。騎兵の本懐を見せていないのは気になるが…海賊というなら陸上で有効な乗機が出るとは考えにくい。
それを見て震動波による追撃を考えるライダーだが

「よせ、あの市街地吹っ飛ばす気か?消耗してんのにこれ以上目だって敵を引き寄せると厄介だ。おれ達も引くぞ」

それを聞き、矛を収めるライダー。確かに、生前は無制限に放つことが出来た震動もサーヴァントの身では魔力を消費する。そこに慣れていなかった。
威力の割に燃費はいい部類だが、その威力もだいぶ落ちている。随分使い勝手が悪くなったものだ。

「グララララ…悪ィな、調子に乗っちまった。で、どうするよ?偵察なんて空気じゃなくなっちまったぜ」
「とにかく離れるぞ。騒ぎを聞きつけられて連戦なんざごめんだ。いったん帰って、色々考えることがありそうだ」
「学校とやらはどうすんだ?」
「なるようになる。行くぞ」

学生の身分なんて邪魔でしかないが、拠点が準備されているのは悪くねェ。
だが、思ったより疲れた。スタンドとサーヴァントの同時行使は慣れないとキツイな。


【C-3/街外れ/1日目 未明】

【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[令呪]残り3画
[装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……?
0.まさかいきなり吸血鬼に会うとはな…
1.帰宅し、まず休養とそれから考察。
2.登校するかどうかは気分次第。
3.公衆電話は破壊する…?

[備考]
バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。
明朝登校するかどうかは後続の方にお任せします。

【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONE PIECE】
[状態]疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]大薙刀
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける
1.刑兆と共に帰宅、考察。
2.できれば海に行きたい

[備考]
NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。

[共通備考]
ウォルター&ランサー(レミリア・スカーレット)と交戦、宝具なしでの戦闘手段と吸血鬼であることを把握しました。
B-2の現在地から歩いて少しのところにこの世界における自宅があります。具体的なことは後続の方にお任せします。

[地域備考]
C-3市街地の外れで戦闘を行いました。バッド・カンパニーの銃声が響き渡り、グラグラの実の震動が伝わりました。ただし銃声はスタンドのものであるためNPCには聞こえなかった可能性が高いです。





『あなたの言う通りだったわね、ウォルター。日傘片手に勝てる楽な闘争じゃあない』
『ええ、ですがこのくらいなら苦境の内にも入りません。我らならば勝てる戦です』

街外れを飛び、戦地を離れる主従。執事の諫言をうけ、昼の外出を避けたのは妙手だったと思い返す。
反省はしているようだが、戦意が萎えることはない。
そう、戦意は失わない。だが……

(あの年老いたサーヴァント…アーカードなどのような人外ではなく、人間のようだった。それがレミリアお嬢様…吸血鬼と互角にわたり合っていた……老いた身で)

なぜ老年なのだ?サーヴァントとは全盛期で召喚されるものではないのか?何か理由が?
胸中を占める疑念と……僅かな嫉妬。詮無いことと分かっていながら先の戦闘で己の衰えを自覚した分、負の思いを感じざるを得なかった。

『さすがに疲れたわ。ダメージも小さくないしどこかで血がほしいわね』
『ふむ…』

余計な思いはいったん横に置く。
戦闘を終え、気が抜けたか外見相応の面が出たようだ。聖杯戦争の参加者以外の一般市民もいるようだしそれを頂くか…?しかし先の主従に吸血鬼とばれてしまっている以上目立つマネは避けた方がいいだろうか。病院から輸血用血液を確保することを考えるか…?

『早く行きましょ。ちなみに私はB型が好みよ』



【C-3/市街地上空/1日目 未明】

【ウォルター・C・ドルネーズ@出典】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.レミリアの食事(血)の確保と休養。
2.打って出るのは夜間のみ。
3.ライダー(エドワード・ニューゲート)に対して僅かな嫉妬と疑念。



【ランサー(レミリア・スカーレット)@東方project】
[状態]ダメージ(中、スキル:吸血鬼により現在進行形で回復中)、魔力消費(小、現在進行形でダメージの回復に消耗中)、若干の空腹
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ウォルターのためにも聖杯戦争を勝ち抜く
1.食事と休養。ウォルター、はやくー
2.もう日傘片手で勝てるとは考えない。全力で行く。

[共通備考]
虹村刑兆&ライダー(エドワード・ニューゲート)と交戦、バッド・カンパニーのビジョンとおおよその効果、大薙刀と衝撃波(震動)を確認しました。発言とレミリアの判断より海賊のライダーと推察しています。
現在C-3の上空ですが、どこに向かって飛んでいるのか、レミリアの食事のためNPCを襲うか、病院やそれに準ずる施設に向かうか、そもそも施設の有無を知っているのかなどは後続の方にお任せします。




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015:悪魔の証明 時系列順 018:ゴムと反射と悪党と


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006:ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット 028:あの空の向こう側へ
009:虹村形兆&ライダー 虹村形兆&ライダー(エドワード・ニューゲート 027:MY TIME TO SHINE

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