ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー ◆oLzajvgbX6




お洒落な洋館で、お茶会が開かれていた。

森のざわめきが空気を揺らすが、洋館はそしらぬ顔で顕在する。
風や音をこの洋館が無視するのは、中に人外魔境を潜ませているからか。
夜の闇の中で映えるその姿は、まるで吸血鬼でも住んでいそうだった。

そして、洋館の大広間では座って紅茶を飲む少女と、その後ろに立って静かに彼女の反応を伺う老人がいた。
大広間の壁には豪壮な雰囲気の掛け時計が設置され、静かに時を刻んでいる。
絵画もいくつか掛けられているが、いずれも著名な画家達に描かれた何百万もする高級品だ。
天井には豪華だが、決して悪目立ちはしないような、上品なシャンデリアが部屋を照らしている。
床には重厚な絨毯が敷かれ、その模様は見るものの心を楽しませる。
そして、部屋の真ん中に華美だがどこか場違いな椅子に座って、少女は紅茶を飲んでいた。これは、傍で控える老人が別の部屋から持ってきたものだ。ゆえに、部屋の調和にどこかそぐわない印象を与える。

紅茶を飲む少女は名を、レミリア・スカーレットと言った。吸血鬼、である。
この度、ランサーのサーヴァントとして召喚された彼女だが、手元に槍は持っていない。かの吸血鬼、ドラキュラ伯爵の末裔だと嘯き、妖怪や神が存在する「幻想郷」では、「紅魔館」の主をしていた彼女は、この部屋の雰囲気に呑まれるどころか、まるでもうこの館に住んで50年は経っているといった顔で見事に君臨していた。
外見は10歳前後。一部の特殊な性癖者が見たら喜びそうな姿かたちをしている。しかし、年齢は500歳を超えていた。実は、傍で控える老人より遥かに年上なのだ。

一方、老人は人間だった。吸血鬼でもなければ、魔術師でもなく、ホムンクルスでもない。
普通に怪我をして、普通に年をとり、普通に死ぬただの人間だ。

しかし、何百もの吸血鬼を殺し続けた、恐るべき人間だった。
鋼線(ワイヤー)を使い、吸血鬼をバラバラにするその姿は、戦場では死神と形容された。

「悪くはないわね」

紅茶を飲み終わって、レミリアはそう言った。
この紅茶はウォルターが淹れたものだ。

「いいえ、この言い方だとさすがに酷ね。美味しいのだけれど、ただ美味しいだけね。私好みじゃないわ」
「申し訳ございません」

丁寧に謝るウォルター。

「別に謝らなくていいわよ。美味しいのは事実だし」

レミリアは上機嫌に答えた後、ふと表情を変えて、ウォルターのほうを見た。

「ウォルター。貴方は天戯弥勒を知っているかしら?」
「いいえ、存じておりません」

ウォルターもレミリアも、天戯弥勒のことは何一つ知らないのだ。
名前の響きから日本人であることは分かるのだが、それ以外の情報は一切不明。
果たして、そんな彼を信用できるのか?情報がほとんど無い男の話を鵜呑みにして、彼らは皆殺しを選択するほど愚かなのか?

「関係ないわね」
「ええ、関係ない」

そんなことは二人にはどうだっていいのだ。
彼らだって、天戯弥勒の完全には信用していない。
しかし、そこに利益があり、周りが敵だというならば彼らは戦える。殺せる。

ねえ、ウォルター。貴方は聖杯に何を願うの?」

この聖杯戦争に参加しているマスターは、ほとんどの者が何か願いを抱えている。そこに老若男女の区別はない。
それは、ウォルターも同様だった。


「若返りですよ」
と、ウォルターは簡潔に言った。

それはこの男の経歴から考えれば、あまりにも小市民的な言葉だった。
あら、とレミリアは意外そうな顔をする。おそらく、彼女はもっと大きくて、狂った回答を期待したのだろう。

「私が言うのも変な話だけれど、あなたは老いた自分を楽しんでいるように見えるわ」
「ははは、年老いた自分が嫌いなわけではありません。ただ、今の私では勝てない相手がいるのです。この衰えた体では到底敵わない、地獄のような化物がいるのです」
「あら、あなたでも歯が立たないなんてそんな私みたいな奴がいるのね」
「はい、その男は恐ろしく強いうえに、不死身なのです。しかし、私は死ぬ前に、彼にどうしても挑みたい」
「だから、聖杯を求めると。ふーん、興味深い話だわ。あなたがそうまでして、戦いたい、倒したい相手っていったい誰なの」

再び、紅茶を口にしながらレミリアはそう言った。
その言葉にウォルターは意地悪く笑った。

「ドラキュラ伯爵です」

レミリアは、紅茶を吹き出した。


◆ ◆


「本当によろしいのですね?」

ウォルターはそうレミリアに問いかけた。

「ええ。別にあなたがご先祖様を倒したからといって、私には何も関係ないことだわ。むしろ、人間でありながら吸血鬼の真祖に挑もうとするあなたに興味がわいた」
「ふふ、意外と多いのですよ。そういう愚かな人間は」

一瞬、ウォルターの脳裏に様々な人物が揺らめいた。

「OK、OK。私はランサーのサーヴァントとしてあなたに聖杯を贈るわ。ドラキュラの末裔の力を借りて、ドラキュラを倒す力を得る。中々面白い冗談じゃない?」
「まったくです。三流の劇作家が考えそうなシナリオだ」
「さあ、ウォルター。戦争を始めましょうよ。栄光へと、更なる闘争へと続く戦争を」
「そうですね」

ウォルターは窓から外を見る。すでに空は明るみ始めている。しばらくすれば日が昇るだろう。

「夜まではここでのんびりするのもいいのでは?」
「あら、日傘をさせば大丈夫よ。ハンデとしてはちょうどいいのだと思うのだけれど」

確かにレミリアのステータスは高い水準だ。他の三騎士のクラスとも十分に戦えるだろう。
しかし、常に日傘をさしながら戦うなど、正気の沙汰とは思えない。

「レミリア様、油断は禁物です。ここにいるのは有象無象の雑魚ではなく、一騎当千の怪物ですよ」
「臆することはないわ、ウォルター。私も貴方も一級品よ。……まあ、いいわ。待ち構えるのも私らしいし」

そう言って、レミリアは屋敷の内部へと再び足を進めた。
ウォルターは小さくため息をつく。
彼はサーヴァントほど、自分たちの戦力を評価していなかった。
ランサーはステータスは高水準で、宝具も強力だが、日光が弱点というのは中々大きい短所だ。しかも自分のよく知る男と違い、物理的なダメージを負うらしい。
即消滅ではないらしいし、それをカバーする宝具も備わっているが、魔術師ではないウォルターからすれば常に宝具の展開などたまったものではない。
自分だって、並の人間、いやたとえ魔術師でも容易く屠れる自身があるが、あのイスカリオテの狂信者のような奴が相手では分が悪い。

「聖杯、容易くはとれんだろうな。だからこそ面白い」

ウォルターの顔が獰猛に歪む。
赤いテレフォンカードを拾った時、彼の運命は大きく変わりだした。
本来の正史ならば、後に若い肉体を手に入れ、されどもついに勝利はできず、炎の中で消えるはずだった彼は。
今、違う未来を歩みだした。

「ウォルター。もう一杯紅茶を貰えるかしら」
「了解しました」

そう慇懃に答えて、ウォルターも体を翻し、屋敷の内部へと消えていった。



【クラス】 ランサー
【真名】 レミリア・スカーレット
【属性】 混沌・善

【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:A 幸運:B 宝具:B

【クラススキル】
 対魔力:B 第三節以下の詠唱による魔術を完全に無効化。大魔術、儀礼呪方等の大掛かりな魔術を持ってしても傷つけることは難しい。


【保有スキル】
 吸血鬼:C
 人あらざるもの、吸血鬼としての特徴を纏めた複合スキル。
 レミリアはツェペシュの末裔を名乗っているが、確たる証拠はなく、吸血が下手で、眷属を作らないため、ランクは低い。また日光や炒った豆、流水は苦手だが十字架やニンニクは平気。全身を蝙蝠に変化させ、蝙蝠一匹分でも残っていれば再生が可能。

カリスマ(偽):C
 個人としての魅力。
 軍団の指揮や団体戦闘には何ら寄与しないが、他者を惹きつける。

飛翔:B
 自前の翼による飛行能力。
 飛行中の判定における敏捷はこのスキルのランクを参照する。

【宝具】
『神槍「スピア・ザ・グングニクル」』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:50人
魔力を練り上げて作り出した巨大な槍。投げれば相手に必ず当たる性質を持つ。絶大な破壊力を持っているため、直撃すれば並のサーヴァントに大きなダメージを与える。

『紅魔館(スカーレット・ハウス)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
真名開放をすることで発動する、結界宝具。周囲を「紅魔館」へと変化させ、敵サーヴァントとマスターを閉じ込める。脱出するにはレミリアを撃破するか、マスターを宝具が維持できなくなるまで消耗させる必要がある。しかし、内部にはレミリアに忠誠を誓った人妖がサーヴァントとして召喚されているため、一筋縄ではいかない。ウォルターが魔術師ではないため、数分しか発動できない。

『紅霧異変(スカーレット・ミッド)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:100 最大補足:100人
周囲に紅い霧を発生させ、太陽の光を遮る。これにより、レミリア・スカーレットは昼間でも制限無しで戦うことができる。本来なら範囲は幻想郷全てを包み込むほど大きいが、ウォルターが魔術師ではないことからレンジや最大補足が大きく減少している。

【weapon】
『お気に入りの日傘』
レミリア・スカーレットが所有している普通の日傘。これで日光を遮れば、昼間でも外で活動できる。

【人物背景】
 ゲーム「東方PROJECT」に登場するキャラクター。「紅魔館」の主として君臨する吸血鬼。500年以上生きているが外見は10歳くらい。大人びた言動をとるが、行動原理は意外と子供っぽい。自称ツェペシュの末裔を名乗っているが、実際は違うらしい。運命を操る程度の能力を持つと言われているが、明確にこの能力が使われたことはないため、詳細不明。

【サーヴァントとしての願い】
 不明。ウォルターに協力して聖杯を与える。

【基本戦術、方針、運用法】
 ステータスが非常に高いため、夜は積極的に他陣営を襲うべき。昼間は魔力に余裕があれば、『紅霧異変』を発動させながら戦闘を続行するが、そうでない場合は日光の当たらない場所で魔力と体力の回復に努めるのが吉。『神槍「スピア・ザ・グングニクル』は必中の宝具のため、戦闘では重宝する。逆に、『紅魔館』は魔力消費が非常に多いため、一度使ったら、一日は休まなければならないだろう。まさに、奥の手といったところか。


【マスター】
ウォルター・C・ドルネーズ
【参加方法】
何らかの方法で赤いテレフォンカードを入手。詳細不明。

【マスターとしての願い】
全盛期の力を取り戻す (若返り)。その後帰還してアーカードと対決。

【能力・技能】
全盛期と比べると衰えたが、それでも鋼線(ワイヤー)を使って武装したグールや吸血鬼を圧倒できる。少年の頃から戦場で戦ってきたため、戦闘経験は非常に豊富。また、執事としても万能。

【weapon】
『鋼線(ワイヤー)』……ウォルター・C・ドルネーズが使用する鋼線。全盛期の彼が使えば、ビルを両断できるほどの強度を持つ。

【人物背景】
「HELLSING」に登場するキャラクター。ヘルシング家二代に使える執事。物腰は穏やかだが、昔は「ゴミ処理係」として多数の吸血鬼や、ヘルシング家に仇名す人間を殺してきた。
先代ヘルシング家当主アーサーが没した直後、次期当主の座を狙う実弟リチャード・ヘルシングが凶行に至る確信を即座に見抜き、リチャードによるインテグラ襲撃に際して封鎖されていた地下深層に続く道を逃走経路の要点となるよう計画し、インテグラとアーカードの邂逅させる。その時から、アーカードと戦うことを考えていたらしい。
本来の正史ならば、後に、彼はロンドンで手術を受け、不安定な人口吸血鬼になりアーカードに挑戦するが、結局勝つことはできなかった。

【方針】
レミリアが活動できる夜間は「目敵必殺(サーチアンドデストロイ)」で一片の容赦なく敵を仕留める。昼間は、拠点にこもり様子見。彼一人で調査に行く可能性もある。






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参戦 ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット 017:Vのため闘う者/老兵は死なず

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最終更新:2014年10月25日 20:56