遠坂時臣&ライダー ◆ACrYhG2rGk


 つらつらと景色が流れていく。
 夜の街。煌めくネオン、若い女の嬌声、若い男の怒鳴り声、すえた臭い。
 優雅とは程遠い、まさしく混沌と評する以外にない光景が、目の前をスクロールしていく。


「……で、答えは出たか?」


 問いを投げかけられる。
 その主は、斜め前に座ってハンドルを握っている男。
 何の因果か自分は今、機械文明の手先たるこの鉄の箱に乗って走っているのだ。
 聖杯戦争御三家の一角である遠坂家、その当主であるこの遠坂時臣が。


「悩むのは構わんが、目的のないドライブにそう長くは付き合えん。
 やるならやる、やらないならやらない。ここらではっきりさせろ」


 時折りハンドルを切り、信号に止まり、法定速度を決して違反しようとしないこの男。
 見た目はいかにもなタクシードライバーだが、これでもれっきとしたサーヴァントなのだ。
 ライダー。それが今回の、時臣のサーヴァント。


 時臣はふと、以前契約していたサーヴァントを思い出す。
 傲岸不遜を絵に書いた――と言うより、その語源となったような我が道を行く黄金のサーヴァントを。
 同じサーヴァントという存在でも、あれとこれとはまったく違う。   
 あのアーチャーは喩えるなら太陽だ。天上に在り、眼下全てを睥睨し、裁く。唯一無二故に正しく、また傲慢である。 
 このライダーは喩えるなら巨木だ。大地にしっかりと根を張り、どっしりと出迎える。雨にも風にも小揺るぎもしない太い意志。 


「……私には娘がいてね。二人だ。姉妹。
 まだ小学生だが、二人とも聡明で……優秀でね。私などでは辿り着けない高みへ行けるのではないかと思っている」 


 英雄王にはそんな事情など話す気にはならなかったが、このライダーに対しては口が勝手に動いていた。 


「違うな、思っていた、か。私はあの子たちを残したまま、道半ばで倒れてしまってね。
 死ぬ覚悟はしていたとはいえ……いや、本当のところは、覚悟など無かったたのかもしれないな。 
 だから今、私は死ぬことも生きることもできないままこんなところにいる」 
「俺を召喚したということは、まだあんたには願いがあるということだ。 
 あんたが死んだ聖杯戦争……この方舟の聖杯戦争とは少し違うようだが、やることは変わらない」 


キッ、とライダーがサイドブレーキを引き、タクシーを止める。
ドアが開く。目を向ければそこは、人の溢れる駅前ターミナルだ。


「あの駅から電車に乗れば、あんたはあるべき運命に戻る。つまりは死ぬ。
 選べ。戦うか、降りるか。あんた次第だ」 
「君はそれでいいのか? 私が拒めば君も聖杯戦争には参加できんだろう」 
「俺は別に聖杯なんぞ求めちゃいない。あんたがやらないのなら俺も消える、それだけだ」 


 鋼の如く冷えた眼光を向けられ、時臣は竦む。 
 その目は何度となく死地をくぐり抜けてきた者のみが放つ輝き、殺気を放っている。 
 それでいて冷たい感じはしない。全てを受け入れ、そして乗り越える――不可能に挑む益荒男の顔だ。 



「……私は、魔術師として戦い、死んだ。そこに後悔はない。
 綺礼が私を裏切ったのも……彼を責める気はない。彼が秘めていた歪みを見抜けなかったのは私の不徳だ。 
 私に後悔はない。だから、二度目の聖杯戦争などという優雅ではない行いは……」 
「魔術師として後悔はない。それはいい。だが、父親として、後悔はないのか?」 


 ライダーから放たれた問いはまさしく矢のように時臣を貫いた。 
 聖杯戦争に挑む以上、自身の死は起きてしかるべき結果に過ぎない。 
 遺される娘たちの処遇もすでに手配済みだ。 
 長女・凛は遠坂家を継ぎ、言峰綺礼を後見人に。 
 次女・桜は遠坂家と同じ名門である間桐家に養子に出す。 
 類稀なる魔術の才を無駄にすることなく、この采配こそ二人の未来を輝かしいものに―― 


「親がいなくなった子どもってのはなあ……寂しいもんなんだよ」


 ポツリと呟かれたたライダーのコトバによって、カガヤカシイミライは一瞬で色褪せた。 
 凝然とライダーを見る。その言葉はけして一般論でも何でもない、言葉に出来ない深みがある。 


「覚悟はしてた、魔術師はそういうもんだ、つってもな。
 胸の真ん中にポッカリ空いた穴は、他の何でも埋められねえ……一生抱えて生きていくしかねえ傷になる。 
 俺はその痛みを知ってる。だからあいつら、遥や子どもたちの痛みを受け止めてやりたかった」 


 遥、というのが誰かは知らない。が、この流れで言うのだ、ライダーの子か、それに近い関係なのだろう。 
 とすれば自分とこの男には、子を持つ父親という共通点がある。 
 そしておそらくこの男は、親を失ったか子どもを残して死んでしまったか、あるいはその両方か。 
 残される痛み、そして残す痛みを知っているのだ。 


「あんたは魔術師として戦い、死んだ。
 なら今度は魔術師じゃなく父親として、子どもたちのために生きてみちゃどうだ?」 
「そのために、戦えと?」 
「無理強いはしねえさ。俺が果たせなかった夢を、あんたに押し付けてるだけなのかもしれねえからな。 
 俺はあいつらと一緒にいるとき、生きていると感じていた。この子たちを守るために今まで生きてきたんだって確信できた。 
 あんたはどうだ? 父親として、子どもたちになにか誇れることをしたか?」 


 夢――この男の夢は、子どもたちと穏やかに生きていくことだったのだろう。 
 自分の夢は、言うまでもなく根源への到達だ。 
 だがこれは、この夢は、言うまでもなく父親・遠坂時臣としての願いではない。 
 魔術師・遠坂時臣としての願いだ。子どもたちを魔術師としてしか認識していない、父親としては失格の。 


「凛……桜……」


 思えば、市井の家族のように子どもたちと遊んだことはあっただろうか。 
 娘たちに手を引かれ、妻が微笑み、家族みんなで笑い合うような時間が。 
 考えるまでもない。一度だってなかった。 
 時臣が娘に接するのは常に魔術というフィルター越しだった。 
 一度だって、娘たちを父親として抱きしめたことはない。 
 手間など無かったはずだ。友達はできたか、テストの成績はどうだった、好き嫌いはするな。そんな他愛無い言葉でよかったのだから。 
 気がつけば、涙を流していた。 



「……そうか。私はこんな……こんな、簡単な事を、今まで……」


 今になってようやく、間桐雁夜があそこまで自分を憎んできた意味がわかった。 
 何の事はない。彼のほうがよほど人間として、父親として正しかったというだけだ。 
 凛と桜が魔術師としてではなく、ただ人として健やかに生きていけるために戦ったのだ。 


「雁夜……済まないな、いまさら遅いと怒るだろうが、謝罪するよ。
 そしてありがとう。君はあの子たちを守ろうとしてくれたんだな……」 


 涙とともに、時臣が今まで魔術師として積み上げてきたものが崩れ落ちていく。 
 誇りも、血統も、名誉も、賞賛も、何もかもがもういらない。 
 この両の手に娘たちを抱きしめられるのなら、他には何もいらない。 
 そう思っただけで、ひどく肩が軽くなった感じがする。あらゆる重圧が消え去り、晴れやかな気分になった。 
 時臣は、開け放たれていたドアを掴んで乱暴に閉めた。 


「出してくれ、ライダー。まずは市内を巡察する」
「……いいのか?」 
「ああ。決めたよ、私は戦う。魔術師としてではなく父親として、凛と桜を迎えに行く。 
 そのために君の力を貸してくれ、ライダー」 


 ライダーの瞳をしっかりと見据える。先ほどと違い、もう竦みはしない。 
 今、時臣の中には芯がある。このライダーと起源を同じくする強靭なシャフト。 
 家族を守らんとする父親の、愛という名の芯が。 


「良い目になったな」


 ニヤリと笑い、ライダーが計器を操作する。 
 空車、から予約車へ。 
 この瞬間を以って、時臣は初めてライダーと契約したのだ。 
 だがまだ、このライダーの真名を聞いていない。 
 戦略上重要というのももちろんだが、時臣に父親のあるべき姿を教えてくれたこの男の名を知りたいと思った。 


「私の名は遠坂時臣。ライダー、君の名を教えてくれ」


 ライダーは、かぶっていた制帽を脱ぎ、助手席に置く。 
 そして振り返り、言った。 



「元東城会四代目、桐生一馬だ。飛ばすぜ、お客さん」



 踏み込まれるアクセル。 
 タクシーは、猛スピードで夜の街を走り抜けていく。 



【CLASS】
 ライダー 
【真名】
 桐生一馬 
【出展】 
 龍が如く5 
【パラメーター】 
 筋力A 耐久B+ 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A 
【属性】
 秩序・任侠  
【クラススキル】 
 騎乗:C 乗り物を乗りこなす能力。タクシーなどの自動車を運転することに特化しており、バイクや生物は運転できない。 
 対魔力:C 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。 
【保有スキル】 
 伝説の極道:EX かつて堂島の龍と呼ばれた伝説の極道。その偉業は神室町にとどまらず、日本全国のアンダーグラウンドに雷鳴の如く鳴り響いている。 
            ライダー本人は紛れもなく人間だが、その圧倒的な強さと背中に彫った応龍の刺青が見る者に天に昇る龍を想起させる。そのため竜の因子を有する。 
 天啓:C 何気ない日常の中に武芸の真髄を見出す一瞬の閃き。直感と心眼(偽)の複合スキル。 
 古牧流古武術:A+ 戦国期より伝わる古牧流古武術。拳法のみならず武器にも精通し、対武器戦闘をも得意とする。 
             正統継承者である古牧宗太郎が常にアレンジを加え進化し続けているため習得の難易度が高く、Aランクでようやく「修得した」と言えるレベル。 
             接近戦において敵の攻撃にカウンターを取りやすくなり、また格闘ダメージを向上させる。 


【宝具】
「福岡最速のタクドラ(ドラゴンタクシー)」 
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:50人
 桐生一馬が福岡で乗り回していたタクシーを召喚する。 
 対軍宝具ではあるがこの宝具自体に攻撃力はない。ただひたすらに速く、ひたすらに頑丈なだけ。 
 桐生はタクドラという仕事にプライドを持っているため、決してタクシーで人を轢くことを良としない。そのためこの宝具の使い道はもっぱら移動用である。 
 攻撃力が皆無な分、乗車中はマスター・サーヴァント共に高ランクの気配遮断を付加し、外側からは魔力も感知できなくなる。 
 街中を法定速度を守って走っていればまず発見されることはないだろう。 


「神室町に吹き荒れる嵐(ヒートアクション)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人
 神室町で日常的に起こる殺し合い一歩手前のケンカを擬似的に再現する固有結界。 
 この結界内では建築物や路上に落ちている物、地形などあらゆるものをDランク相当の宝具とし、戦闘に活用できる。 
 この宝具を発動中に敵のサーヴァントを掴みガードレールに頭を叩きつける、川に投げ込むなどするとダメージを与えられる。 
 桐生を中心に10メートルほどと効果範囲は極めて狭いが、桐生が移動することで結界も動くようになっている。 


「怒龍の極み(クライマックスドラゴンヒート)」
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 自分に対して発動する宝具。 
 戦闘でダメージが蓄積すると同時に桐生の怒りのボルテージも溜まっていき、怒りが限界を突破したときに初めて使用が可能となる。 
 一時的にあらゆるダメージを2分の1に減少させ、敵の攻撃で怯まなくなり、負ったダメージ分の数値を攻撃力に加算する。 
 繰り出される怒涛の連撃はさながら龍の息吹の如く。竜殺しの属性を持たない者にはダメージ追加判定がある。 


【weapon】
 怨龍の鉄拳・改 
  桐生が愛用するメリケンサック。刃物や銃弾をガードできる。 


 桐生は本来、刀、短刀、棒、トンファー、ヌンチャク、カリスティック、拳銃、対物ライフル、ショットガンに衛星ビーム砲などあらゆる武器を扱えるマルチな才能を持つ。
 そのためライダー以外にもセイバー、ランサー、アーチャーのクラス資質を有するが、ライダーとして現界しているためこれらの武器を宝具として持ち込むことはできなかった。 
 ただし桐生の基本的な戦闘スタイルは拳や蹴りを用いた格闘であるため、メリケンサックはすべてのクラスで所有している。 



【人物背景】
 関東一円を支配する日本最大規模の広域暴力団「東城会」の元四代目総長。 
 東城会傘下の堂島組に籍を置いていたときから傑物と噂される剛の者であり、また人情にも篤く、その生き様で多くの極道たちを心酔させる。 
 巨大歓楽街「神室町」を襲う災厄に幾度も立ち向かい、並み居るヤクザ・マフィア・チンピラ・虎・ゾンビを殴り倒し撃ち倒してきた、いわばジャパン製のターミネーター。 
 自らが孤児でありその寂しさを知っているため、四代目に就任すると同時に引退、沖縄にて孤児院を開き孤児たちの面倒を見る。 
 その後色々あって福岡に移住、名前を変えてタクシードライバーとして生計を立てる。 
 地元の走り屋を次々とタクシーでぶっちぎり、名実ともに福岡最速のタクシードライバーとして認知されている。 


【サーヴァントとしての願い】
 時臣が父親として娘の元へ帰れるよう助力する。自身も可能なら遥や子どもたちのところに戻りたい 


【基本戦術、方針、運用法】
 ライダーの乗り物は戦闘には使えないが、使用中は一般人と識別が困難になる。そのためまずは情報収集が得策。 
 ライダー本人はタイマンの殴り合いに特化している。そのためアーチャーやキャスターといった遠距離攻撃を主体とするサーヴァントには苦しい展開を強いられるだろう。 
 タクシーを利用して身を隠しつつうまく一騎打ちに持っていくことが重要。マスターをタクシー内に隠しておけば戦闘中も安全。 
 ただし、時臣はおそらく運転免許を持っていないのでタクシーを移動させることはできない。あらかじめ戦闘に巻き込まれない場所を確保しておこう。 



【マスター】
 遠坂時臣 


【出展】
 Fate/zero 


【参加方法】
 優雅に集めたアンティーク家具の一つがゴフェルの木製だった 


【マスターとしての願い】
 父として二人の娘に償いをする 


【weapon】
 大粒のルビーを先端にはめ込んだ杖 


【能力・技能】
 遠坂流魔術 


【人物背景】
 遠坂家五代目継承者。 
 もともと魔術師としてはさほど才覚豊かな人物と言うわけではなく、歴代の遠坂の中でも凡庸な人物であった。 
 しかし、その克己と自律は強固なもので、必要とされる数倍の修練と幾重もの備えをもって事に当たり、常に結果を出してきた。 
 その結果、家訓「常に優雅たれ」に忠実な人物として、魔術師達からも一目置かれる存在となっている。 
 第四次聖杯戦争には監督役である言峰璃正とも通じ、アサシンのマスターである言峰綺礼を幕下に加えるなど幾重にも策謀を巡らせた上、英雄王をサーヴァントとして召喚し、満を持して臨む。 
 ……が、弟子であった綺礼、そしてサーヴァントであったギルガメッシュに裏切られ、暗殺される。 


【方針】
 ライダーの宝具を利用し、偵察に出る。 
 情報が充分に集まったところで行動を開始する。 
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