心波のトランス ◆wd6lXpjSKY


 時が動く。
 視界には誰一人として映らず、淡い月の光が路面を照らしている中を暁美ほむらが駆ける。
 握り締めた拳銃に力を入れ、近くに潜んでいる標的を探す。

 人の気配を感じない――けれど、バーサーカーが現れた時点で付近にマスターが潜伏している可能性は高い。
 過去に契約を結んだキャスターのように監視する術を持っていれば、話は別だが、彼は違うだろう。
 一度はその姿を遊園地で見ている。あの時点で彼にそのような素振りは感じなかった。故に。

「身を隠すなら建物の中……安易に考えるならそれが一番」

 暁美ほむらはビルの扉を力強く蹴り飛ばす。
 正面から突入すればガラスだのセキュリティロックだの弊害があるが、裏口の無機質な鉄の扉ならば問題は無い。
 魔力でほんの少し身体能力を弄り――中に侵入する。

 電気の音がが響く、薄暗いロビー。ソファーに観葉植物、自販機が見える。
 人間の気配を感じさせないこのエリアに――目を凝らせば幾つもの瞳。


「……手荒い歓迎ね。そんなに大勢でどうかしたのかしら」


 弱音は吐かない。
 隙を見せれば一瞬で劣勢に立たされ、死へと直面してしまうだろう。
 そして何よりも、こいつらに負けたくない気持ちが暁美ほむらの瞳を前に向かせる。
 自動人形が待ち伏せていようと、彼女は止まる訳にもいかないのだ。


「これはこれは創造主様の元マスター。こんなところで何をしてるのかなぁ~?」


 群れの中からリーダー格であろう人形が挑発するような高めの声色を響かせる。
 お世辞にも綺麗とは言えない崩れた表情がより一層、人間の心に不快感を与える。

 関わりたくない、と謂わんばかりに無言を決める暁美ほむら。
 彼女の表情から察するに本気で彼らと遭遇したくないらしい。


「無視かよぉ、ムカつくなあ。ここで殺しちゃうか……殺すぜぇ~~!!」


 沸点が低いかどうかはいざしらす。
 数秒の沈黙にも耐えられない自動人形達が、一体の声に呼応するように飛び出した。

 群れと云ってもその数は合わせて五体。しかし主な武装が整っていない暁美ほむらには強大な壁になるだろう。
 自動人形の強さはサーヴァントに及ぶはずもない。けれど、魔力を帯びておりサーヴァントから生まれる以上、その力は常識を超える。
 しかし、それは一般人の常識であり、力を持ったマスターならば対抗出来ても不思議ではない。

 一流の魔術師や世界に名を馳せる暗殺者ならば幾らでも自動人形を蹴散らすことは出来よう。

 ならば暁美ほむらはどうするだろうか。


「痛ってぇ! お前らどこ見てんだ! 敵はあの女――っていねえ!?」


 一斉に襲いかかった自動人形達が飛び込んだ先に、暁美ほむらはいなかった。
 標的が存在せず、哀れな機械共は互いに互いを攻撃する形となっている。
 肝心の暁美ほむらは――既にビルの扉を後にしており脱出していた。


「あなた達に構っている時間も無いの。名前も持たない人形達、さようなら」

「何がさようならだ! お前が、お前がさようなら!」


 去る暁美ほむらは一度止まると、振り返りざまに弾丸を放つ。
 吸い込まれる先は自動人形ではなく、側にあった自動販売機だ。


「残念ハズレ~! 怖くてビビって震えて怖気づいだかなぁ?」

「それでいいのよ全く……消し飛びなさい」


 挑発を流しつつ暁美ほむらは勢い良く扉を閉め、ビルから離れる。
 その姿を見ていた自動人形達は後を追いかけようと動くも――異変に気付いた一体が呟く。

「この自販機から変な音がする」

「あー……?」

「何か煙も出てるし……うげぇ~!!」

 気付いた時にはもう遅く、自動販売機は嫌な煙と聞きたくない音を響かせながら光輝くことになる。
 爆炎がビルを襲い、あちらこちらに飛び火し、中にいれば火の手に追い付かれるのは時間の問題だ。


「あのビルに誰も居ないことを願うわ……敵以外、ね」


 別のビルに身を隠しながら暁美ほむらは燃える、いや燃やした建物を見つめる。
 火が広がれば中に居る人間は避難するだろう。
 NPCには申し訳ないが、生命と願いとまどかが懸っている戦いに手を抜く訳にもいかない。
 バーサーカーのマスターが潜んでいれば出て来るはず、監視した段階ではそこまで身体能力が高くは見えなかった。


「出て来たならそこを狙い撃つ……だから、それまで耐えて――セイバー」









「■■■――!!」

 暁美ほむらが自動人形の相手をしている同じ時間軸の別所にて。
 怒号と共に投げられるコンクリートの破片を斬り捨てたセイバーはそのまま距離を詰める。
 斬りかからずに足元に爆弾を忍ばせ、己はバク転の要領でその場から離れる。

 バーサーカーが再度、能力任せに暴れる前に、ブーメランを投げ付ける。
 標的は狂戦士ではなく置いた爆弾だ。導火線よりも早く本体に衝撃を与え――爆ぜる。

 静寂をひっくり返すような爆音が轟き、セイバーの前方には豪炎が渦巻いている。
 中心に立っている狂戦士に傷の一つや二つ、与えれれば上々であるがそれは叶わない。

 炎の中で小さな影が動く。
 狂戦士が振るった腕はたった一つの小さな動作で炎を掻き消したのだ。
 風が吹き荒れ、瞳を閉じたその一瞬で爆発の面影が消え去り残るは塵だけ。

 お世辞にも恵まれた体格とは言えない青年が、腕を振るっただけで爆発を消し去っていた。

 敵を視界に捉えたままセイバーは矢を放つ。
 常人には知覚出来ないような速度で狂戦士に迫る一矢だが彼は動かない。

 瞳を赤く光らせ、不気味に口角を上げ、聞き取れない声を零す。
 笑っているのは認識出来るが、それ以上の情報は何一つ得られない。狂化されているサーヴァントの真意など他人には解らない。
 解ることと云えば放った矢がそのまま自分に返って来たことだけである。

 狂戦士に辿り着く前に、まるで空間が歪んだかのように矢はセイバーへ迫る。
 盾を全面に押し出し弾くように大地に叩き付け攻撃を無効化し、再度剣を構え直す。

 予めマスターから攻撃を跳ね返される、と情報を貰っていただけに不意打ちで負けることは無い。

 現にこれまで様々な方法で攻めているが、狂戦士に何一つ辿り着いていない。


 剣も。
 矢も。
 爆弾も。


 全てが狂戦士の宝具であろう能力によって無効化、或いは跳ね返されてしまっている。


 宝具を開放すれば戦況を傾けられる可能性は大いにある。
 しかしマスターからのオーダーは時間を稼げ。つまりここで無理に倒す必要は無い。
 宝具でも確実に勝てる確信は無いため、無理に魔力を消費しても無駄撃ちに終わることも有り得る。

 次の手を思考するセイバーであるが、敵は必ずしも待ってくれるとは限らない。
 狂戦士は軽く大地を蹴ると大きく跳躍、そして物理法則を捻じ曲げるように空中で方向転換、超加速しセイバーに接近する。
 飛行体に注目しつつ、バックステップで距離を取ったセイバーと落下するバーサーカー。

 数秒前まで時の勇者が立っていた地点には大きなクレーターが誕生していた。
 その余波が大地を伝わりセイバーの足に響く。
 一瞬ではあるが怯んでしまった隙を狂戦士は逃さず、咆哮と共に拳を突き出した。


「■■■ーッ!!」


 まるで時が止まったかのようにその拳周辺から音が消えていた。
 耳を疑うが直ぐに風の音が聞こえた時、拳が風を纏いセイバーの盾に触れた。


「――ッ」


 盾は粉砕こそされないが、伝わる衝撃はセイバーの顔を歪ませるには十分過ぎる威力であった。
 腕が痺れ、視界が揺れ、立っているだけでも辛い状況だ。
 しかし黙って攻撃を受ける訳にもいかなく、近くのビルに注目すると武具を取り出す。

 バーサーカーの追撃が迫るよりも早く鎖を射出し、ビルに突き刺すと――セイバーは空を跳ぶ。
 ロングショットによって空間を立体機動のように移動した時の勇者は狂戦士の間合いから離脱に成功。
 壁に張り付く形になりながら敵を見据える。
 このまま戦ってもジリ貧だが、マスターのためにも踏ん張り所であるが故に次なる一手を模索する。









「ここも違う……バーサーカーのマスターの居場所は」


 一軒家から飛び出た暁美ほむらは依然として標的を発見出来ていない。
 並ぶビルを全て探すには多くの時間を費やすこととなり、小休止程度に民家を捜索するも無駄に終わっていた。
 セイバーがバーサーカーを抑えている間がリミットであり、時間は有限ではない。

 狂戦士の力はモニター越しであるが認識している。時の勇者が負ける可能性を切り捨てて考えているが、不安は残る。
 何としてでもマスターを殺し、場を収束させた上でまどかを追いたい暁美ほむらに焦りが貯まっていく。

 全ては彼女のために。
 彼女なき世界に価値など存在しない故に、そう、全ては彼女のために。


「……足音? また気色悪い人形ね」


 自動人形達を撒いたつもりであったが、やはりと言うべきかまだまだ追手がいるらしい。
 あのキャスターのことだ。今も憎たらしい笑みを浮かべモニターを監視しているに違い無い。
 ビルから出て来た自動人形もまた笑っており、何やら奇妙な歌を汚い口から流していた。


「こーんやーのランバージェイコブ様の晩飯は~♪
 逃げ惑う魔法少女の生き血~……さぁてどうすっかなぁ~」


 この人形も悪趣味である、と言葉には出さないが暁美ほむらは思う。
 やや太型で、不潔なヒゲ、似合わない豹柄の腕輪……ランバージェイコブと名乗った自動人形に好感は抱かない。


「残念だけど貴方の相手をしている暇は無いのよ。
 バーサーカーのマスターの居場所を吐いてから消えなさい、人形」


 虫けらを見るような瞳でランバージェイコブに敵の居場所を尋ねる暁美ほむらは苛立っている。
 生命を狙われているのだから仕方がない。
 自然と銃を握る力が強まっていき、それに伴い汗も生まれる。


「あぁ~? 誰だよ」

「とぼけているのかしら……いや、貴方達のような人形にそんな芸当は出来ないわね。
 命令だけに従って何一つ真実を知らない哀れな傀儡共……情報を期待した私が馬鹿だっただけね」

「あぁ!? 調子に乗ってんじゃねぇぞガキィ!!」

「咄嗟に思い付いた陳腐な挑発に乗ってくる所も本当に哀れなにんぎょ――きゃっ!?」


 適当にこの場を流して時間停止。そうして逃走する予定だった魔法少女に射出されたのは網。
 怒りのランバージェイコブは暁美ほむらの拘束に成功すると、担いでいたライフルを構える。


「じっくり身体を削ぎ落とそうと考えたが、怒ったからお前は一発でぶっ殺す!」


 魔法少女と云えど銃弾を正面から喰らっては無事に終れるはずも無い。
 身体を網で覆われ、身動きが取れない暁美ほむらにとっては文字どおりの絶体絶命である。


「くっ……私を殺すつもりかしら?」

「当たり前だろぉ~それが創造主様の命令だからなぁ~」


 どんな言葉を並べようとその引き金を止めることは出来ないだろう。
 ランバージェイコブは特にそれ以上会話を広げることもせず、銃弾を発射し獲物を仕留める。


「さぁ~て、こっからは飯の時間だ……あぁン!?」


 人形の驚いた野太い声が月夜に響く。
 それも仕方がないだろう。何せ異常事態が発生したのだから。


「何であのガキが消えているんだぁ!?」









 ランバージェイコブが出て来たビルに侵入した暁美ほむらを待ち構えていたのはまたしても自動人形達だった。
 時間停止であの場を切り抜けた彼女は人形が出て来たビルならば他にも誰かが潜んでいるかもしれない……と睨んでいた。
 今まで建物を捜索した際に、敵が潜んでいたのは最初のビルだけであった。
 何か特別なモノ――例えばお宝を守る番人のように人形達が配備されているかもしれない。

 思えば最初のビルにも何か特別なモノがあったかもしれない。
 けれど、名前持ちの人形が出て来たこのビルだ――《客人》を警護する人形がいても不思議ではない。


「うけけけけけけけけけ」

「ころせ」

「ころしちゃえ」

「ころせ! ころせ! ころせ!」


 何体もの自動人形達が標的である暁美ほむらを目の前に嘲笑っている。
 これからどうやって殺すか。どのように調理するか。どのようにいたぶるか。
 悪趣味なことを考えているのだろう、と勝手に決め込んだ暁美ほむらは更に人形に対する感情が悪くなる。

 しかしその強さは残念ながら弱くは無い。
 数が多ければ多い程厄介な存在に膨れ上がる。忌々しい、と更に苛立ちが募る。

 相手をするだけ無駄だ。
 割り切って彼女は時間を止める。
 一刻も早くまどかを救うために、多少の無茶など今更踏み止まる必要も無いのだ。


「此処は違う」


 自動人形達から遠ざかり一室を覗いてみるも人影はない。

「此処も違う」

 隣の部屋を見るも、また違う。

「此処も」

 階段を駆け上がり別のフロアも同様に調べ回る。

「此処も」

 息が上がる。
 魔力消費と重なって体力も消費されていく。

「此処は――」


「……驚いた。人形達はどうしたんだい」


 アタリだ。

 その姿を知っている。
 白髪に今にも死にそうな顔のフード男。
 暁美ほむらが遊園地で監視していた男と一致する。

 探し求めていた男に出会えたのは偶然であった。
 バーサーカーのマスターも暁美ほむらと同じように彼女を探していた。
 響く銃声を頼りに近くのビルに潜伏したところ――互いが互いを引き寄せ合った。


 獲物を前にした参加者は――魔法少女が問答無用で引き金を引いた。


 額に吸い込まれる銃弾は何処から湧いたかいざ知らず、謎の蟲に阻まれる。
 粘り気のある不快な音を響かせながら弾け飛ぶ蟲、撒き散らす体液と腐臭が一室に篭もる。

 急速に気分が悪くなる暁美ほむらだがそんなことも言っていられない。
 手を休めれば殺される。直ぐ様新たに照準を定めるも敵に異変が現れていた。


「う……ぐ、ガァ!」


 その顔は異質だった。
 血管が必要以上に強調され浮き出ており、まるで身体の中をナニカが蠢いているようだった。
 口を掌で抑えてはいるが、血が溢れでており勝手に瀕死状態に追い込まれている……暁美ほむらが抱いた感想である。

 何がどうなってこんな状況になったかは知らないが、活かせる事象は全て利用する。
 銃弾を放っても空を漂う蟲達に阻まれるだろう――時間を止めて確実に殺す。

 盾に手を添えて普段通りに魔法を――彼女にも異変が現れる。


「む……りをし過ぎたかしら」


 時間停止の連発によって体力が浪費しており、目眩が生じる。
 その場でたたらを踏むが、こんな所で弱っても何も手に入れることが出来ない。
 狂戦士を仕留めることは必ずまどかを救うことに繋がる。だから、暁美ほむらは目の前の男を殺す。

(君が何のために聖杯を求めているかは知らない。でも、この世界に踏み込んだからには覚悟してもらう)
「行け……ぐ、蟲共ォ!」

(死に掛けの身体でバーサーカーを使役してまで何を求めているかは私に解らない。でも、私はまどかを救う。だから)
「ほんの一瞬でもいいから……止まりなさい!」


 意地と覚悟の競り合い。
 女神が微笑んだのは――暁美ほむら。

「体感で解る、止められる時は本当に一瞬――だから!」


 蟲達の壁を強引に割りバーサーカーのマスターに接近すると盾から手榴弾を取り出す。
 口でピンを外すと彼の足元に転がし、自分はそのまま走り続ける。

 拳銃で窓ガラスに発砲。
 五角形を描くように撃ち抜いた所で時が動き出す。


「いつのまに――待てッ!」


 目の前から暁美ほむらが消えたことに驚きながらも男は振り返りざまに手を伸ばし、彼女の後頭部を鷲掴みする。
 彼女には悪いが、このまま蟲の餌食になってもらう。
 そう思った時、二人の脳内にノイズが走る。


「これは……貴方は聖杯戦争を経験している……?」


「今のは一体……それに君はもう一人のバーサーカーのマスターと」


「何をしたかは知らないけど答える義理は無いわ」


 腕で掴まれている相手の腕を払うと、両腕を交差させ窓ガラスに飛び込む暁美ほむら。
 銃弾で穴を開けていたため、窓ガラスは簡単に破裂し彼女は空中に放り投げられた。


「死ぬ気か……?」


 無理もない。
 翼を持たない人間が飛び降りたのだ。
 戦況を悟って自殺――後味は最悪だが参加者も減り、聖杯戦争にとっては好ましい状況になる。
 だが、暁美ほむらは考えなしに飛んだ訳ではない。


「エンジン音……まさか」


 開けた窓の先から聞こえる振動音。
 まさかヘリや飛行機が飛んでいる筈もない。飛んでいるならばもっと小柄な機体。
 空を跳んで来たのはセイバーが跨るバイクであった。

 念話で事前にセイバーを呼んでおいた暁美ほむらの賭けは成功した。
 バーサーカーのマスターを殺せないのは残念だが、あのまま戦えば自動人形達も駆け付けて来るだろう。
 少しでも休憩できれば満足に魔法も使えるだろうが、インターバルが短い。

 彼を殺すことに変わりはない。
 場所を変えて――出来るだけまどかに近付き、彼女に影響が及ばない範囲で殺す。


「完璧なタイミングよセイバー」


 伸ばした腕はセイバーに掴まれ、導かれるように後部に座る。
 流れるようにビルを覗けば驚いているバーサーカーのマスターの顔が見える。

(貴方を殺すのはもう少し先よ)

 諦めない。
 狂戦士は美樹さやかのサーヴァントでも苦戦する相手だ。
 早めに殺しておけば聖杯戦争が有利になるのは間違いない。
 ならば負担や危険が少ないマスターを狙うのは道理であるのは必然だ。


「爆発で死んでくれれば――全て解決するけど」


 暁美ほむらが置いた手榴弾が炸裂し、ビルが一瞬で紅く染まる。









「バーサーカーは追って来ている……なら、生きているわね」


 ギャリギャリとタイヤをコンクリートに擦らせながら着地するバイク。
 その遥か後方からバーサーカーがあり得ない速度で迫っているのが確認出来る。
 マスターが死んでいれば消滅しているだろうが、健在な今、彼も生きているのだろう。

 ならばこのまま引き付けてマスターも誘き出す。
 彼だけその場に滞在する可能性も高いが、その場合は狂戦士をまどかから引き離せばいい。
 出来るだけ引き離した後で時間停止を駆使しながら離脱すれば、狂戦士であれど撒ける筈だ。

「セイバー、このまま北上して」

 フェイスレスは暁美ほむらの居場所を特定出来るだろう。それがきっとバーサーカー陣営にも通じる。
 幾ら引き離した所で、見失っても特定出来れば簡単に対面する形になるだろう。
 美樹さやかにバーサーカーを処理すると言った手前、このまま敵を引き連れて参戦するのは避けたいところだ。
 意地や感情を抜きにしても、あの戦場になるであろう場所に狂戦士を放り込むのは回避したい。

 バーサーカー単体が釣れれば温泉から引き離し、足止めした上で美樹さやかに加勢する。
 マスターも一緒に追って来るならば再び彼に狙いを絞って殺す。

 第二ラウンド――夜はまだまだ眠らない。


【B-3/市街地/二日目・夜】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(大)
[令呪]残り3画
[装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(二つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃
[思考・状況]
基本:聖杯の力を以てまどかを救う。
1:北上しバーサーカーのマスター(間桐雁夜)を殺害する。
2:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。
3:キャスター(フェイスレス)を倒す。

[備考]
※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。
※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。
※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。
※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。
※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して)
※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。
※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。
※さやかと連絡先を交換しました
※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。
※天戯弥勒と接触しました。
※巨人を目撃しました。
※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。
※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。

【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]魔力消費(小)、疲労(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる
0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。
1:暁美ほむらに従う。
2:バーサーカー(一方通行)に対処する。
3:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。
[備考]
※アーチャー(モリガン)を確認しました。
※セイバー(纒流子)を確認しました。
※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。
※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。
※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。
※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。
※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。
※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。
※巨人を目撃しました。
※バーサーカー(一方通行)を確認しました

[共通備考]
※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました

 間桐雁夜が暁美ほむらの頭を掴んだ時、両者にノイズが走った。
 それは記憶。彼には彼女の、彼女には彼の記憶が少しではあるが断片的に通じ合っていた。


 暁美ほむらが知った間桐雁夜の記憶。
 天戯弥勒が開く以前にも聖杯戦争に参加しており、その時のサーヴァントもバーサーカーだった。
 個体は違えど、彼が聖杯戦争を体験していたことに変わりは無い。
 それは誰かを守るために。まるでまどかを救うために動く誰かと重なるようだった。


 間桐雁夜が知った暁美ほむらの記憶。
 初めて交戦したライダーのマスターと、公園にて交戦したバーサーカーのマスター。
 どちらもまだ幼い少女だった。そしてセイバーのマスターである暁美ほむらも彼女達と同年代だった。
 流れた記憶の先には五人の少女の姿があり、その中には彼女達もいた。
 友が血塗られた戦争に参加している――彼女達の運命は知らないが、奇跡を求めるためにその手を汚すのだろうか。

 他に流れた記憶と云えば魔法。
 肝心な部分は何一つ感じられなかったが、暁美ほむらは盾に触れている。
 間桐雁夜がビルで彼女と対峙した時、気付けば後方に移動していた。
 目を離したつもりは無かった。それでも気付けばまるで瞬間移動のように彼女は消えていた。
 その時にも盾に触れていたことは覚えている。次に対峙する時には警戒の必要がある。


 そして。


 そもそも、何故、彼女達は互いの記憶を知り得たのだろうか。


 間桐雁夜の身体はPSI粒子に侵されており、身体に異変が起きていた。
 参加者である夜科アゲハと裏で嗤う天戯弥勒。彼らはその能力をPSIと称し使用している。
 表すならば超能力の一種と考えればいい。

 その片鱗が間桐雁夜の身体に現れ、PSIの力として具現化したのが先の記憶になる。
 心波のトランス――テレパシーなどの内面に働きかける力が覚醒したのだ。
 発動したのは偶然であり、能力もまだまだ成長する余地はあるだろう。
 現段階では《頭部に触れた相手の記憶を読み取る》《頭部に触れた相手に自分の記憶を流し込む》だろうか。

 しかし間桐雁夜は魔術師だ。科学とは最も離れている人種である。
 魔術と科学の共存――簡単には両立出来ない。いや、出来るのだろうか。

 現に今の彼では刻印蟲を使役するだけで、本来の能力を使役するだけで魔術回路に多大な負担が掛かる。
 それは急速で整えた未熟な魔術師とは別な話で、超能力に触れ始めた身体が魔術に対し拒絶反応を示しているからである。

 結果的に天戯弥勒が間桐雁夜に告げたとおり単純な魔力の量は膨れ上がっている。
 しかし、蝕まれたその身体。生命の終わりが近付いていることに変わりは無い。





「本当にこのまま追うんですかい?」


「……頼む」



 手榴弾の爆発から自動人形数体を盾にして回避した間桐雁夜の選択は暁美ほむら及びセイバーを追うこと。
 アノスに命令を飛ばしながら、彼は戦うことを選んだ。
 記憶が流れてこようが暁美ほむら、美樹さやか、鹿目まどかが知り合いだろうが関係無い。

 聖杯を求める人間に情けを掛ければ死ぬのは自分である。
 非道にならなければ手に入る物も手に入らない。果たして彼は修羅になれるのだろうか。


 第二ラウンド――この夜はまだ収束しない。

【間桐雁夜@Fate/zero】
[状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(小)、PSIに覚醒
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。
1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。
2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。
[備考]
※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。
※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。
※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。
※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。
※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。
※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。
※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。
※学園の事件を知りました。
※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。
※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。
※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。
※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。
※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)
 頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。


【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:■■■■───
1:───(狂化により自我の消失)
2:セイバーを倒す
[備考]
※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。
※アポリオンを認識し、破壊しました。少なくとも現在一方通行の周囲にはいませんが、美樹さやかの周囲などに残っている可能性はあります。


[全体備考]
※C-6で爆発騒ぎが発生しました。NPCの通報で警察が向かっています
※A-4の温泉地帯に向けて、鹿目まどかに似せた人形をかついだケニス@からくりサーカスが飛行しています
※B-3にて多数の自動人形が暁美ほむら殺害の為に行動しています




BACK NEXT
058:真夜中の狂想曲 投下順 060:Deep Night
058:真夜中の狂想曲 時系列順 060:Deep Night

BACK 登場キャラ NEXT
058:真夜中の狂想曲 暁美ほむら&セイバー(リンク 062英雄たちの交響曲
間桐雁夜&バーサ―カー(一方通行

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年07月24日 22:02