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わが臈たし悪の華」(2015/04/08 (水) 20:57:51) の最新版変更点

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***わが臈たし悪の華◆A23CJmo9LE 「おかえりなさぁい、先に頂いてるわよ☆」 学食の片隅、あまり目立たないスペースに犬飼伊助と食蜂操祈は席をとっていた。 ティーカップに琥珀色の紅茶を満たし、ベージュに焼けたパンケーキを口にしている。 目立たたない一角とはいうものの昼には少し早いために学食は閑散としており、そこに美少女二人、加えて取り巻きの存在やどこから用意したのか上等そうなティーセットにお茶が学食の雰囲気とは少々そぐわない。 ソーサーにカップを置く所作、ナイフとフォークの扱い、小口な食べ方からは育ちの良さが窺がえる。 朽木家で多少は教育を受けたとはいえ、流魂街の出の自分があんパンと飲むヨーグルトを持って混ざるのにはなかなかに気後れするものだった。 「それで、なぜ呼び戻したのだ?」 道中、昼食でもとりながら腰を据えてゆっくり話したいというからこんなものまで買ってきたのだ。 まさか大した意味もなく撤退させたわけではないだろう。 「何か新しい情報を掴んだら連絡してくれって言ってたじゃなぁい?サーヴァントを一騎落としたから伝えに来たのよぉ☆」 「なに!?」 まさか。自分たちがセイバー相手に闘っている間にこの女は別のサーヴァントと交戦し、勝利したというのか? この、ランサーはおろか自分ですら打ち勝てそうな女が? 「失礼ねぇ。確かに私は野蛮力じゃあなた達には及ばないケド☆コレの利便性は示してきたでしょう?」 ナイフとフォークを揃え、ナプキンで口元を拭い、リモコンを取り出す……力と功績を誇示するように。 それと同時に黄金の鎧の武将が霊体化を解く……主君の前で狼藉は許さぬ、と言わんばかりに。 「……私の考察力をこれで送り込んだ方が話が早いんだけどなぁ。まあそうなると思ってこの席を用意したんだけど。でも」 リモコンを向け、周囲の生徒を操作する。驚いていた生徒が本をめくり、書類に目を通し、食事をとり、歓談を何事もなかったかのように再開する。 「前準備なしに学園の真ん中で鎧をまとった大柄な男性、なんて悪目立ちするから控えてほしんだゾ☆」 「そう言うなら合議での抜刀もご法度だぜ。そいつは刀よりよっぽど危ない、しまっちゃくれねえか?」 薄氷の同盟に相応しいやり取り。それを受けキャスターはリモコンを鞄にしまってカップを傾け、ランサーも戦意を収める。 「それじゃあ話を戻すけど。もともと偵察のつもりだったんでしょう?マスターだけじゃなく、敵の宝具の外観に真名まで知れたのなら撤退には十分じゃないかしらぁ?」 「…見ていたのか」 「正確には見ていた生徒がいた、のよ。途中で私が操作しなかったらやっぱり噂になってたかもよ?むしろ感謝力がほしいところよぉ☆」 体育館裏……学園で呼び出しの場所としては定番のスポットだ。目立たない、というのは間違ってはいないがそれは平素であればだ。 刃を交わす金属音が響いていれば何かと思って窓から覗く生徒もいる。 横槍が入らないよう、情報の拡散がないよう洗脳した生徒が見つけたそれを確保しただけのこと。 そもそも…… 「そもそもその時は昔馴染みのアサシンに追われてあたし置いて逃げ出すのに必死だったもんねー❤他のトコ覗き見とかしてる余裕なかったよね❤」 ガチャン、と乱暴にソーサーにカップを置き、威嚇的な笑みを浮かべる。根に持っているのが一目瞭然だ。 赤い髪に粗野な振る舞い……幼馴染を思い浮かべ、空気は悪くなったが居心地はマシになったのを自覚する。 しかしマスターを置いて逃げたという行動に不信感を強めるルキア。 「あのとき私が退いてなかったらセイバーを差し向けることもアサシンのマスターに自害を命じさせることも出来なかったって言ったじゃない、もぉ」 「だからって逃げ出す?フツー」 ぶつくさ言う伊助を横目に生徒の一人から紙を受け取ると 「ハイ、これ☆」 こちらに差し出してくる。どこから盗って来たのか、生徒名簿の一部らしい。 「夜科アゲハ、高等部二年A組。さっきあなた達が交戦したセイバーのマスター。こっちは人吉善吉、同じく高等部二年A組で生徒会庶務。私の倒したアサシンのマスター。 それから、紅月カレン、このコは生徒会の会計ね。で、屋上で夜科アゲハたちと闘ってたセイバーのマスター。現状判明してる学園のマスターよ」 多い。改めて自分たちも含め五組ものマスターが集結したこの状況は驚きだ。 全部で何組いるのかは知らないが、セイバーが二騎いるのを確認した以上とんでもない数が参加しているのかもしれない。 「それでお願いなんだけど、お昼休みになったらこの紅月カレンとセイバーに襲撃を仕掛けてほしいのよぉ」 「またか……撤退しろと言ったり攻めろと言ったり、私たちはお前の部下ではないぞ」 「だから色々と考えがあるんだけどそれを送らせてくれないからぁ……」 お互い浅くため息。 小間使いのように扱われるのはごめんだ、と言う当然の欲求。能力を使えばすぐにすむのに、という怠惰で傲慢な考え。 それが対峙しぶつかり合うかと思われたが 「意図その一、まだ一度も紅月カレンのセイバーとは積極的に交戦しておらずその手の内が不明であるのでそれを探っておきたい。 その二、彼はすでにセイバー、アサシンと連戦をしており消耗はそれなりのはず。叩くなら早いほうが良いでしょう? その三、まだ見つけていないマスターがいる場合それを炙り出したい。以上よ☆」 ひとまずは女帝が譲歩。あたかも後輩に勉強を教えるように指折り丁寧に意図を語る。 「こちらもセイバーと闘っている、万全ではないぞ」 「あなた達は宝具の一つも使ってないじゃない。対してあちらは屋上からの宣戦布告、結界の展開なんて少なくない消耗をしてるわぁ。二連戦と三連戦の違いもある。  むこうはまだ屋上でたむろして碌な休憩も出来てない、こちらは簡素とは言え食事休憩を済ませている……有利なのはどっちか語るまでもないでしょう?」 「連戦と言ってもアサシンだぞ。その消耗などあてにならんだろう」 「あの男を甘く見ないことね☆彼のチカラは一端とは言え天上の意思に届くと言われた……未熟とは言え英霊より上、下手すれば精霊や天使の片鱗。その意味、サーヴァントならわかるでしょぉ?」 反論を悉く封殺し、その上で戦闘巧者のサーヴァントに意見を問う。 四者が交わり合議が加速する。 「攻めるのはまあいいんだが、なんで時間を置く?兵は拙速を貴ぶなんざ初歩の初歩だぜ」 「一つはさっきも言った軽い食事休憩☆私だって休みもなしに行けとは言わないわぁ。あ、敵の補給はできないようにしてるわよ? さすがにココに来たらすぐ分かるし、購買は今長蛇の列を作らせてるから大丈夫、ちょっとした兵糧攻めだゾ☆ それに授業中ならともかく昼休みなら動きに制限は殆どないからさすがに潜伏を続ける人もいないはず。屋上、体育館裏、廊下ですでにサーヴァントが交戦しているのにさらに戦闘が起きてそれに一切干渉しないなんて慎重を通り越して愚鈍、無能と言われても反論できないわよぉ?」 「必殺の期が見えないなら潜伏もするのではないか?それに、今までの戦闘を感知できていない者もいると思うが」 「普通の魔術師ならサーヴァントの戦闘に気づかないのもそれを使い魔で監視しないのもおかしいのよ。というよりあれだけ派手にやってるのに気付いていないなら鈍すぎるしこの連戦に全く干渉しなければ出遅れは明らか。その程度のマスターなら、ねえ?」 「てかホントにまだ学園にマスター居るの?さすがに多すぎ❤」 ルキアは食事を摂りつつ、席に着く二人は時折紅茶で喉を潤わせて、傍に立つ慶次は議論に混ざりつつもすでに臨戦態勢だ。 「それじゃあここで犬飼さんに問題☆いま私たちは聖杯戦争のただなかにいるわけですが、戦争に欠かせないものと言えばなんでしょう?」 は?と疑念が口をついて出るが現状把握の一環ととらえたかそれなりに考えて答える。 「食料とでも言いたいわけ?腹が減っては、ってやつ❤」 「んー70点かな☆重要な要素だけど、逆に不足した食料を求めて戦争を起こすこともあるし。じゃあ次朽木さん☆」 歴戦の暗殺者が周囲を見渡し、現状と故事をふまえた答えを不完全として今度はこの場で最年長の死神に問う。 「……兵力か?潤沢な糧食も武器も十分な兵がなければ宝の持ち腐れ。斥候や後詰など分業もできるようになる……なによりそれは同盟を組み、人を操るお前が重点を置いているのではないか?」 「そうね、個人的には満点をあげたいところだけどぉ、そこにいるお侍さんとか私の知ってる最強の超能力者とかなら単騎で戦争を勝利に導くことも出来るから85点くらいで☆じゃあ最後に本命のランサーさん、どうぞ☆」 相手の立てる戦略まで視野に入れた回答だが、規格外とは言え目前の戦士の存在がそれを完答には至らせず、そしてその戦士が答える番となった。 「敵、だな?どんな武器を用意しても兵を纏めても戦う相手がいなけりゃそいつは無用の長物だ。この戦争もまずは敵を見つけるところから始めなくちゃならねえ」 「ピンポーン☆大正解☆……都合よすぎると思わない?私たちとあなた達が、人吉善吉と夜科アゲハがクラスメートで、人吉善吉と紅月カレンは生徒会に属しているなんて。 仮初の生活を全うしようとすれば生活範囲で敵と会い、怠れば敵に情報力が奪われる。天戯弥勒がこの学園で少なからず戦況を加速させようとしているのは見て取れるわぁ。 セイバーが二騎いるというなら少なくとも十四騎、あるいはそれ以上のサーヴァントがいてもおかしくない……なら登校不登校の差異はあれどもっとこの学園にいるはずよ。 さっきも言ったように仮初の生活の縛りがなくなったというのに、この派手な動きに一切関わらないのは期を見るに敏とは言えないわよぉ?となれば動きを見せる者がいればそれが敵、いないなら欠席者に2~3人はマスターがいると考えてまず違いない」 解答解説、および問題の意図を説明し、さらに周りの生徒の行動の意義も示す。 「あの書類もそのためよぉ☆二人以上同じクラスや部活から欠席者が出てたら当たりの確率が高いでしょうからチェックさせてるわぁ。今見てるのが高等部ので、そっちに置いてるのが中等部の」 フゥン、と鼻を鳴らしながら中等部の出欠簿を手に取りぱらぱらとめくる慶次。 「釣り上げるのには納得だ。だがもし動き出した奴がいたらどうすんだ?それの相手まで俺たちにしろってのかい?」 「心配しないで☆学園(ここ)はキャスター(わたし)の工房(モノ)よ。思うように動かせなど、決してしない」 緑のセイバーをけしかけたように。白翼のアサシンを堕としたように。 全てを『掌握』してみせようと傲慢なる女王は語る。 「……了解だ。屋上だな?ちなみにもう一騎のセイバーとかアサシンの元マスターだとか他の連中の居場所は掴めてんだよな?」 「夜科アゲハたちは購買の行列力に愕然としてるって☆人吉善吉は紅月カレンと同じく屋上にいるけどぉ、一人だけなら大したことないでしょぉ?」 「おう、それじゃ早速…お?」 天戯弥勒の言の葉が四人の脳内に流れ出す……通達の時だ。足を止め、聞き入るかと思いきや 「開戦の銅鑼代わりか、丁度いい!そこのけそこのけ俺らが通るッ!」 「なっ、おい、こら待て!」 ルキアを引きずるように駆けて行ってしまった。 「…………………………ちゃんと聴いていけばいいのに☆」 「いいじゃん❤別に大したこと言ってないし」 「そう、ね……」 放送を聞き終え、加わった情報も含めて思考を進める。より勝利へと近づくように。 (数は十四、いえ既に十三騎。予想した数の中では最少、不幸中の幸いってところかしらぁ?何で七騎じゃないのかは気になるところだけど。 そもそもはガイアの怪物を御するのに守護者が七騎必要だから七騎なんだっけ?あれ、願いを叶えるのに必要な対価として五、六騎のサーヴァントを落とす必要があるんだっけ?で、世界の外側に干渉するレベルだと七騎必要とか…… となると……仮説その一、天戯弥勒はガイアの怪物以上の化物を制御しようとしており、そのために十四騎ものサーヴァントの魂を必要としている。 ガイアの怪物以上となると……宇宙からなにか来てるとか?それともあの人のところに居候してた『魔神』とか?専門外だから詳しくは分からないわねぇ……) 焦がれた人の対峙した勢力、その知識の一角。彼のために色々と調べたのがこんなところでも役立つとは。 学習という行為の有意義さと英雄の姿を思い出してにへら、と笑みがこぼれる。 「何笑ってんの?キモイ❤」 「失礼ね☆」 (仮説その二、優勝者の分と自分たちの分含めて十四騎とした。これは楽観的だけどもありえなくはない。肯定要素も薄いけど否定要素も薄い現状一番有力な仮説。 それからできれば認めたくない仮説その三、私たちは並の英霊より魂の容量が足りないので十四騎用意せざるを得なかった) 確かに垣根帝督も自分も強者ではあろうが、一方通行や上条当麻のような英雄譚の主人公《ヒーロー》と比べれば端役《モブ》であるかもしれない。 だが、結界まで張ってみせたあの多芸な緑衣の剣士が一流の英霊でないなどと言えるだろうか。 過激な衣装を身に纏いながら、堂々たる闘いを魅せた戦乙女を誰が端役と言おうか。 それに…… 食堂の片隅にとある人物の伝記を読んでいる生徒がいる。 チラリと目を向けたそのタイトルは (前田利益、通称慶次。そりゃ信長公や本多忠勝なんかには劣るかもしれないけど教養豊かな猛将として有名よねぇ。槍の達人らしいしランサーとして納得もいく。 でも日本の一武将では一級のサーヴァントとしては知名度力が足りないかしらぁ?) 戦闘を見、高らかに名乗りを上げているのを聞いた生徒がいたのでその情報は手に入れた。 図書館から本を借りてこさせて調べてはいるが、記憶の限り戦で大敗北をやらかしたというのは無かった気がするので有意性はあまりないかもしれない。 槍は朱柄の三角造で有名だけどそれが宝具としてどんな能力を持つかは不明。むしろ彼はその在り方が宝具になるタイプな気がする。 まあ他のサーヴァントのついでに調べれば仮説を補強、あるいは否定する材料くらいにはなるか。 ……聖杯についても天戯弥勒についてもそう深く考えるつもりはなかったのだが。 (私の隣に対魔力持ちのランサーと精神操作に耐性あるマスター、強力とはいえ地力で劣る垣根帝督の隣にセイバー。それをしのいでも生徒会でまたセイバー。 積極的な私たちを踏み台に好戦的でない主従を戦端に放り込もうとしただけかもしれないけどぉ、それだけなら知り合いをこんなとこに置かなくてもいいじゃない…… 悪意力を感じるゾ☆他にキャスターもアサシンもいたでしょうが) もしかすると…… (学園都市で開発された超能力者に何か思うところがあるとか?) もしそうならば彼の意図を探らねば、聖杯に手が届いても何らかの干渉を受けるかもしれない。 現状、マスターも当たりとは言い難い。警戒心の足りない男に、魔術の才など微塵もない一般人上がり。 垣根帝督はそれが原因で敗退、自分は今魔力供給のために食事を摂るざるを得ない状況だ。 (あるいは超能力者と接触させたい誰かや何かがここにある?) それもまた、仮説にすぎない。だが明確に否定されることがなければその可能性を信じるのが科学と言うものだ。 勝利が確実な盤石な体制を築くことが出来たなら (すこーし、調べ物に時間を費やすのも必要かしら☆) まずは第一歩。ランサーたちの帰還を待ち、周囲に動きがないか目を配ろう。 「で、なんか動きがあるなら教えなさいよ❤色々気ぃ配ってんでしょ」 「階段と外の生徒に動きはないから屋上に変化は無し。夜科アゲハは……購買の行列に並んだみたい☆」 「…並ばれたら普通に買えるんじゃない?兵糧攻めとか言ってたのに❤」 「それなら問題ないわぁ、丁度今……」 リモコンを取り出しいくつか操作。食堂内に増えてきた生徒にも宝具を行使している。 「はい、これで完売☆本日の購買はこれにて閉店☆……ついでにここの生徒は食べ終わるたびに注文した記憶と食べた記憶と満腹感を忘れさせてるから、こっちも遠からず売り切れるわぁ」 そう言っていると入り口から大量の食べ物を抱えた生徒が何人も入ってきて合流。 いくつかそれを手に取ると 「犬飼さんも食べる?あなたの解答は満点ではないけど70点の価値はあるんだから」 そう言って差し出す。どこにでもあるようなバランス栄養食から菓子パンにおにぎりまでより取り見取りだ。 「……これ全部買わせたワケ?結構容赦ないわねアンタ」 「え~、でも一人数万円くらいだしそのくらいなら大したものでも……」 「お嬢様だとは思ってたけど金銭感覚おかしいから❤それと伊助もう十分食べたからいらな~い❤」 そう、と相槌。大して気に止めず自分で手に取り、口にしようとするが 「いけません女王!これ以上は女王の完璧なボディラインが崩れてしまいます!」 そう言って取り上げる女生徒が一人。 少々すれてはいるがそれは確かに操祈のことを気遣ったもので彼女も笑顔で対応する。 「大丈夫よぉ、サーヴァントが太るなんてありえないから。あなたもその『なんだかよくわからないコロッケ』20個の早食いにレッツ・チャレンジ☆」 リモコンを向け、能力を利用した悪意ある対応だが。 「えげつな……」 さすがに女子として大量の揚げ物を、というのは思うところがあったか珍しく同情的な声を上げる伊助。 「NPCだし大丈夫、大丈夫。それにこれくらい彼に比べれば軽いものよぉ。彼、自分の主君を水風呂に放り込んだこともあるらしいじゃない☆ ……今頃さぞや頓狂な戦を繰り広げてるんじゃないかしらぁ」 ◇  ◇  ◇ 『聖杯戦争ご観戦の皆様、因果が歯車、願いが発条を回す不思議な戦場へようこそ』 『これよりお目にかける闘争の主な戦士をご紹介――」 何やってんだ安心院さん? …………………… 「ちぇ、せっかくこんな仮面まで用意したのに。まあいいか。オペラグラスは観客席じゃなく舞台に向けるよう言われたろう?彼が出てくることはもうないんじゃないかと思ってね。 きみも、ここも不甲斐ない(フゥがいない)状況になったとあっては僕も顔を出しておくざるを得ないだろう」 いつか来たような気がする教室で、安心院さんがピエロみたいなマスクをつけて、なんだかよく分からんことを言っていた。 ん?待てよ?またここに来たってことは俺今度はマジに…… 「ああ、大丈夫だよ。きみはサーヴァントこそ失ったがこの聖杯戦争ではそれが即脱落には繋がらないし、そばにいるマスターも危害を加えてないからまだ無事だ。そこは安心していいぜ(安心院さんだけに)」 窮地なのは事実なようだがまだ闘い続けられるようで安堵する。球磨川の時みたくまた助けられちまったかな? 「僕は平等なだけの人外だ。つまり助けたわけじゃない……見せておきたいものがあってね」 いつの間にやら持っていた指示棒で示す先は教室のプロジェクター。そこで流れ始めたのは…… 『糞が、くそが、クソが……食蜂操祈、第五位……ようアレイスター、お前はどうせ笑ってんだろ?  なぁ一歩通行……テメェもどっかで腹抱えて笑ってんだろ?』 『許さねぇからな……聞こえてんだろ第五位……テメェ、このくそがああああああああああああああああ』 これは…… 「そう、君のサーヴァントだった男の最期の姿さ。ある意味では《主人公》の末路だよ」 覚えが……ない。けどあの男が望まぬ形で己を殺しているのは見ていればわかる。令呪、か…… 「サーヴァントが過去の英雄を再現したものだというのは知っているね?彼らは一人一人が固有の英雄譚を持った《主人公》さ。 けれどサーヴァントと言う枠に己を当てはめているため生前の力のすべてを発揮できる訳ではない……主人公(めだかちゃん)の前哨戦に制限された主人公(サーヴァント)というのは悪くないと思ったけど荷が重かったかな? しかしこれくらいには敵わなくてはどうあれきみの願いは叶わないしねえ……さてどうする人吉くん?己が手で相棒たる英雄を殺めてしまった人吉くん? 再びテレホンカードを握って元いたところに逃げ帰るかい?黄金の意思を持つジョースターの一族のように、家族の如き海賊団麦わらの一味のように、尻尾を巻いて逃げ出すのかい? それもまた選択肢だ。僕の立案するフラスコ計画で改めて主人公を目指すのも賢明な考えだと思うよ?」 …………カッ、よく言うぜ安心院さん。闘う意思をなくした奴が主人公(ヒーロー)になんかなれるか。 俺はここで、主人公(めだかちゃん)に勝てる(並び立てる)男になってみせるぜ。 「うん、よく言ったよ人吉くん。特に昨今は挫折する主人公と言うのは流行らないみたいだからねえ。 これできみはフラスコ計画なしで主人公になれる可能性を捨てずに済んだ。ぜひともアレは失敗だったと証明してくれたまえ。 とはいえ本物の英雄には悪平等(ぼく)も勝てない……きみにとって勝利とは、英雄とは、主人公とはなんなのかよく考えてみるといい。でなければ、本当に死ぬぜ?」 …世界が薄れる。意識が明瞭になる。 そういえば、これって結局夢の中の出来事なんだよな。俺の頭の中なのか、安心院さんの頭の中なのかはよくわからないけど 「もちろん君の頭の中のことさ。でもね、この地には『自分だけの現実』で世界を侵す能力者がいるんだ。君の頭の中で起きたことが現実じゃないとどうして言えるんだい?」 ◇  ◇  ◇ 夢を見た。 その内容はほとんど覚えていない。 だが確かに己が相棒の末期を見た。 視覚を共有していたのか、『欲視力』で覗いたのか、マスターがサーヴァントの記憶を夢に見るというやつなのか、それも分からない。 けどアイツの最期は、その怒りと悔しさはこの胸に残っている。 好敵手に対する悔恨、下手人に対する憤怒……操られた俺のことを恨んでないっていうのは……申し訳なくて、悲しくて、恥ずかしくて、情けなくてたまらない。 だってアイツは最期に俺のことなんか眼中になかったんだから。 「……起きたんだね」 「紅月、か。悪いんだけど俺が何をやらかしたか教えてくれないか…記憶が少し飛んでるんだ」 「…そう、わかったよ」 アサシンがキャスターを倒すために同盟を提案したこと。俺が恐らくキャスターに操られ令呪で自害を命じたこと。 その他諸々、俺が来る前のことや意識を失うまでの話を聞いた。 「それで、あなたはこの先どうするつもり?」 「俺は……アイツのためにも、俺のためにも戦い続けるよ」 俺がアイツの願いを奪ってしまった。ならせめて、その意思までは奪ってはいけないだろう。 聖杯を手に、超える目標にせめてアイツの分まで手を伸ばそうじゃねえか! 「仇討っていうとなんだが、まずはキャスター相手に、その、協力してくれねえか?紅月」 めだかちゃんに一人で背負うなって言った以上、俺も単独で動こうとはしないさ……一人じゃサーヴァントにまず勝てないってのはあるけど。 いやでも自慢じゃないが俺だってデビル強えできる男ではあるんだぜ。 「そう…それじゃ、あんたはあたしの敵だ…!」 「て、おいおい待てよ!」 ここは握手とかの場面で銃を向けるシーンじゃないだろ…! 「一度キャスターに操られてたやつに背中を預けるのは、無理。何らかのきっかけで攻撃を仕掛けるようにされててもおかしくない。 もしテレホンカードで脱落するっていうなら同じ日本人のよしみで見送りくらいはしてあげてもよかったけど……え?」 …天城弥勒か!間が悪い、いや間を取り持つには悪くねえか? …………とりあえず話を―― 「お熱いねえ、ご両人。ちょいと失礼」 乱入する大柄な男…とそれに引きずられるようにした女生徒。 武装、タイミング、存在感……規格外の存在、サーヴァントにただでさえ固まっていた空気がさらに緊張を増す。 「馬鹿者!通達の最中に駆け出す奴があるか!」 「なに言ってんだマスター。戦場で伝令を足止めて聞いてられるかい…そっちの坊主が人吉善吉だな?お前さんには聞きたいことがあるからちょいと待っててくれや。 それからそっちのお嬢ちゃんにセイバー、腕試しにひとつ俺と喧嘩でも――どうだい!」 (おっぱじめやがった!) 刀とも薙刀ともつかぬ巨大な刃物を振るい、カレンの側に控えていたリンクに切りかかる。 見かけにそぐわぬ豪力でそれを受け止め、巧みな技巧でマスターから闘いつつも離れていく。 突然の状況変化にしばし唖然としていたが 「おい、あんたあいつのマスターだろ!?紅月まで戦いに巻き込む必要はないだろ、あいつを止めてくれ!」 「たわけ。初めからあいつはサーヴァントしか相手にせんし余計な殺生もせん。私も自分の力が取り戻せれば聖杯に固執するつもりもないからな」 「いやそれならはじめっから特訓とかしてろよ!」 「…………ふむ、そうだな。ではその特訓にお前が付き合ってくれるか?」 コキリと腕を鳴らし、笑みを浮かべてこちらを向いた。 (あれ?なんか地雷踏んだ?) 「あいつは私に何も述べず走り回るし、あいつらは人を部下か何かと勘違いしてるようだし、誰も特訓になど付き合ってくれそうにないのでな…!」 こちらに話してはいるようだが、その実言葉を向けているのは善吉にではない。 見るからに苛立ち、攻撃的になっている…ようはやつ当たりだ。 (やべえ!相当フラストレーション溜まってんぞこれ!しゃあねえ、欲視力で何とか見切って) 「縛道の一!塞!」 「な!?」 詠唱を破棄し、即座に放たれた鬼道によって動きを封じられ地べたに転がる。 「ふむ…さすがにこの程度は打てるか…」 満足げに呟いてるのに対してこっちは動きを封じられてる。 視線で軌道はわかっても見えない攻撃はさすがに躱せなかったか……過負荷みたいに濃い気配をしてればいけたかもだが 「ああッ!お前人が動けないのをいいことに!」 「そこで黙って見ていろ。男爵閣下」 どこからともなく取り出したマジックで髭を書いてご満悦。 などと間の抜けたことをやっている間にもサーヴァント同士は激しくしのぎを削る。 屋上に刻まれた戦痕は数を増し、互いのマスターから大いに魔力を喰らう。 「どうしたどうした!そんなもんじゃねえだろう!」 押しているのは飛び込んできた巨漢のランサー。前田慶次。 対するリンクも張り合っているが、その動きはどことなく精彩を欠く。 ギャリギャリと鍔迫り合いの音を立て、辛うじて凌いでいるといった感じだ。 (この目線、退路を探している?) 転がって見えなくなった闘争を目にしようと緑のサーヴァントの視界を覗いてみると、敵だけではなく何やら周囲に僅かながら意識を向けている。 敵の位置、マスターの位置、周りの景色を把握したと思ったら ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。 「おっと!やってくれるね。だがこのくらい、っとォ!」 ブンブンと得物を振るい、粉塵を晴らす。 再び敵を視界にとらえ切りかかろうと構えるが… 「あれいねえ!?尻捲って逃げやがったか!」 そこにはサーヴァントはおろか紅月カレンの姿もなく、階下からはバイクらしきエンジン音が響き渡る。 奇しくも先のセイバー戦とは逆に自分たちが敵を取り逃がした形だ。 「…逃がしたか」 「すまん、マスター。まさかあんな派手な呼び出しをやるやつが撤退するとは思わなくてよ。こいつは俺の落ち度だな……と、そっちは拘束してくれたのか。話が早くて助かるぜ」 望まぬ決着ではあるが、足まで用意していた周到な相手を不用意に追うことはしない。 空中を舞う最中に射抜かれかねないし、呼び寄せるにあたっての入念さに警戒度を内心引き上げる。 それよりも、前から来る刃よりも背後からの槍の対策をするべきだ。 「人吉善吉、ここに巣食うキャスターの真名を聞いてたら教えてもらえるかい?」 言葉尻は丁寧だが拘束され、武闘派のサーヴァントに問われているとなっては事実上の選択肢などないに等しい。 しかたなく彼は 「…知らねえ」 と、答えた。 「馬鹿な、貴様のサーヴァントから聞いていないわけがないだろう!」 「そうとも限らねえだろ、マスター。じゃあ仕方ねえ、心苦しいがよ、脱落したアサシンの真名は?お前さん、アサシンのマスターだろう?」 質問は変わっても状況は変わっていない。 それに脱落したサーヴァントの真名を教えたところで大きな影響はないと考えるはず。 ましてや自分のサーヴァントの真名くらいなら把握しているだろう。そう考えていたが…… 「…知ら、ない。思い、出せない…なんでだ!?俺はアイツの名を聞いた!言葉を交わした!なのになんで…なんで!アイツとのやり取りが『なかった』みたいになってんだよぉぉぉ!」 恐慌。『なかったこと』になったのにトラウマを刺激されたか、その恐怖ゆえか縛道さら解けて震え、乱れ、暴れまわる。 「……く」 「やってくれるな、あの女狐…!」 真っ当な主従関係なら、まず互いに名乗るだろう。 真っ当な同盟関係でなくとも敵に関する情報は伝えておいて損はないだろう。 人吉善吉が己がサーヴァントの名を知らないはずがない。 キャスターがアサシンのことを知っていたように、アサシンが彼女のことを知り、それを流布しないわけがない。 事実垣根帝督は自らの真名をマスターに伝えていたし、食蜂操祈の能力を紅月カレンたちに話していた。カレンが善吉に話した際に食蜂操祈の名を伏せることもわざわざしなかった。 食蜂操祈は、それを予期していた。 好戦的ととれるカレンたちには闘いを挑ませ、あわよくば己が名を墓場まで持って行ってもらおうと画策した。 厭戦的である善吉には能力を行使し『食蜂操祈』と『垣根帝督』を認識できなくしておいた。 それを察したか、唇を一文字に結ぶ慶次。そして 「……そうかい。それじゃあ、世話かけたな」 浮遊感。どうやら鞘に引っ掛けて放り投げられたらしい……景色が上に昇っていく。 世界が遠くなったかのように、音が遠のく。 「たわ――なぜ―――――ど!」 「―――いた―――ャス―――駒――――――」 「次の授業―――――――――」 「――――――――――売り切れ!?」 「地震?俺は知らな―――――――」 「停電にまで――――――いよ」 「珍しいね、鹿目さんが休――――」 「――――――暁美――も―んでる―」 「おいなんで並ぼうなんて言ったんだよ!結局売切れちまったじゃんか!」 「飯抜きでやるにも限度あんだろ!てか列の前であんな大量に買い込むとか分かるか!…っておい!あれ俺たちのバイクじゃねえか!」 「あ?ンな馬鹿な…マジかよ!?てかあれさっきのセイバーじゃねえか!おいこら待ちやがれ――え?」 ガサガサガサガサガサッ!と音を立て枝を直撃、勢いを殺されてさほどの傷は負わずに済んだ。 さっきから騒がしいのは…… 「痛ってぇ。あれ…?アゲハ?」 「人吉!?何やってんだお前!?」 【C-2/アッシュフォード学園敷地内/1日目 午後】 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]健康、若干の恐慌状態 [令呪]残り二画 [装備]箱庭学園生徒会制服、男爵風のおヒゲ(油性) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く……? 0.痛てててて…うん?アゲハ? 1. アイツのためにも自分のためにも聖杯戦争を続ける……? [備考] ※夜科アゲハがマスターであると知りません。 ※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。 ※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。 ※屋上の挑発に気づきました。 ※学園内に他のマスターが居ると認識しています。 ※紅月カレンを確認しました。 ※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※食蜂操祈の宝具により操られていました。 →加えて食蜂操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。 【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(中) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 0.あー!俺たちのバイクーー!って人吉何やってんだお前。 1.夜になったら積極的に出回り情報を探す。 [備考] ※人吉善吉がマスターであると知りません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲 [装備]方太刀バサミ [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 0.待ちやがれバイク泥棒コノヤロ…って誰だお前? 1.情報を集めるのもいいかもしれない [備考] ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。 「たわけ!なぜ投げ飛ばした!?この高さでは…」 「ここで待ってたらそれこそキャスターの手駒に何されるかわからねえぜ、マスター。ちゃんと木に落ちるようにしたし、こっちのが生き延びる可能性は高い…はずだ」 そう言われては正否はどうあれ否定はできない。 黙るマスターに、黙考するサーヴァント。 (馴染みのアサシンなんてマスターの方が漏らした上に、セイバーと人吉が同じ所にいるなんざ都合よすぎた、か。 キャスターの真名だけじゃなく、アサシンの真名にまで手を回してるたあ流石に頭の回りも早いじゃねえか。同郷のやつの名が分かれば手がかりくらいになるかと思ったが……) 犬飼伊助が愚痴っていた昔馴染み。そしてキャスターもそれの手の内を語っていたから、彼女たちを出し抜く契機を求めここに来た。 通達が来たときは驚いたが、その最中なら余計な邪魔も入らないと判断。あのキャスターの前にマスターを置いていくくらいなら自分の側で戦場に置いた方がまだ安全だ。 彼女と共に飛ぶが如くきたが、得たものは少ない。 (人吉のやつにキャスターが手を加えたのは明白。あいつが折れなきゃ信長包囲網ならぬキャスター包囲網の一角になってくれそうだが、どーだろうな。 松永のおっさんってのはこんな気分だったのかね、どうも俺には向いてねえや。男なら喧嘩も恋も自分の手でが一番だと思うよ) 人吉善吉をあえて泳がせ、キャスターの敵とする。 もし強力なサーヴァントを従えてくれれば自分も喧嘩を愉しめる……これくらいは口にせずともマスターも、キャスターも察するだろう。 だが、どちらにも告げていない腹案が一つ。 懐には付箋が一枚。 (同組織に二人以上属させて戦端を加速、か。目の付け所はいい。だがやはり近現代の英霊かな、すでにいる奴に警戒して飛び入りが怪しいって戦場のいろはに目が回ってねえ。 2年B組とかいうとこで暁美ほむらってのが休んでる。で、明日からそのクラスに新入りが飛び込んでくるらしいぜ?) 付箋にはエレン・イェーガーという名。そして明日から転入すること、名簿を明日に更新すること、非常時の連絡方法が書かれていた。 (さて、どうする?休んでるやつの情報は掴むだろうが、確認前にこれを引っ剥がした以上はこいつについては知らないはず。とはいえ明日までしかない僅かな優位点だ) 暁美ほむらについても二人以上の欠席ではないため優先的に捕捉されることはないだろう。 となるとその情報も僅かとはいえ強みになるか。しかしともに確実なマスターの情報ではないし、下手に動けば感付かれる。どうするか……? 沈考する己がサーヴァントを見て朽木ルキアは自身も思考の海に身を委ねる。 だが、それは彼とは違い建設的とは言い難いもの。 彼は指示に従わず高らかに名乗りを上げた。恐らくあのキャスターはそれを聞いた者を手の内に収めているだろう。 通達が響くとともに駆け出した。おかげで自分は話半分にしか聞けていない。 今も自分を置いて思考にふけっている。 ……分かっている。 あのキャスターの近くに一人残るのがどれだけ危険か。あの男を逃がした方がキャスターを出し抜く意味でも私の練磨としても有意義なことが。 でも、それでも…… (ランサー、お前は兄様と同じで何も語ってはくれないのだな……) 【C-2/アッシュフォード学園、屋上/1日目 午後】 【朽木ルキア@BLEACH】 [状態]健康 、魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない 1.慶次及び現状に疎外感と寂寥感 2.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 3.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい [備考] ※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。  これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。 ※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。 ※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。 【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [装備]超刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:この祭りを楽しむ 1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集 3.エレン、もしくは暁美に対して――― [備考] ※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。 ※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。 ※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。  エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。 [共通備考] ※犬飼伊助&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。  基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。 ※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。 ※人吉善吉を確認しました。 「頓狂な戦って❤どう見ても名乗りを上げて堂々と戦う武人肌ってカンジじゃん❤」 「否定はしないけどぉ。ちょっとずれてるところがあるからあんまり信頼しない方がいいわよ☆」 聞き流す。どうせ自分が乗り換えをしないようにするネガティブキャンペーンだろうと気にかけない。 ……それで正解だ。彼はそれなりの切れ者だ。 だが頭がそれなりに回るから誘導も出来る。 体育館裏から撤退させたのは先に述べたそれだけではない。 夜科アゲハ、彼の能力行使を僅かながら確認した。あれは学園都市のそれに近似した、しかし異なる形態の能力だ。 『原石』ならばいいのだが、もしあれが学園都市のように学習できるものならば。万一にそれが朽木ルキアの目的を果たしてしまえば。 彼女がここにいる理由はなくなる……ランサーのマスターがいなくなる。 となれば間違いなく犬飼伊助はその後釜を狙うはずだ。ランサーも積極的っではないかもしれないが、仇敵を脱落させられるなら応じる可能性がある。 夜科アゲハと朽木ルキアは敵対以外の関係を築かせてはならない。 だから別の任を与えて引き離した。 同郷のアサシンという、『食蜂操祈』のヒントを餌にして。 『垣根帝督』の近くの心理系能力者と言えば別の使い手がいたようだが、同郷から辿られてはたまらないので彼についても認識できなくしておいた。 今頃見当外れの尋問でもしているだろうか、それとも気付いて諦めているだろうか。 いずれにしても釈迦の掌を飛び回るが如く間の抜けた、頓狂な戦だ。 ただ信頼できないというのは私に限って言えば事実だ。 何を考えているのか分からない奴と組むなんて、正直言ってゴメンだ。 聖杯戦争で強力な三騎士のクラスはみな対魔力を持っている以上、御坂美琴と組んだ時のように妥協するしかないだろうが。 その点でいえば、悪意が文字通り透けて見える犬飼伊助と朽木ルキアの二人は信用できる。 (もし朽木さんが彼を見限るようなら……) 私を上回ろうと個々で動くあのふたりがどこかで噛みあわなくなったら (うん、彼女とはキチンと同盟関係になってもいいかな☆) 犬飼もまた、まだ具体的な離反の策はできていない。放っておいても大きな障害ではまだない。 それに下手すると彼女の強みを殺しかねない。 (能力者ならともかく肉弾戦は専門外だからぁ、あんまり手を加え過ぎて私の操作必須とかになっちゃうと困るのよねぇ) 能力を制御するためにリモコンを使っている。それでも精神状態によっては操作対象を廃人同然にしてしまう可能性は否定しきれない。 先の小競り合い、紅月カレン相手の離脱は能力で操作しては無理だった……万一影響が出ては困る、まだ暫くは本格的な操作はしない方がいいだろう。 彼女の消失は自分の敗退に繋がるのだから。 能力による操作も、読心もなしに信頼できるのはやっぱり『あの人』しかいない。 さきほど人吉善吉に施したように、私を認識できなかったあの人。 (人吉くんも悪くないけどぉ、やっぱり彼には及ばないかな☆) 彼に認識されなくても特に思うところはないが、あの人に認識されていなかったのは同じようにはいかない。 幾度空想しただろう。 あの人が記憶を一度なくした後、すぐにもう一度思い出を構築できたら。 魔術を識る少女ではなく、心を知る自分が隣にいたら。 電撃を使うレベル5と過ごすではなく、心理を司るレベル5と過ごしていたら。 彼と近似した願いを重ねた聖人でも、数多の時を共に過ごした魔神でも、世界を超える電子の総体でも、心理戦最強の無能力者でも、彼女でも、あの子でも、あの人でも、あの娘でもなく。 彼の隣に最初から最後までいたのが私だったら!!! それはきっと素晴らしい……けれどそれは叶わなかったただの夢。 だけど今の自分はサーヴァント。存在自体があやふやな胡蝶の夢。 (だから今くらい、夢を見させてほしいな…) 【C-2/アッシュフォード学園、食堂/1日目 午後】 【犬飼伊助@悪魔のリドル】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]ナイフ [道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など) [思考・状況] 基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす 0.食蜂操祈に心を許さない。 1.キャスターの宝具を使い上手く立ち回る。 2.キャスターを使い潰した後にサーヴァントを乗り換える。 [備考] ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。 ※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。 【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】 [状態]健康、魔力消費(中) [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)、購買で買い占めた大量の食品、生徒名簿 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆ 0.このまま上手く立ち回る。 1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。 2.戦闘はランサーに任せ、相手のマスターを狙う。 3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。 [備考] ※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。 ※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。 ※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。 ※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。 ※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。  それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名を聞いたかについては後続の方にお任せします。 ※天戯弥勒、および聖杯戦争について考察する必要があると感じ始めました。  今の仮説は1、ガイアの怪物以上のなにかを御そうとしている 2、参加者と主催者のために14騎いる 3、参戦しているサーヴァントは一流の英霊ではない 4、アッシュフォードに二人のレベル5がいたのには意味がある [共通備考] ※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。 ※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。  基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。 ※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。 ※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせています。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確保済み。 突如現れたサーヴァント。 彼はとても強い……業腹ながら撤退を選ばなければならない事態と言うわけだ。 思えばこの聖杯戦争は悉く予想外の事態に見舞われる。 マスターの提案である屋上での挑発も、本来ならば悪くない手だったのだろうが…… 日の高いうちからアーチャーによる襲撃。このくらいなら序の口。 襲い来るセイバー。自分以外にセイバーがいるというとんでもない慮外の事態。 廊下で対峙したアサシンと、それに向かい合う敵マスター。策謀に長けた魔術師でなく、肉弾戦に優れたマスターという僅かながらもイレギュラー。 それ以上に僅かな交戦とは言え、セイバーたる己とわたり合ったアサシン。まさしく規格外。 14騎という、通常の倍の数、それに伴う想像以上に学園に集結したサーヴァント。連続した戦闘で思った以上に消耗を強いられた。 ……言いにくいことだがマスターからの魔力供給は潤沢とは言い難い。 自分以外にセイバーがいなければ、アサシンが凡百の者なら、ここまで多くのサーヴァントが集ってなければこうはならなかっただろうが連戦は不利。 ともかく悔やんでばかりではいられない。 先のセイバーは令呪によるものではなく突然地上を駆けて現れたようだ……ならば恐らく彼女が騎乗スキルでもって用いた乗機が彼女の現れた方角にあるはずだ。 もう回収されているかもしれないが、無策に撤退するよりはマシと言う物。 ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。 その隙でもってマスターを抱え、屋上から跳び降りる。 隠されてはいたがすぐに機馬は見つかった。どんな罠も秘匿も自分ならば見抜いて見せよう。 機馬にまたがり、マスターと共に駆け出す。セイバーのクラスにあてがわれる騎乗スキル、それも自身の武芸の一環として振るう。 ひとまずこの学園から離れるのが先決だ。 マスターは日常を演じ、身分を隠そうとしていたが、学園にキャスターが陣取っていることが分かりそのキャスターにばれたとあってはこれ以上学園にとどまるメリットはないだろう。 負傷も、消耗も癒さなくては。 ……最悪魂喰いも考えなければならないだろうか。ハイラルに平和をもたらすためとはいえ、敵はともかくそこまで犠牲を強いていいのだろうか。 悩む勇者の背中で少女は考えていた。 今後の振る舞いを。何より敵のことを。 (食蜂操祈、心を操り人を駒のように扱う敵……) 自らの従僕を自害させるハメになったマスター。 無辜の生徒を利用し、敵を戦場に誘い込む。 それは実に有効な策で、知的で、効率的で……どこかで見たもので、なぜか許しがたくて。 (やつあたりかもしれない。投影してるのかも。でも、あんたは私たちが倒すよ…!) 【C-2/アッシュフォード学園外/1日目 午後】 【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み) [令呪]残り3画 [装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も)) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。 1.ひとまず学園から離れる。 2.食蜂操祈に強い敵意。 [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 ※学校内での自分の立ち位置を理解しました。 ※生徒会の会計として所属しているようです。 ※セイバー(纒流子)を確認しました。 ※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。 ※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】 [状態]魔力消費(小)、疲労(小) [装備]なし [道具]バイク(盗品) [思考・状況] 基本行動方針:マスターに全てを捧げる 1.マスターに委ねる 2.ひとまず学園から離れる 3.消耗を補うためにマスターを休息させるが、最悪魂喰いも…? [備考] ※マスター同様。 ※どこへ向かっているのかは後続の方にお任せします。 [地域備考] ※アッシュフォード学園の購買及び食堂の食品が売り切れました。搬入があるまで営業は再開しないでしょう。 ※暁美ほむらのクラス名簿(中等部2年B組)にエレン・イェーガー転入と付箋が貼ってありましたが貼り違いの可能性も在ります。 ---- |BACK||NEXT| |033:[[闇夜に生ける者たち]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |033:[[闇夜に生ける者たち]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |031:[[錯綜するダイヤグラム]]|[[夜科アゲハ]]&セイバー([[纒流子]])|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |~|[[人吉善吉]]|~| |~|[[紅月カレン]]&セイバー([[リンク]])|043:[[裏切りの夕焼け]]| |~|[[朽木ルキア]]&ランサー([[前田慶次]])|~| |~|[[犬飼伊助]]&キャスター([[食蜂操祈]])|~|
***わが臈たし悪の華◆A23CJmo9LE 「おかえりなさぁい、先に頂いてるわよ☆」 学食の片隅、あまり目立たないスペースに犬飼伊介と食蜂操祈は席をとっていた。 ティーカップに琥珀色の紅茶を満たし、ベージュに焼けたパンケーキを口にしている。 目立たたない一角とはいうものの昼には少し早いために学食は閑散としており、そこに美少女二人、加えて取り巻きの存在やどこから用意したのか上等そうなティーセットにお茶が学食の雰囲気とは少々そぐわない。 ソーサーにカップを置く所作、ナイフとフォークの扱い、小口な食べ方からは育ちの良さが窺がえる。 朽木家で多少は教育を受けたとはいえ、流魂街の出の自分があんパンと飲むヨーグルトを持って混ざるのにはなかなかに気後れするものだった。 「それで、なぜ呼び戻したのだ?」 道中、昼食でもとりながら腰を据えてゆっくり話したいというからこんなものまで買ってきたのだ。 まさか大した意味もなく撤退させたわけではないだろう。 「何か新しい情報を掴んだら連絡してくれって言ってたじゃなぁい?サーヴァントを一騎落としたから伝えに来たのよぉ☆」 「なに!?」 まさか。自分たちがセイバー相手に闘っている間にこの女は別のサーヴァントと交戦し、勝利したというのか? この、ランサーはおろか自分ですら打ち勝てそうな女が? 「失礼ねぇ。確かに私は野蛮力じゃあなた達には及ばないケド☆コレの利便性は示してきたでしょう?」 ナイフとフォークを揃え、ナプキンで口元を拭い、リモコンを取り出す……力と功績を誇示するように。 それと同時に黄金の鎧の武将が霊体化を解く……主君の前で狼藉は許さぬ、と言わんばかりに。 「……私の考察力をこれで送り込んだ方が話が早いんだけどなぁ。まあそうなると思ってこの席を用意したんだけど。でも」 リモコンを向け、周囲の生徒を操作する。驚いていた生徒が本をめくり、書類に目を通し、食事をとり、歓談を何事もなかったかのように再開する。 「前準備なしに学園の真ん中で鎧をまとった大柄な男性、なんて悪目立ちするから控えてほしんだゾ☆」 「そう言うなら合議での抜刀もご法度だぜ。そいつは刀よりよっぽど危ない、しまっちゃくれねえか?」 薄氷の同盟に相応しいやり取り。それを受けキャスターはリモコンを鞄にしまってカップを傾け、ランサーも戦意を収める。 「それじゃあ話を戻すけど。もともと偵察のつもりだったんでしょう?マスターだけじゃなく、敵の宝具の外観に真名まで知れたのなら撤退には十分じゃないかしらぁ?」 「…見ていたのか」 「正確には見ていた生徒がいた、のよ。途中で私が操作しなかったらやっぱり噂になってたかもよ?むしろ感謝力がほしいところよぉ☆」 体育館裏……学園で呼び出しの場所としては定番のスポットだ。目立たない、というのは間違ってはいないがそれは平素であればだ。 刃を交わす金属音が響いていれば何かと思って窓から覗く生徒もいる。 横槍が入らないよう、情報の拡散がないよう洗脳した生徒が見つけたそれを確保しただけのこと。 そもそも…… 「そもそもその時は昔馴染みのアサシンに追われてあたし置いて逃げ出すのに必死だったもんねー❤他のトコ覗き見とかしてる余裕なかったよね❤」 ガチャン、と乱暴にソーサーにカップを置き、威嚇的な笑みを浮かべる。根に持っているのが一目瞭然だ。 赤い髪に粗野な振る舞い……幼馴染を思い浮かべ、空気は悪くなったが居心地はマシになったのを自覚する。 しかしマスターを置いて逃げたという行動に不信感を強めるルキア。 「あのとき私が退いてなかったらセイバーを差し向けることもアサシンのマスターに自害を命じさせることも出来なかったって言ったじゃない、もぉ」 「だからって逃げ出す?フツー」 ぶつくさ言う伊介を横目に生徒の一人から紙を受け取ると 「ハイ、これ☆」 こちらに差し出してくる。どこから盗って来たのか、生徒名簿の一部らしい。 「夜科アゲハ、高等部二年A組。さっきあなた達が交戦したセイバーのマスター。こっちは人吉善吉、同じく高等部二年A組で生徒会庶務。私の倒したアサシンのマスター。 それから、紅月カレン、このコは生徒会の会計ね。で、屋上で夜科アゲハたちと闘ってたセイバーのマスター。現状判明してる学園のマスターよ」 多い。改めて自分たちも含め五組ものマスターが集結したこの状況は驚きだ。 全部で何組いるのかは知らないが、セイバーが二騎いるのを確認した以上とんでもない数が参加しているのかもしれない。 「それでお願いなんだけど、お昼休みになったらこの紅月カレンとセイバーに襲撃を仕掛けてほしいのよぉ」 「またか……撤退しろと言ったり攻めろと言ったり、私たちはお前の部下ではないぞ」 「だから色々と考えがあるんだけどそれを送らせてくれないからぁ……」 お互い浅くため息。 小間使いのように扱われるのはごめんだ、と言う当然の欲求。能力を使えばすぐにすむのに、という怠惰で傲慢な考え。 それが対峙しぶつかり合うかと思われたが 「意図その一、まだ一度も紅月カレンのセイバーとは積極的に交戦しておらずその手の内が不明であるのでそれを探っておきたい。 その二、彼はすでにセイバー、アサシンと連戦をしており消耗はそれなりのはず。叩くなら早いほうが良いでしょう? その三、まだ見つけていないマスターがいる場合それを炙り出したい。以上よ☆」 ひとまずは女帝が譲歩。あたかも後輩に勉強を教えるように指折り丁寧に意図を語る。 「こちらもセイバーと闘っている、万全ではないぞ」 「あなた達は宝具の一つも使ってないじゃない。対してあちらは屋上からの宣戦布告、結界の展開なんて少なくない消耗をしてるわぁ。二連戦と三連戦の違いもある。  むこうはまだ屋上でたむろして碌な休憩も出来てない、こちらは簡素とは言え食事休憩を済ませている……有利なのはどっちか語るまでもないでしょう?」 「連戦と言ってもアサシンだぞ。その消耗などあてにならんだろう」 「あの男を甘く見ないことね☆彼のチカラは一端とは言え天上の意思に届くと言われた……未熟とは言え英霊より上、下手すれば精霊や天使の片鱗。その意味、サーヴァントならわかるでしょぉ?」 反論を悉く封殺し、その上で戦闘巧者のサーヴァントに意見を問う。 四者が交わり合議が加速する。 「攻めるのはまあいいんだが、なんで時間を置く?兵は拙速を貴ぶなんざ初歩の初歩だぜ」 「一つはさっきも言った軽い食事休憩☆私だって休みもなしに行けとは言わないわぁ。あ、敵の補給はできないようにしてるわよ? さすがにココに来たらすぐ分かるし、購買は今長蛇の列を作らせてるから大丈夫、ちょっとした兵糧攻めだゾ☆ それに授業中ならともかく昼休みなら動きに制限は殆どないからさすがに潜伏を続ける人もいないはず。屋上、体育館裏、廊下ですでにサーヴァントが交戦しているのにさらに戦闘が起きてそれに一切干渉しないなんて慎重を通り越して愚鈍、無能と言われても反論できないわよぉ?」 「必殺の期が見えないなら潜伏もするのではないか?それに、今までの戦闘を感知できていない者もいると思うが」 「普通の魔術師ならサーヴァントの戦闘に気づかないのもそれを使い魔で監視しないのもおかしいのよ。というよりあれだけ派手にやってるのに気付いていないなら鈍すぎるしこの連戦に全く干渉しなければ出遅れは明らか。その程度のマスターなら、ねえ?」 「てかホントにまだ学園にマスター居るの?さすがに多すぎ❤」 ルキアは食事を摂りつつ、席に着く二人は時折紅茶で喉を潤わせて、傍に立つ慶次は議論に混ざりつつもすでに臨戦態勢だ。 「それじゃあここで犬飼さんに問題☆いま私たちは聖杯戦争のただなかにいるわけですが、戦争に欠かせないものと言えばなんでしょう?」 は?と疑念が口をついて出るが現状把握の一環ととらえたかそれなりに考えて答える。 「食料とでも言いたいわけ?腹が減っては、ってやつ❤」 「んー70点かな☆重要な要素だけど、逆に不足した食料を求めて戦争を起こすこともあるし。じゃあ次朽木さん☆」 歴戦の暗殺者が周囲を見渡し、現状と故事をふまえた答えを不完全として今度はこの場で最年長の死神に問う。 「……兵力か?潤沢な糧食も武器も十分な兵がなければ宝の持ち腐れ。斥候や後詰など分業もできるようになる……なによりそれは同盟を組み、人を操るお前が重点を置いているのではないか?」 「そうね、個人的には満点をあげたいところだけどぉ、そこにいるお侍さんとか私の知ってる最強の超能力者とかなら単騎で戦争を勝利に導くことも出来るから85点くらいで☆じゃあ最後に本命のランサーさん、どうぞ☆」 相手の立てる戦略まで視野に入れた回答だが、規格外とは言え目前の戦士の存在がそれを完答には至らせず、そしてその戦士が答える番となった。 「敵、だな?どんな武器を用意しても兵を纏めても戦う相手がいなけりゃそいつは無用の長物だ。この戦争もまずは敵を見つけるところから始めなくちゃならねえ」 「ピンポーン☆大正解☆……都合よすぎると思わない?私たちとあなた達が、人吉善吉と夜科アゲハがクラスメートで、人吉善吉と紅月カレンは生徒会に属しているなんて。 仮初の生活を全うしようとすれば生活範囲で敵と会い、怠れば敵に情報力が奪われる。天戯弥勒がこの学園で少なからず戦況を加速させようとしているのは見て取れるわぁ。 セイバーが二騎いるというなら少なくとも十四騎、あるいはそれ以上のサーヴァントがいてもおかしくない……なら登校不登校の差異はあれどもっとこの学園にいるはずよ。 さっきも言ったように仮初の生活の縛りがなくなったというのに、この派手な動きに一切関わらないのは期を見るに敏とは言えないわよぉ?となれば動きを見せる者がいればそれが敵、いないなら欠席者に2~3人はマスターがいると考えてまず違いない」 解答解説、および問題の意図を説明し、さらに周りの生徒の行動の意義も示す。 「あの書類もそのためよぉ☆二人以上同じクラスや部活から欠席者が出てたら当たりの確率が高いでしょうからチェックさせてるわぁ。今見てるのが高等部ので、そっちに置いてるのが中等部の」 フゥン、と鼻を鳴らしながら中等部の出欠簿を手に取りぱらぱらとめくる慶次。 「釣り上げるのには納得だ。だがもし動き出した奴がいたらどうすんだ?それの相手まで俺たちにしろってのかい?」 「心配しないで☆学園(ここ)はキャスター(わたし)の工房(モノ)よ。思うように動かせなど、決してしない」 緑のセイバーをけしかけたように。白翼のアサシンを堕としたように。 全てを『掌握』してみせようと傲慢なる女王は語る。 「……了解だ。屋上だな?ちなみにもう一騎のセイバーとかアサシンの元マスターだとか他の連中の居場所は掴めてんだよな?」 「夜科アゲハたちは購買の行列力に愕然としてるって☆人吉善吉は紅月カレンと同じく屋上にいるけどぉ、一人だけなら大したことないでしょぉ?」 「おう、それじゃ早速…お?」 天戯弥勒の言の葉が四人の脳内に流れ出す……通達の時だ。足を止め、聞き入るかと思いきや 「開戦の銅鑼代わりか、丁度いい!そこのけそこのけ俺らが通るッ!」 「なっ、おい、こら待て!」 ルキアを引きずるように駆けて行ってしまった。 「…………………………ちゃんと聴いていけばいいのに☆」 「いいじゃん❤別に大したこと言ってないし」 「そう、ね……」 放送を聞き終え、加わった情報も含めて思考を進める。より勝利へと近づくように。 (数は十四、いえ既に十三騎。予想した数の中では最少、不幸中の幸いってところかしらぁ?何で七騎じゃないのかは気になるところだけど。 そもそもはガイアの怪物を御するのに守護者が七騎必要だから七騎なんだっけ?あれ、願いを叶えるのに必要な対価として五、六騎のサーヴァントを落とす必要があるんだっけ?で、世界の外側に干渉するレベルだと七騎必要とか…… となると……仮説その一、天戯弥勒はガイアの怪物以上の化物を制御しようとしており、そのために十四騎ものサーヴァントの魂を必要としている。 ガイアの怪物以上となると……宇宙からなにか来てるとか?それともあの人のところに居候してた『魔神』とか?専門外だから詳しくは分からないわねぇ……) 焦がれた人の対峙した勢力、その知識の一角。彼のために色々と調べたのがこんなところでも役立つとは。 学習という行為の有意義さと英雄の姿を思い出してにへら、と笑みがこぼれる。 「何笑ってんの?キモイ❤」 「失礼ね☆」 (仮説その二、優勝者の分と自分たちの分含めて十四騎とした。これは楽観的だけどもありえなくはない。肯定要素も薄いけど否定要素も薄い現状一番有力な仮説。 それからできれば認めたくない仮説その三、私たちは並の英霊より魂の容量が足りないので十四騎用意せざるを得なかった) 確かに垣根帝督も自分も強者ではあろうが、一方通行や上条当麻のような英雄譚の主人公《ヒーロー》と比べれば端役《モブ》であるかもしれない。 だが、結界まで張ってみせたあの多芸な緑衣の剣士が一流の英霊でないなどと言えるだろうか。 過激な衣装を身に纏いながら、堂々たる闘いを魅せた戦乙女を誰が端役と言おうか。 それに…… 食堂の片隅にとある人物の伝記を読んでいる生徒がいる。 チラリと目を向けたそのタイトルは (前田利益、通称慶次。そりゃ信長公や本多忠勝なんかには劣るかもしれないけど教養豊かな猛将として有名よねぇ。槍の達人らしいしランサーとして納得もいく。 でも日本の一武将では一級のサーヴァントとしては知名度力が足りないかしらぁ?) 戦闘を見、高らかに名乗りを上げているのを聞いた生徒がいたのでその情報は手に入れた。 図書館から本を借りてこさせて調べてはいるが、記憶の限り戦で大敗北をやらかしたというのは無かった気がするので有意性はあまりないかもしれない。 槍は朱柄の三角造で有名だけどそれが宝具としてどんな能力を持つかは不明。むしろ彼はその在り方が宝具になるタイプな気がする。 まあ他のサーヴァントのついでに調べれば仮説を補強、あるいは否定する材料くらいにはなるか。 ……聖杯についても天戯弥勒についてもそう深く考えるつもりはなかったのだが。 (私の隣に対魔力持ちのランサーと精神操作に耐性あるマスター、強力とはいえ地力で劣る垣根帝督の隣にセイバー。それをしのいでも生徒会でまたセイバー。 積極的な私たちを踏み台に好戦的でない主従を戦端に放り込もうとしただけかもしれないけどぉ、それだけなら知り合いをこんなとこに置かなくてもいいじゃない…… 悪意力を感じるゾ☆他にキャスターもアサシンもいたでしょうが) もしかすると…… (学園都市で開発された超能力者に何か思うところがあるとか?) もしそうならば彼の意図を探らねば、聖杯に手が届いても何らかの干渉を受けるかもしれない。 現状、マスターも当たりとは言い難い。警戒心の足りない男に、魔術の才など微塵もない一般人上がり。 垣根帝督はそれが原因で敗退、自分は今魔力供給のために食事を摂るざるを得ない状況だ。 (あるいは超能力者と接触させたい誰かや何かがここにある?) それもまた、仮説にすぎない。だが明確に否定されることがなければその可能性を信じるのが科学と言うものだ。 勝利が確実な盤石な体制を築くことが出来たなら (すこーし、調べ物に時間を費やすのも必要かしら☆) まずは第一歩。ランサーたちの帰還を待ち、周囲に動きがないか目を配ろう。 「で、なんか動きがあるなら教えなさいよ❤色々気ぃ配ってんでしょ」 「階段と外の生徒に動きはないから屋上に変化は無し。夜科アゲハは……購買の行列に並んだみたい☆」 「…並ばれたら普通に買えるんじゃない?兵糧攻めとか言ってたのに❤」 「それなら問題ないわぁ、丁度今……」 リモコンを取り出しいくつか操作。食堂内に増えてきた生徒にも宝具を行使している。 「はい、これで完売☆本日の購買はこれにて閉店☆……ついでにここの生徒は食べ終わるたびに注文した記憶と食べた記憶と満腹感を忘れさせてるから、こっちも遠からず売り切れるわぁ」 そう言っていると入り口から大量の食べ物を抱えた生徒が何人も入ってきて合流。 いくつかそれを手に取ると 「犬飼さんも食べる?あなたの解答は満点ではないけど70点の価値はあるんだから」 そう言って差し出す。どこにでもあるようなバランス栄養食から菓子パンにおにぎりまでより取り見取りだ。 「……これ全部買わせたワケ?結構容赦ないわねアンタ」 「え~、でも一人数万円くらいだしそのくらいなら大したものでも……」 「お嬢様だとは思ってたけど金銭感覚おかしいから❤それと伊助もう十分食べたからいらな~い❤」 そう、と相槌。大して気に止めず自分で手に取り、口にしようとするが 「いけません女王!これ以上は女王の完璧なボディラインが崩れてしまいます!」 そう言って取り上げる女生徒が一人。 少々すれてはいるがそれは確かに操祈のことを気遣ったもので彼女も笑顔で対応する。 「大丈夫よぉ、サーヴァントが太るなんてありえないから。あなたもその『なんだかよくわからないコロッケ』20個の早食いにレッツ・チャレンジ☆」 リモコンを向け、能力を利用した悪意ある対応だが。 「えげつな……」 さすがに女子として大量の揚げ物を、というのは思うところがあったか珍しく同情的な声を上げる伊介。 「NPCだし大丈夫、大丈夫。それにこれくらい彼に比べれば軽いものよぉ。彼、自分の主君を水風呂に放り込んだこともあるらしいじゃない☆ ……今頃さぞや頓狂な戦を繰り広げてるんじゃないかしらぁ」 ◇  ◇  ◇ 『聖杯戦争ご観戦の皆様、因果が歯車、願いが発条を回す不思議な戦場へようこそ』 『これよりお目にかける闘争の主な戦士をご紹介――」 何やってんだ安心院さん? …………………… 「ちぇ、せっかくこんな仮面まで用意したのに。まあいいか。オペラグラスは観客席じゃなく舞台に向けるよう言われたろう?彼が出てくることはもうないんじゃないかと思ってね。 きみも、ここも不甲斐ない(フゥがいない)状況になったとあっては僕も顔を出しておくざるを得ないだろう」 いつか来たような気がする教室で、安心院さんがピエロみたいなマスクをつけて、なんだかよく分からんことを言っていた。 ん?待てよ?またここに来たってことは俺今度はマジに…… 「ああ、大丈夫だよ。きみはサーヴァントこそ失ったがこの聖杯戦争ではそれが即脱落には繋がらないし、そばにいるマスターも危害を加えてないからまだ無事だ。そこは安心していいぜ(安心院さんだけに)」 窮地なのは事実なようだがまだ闘い続けられるようで安堵する。球磨川の時みたくまた助けられちまったかな? 「僕は平等なだけの人外だ。つまり助けたわけじゃない……見せておきたいものがあってね」 いつの間にやら持っていた指示棒で示す先は教室のプロジェクター。そこで流れ始めたのは…… 『糞が、くそが、クソが……食蜂操祈、第五位……ようアレイスター、お前はどうせ笑ってんだろ?  なぁ一歩通行……テメェもどっかで腹抱えて笑ってんだろ?』 『許さねぇからな……聞こえてんだろ第五位……テメェ、このくそがああああああああああああああああ』 これは…… 「そう、君のサーヴァントだった男の最期の姿さ。ある意味では《主人公》の末路だよ」 覚えが……ない。けどあの男が望まぬ形で己を殺しているのは見ていればわかる。令呪、か…… 「サーヴァントが過去の英雄を再現したものだというのは知っているね?彼らは一人一人が固有の英雄譚を持った《主人公》さ。 けれどサーヴァントと言う枠に己を当てはめているため生前の力のすべてを発揮できる訳ではない……主人公(めだかちゃん)の前哨戦に制限された主人公(サーヴァント)というのは悪くないと思ったけど荷が重かったかな? しかしこれくらいには敵わなくてはどうあれきみの願いは叶わないしねえ……さてどうする人吉くん?己が手で相棒たる英雄を殺めてしまった人吉くん? 再びテレホンカードを握って元いたところに逃げ帰るかい?黄金の意思を持つジョースターの一族のように、家族の如き海賊団麦わらの一味のように、尻尾を巻いて逃げ出すのかい? それもまた選択肢だ。僕の立案するフラスコ計画で改めて主人公を目指すのも賢明な考えだと思うよ?」 …………カッ、よく言うぜ安心院さん。闘う意思をなくした奴が主人公(ヒーロー)になんかなれるか。 俺はここで、主人公(めだかちゃん)に勝てる(並び立てる)男になってみせるぜ。 「うん、よく言ったよ人吉くん。特に昨今は挫折する主人公と言うのは流行らないみたいだからねえ。 これできみはフラスコ計画なしで主人公になれる可能性を捨てずに済んだ。ぜひともアレは失敗だったと証明してくれたまえ。 とはいえ本物の英雄には悪平等(ぼく)も勝てない……きみにとって勝利とは、英雄とは、主人公とはなんなのかよく考えてみるといい。でなければ、本当に死ぬぜ?」 …世界が薄れる。意識が明瞭になる。 そういえば、これって結局夢の中の出来事なんだよな。俺の頭の中なのか、安心院さんの頭の中なのかはよくわからないけど 「もちろん君の頭の中のことさ。でもね、この地には『自分だけの現実』で世界を侵す能力者がいるんだ。君の頭の中で起きたことが現実じゃないとどうして言えるんだい?」 ◇  ◇  ◇ 夢を見た。 その内容はほとんど覚えていない。 だが確かに己が相棒の末期を見た。 視覚を共有していたのか、『欲視力』で覗いたのか、マスターがサーヴァントの記憶を夢に見るというやつなのか、それも分からない。 けどアイツの最期は、その怒りと悔しさはこの胸に残っている。 好敵手に対する悔恨、下手人に対する憤怒……操られた俺のことを恨んでないっていうのは……申し訳なくて、悲しくて、恥ずかしくて、情けなくてたまらない。 だってアイツは最期に俺のことなんか眼中になかったんだから。 「……起きたんだね」 「紅月、か。悪いんだけど俺が何をやらかしたか教えてくれないか…記憶が少し飛んでるんだ」 「…そう、わかったよ」 アサシンがキャスターを倒すために同盟を提案したこと。俺が恐らくキャスターに操られ令呪で自害を命じたこと。 その他諸々、俺が来る前のことや意識を失うまでの話を聞いた。 「それで、あなたはこの先どうするつもり?」 「俺は……アイツのためにも、俺のためにも戦い続けるよ」 俺がアイツの願いを奪ってしまった。ならせめて、その意思までは奪ってはいけないだろう。 聖杯を手に、超える目標にせめてアイツの分まで手を伸ばそうじゃねえか! 「仇討っていうとなんだが、まずはキャスター相手に、その、協力してくれねえか?紅月」 めだかちゃんに一人で背負うなって言った以上、俺も単独で動こうとはしないさ……一人じゃサーヴァントにまず勝てないってのはあるけど。 いやでも自慢じゃないが俺だってデビル強えできる男ではあるんだぜ。 「そう…それじゃ、あんたはあたしの敵だ…!」 「て、おいおい待てよ!」 ここは握手とかの場面で銃を向けるシーンじゃないだろ…! 「一度キャスターに操られてたやつに背中を預けるのは、無理。何らかのきっかけで攻撃を仕掛けるようにされててもおかしくない。 もしテレホンカードで脱落するっていうなら同じ日本人のよしみで見送りくらいはしてあげてもよかったけど……え?」 …天城弥勒か!間が悪い、いや間を取り持つには悪くねえか? …………とりあえず話を―― 「お熱いねえ、ご両人。ちょいと失礼」 乱入する大柄な男…とそれに引きずられるようにした女生徒。 武装、タイミング、存在感……規格外の存在、サーヴァントにただでさえ固まっていた空気がさらに緊張を増す。 「馬鹿者!通達の最中に駆け出す奴があるか!」 「なに言ってんだマスター。戦場で伝令を足止めて聞いてられるかい…そっちの坊主が人吉善吉だな?お前さんには聞きたいことがあるからちょいと待っててくれや。 それからそっちのお嬢ちゃんにセイバー、腕試しにひとつ俺と喧嘩でも――どうだい!」 (おっぱじめやがった!) 刀とも薙刀ともつかぬ巨大な刃物を振るい、カレンの側に控えていたリンクに切りかかる。 見かけにそぐわぬ豪力でそれを受け止め、巧みな技巧でマスターから闘いつつも離れていく。 突然の状況変化にしばし唖然としていたが 「おい、あんたあいつのマスターだろ!?紅月まで戦いに巻き込む必要はないだろ、あいつを止めてくれ!」 「たわけ。初めからあいつはサーヴァントしか相手にせんし余計な殺生もせん。私も自分の力が取り戻せれば聖杯に固執するつもりもないからな」 「いやそれならはじめっから特訓とかしてろよ!」 「…………ふむ、そうだな。ではその特訓にお前が付き合ってくれるか?」 コキリと腕を鳴らし、笑みを浮かべてこちらを向いた。 (あれ?なんか地雷踏んだ?) 「あいつは私に何も述べず走り回るし、あいつらは人を部下か何かと勘違いしてるようだし、誰も特訓になど付き合ってくれそうにないのでな…!」 こちらに話してはいるようだが、その実言葉を向けているのは善吉にではない。 見るからに苛立ち、攻撃的になっている…ようはやつ当たりだ。 (やべえ!相当フラストレーション溜まってんぞこれ!しゃあねえ、欲視力で何とか見切って) 「縛道の一!塞!」 「な!?」 詠唱を破棄し、即座に放たれた鬼道によって動きを封じられ地べたに転がる。 「ふむ…さすがにこの程度は打てるか…」 満足げに呟いてるのに対してこっちは動きを封じられてる。 視線で軌道はわかっても見えない攻撃はさすがに躱せなかったか……過負荷みたいに濃い気配をしてればいけたかもだが 「ああッ!お前人が動けないのをいいことに!」 「そこで黙って見ていろ。男爵閣下」 どこからともなく取り出したマジックで髭を書いてご満悦。 などと間の抜けたことをやっている間にもサーヴァント同士は激しくしのぎを削る。 屋上に刻まれた戦痕は数を増し、互いのマスターから大いに魔力を喰らう。 「どうしたどうした!そんなもんじゃねえだろう!」 押しているのは飛び込んできた巨漢のランサー。前田慶次。 対するリンクも張り合っているが、その動きはどことなく精彩を欠く。 ギャリギャリと鍔迫り合いの音を立て、辛うじて凌いでいるといった感じだ。 (この目線、退路を探している?) 転がって見えなくなった闘争を目にしようと緑のサーヴァントの視界を覗いてみると、敵だけではなく何やら周囲に僅かながら意識を向けている。 敵の位置、マスターの位置、周りの景色を把握したと思ったら ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。 「おっと!やってくれるね。だがこのくらい、っとォ!」 ブンブンと得物を振るい、粉塵を晴らす。 再び敵を視界にとらえ切りかかろうと構えるが… 「あれいねえ!?尻捲って逃げやがったか!」 そこにはサーヴァントはおろか紅月カレンの姿もなく、階下からはバイクらしきエンジン音が響き渡る。 奇しくも先のセイバー戦とは逆に自分たちが敵を取り逃がした形だ。 「…逃がしたか」 「すまん、マスター。まさかあんな派手な呼び出しをやるやつが撤退するとは思わなくてよ。こいつは俺の落ち度だな……と、そっちは拘束してくれたのか。話が早くて助かるぜ」 望まぬ決着ではあるが、足まで用意していた周到な相手を不用意に追うことはしない。 空中を舞う最中に射抜かれかねないし、呼び寄せるにあたっての入念さに警戒度を内心引き上げる。 それよりも、前から来る刃よりも背後からの槍の対策をするべきだ。 「人吉善吉、ここに巣食うキャスターの真名を聞いてたら教えてもらえるかい?」 言葉尻は丁寧だが拘束され、武闘派のサーヴァントに問われているとなっては事実上の選択肢などないに等しい。 しかたなく彼は 「…知らねえ」 と、答えた。 「馬鹿な、貴様のサーヴァントから聞いていないわけがないだろう!」 「そうとも限らねえだろ、マスター。じゃあ仕方ねえ、心苦しいがよ、脱落したアサシンの真名は?お前さん、アサシンのマスターだろう?」 質問は変わっても状況は変わっていない。 それに脱落したサーヴァントの真名を教えたところで大きな影響はないと考えるはず。 ましてや自分のサーヴァントの真名くらいなら把握しているだろう。そう考えていたが…… 「…知ら、ない。思い、出せない…なんでだ!?俺はアイツの名を聞いた!言葉を交わした!なのになんで…なんで!アイツとのやり取りが『なかった』みたいになってんだよぉぉぉ!」 恐慌。『なかったこと』になったのにトラウマを刺激されたか、その恐怖ゆえか縛道さら解けて震え、乱れ、暴れまわる。 「……く」 「やってくれるな、あの女狐…!」 真っ当な主従関係なら、まず互いに名乗るだろう。 真っ当な同盟関係でなくとも敵に関する情報は伝えておいて損はないだろう。 人吉善吉が己がサーヴァントの名を知らないはずがない。 キャスターがアサシンのことを知っていたように、アサシンが彼女のことを知り、それを流布しないわけがない。 事実垣根帝督は自らの真名をマスターに伝えていたし、食蜂操祈の能力を紅月カレンたちに話していた。カレンが善吉に話した際に食蜂操祈の名を伏せることもわざわざしなかった。 食蜂操祈は、それを予期していた。 好戦的ととれるカレンたちには闘いを挑ませ、あわよくば己が名を墓場まで持って行ってもらおうと画策した。 厭戦的である善吉には能力を行使し『食蜂操祈』と『垣根帝督』を認識できなくしておいた。 それを察したか、唇を一文字に結ぶ慶次。そして 「……そうかい。それじゃあ、世話かけたな」 浮遊感。どうやら鞘に引っ掛けて放り投げられたらしい……景色が上に昇っていく。 世界が遠くなったかのように、音が遠のく。 「たわ――なぜ―――――ど!」 「―――いた―――ャス―――駒――――――」 「次の授業―――――――――」 「――――――――――売り切れ!?」 「地震?俺は知らな―――――――」 「停電にまで――――――いよ」 「珍しいね、鹿目さんが休――――」 「――――――暁美――も―んでる―」 「おいなんで並ぼうなんて言ったんだよ!結局売切れちまったじゃんか!」 「飯抜きでやるにも限度あんだろ!てか列の前であんな大量に買い込むとか分かるか!…っておい!あれ俺たちのバイクじゃねえか!」 「あ?ンな馬鹿な…マジかよ!?てかあれさっきのセイバーじゃねえか!おいこら待ちやがれ――え?」 ガサガサガサガサガサッ!と音を立て枝を直撃、勢いを殺されてさほどの傷は負わずに済んだ。 さっきから騒がしいのは…… 「痛ってぇ。あれ…?アゲハ?」 「人吉!?何やってんだお前!?」 【C-2/アッシュフォード学園敷地内/1日目 午後】 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]健康、若干の恐慌状態 [令呪]残り二画 [装備]箱庭学園生徒会制服、男爵風のおヒゲ(油性) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く……? 0.痛てててて…うん?アゲハ? 1. アイツのためにも自分のためにも聖杯戦争を続ける……? [備考] ※夜科アゲハがマスターであると知りません。 ※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。 ※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。 ※屋上の挑発に気づきました。 ※学園内に他のマスターが居ると認識しています。 ※紅月カレンを確認しました。 ※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※食蜂操祈の宝具により操られていました。 →加えて食蜂操祈の宝具により『食蜂操祈』および『垣根帝督』を認識、記憶できません。効果としては上条当麻が食蜂操祈のことを認識できないのに近いです。これ以上の措置は施されていません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。 【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(中) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 0.あー!俺たちのバイクーー!って人吉何やってんだお前。 1.夜になったら積極的に出回り情報を探す。 [備考] ※人吉善吉がマスターであると知りません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲 [装備]方太刀バサミ [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 0.待ちやがれバイク泥棒コノヤロ…って誰だお前? 1.情報を集めるのもいいかもしれない [備考] ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してありましたが紅月カレン&セイバー(リンク)にとられました。 「たわけ!なぜ投げ飛ばした!?この高さでは…」 「ここで待ってたらそれこそキャスターの手駒に何されるかわからねえぜ、マスター。ちゃんと木に落ちるようにしたし、こっちのが生き延びる可能性は高い…はずだ」 そう言われては正否はどうあれ否定はできない。 黙るマスターに、黙考するサーヴァント。 (馴染みのアサシンなんてマスターの方が漏らした上に、セイバーと人吉が同じ所にいるなんざ都合よすぎた、か。 キャスターの真名だけじゃなく、アサシンの真名にまで手を回してるたあ流石に頭の回りも早いじゃねえか。同郷のやつの名が分かれば手がかりくらいになるかと思ったが……) 犬飼伊助が愚痴っていた昔馴染み。そしてキャスターもそれの手の内を語っていたから、彼女たちを出し抜く契機を求めここに来た。 通達が来たときは驚いたが、その最中なら余計な邪魔も入らないと判断。あのキャスターの前にマスターを置いていくくらいなら自分の側で戦場に置いた方がまだ安全だ。 彼女と共に飛ぶが如くきたが、得たものは少ない。 (人吉のやつにキャスターが手を加えたのは明白。あいつが折れなきゃ信長包囲網ならぬキャスター包囲網の一角になってくれそうだが、どーだろうな。 松永のおっさんってのはこんな気分だったのかね、どうも俺には向いてねえや。男なら喧嘩も恋も自分の手でが一番だと思うよ) 人吉善吉をあえて泳がせ、キャスターの敵とする。 もし強力なサーヴァントを従えてくれれば自分も喧嘩を愉しめる……これくらいは口にせずともマスターも、キャスターも察するだろう。 だが、どちらにも告げていない腹案が一つ。 懐には付箋が一枚。 (同組織に二人以上属させて戦端を加速、か。目の付け所はいい。だがやはり近現代の英霊かな、すでにいる奴に警戒して飛び入りが怪しいって戦場のいろはに目が回ってねえ。 2年B組とかいうとこで暁美ほむらってのが休んでる。で、明日からそのクラスに新入りが飛び込んでくるらしいぜ?) 付箋にはエレン・イェーガーという名。そして明日から転入すること、名簿を明日に更新すること、非常時の連絡方法が書かれていた。 (さて、どうする?休んでるやつの情報は掴むだろうが、確認前にこれを引っ剥がした以上はこいつについては知らないはず。とはいえ明日までしかない僅かな優位点だ) 暁美ほむらについても二人以上の欠席ではないため優先的に捕捉されることはないだろう。 となるとその情報も僅かとはいえ強みになるか。しかしともに確実なマスターの情報ではないし、下手に動けば感付かれる。どうするか……? 沈考する己がサーヴァントを見て朽木ルキアは自身も思考の海に身を委ねる。 だが、それは彼とは違い建設的とは言い難いもの。 彼は指示に従わず高らかに名乗りを上げた。恐らくあのキャスターはそれを聞いた者を手の内に収めているだろう。 通達が響くとともに駆け出した。おかげで自分は話半分にしか聞けていない。 今も自分を置いて思考にふけっている。 ……分かっている。 あのキャスターの近くに一人残るのがどれだけ危険か。あの男を逃がした方がキャスターを出し抜く意味でも私の練磨としても有意義なことが。 でも、それでも…… (ランサー、お前は兄様と同じで何も語ってはくれないのだな……) 【C-2/アッシュフォード学園、屋上/1日目 午後】 【朽木ルキア@BLEACH】 [状態]健康 、魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない 1.慶次及び現状に疎外感と寂寥感 2.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 3.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい [備考] ※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。  これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。 ※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。 ※通達を一部しか聞けていません。具体的にどの程度把握しているかは後続の方にお任せします。 【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [装備]超刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:この祭りを楽しむ 1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集 3.エレン、もしくは暁美に対して――― [備考] ※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。 ※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。 ※中等部の出欠簿を確認し暁美ほむらの欠席、そのクラスにエレン・イェーガーが転入してくることを知りました。  エレンについては出欠簿に貼ってあった付箋を取ってきたので更新された名簿などを確認しないかぎり他者が知ることは難しいでしょう。 [共通備考] ※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。  基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。 ※紅月カレン&セイバー(リンク)と交戦しました。 ※人吉善吉を確認しました。 「頓狂な戦って❤どう見ても名乗りを上げて堂々と戦う武人肌ってカンジじゃん❤」 「否定はしないけどぉ。ちょっとずれてるところがあるからあんまり信頼しない方がいいわよ☆」 聞き流す。どうせ自分が乗り換えをしないようにするネガティブキャンペーンだろうと気にかけない。 ……それで正解だ。彼はそれなりの切れ者だ。 だが頭がそれなりに回るから誘導も出来る。 体育館裏から撤退させたのは先に述べたそれだけではない。 夜科アゲハ、彼の能力行使を僅かながら確認した。あれは学園都市のそれに近似した、しかし異なる形態の能力だ。 『原石』ならばいいのだが、もしあれが学園都市のように学習できるものならば。万一にそれが朽木ルキアの目的を果たしてしまえば。 彼女がここにいる理由はなくなる……ランサーのマスターがいなくなる。 となれば間違いなく犬飼伊助はその後釜を狙うはずだ。ランサーも積極的っではないかもしれないが、仇敵を脱落させられるなら応じる可能性がある。 夜科アゲハと朽木ルキアは敵対以外の関係を築かせてはならない。 だから別の任を与えて引き離した。 同郷のアサシンという、『食蜂操祈』のヒントを餌にして。 『垣根帝督』の近くの心理系能力者と言えば別の使い手がいたようだが、同郷から辿られてはたまらないので彼についても認識できなくしておいた。 今頃見当外れの尋問でもしているだろうか、それとも気付いて諦めているだろうか。 いずれにしても釈迦の掌を飛び回るが如く間の抜けた、頓狂な戦だ。 ただ信頼できないというのは私に限って言えば事実だ。 何を考えているのか分からない奴と組むなんて、正直言ってゴメンだ。 聖杯戦争で強力な三騎士のクラスはみな対魔力を持っている以上、御坂美琴と組んだ時のように妥協するしかないだろうが。 その点でいえば、悪意が文字通り透けて見える犬飼伊介と朽木ルキアの二人は信用できる。 (もし朽木さんが彼を見限るようなら……) 私を上回ろうと個々で動くあのふたりがどこかで噛みあわなくなったら (うん、彼女とはキチンと同盟関係になってもいいかな☆) 犬飼もまた、まだ具体的な離反の策はできていない。放っておいても大きな障害ではまだない。 それに下手すると彼女の強みを殺しかねない。 (能力者ならともかく肉弾戦は専門外だからぁ、あんまり手を加え過ぎて私の操作必須とかになっちゃうと困るのよねぇ) 能力を制御するためにリモコンを使っている。それでも精神状態によっては操作対象を廃人同然にしてしまう可能性は否定しきれない。 先の小競り合い、紅月カレン相手の離脱は能力で操作しては無理だった……万一影響が出ては困る、まだ暫くは本格的な操作はしない方がいいだろう。 彼女の消失は自分の敗退に繋がるのだから。 能力による操作も、読心もなしに信頼できるのはやっぱり『あの人』しかいない。 さきほど人吉善吉に施したように、私を認識できなかったあの人。 (人吉くんも悪くないけどぉ、やっぱり彼には及ばないかな☆) 彼に認識されなくても特に思うところはないが、あの人に認識されていなかったのは同じようにはいかない。 幾度空想しただろう。 あの人が記憶を一度なくした後、すぐにもう一度思い出を構築できたら。 魔術を識る少女ではなく、心を知る自分が隣にいたら。 電撃を使うレベル5と過ごすではなく、心理を司るレベル5と過ごしていたら。 彼と近似した願いを重ねた聖人でも、数多の時を共に過ごした魔神でも、世界を超える電子の総体でも、心理戦最強の無能力者でも、彼女でも、あの子でも、あの人でも、あの娘でもなく。 彼の隣に最初から最後までいたのが私だったら!!! それはきっと素晴らしい……けれどそれは叶わなかったただの夢。 だけど今の自分はサーヴァント。存在自体があやふやな胡蝶の夢。 (だから今くらい、夢を見させてほしいな…) 【C-2/アッシュフォード学園、食堂/1日目 午後】 【犬飼伊介@悪魔のリドル】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]ナイフ [道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など) [思考・状況] 基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす 0.食蜂操祈に心を許さない。 1.キャスターの宝具を使い上手く立ち回る。 2.キャスターを使い潰した後にサーヴァントを乗り換える。 [備考] ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。 ※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。 【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】 [状態]健康、魔力消費(中) [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]ハンドバック(内部にリモコン多数)、購買で買い占めた大量の食品、生徒名簿 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆ 0.このまま上手く立ち回る。 1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。 2.戦闘はランサーに任せ、相手のマスターを狙う。 3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。 [備考] ※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。 ※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。 ※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。 ※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。 ※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。  それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名を聞いたかについては後続の方にお任せします。 ※天戯弥勒、および聖杯戦争について考察する必要があると感じ始めました。  今の仮説は1、ガイアの怪物以上のなにかを御そうとしている 2、参加者と主催者のために14騎いる 3、参戦しているサーヴァントは一流の英霊ではない 4、アッシュフォードに二人のレベル5がいたのには意味がある [共通備考] ※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。 ※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。  基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。 ※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。 ※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせています。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確保済み。 突如現れたサーヴァント。 彼はとても強い……業腹ながら撤退を選ばなければならない事態と言うわけだ。 思えばこの聖杯戦争は悉く予想外の事態に見舞われる。 マスターの提案である屋上での挑発も、本来ならば悪くない手だったのだろうが…… 日の高いうちからアーチャーによる襲撃。このくらいなら序の口。 襲い来るセイバー。自分以外にセイバーがいるというとんでもない慮外の事態。 廊下で対峙したアサシンと、それに向かい合う敵マスター。策謀に長けた魔術師でなく、肉弾戦に優れたマスターという僅かながらもイレギュラー。 それ以上に僅かな交戦とは言え、セイバーたる己とわたり合ったアサシン。まさしく規格外。 14騎という、通常の倍の数、それに伴う想像以上に学園に集結したサーヴァント。連続した戦闘で思った以上に消耗を強いられた。 ……言いにくいことだがマスターからの魔力供給は潤沢とは言い難い。 自分以外にセイバーがいなければ、アサシンが凡百の者なら、ここまで多くのサーヴァントが集ってなければこうはならなかっただろうが連戦は不利。 ともかく悔やんでばかりではいられない。 先のセイバーは令呪によるものではなく突然地上を駆けて現れたようだ……ならば恐らく彼女が騎乗スキルでもって用いた乗機が彼女の現れた方角にあるはずだ。 もう回収されているかもしれないが、無策に撤退するよりはマシと言う物。 ガァン!と鍔迫り合いを弾き大きく距離をとる。さらにバクダンを一つ、床を吹き飛ばすように叩きつける。 その隙でもってマスターを抱え、屋上から跳び降りる。 隠されてはいたがすぐに機馬は見つかった。どんな罠も秘匿も自分ならば見抜いて見せよう。 機馬にまたがり、マスターと共に駆け出す。セイバーのクラスにあてがわれる騎乗スキル、それも自身の武芸の一環として振るう。 ひとまずこの学園から離れるのが先決だ。 マスターは日常を演じ、身分を隠そうとしていたが、学園にキャスターが陣取っていることが分かりそのキャスターにばれたとあってはこれ以上学園にとどまるメリットはないだろう。 負傷も、消耗も癒さなくては。 ……最悪魂喰いも考えなければならないだろうか。ハイラルに平和をもたらすためとはいえ、敵はともかくそこまで犠牲を強いていいのだろうか。 悩む勇者の背中で少女は考えていた。 今後の振る舞いを。何より敵のことを。 (食蜂操祈、心を操り人を駒のように扱う敵……) 自らの従僕を自害させるハメになったマスター。 無辜の生徒を利用し、敵を戦場に誘い込む。 それは実に有効な策で、知的で、効率的で……どこかで見たもので、なぜか許しがたくて。 (やつあたりかもしれない。投影してるのかも。でも、あんたは私たちが倒すよ…!) 【C-2/アッシュフォード学園外/1日目 午後】 【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み) [令呪]残り3画 [装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も)) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。 1.ひとまず学園から離れる。 2.食蜂操祈に強い敵意。 [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 ※学校内での自分の立ち位置を理解しました。 ※生徒会の会計として所属しているようです。 ※セイバー(纒流子)を確認しました。 ※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。 ※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】 [状態]魔力消費(小)、疲労(小) [装備]なし [道具]バイク(盗品) [思考・状況] 基本行動方針:マスターに全てを捧げる 1.マスターに委ねる 2.ひとまず学園から離れる 3.消耗を補うためにマスターを休息させるが、最悪魂喰いも…? [備考] ※マスター同様。 ※どこへ向かっているのかは後続の方にお任せします。 [地域備考] ※アッシュフォード学園の購買及び食堂の食品が売り切れました。搬入があるまで営業は再開しないでしょう。 ※暁美ほむらのクラス名簿(中等部2年B組)にエレン・イェーガー転入と付箋が貼ってありましたが貼り違いの可能性も在ります。 ---- |BACK||NEXT| |033:[[闇夜に生ける者たち]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |033:[[闇夜に生ける者たち]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |031:[[錯綜するダイヤグラム]]|[[夜科アゲハ]]&セイバー([[纒流子]])|040:[[負けたまんまじゃいられねぇ]]| |~|[[人吉善吉]]|~| |~|[[紅月カレン]]&セイバー([[リンク]])|043:[[裏切りの夕焼け]]| |~|[[朽木ルキア]]&ランサー([[前田慶次]])|~| |~|[[犬飼伊介]]&キャスター([[食蜂操祈]])|~|

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