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「近くとも遠く」(2015/01/07 (水) 18:01:02) の最新版変更点
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***近くとも遠く◆lb.YEGOV..
サクリ、という小気味いい音と共に、口内に瑞々しいレタスとジューシーなビーフ、トマトの程よい酸味と、さっぱりとしたヴィネガーの味、そしってしっとりとしたパンの食感が広がる。
昼食として購入したサンドウィッチを咀嚼しながら、ウォルターはさきほど頭の中に響いて来た、主催者・天戯弥勒の報告の内容を反芻し、思考する。
(アサシンが脱落、残りは13組。暗殺の危険があるサーヴァントの内、片割れがいなくなった、事実だけを見れば喜ばしい事であるが……)
「あまりにも早過ぎる」
まだ一回目の夜明けを向かえた状況で既に脱落したサーヴァントが存在する。
脱落したタイミングとして考えうる時間帯は早朝〜現在に至るまでか。
ここで脱落したのがマスターであったのならば、ウォルターにも得心がいく。
早朝のランサーとの戦闘を経て、マスターがサーヴァントに対して有効打を持ち得る事はまずない事を経験から理解している。
加えて暗殺に特化したアサシンがいる以上、この段階でマスターを殺害されての脱落という事態は十分にあり得る事だ。
だが、脱落したのはよりにもよってそのアサシン。
それはつまる所、その短時間の内に自分達と同じ様に他のサーヴァントと衝突した陣営があり、そして脱落したという事に他ならない。
(人の事は言えぬが、随分と血気盛んな事だな)
ごくり、と咀嚼していたサンドウィッチを嚥下し、合わせて購入したミネラルウォーターを口に含む。
水質の違いからか、日本の水道水はどうにもウォルターの口には合わなかった。
ランサーに紅茶を淹れる為にもいくらか硬質のミネラルウォーターを買い足さなければならない事に溜め息を一つ。
思考を再び、脱落したアサシンと取り巻く状況への考察に戻す。
(アサシンが敗退、しかしマスターは生存。暗殺の失敗か、襲撃を受け囮となったか)
マスターが生存している以上、別のサーヴァントによるマスター殺害による脱落の線はない。
故にアサシンのみが戦闘によって脱落した。それが想定し得る状況だろう。
だが、問題になるのはアサシンと敵陣営の戦闘がこの早期に起こった事だ。
今朝方のウォルター達のように突発的な遭遇は十二分にあり得る。
だが、脱落したのが暗殺・諜報などを得手とするアサシンである事が問題だった。
天戯の発言が真であるならば、正面からの戦闘ができるだけの実力があったそうだが、
暗殺に特化したクラスが、暗殺を狙わずに直接戦闘を行なう必要性は薄い。
だが、暗殺をするのであれば、暗殺対象が誰であるかを認識する必要がある。
襲撃を受けるにしても、今朝方のウォルター達の様に突発的な遭遇があったか、一方的にマスターであるか認識されていなければ発生しない。
だが、襲撃を受けるのであれば気取られない事こそが第一のアサシンを伴っているのにも関わらず、マスターとしてのアタリをつけられたという事だ。
襲撃するにしても、襲撃を受けるにしても、それに足るだけの接触、あるいは監視の必要がある。
それが、開始から1日にも満たない状況で起こりうるだろうか?
だからこその『早過ぎる』という呟きであった。
加えて14組という参加者の数と広範囲に及ぶ会場という状況が絡んで来る。
この広大なエリアで、しかもこれだけの時間で参加者同士が接触する確率は幾ばくか。
(ふむ、無論突発的な遭遇から発展した事も考えられるが……)
ウォルターは懐からマップを取り出し、数カ所に印をつける。
印がついたのは病院、アシュフォード学園、その他大型のショッピングモールや温泉などの施設。
(人が多く集まる所の方がそれだけ遭遇率も上がる。
その場合、施設の解放時間も考えれば接触を考えられるのは午前から正午までか)
ウォルターの視線に留まったのは彼の拠点からもそう遠く無いアシュフォード学園の文字。
その脳裏に浮かんだのは自身が遭遇した、学生服を着込んだ二人のマスターの姿。
(14人中2人は日本のハイスクール生。
そこまで参加者の年齢に偏りがあるかは定かではないが、学生であれば早朝の内からの接触も十分に考えられる、と)
「しかし、そうなると私達では入る方法がない」
溜め息を一つ吐き、トン、と地図に描かれたアシュフォード学園に指を添える。
老年の執事服の男性が学校に入れば嫌でも目につく。
レミリアであれば霊体化して侵入は可能だが、かの吸血鬼がこそこそとした密偵の真似を進んで行なってくれるとは考えづらい。
そもそもの話、彼女の活動可能な時間では学生の大半はすでに下校ずみなので潜入する意味がない。
(使い魔か、あるいはNPCでも利用できればいいのだが、
頃合いを見て監視でもするべき、か)
「さしあたっては日本のハイスクールの平均的な下校時間を調べなければいかんか、
異国の地というのはこういう時に苦労をする」
幸いにも拠点から近くの場所にあり、準備をしてから学園の付近で監視に最適なポイントを割り出す事もそう難しくはない。
他のマスターに接触出来るかは不明であるが、何らかの手を打つ必要はあるとウォルターは判断した。
(レミリアお嬢様への報告もしておくか。
何にしろ、彼女の動けるのは夜だ。
昼間の内に網を張っておく事は彼女も否とは言うまい)
飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨てながら、ウォルターは今まで歩いて来た道に踵を返し、主であり従僕である少女の待つ館へと戻る。
その行く先に幾人の少年少女の思惑が絡み合った学園を捉え、彼らを絡めとる為の蜘蛛の巣を作り上げる為に。
【C-5・市街地/一日目・午後】
【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.夜になるまでは単独で情報収集
2.アシュフォード学園内での情報集手段の模索
3.アシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索
----
|BACK||NEXT|
|036:[[誰が為に命を燃やす]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|:[[]]|
|036:[[誰が為に命を燃やす]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|:[[]]|
|BACK|登場キャラ|NEXT|
|028:[[あの空の向こう側へ]]|[[ウォルター・C・ドルネーズ]]&ランサー([[レミリア・スカーレット]])|[[]]|
***近くとも遠く◆lb.YEGOV..
サクリ、という小気味いい音と共に、口内に瑞々しいレタスとジューシーなビーフ、トマトの程よい酸味と、さっぱりとしたヴィネガーの味、そしってしっとりとしたパンの食感が広がる。
昼食として購入したサンドウィッチを咀嚼しながら、ウォルターはさきほど頭の中に響いて来た、主催者・天戯弥勒の報告の内容を反芻し、思考する。
(アサシンが脱落、残りは13組。暗殺の危険があるサーヴァントの内、片割れがいなくなった、事実だけを見れば喜ばしい事であるが……)
「あまりにも早過ぎる」
まだ一回目の夜明けを向かえた状況で既に脱落したサーヴァントが存在する。
脱落したタイミングとして考えうる時間帯は早朝〜現在に至るまでか。
ここで脱落したのがマスターであったのならば、ウォルターにも得心がいく。
早朝のランサーとの戦闘を経て、マスターがサーヴァントに対して有効打を持ち得る事はまずない事を経験から理解している。
加えて暗殺に特化したアサシンがいる以上、この段階でマスターを殺害されての脱落という事態は十分にあり得る事だ。
だが、脱落したのはよりにもよってそのアサシン。
それはつまる所、その短時間の内に自分達と同じ様に他のサーヴァントと衝突した陣営があり、そして脱落したという事に他ならない。
(人の事は言えぬが、随分と血気盛んな事だな)
ごくり、と咀嚼していたサンドウィッチを嚥下し、合わせて購入したミネラルウォーターを口に含む。
水質の違いからか、日本の水道水はどうにもウォルターの口には合わなかった。
ランサーに紅茶を淹れる為にもいくらか硬質のミネラルウォーターを買い足さなければならない事に溜め息を一つ。
思考を再び、脱落したアサシンと取り巻く状況への考察に戻す。
(アサシンが敗退、しかしマスターは生存。暗殺の失敗か、襲撃を受け囮となったか)
マスターが生存している以上、別のサーヴァントによるマスター殺害による脱落の線はない。
故にアサシンのみが戦闘によって脱落した。それが想定し得る状況だろう。
だが、問題になるのはアサシンと敵陣営の戦闘がこの早期に起こった事だ。
今朝方のウォルター達のように突発的な遭遇は十二分にあり得る。
だが、脱落したのが暗殺・諜報などを得手とするアサシンである事が問題だった。
天戯の発言が真であるならば、正面からの戦闘ができるだけの実力があったそうだが、
暗殺に特化したクラスが、暗殺を狙わずに直接戦闘を行なう必要性は薄い。
だが、暗殺をするのであれば、暗殺対象が誰であるかを認識する必要がある。
襲撃を受けるにしても、今朝方のウォルター達の様に突発的な遭遇があったか、一方的にマスターであるか認識されていなければ発生しない。
だが、襲撃を受けるのであれば気取られない事こそが第一のアサシンを伴っているのにも関わらず、マスターとしてのアタリをつけられたという事だ。
襲撃するにしても、襲撃を受けるにしても、それに足るだけの接触、あるいは監視の必要がある。
それが、開始から1日にも満たない状況で起こりうるだろうか?
だからこその『早過ぎる』という呟きであった。
加えて14組という参加者の数と広範囲に及ぶ会場という状況が絡んで来る。
この広大なエリアで、しかもこれだけの時間で参加者同士が接触する確率は幾ばくか。
(ふむ、無論突発的な遭遇から発展した事も考えられるが……)
ウォルターは懐からマップを取り出し、数カ所に印をつける。
印がついたのは病院、アシュフォード学園、その他大型のショッピングモールや温泉などの施設。
(人が多く集まる所の方がそれだけ遭遇率も上がる。
その場合、施設の解放時間も考えれば接触を考えられるのは午前から正午までか)
ウォルターの視線に留まったのは彼の拠点からもそう遠く無いアシュフォード学園の文字。
その脳裏に浮かんだのは自身が遭遇した、学生服を着込んだ二人のマスターの姿。
(14人中2人は日本のハイスクール生。
そこまで参加者の年齢に偏りがあるかは定かではないが、学生であれば早朝の内からの接触も十分に考えられる、と)
「しかし、そうなると私達では入る方法がない」
溜め息を一つ吐き、トン、と地図に描かれたアシュフォード学園に指を添える。
老年の執事服の男性が学校に入れば嫌でも目につく。
レミリアであれば霊体化して侵入は可能だが、かの吸血鬼がこそこそとした密偵の真似を進んで行なってくれるとは考えづらい。
そもそもの話、彼女の活動可能な時間では学生の大半はすでに下校ずみなので潜入する意味がない。
(使い魔か、あるいはNPCでも利用できればいいのだが、
頃合いを見て監視でもするべき、か)
「さしあたっては日本のハイスクールの平均的な下校時間を調べなければいかんか、
異国の地というのはこういう時に苦労をする」
幸いにも拠点から近くの場所にあり、準備をしてから学園の付近で監視に最適なポイントを割り出す事もそう難しくはない。
他のマスターに接触出来るかは不明であるが、何らかの手を打つ必要はあるとウォルターは判断した。
(レミリアお嬢様への報告もしておくか。
何にしろ、彼女の動けるのは夜だ。
昼間の内に網を張っておく事は彼女も否とは言うまい)
飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨てながら、ウォルターは今まで歩いて来た道に踵を返し、主であり従僕である少女の待つ館へと戻る。
その行く先に幾人の少年少女の思惑が絡み合った学園を捉え、彼らを絡めとる為の蜘蛛の巣を作り上げる為に。
【C-5・市街地/一日目・午後】
【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]健康、魔力消費(微小)
[令呪]残り3画
[装備]鋼線(ワイヤー)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:全盛期の力を取り戻すため、聖杯を手にする
1.夜になるまでは単独で情報収集
2.アッシュフォード学園内での情報集手段の模索
3.アッシュフォード学園近隣で監視に使えそうなポイントの捜索
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