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***LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY  彼らは聖杯を求める、例え不本意な戦争への参加でも願いは在るのが人間。  故に争い、傷つけ合い己の欲に囚われる輩も少なからず存在するだろう。  この空間に存在するのは選ばれた彼らだけではない。  NPC――現実とは異なる今宵の会場には一般市民とも呼べる彼が存在している。  それは限りなく近く、極めて遠い。普段の生活サイクルと変わらない多数の人間。  天戯弥勒の計らいか、それとも嫌がらせかは不明だが参加者は戦争だけを行っていればいいものではない。  学生ならば勉学に励み、社会人ならば生きるために働く……彼らもサイクルに身を置かなければならない。  アッシュフォード学園、例外に漏れず此処にもNPCそして学生参加者が集まる場所だ。  構成は中等部と高等部に別れておりその規模は予想よりも遥かに大きい。  参加者の全学生が此処に学籍を置いているかは不明だが、零ではない事は確かである。  その一人、人吉善吉もまたアッシュフォード学園に籍を置く高校生である。  本来の彼は箱庭学園に通う生徒であり高校一年生であったがそれはアッシュフォード学園でも変わらない。    学園には多数の生徒で構成されているため制服にも統一は無く様々制服が許されている。  これによりアッシュフォード学園の生徒ではない善吉も箱庭学園の制服で通うことが可能だ。  元々可能だが一人だけ異なっている制服だとどうしても目立ってしまう。  もし学園に他のマスターが居れば遅かれ早かれ警戒されてしまうのが現実だろう。  ……最も彼の制服の着こなしは中にジャージを着こむ、曰く「デビルスタイル」なため何方にせよ目立ってしまうが。  そして何かの縁か彼のアッシュフォード学園での役割は本来の彼と同一だった。  つまり、アッシュフォード学園生徒会庶務の座に位置していた。  天戯弥勒の用意したと仮定されるこの世界ではある程度参加者の現実が反映されるらしい。  けれど此処は彼の在籍していた学園ではないため、生徒会の構成メンバーも大きく異なるだろう。  人吉自身も生徒会にどんな人物が居るかは把握出来ておらず、現在分かるのは生徒会長のみだった。  無論彼の知っている生徒会長ではなく、もし「彼女」がNPC或いは参加者であったならば。  彼は全力で彼女に挑んでいた事だろう……この学園では『生徒会長が二人存在』していた。    していた、である。  その一人は現在留学中である。事の始まりは選挙に置いて二人の女性が同率一位となってしまい現在に至る。  仲は悪くなく、互いが互いに協力し別の方向から学園を支え、アッシュフォード学園を運営していた。  最も彼女らの下の派閥――簡単に表せば下っ端な信者たちは何時も争っていたらしいが。  人吉の記憶にはこの生徒会長に纏わる記憶は残っていたらしく、顔と名前までハッキリと解る。  留学中の生徒会長はミレイと呼ばれる女性でとても魅力的な、行動力溢れる女性だった事は覚えている。  しかし会長を除く副会長や書記の名前や顔は全く覚えていないため、早急に把握する必要があった。 「そのために朝早めに来て机上札でも見ようと思ったけど……ないな」 「ああ、ないな、あぁ……眠ぃ」  普段より早め、と言っても数十分程度だが人吉は学園に足を運び生徒会メンバーを把握しようとしていた。  しかし席はあるものの肝心の名前が記されているものが無く、無意味、それも自分の席すら解らない。  これでは何一つ解らなく、彼がする事と言えば日課である咲き誇る花達の手入れだった。 「お前、案外メルヘン好きか? デビルとか言いながら頭ン中はファンタジーってか?」 「そんなんじゃないから。  ……まぁ花を手入れする……カッ! 結構な設定じゃねぇか!」  アサシンもまたマスターである人吉に同行し学園に足を運んでいた。  やはり他の生徒にマスターが混じっている可能性は否定出来ないため護衛として、サーヴァントとしての役目を。  聖杯に至るにはマスターの護衛も重要な点であり、彼を一人にする事は無謀だ。  その間にマスターがサーヴァントに襲われたならば……結果は見えている。最もアサシンである垣根帝督は興味半分で学園に付いて来たのだが。   「設定? あぁお前は本来この学園の生徒じゃないんだったな」  そう呟くと乾いた嗤いの後、アサシンは再び霊体に戻る。  人吉善吉はアッシュフォード学園の生徒会にて庶務。  その職務の一つに花達の手入れ……これはまるで彼が知る本来の生徒会長だった。  多くは語らないがその存在は彼にとって「最愛で最大な最も近しい存在」だった。そう、だった。 「まぁ悪くはない……かな?」  何の因果かそれはめだかちゃんの――そうか、此処にめだかちゃんは居ない、か。  それだけ解れば彼には収穫と言えるかもしれない、情報はまた集めればいい。 「朝からご苦労だな、人吉善吉」  花の手入れをしていた人吉、彼はアサシンと二人で生徒会室に居た。  気が付けば時間も大分過ぎており遅刻ギリギリ組以外は登校していても可怪しくない時刻だ。  聞こえた声の持ち主は女性、それも人吉が把握している数少ない情報の生徒会長だった。 「手入れも大切だが遅刻するなど本来の役目を忘れるな、早く教室へ向かえ」 「解りました、鬼龍院生徒会長」    白いセーラー服……と表わすのが一番だと思われる制服を着た女性。  彼女こそが生徒会長の一人であり、ミレイ会長が留学している今、実質的な学園のトップ。  その名も鬼龍院皐月、長い黒髪の女性、そこには「凛」と言う文字が似合うかもしれない。   「ならば早く教室へ……鍵は私が閉めておく」 「お言葉に甘えさせてもらうぜ、生徒会長さん!」 「――待て」  高圧的な印象を与える彼女だが実際は優しい一人の学生だ。  しかし昔、人吉には解らないが中々の恐怖政治を行っていた噂もあったらしいが……。  そんな彼女は人吉を引き止める、勿論彼に心当たりなど存在しない。  学園での役割は生徒会庶務、しかし彼が彼の自覚を持って学園に通うのは今日が初めてだ。  今までの人吉という存在が何をしていたか、把握出来ているはずない。 「今――お前以外に誰か居なかったか?」 「き、気のせいじゃないっすか? んじゃ、お先に失礼するぜ!」  サーヴァントの気配でも感じ取ったのだろうか、鬼龍院皐月は空間の所在を問うた。  人吉の回答は否定、まさか鬼龍院皐月はマスターで心理戦を……令呪が見えないため違う、と思いたい。  人吉の令呪は腕をなぞるように宿っており制服を着ていれば隠せる。  逆に彼は鬼龍院皐月からサーヴァントの気配を感じないため彼女をマスターから除外した。  そして時間も危ういため早足で教室へ向かった。 「気のせい――か。そうだろうな、私は何を言っている……」  そして鬼龍院皐月はマスターではなくNPCである。  この空間では主役になれないモブに過ぎない舞台の演出装置が限界。  彼女の元、オリジナルの鬼龍院皐月の強すぎる力が何か感じ取ったのだろう、無意味だが。  そして彼女も生徒会室に鍵を閉め、この場を後にした。 ◆ 「おい、遅刻するって! もっと速度出ないのかよ!? お前それでも英霊か!?」 「るせぇ!! あたしはテメェの執事じゃねぇんだよ! ほら、学園は目の前、とっとと走れ!!」  時刻は始業まで時間が少なく呑気に歩いていたら遅刻は確実だった。  バイクを走らせ罵倒しあう男女、女性が運転し男は学園に近づくと飛び降りた。  彼らもまた聖杯に召された――いや、天戯弥勒に召されたと表現するのが正しいか。  マスターである夜科アゲハ、そしてセイバーである纒流子だ。 「まぁ礼は言っておく! ありがとな! それとくたばれ纏!」 「そっくりそのまま返すぜ、アゲハ……ケッ!」  彼らは主従関係ではあるが本人達の意向によりその壁を失くしている。  同じ志を持ち、共に戦い抜くならば、より対等な立場で望むのが彼らには合うようだ。  最も実際に「セイバー」だの「マスター」だの呼んでみたら何だが痒くなってしまい止めたのが一番の理由だが。  セイバーのクラススキルである騎乗によりバイクの運転も――纒流子は元々バイクの運転技術を持っていた。  それはアゲハのを軽く超え、アゲハに免許は無いがセイバーに運転して貰う方が圧倒的に時間の短縮が出来た。  互いに互いを煽り合いながらも絆は存在しているようだ――恥ずかしくて表には出さないが。 「さて……こっからあたしはどうっすかな」  アゲハを送り届けた纒流子はこれからの予定を考えていなかった。  本来ならば霊体となってマスターの傍に居るべきだが……。 『霊体になるってあんま好きになれねえんだよなぁ』 『外から見えないのに傍に居るって怖くね?』  これも本人達の意向で――最も遅かれ早かれ纒流子は学園に向かうのだが。  何か合ったら駆け付ける。これがアゲハ達の指針である。  そのため早く学園に向うべきだが、別に急がなくてもいい、纒流子はそう思っている。  根拠は無い、無理矢理つけるとすればこの空間を走り回り把握する事だろうか。  土地勘が無いため夜間の戦闘などで不備が生じるかもしれない。  勝ち抜く、生き残るためにはどんな手段でも使わなければならない。 『野望のためならばどんな手段でも使う』――彼女の姉の言葉だ。  ならば纒流子もその言葉通りこの聖杯戦争を生き残るためにどんな手段でも使うだろう。  厳密に言えば彼女に願いはなく、あるとすればアゲハに聖杯を捧げる事。  それでも、それでもだ。彼女は止まらない。 「んじゃ、適当に時間潰してから教室に向うとするか」  バイクに跨ると、彼女は再び走りだした。 【C-2・アッシュフォード学園前/一日目・早朝】 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]健康 [装備]なし [道具]バイク@現地調達(盗品) [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.適当に時間を潰す。 2.その後学園に向かい、アゲハの傍へ。 [備考]  そもそも何故アゲハは遅刻になりかけているのか。  それは昨夜に原因が在った。 ◆ 「ったく……さっさと寝るわ」 「その前にシャワー貸してくれよ」 「おう……って英霊はシャワー浴びるのか?」 「当たり前だろあたしだって女だ、殺すぞ」  深夜の中バイクを意味も無く走らせていたアゲハと流子。  満足したのか、家に帰宅して早々自分達が犯した行為なのに愚痴を零す。  シャワーを浴びる事一つに関しても煽り合っている現状、言葉は汚いが居心地は何故か悪くない。 「なーにが殺すぞ、だ。殺せるモンなら殺してみやがれってんだ」 「なら私がブッ殺す」  煽り言葉に煽り言葉。  終わらないこの問答、在るとすれば両者が飽きた時だろうか。  だが考えてもらいたい。流子の一人称は「あたし」である。  先ほどのブッ殺す発言の一人称は「私」だ。誤字ではない、では誰が?  このマンションはアゲハが住んでいたマンションと同じ構造をしていた。  そのため違和感なく帰宅をしていた、流子を霊体にさせること無く。   「あ、姉貴……なんでッ!?」 「此処が我が家だからに決まってんだろォ!  こんな時間まで彷徨いて女の子連れ込んで殺す?  そんなん私が先にお前をブッ殺すぞォ! 歯ァ食いしばれェ!!」  夜科フブキ、夜科アゲハの姉でありこの家の現トップである。  父は仕事で不在、母は他界。今はアゲハの母親代わりとして教育を。  アゲハは鉄拳をモロに受けそのまま倒れる、何故姉貴が此処に居るのか。  NPCの存在は知っていたがまさか同一個体、それも近しい人物が居るとは想定外だった。 「結構可愛い子じゃん……私はソイツの姉のフブキって言います。  うちの馬鹿が迷惑を掛けたようで申し訳ないねー……それで彼女?」 「「誰が彼女だッ!!」」 「おー息ぴったり」  両者共に赤面しながら叫んでいた。  その後アゲハが説明したのは流子が昔転校した友人だと説明。  姉に「そんな子いたっけ?」と言われるが飛竜の影に隠れていた、と適当な虚位を含み流す。  遊んでいた理由も久しぶりに会ったから、今度からアッシュフォード学園に通う、嘘に嘘を重ねる。  そのまま今後のために流子は家が無い、親も他界している設定で話を進める。  元々流子の両親は既に他界しているがアゲハ知らない、それでも話を進め何とか姉の了承を得た。 「分かった、分かった! 流子ちゃんは家に住みなよ!!  今は親父も居ないしこんな可愛い子がアゲハの彼女なんて……母さんも喜んでいるだろうな」 「「彼女じゃない!!」」 ◆ 「昨日あの後姉貴と纏の奴……散々意気投合して暴れやがって……!  お陰でこっちは寝不足で遅刻コースまっしぐら……チクショー……」  全力ダッシュで校門へ向うアゲハ。  本来ならば言葉一つ漏らしたくは無いが、この不満を止めておく方が圧倒的に身体に悪い。  彼はやむを得ずPSIの一つ――ライズを発動し己の身体能力を一時的に高める。  PSIとは超能力の一種でありライズは身体能力の強化を意味する。  飛躍的な脚力で校門が閉まる前に滑り込む事に成功したアゲハはそのまま玄関へと向う。 「遅い、遅いぞ貴様らァ! 何を弛んでいる、学生の本分を思いだせェ!!」  過ぎ去った校門の方角から女の声が聞こえるが関係ない、そのまま教室へ向う。  呼吸を整えながら教室の扉を開ける、やはりNPC達の記憶は特に思い出せない。  だが生活をしていく中で日常を潜らなければならないのだ。  学園を不自然に休めば感付かれるかもしれない、学園に行かなければ姉貴に怒られる。  様々な事情を抱えたアゲハ一定のリスクを背負いながらも学園に通うことを決断。    席に付くと取り敢えず「うーす」「おはよー」など他愛ない会話を吹き掛ける。  それに対し他の生徒も言葉を返してくる、やはりNPCと言え、普通の人間と大差はないようだ。 「なぁ、一限目はなんだっけ?」 「社会だぞ」 「……あ、忘れちまった」  隣の席の男に次の教科を尋ね鞄を漁るも社会の教科書や参考書の類は入っていない。  そもそも予定が解らなく適当に教科書を鞄に入れたのが問題だった、確率はそう低くないのだが。  適当にやり過ごすか隣に見せてもらうか。手段を考えていると隣の男が席を寄せてきた。 「しゃーねぇな! 見せてやるぜ、アゲハ」 「お、おう……さんきゅー」  とても好意的で有り難いのだが名前も解らなければ完全に初見だ。  この生徒にお礼を言うにも何も情報がない。  しかし名前を知らないのは失礼だ、だが聞くのは更に失礼に当たる。  アゲハは座席表に目を凝らし彼の名前を探し始め、読み上げる。 「ひ・と……ありがとな、人吉!」  人吉善吉――覚えた、特徴的で覚えやすい名前なのは有り難い。  この学園生活の中で、いや人世の中で友の存在は重要である。  聖杯を目指そうが天戯弥勒に辿り着こうが日常が存在しなくては有り得ないのだ。    まずは日常から。  例え天戯弥勒の掌で踊らされていようが今は演じるしか無い。  聖杯戦争だろうが、NPCだろうが彼らは全員生きているのだ、英霊も関係ない。  今だけは、今だからこそ。  日常を噛み締めながら前に進むしか無い――。 【Cー2・アッシュフォード学園・2-A/一日目・早朝】 【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.学園での生活を過ごしながら他のマスターを探す。 2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。 [備考] ※人吉善吉がマスターであると知りません。 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]健康 [装備]箱庭学園生徒会制服 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。 1.まずは学園生活。 2.放課後は生徒会に顔を出す。 3.学園に他のマスターがいないかどうか調べる。 [備考] ※夜科アゲハがマスターであると知りません。 ※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。 ※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています 【垣根帝督@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康、霊体 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:他の奴らを潰し聖杯戦争を勝ち抜く。 1.学園では霊体となりマスターの護衛に務める 2.その後はマスターの意向に従う。 [備考] ※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。
***LIKE A HARD RAIN ◆wd6lXpjSKY  彼らは聖杯を求める、例え不本意な戦争への参加でも願いは在るのが人間。  故に争い、傷つけ合い己の欲に囚われる輩も少なからず存在するだろう。  この空間に存在するのは選ばれた彼らだけではない。  NPC――現実とは異なる今宵の会場には一般市民とも呼べる彼が存在している。  それは限りなく近く、極めて遠い。普段の生活サイクルと変わらない多数の人間。  天戯弥勒の計らいか、それとも嫌がらせかは不明だが参加者は戦争だけを行っていればいいものではない。  学生ならば勉学に励み、社会人ならば生きるために働く……彼らもサイクルに身を置かなければならない。  アッシュフォード学園、例外に漏れず此処にもNPCそして学生参加者が集まる場所だ。  構成は中等部と高等部に別れておりその規模は予想よりも遥かに大きい。  参加者の全学生が此処に学籍を置いているかは不明だが、零ではない事は確かである。  その一人、人吉善吉もまたアッシュフォード学園に籍を置く高校生である。  本来の彼は箱庭学園に通う生徒であり高校一年生であったがそれはアッシュフォード学園でも変わらない。    学園には多数の生徒で構成されているため制服にも統一は無く様々制服が許されている。  これによりアッシュフォード学園の生徒ではない善吉も箱庭学園の制服で通うことが可能だ。  元々可能だが一人だけ異なっている制服だとどうしても目立ってしまう。  もし学園に他のマスターが居れば遅かれ早かれ警戒されてしまうのが現実だろう。  ……最も彼の制服の着こなしは中にジャージを着こむ、曰く「デビルスタイル」なため何方にせよ目立ってしまうが。  そして何かの縁か彼のアッシュフォード学園での役割は本来の彼と同一だった。  つまり、アッシュフォード学園生徒会庶務の座に位置していた。  天戯弥勒の用意したと仮定されるこの世界ではある程度参加者の現実が反映されるらしい。  けれど此処は彼の在籍していた学園ではないため、生徒会の構成メンバーも大きく異なるだろう。  人吉自身も生徒会にどんな人物が居るかは把握出来ておらず、現在分かるのは生徒会長のみだった。  無論彼の知っている生徒会長ではなく、もし「彼女」がNPC或いは参加者であったならば。  彼は全力で彼女に挑んでいた事だろう……この学園では『生徒会長が二人存在』していた。    していた、である。  その一人は現在留学中である。事の始まりは選挙に置いて二人の女性が同率一位となってしまい現在に至る。  仲は悪くなく、互いが互いに協力し別の方向から学園を支え、アッシュフォード学園を運営していた。  最も彼女らの下の派閥――簡単に表せば下っ端な信者たちは何時も争っていたらしいが。  人吉の記憶にはこの生徒会長に纏わる記憶は残っていたらしく、顔と名前までハッキリと解る。  留学中の生徒会長はミレイと呼ばれる女性でとても魅力的な、行動力溢れる女性だった事は覚えている。  しかし会長を除く副会長や書記の名前や顔は全く覚えていないため、早急に把握する必要があった。 「そのために朝早めに来て机上札でも見ようと思ったけど……ないな」 「ああ、ないな、あぁ……眠ぃ」  普段より早め、と言っても数十分程度だが人吉は学園に足を運び生徒会メンバーを把握しようとしていた。  しかし席はあるものの肝心の名前が記されているものが無く、無意味、それも自分の席すら解らない。  これでは何一つ解らなく、彼がする事と言えば日課である咲き誇る花達の手入れだった。 「お前、案外メルヘン好きか? デビルとか言いながら頭ン中はファンタジーってか?」 「そんなんじゃないから。  ……まぁ花を手入れする……カッ! 結構な設定じゃねぇか!」  アサシンもまたマスターである人吉に同行し学園に足を運んでいた。  やはり他の生徒にマスターが混じっている可能性は否定出来ないため護衛として、サーヴァントとしての役目を。  聖杯に至るにはマスターの護衛も重要な点であり、彼を一人にする事は無謀だ。  その間にマスターがサーヴァントに襲われたならば……結果は見えている。最もアサシンである垣根帝督は興味半分で学園に付いて来たのだが。   「設定? あぁお前は本来この学園の生徒じゃないんだったな」  そう呟くと乾いた嗤いの後、アサシンは再び霊体に戻る。  人吉善吉はアッシュフォード学園の生徒会にて庶務。  その職務の一つに花達の手入れ……これはまるで彼が知る本来の生徒会長だった。  多くは語らないがその存在は彼にとって「最愛で最大な最も近しい存在」だった。そう、だった。 「まぁ悪くはない……かな?」  何の因果かそれはめだかちゃんの――そうか、此処にめだかちゃんは居ない、か。  それだけ解れば彼には収穫と言えるかもしれない、情報はまた集めればいい。 「朝からご苦労だな、人吉善吉」  花の手入れをしていた人吉、彼はアサシンと二人で生徒会室に居た。  気が付けば時間も大分過ぎており遅刻ギリギリ組以外は登校していても可怪しくない時刻だ。  聞こえた声の持ち主は女性、それも人吉が把握している数少ない情報の生徒会長だった。 「手入れも大切だが遅刻するなど本来の役目を忘れるな、早く教室へ向かえ」 「解りました、鬼龍院生徒会長」    白いセーラー服……と表わすのが一番だと思われる制服を着た女性。  彼女こそが生徒会長の一人であり、ミレイ会長が留学している今、実質的な学園のトップ。  その名も鬼龍院皐月、長い黒髪の女性、そこには「凛」と言う文字が似合うかもしれない。   「ならば早く教室へ……鍵は私が閉めておく」 「お言葉に甘えさせてもらうぜ、生徒会長さん!」 「――待て」  高圧的な印象を与える彼女だが実際は優しい一人の学生だ。  しかし昔、人吉には解らないが中々の恐怖政治を行っていた噂もあったらしいが……。  そんな彼女は人吉を引き止める、勿論彼に心当たりなど存在しない。  学園での役割は生徒会庶務、しかし彼が彼の自覚を持って学園に通うのは今日が初めてだ。  今までの人吉という存在が何をしていたか、把握出来ているはずない。 「今――お前以外に誰か居なかったか?」 「き、気のせいじゃないっすか? んじゃ、お先に失礼するぜ!」  サーヴァントの気配でも感じ取ったのだろうか、鬼龍院皐月は空間の所在を問うた。  人吉の回答は否定、まさか鬼龍院皐月はマスターで心理戦を……令呪が見えないため違う、と思いたい。  人吉の令呪は腕をなぞるように宿っており制服を着ていれば隠せる。  逆に彼は鬼龍院皐月からサーヴァントの気配を感じないため彼女をマスターから除外した。  そして時間も危ういため早足で教室へ向かった。 「気のせい――か。そうだろうな、私は何を言っている……」  そして鬼龍院皐月はマスターではなくNPCである。  この空間では主役になれないモブに過ぎない舞台の演出装置が限界。  彼女の元、オリジナルの鬼龍院皐月の強すぎる力が何か感じ取ったのだろう、無意味だが。  そして彼女も生徒会室に鍵を閉め、この場を後にした。 ◆ 「おい、遅刻するって! もっと速度出ないのかよ!? お前それでも英霊か!?」 「るせぇ!! あたしはテメェの執事じゃねぇんだよ! ほら、学園は目の前、とっとと走れ!!」  時刻は始業まで時間が少なく呑気に歩いていたら遅刻は確実だった。  バイクを走らせ罵倒しあう男女、女性が運転し男は学園に近づくと飛び降りた。  彼らもまた聖杯に召された――いや、天戯弥勒に召されたと表現するのが正しいか。  マスターである夜科アゲハ、そしてセイバーである纒流子だ。 「まぁ礼は言っておく! ありがとな! それとくたばれ纏!」 「そっくりそのまま返すぜ、アゲハ……ケッ!」  彼らは主従関係ではあるが本人達の意向によりその壁を失くしている。  同じ志を持ち、共に戦い抜くならば、より対等な立場で望むのが彼らには合うようだ。  最も実際に「セイバー」だの「マスター」だの呼んでみたら何だが痒くなってしまい止めたのが一番の理由だが。  セイバーのクラススキルである騎乗によりバイクの運転も――纒流子は元々バイクの運転技術を持っていた。  それはアゲハのを軽く超え、アゲハに免許は無いがセイバーに運転して貰う方が圧倒的に時間の短縮が出来た。  互いに互いを煽り合いながらも絆は存在しているようだ――恥ずかしくて表には出さないが。 「さて……こっからあたしはどうっすかな」  アゲハを送り届けた纒流子はこれからの予定を考えていなかった。  本来ならば霊体となってマスターの傍に居るべきだが……。 『霊体になるってあんま好きになれねえんだよなぁ』 『外から見えないのに傍に居るって怖くね?』  これも本人達の意向で――最も遅かれ早かれ纒流子は学園に向かうのだが。  何か合ったら駆け付ける。これがアゲハ達の指針である。  そのため早く学園に向うべきだが、別に急がなくてもいい、纒流子はそう思っている。  根拠は無い、無理矢理つけるとすればこの空間を走り回り把握する事だろうか。  土地勘が無いため夜間の戦闘などで不備が生じるかもしれない。  勝ち抜く、生き残るためにはどんな手段でも使わなければならない。 『野望のためならばどんな手段でも使う』――彼女の姉の言葉だ。  ならば纒流子もその言葉通りこの聖杯戦争を生き残るためにどんな手段でも使うだろう。  厳密に言えば彼女に願いはなく、あるとすればアゲハに聖杯を捧げる事。  それでも、それでもだ。彼女は止まらない。 「んじゃ、適当に時間潰してから教室に向うとするか」  バイクに跨ると、彼女は再び走りだした。 【C-2・アッシュフォード学園前/一日目・早朝】 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]健康 [装備]なし [道具]バイク@現地調達(盗品) [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.適当に時間を潰す。 2.その後学園に向かい、アゲハの傍へ。 [備考]  そもそも何故アゲハは遅刻になりかけているのか。  それは昨夜に原因が在った。 ◆ 「ったく……さっさと寝るわ」 「その前にシャワー貸してくれよ」 「おう……って英霊はシャワー浴びるのか?」 「当たり前だろあたしだって女だ、殺すぞ」  深夜の中バイクを意味も無く走らせていたアゲハと流子。  満足したのか、家に帰宅して早々自分達が犯した行為なのに愚痴を零す。  シャワーを浴びる事一つに関しても煽り合っている現状、言葉は汚いが居心地は何故か悪くない。 「なーにが殺すぞ、だ。殺せるモンなら殺してみやがれってんだ」 「なら私がブッ殺す」  煽り言葉に煽り言葉。  終わらないこの問答、在るとすれば両者が飽きた時だろうか。  だが考えてもらいたい。流子の一人称は「あたし」である。  先ほどのブッ殺す発言の一人称は「私」だ。誤字ではない、では誰が?  このマンションはアゲハが住んでいたマンションと同じ構造をしていた。  そのため違和感なく帰宅をしていた、流子を霊体にさせること無く。   「あ、姉貴……なんでッ!?」 「此処が我が家だからに決まってんだろォ!  こんな時間まで彷徨いて女の子連れ込んで殺す?  そんなん私が先にお前をブッ殺すぞォ! 歯ァ食いしばれェ!!」  夜科フブキ、夜科アゲハの姉でありこの家の現トップである。  父は仕事で不在、母は他界。今はアゲハの母親代わりとして教育を。  アゲハは鉄拳をモロに受けそのまま倒れる、何故姉貴が此処に居るのか。  NPCの存在は知っていたがまさか同一個体、それも近しい人物が居るとは想定外だった。 「結構可愛い子じゃん……私はソイツの姉のフブキって言います。  うちの馬鹿が迷惑を掛けたようで申し訳ないねー……それで彼女?」 「「誰が彼女だッ!!」」 「おー息ぴったり」  両者共に赤面しながら叫んでいた。  その後アゲハが説明したのは流子が昔転校した友人だと説明。  姉に「そんな子いたっけ?」と言われるが飛竜の影に隠れていた、と適当な虚位を含み流す。  遊んでいた理由も久しぶりに会ったから、今度からアッシュフォード学園に通う、嘘に嘘を重ねる。  そのまま今後のために流子は家が無い、親も他界している設定で話を進める。  元々流子の両親は既に他界しているがアゲハ知らない、それでも話を進め何とか姉の了承を得た。 「分かった、分かった! 流子ちゃんは家に住みなよ!!  今は親父も居ないしこんな可愛い子がアゲハの彼女なんて……母さんも喜んでいるだろうな」 「「彼女じゃない!!」」 ◆ 「昨日あの後姉貴と纏の奴……散々意気投合して暴れやがって……!  お陰でこっちは寝不足で遅刻コースまっしぐら……チクショー……」  全力ダッシュで校門へ向うアゲハ。  本来ならば言葉一つ漏らしたくは無いが、この不満を止めておく方が圧倒的に身体に悪い。  彼はやむを得ずPSIの一つ――ライズを発動し己の身体能力を一時的に高める。  PSIとは超能力の一種でありライズは身体能力の強化を意味する。  飛躍的な脚力で校門が閉まる前に滑り込む事に成功したアゲハはそのまま玄関へと向う。 「遅い、遅いぞ貴様らァ! 何を弛んでいる、学生の本分を思いだせェ!!」  過ぎ去った校門の方角から女の声が聞こえるが関係ない、そのまま教室へ向う。  呼吸を整えながら教室の扉を開ける、やはりNPC達の記憶は特に思い出せない。  だが生活をしていく中で日常を潜らなければならないのだ。  学園を不自然に休めば感付かれるかもしれない、学園に行かなければ姉貴に怒られる。  様々な事情を抱えたアゲハ一定のリスクを背負いながらも学園に通うことを決断。    席に付くと取り敢えず「うーす」「おはよー」など他愛ない会話を吹き掛ける。  それに対し他の生徒も言葉を返してくる、やはりNPCと言え、普通の人間と大差はないようだ。 「なぁ、一限目はなんだっけ?」 「社会だぞ」 「……あ、忘れちまった」  隣の席の男に次の教科を尋ね鞄を漁るも社会の教科書や参考書の類は入っていない。  そもそも予定が解らなく適当に教科書を鞄に入れたのが問題だった、確率はそう低くないのだが。  適当にやり過ごすか隣に見せてもらうか。手段を考えていると隣の男が席を寄せてきた。 「しゃーねぇな! 見せてやるぜ、アゲハ」 「お、おう……さんきゅー」  とても好意的で有り難いのだが名前も解らなければ完全に初見だ。  この生徒にお礼を言うにも何も情報がない。  しかし名前を知らないのは失礼だ、だが聞くのは更に失礼に当たる。  アゲハは座席表に目を凝らし彼の名前を探し始め、読み上げる。 「ひ・と……ありがとな、人吉!」  人吉善吉――覚えた、特徴的で覚えやすい名前なのは有り難い。  この学園生活の中で、いや人世の中で友の存在は重要である。  聖杯を目指そうが天戯弥勒に辿り着こうが日常が存在しなくては有り得ないのだ。    まずは日常から。  例え天戯弥勒の掌で踊らされていようが今は演じるしか無い。  聖杯戦争だろうが、NPCだろうが彼らは全員生きているのだ、英霊も関係ない。  今だけは、今だからこそ。  日常を噛み締めながら前に進むしか無い――。 【Cー2・アッシュフォード学園・2-A/一日目・早朝】 【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.学園での生活を過ごしながら他のマスターを探す。 2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。 [備考] ※人吉善吉がマスターであると知りません。 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]健康 [装備]箱庭学園生徒会制服 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。 1.まずは学園生活。 2.放課後は生徒会に顔を出す。 3.学園に他のマスターがいないかどうか調べる。 [備考] ※夜科アゲハがマスターであると知りません。 ※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。 ※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています 【垣根帝督@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康、霊体 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:他の奴らを潰し聖杯戦争を勝ち抜く。 1.学園では霊体となりマスターの護衛に務める 2.その後はマスターの意向に従う。 [備考] ※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。 ---- |BACK||NEXT| |015:[[悪魔の証明]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|017:[[Vのため闘う者/老兵は死なず]]| |018:[[ゴムと反射と悪党と]]|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|019:[[ONE WAY HEART]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |002:[[夜科アゲハ&セイバー]]|[[夜科アゲハ]]|031:[[光の屋上 闇の屋上]]| |~|セイバー([[纒流子]])|022:[[気絶するほど悩ましい]]| |013:[[人吉善吉&アサシン]]|[[人吉善吉]]&アサシン([[垣根帝督]])|031:[[光の屋上 闇の屋上]]|

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