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英雄たちの交響曲」(2017/11/12 (日) 17:12:28) の最新版変更点

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***英雄たちの交響曲◆A23CJmo9LE 爆音と閃光を背に駆けるバイク。 跨るのは緑色の服の青年と、紫色の服の少女。 市街地のただなかをまっしぐらに走る。 「どうやらマスターの方も追ってきてるわね」 魔法によって強化した視力で彼方を見るほむら。 接触した敵マスターの姿は見えないが、人形が蠢いているのは確認できる。 人形の戦力はバーサーカーと比すれば誤差程度。狂化したサーヴァントに巻き込まれる危険も考えればわざわざ同行するうま味は極めて薄い。 だというのにこちらとの距離を取ろうとしないということは、あのマスターの意思だ。 「そうね。敵は私たちだけではないもの」 むこうはこちらが美樹さやかの援護を拒絶したことを知らないはずだ。 もしもバーサーカーと離れたところを美樹さやかが襲撃する手はずだったとしたら、自らのサーヴァントと距離をとることは即ち死を意味する。 銃火器であっけなく破損する人形など、美樹さやかの連れた悪魔染みたバーサーカーの手にかかれば紙のように引きちぎられてしまうだろう。 「なら、まだチャンスはある」 奴らがこちらを逃がさない限り、こちらも奴らを逃がさない。 なんとしてもここで決着を。 「セイバー。足止めと言っていたけど、少し方針変更。あなたもあのマスターを仕留めることに全力を注いで」 バイクに手を置くと紫色の魔力が車体を包む。 運転手の手を離れ、加速する。 「操作と援護は私が。操縦と攻撃をお願い」 左手をバイクに触れさせながら後ろの敵へ見定める。 右手に盾から取り出した拳銃を構える。 対戦車ライフルや携行砲でもあれば些細な壁や人形など無視できるのだが、致し方ない。 牽制気味にいくつか発砲。 「■■■――!!」 当然狂戦士は立ちふさがる。 銃を構えた瞬間には足先を変え、引き金に指をかけた瞬間にはその軌道に向かって跳び、銃声が響いた瞬間には銃弾に触れていた。 そして『反射』する。 放たれた銃弾が180°向きを変えて真っすぐに射手のもとへと機械的に舞い戻る。 込めた殺意も諸共に、さらに狂戦士のそれを上乗せして。 そのままなら銃口に撃ち込まれ、銃を破壊してさらにほむらに当たったであろう銃弾。 最悪さらに貫通してガソリンタンクを撃ち抜けば爆発もあり得た。 その未来を、剣士は断ち切る。 宙空を奔り来る弾丸に刃を滑らせ、左右に真っ二つにして躱す。 すでに時速100kmは超えている不安定なバイクの上に立ち、それでも絶妙の剣技を魅せるリンクに内心感嘆するほむら。 ほむらが一息つく間にもリンクは動く。 即座に弓を構え、敵マスターに向けて一矢、二矢と放つ。 ほぼ同時に残心もなく後ろ手にハンドルを操作して僅かにバイクの軌道を変える。 放った矢はこれもまた牽制。 乗機の速度は人の追いつけるものをとうに超えているが、あのサーヴァントならばすぐに距離を詰めることができる。 マスターへの防衛に徹させていなければ、逆にこちらのマスターが危機に陥る。 そうして放たれた矢は牽制といえど、マスターを死に至らしめるには十二分なもの。 当然バーサーカーはその弾道に立ちふさがり、矢を跳ね返してくる。 それを最低限バイクを操作して躱し、再び弓を構える。 このまま千日手が続く膠着戦になるかと思われた。 そうなればほむらと雁夜の魔力量、リンクと一方通行の消耗の差からほむらたちが有利であったろう。 そうなることを予期したか。 一方通行が大きく動く。 「■■!!」 後方にいる雁夜を守るために跳躍していた高度。 その位置エネルギーが重力、引力によって落下する運動エネルギーへと変わる。 着地の瞬間に最大となったそのエネルギーの向きを変え、落下する速度のままに真横へと高速移動する。 バイクに追いつくため? 否、その勢いのまま腕を道に立つ家屋へと突き立てた。 そして 「■■■――!!」 大地を震動させ、家屋を投擲。 建物としてはさほど大きい部類ではない一戸建てだ。 しかし、人力はおろか投石器をもってしてもその千分の一のサイズを飛ばすことすらできはしない。 ベクトル操作で家屋にかかる重力、引力、自転に伴う遠心力など様々な力を集約され、放たれた魔弾。 一方通行の手にかかれば万物が凶器となる。 未元物質のように物性を歪める必要などない。 超電磁砲のように磁性体にこだわる必要もない。 道端の小石を蹴るだけで、コーヒーの空き缶をポイ捨てするだけで容易く人を殺せる。 だがそんな小物、サーヴァントならば容易くはじく。 だが、建物規模の巨大な弾丸ならば。 盾で受けようと、受けきれなかった箇所が崩れ被弾するだろう。 剣で刻もうと同様だ。 そして巨大な弾丸は視界を覆い、射線を塞ぎ、敵の狙撃を妨害する。 そんな城砦を矛とし、盾とする暴挙にはほむらもリンクも瞠目した。 (冗談が過ぎるわ……!) ハンドルを切って回避する?大きすぎる。躱しきれない。 加速して逃げる?飛来物の規模の割に速すぎる。 一瞬でほむらの思考を諦めが埋め尽くす。 それを横目にリンクは跳んだ。 驚きはした。気圧されもした。だがそれはあくまで一瞬に満たない刹那。 避けるのも受け止めるのもできないならば、迎撃するのみ。 両の腕に黄金色のグローブを光らせ、迫りくる巨大な弾丸に飛びかかる。 飛来する家屋と、小さな緑の影が空中でぶつかる。 「ぅっ……!」 霊体であるサーヴァントに現世の物体で干渉はできない。 いかに高速、超重量の物体であろうとそれが神秘を持たないならダメージは与えられない。 だがそこに秘められた莫大なエネルギーがゼロになるわけではない。 衝突時のすさまじい反動に体ごと持っていかれそうになり、小さく悲鳴を上げる。 だが屈することはできない。 この一撃を許せばほむらへのダメージは甚大、耐えたとしてもバーサーカーの追撃から生き延びるのは絶望的になる。 ――――なんとしても、防いでみせる。 「は、ああああああああっ!!」 グローブをはめた腕に満身の力を籠め。らしくもなく高らかに雄叫びを上げ。迫りくる死の脅威を投げ返す。 ――――今度は、そちらが震える番だ。 真っすぐに軌道を変え、投げ返された建造物。 それが今度は雁夜の脅威となる……その前に。 中央から真っ二つに割り砕かれ、地に落ちる。 「■■■――!!」 その割れ目から顔を見せたのは白い髪の悪鬼。 この男にとって、飛礫は矢ではなかった。盾でもなかった。 ただ自分が近づくための目くらましとして、砂をかけるような感覚で家屋を放り投げたのだ。 空中で身を躱すすべのないリンクに一方通行の魔の手が迫る。 触れれば最後、命の流れを乱され死に至る毒手。 それを目前にリンクは取り出したバクダンを小さくトス。 爆発までの数秒を待つまでもなくそれに蹴りを入れて炸裂させる。 響き渡る爆音、閃光。 一方通行にそれによるダメージは与えられない、そんなことはもう分かっている。 目的は攻撃でなく回避。 爆風を利用してあえて吹き飛ばされ、射程から逃れる。 粉塵と爆炎による目晦ましもあり、ダメージと引き換えに僅かに体勢を整える機会を得る。 吹き飛ばされながらも弓を構え、即座に放つ。 僅かに残った爆炎をくぐらせ、炎の矢となった一撃が三度雁夜に向けて放たれた。 だが一方通行が腕を一振りすると塵旋風が巻き起こり、矢の軌道を大きく変える。 ――――攻防一体で隙がない。 妖精ディンの聖なる炎や、魔王も射貫く光の矢ならあるいは効くのだろうか。 ダイゴロン刀ならば切り伏せるのか。まことの眼鏡で見れば何かわかるのか。 無いものねだりをしてしまう自分に歯噛みしながらも次の方策を練る。 爆炎を切り裂いた白のバーサーカーと視線が交錯した。 『マスター、時を!』 瞬間、ロングフックを先を行くバイクに向けて飛ばす。 ハンドルに絡んだ鎖をほむらが掴む感触と同時に、世界のすべてが静止する。 ――――マスターソードを初めて引き抜いたあの時と、よく似た感覚。世界の流れから切り離される孤独感。 『セイバー、どうするつも――』 バイクごとマスターをロングフックで引き寄せる。 下手に距離を取るよりすぐそばで守った方が安全なのはこちらも同じだ。 そしてバイクから引き下ろして座席部分にバクダンを積み込むと察したらしく、再び機馬に魔力を走らせ始める。 ボウリングの要領で加速させ投げ出すと、静止した時の中で加速と炸裂の時を待つ簡易ボムチュウの出来上がりだ。 人形に切り裂かれて、新たに調達したばかりの足を失うのは少し惜しいがそうも言ってられない。 さらに砕けたビルの欠片で手ごろなものを見出し、金のグローブの力で投擲する。 バイクと同じように空中で止まるが、これで二手打った。 だがそれで限界だ。 最後にせめてもの抵抗とバーサーカーの視界から外れたところで。 時は動き始めた。 「■■■――!!」 咆哮。駆動音。風切り音。 響き渡る戦場の喧騒を尻目に静かな、どことなく悲し気な旋律が『時を操りし王家の秘宝(ときのオカリナ)』から響く。 それとともに噴き出すは無限の虚無、どこまでも深い闇。 ――――返り血と血縁、二つの血にまみれた漆黒の忠義は、ある意味では間違いなく時の勇者と時の賢者の関係より強固な繋がりだった。 血塗られた闇の歴史すら呑み込む壮大な器は、同時に罪人を捕らえる牢獄ともなる。 彼女の一族の覚悟と罪を、自分もまた背負おう。 闇を導き、暗黒面を暴く罪深き旋律……『闇のノクターン』が奏でられた。 「■■!?」 闇がバーサーカーに纏わりつき縛りあげる。 能力の上からでも関係ない圧迫感。かつて天使や同僚から感じたプレッシャーに近似するそれ。 『反射』をすり抜け、霊体を縛る力を本能的に『魔術』であろうと狂化した頭脳で認識する。 しかし認識できたところで、それだけだ。 一方通行にこの闇は破れない。 効果が切れるまでの数秒、その場を動くことはできず、その数秒で投げられた爆弾付きバイクと瓦礫は雁夜のもとに到達する。 それだけならまだ防ぎようがある。 だが緑のセイバーが雁夜に向けてフックを飛ばしているのが目に映る。 王手だ。 もしサーヴァントの接近を許せば雁夜の残り少ない命の灯火はその瞬間に掻き消える。 予測ですらない確実な未来の訪れを阻まねば、二人の聖杯戦争はここで終わってしまう。 追い込まれた状況で、闇にとらわれ手も足も出せない一方通行は 『歌った』 「■■……■…ァ、嗚呼アアアアア!!!」 始めは意味のない叫びだった。 だがすぐにそれは悲し気な旋律を紡ぎ始める。 狂化によって失った言語機能を、常人には決して行えない特殊な呼吸を、持ち前の能力によって補い。 喉だけでなく全身で振動を大きく震わせ、口から特殊な音声を発する。 それはかつて第三次世界大戦で習得し、レイヴィニア・バードウェイに学ぶことにより習得した技術……魔術の行使。 能力者でありながら肉体のすべてをコントロールし、ギリギリのバランスで反動を抑える神業。 それによって紡がれた音楽は、つい先ほど戦場に流れたメロディ……『闇のノクターン』。 「ッ!」 その曲が流れた驚きに一瞬動きが鈍るリンク。 次の瞬間には一方通行に纏わりついているものとほぼ同質の闇が、ほむらとリンクを捕らえた。 失態に歯噛みする。 自分もシーク、いやゼルダ姫から一度聞いただけだが、それでも戦場のただ中で即座にそれを真似て見せるなど。 ましてや楽器もなく演奏……いや詠唱するなんて。 動揺し、捕らわれはしたがリンクの対魔力ならば即座に拘束を抜けられた。 しかしほむらに纏わりついた闇は容易くはいかず、剣によって切り裂くのを余儀なくされ、一時縛られたことでロングフックによる移動にも失敗した。 炸裂音が響く…走らせたバイクが敵マスターに届く前に迎撃される音。 破砕音が響く…投げた石が人形を盾に防がれる音。 雄叫びが響く…捕らわれた白い獣が自由になった証明。 解放されたのはリンクも一方通行もほぼ同時。 そして互いに間を阻むものも、利用できる決定的な何かもなかった。 どちらが先に敵の霊核か、あるいはマスターを仕留めるか。 自身の技量のみが頼みのクイックドロウ。 一方通行がリンク達に向かって。 リンク達は間桐雁夜に向かって踏み出そうとした瞬間。 どん!!! と、地面が揺れる音。 突然の地震とそれに伴う衝撃で、家屋がいくつか倒壊する。 ただでさえ二組の主従と自動人形の戦いで蹂躙された街並みはもはや原型なく、崩落した家の向こうにはうっすらと海が見える。 ……北上した地、麒麟殿温泉への道がそこには開けていた。 間桐雁夜は、建物の影から巨大な刃が視界に入るのを確認した。 暁美ほむらは、夕刻に川下で感じたサーヴァントの魔力を再び感知した。 リンクは白いひげを蓄えた、堂々と構える親友以上の巨漢を見据えた。 そして一方通行は―――― ◇  ◇  ◇ 不気味な形相を浮かべた月が世界を見下ろす。 波の音を聞きながら一組の男女がそんな夜空を遣る瀬無さげに見上げていた。 ハニーブロンドの美しい少女と、白いひげを蓄えた大男。 住む世界も纏う空気もまるで違う二人が、小さなホテルのベランダに並んでいる少々歪な情景。 互いのマスターは隣同士に二部屋取って眠りについている。 何かあった場合にすぐ動けるよう部屋は一階をとり、服装や荷物などはあまりリラックスしたものではないが、それでも休みを取らないよりは随分ましだろう。 二人が眠りについてしばらくして天戯弥勒の通達を耳にした。 発せられた情報はアサシンの脱落と突然のタイムリミット。 論じた。 通達は定期的に行われるのか、あるいはサーヴァントが脱落するたびに行うのか。 監視の手間や行われたタイミングを見るに定時、おそらく12時間刻みだろうと推測。 突然の異様な月の意味。 まずあれは天戯の狙ったものなのか、意図せず生じた障害なのか、織り込み済みのバグなのか。 狙ったのならその目的は。 参加者を急かすためか。単に焦れただけなのか、三日以上留まられては困る理由があるのか、急がせなければならない問題が発生したのか。 焦れたのなら、まあいい。 この聖杯戦争の会場に問題があり、三日持たない。 参加者に不穏な動きがあった。あるいは参加者以外…… 想定できる可能性は様々で答えは出ない。 会議は踊るが実のあるものではなく、結論は出せなかった。 では通達が来たから刑兆たちの考えていたように移動を開始するかというとそうもいかない。 マスター二人が眠りについてから、ナワバリを設定してから、派閥を広げ始めてから数時間も経たないうちに拠点を変えるのは賢明とは言い難い。 ニューゲートと刑兆はまだいい。 ナワバリから少なからず得た力あり、健康体である刑兆も仮眠と思えば十分な休養だ。 しかし伊介は回復しつつあるといっても半病人であり、操祈にもダメージがあるうえ、NPCの配置、大移動は改めて行うには手間がかかる。 結局眠るマスターを横目に、操祈がNPCを走らせながら朝を待つことになった。 ニューゲートは外界を見下ろし、操祈は携帯端末からニュースサイトやSNSで情報収集をしている。 (アッシュフォード学園の女生徒誘拐。これは私たちがやったことよね。犯人は未だ逃亡中、追跡に参加した警官一名が負傷。何らかの凶器を持っている可能性が高く注意、ねえ☆  犬飼さんの顔とかが出回ってないのは助かるわあ。被害者もそろって未成年だし、そういう自制が働いてるのか。あるいは誰かがもみ消しているのか) 人の流れを操作するのは専門だが、電子の海でのそれとなると些か苦手になる。 御坂美琴や雲川鞠亜の方が向いているだろうし、そうした方向に気を配る必要がないのはありがたい。 (……でも多分これ他の事件にかき消されて情報の錯綜力が増してるだけよね。  市街地での爆発事件、車にバイクに自転車の盗難、病院付近で多数の銃声、あげくにアッシュフォード学園倒壊って……  学園都市でもここまで治安力悪くないわよぉ) いくつかは自分の関わった事件であるが、知らないところでも聖杯戦争は激化しているらしい。 調べるほどに参加者を急かすような事態に陥ったとは思えず首をかしげるが、それはそれと噂を洗う。 まばたきをしない宇宙人が市井に紛れている、街の西側郊外の森に入り込んだ人は魔物になる、平原で死んだカリスマダンサーの霊が夜な夜な踊りをおどる、etcetc 「おう、なんか面白いのあったかい?」 興味を持ったのか画面をのぞき込んでくるニューゲート。 そのタイミングで調べていたのは 「学園崩壊。その犯人はなんと巨人、ねえ」 「眉唾力全開、って感じ?」 写真も添付されていたが、かなりの距離から撮られたものらしく時間帯が夜なこともあってはっきりしない。 建物の内部から飛び出した巨大な人影、に見えなくはないが 「15~6mってトコか。巨人族としちゃ小さめだな」 「え?」 「あ?」 情報リテラシーについて言いたいことはあるがさておき。 巨人を実際に見たような発言で、しかも常人の10倍近い体躯を小さめとは。 「…もっと大きいの?」 「20mくらいはザラにいる。まあ小さ目ってのは言い過ぎか。なにせ4、50mクラスのを知ってるとこれくらいは小さく見えちまう」 「現代に生まれてよかったわあ。興味はあるけど会いたくはないもの☆」 ダビデ王が首を撥ねたゴリアテですらたしか3m程度。15mで小さいとは。 伝承に語られる巨人の多くはゴリアテ含め先端巨大症の兵士に勝ったのを威権のために大げさに語ったとか、大軍を相手にしたことの比喩だとか思っていたが、実際に巨人だったのだろうか。 (まあ目の前のこのライダーも十分に巨人だけど) 操祈の身長とほぼ釣り合うような膝下のサイズにも慣れてはきたが、やはり圧巻される。 その巨躯を見上げると視線は交わらず、画像を向いているのがわかった。 「背景の月にまだあの悪趣味な面が浮かんでねえ。通達のあった日付が変わる前だな」 「学園の立地から月の位置する方角も何となくわかるけど、そうね。南中はしてないわあ」 「学園倒壊ってのは何時ごろだか分かるか?」 「やっぱり日付が変わる前みたいねえ。そのくらいに話題力に上がってる」 画像の時間帯と事件の時間帯が一致してしまう。 ……本当に巨人がいるのか。 「巨人を喚ぶ宝具?あるいは巨人になる宝具?」 「安直なのはそこだな。捻くれた案としては平時は小さくなっていて、戦闘時に本来のサイズになるとかか」 「ああ、そっちもあるわね。単に大きいだけで巨人に限らないなら人に化ける力を持ってるだけでもよさそう。  ユミルの子にそんな巨人がいたと思うし、日本にも見上げることで大きくなる天邪鬼やダイダラボッチに近い鬼がいるわあ。  巨人を喚ぶなら、そうねえ。ゼウスから青銅造りの巨大な自動人形を与えられていた愛人エウロペとか?」 いくつかつらつらと名前を上げるが、さすがに伝聞情報のみでは実のあるものにはならない。 ニューゲートが巨人殺しの逸話と巨人召喚の宝具を持ち、どうとでもなるとさほど力を入れていないのもあってなおのこと。 会話が少しづつ減っていき、再び思考が個々のものに戻る。 誰も立ち入ることのない静寂が訪れてしばらく。 突如の砲音。 「オラァ!」 咄嗟にそれを迎撃するニューゲート。 視認と同時に抜き放った薙刀から震動を放ち、弾丸を撃ち落とす。 「キャスター!探れ!」 「もうやってる!いえ、常に警戒力は巡らせてたわよぉ!」 犬飼の体調はともかく、魔力の方は好調なのだ。 学園内の派閥ほどではないが、相当数のNPCを操り、警戒はさせていた。 サーヴァントとして、周囲にサーヴァントの気配がないかは当然気を張ってもいた。 「サーヴァントの気配力は、ない……ならマスター?それとも――」 もしや天戯弥勒か、とも考えるが   「いや、一瞬だがあったぜ。サーヴァントの気配。でなきゃおれも攻撃の瞬間に気づけなかった」 「何よそれ。気配遮断?」 アサシンはすべて脱落したと言っていた。 いや、クラススキルでなく自前の保有スキルで気配遮断を行うとすればおかしくはないのか。 とそこまで思考したところで 「そこか!」 ニューゲートが目の前の空間を殴る。 すると大気にヒビが入り、激しい震動が前方へ射出される。 それを躱すように現れた影。 それは10mはあろうかという、巨大な白いカブトムシだった。 不気味な緑色に輝く瞳、砲塔のように穴の開いた角、無機質な光沢ある純白の異形。 その背、装甲とでもいう部分が開い羽が展開し、高速で振動する。 「覚えているな?」 さながら鈴虫の音色のように、羽音を奏でる。 それによって生じる音がある人物の声を再現した。 「……忘れていたかったわあ」 「俺は忘れてねえ。お前に殺されたのは、たとえ死んでも忘れられねえ屈辱だ」 「あら、あなた世を儚んで自害したんじゃなかったかしら☆」 ドォン!! と、その挑発を合図に再度砲撃音が響く。 カブトムシの角の先端からこの世ならざる弾丸が発射された音だ。 だがその軌道には震動を纏った拳が割り込み、弾丸を砕く。 「おれのナワバリで暴れようってのか、若造」 「てめえに用はねえよ。すっこんでな老いぼれ」 白を基調とした巨漢と異形がにらみ合う。 そこへ再び砲音。 今度は単発でなく数十発の弾丸がカブトムシに襲い掛かり、表面をわずかに損傷させる。 「ちっ、固えな」 「刑兆。起きたのか」 「これだけのバカ騒ぎで寝てられる方がおかしいっての」 起き抜けに即座に攻撃を仕掛け、身支度も万端。 さらに隣室にバッド・カンパニーのうち何体かを向かわせ、疲労困憊のせいで未だに眠る伊介を叩き起こそうとする。 「雑魚が。魔術師なんぞがサーヴァントに何しようが毛ほども感じねえんだよ」 「虫けらに雑魚扱いされたってのは貶されたのか褒められたのかよくわからねえな」 刑兆も加わりすわ開戦かというところで 『刑兆』 『ンだよ、こんな時に』 念話が飛び、歴戦の戦士から若者へと指示が下る。 『建物の中じゃお前は強い。その軍隊は密閉空間で真価を発揮するからな。だがおれの地震は室内じゃ強すぎる……分かるな?』 『ちっ、引っ込んでろってか。分かったよ。逃がすんじゃねえぞ』 スタンドを通じて伊介が寝ぼけ眼をこすり始めたことを確認し、キャスターが周囲を探っているのを直接視認し 「バッド・カンパニー!」 カブトムシに向けて銃撃。 視界を覆うように発火炎を積極的に炊き、それを目くらましに撤退を始める。 カンパニーの数体が伊介を急かし、キャスターを自ら引きずり駆けだすが 「逃げられると思ったのか?その程度でよォ!」 猛進するカブトムシ。 見た目は生物だが、未元物質によって構成されたそれはまともな生態など有していない。 最低限の攻撃機能を有したある種の兵器に生物としての反応は極めて薄く、ひたすらに操祈を殺そうと動く。 「追いすがれると思ったか?おれを放って」 即座にそれを抑えんとするライダー。 一瞬自分のかたきである女の姿に囚われ生じてしまった隙。 それでも垣根帝督の速度なら反応できると思った。未元物質の鎧なら弾き返せると思った。 破砕音。 ガラスのコップが割れるような音を立てて、それこそガラスのコップを砕くような気軽さで。 ニューゲートは純白のカブトムシを踏み砕く。 「おれのナワバリで暴れてんじゃねえよ、ハナッタレが」 『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』。 すでに旗を掲げ、一帯をナワバリとしていた。 NPCも、多数の事件からくる不安ゆえか、操祈の洗脳したNPCの根回しゆえか、それを無意識のうちにするりと受け入れていた。 だからこそ、この地の防衛線においてエドワード・ニューゲートは圧倒的な力を発揮する。 科学の都市が誇る超能力者の産み出した重戦車すら容易く屠るほどに。 「なーんだ♡、終わり?避難するまでもないじゃない」 「「いや、まだだ」ゾ☆」 安心したような声を漏らす伊介に二人のサーヴァントが答える。 「垣根帝督は、この程度じゃ死なない。だから私はマスターを殺さずに念入りに自害を命じたんだゾ」 「そこにいるな。出て来いよ、おれが相手してやる」 地震の余波を受けて崩れかけた建物の影を指す。 数瞬おいて霊体化していた男が像を結ぶ。 天使のように幻想的な白い翼に白い衣装。 垣根提督本体が堂々と姿をさらし……それに続いて数十体のカブトムシも現れる。 「……ファンタジーやメルヘンの景色だな、まるで。似合ってねえぞ」 「自覚はある。俺の趣味じゃあねえよ」 僅かに言葉を交わす。 今度こそ、即座に開戦。 翼を指揮棒のように振るうと、カブトムシの砲門から一斉に弾丸が放たれる。 それをニューゲートが薙刀から広範囲に放った震動で、刑兆が二つ三つ程度だがカンパニーの砲火で迎撃。 『港で待て!』 『さっさと片せよ!』 念話を交わす。 遅れて、迎撃時の爆音が響く。 白い巨体と白い群体がぶつかり合う戦場を3人の学生は必死に離れた。 「ねえライダーから離れて大丈夫なの!?このキャスター、すんごい弱いわよ!」 「いいから走れ!建物から離れろ!」 「伊介病み上がりなんだけど!」 「おれはてめーらなんざどうなろうと構わねえが、親切で避難誘導してんだよッ!  ライダーの攻撃か、そのせいで崩れた建物に巻き込まれたきゃベッドでグッスリしてんだな!」 怒声が響きあうが、それが雑音に成り下がるほどの戦闘音が彼方まで響いていた。 カブトムシの砲撃音に加えて、足元を何度も揺らす悪魔の力。 長く続けば一帯は更地になりかねない。 「ああ、もう!キャスター、あんたまた車とか拾えないの?」 駆けながら話を振る。 しかし返事はない。 刑兆に引き摺られながら能力を行使しているようだ。 「何してんの!?」 「NPCの……避難をぉ、ぜー、ぜー……させてたわぁ」 殆ど自らの足を使っていないがすでに疲労困憊。虚弱が過ぎるのに呆れが走るが 「そんなことよりあたしたちの方を優先しなさいよ!」 「いや、悪ィがそれは重要だ。それがないとライダーのやつがあのメルヘン野郎を取り逃がしかねねぇ」 はぁ!?と伊介がかみつき気味にいろいろとまくし立てるが刑兆は無視して 「港に向かうぞ。そこで待てとよ」 キャスターを担ぎ上げ、バッド・カンパニーを斥候に出しつつ走り続ける。 伊介も仕方なくそれに続く。 (なんで垣根帝督がここに来たのかしらあ?) 運動をやめたことで思考に集中する。 野蛮力の専門は刑兆たちに任せるのならば、自分は頭脳を駆使する。 そのくらいは果たさなければプライドが許さないし……何より自分は役に立つと示せなければ切り捨てられてもおかしくないのだから。 (自害は命じた。それが効いたのは人吉善吉に直接会ったんだからまず間違いないわぁ。  ギリシャの大英雄ヘラクレスだって、マハーバーラタのカルナだって、令呪の命令には逆らえない。  垣根帝督は、あの時間違いなく自害している。未元物質でスペアを作ろうと、一つ残らず死んでいなければおかしいゾ) 操ったNPCを中心に避難誘導に能力を行使しながらも高速思考。 NPCの庇護という点でライダーを援護し、戦況を有利になるよう推論と偵察を進めていく。 (もう一人、垣根帝督が召喚されていた?ならば気配遮断を持っていたところから二重召喚、あるいは歪曲召喚。  ライダーはもういないから、キャスターかバーサーカーの霊器にアサシンの二重召喚スキルを得たか、何らかの処置でクラスを歪められた) 二重召喚のスキルは三騎士のクラスでは活用できない。 まあ垣根帝督にその適正はないだろうが。 可能性はごくわずかながら同一人物が別クラスで召喚され、何らかの理由でアサシンの特性を得た。 だとすればこの垣根帝督のマスターは相当の魔術師だ。 二重召喚もクラスの歪曲も容易くやれるものではないのだから。 (……いえ、違う。生前私が垣根帝督に手を出したことはない、わよね?うん、ないない。  この聖杯戦争で自害させたのが初めてのはず。さすがに別の聖杯戦争の恨みとか言われたら記憶力にございませんとしか言えないけど☆  殺されたのは死んでも忘れない、と言っていた。あの垣根提督は私が殺した垣根帝督だ) サーヴァントは英霊の座に帰ればほとんどの記憶は残らないし、召喚時に別の聖杯戦争の記憶を持つことはごく稀だ。 何者かがこの聖杯戦争で脱落した記憶を保持した垣根帝督を召喚した……? (どうあれ今度のマスターはかなりの腕前力とみて間違いないでしょうねえ。  究極の創造である未元物質を打開するにはマスターをどうにかするしかほぼないしょうし……) 避難させているNPCの何人かを敵マスターの捜索に動かす。 探すのはさほど難しくない。 大多数がライダーの地震を感じて、洗脳したNPCに煽られて避難を始めている。 にも拘らず留まろうとするもの、逆に向かってくるものがいればそれは間違いなくマスターだ。 直接見る者、映像を探る者、それらの情報を束ねていき…… 「うそ…なんでここに」 「あ?なんだ?」 絶句するキャスターの様子を不審がり、刑兆が声をかけるが 「俺が退路を予期していないと本気で思ったのか?」 白いサーヴァントが目の前に立ち塞がっていた。 「俺は俺の臓器を復元・複製できる。脳も含めてな。  てめえや第三位のクローンみてえに主体を必要とせず、ネットワークを構築せずとも個体ごとの活動ができる。  こいつには相応のリスクもあるんだが、問題が生じるまえに殺せば関係ねえ」 血走った眼で操祈のみを見据え、翼を広げる。 刑兆がバッド・カンパニーを展開させるが 「失せな。雉も鳴かなきゃ撃たれねえよ。ギャーギャーうるさくしねえならこの場は見逃してやってもいい」 「敵サーヴァントのそれを信じろってのか?」 「第五位は俺が殺す。それは決定事項だ。だから邪魔するなら容赦はしねえ。  だがお前を俺の手でわざわざ殺してやる必要はねえ。やっても別に構わねえが」 眼中にない。 養豚場の豚を見る方がまだ相手を意識している。 部屋の中に小蠅がいるのを見つけたような眼。 羽音があまりにうるさければ殺すが、そうでないならわざわざ殺すのもめんどくさいというような眼。 ただその目が操祈に向くと漆黒の殺意に染まる。 その眼光を受け止めながらも怯むことなく、真っすぐ睨み返す操祈。 「向こうのあなた、みぃんなライダーに負けたみたいよぉ☆  学園都市の第二位もさすがに史上の英雄と肩を並べるのは難しかったかしら?」 「それがどうした」 「彼ならすぐに合流できる。もし私たちを処理できてもあなたに勝ち目はないでしょ」 「それがどうした」 虹村刑兆は眼中になく、食蜂操祈の言葉には聞く耳を持たない。 「どうでもいいのさ、そんなことは。しいて言うならあれには手出しするなとマスターが言ったってのはあるか。  だがすべては些事だ。さっきも言ったろ?てめえを殺せればそれでいい」 「…あなた、いくらなんでもそこまでこだわるタイプだったかしらぁ?」 翼を構える。 避ける手段など何もない。 「じゃあな。死ね」 「もう、いくら何でも」 「視界が狭すぎ。私みたいに色んな視点でものを見ないと☆」 ニューゲートに蹂躙された未元物質の兵隊の亡骸。 その戦場の跡地に訪れた一人のNPCがいた。 「そこから北へ一撃、建物を撃ち抜く勢いで撃って。南にも同じように、ね☆」 心理掌握によってマスター探索に動いたNPCの一人を通じてライダーに指示を下す。 その攻撃の方向は刑兆たちの向かった先。 敵のいる場所を示す観測主。 ライダーは状況を聞き、両の腕を眼前で交差させ。 左右の空間を殴りつける。 どん!!! と、地面が揺れる音。 ニューゲートが両腕で放った震動が貫通し、建物を崩す。 垣根との戦闘の余波もあり、南北に開けた一直線の空間が出来上がる。 「お前の言う通り道はできたが間に合うもんじゃねェぞ!」 「大丈夫よお☆走る必要なんてない。そういう野蛮力にまみれたことはうら若き乙女やお爺ちゃんには似合わないし。  あ、もう少し右に避けてちょうだい。あなた大きいから、そこにいると道の向こうが見えないかも。それとちょっとお芝居に付き合ってもらうわよ」 まるで道を譲らせるようにニューゲートの位置を動かす。 同時にNPCの手に持たせていた銃、暁美ほむらの残したベレッタを向ける。 サーヴァントに何の効き目もない銃を向けられたところで警戒するまでもなくニューゲートは困惑を深める。 何となく南の方を向いてみると、緑色の服をまとったサーヴァントらしき存在が視界に入った。 垣根提督は突如できたその道に反射的に目をやった。 突如発生した攻撃の出本を確かめる、そんな意図があったかもしれないし、なかったかもしれない。 そんな思考はあったとしてもすぐに消え去った。 「は…はは」 失笑。 意識せず口の端から笑いが漏れた。 目の前にいるのは食蜂操祈だ。もうそんなものはどうでもいい。 崩れた建物の向こうにはやりあっていたライダーがいる。邪魔だ、放っておけ。 その先。 その向こう側にいる。 ああ、何度死のうと殺されようとも忘れるものか……! 気配を感じられない距離だが、かなたに見える風貌だけで十分。 「一方通行ァァァァァァ!!!!!」 轟!! と翼を翻し、他のすべてを無視して翔る。 対して男は、応えた……かに見えた。 しかしその実一方通行の視界に入っていたのは垣根帝督でもエドワード・ニューゲートでも食蜂操祈でもなかった。 操祈に操られ、ニューゲートに指示を出したNPC。一方通行と垣根提督の間に立つ少女。 それはベレッタという小さな拳銃を構えていた。 操祈が纏うべき、常盤台中学の制服を着せられていた。 髪型は茶色のショートボブだった。 奇妙なゴーグルのようなものをつけていた。 総じて、かつて10000人以上殺した、守ると誓った少女たちの姿に極めて近似していた。 当然それらしいただのNPCを、操祈がそれらしく整えただけ。 だが理性を喪失した一方通行を揺さぶるにはそれだけでいい。 妹達のようなものを視界に収め、次の瞬間に垣根帝督が襲い来るのを見れば。 「■■…タ、ァァァァァァァ!!!!」 その二つ名にふさわしく加速する。 ただひたすらに少女を守るため、自らの歩む道に背を向けないため。 バーサーク・アサシン。バーサーカー。 狂気に堕ちた二人の超能力者がぶつかる。 「同窓会は二人でやっててちょうだい☆」 敵マスターは見つからなかった。 が、代わりに大きな騒ぎを起こしている大物を捉えた。 なんでここにいるのか、と一瞬驚いたがむしろ利用するべきと反転。 垣根提督は一方通行を、一方通行は妹達を見逃せない。 そして彼らに倶に戴く天はあらず。ぶつかり合うしかない。 危機を脱したことを察し、一息。 「第一位と第二位をぶつけたわ。さ、後は若い二人に任せるとして私たちはライダーさんと合流して、港に行きましょ☆」 刑兆から降りて歩き始める。 脅威から離れ、味方との合流を考えるなら慌てて走る必要はない。 ライダーが来るまで余計な消耗をしないように離れ、合流したら彼の巨体と脚力で離れればいい。 そんなマイペースな落ち着きを取り戻す。 「…アンタ、前あのアサシンと会った時は慌てて逃げだしたけど今度は違ったわね♡  そんなにあのおジイちゃんとの協力が大事ってこと?」 見捨てなかったのを疑問に思うような、態度の差に憤るような。 「ああ、そうねえ。垣根帝督を怖いと思ったこともあったんだけどぉ」 人差し指を顎に当てて少し考えるようなそぶり。 リモコンを握った手でこつんと額に手を当て 「忘れちゃったわぁ、そんなの☆」 かち、と道中何度も聞こえたリモコンを操作する音を響かせながら呑気に答えた。 南下する垣根帝督を見送る操祈、ニューゲートたちは穏やかなものだった。 だが、北上する一方通行を前にした暁美ほむらはそうはいかなかった。 温泉街にまどかがいると聞いている。 そこに美樹さやかが向かい、探すことになっている。 いかせてはならない。 あのバーサーカーが暴れては、まどかの安全に支障をきたす。 逃がすわけにはいかない。 でも、どうやって…………? 逃がさない……闇……牢獄……閉じ込める……結界 ……! 盾を捻り、時を止める。 盾の中から、あるものを取り出して左手で強く握ると 閃光があたりを包んだ。 時が刻み始めた瞬間、世界は塗り替えられていた。 月下の街並みであったはずが、まるで人気のない廃ビルのような景色。 不気味な月の見降ろす闇夜と比して劣らぬ、おどろおどろしく仄暗い空間。 顔のない絵画が飾られ、纏わりつくように茨のツタと侵入者を拒むような鉄条網が伸びる。 確認できる生命体は少ない。 暁美ほむらとリンク、間桐雁夜と一方通行、垣根帝督、エドワード・ニューゲートと近くにいたNPC。 そして随所に咲き誇る薔薇園。 しかしその薔薇に生気はなく、薔薇に惹かれる蝶もまた息吹を感じ取れない。 (穢れの溜まったグリーフシードを孵化させた。ほんの少し捕らえておければいい。その間に、まどかを……!) いつかの世界で美国織莉子が行ったように、魔女を利用して敵を閉じ込める。 手段は、択ばない。 「何だ、コイツは……」 急激な変化に警戒し、突撃した垣根帝督も、迎え撃たんとした一方通行も動きを止める。 「立ち入り禁止……?」 随所に書かれた〈KeinDurchgang!!〉の文字をNPCを通じてなんともなしに読み上げる操祈。 「こいつァ、まさか固有結界か」 呟くように言葉を漏らすニューゲート。 「え、それじゃあ」 「術者が解くか、あるいは倒されるかしねえと脱出はまず不可能。立ち入り禁止の薔薇園、となると術者は女か?」 悪趣味な心象風景だと見渡すと。 動体が増えた。 立派なカイゼル髭を生やした綿のような頭部から細長い体を生やした異形が歌いながら無数に現れる。 ‐DassindmirunbekannteBlumen.‐ 例えるなら足先は蝶の羽のよう、体はタンポポの綿毛のよう。 ‐Ja,siesindmirauchunbekannt‐ まるで蟻から生えるアリタケのように、蝉から生える冬虫夏草のように、蝶から伸びた綿毛の怪物。 ‐Schneidenwirsieab?‐ 両の手に薔薇を剪定する鋏を持ってくるくると宙を舞う。 ‐Ja,schneidenwirsieab.‐ 芋虫にそのまま蝶の羽を生やしたような生き物も舞い現れる。 ‐DieRosenschenkenwirunsererKönigin.‐ 複数の目を持ち、こちらもカイゼル髭を蓄えて。 ‐UnddieschlechtenBlumensteigenaufdieGuillotine.‐ 赤と白の混ざった大きなもの、青一色の小さなもの。 ‐Ja,schneidesieab!‐ 警戒音のようにベルを鳴らして、歌を彩る。 ‐Ja,schneidesieheraus!‐ 鎖が飛んだ。 侵入者を捕らえる魔の手が伸びる。 一方通行は反射した。 垣根帝督は翼で弾く。 リンクはほむらを抱えて回避。 ニューゲートはNPCを庇い縛られるも、全身の震動が容易くそれを引きちぎる。 些末な攻撃は通用せず。 それを感知したのか新たな怪物が姿を見せた。 ニューゲートに匹敵するサイズ。 不気味に赤い芋虫のような体に、薔薇の花弁のような蝶の羽。 茨のような足を無数に生やし、無数の眼で侵入者を見つめる。 蝶になろうとして、花になろうとして、失敗したような醜い姿の怪物が奇声をあげる。 時の勇者が奏でる。天使のバーサーカーが歌う。 金のキャスターが舞台を彩る。白のアサシンとライダーが踊り狂う。 魔女が歌い、演出する。まだ見ぬキャストも御覧じろ。 音楽の時間を、始めよう。 混迷する状況下で真っ先に動き始めたのは暁美ほむら。 魔女結界を用意した立役者であること、この場で唯一その知識を持ち得る者であったことが強みとなり先んずる。 狙いは変わらず間桐雁夜。 ひたすらに鹿目まどかに害なす物を狩る。 ほむらに次いで動きだしたのは一方通行。 狂化によって複雑な思考を放棄した彼は状況を深く考察しようとしない。 混乱することすらできず、ただマスターの苦境に本能的な反応を示す。 それとほぼ同時に垣根帝督も追いすがる。 一方通行ほどではないにしろ狂化した思考は複雑な思考を放棄し、ただ殺意を迸らせるのみ。 守勢に退こうとした一方通行、それに敵対するほむらとリンクに同時に攻撃を放つ。 「お前は俺が殺すんだよ、一方通行ァ!」 轟!と翼を唸らせ、未元物質による猛攻。 ほむらたちに対しては何の変哲もない打撃を、一方通行には結界内の歪な空気や音を未元物質で加工して放つ。 リンクはほむらを抱えて咄嗟に跳躍、それを難なく回避。 一方通行は一瞥すらせず、降りかかる災厄をすべて反射した。 狙いを曲げられたこの世ならざる現象は周囲に解放され、使い魔を巻き込みながら一方通行を除くすべてのサーヴァントに襲い掛かる。 ハイラルの盾、未元物質の翼、大薙刀とそれがぶつかる音が響く。 「■■■!!!」 宣戦布告の雄叫びを上げる。 マスターの指示したターゲットも。 旧怨ある宿敵も。 守るべき者を騙る三下も。 邪魔立てする羽虫も。 全て、殺すと。 「バレちゃったみたい☆まあクオリティ力低いコスプレじゃちゃんと観察したらそうなるわよねえ」 仲間の影に隠れながら軽口を叩く操祈。 ニューゲートの方はそれを庇いながらだが、呆れ半分慌て半分といった様子。 「そう呑気にもしてられねェだろ。あの二人をぶつけるっつうのは上手くいったみたいだが、おれ達まで巻き込まれちゃ世話ねェぞ」 「それはまあそうだけど。術者を真っ先に狙って脱出しましょ、あの不気味な蝶みたいな怪物を」 これは恐らく鹿目まどかの記憶にあった魔女結界。 魔法少女が他にも参戦していたのか、天戯弥勒が何かしたのか、そこにいる暁美ほむらが仕組んだのかはわからないが。 魔女を倒せば結界も解けるはず。 「アレか」 無造作に拳を打ち出し、震動で魔女を仕留めようとする。 『セイバー、止めて!』 指示を受け、その振動も斬り払うリンク。 魔女を庇うその仕草に眉をしかめる操祈たち。 (結界から逃がすわけにはいかない。ここにサーヴァントを引き留めて、その隙に美樹さやかがまどかを確保してくれることに期待するしか……!) さすがに魔女を守りながら戦うのは初めてだ。 しかしそうでもしなければ、間違いなくサーヴァントならば容易く魔女を仕留めるだろう。 そして同時に、勝機がないと悟った魔女が逃げ出すのも防がなければならない。 (魔女は仕留めさせない。かつ逃がさない。サーヴァントも逃がさず、時間を稼ぐ。  かといって魔女が味方をしてくれるかと言えばそんなわけはない。今までで一番の苦境ね) でも、やるしかない。 自らも両の腕に銃を構え、使い魔を撃ち払いながらリンクと二人、魔女からつかず離れずの距離をとる。 あのバーサーカーたちはどう動くか、と視線をやると。 衝突。 白い翼を打ち鳴らし、目にも止まらぬ速度で襲い掛かる。 対する一方通行は背中に竜巻を背負い、翼のように唸らせて空を翔る。 音を置き去りにした二人の戦闘は何物を立ち入ることを許さず、近くにいただけの使い魔もソニックブームで切り裂かれていく。 その亡骸が突如高速で炸裂弾のように放たれる。 ベクトル操作で加速した弾丸だ。 真っすぐ垣根に向かって跳ぶが、空気抵抗に削られて消滅する。 その余波、空気の振動が見えない脅威となって飛来する。 「はっ、見飽きた手を!」 それを垣根は容易く防ぐ。 六枚の翼を展開して衝撃を受け止め、返す刀で未元物質を打ち出す。 一方通行は羽虫にたかられたとでもいうようにそれを手で払う……が、突如炸裂。 「突沸ってやつだ!沸点を超えた過熱状態のものが刺激を受けると、安定を失い急激に蒸発する!体積の膨張による爆裂がおこるってな!  偶然の作だが沸点の低い未元物質!突沸する固体なんてお目にかかったことあるかァ!?どうだよ一位」 ま、こんなので死ぬ玉じゃないのは分かってる。 だが今のは反射しきれてなかった。やはり既存の物理法則の外から攻めるべきか、と一瞬思考。 群がる使い魔に蹴りを入れ、その勢いで加速し突撃する 「■■■!!!」 叫び、震え、反撃。 右の拳を空間に叩きつけるように振るい、その勢いで振動した空気を打ち出す。 それは能力で加速し、『震動』の域にまで至る。 空間にヒビが入るようなびきり、という音を立てて襲い来る震動波。 翼を振るい、迎え撃つ衝撃を利用して方向転換、回避。 追撃のように左手を振るう一方通行。 掌で空気を高速で渦巻かせ、プラズマ化した大気を炎のように打ち放つ。 広域に放たれたそれに対し、咄嗟に未元物質の盾を生み出し防ぐ。 そこへ響き渡る沈痛なメロディー。 『闇のノクターン』、一方通行の歌う魔術。 盾も翼もまとめて縛ろうとする闇に驚愕を露わにするが、必死にそれを回避しにらみつける垣根。 「ああ……さすがだ、第一位。さすがという他ねえ。  狂化し(イカれ)てるのは俺もお前も同じだ。サーヴァントになっているのも同じ条件だ。  くそ下らねえ霊器に押し込めたうえに自慢の脳味噌鈍らせてマスターなんて枷まで背負って。  それでもお前は、俺より強い」 嫉妬がある。憎悪がある。そして僅かに、しかし確かに羨望がある。 「認めてやるよ。お前は俺よりほぼ全てにおいて上まわる。だがな、一つだけ俺に優位な点がある」 呼吸を整えるようにできた僅かの間で睨み付ける。 「俺はお前を殺すため『だけ』にここにいる」 聖杯に託す願いは、一方通行と再戦し、殺すことだ。 そのためにここにいる。 そのためだけに、ここに来た。 突如、一方通行の頬に小さな傷ができる。 同時に垣根帝督の纏う未元物質にも勝手に損傷が発生する。 「俺たち超能力者(レベル5)の序列は単純な強い弱いじゃねえ。『学園都市の技術にどれだけ応用が利くか』だ。  だからこそ単純な破壊力なら超電磁砲の上をいく原子崩しは第四位にとどまり、凄まじい汎用性と攻撃力を持ちながら『木原』の脳味噌でもどう利用していいか分からねえ根性バカは七位に収まった。  そして俺も、お前の後塵を拝するを得なかった。まあ戦闘でも四位は三位に負け、俺はお前に負けと往々にして順位がひっくり返ることはほぼねえが」 予想外のダメージ戸惑いを見せる一方通行に語り続ける。 「逆転するにはどうするか。死ぬ気で考えた。死んでも考えた。  ……シンプルな答えに至ったよ。考えてみりゃお前の言う通りだ。学園都市の序列では評価されない項目でならお前に勝てるはずだ、と」 事実、単純な身体能力なら一方通行は超能力者たちのなかでも間違いなく下位だ。 勝機があるとしたら前線に出るタイプでなく、かつ女性の第五位くらい。 それどころか大多数の無能力者にも劣るだろう。 それすらも容易く覆す『一方通行』という能力がすさまじいのだが。 「誰が言ったか、超能力というのは炎に似ている。蛮人は松明に炎を灯すが、文明人は炎を利用して鉄を打つ。  お前はベクトル操作で重力や大気も操る。俺は未元物質で大気や光の質を変える。そうした応用ができたな。  ならおそらくだが、お前も俺が今やったのと同じようなことができるはずだ」 再び一方通行の体と未元物質に損傷が起こる。 「ヒントは腐るほどあったぜ?  お前の能力は、この世の物理法則に従わないものは反射できねえんだよな?  俺はかつて本来なら無害なはずの陽光や風に干渉して、この世ならざるベクトルでお前を攻撃した。  魔術、なんて科学の外のオカルトな代物にも手こずったらしいじゃねーか。ならよー」 垣根の背の六枚の羽根が震えて調律された音を奏でる。 「未元物質でアブラカダブラ、呪文を唱えたこの世ならざる天使サマの魔術をお前は理解できるのか?」 轟!!! と凄まじい風の刃が一方通行を襲う。 狂気に染まったその顔に変化はないが、もし理性を残していれば多少の感情の発露は見られただろう。 即座に反応し回避行動に移る……本来の一方通行なら必要ないはずの行動だ。 それに気をよくしたか、小さく笑みを浮かべる垣根。 その唇の端から一筋の血が流れる。 「ちっ、ミスったか。能力者が魔術を使うと起こる拒絶反応、てめえはもう少し上手く躱してやがったか。  超能力者としても魔術師としても俺より勝るか。やっぱ最高にムカつくなクソッタレ。だがまあ」 背中の翼から舞った羽が傷口に触れると即座に癒える……正確には傷口を未元物質で補填しているのだが。 「問題はねえ。心臓が裂けようが、脳味噌がつぶれようがそれは俺にとって致命になりえない。  未元物質はずいぶん昔に脳味噌含む臓器の複製を可能とした。些細な傷ならすぐ補える」 それに、と付け加えながら再び未元物質の翼が震わせると今度は広範囲に雷が降り注ぐ。 その代償には小さく羽が一枚落ちただけだった。 「こいつも俺の臓器ってことは拒絶反応も押し付けられる。時折調節にミスるが、慣れればそんなもんは減っていく。  身一つしかねえお前と、無限に増える俺の勝負。結局そこに至るわけだが……今の俺にはお前に届く牙がある。  これまでのようにはいかねえぞ!!!」 翼が鳴る。 響き渡る詠唱が一方通行を蝕む兵器を生み出していく。 「アギダイン」 強大な炎が突如として燃え上がる。 「ガルゲイト」 風の刃が音もなく襲い掛かる。 「マハジオダイン」 雲もない空間から極めて広域に稲妻が走る。 事象はともかく、その在り方は一方通行にも理解できるものではなく、回避を余儀なくされる。 理解の外にある『魔術』という理論が、『未元物質』による詠唱で生み出されることでこの世の理からも外れた現象となってさらに襲い掛かる。 「はっ、どうだよ一方通行!さんざんメルヘンメルヘン言われた俺だがよ、こんなダサい格好になったら天使サマの魔術なんて代物使うマジのメルヘン野郎になっちまった!  笑ってくれていいぜ!笑えよ、一方通行!狂ったせいで笑い方も忘れたかァ?俺は逃げ惑うお前の面拝むだけで笑えてくるぜ!」 科学の街での超能力比べは新たな段階へ。 神秘溢れる儀式で科学と魔術が交わり、激しさを増す。 空を舞う超能力者の勝負と同時に、地上でも英傑がぶつかり合っていた。 ガァン!と激しい金属音を打ち鳴らし、白と緑の影が切り結ぶ。 力比べは白い戦士に軍配が上がる。 巨大な薙刀は剣と盾を交差させても受けとめきれず、後ろに跳んで受け流す。 そこから前転、足元を潜り抜けて背後へ。 体格差をも利用して‭隙を狙う。 反転、即座に逆袈裟。 対してニューゲートは薙刀を振るった勢いをそのままに強く地面に踏み込み、周囲一帯に地震を起こし弾き飛ばす。 躱しきれず吹き飛ばされるリンク。 それでも空中で苦し紛れにバクダンを放ち、追撃を防ぐ。 僅かに開いた距離で二人が体勢を立て直そうとする瞬間。 群がる使い魔。些細であるが無視はできない脅威。 二人は得物を振るいそれを打ち払う。 退魔の剣が真価を見せた。 触れるだけでするりと、空を切るのと変わらぬ速度で使い魔を切って捨てる。 ニューゲートも薙刀を振るい、容易く迎撃する。 だがそこで武器の違いが二人に差を生み出した。 片手で扱う剣と両手で扱う薙刀。 取り回しの速度の違いは僅かながら勝敗の一因となる。 ニューゲートの武器がまだ外に流れている瞬間に、リンクは再び武器を構える域にまで立て直す。 そして 「はぁっ!」 刺突。 心の臓を穿たんと繰り出した神速の一撃。 武器を構えなおし受け止める猶予はなく、決まるかと思われた。 対するニューゲートは、瞬時に武器を手放していた。 その空いた手で何もない空間を掴み、武器を振るった勢いの慣性そのままに『投げた』。 すると 「な…!?」 突然の事象に驚きの声をあげるほむら。 ニューゲートの腕の動きに合わせたかのように大地が傾いたのだ。 グラグラの実の力。世界最強と言われた超人種。 その力は島一つ程度なら容易く傾ける。 世界から切り離された固有結界の中ならば、その世界そのものを揺るがすことすら可能とする。 揺らいだ足場に、ニューゲート以外の地に足をつける者はバランスを崩し、刺突の軌道も乱れる。 それと同時に揺らいだ勢いそのままに薙刀が綺麗にニューゲートの腕に収まる。 そして躱しざまに一閃。 かろうじて盾で受けるが、力の差は如何ともしがたく数メートル吹き飛ばされる。 射程の差。それもまた勝敗の一因となる。 リンクの三倍はあろうかという体躯のニューゲート、それにふさわしいリーチと長大な武装。 数メートルの距離はリンクにとって一方的に攻撃を受ける間合いだ。 圧倒的な力による蹂躙をかろうじて捌き続ける。 唐竹を避け、切り上げを剣で受け流し、刺突を盾で受け、その勢いを利用して距離をとる。 薙刀の射程から離れれば優位は逆転する。 即座に弓を構えて放つリンク。 それを躱し、震動で対抗するニューゲートだが、小兵のリンクとでは的の大小において言うまでもない不利が生じる。 鳥の目すら射貫くのではという正確なリンクの射を躱し、迎撃し、震動で反撃する。 余波で時折使い魔も打倒しながら、駆け引きが続く。 いかなる距離をとるか、いかなる戦略をとるか。 ニューゲートが薙刀先端に能力を収束。 広範囲に震動と斬撃を放つ。 リンクは大きく横に跳んでそれを回避。 即座に反撃の一矢を射ようとする……が。 再び群がる大量の使い魔、さらに魔女までもが攻撃に参加する。 それも全てリンクに向かって。 「薔薇園は立ち入り禁止らしいぜ?」 拳を構え、突撃しながらからかうような声かけ。 リンクは足元で踏みつぶされた薔薇に気づいた。 ニューゲートが操祈を通じて把握していた結界内の文字、〈KeinDurchgang!!〉の意味。 情報の差も、また勝敗を決する一因。 薔薇園におびき寄せ、敵を利用して隙を作る。 リンクは即座に剣に魔力を巡らせ、回転切り。 使い魔の一掃には成功する。 だが、もう一つの縛りが彼を邪魔した。 魔女を仕留めれば結界が解け、敵が解放されてしまう。 それは避けなければ、と魔女に対しては峰打ちで吹き飛ばすにとどめる。 その不合理な動作が隙を生み、ニューゲートの一撃を躱す時間を時の勇者から奪い去った。 繰り出される正拳突き。 それを受ける右手の盾。 まるで鈍器を打ち据えたような衝撃音、アイアンナックすら霞む豪の一撃。 「うぁッ!?」 拳の衝撃はかろうじて盾で受けっきった。 しかし震動は伝播する。 放たれた拳にまとった能力はハイラルの盾を超え、その腕を侵す。 再起不能、というほどではない。 しかし暫くはまともに使いものにはならず、盾や弓の使用には支障をきたすだろう。 その苦境でも諦めず、リンクは反撃の剣を振るった。 それに少しだけ驚いたような反応を見せるが、当然のように薙刀で受け止め、軽々と跳ね返す。 僅かに開いた距離。 そこでリンクはバックステップ。引き際に矢を左手で抜き出す。 それをブーメランかあるいはスローイングナイフの要領で投擲。 弓を用いたものには威力も速度も精密さも劣るが、侮るべからざるは武芸百般の英傑か。 十二分な殺傷手段であるそれをニューゲートはかろうじて回避し、追撃に踏み込もうとする。 だが 「あァ!?」 回避したはずの矢が後ろから右腕に突き刺さる。 (跳弾…?いやあり得ねェ。いくらなんでも真っすぐ戻ってきて威力を一切損なわないなんざ無理だ。何をした……?) 突き刺さった矢を引き抜きながら敵を見る。 だらりと力なく下がった左腕だが、右腕にはしっかりと剣を握り構え続けるリンク。 視線にはいまだ力漲り、戦場を見据えている。 その目に映るのは矢を引き抜く敵の姿。そしてその後方でいまだ闘い続ける二人のサーヴァント。 ニューゲートが魔女の特性を利用したように、リンクも一方通行の能力を利用したのだ。 一方通行の反射により、彼に放った攻撃は威力そのままに跳ね返ることを剣を交えリンクは知っていた。 ならば動きを先読みし、的確に矢を打ち込めば跳ね返った攻撃を敵に改めて当てることも可能となる。 互いに片腕にダメージを負った英傑二人。 再びにらみ合い、開戦。 盾を打ち捨て、剣のみで突貫するリンク。 薙刀を送還し、拳と能力で迎撃するニューゲート。 盾での守勢も、弓での遠距離戦もできないなら。 不自由な片腕で薙刀を振るえないなら。 剣/拳の届く距離でひたすらに鎬を削るしかないと。 それを離れたところから見ることしかできないほむら、そしてNPCを介した操祈。 使い魔相手に自衛し、魔女相手にも目を配るほむらにサーヴァントの戦局に介入するはなかった。 NPCに戦闘手段はないが、彼女に使い魔は殆ど害をなさない。 薔薇園を地震や攻撃の余波で荒らす他のサーヴァントへの敵意が強く、木っ端に過ぎない彼女は完全に無視される形になっている。 それを幸いとひっそり戦場を離れていく。 相も変わらずライダーの攻撃範囲は凄まじい。巻き込まれてはたまったものじゃない。 第一位と二位の流れ弾が飛んでこないとも限らない。 庇護者から離れるのも危険だが、同行していても危険。 結論、まだ見ぬ敵を恐れるより目の前の事象から逃げるべきである。 その判断を司令塔である食蜂操祈本体へ、そこから刑兆を通じて念話でニューゲートに伝える。 その応答を待つなどせずそそくさと引き下がる。 NPCがやられたところで信条的にはつらいが、戦力的には特に響かない、と打算も込みで。 「…正直趣味が悪いのとは思うけど、技術力的にはすごいわね、キュウべえって」 学園都市出身の自分が言うのもなんだが。 才能ある少女を選んでいるとはいえ、その魂を物質化し、最期には固有結界の解放にまで至らせるとは。 知己と言えるものはいないが、魔術師が知ったら驚くなんてものじゃなさそうだ。 「これが心象風景だとすると、この結界の持ち主はどんな精神構造なのかしらあ?」 観光のような心持で敵の能力を考察。 一応現れえる敵を予測するのだから無意味ではないだろう。 (薔薇園に立ち入り禁止の文字。薔薇が好きだったんでしょうね。  襲ってくるのは蝶のような怪物で、武器は剪定鋏。カイゼル髭は庭師がモチーフかしらぁ?こんなところにまで顔を出す、薔薇園と術者の数少ない味方。  術者らしい怪物にも薔薇と蝶のモチーフが散見。溶け落ちたような顔に、無数の目。  どこから見ても、蝶や薔薇の様に美しくありたかったという願望の表れに見える。  崩れたメイクのような顔、歪な芋虫のような体と茨のような足はそうなれなかった現実とそれによる絶望力の発露、といった感じ?  女としては共感する者があるわねぇ……ってあらぁ?) 思考しながら歩いていると前方に人影。 咄嗟に散在する瓦礫の一つに身を隠し観察。 これと言って特徴の見出せない、どこにでもありそうな茶髪に中肉中背の少年の姿が目に映る。 際立って脅威というものを感じないそれをNPCかとも思うが (いいえ、辺り一帯のNPCは避難をさせている。地震があった海岸線であれだけ派手に騒ぎ立てて逃げ出さないNPCがいないとは思い難い。  間違いなく聖杯戦争の関係者。一位か二位のマスター、でしょうね) 本体との接触であれば手の打ちようもあるが、無力なNPCを通じてではせいぜいが情報確保しかできない。 それも正面から対峙するのは避け、物陰からひっそりと。 熱に浮かされたようで足取りで結界の奥深く、戦場へと歩みを進める少年を見送る。 (正気じゃなさそうねえ。何らかの精神干渉を受けている。一位ならそういうのを放っておくとも思えないし、二位のマスターかしらぁ?) 追いすがって何かできるわけでもなく。 その存在を周知できたらこのNPCも解放して避難させようとあるかもわからない結界の出口を目指し、フェードアウト。 偽りの妹達は舞台を降りた。 代わって舞台に姿を見せたのは浅羽直之。 バーサーク・アサシン、垣根帝督に従い北上した彼だったが開戦前に別行動をとっていた。 理由は単純、邪魔になるから。 もし敵が来たとしてもショゴスさえあれば多少は問題ない、と素気無く去るサーヴァントに何も言わず見送った。 実際闘えと言われても困る。そういうのはただの男子中学生には無理だ、水前寺ならともかく。 公園で見た、悪魔染みたバーサーカーの激突。 崩壊した学園を背景に繰り広げられた麗しきアーチャーの衝突。 徹頭徹尾介入できるようなものではない。 それでいいの?と声がした。 最初は幻聴だと思った。伊■■のために何もできなかった良心の呵責。 殺してやる、と声がした。 今度はアサシンが念話で何か言っているのだと思った。 逃げ惑う人々の声が聞こえた。 幻聴でも念話でもないと気付いた。 殺意と狂気に染まった数多の声が聞こえた。 憎悪に堕ちた女性の声が聞こえた。 響き渡る狂騒。脳裏に焼き付いて離れない美しい女性。 事実としてのぼせて浮足立った精神状態に追い打ちをかけるように突如聞こえてきた声。 体内にショゴスとやらを入れてからか。 ある種の体調不良、反動のようなものだと考察するが、むしろ体に訳のわからない代物を注がれて何の異常もない方が不気味なので、この変調には恐ろしさと同時にどこか安心も覚えた。 しかし異常な現象はむべなるかな、心を削る。 半ば放心し、必死に声から耳を逸らそうとしていると。 ひときわ大きな声が聞こえる。 その声を聴いてなぜか思った。天使がいる、と。 声の聞こえる方へ足は向かう。 震える大地を歩み、崩壊した街を超え、奇妙な空間に潜り込んでも進み続けた。 たどり着いたのは戦場だった。 蝶のような多数の怪物を抑えるように銃器を振り回す少女。 白いひげの巨大な男が大地を揺るがし、緑衣の剣士がそれに必死に食らいつく。 自らと契約したアサシンもまた闘っている。昼に見た、狂戦士相手に超常現象を引き起こして。 あ……と小さく声を漏らした。 頭の中で響く声を塗りつぶすような戦闘音に現実に引き戻され、恐怖が湯水のように湧き出る。 血の気が引き、ふらつき、バランスをとるために一歩足が前に出る。 ――薔薇を一輪、踏みつぶした。 ぎょろり、と数十匹の怪物、数百はあろうかという眼がこちらを射抜く。 それに気付くものもはいなかった。 浅羽直之のサーヴァントである狂える暗殺者も。ナワバリを庇護する大海賊も。世界を救う時の勇者も。魔女を滅ぼす魔法少女も。 仮に気付いたとして、目の前の敵を放り出すほど気に留めるかは別だろうが。 けたたましい声を上げて使い魔が浅羽に襲い掛かる。 群がる使い魔が減ったことでようやくほむらがそれに気付く。 時を止め、銃を構えることも少しだけ考えるが、すぐに断念。 敵に囲まれたこの状況で誰とも知れないものを庇っているヒマなどないと。 おびただしい怪物に覆われ、最期を迎えるかと思われた。 次の瞬間、そこには悍ましい色と形の肉塊があった。 ずるり、とその肉塊が蠢く。 てかりのある真っ黒な色合いを基調に、猛毒のカエルやキノコのような極彩色の粘液がそこら中にへばりついている。 深海を揺蕩うタコのようにも、たるみ切ったゴムが火で炙られたかのようにも見える奇妙な質感。 この世ならざる生き物を想起させる、不気味な異物。 その表面が泡立つ。 次の瞬間、泡立った肉が液体のように流動して形を変える。 使い魔から宿主を守っていた外なる存在が、牙をむいた。 肉塊は触手を形成し、それを振り回す。 鞭のようにしなるそれが群がる使い魔を振り払い、さらに変形。 触手の先端が強度と鋭さを増し、数も増し、ズドン!!と弾丸のような速度で撃ちだされる。 使い魔の体に風穴を開け、次々に仕留めていく。 その脅威を認識したか、潮の様に引いていく使い魔。 それを確かめ、肉塊もまた一時矛を収める。 めりめり、と狭い空間を蛇が這いまわるような音が浅羽の体中から響く。 体の中央で不気味な鼓動を打ち鳴らす名残をのこして、どこにでもいるただの男子中学生が再び姿を見せる。 数多の魔女を見たほむらも見るだけで正気を削るような不気味な肉塊には顔をしかめた。 使い魔の動きを感じ、ほむら以外も続々と浅羽に気づき始める。 その誰もが――垣根までもが――大して気にも留めない。 そのうちの一人、一方通行と浅羽が一瞬目を合わせた。 最も強大な声。最も高みにある声。天使のものだと思った。 その戦いを目にする。 翼を打ち鳴らし、様々な事象を引き起こし、ぶつけるアサシン。 その事象を躱し、時折雄叫びを上げながら反撃する天使。 なぜかその羽音や叫びを聞いていると頭が晴れてくる気がした。 羽音は呪文だと、叫びは呪詛だとその意味をリスニングできるようになっていく。 天使に啓示を受けたのかなどと頓狂なことを思っていると 再び使い魔が攻撃を開始する。 その発する声もより深く聞き取れるようになっていた。 「右手の鋏で切りつける」 動作を先読みして、まるでその道の達人の様に余裕をもって躱す。 「飛行の勢いを利用して頭突き」 左右から襲ってきた使い魔を、再び湧き出した肉の槍で迎撃する。 「取り囲んで、鎖で縛る」 肉塊が醜悪な翼のようなものを形成して飛び、廃ビルのような内装の壁面にへばりついて攻撃の範囲外へ。 使い魔の攻撃を容易く回避する浅羽の振る舞いはもはやどこにでもいるただの男子中学生で収まるものではなくなっていた。 とある世界では前兆の感知と呼ばれるもの。 別のある世界では見聞色の覇気を呼ばれるもの。 それに匹敵するレベルで、浅羽は使い魔の声を聞き取っていた。 その力の正体は、目覚めたPSI。 念話も聞き取るレベルに強化された聴覚……『強化』のライズ、その中でも感覚を強化するセンスと呼ばれる分野。 能力を獲得した肉体に、未元物質という超能力の極みを注がれ、脳がそれになじんだことで新たな領域に達したのだ。 強化された聴覚が捉えた様々な言語。 大天使マンセマットの詠唱、魔王ルシファーの強制詠唱、それらの記憶。 垣根帝督の奏でる魔術、一方通行の歌う魔術、魔女の声。 響く声を聞き分け、糧として得た聴覚はその身を守る鎧か具足。 そして、彼は昼の時分で念話を発することもできるようになっていた。 積み上げた経験値が自らの声も強化する。 強化された聴覚が魔女の接近を感知する。 巨大なそれは回避しきれるものではない。 来るな、と声を上げる。 『強化』された声帯で、世界そのものに語り掛ける。 「   」 発した声はすでに人の領域を超えていた。 神代の魔術師が扱う高速言語か。バベルの塔崩落以前の統一言語か。 あるいは天使の詠唱エノキアンか。 言葉一つで外界に干渉し、魔女を退けた。 「え…あれ?」 自分でも何をしたのか分かっていないのか、戸惑った様な声を漏らす。 次の瞬間にごほごほと咳き込み、血の混じった痰を吐く。 やっぱり何らかの副作用かな、と着地しながら反射的に思考。 でもなぜかその代償のような何かもどことなく愛しく思える自分がいて。 それもよし、と息を吸う。 今度は意図して喋ってみよう。 あの天使のように。アサシンの羽音のように。 覚えたばかりの難しい言葉を使いたがる子供の様に、浅羽は天使の言葉を歌った。 それは『咎歌』と呼ばれる天使の詠唱。 一帯の使い魔を、魔女をも吹き飛ばし戦場に存在感を示す。 それと同時に体に宿した未元物質が形を変える。 体内で蠢く異形の生命体から体外を彩る異様な鎧へ。 全ての色を溶かしたような不気味な黒は、あらゆる不純を受け入れないような生粋の白へ。 未元物質本来のそれに近い、ある種の悍ましさすら覚える白へ。 無機質かつ神秘的な白……まるで神話の神々や天使の手になじむ兵器の様に。 二人の狂戦士はそれを黙殺した。 だが他の面々は新たな敵としてその少年を認識する。 ――カラァン、と鐘の音が響いた。 時代の終わりと始まりを告げる鐘の音が。 空気が変質していく……潮風だ。 エドワード・ニューゲートを中心に世界が塗り替えられていく気配。 それに過敏な反応を見せたのは二人。 魔女Gertrudは、天使の出現に加え己の結界が‌より強大な神秘に侵されていくことを実感し完全に尻尾を巻いて逃げ出した。 そしてニューゲートと対峙していたリンクもその出現を、それを防ぐことができないと悟る。 敵の固有結界に囚われれば勝機も薄く、そして離脱もほぼ不可能になると。 ……捕らわれる前に、退く。でなければマスターの仲間の援護に行くことも叶わず敗退することになる。 鐘の音が響く。 ふと、時のオカリナを取り出した。 鐘の音が響く。 ピエールを呼び出す音楽を紡いだ時の様に自然と指が動く。 鐘の音が響く。 バーサーカーの真似た『闇のノクターン』をベースに、白いサーヴァントやマスターらしき少年の歌、魔女の歌も交えたアレンジ。 時代を告げる鐘の音とのセッション。 天使の唱える歌唱に、悪魔の響かせる鐘の音にインスピレーションを受けた詩曲。 名づけるなら聖誕曲、『混沌のオラトリオ』といったところだろうか。 時代の始まりと終わりを告げる16の鐘の音が響き終わる前に、リンクは即興の楽曲を奏で終え、ほむらとともに姿を消した。 垣根帝督と一方通行は目の前の敵にかかりきりでそれを気にも止めなかった。 そして世界が塗り替えられる。 侵入者を拒む薔薇園は崩落した正義の砦に。 蝶のような使い魔は荒くれ物の集団に。 不死鳥が、生きる炎が、金剛石が、魚人が、巨人が、巨大な猫や犬のような戦士が闊歩する世界。 伝説の戦場が再現された…… 「うッ、ぐぁ……!」 のも一瞬のこと。 左胸を抑えうずくまるニューゲート。 (こんなときにコイツ……!) 高齢ゆえに持ち得る経験値と引き換えに保持するざるを得ないバッドステータス、心臓病。 それが固有結界の成立を阻む。 強制的に固有結界が解除されたことでナワバリから集めた魔力も霧散し、敵影もバラバラの地点に放り出されたらしく、地震で崩れた建物の近くにうずくまる自分一人しか姿は見えない。 (敵の固有結界は破れたが、その果てにこれじゃあ世話ねェな……) 周囲を見渡す。 やはり人影が全くない。 (あのガキの『歌』……ありゃ『悪魔』を征する詠唱だ。放っておくと厄介なことになる) 排除すべき脅威と認定した。 あいつのサーヴァントも、目の前の剣士もどけて片づけるには切り札を見せるしかないと。 だがそこでまさかのファンブル。 一気に決着とはいかなくなったが…… (おれの固有結界が解けて全員バラバラに散ったのなら、まだ真っ先にあいつを見つければ勝負には持ちこめる) しかしそこまでするべきか。 もとより襲撃され、巻き込まれたのが今回の戦闘のきっかけ。 いくら悪魔を宿す自分の天敵ができたとはいえ、退いた敵に追撃するよりも味方と合流するべきではないか? 内心の天秤をどちらに傾けるか悩んでいると マスターから念話。 霊体化し、即座に移動。 合流へと即座に天秤は傾いた。 【B-3/北部/二日目・未明】 【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】 [状態]ダメージ(小、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中 [装備]大薙刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける 1.急ぎ刑兆のもとへ合流。 [備考] ※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。 ※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。 ※宿およびその周辺をナワバリとしました。 ※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。 それより僅かに南。 檻から放たれた獣のように声を上げる超能力者(レベル5)。 それをひたすらに目指すもう一人の超能力者(レベル5)。 戦況の外で沈黙を守る超能力者(サイキッカー)。 目覚めた新たな力に酔う超能力者(サイキッカー)。 さらなる科学と、魔術が交わる。 【B-3/北東部/二日目・未明】 【間桐雁夜@Fate/zero】 [状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒 [装備]多数の自動人形 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。 1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。 2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。 [備考] ※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。 ※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。 ※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。 ※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。 ※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。 ※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。 ※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。 ※学園の事件を知りました。 ※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。 ※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。 ※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。 ※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。 ※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)  頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。 【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】 [状態]ダメージ(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:■■■■─── 1:───(狂化により自我の消失) 2:垣根帝督を倒す 3:セイバー(リンク)を倒す [備考] ※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。 ※アポリオンを認識し、破壊することが可能です。 ※闇のノクターンを聞き、また習得しました。 【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】 [状態]魔力消費(中)、魅了状態 [令呪]残り3画 [装備]サンプル・ショゴス(未元物質) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:彼女のため、聖杯の獲得を目指す。 0.多数の埒外の事象に加え、魅了状態に伴う現実感の喪失 1.力を得たこと、伊■■を思わせる副作用に興奮 2.キャスターと共にいるというサーヴァントはアーチャーさんが闘いたいらしいから、できれば相手にしたくない [備考] ※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。 →念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。 →PSI能力「ライズ」が使えるようになりました(名称未定)。  聴覚を強化することで念話を聞き取り、また見聞色の覇気@ONEPIECEに近い効果を発揮します。  また声帯を強化することで念話を発し、天使の歌唱@真・女神転生STRANGEJOURNEYに近い効果を発揮します。ただし魔術に近い技能なので科学と魔術の共存による反発もあるようです。 ※学園の事件を知りました。 ※タダノがマスターであることを知りました。 ※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※巨人を目撃しました。 ※天戯弥勒と接触しました。 ※モリガンを確認しました。 ※未元物質が体内に入り込み、脂肪、魔術回路の代用となっています。これにより魔力量が増大しています。  また武装にもなり、宿主を守るよう機能します。PSIを利用できればある程度はコントロールもできます。  ただし、脂肪をすべて排泄してしまっているため、これが抜け落ちた場合何らかの対処をしなければ死に至ります。 →天使の歌唱を習得した影響で、聖柱ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEYや、15巻において黒翼をみて変形した未元物質に近い形に進化(?)しました。 ※ほむら、セイバー(リンク)、ライダー(白ひげ)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。 【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】 [状態]魔力消費(小) [装備]天使の装い [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:一方通行を殺す。 1.一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。 2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。 [備考] ※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。 ※屋上の異変に気付きました。 ※夜科アゲハがマスターであると断定しています。 ※リンク、犬養、食峰を確認しています。 ※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。 ※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。  なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。 ※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。  ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。 ※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。 「お前たちに問うことがある」 戦場から一時逃げたその先が安全とは限らない。 この地はいずれも聖杯戦争の会場なのだから。 「鹿目まどかは、どこだ」 魔女結界の開いた北の地で、少年少女のもとに悪魔が舞い降りた。 【A-4/南部/二日目・未明】 【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]健康、魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]ソウルジェム [道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1:まどかを助ける(罠の可能性を考慮) 2:ほむらと合流してまどかを元の世界に返す 3:まどかを帰還させた後はほむらの動向に警戒 [備考] ※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。 ※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。 ※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。 ※まどかへの連絡先を知りません。 ※ほむらと連絡先を交換しました。 【不動明(アモン)@デビルマン】 [状態]魔力消費(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1:さやかに従い行動 2:金のキャスター、銀のキャスターへの対処 3:マスターを守る [備考] ※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。 ※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。 ※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。 [共通備考] ※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています ※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています ※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。 ※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました ※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。 ※学園の事件を知りました。 ※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。 ※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。 【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……? 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。 2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。 3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。 4:公衆電話の破壊は保留。 [備考] ※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。 →アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。 →キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。 ※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。 ※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。 ※学園の事件を知りました。 ※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。 ※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。 【犬飼伊介@悪魔のリドル】 [状態]疲労(中)魔力消費(微小)微熱、PSIに覚醒 [令呪]残り三画 [装備]ナイフ [道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え [思考・状況] 基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす 0:食蜂操祈に心を許さない。 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。 2:学園と家にはあまり近付かない。 [備考] ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。 ※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。 ※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。 →症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。 ※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。 [共通備考] ※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。 ※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。 ※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。 ※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。 ※ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による) 【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】 [状態]ダメージ(大)、魔力消費(大) [装備] [道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆ 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。鹿目まどかとか今更……? 2:犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。 3:図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。 4:犬飼には一応警戒する [備考] ※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。 ※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。 ※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。 ※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。 ※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。  それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。 ※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。 ※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。 ※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。 ※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。 ※伊介の能力を心理系(PSIでいうならトランス系)のものと予測しています。 ※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)、操祈は共有しています。 •アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。サーヴァントならパラメータも把握。 •アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。 •アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。 •ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。 •善吉の技能と『欲視力』。 •カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。 •まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。 •ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。 •タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。 •ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。 •ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。 •セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。二刀流の可能性を警戒。 •セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。 •アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。 リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。  何かを撃ち出す宝具を持っているはず。 •ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。 •ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。 •刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。 •ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。 •キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。 •能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。 •麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。 •魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。 •天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。 •アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。 •魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。 •スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。 •幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。 •不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。 →以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。  それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。 「ここは……どこ?」 暁美ほむらとリンクは見覚えのない、幾何学的な空間に迷い込んでいた。 時のオカリナで奏でた音楽が力を発揮し、神殿へと飛ぶように新たな時空へ招かれたのだ。 リンク一人でなくほむらも同行したのはマスターとサーヴァントの契約が、生前ナビィを連れられたように機能したからだろう。 「おや、まさか私以外にも侵入者とは。少し驚きだが、君たち二人なら納得だ」 「誰!?」 背後からの声に振り替える。 そこにいたのは青い瞳に金色の髪の美しい少女。 「私はルイ・サイファー。舞台を眺めるただの観客さ。おおっとそう警戒しないでくれ」 即座に剣を構え立ち塞がるリンクに対して両手を上げて害意はないとアピール。 「時の旅人たちよ。どうやら偶然ここを訪れたようだが……  時期尚早だ。まだここに君たちの目当てのものはない。再び戦場に戻ることを勧める」 そういって右手を真っすぐ二人へ向ける。 そして 「新たな天地を望むか?……なんてね」 眩い閃光。 視界を失い、浮遊感と聴覚の身が残る。 「ぺ天使の留守中に私が勝手に上がり込んでいて運がよかったな。見つかっていたらどうなっていたやら。  ……私は君のファンなんだ。君の狂おしいほどに自由でカオスな愛を、そこでも見せてくれ」 何を言っているのよ、と叫ぼうとする。 だが光が晴れたとき、そこにはもう誰もいなかった。 見えるのは夜の闇と、見慣れてしまった不気味な月。 それと 「電話ボックス……」 結界の中でも謎の空間でもない、元の戦場。 「…………まどか!!!」 しかしここはどこなのか。 あの場にいたサーヴァントたちは、何よりまどかはどうなったのか。 急いで、向かわなければ。 【?-?/電話ボックス近く/二日目・未明】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]疲労(大)、焦り [令呪]残り3画 [装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ [道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(一つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃 [思考・状況] 基本:聖杯の力を以てまどかを救う。 0:現在地を把握し、すぐにまどかのもとへ。 1:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。 2:キャスター(フェイスレス)を倒す。 [備考] ※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。 ※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。 ※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。 ※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。 ※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して) ※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。 ※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。 ※さやかと連絡先を交換しました ※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。 ※天戯弥勒と接触しました。 ※巨人を目撃しました。 ※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。 ※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。 【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説時のオカリナ】 [状態]魔力消費(小)、疲労(中)、ダメージ(中、右腕は戦闘に支障あり) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに全てを捧げる 0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。 1:暁美ほむらに従う。 2:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。 [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 ※セイバー(纒流子)を確認しました。 ※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。 ※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。 ※巨人を目撃しました。 ※バーサーカー(一方通行)を確認しました。 ※様々な音楽、魔術をヒアリングしたことで新たな音楽を習得しました。  時のオカリナで演奏することで主催陣営の空間(?)に転移することができるようでしたが、今後も同じように成功するかは不明です。 [共通備考] ※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました。 ※浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※ライダー(白ひげ)を確認しました。 ※ルイ・サイファーを確認しました。 ※電話ボックスの近くであること以外の詳細な現在地は後続の方にお任せします。 【?-?/二日目・未明】 【ルイ・サイファー@真・女神転生STRANGEJOURNEY】 [状態]健康 [令呪]??? [装備]??? [道具]??? [思考・状況] 基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を 0.偶然の出会いに若干高揚。 1.基本的に観客に徹する 2.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい 3.神々との闘争に備えて準備 4.戦力増強のため了と子を産むことも考える [備考] ※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。  両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。 [全体備考] ※麒麟殿温泉近くの宿が白ひげの地震で倒壊しました。 ※B-3商店街近くの家屋が一方通行の手で倒壊しました。 ※一連の騒ぎは操祈の手で大地震としてNPCに広められ、住民の避難が進んでいます。近隣の住民には伝わるでしょう。 ※魔女Gertrud、およびその使い魔がB-3近辺にいます。 ---- |BACK||NEXT| |061:[[Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|063:[[呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」]]| |~|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|~| |BACK|登場キャラ|NEXT| |059:[[心波のトランス]]|[[暁美ほむら]]&セイバー([[リンク]])|| |~|[[間桐雁夜]]&バーサ―カー([[一方通行]])|065-a:[[聖なる柱聳え立つとき]]| |057-b:[[翼をください]]|[[浅羽直之]]&バーサーク・アサシン([[垣根帝督]])|~| |~|ルイ・サイファー|065-b:[[魔なる柱雷のごとく出で]]| |054:[[MEMORIA]]|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])|~| |~|[[犬飼伊介]]&キャスター([[食蜂操祈]])|~| |058:[[真夜中の狂想曲]]|[[美樹さやか]]&バーサーカー([[不動明]])|~|
***英雄たちの交響曲◆A23CJmo9LE 爆音と閃光を背に駆けるバイク。 跨るのは緑色の服の青年と、紫色の服の少女。 市街地のただなかをまっしぐらに走る。 「どうやらマスターの方も追ってきてるわね」 魔法によって強化した視力で彼方を見るほむら。 接触した敵マスターの姿は見えないが、人形が蠢いているのは確認できる。 人形の戦力はバーサーカーと比すれば誤差程度。狂化したサーヴァントに巻き込まれる危険も考えればわざわざ同行するうま味は極めて薄い。 だというのにこちらとの距離を取ろうとしないということは、あのマスターの意思だ。 「そうね。敵は私たちだけではないもの」 むこうはこちらが美樹さやかの援護を拒絶したことを知らないはずだ。 もしもバーサーカーと離れたところを美樹さやかが襲撃する手はずだったとしたら、自らのサーヴァントと距離をとることは即ち死を意味する。 銃火器であっけなく破損する人形など、美樹さやかの連れた悪魔染みたバーサーカーの手にかかれば紙のように引きちぎられてしまうだろう。 「なら、まだチャンスはある」 奴らがこちらを逃がさない限り、こちらも奴らを逃がさない。 なんとしてもここで決着を。 「セイバー。足止めと言っていたけど、少し方針変更。あなたもあのマスターを仕留めることに全力を注いで」 バイクに手を置くと紫色の魔力が車体を包む。 運転手の手を離れ、加速する。 「操作と援護は私が。操縦と攻撃をお願い」 左手をバイクに触れさせながら後ろの敵へ見定める。 右手に盾から取り出した拳銃を構える。 対戦車ライフルや携行砲でもあれば些細な壁や人形など無視できるのだが、致し方ない。 牽制気味にいくつか発砲。 「■■■――!!」 当然狂戦士は立ちふさがる。 銃を構えた瞬間には足先を変え、引き金に指をかけた瞬間にはその軌道に向かって跳び、銃声が響いた瞬間には銃弾に触れていた。 そして『反射』する。 放たれた銃弾が180°向きを変えて真っすぐに射手のもとへと機械的に舞い戻る。 込めた殺意も諸共に、さらに狂戦士のそれを上乗せして。 そのままなら銃口に撃ち込まれ、銃を破壊してさらにほむらに当たったであろう銃弾。 最悪さらに貫通してガソリンタンクを撃ち抜けば爆発もあり得た。 その未来を、剣士は断ち切る。 宙空を奔り来る弾丸に刃を滑らせ、左右に真っ二つにして躱す。 すでに時速100kmは超えている不安定なバイクの上に立ち、それでも絶妙の剣技を魅せるリンクに内心感嘆するほむら。 ほむらが一息つく間にもリンクは動く。 即座に弓を構え、敵マスターに向けて一矢、二矢と放つ。 ほぼ同時に残心もなく後ろ手にハンドルを操作して僅かにバイクの軌道を変える。 放った矢はこれもまた牽制。 乗機の速度は人の追いつけるものをとうに超えているが、あのサーヴァントならばすぐに距離を詰めることができる。 マスターへの防衛に徹させていなければ、逆にこちらのマスターが危機に陥る。 そうして放たれた矢は牽制といえど、マスターを死に至らしめるには十二分なもの。 当然バーサーカーはその弾道に立ちふさがり、矢を跳ね返してくる。 それを最低限バイクを操作して躱し、再び弓を構える。 このまま千日手が続く膠着戦になるかと思われた。 そうなればほむらと雁夜の魔力量、リンクと一方通行の消耗の差からほむらたちが有利であったろう。 そうなることを予期したか。 一方通行が大きく動く。 「■■!!」 後方にいる雁夜を守るために跳躍していた高度。 その位置エネルギーが重力、引力によって落下する運動エネルギーへと変わる。 着地の瞬間に最大となったそのエネルギーの向きを変え、落下する速度のままに真横へと高速移動する。 バイクに追いつくため? 否、その勢いのまま腕を道に立つ家屋へと突き立てた。 そして 「■■■――!!」 大地を震動させ、家屋を投擲。 建物としてはさほど大きい部類ではない一戸建てだ。 しかし、人力はおろか投石器をもってしてもその千分の一のサイズを飛ばすことすらできはしない。 ベクトル操作で家屋にかかる重力、引力、自転に伴う遠心力など様々な力を集約され、放たれた魔弾。 一方通行の手にかかれば万物が凶器となる。 未元物質のように物性を歪める必要などない。 超電磁砲のように磁性体にこだわる必要もない。 道端の小石を蹴るだけで、コーヒーの空き缶をポイ捨てするだけで容易く人を殺せる。 だがそんな小物、サーヴァントならば容易くはじく。 だが、建物規模の巨大な弾丸ならば。 盾で受けようと、受けきれなかった箇所が崩れ被弾するだろう。 剣で刻もうと同様だ。 そして巨大な弾丸は視界を覆い、射線を塞ぎ、敵の狙撃を妨害する。 そんな城砦を矛とし、盾とする暴挙にはほむらもリンクも瞠目した。 (冗談が過ぎるわ……!) ハンドルを切って回避する?大きすぎる。躱しきれない。 加速して逃げる?飛来物の規模の割に速すぎる。 一瞬でほむらの思考を諦めが埋め尽くす。 それを横目にリンクは跳んだ。 驚きはした。気圧されもした。だがそれはあくまで一瞬に満たない刹那。 避けるのも受け止めるのもできないならば、迎撃するのみ。 両の腕に黄金色のグローブを光らせ、迫りくる巨大な弾丸に飛びかかる。 飛来する家屋と、小さな緑の影が空中でぶつかる。 「ぅっ……!」 霊体であるサーヴァントに現世の物体で干渉はできない。 いかに高速、超重量の物体であろうとそれが神秘を持たないならダメージは与えられない。 だがそこに秘められた莫大なエネルギーがゼロになるわけではない。 衝突時のすさまじい反動に体ごと持っていかれそうになり、小さく悲鳴を上げる。 だが屈することはできない。 この一撃を許せばほむらへのダメージは甚大、耐えたとしてもバーサーカーの追撃から生き延びるのは絶望的になる。 ――――なんとしても、防いでみせる。 「は、ああああああああっ!!」 グローブをはめた腕に満身の力を籠め。らしくもなく高らかに雄叫びを上げ。迫りくる死の脅威を投げ返す。 ――――今度は、そちらが震える番だ。 真っすぐに軌道を変え、投げ返された建造物。 それが今度は雁夜の脅威となる……その前に。 中央から真っ二つに割り砕かれ、地に落ちる。 「■■■――!!」 その割れ目から顔を見せたのは白い髪の悪鬼。 この男にとって、飛礫は矢ではなかった。盾でもなかった。 ただ自分が近づくための目くらましとして、砂をかけるような感覚で家屋を放り投げたのだ。 空中で身を躱すすべのないリンクに一方通行の魔の手が迫る。 触れれば最後、命の流れを乱され死に至る毒手。 それを目前にリンクは取り出したバクダンを小さくトス。 爆発までの数秒を待つまでもなくそれに蹴りを入れて炸裂させる。 響き渡る爆音、閃光。 一方通行にそれによるダメージは与えられない、そんなことはもう分かっている。 目的は攻撃でなく回避。 爆風を利用してあえて吹き飛ばされ、射程から逃れる。 粉塵と爆炎による目晦ましもあり、ダメージと引き換えに僅かに体勢を整える機会を得る。 吹き飛ばされながらも弓を構え、即座に放つ。 僅かに残った爆炎をくぐらせ、炎の矢となった一撃が三度雁夜に向けて放たれた。 だが一方通行が腕を一振りすると塵旋風が巻き起こり、矢の軌道を大きく変える。 ――――攻防一体で隙がない。 妖精ディンの聖なる炎や、魔王も射貫く光の矢ならあるいは効くのだろうか。 ダイゴロン刀ならば切り伏せるのか。まことの眼鏡で見れば何かわかるのか。 無いものねだりをしてしまう自分に歯噛みしながらも次の方策を練る。 爆炎を切り裂いた白のバーサーカーと視線が交錯した。 『マスター、時を!』 瞬間、ロングフックを先を行くバイクに向けて飛ばす。 ハンドルに絡んだ鎖をほむらが掴む感触と同時に、世界のすべてが静止する。 ――――マスターソードを初めて引き抜いたあの時と、よく似た感覚。世界の流れから切り離される孤独感。 『セイバー、どうするつも――』 バイクごとマスターをロングフックで引き寄せる。 下手に距離を取るよりすぐそばで守った方が安全なのはこちらも同じだ。 そしてバイクから引き下ろして座席部分にバクダンを積み込むと察したらしく、再び機馬に魔力を走らせ始める。 ボウリングの要領で加速させ投げ出すと、静止した時の中で加速と炸裂の時を待つ簡易ボムチュウの出来上がりだ。 人形に切り裂かれて、新たに調達したばかりの足を失うのは少し惜しいがそうも言ってられない。 さらに砕けたビルの欠片で手ごろなものを見出し、金のグローブの力で投擲する。 バイクと同じように空中で止まるが、これで二手打った。 だがそれで限界だ。 最後にせめてもの抵抗とバーサーカーの視界から外れたところで。 時は動き始めた。 「■■■――!!」 咆哮。駆動音。風切り音。 響き渡る戦場の喧騒を尻目に静かな、どことなく悲し気な旋律が『時を操りし王家の秘宝(ときのオカリナ)』から響く。 それとともに噴き出すは無限の虚無、どこまでも深い闇。 ――――返り血と血縁、二つの血にまみれた漆黒の忠義は、ある意味では間違いなく時の勇者と時の賢者の関係より強固な繋がりだった。 血塗られた闇の歴史すら呑み込む壮大な器は、同時に罪人を捕らえる牢獄ともなる。 彼女の一族の覚悟と罪を、自分もまた背負おう。 闇を導き、暗黒面を暴く罪深き旋律……『闇のノクターン』が奏でられた。 「■■!?」 闇がバーサーカーに纏わりつき縛りあげる。 能力の上からでも関係ない圧迫感。かつて天使や同僚から感じたプレッシャーに近似するそれ。 『反射』をすり抜け、霊体を縛る力を本能的に『魔術』であろうと狂化した頭脳で認識する。 しかし認識できたところで、それだけだ。 一方通行にこの闇は破れない。 効果が切れるまでの数秒、その場を動くことはできず、その数秒で投げられた爆弾付きバイクと瓦礫は雁夜のもとに到達する。 それだけならまだ防ぎようがある。 だが緑のセイバーが雁夜に向けてフックを飛ばしているのが目に映る。 王手だ。 もしサーヴァントの接近を許せば雁夜の残り少ない命の灯火はその瞬間に掻き消える。 予測ですらない確実な未来の訪れを阻まねば、二人の聖杯戦争はここで終わってしまう。 追い込まれた状況で、闇にとらわれ手も足も出せない一方通行は 『歌った』 「■■……■…ァ、嗚呼アアアアア!!!」 始めは意味のない叫びだった。 だがすぐにそれは悲し気な旋律を紡ぎ始める。 狂化によって失った言語機能を、常人には決して行えない特殊な呼吸を、持ち前の能力によって補い。 喉だけでなく全身で振動を大きく震わせ、口から特殊な音声を発する。 それはかつて第三次世界大戦で習得し、レイヴィニア・バードウェイに学ぶことにより習得した技術……魔術の行使。 能力者でありながら肉体のすべてをコントロールし、ギリギリのバランスで反動を抑える神業。 それによって紡がれた音楽は、つい先ほど戦場に流れたメロディ……『闇のノクターン』。 「ッ!」 その曲が流れた驚きに一瞬動きが鈍るリンク。 次の瞬間には一方通行に纏わりついているものとほぼ同質の闇が、ほむらとリンクを捕らえた。 失態に歯噛みする。 自分もシーク、いやゼルダ姫から一度聞いただけだが、それでも戦場のただ中で即座にそれを真似て見せるなど。 ましてや楽器もなく演奏……いや詠唱するなんて。 動揺し、捕らわれはしたがリンクの対魔力ならば即座に拘束を抜けられた。 しかしほむらに纏わりついた闇は容易くはいかず、剣によって切り裂くのを余儀なくされ、一時縛られたことでロングフックによる移動にも失敗した。 炸裂音が響く…走らせたバイクが敵マスターに届く前に迎撃される音。 破砕音が響く…投げた石が人形を盾に防がれる音。 雄叫びが響く…捕らわれた白い獣が自由になった証明。 解放されたのはリンクも一方通行もほぼ同時。 そして互いに間を阻むものも、利用できる決定的な何かもなかった。 どちらが先に敵の霊核か、あるいはマスターを仕留めるか。 自身の技量のみが頼みのクイックドロウ。 一方通行がリンク達に向かって。 リンク達は間桐雁夜に向かって踏み出そうとした瞬間。 どん!!! と、地面が揺れる音。 突然の地震とそれに伴う衝撃で、家屋がいくつか倒壊する。 ただでさえ二組の主従と自動人形の戦いで蹂躙された街並みはもはや原型なく、崩落した家の向こうにはうっすらと海が見える。 ……北上した地、麒麟殿温泉への道がそこには開けていた。 間桐雁夜は、建物の影から巨大な刃が視界に入るのを確認した。 暁美ほむらは、夕刻に川下で感じたサーヴァントの魔力を再び感知した。 リンクは白いひげを蓄えた、堂々と構える親友以上の巨漢を見据えた。 そして一方通行は―――― ◇  ◇  ◇ 不気味な形相を浮かべた月が世界を見下ろす。 波の音を聞きながら一組の男女がそんな夜空を遣る瀬無さげに見上げていた。 ハニーブロンドの美しい少女と、白いひげを蓄えた大男。 住む世界も纏う空気もまるで違う二人が、小さなホテルのベランダに並んでいる少々歪な情景。 互いのマスターは隣同士に二部屋取って眠りについている。 何かあった場合にすぐ動けるよう部屋は一階をとり、服装や荷物などはあまりリラックスしたものではないが、それでも休みを取らないよりは随分ましだろう。 二人が眠りについてしばらくして天戯弥勒の通達を耳にした。 発せられた情報はアサシンの脱落と突然のタイムリミット。 論じた。 通達は定期的に行われるのか、あるいはサーヴァントが脱落するたびに行うのか。 監視の手間や行われたタイミングを見るに定時、おそらく12時間刻みだろうと推測。 突然の異様な月の意味。 まずあれは天戯の狙ったものなのか、意図せず生じた障害なのか、織り込み済みのバグなのか。 狙ったのならその目的は。 参加者を急かすためか。単に焦れただけなのか、三日以上留まられては困る理由があるのか、急がせなければならない問題が発生したのか。 焦れたのなら、まあいい。 この聖杯戦争の会場に問題があり、三日持たない。 参加者に不穏な動きがあった。あるいは参加者以外…… 想定できる可能性は様々で答えは出ない。 会議は踊るが実のあるものではなく、結論は出せなかった。 では通達が来たから刑兆たちの考えていたように移動を開始するかというとそうもいかない。 マスター二人が眠りについてから、ナワバリを設定してから、派閥を広げ始めてから数時間も経たないうちに拠点を変えるのは賢明とは言い難い。 ニューゲートと刑兆はまだいい。 ナワバリから少なからず得た力あり、健康体である刑兆も仮眠と思えば十分な休養だ。 しかし伊介は回復しつつあるといっても半病人であり、操祈にもダメージがあるうえ、NPCの配置、大移動は改めて行うには手間がかかる。 結局眠るマスターを横目に、操祈がNPCを走らせながら朝を待つことになった。 ニューゲートは外界を見下ろし、操祈は携帯端末からニュースサイトやSNSで情報収集をしている。 (アッシュフォード学園の女生徒誘拐。これは私たちがやったことよね。犯人は未だ逃亡中、追跡に参加した警官一名が負傷。何らかの凶器を持っている可能性が高く注意、ねえ☆  犬飼さんの顔とかが出回ってないのは助かるわあ。被害者もそろって未成年だし、そういう自制が働いてるのか。あるいは誰かがもみ消しているのか) 人の流れを操作するのは専門だが、電子の海でのそれとなると些か苦手になる。 御坂美琴や雲川鞠亜の方が向いているだろうし、そうした方向に気を配る必要がないのはありがたい。 (……でも多分これ他の事件にかき消されて情報の錯綜力が増してるだけよね。  市街地での爆発事件、車にバイクに自転車の盗難、病院付近で多数の銃声、あげくにアッシュフォード学園倒壊って……  学園都市でもここまで治安力悪くないわよぉ) いくつかは自分の関わった事件であるが、知らないところでも聖杯戦争は激化しているらしい。 調べるほどに参加者を急かすような事態に陥ったとは思えず首をかしげるが、それはそれと噂を洗う。 まばたきをしない宇宙人が市井に紛れている、街の西側郊外の森に入り込んだ人は魔物になる、平原で死んだカリスマダンサーの霊が夜な夜な踊りをおどる、etcetc 「おう、なんか面白いのあったかい?」 興味を持ったのか画面をのぞき込んでくるニューゲート。 そのタイミングで調べていたのは 「学園崩壊。その犯人はなんと巨人、ねえ」 「眉唾力全開、って感じ?」 写真も添付されていたが、かなりの距離から撮られたものらしく時間帯が夜なこともあってはっきりしない。 建物の内部から飛び出した巨大な人影、に見えなくはないが 「15~6mってトコか。巨人族としちゃ小さめだな」 「え?」 「あ?」 情報リテラシーについて言いたいことはあるがさておき。 巨人を実際に見たような発言で、しかも常人の10倍近い体躯を小さめとは。 「…もっと大きいの?」 「20mくらいはザラにいる。まあ小さ目ってのは言い過ぎか。なにせ4、50mクラスのを知ってるとこれくらいは小さく見えちまう」 「現代に生まれてよかったわあ。興味はあるけど会いたくはないもの☆」 ダビデ王が首を撥ねたゴリアテですらたしか3m程度。15mで小さいとは。 伝承に語られる巨人の多くはゴリアテ含め先端巨大症の兵士に勝ったのを威権のために大げさに語ったとか、大軍を相手にしたことの比喩だとか思っていたが、実際に巨人だったのだろうか。 (まあ目の前のこのライダーも十分に巨人だけど) 操祈の身長とほぼ釣り合うような膝下のサイズにも慣れてはきたが、やはり圧巻される。 その巨躯を見上げると視線は交わらず、画像を向いているのがわかった。 「背景の月にまだあの悪趣味な面が浮かんでねえ。通達のあった日付が変わる前だな」 「学園の立地から月の位置する方角も何となくわかるけど、そうね。南中はしてないわあ」 「学園倒壊ってのは何時ごろだか分かるか?」 「やっぱり日付が変わる前みたいねえ。そのくらいに話題力に上がってる」 画像の時間帯と事件の時間帯が一致してしまう。 ……本当に巨人がいるのか。 「巨人を喚ぶ宝具?あるいは巨人になる宝具?」 「安直なのはそこだな。捻くれた案としては平時は小さくなっていて、戦闘時に本来のサイズになるとかか」 「ああ、そっちもあるわね。単に大きいだけで巨人に限らないなら人に化ける力を持ってるだけでもよさそう。  ユミルの子にそんな巨人がいたと思うし、日本にも見上げることで大きくなる天邪鬼やダイダラボッチに近い鬼がいるわあ。  巨人を喚ぶなら、そうねえ。ゼウスから青銅造りの巨大な自動人形を与えられていた愛人エウロペとか?」 いくつかつらつらと名前を上げるが、さすがに伝聞情報のみでは実のあるものにはならない。 ニューゲートが巨人殺しの逸話と巨人召喚の宝具を持ち、どうとでもなるとさほど力を入れていないのもあってなおのこと。 会話が少しづつ減っていき、再び思考が個々のものに戻る。 誰も立ち入ることのない静寂が訪れてしばらく。 突如の砲音。 「オラァ!」 咄嗟にそれを迎撃するニューゲート。 視認と同時に抜き放った薙刀から震動を放ち、弾丸を撃ち落とす。 「キャスター!探れ!」 「もうやってる!いえ、常に警戒力は巡らせてたわよぉ!」 犬飼の体調はともかく、魔力の方は好調なのだ。 学園内の派閥ほどではないが、相当数のNPCを操り、警戒はさせていた。 サーヴァントとして、周囲にサーヴァントの気配がないかは当然気を張ってもいた。 「サーヴァントの気配力は、ない……ならマスター?それとも――」 もしや天戯弥勒か、とも考えるが   「いや、一瞬だがあったぜ。サーヴァントの気配。でなきゃおれも攻撃の瞬間に気づけなかった」 「何よそれ。気配遮断?」 アサシンはすべて脱落したと言っていた。 いや、クラススキルでなく自前の保有スキルで気配遮断を行うとすればおかしくはないのか。 とそこまで思考したところで 「そこか!」 ニューゲートが目の前の空間を殴る。 すると大気にヒビが入り、激しい震動が前方へ射出される。 それを躱すように現れた影。 それは10mはあろうかという、巨大な白いカブトムシだった。 不気味な緑色に輝く瞳、砲塔のように穴の開いた角、無機質な光沢ある純白の異形。 その背、装甲とでもいう部分が開い羽が展開し、高速で振動する。 「覚えているな?」 さながら鈴虫の音色のように、羽音を奏でる。 それによって生じる音がある人物の声を再現した。 「……忘れていたかったわあ」 「俺は忘れてねえ。お前に殺されたのは、たとえ死んでも忘れられねえ屈辱だ」 「あら、あなた世を儚んで自害したんじゃなかったかしら☆」 ドォン!! と、その挑発を合図に再度砲撃音が響く。 カブトムシの角の先端からこの世ならざる弾丸が発射された音だ。 だがその軌道には震動を纏った拳が割り込み、弾丸を砕く。 「おれのナワバリで暴れようってのか、若造」 「てめえに用はねえよ。すっこんでな老いぼれ」 白を基調とした巨漢と異形がにらみ合う。 そこへ再び砲音。 今度は単発でなく数十発の弾丸がカブトムシに襲い掛かり、表面をわずかに損傷させる。 「ちっ、固えな」 「刑兆。起きたのか」 「これだけのバカ騒ぎで寝てられる方がおかしいっての」 起き抜けに即座に攻撃を仕掛け、身支度も万端。 さらに隣室にバッド・カンパニーのうち何体かを向かわせ、疲労困憊のせいで未だに眠る伊介を叩き起こそうとする。 「雑魚が。魔術師なんぞがサーヴァントに何しようが毛ほども感じねえんだよ」 「虫けらに雑魚扱いされたってのは貶されたのか褒められたのかよくわからねえな」 刑兆も加わりすわ開戦かというところで 『刑兆』 『ンだよ、こんな時に』 念話が飛び、歴戦の戦士から若者へと指示が下る。 『建物の中じゃお前は強い。その軍隊は密閉空間で真価を発揮するからな。だがおれの地震は室内じゃ強すぎる……分かるな?』 『ちっ、引っ込んでろってか。分かったよ。逃がすんじゃねえぞ』 スタンドを通じて伊介が寝ぼけ眼をこすり始めたことを確認し、キャスターが周囲を探っているのを直接視認し 「バッド・カンパニー!」 カブトムシに向けて銃撃。 視界を覆うように発火炎を積極的に炊き、それを目くらましに撤退を始める。 カンパニーの数体が伊介を急かし、キャスターを自ら引きずり駆けだすが 「逃げられると思ったのか?その程度でよォ!」 猛進するカブトムシ。 見た目は生物だが、未元物質によって構成されたそれはまともな生態など有していない。 最低限の攻撃機能を有したある種の兵器に生物としての反応は極めて薄く、ひたすらに操祈を殺そうと動く。 「追いすがれると思ったか?おれを放って」 即座にそれを抑えんとするライダー。 一瞬自分のかたきである女の姿に囚われ生じてしまった隙。 それでも垣根帝督の速度なら反応できると思った。未元物質の鎧なら弾き返せると思った。 破砕音。 ガラスのコップが割れるような音を立てて、それこそガラスのコップを砕くような気軽さで。 ニューゲートは純白のカブトムシを踏み砕く。 「おれのナワバリで暴れてんじゃねえよ、ハナッタレが」 『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』。 すでに旗を掲げ、一帯をナワバリとしていた。 NPCも、多数の事件からくる不安ゆえか、操祈の洗脳したNPCの根回しゆえか、それを無意識のうちにするりと受け入れていた。 だからこそ、この地の防衛線においてエドワード・ニューゲートは圧倒的な力を発揮する。 科学の都市が誇る超能力者の産み出した重戦車すら容易く屠るほどに。 「なーんだ♡、終わり?避難するまでもないじゃない」 「「いや、まだだ」ゾ☆」 安心したような声を漏らす伊介に二人のサーヴァントが答える。 「垣根帝督は、この程度じゃ死なない。だから私はマスターを殺さずに念入りに自害を命じたんだゾ」 「そこにいるな。出て来いよ、おれが相手してやる」 地震の余波を受けて崩れかけた建物の影を指す。 数瞬おいて霊体化していた男が像を結ぶ。 天使のように幻想的な白い翼に白い衣装。 垣根提督本体が堂々と姿をさらし……それに続いて数十体のカブトムシも現れる。 「……ファンタジーやメルヘンの景色だな、まるで。似合ってねえぞ」 「自覚はある。俺の趣味じゃあねえよ」 僅かに言葉を交わす。 今度こそ、即座に開戦。 翼を指揮棒のように振るうと、カブトムシの砲門から一斉に弾丸が放たれる。 それをニューゲートが薙刀から広範囲に放った震動で、刑兆が二つ三つ程度だがカンパニーの砲火で迎撃。 『港で待て!』 『さっさと片せよ!』 念話を交わす。 遅れて、迎撃時の爆音が響く。 白い巨体と白い群体がぶつかり合う戦場を3人の学生は必死に離れた。 「ねえライダーから離れて大丈夫なの!?このキャスター、すんごい弱いわよ!」 「いいから走れ!建物から離れろ!」 「伊介病み上がりなんだけど!」 「おれはてめーらなんざどうなろうと構わねえが、親切で避難誘導してんだよッ!  ライダーの攻撃か、そのせいで崩れた建物に巻き込まれたきゃベッドでグッスリしてんだな!」 怒声が響きあうが、それが雑音に成り下がるほどの戦闘音が彼方まで響いていた。 カブトムシの砲撃音に加えて、足元を何度も揺らす悪魔の力。 長く続けば一帯は更地になりかねない。 「ああ、もう!キャスター、あんたまた車とか拾えないの?」 駆けながら話を振る。 しかし返事はない。 刑兆に引き摺られながら能力を行使しているようだ。 「何してんの!?」 「NPCの……避難をぉ、ぜー、ぜー……させてたわぁ」 殆ど自らの足を使っていないがすでに疲労困憊。虚弱が過ぎるのに呆れが走るが 「そんなことよりあたしたちの方を優先しなさいよ!」 「いや、悪ィがそれは重要だ。それがないとライダーのやつがあのメルヘン野郎を取り逃がしかねねぇ」 はぁ!?と伊介がかみつき気味にいろいろとまくし立てるが刑兆は無視して 「港に向かうぞ。そこで待てとよ」 キャスターを担ぎ上げ、バッド・カンパニーを斥候に出しつつ走り続ける。 伊介も仕方なくそれに続く。 (なんで垣根帝督がここに来たのかしらあ?) 運動をやめたことで思考に集中する。 野蛮力の専門は刑兆たちに任せるのならば、自分は頭脳を駆使する。 そのくらいは果たさなければプライドが許さないし……何より自分は役に立つと示せなければ切り捨てられてもおかしくないのだから。 (自害は命じた。それが効いたのは人吉善吉に直接会ったんだからまず間違いないわぁ。  ギリシャの大英雄ヘラクレスだって、マハーバーラタのカルナだって、令呪の命令には逆らえない。  垣根帝督は、あの時間違いなく自害している。未元物質でスペアを作ろうと、一つ残らず死んでいなければおかしいゾ) 操ったNPCを中心に避難誘導に能力を行使しながらも高速思考。 NPCの庇護という点でライダーを援護し、戦況を有利になるよう推論と偵察を進めていく。 (もう一人、垣根帝督が召喚されていた?ならば気配遮断を持っていたところから二重召喚、あるいは歪曲召喚。  ライダーはもういないから、キャスターかバーサーカーの霊器にアサシンの二重召喚スキルを得たか、何らかの処置でクラスを歪められた) 二重召喚のスキルは三騎士のクラスでは活用できない。 まあ垣根帝督にその適正はないだろうが。 可能性はごくわずかながら同一人物が別クラスで召喚され、何らかの理由でアサシンの特性を得た。 だとすればこの垣根帝督のマスターは相当の魔術師だ。 二重召喚もクラスの歪曲も容易くやれるものではないのだから。 (……いえ、違う。生前私が垣根帝督に手を出したことはない、わよね?うん、ないない。  この聖杯戦争で自害させたのが初めてのはず。さすがに別の聖杯戦争の恨みとか言われたら記憶力にございませんとしか言えないけど☆  殺されたのは死んでも忘れない、と言っていた。あの垣根提督は私が殺した垣根帝督だ) サーヴァントは英霊の座に帰ればほとんどの記憶は残らないし、召喚時に別の聖杯戦争の記憶を持つことはごく稀だ。 何者かがこの聖杯戦争で脱落した記憶を保持した垣根帝督を召喚した……? (どうあれ今度のマスターはかなりの腕前力とみて間違いないでしょうねえ。  究極の創造である未元物質を打開するにはマスターをどうにかするしかほぼないしょうし……) 避難させているNPCの何人かを敵マスターの捜索に動かす。 探すのはさほど難しくない。 大多数がライダーの地震を感じて、洗脳したNPCに煽られて避難を始めている。 にも拘らず留まろうとするもの、逆に向かってくるものがいればそれは間違いなくマスターだ。 直接見る者、映像を探る者、それらの情報を束ねていき…… 「うそ…なんでここに」 「あ?なんだ?」 絶句するキャスターの様子を不審がり、刑兆が声をかけるが 「俺が退路を予期していないと本気で思ったのか?」 白いサーヴァントが目の前に立ち塞がっていた。 「俺は俺の臓器を復元・複製できる。脳も含めてな。  てめえや第三位のクローンみてえに主体を必要とせず、ネットワークを構築せずとも個体ごとの活動ができる。  こいつには相応のリスクもあるんだが、問題が生じるまえに殺せば関係ねえ」 血走った眼で操祈のみを見据え、翼を広げる。 刑兆がバッド・カンパニーを展開させるが 「失せな。雉も鳴かなきゃ撃たれねえよ。ギャーギャーうるさくしねえならこの場は見逃してやってもいい」 「敵サーヴァントのそれを信じろってのか?」 「第五位は俺が殺す。それは決定事項だ。だから邪魔するなら容赦はしねえ。  だがお前を俺の手でわざわざ殺してやる必要はねえ。やっても別に構わねえが」 眼中にない。 養豚場の豚を見る方がまだ相手を意識している。 部屋の中に小蠅がいるのを見つけたような眼。 羽音があまりにうるさければ殺すが、そうでないならわざわざ殺すのもめんどくさいというような眼。 ただその目が操祈に向くと漆黒の殺意に染まる。 その眼光を受け止めながらも怯むことなく、真っすぐ睨み返す操祈。 「向こうのあなた、みぃんなライダーに負けたみたいよぉ☆  学園都市の第二位もさすがに史上の英雄と肩を並べるのは難しかったかしら?」 「それがどうした」 「彼ならすぐに合流できる。もし私たちを処理できてもあなたに勝ち目はないでしょ」 「それがどうした」 虹村刑兆は眼中になく、食蜂操祈の言葉には聞く耳を持たない。 「どうでもいいのさ、そんなことは。しいて言うならあれには手出しするなとマスターが言ったってのはあるか。  だがすべては些事だ。さっきも言ったろ?てめえを殺せればそれでいい」 「…あなた、いくらなんでもそこまでこだわるタイプだったかしらぁ?」 翼を構える。 避ける手段など何もない。 「じゃあな。死ね」 「もう、いくら何でも」 「視界が狭すぎ。私みたいに色んな視点でものを見ないと☆」 ニューゲートに蹂躙された未元物質の兵隊の亡骸。 その戦場の跡地に訪れた一人のNPCがいた。 「そこから北へ一撃、建物を撃ち抜く勢いで撃って。南にも同じように、ね☆」 心理掌握によってマスター探索に動いたNPCの一人を通じてライダーに指示を下す。 その攻撃の方向は刑兆たちの向かった先。 敵のいる場所を示す観測主。 ライダーは状況を聞き、両の腕を眼前で交差させ。 左右の空間を殴りつける。 どん!!! と、地面が揺れる音。 ニューゲートが両腕で放った震動が貫通し、建物を崩す。 垣根との戦闘の余波もあり、南北に開けた一直線の空間が出来上がる。 「お前の言う通り道はできたが間に合うもんじゃねェぞ!」 「大丈夫よお☆走る必要なんてない。そういう野蛮力にまみれたことはうら若き乙女やお爺ちゃんには似合わないし。  あ、もう少し右に避けてちょうだい。あなた大きいから、そこにいると道の向こうが見えないかも。それとちょっとお芝居に付き合ってもらうわよ」 まるで道を譲らせるようにニューゲートの位置を動かす。 同時にNPCの手に持たせていた銃、暁美ほむらの残したベレッタを向ける。 サーヴァントに何の効き目もない銃を向けられたところで警戒するまでもなくニューゲートは困惑を深める。 何となく南の方を向いてみると、緑色の服をまとったサーヴァントらしき存在が視界に入った。 垣根提督は突如できたその道に反射的に目をやった。 突如発生した攻撃の出本を確かめる、そんな意図があったかもしれないし、なかったかもしれない。 そんな思考はあったとしてもすぐに消え去った。 「は…はは」 失笑。 意識せず口の端から笑いが漏れた。 目の前にいるのは食蜂操祈だ。もうそんなものはどうでもいい。 崩れた建物の向こうにはやりあっていたライダーがいる。邪魔だ、放っておけ。 その先。 その向こう側にいる。 ああ、何度死のうと殺されようとも忘れるものか……! 気配を感じられない距離だが、かなたに見える風貌だけで十分。 「一方通行ァァァァァァ!!!!!」 轟!! と翼を翻し、他のすべてを無視して翔る。 対して男は、応えた……かに見えた。 しかしその実一方通行の視界に入っていたのは垣根帝督でもエドワード・ニューゲートでも食蜂操祈でもなかった。 操祈に操られ、ニューゲートに指示を出したNPC。一方通行と垣根提督の間に立つ少女。 それはベレッタという小さな拳銃を構えていた。 操祈が纏うべき、常盤台中学の制服を着せられていた。 髪型は茶色のショートボブだった。 奇妙なゴーグルのようなものをつけていた。 総じて、かつて10000人以上殺した、守ると誓った少女たちの姿に極めて近似していた。 当然それらしいただのNPCを、操祈がそれらしく整えただけ。 だが理性を喪失した一方通行を揺さぶるにはそれだけでいい。 妹達のようなものを視界に収め、次の瞬間に垣根帝督が襲い来るのを見れば。 「■■…タ、ァァァァァァァ!!!!」 その二つ名にふさわしく加速する。 ただひたすらに少女を守るため、自らの歩む道に背を向けないため。 バーサーク・アサシン。バーサーカー。 狂気に堕ちた二人の超能力者がぶつかる。 「同窓会は二人でやっててちょうだい☆」 敵マスターは見つからなかった。 が、代わりに大きな騒ぎを起こしている大物を捉えた。 なんでここにいるのか、と一瞬驚いたがむしろ利用するべきと反転。 垣根提督は一方通行を、一方通行は妹達を見逃せない。 そして彼らに倶に戴く天はあらず。ぶつかり合うしかない。 危機を脱したことを察し、一息。 「第一位と第二位をぶつけたわ。さ、後は若い二人に任せるとして私たちはライダーさんと合流して、港に行きましょ☆」 刑兆から降りて歩き始める。 脅威から離れ、味方との合流を考えるなら慌てて走る必要はない。 ライダーが来るまで余計な消耗をしないように離れ、合流したら彼の巨体と脚力で離れればいい。 そんなマイペースな落ち着きを取り戻す。 「…アンタ、前あのアサシンと会った時は慌てて逃げだしたけど今度は違ったわね♡  そんなにあのおジイちゃんとの協力が大事ってこと?」 見捨てなかったのを疑問に思うような、態度の差に憤るような。 「ああ、そうねえ。垣根帝督を怖いと思ったこともあったんだけどぉ」 人差し指を顎に当てて少し考えるようなそぶり。 リモコンを握った手でこつんと額に手を当て 「忘れちゃったわぁ、そんなの☆」 かち、と道中何度も聞こえたリモコンを操作する音を響かせながら呑気に答えた。 南下する垣根帝督を見送る操祈、ニューゲートたちは穏やかなものだった。 だが、北上する一方通行を前にした暁美ほむらはそうはいかなかった。 温泉街にまどかがいると聞いている。 そこに美樹さやかが向かい、探すことになっている。 いかせてはならない。 あのバーサーカーが暴れては、まどかの安全に支障をきたす。 逃がすわけにはいかない。 でも、どうやって…………? 逃がさない……闇……牢獄……閉じ込める……結界 ……! 盾を捻り、時を止める。 盾の中から、あるものを取り出して左手で強く握ると 閃光があたりを包んだ。 時が刻み始めた瞬間、世界は塗り替えられていた。 月下の街並みであったはずが、まるで人気のない廃ビルのような景色。 不気味な月の見降ろす闇夜と比して劣らぬ、おどろおどろしく仄暗い空間。 顔のない絵画が飾られ、纏わりつくように茨のツタと侵入者を拒むような鉄条網が伸びる。 確認できる生命体は少ない。 暁美ほむらとリンク、間桐雁夜と一方通行、垣根帝督、エドワード・ニューゲートと近くにいたNPC。 そして随所に咲き誇る薔薇園。 しかしその薔薇に生気はなく、薔薇に惹かれる蝶もまた息吹を感じ取れない。 (穢れの溜まったグリーフシードを孵化させた。ほんの少し捕らえておければいい。その間に、まどかを……!) いつかの世界で美国織莉子が行ったように、魔女を利用して敵を閉じ込める。 手段は、択ばない。 「何だ、コイツは……」 急激な変化に警戒し、突撃した垣根帝督も、迎え撃たんとした一方通行も動きを止める。 「立ち入り禁止……?」 随所に書かれた〈KeinDurchgang!!〉の文字をNPCを通じてなんともなしに読み上げる操祈。 「こいつァ、まさか固有結界か」 呟くように言葉を漏らすニューゲート。 「え、それじゃあ」 「術者が解くか、あるいは倒されるかしねえと脱出はまず不可能。立ち入り禁止の薔薇園、となると術者は女か?」 悪趣味な心象風景だと見渡すと。 動体が増えた。 立派なカイゼル髭を生やした綿のような頭部から細長い体を生やした異形が歌いながら無数に現れる。 ‐DassindmirunbekannteBlumen.‐ 例えるなら足先は蝶の羽のよう、体はタンポポの綿毛のよう。 ‐Ja,siesindmirauchunbekannt‐ まるで蟻から生えるアリタケのように、蝉から生える冬虫夏草のように、蝶から伸びた綿毛の怪物。 ‐Schneidenwirsieab?‐ 両の手に薔薇を剪定する鋏を持ってくるくると宙を舞う。 ‐Ja,schneidenwirsieab.‐ 芋虫にそのまま蝶の羽を生やしたような生き物も舞い現れる。 ‐DieRosenschenkenwirunsererKönigin.‐ 複数の目を持ち、こちらもカイゼル髭を蓄えて。 ‐UnddieschlechtenBlumensteigenaufdieGuillotine.‐ 赤と白の混ざった大きなもの、青一色の小さなもの。 ‐Ja,schneidesieab!‐ 警戒音のようにベルを鳴らして、歌を彩る。 ‐Ja,schneidesieheraus!‐ 鎖が飛んだ。 侵入者を捕らえる魔の手が伸びる。 一方通行は反射した。 垣根帝督は翼で弾く。 リンクはほむらを抱えて回避。 ニューゲートはNPCを庇い縛られるも、全身の震動が容易くそれを引きちぎる。 些末な攻撃は通用せず。 それを感知したのか新たな怪物が姿を見せた。 ニューゲートに匹敵するサイズ。 不気味に赤い芋虫のような体に、薔薇の花弁のような蝶の羽。 茨のような足を無数に生やし、無数の眼で侵入者を見つめる。 蝶になろうとして、花になろうとして、失敗したような醜い姿の怪物が奇声をあげる。 時の勇者が奏でる。天使のバーサーカーが歌う。 金のキャスターが舞台を彩る。白のアサシンとライダーが踊り狂う。 魔女が歌い、演出する。まだ見ぬキャストも御覧じろ。 戯曲が始まる。 混迷する状況下で真っ先に動き始めたのは暁美ほむら。 魔女結界を用意した立役者であること、この場で唯一その知識を持ち得る者であったことが強みとなり先んずる。 狙いは変わらず間桐雁夜。 ひたすらに鹿目まどかに害なす物を狩る。 ほむらに次いで動きだしたのは一方通行。 狂化によって複雑な思考を放棄した彼は状況を深く考察しようとしない。 混乱することすらできず、ただマスターの苦境に本能的な反応を示す。 それとほぼ同時に垣根帝督も追いすがる。 一方通行ほどではないにしろ狂化した思考は複雑な思考を放棄し、ただ殺意を迸らせるのみ。 守勢に退こうとした一方通行、それに敵対するほむらとリンクに同時に攻撃を放つ。 「お前は俺が殺すんだよ、一方通行ァ!」 轟!と翼を唸らせ、未元物質による猛攻。 ほむらたちに対しては何の変哲もない打撃を、一方通行には結界内の歪な空気や音を未元物質で加工して放つ。 リンクはほむらを抱えて咄嗟に跳躍、それを難なく回避。 一方通行は一瞥すらせず、降りかかる災厄をすべて反射した。 狙いを曲げられたこの世ならざる現象は周囲に解放され、使い魔を巻き込みながら一方通行を除くすべてのサーヴァントに襲い掛かる。 ハイラルの盾、未元物質の翼、大薙刀とそれがぶつかる音が響く。 「■■■!!!」 宣戦布告の雄叫びを上げる。 マスターの指示したターゲットも。 旧怨ある宿敵も。 守るべき者を騙る三下も。 邪魔立てする羽虫も。 全て、殺すと。 「バレちゃったみたい☆まあクオリティ力低いコスプレじゃちゃんと観察したらそうなるわよねえ」 仲間の影に隠れながら軽口を叩く操祈。 ニューゲートの方はそれを庇いながらだが、呆れ半分慌て半分といった様子。 「そう呑気にもしてられねェだろ。あの二人をぶつけるっつうのは上手くいったみたいだが、おれ達まで巻き込まれちゃ世話ねェぞ」 「それはまあそうだけど。術者を真っ先に狙って脱出しましょ、あの不気味な蝶みたいな怪物を」 これは恐らく鹿目まどかの記憶にあった魔女結界。 魔法少女が他にも参戦していたのか、天戯弥勒が何かしたのか、そこにいる暁美ほむらが仕組んだのかはわからないが。 魔女を倒せば結界も解けるはず。 「アレか」 無造作に拳を打ち出し、震動で魔女を仕留めようとする。 『セイバー、止めて!』 指示を受け、その振動も斬り払うリンク。 魔女を庇うその仕草に眉をしかめる操祈たち。 (結界から逃がすわけにはいかない。ここにサーヴァントを引き留めて、その隙に美樹さやかがまどかを確保してくれることに期待するしか……!) さすがに魔女を守りながら戦うのは初めてだ。 しかしそうでもしなければ、間違いなくサーヴァントならば容易く魔女を仕留めるだろう。 そして同時に、勝機がないと悟った魔女が逃げ出すのも防がなければならない。 (魔女は仕留めさせない。かつ逃がさない。サーヴァントも逃がさず、時間を稼ぐ。  かといって魔女が味方をしてくれるかと言えばそんなわけはない。今までで一番の苦境ね) でも、やるしかない。 自らも両の腕に銃を構え、使い魔を撃ち払いながらリンクと二人、魔女からつかず離れずの距離をとる。 あのバーサーカーたちはどう動くか、と視線をやると。 衝突。 白い翼を打ち鳴らし、目にも止まらぬ速度で襲い掛かる。 対する一方通行は背中に竜巻を背負い、翼のように唸らせて空を翔る。 音を置き去りにした二人の戦闘は何物を立ち入ることを許さず、近くにいただけの使い魔もソニックブームで切り裂かれていく。 その亡骸が突如高速で炸裂弾のように放たれる。 ベクトル操作で加速した弾丸だ。 真っすぐ垣根に向かって跳ぶが、空気抵抗に削られて消滅する。 その余波、空気の振動が見えない脅威となって飛来する。 「はっ、見飽きた手を!」 それを垣根は容易く防ぐ。 六枚の翼を展開して衝撃を受け止め、返す刀で未元物質を打ち出す。 一方通行は羽虫にたかられたとでもいうようにそれを手で払う……が、突如炸裂。 「突沸ってやつだ!沸点を超えた過熱状態のものが刺激を受けると、安定を失い急激に蒸発する!体積の膨張による爆裂がおこるってな!  偶然の作だが沸点の低い未元物質!突沸する固体なんてお目にかかったことあるかァ!?どうだよ一位」 ま、こんなので死ぬ玉じゃないのは分かってる。 だが今のは反射しきれてなかった。やはり既存の物理法則の外から攻めるべきか、と一瞬思考。 群がる使い魔に蹴りを入れ、その勢いで加速し突撃する 「■■■!!!」 叫び、震え、反撃。 右の拳を空間に叩きつけるように振るい、その勢いで振動した空気を打ち出す。 それは能力で加速し、『震動』の域にまで至る。 空間にヒビが入るようなびきり、という音を立てて襲い来る震動波。 翼を振るい、迎え撃つ衝撃を利用して方向転換、回避。 追撃のように左手を振るう一方通行。 掌で空気を高速で渦巻かせ、プラズマ化した大気を炎のように打ち放つ。 広域に放たれたそれに対し、咄嗟に未元物質の盾を生み出し防ぐ。 そこへ響き渡る沈痛なメロディー。 『闇のノクターン』、一方通行の歌う魔術。 盾も翼もまとめて縛ろうとする闇に驚愕を露わにするが、必死にそれを回避しにらみつける垣根。 「ああ……さすがだ、第一位。さすがという他ねえ。  狂化し(イカれ)てるのは俺もお前も同じだ。サーヴァントになっているのも同じ条件だ。  くそ下らねえ霊器に押し込めたうえに自慢の脳味噌鈍らせてマスターなんて枷まで背負って。  それでもお前は、俺より強い」 嫉妬がある。憎悪がある。そして僅かに、しかし確かに羨望がある。 「認めてやるよ。お前は俺よりほぼ全てにおいて上まわる。だがな、一つだけ俺に優位な点がある」 呼吸を整えるようにできた僅かの間で睨み付ける。 「俺はお前を殺すため『だけ』にここにいる」 聖杯に託す願いは、一方通行と再戦し、殺すことだ。 そのためにここにいる。 そのためだけに、ここに来た。 突如、一方通行の頬に小さな傷ができる。 同時に垣根帝督の纏う未元物質にも勝手に損傷が発生する。 「俺たち超能力者(レベル5)の序列は単純な強い弱いじゃねえ。『学園都市の技術にどれだけ応用が利くか』だ。  だからこそ単純な破壊力なら超電磁砲の上をいく原子崩しは第四位にとどまり、凄まじい汎用性と攻撃力を持ちながら『木原』の脳味噌でもどう利用していいか分からねえ根性バカは七位に収まった。  そして俺も、お前の後塵を拝するを得なかった。まあ戦闘でも四位は三位に負け、俺はお前に負けと往々にして順位がひっくり返ることはほぼねえが」 予想外のダメージ戸惑いを見せる一方通行に語り続ける。 「逆転するにはどうするか。死ぬ気で考えた。死んでも考えた。  ……シンプルな答えに至ったよ。考えてみりゃお前の言う通りだ。学園都市の序列では評価されない項目でならお前に勝てるはずだ、と」 事実、単純な身体能力なら一方通行は超能力者たちのなかでも間違いなく下位だ。 勝機があるとしたら前線に出るタイプでなく、かつ女性の第五位くらい。 それどころか大多数の無能力者にも劣るだろう。 それすらも容易く覆す『一方通行』という能力がすさまじいのだが。 「誰が言ったか、超能力というのは炎に似ている。蛮人は松明に炎を灯すが、文明人は炎を利用して鉄を打つ。  お前はベクトル操作で重力や大気も操る。俺は未元物質で大気や光の質を変える。そうした応用ができたな。  ならおそらくだが、お前も俺が今やったのと同じようなことができるはずだ」 再び一方通行の体と未元物質に損傷が起こる。 「ヒントは腐るほどあったぜ?  お前の能力は、この世の物理法則に従わないものは反射できねえんだよな?  俺はかつて本来なら無害なはずの陽光や風に干渉して、この世ならざるベクトルでお前を攻撃した。  魔術、なんて科学の外のオカルトな代物にも手こずったらしいじゃねーか。ならよー」 垣根の背の六枚の羽根が震えて調律された音を奏でる。 「未元物質でアブラカダブラ、呪文を唱えたこの世ならざる天使サマの魔術をお前は理解できるのか?」 轟!!! と凄まじい風の刃が一方通行を襲う。 狂気に染まったその顔に変化はないが、もし理性を残していれば多少の感情の発露は見られただろう。 即座に反応し回避行動に移る……本来の一方通行なら必要ないはずの行動だ。 それに気をよくしたか、小さく笑みを浮かべる垣根。 その唇の端から一筋の血が流れる。 「ちっ、ミスったか。能力者が魔術を使うと起こる拒絶反応、てめえはもう少し上手く躱してやがったか。  超能力者としても魔術師としても俺より勝るか。やっぱ最高にムカつくなクソッタレ。だがまあ」 背中の翼から舞った羽が傷口に触れると即座に癒える……正確には傷口を未元物質で補填しているのだが。 「問題はねえ。心臓が裂けようが、脳味噌がつぶれようがそれは俺にとって致命になりえない。  未元物質はずいぶん昔に脳味噌含む臓器の複製を可能とした。些細な傷ならすぐ補える」 それに、と付け加えながら再び未元物質の翼が震わせると今度は広範囲に雷が降り注ぐ。 その代償には小さく羽が一枚落ちただけだった。 「こいつも俺の臓器ってことは拒絶反応も押し付けられる。時折調節にミスるが、慣れればそんなもんは減っていく。  身一つしかねえお前と、無限に増える俺の勝負。結局そこに至るわけだが……今の俺にはお前に届く牙がある。  これまでのようにはいかねえぞ!!!」 翼が鳴る。 響き渡る詠唱が一方通行を蝕む兵器を生み出していく。 「アギダイン」 強大な炎が突如として燃え上がる。 「ガルゲイト」 風の刃が音もなく襲い掛かる。 「マハジオダイン」 雲もない空間から極めて広域に稲妻が走る。 事象はともかく、その在り方は一方通行にも理解できるものではなく、回避を余儀なくされる。 理解の外にある『魔術』という理論が、『未元物質』による詠唱で生み出されることでこの世の理からも外れた現象となってさらに襲い掛かる。 「はっ、どうだよ一方通行!さんざんメルヘンメルヘン言われた俺だがよ、こんなダサい格好になったら天使サマの魔術なんて代物使うマジのメルヘン野郎になっちまった!  笑ってくれていいぜ!笑えよ、一方通行!狂ったせいで笑い方も忘れたかァ?俺は逃げ惑うお前の面拝むだけで笑えてくるぜ!」 科学の街での超能力比べは新たな段階へ。 神秘溢れる儀式で科学と魔術が交わり、激しさを増す。 空を舞う超能力者の勝負と同時に、地上でも英傑がぶつかり合っていた。 ガァン!と激しい金属音を打ち鳴らし、白と緑の影が切り結ぶ。 力比べは白い戦士に軍配が上がる。 巨大な薙刀は剣と盾を交差させても受けとめきれず、後ろに跳んで受け流す。 そこから前転、足元を潜り抜けて背後へ。 体格差をも利用して‭隙を狙う。 反転、即座に逆袈裟。 対してニューゲートは薙刀を振るった勢いをそのままに強く地面に踏み込み、周囲一帯に地震を起こし弾き飛ばす。 躱しきれず吹き飛ばされるリンク。 それでも空中で苦し紛れにバクダンを放ち、追撃を防ぐ。 僅かに開いた距離で二人が体勢を立て直そうとする瞬間。 群がる使い魔。些細であるが無視はできない脅威。 二人は得物を振るいそれを打ち払う。 退魔の剣が真価を見せた。 触れるだけでするりと、空を切るのと変わらぬ速度で使い魔を切って捨てる。 ニューゲートも薙刀を振るい、容易く迎撃する。 だがそこで武器の違いが二人に差を生み出した。 片手で扱う剣と両手で扱う薙刀。 取り回しの速度の違いは僅かながら勝敗の一因となる。 ニューゲートの武器がまだ外に流れている瞬間に、リンクは再び武器を構える域にまで立て直す。 そして 「はぁっ!」 刺突。 心の臓を穿たんと繰り出した神速の一撃。 武器を構えなおし受け止める猶予はなく、決まるかと思われた。 対するニューゲートは、瞬時に武器を手放していた。 その空いた手で何もない空間を掴み、武器を振るった勢いの慣性そのままに『投げた』。 すると 「な…!?」 突然の事象に驚きの声をあげるほむら。 ニューゲートの腕の動きに合わせたかのように大地が傾いたのだ。 グラグラの実の力。世界最強と言われた超人種。 その力は島一つ程度なら容易く傾ける。 世界から切り離された固有結界の中ならば、その世界そのものを揺るがすことすら可能とする。 揺らいだ足場に、ニューゲート以外の地に足をつける者はバランスを崩し、刺突の軌道も乱れる。 それと同時に揺らいだ勢いそのままに薙刀が綺麗にニューゲートの腕に収まる。 そして躱しざまに一閃。 かろうじて盾で受けるが、力の差は如何ともしがたく数メートル吹き飛ばされる。 射程の差。それもまた勝敗の一因となる。 リンクの三倍はあろうかという体躯のニューゲート、それにふさわしいリーチと長大な武装。 数メートルの距離はリンクにとって一方的に攻撃を受ける間合いだ。 圧倒的な力による蹂躙をかろうじて捌き続ける。 唐竹を避け、切り上げを剣で受け流し、刺突を盾で受け、その勢いを利用して距離をとる。 薙刀の射程から離れれば優位は逆転する。 即座に弓を構えて放つリンク。 それを躱し、震動で対抗するニューゲートだが、小兵のリンクとでは的の大小において言うまでもない不利が生じる。 鳥の目すら射貫くのではという正確なリンクの射を躱し、迎撃し、震動で反撃する。 余波で時折使い魔も打倒しながら、駆け引きが続く。 いかなる距離をとるか、いかなる戦略をとるか。 ニューゲートが薙刀先端に能力を収束。 広範囲に震動と斬撃を放つ。 リンクは大きく横に跳んでそれを回避。 即座に反撃の一矢を射ようとする……が。 再び群がる大量の使い魔、さらに魔女までもが攻撃に参加する。 それも全てリンクに向かって。 「薔薇園は立ち入り禁止らしいぜ?」 拳を構え、突撃しながらからかうような声かけ。 リンクは足元で踏みつぶされた薔薇に気づいた。 ニューゲートが操祈を通じて把握していた結界内の文字、〈KeinDurchgang!!〉の意味。 情報の差も、また勝敗を決する一因。 薔薇園におびき寄せ、敵を利用して隙を作る。 リンクは即座に剣に魔力を巡らせ、回転切り。 使い魔の一掃には成功する。 だが、もう一つの縛りが彼を邪魔した。 魔女を仕留めれば結界が解け、敵が解放されてしまう。 それは避けなければ、と魔女に対しては峰打ちで吹き飛ばすにとどめる。 その不合理な動作が隙を生み、ニューゲートの一撃を躱す時間を時の勇者から奪い去った。 繰り出される正拳突き。 それを受ける右手の盾。 まるで鈍器を打ち据えたような衝撃音、アイアンナックすら霞む豪の一撃。 「うぁッ!?」 拳の衝撃はかろうじて盾で受けっきった。 しかし震動は伝播する。 放たれた拳にまとった能力はハイラルの盾を超え、その腕を侵す。 再起不能、というほどではない。 しかし暫くはまともに使いものにはならず、盾や弓の使用には支障をきたすだろう。 その苦境でも諦めず、リンクは反撃の剣を振るった。 それに少しだけ驚いたような反応を見せるが、当然のように薙刀で受け止め、軽々と跳ね返す。 僅かに開いた距離。 そこでリンクはバックステップ。引き際に矢を左手で抜き出す。 それをブーメランかあるいはスローイングナイフの要領で投擲。 弓を用いたものには威力も速度も精密さも劣るが、侮るべからざるは武芸百般の英傑か。 十二分な殺傷手段であるそれをニューゲートはかろうじて回避し、追撃に踏み込もうとする。 だが 「あァ!?」 回避したはずの矢が後ろから右腕に突き刺さる。 (跳弾…?いやあり得ねェ。いくらなんでも真っすぐ戻ってきて威力を一切損なわないなんざ無理だ。何をした……?) 突き刺さった矢を引き抜きながら敵を見る。 だらりと力なく下がった左腕だが、右腕にはしっかりと剣を握り構え続けるリンク。 視線にはいまだ力漲り、戦場を見据えている。 その目に映るのは矢を引き抜く敵の姿。そしてその後方でいまだ闘い続ける二人のサーヴァント。 ニューゲートが魔女の特性を利用したように、リンクも一方通行の能力を利用したのだ。 一方通行の反射により、彼に放った攻撃は威力そのままに跳ね返ることを剣を交えリンクは知っていた。 ならば動きを先読みし、的確に矢を打ち込めば跳ね返った攻撃を敵に改めて当てることも可能となる。 互いに片腕にダメージを負った英傑二人。 再びにらみ合い、開戦。 盾を打ち捨て、剣のみで突貫するリンク。 薙刀を送還し、拳と能力で迎撃するニューゲート。 盾での守勢も、弓での遠距離戦もできないなら。 不自由な片腕で薙刀を振るえないなら。 剣/拳の届く距離でひたすらに鎬を削るしかないと。 それを離れたところから見ることしかできないほむら、そしてNPCを介した操祈。 使い魔相手に自衛し、魔女相手にも目を配るほむらにサーヴァントの戦局に介入するはなかった。 NPCに戦闘手段はないが、彼女に使い魔は殆ど害をなさない。 薔薇園を地震や攻撃の余波で荒らす他のサーヴァントへの敵意が強く、木っ端に過ぎない彼女は完全に無視される形になっている。 それを幸いとひっそり戦場を離れていく。 相も変わらずライダーの攻撃範囲は凄まじい。巻き込まれてはたまったものじゃない。 第一位と二位の流れ弾が飛んでこないとも限らない。 庇護者から離れるのも危険だが、同行していても危険。 結論、まだ見ぬ敵を恐れるより目の前の事象から逃げるべきである。 その判断を司令塔である食蜂操祈本体へ、そこから刑兆を通じて念話でニューゲートに伝える。 その応答を待つなどせずそそくさと引き下がる。 NPCがやられたところで信条的にはつらいが、戦力的には特に響かない、と打算も込みで。 「…正直趣味が悪いのとは思うけど、技術力的にはすごいわね、キュウべえって」 学園都市出身の自分が言うのもなんだが。 才能ある少女を選んでいるとはいえ、その魂を物質化し、最期には固有結界の解放にまで至らせるとは。 知己と言えるものはいないが、魔術師が知ったら驚くなんてものじゃなさそうだ。 「これが心象風景だとすると、この結界の持ち主はどんな精神構造なのかしらあ?」 観光のような心持で敵の能力を考察。 一応現れえる敵を予測するのだから無意味ではないだろう。 (薔薇園に立ち入り禁止の文字。薔薇が好きだったんでしょうね。  襲ってくるのは蝶のような怪物で、武器は剪定鋏。カイゼル髭は庭師がモチーフかしらぁ?こんなところにまで顔を出す、薔薇園と術者の数少ない味方。  術者らしい怪物にも薔薇と蝶のモチーフが散見。溶け落ちたような顔に、無数の目。  どこから見ても、蝶や薔薇の様に美しくありたかったという願望の表れに見える。  崩れたメイクのような顔、歪な芋虫のような体と茨のような足はそうなれなかった現実とそれによる絶望力の発露、といった感じ?  女としては共感する者があるわねぇ……ってあらぁ?) 思考しながら歩いていると前方に人影。 咄嗟に散在する瓦礫の一つに身を隠し観察。 これと言って特徴の見出せない、どこにでもありそうな茶髪に中肉中背の少年の姿が目に映る。 際立って脅威というものを感じないそれをNPCかとも思うが (いいえ、辺り一帯のNPCは避難をさせている。地震があった海岸線であれだけ派手に騒ぎ立てて逃げ出さないNPCがいないとは思い難い。  間違いなく聖杯戦争の関係者。一位か二位のマスター、でしょうね) 本体との接触であれば手の打ちようもあるが、無力なNPCを通じてではせいぜいが情報確保しかできない。 それも正面から対峙するのは避け、物陰からひっそりと。 熱に浮かされたようで足取りで結界の奥深く、戦場へと歩みを進める少年を見送る。 (正気じゃなさそうねえ。何らかの精神干渉を受けている。一位ならそういうのを放っておくとも思えないし、二位のマスターかしらぁ?) 追いすがって何かできるわけでもなく。 その存在を周知できたらこのNPCも解放して避難させようとあるかもわからない結界の出口を目指し、フェードアウト。 偽りの妹達は舞台を降りた。 代わって舞台に姿を見せたのは浅羽直之。 バーサーク・アサシン、垣根帝督に従い北上した彼だったが開戦前に別行動をとっていた。 理由は単純、邪魔になるから。 もし敵が来たとしてもショゴスさえあれば多少は問題ない、と素気無く去るサーヴァントに何も言わず見送った。 実際闘えと言われても困る。そういうのはただの男子中学生には無理だ、水前寺ならともかく。 公園で見た、悪魔染みたバーサーカーの激突。 崩壊した学園を背景に繰り広げられた麗しきアーチャーの衝突。 徹頭徹尾介入できるようなものではない。 それでいいの?と声がした。 最初は幻聴だと思った。伊■■のために何もできなかった良心の呵責。 殺してやる、と声がした。 今度はアサシンが念話で何か言っているのだと思った。 逃げ惑う人々の声が聞こえた。 幻聴でも念話でもないと気付いた。 殺意と狂気に染まった数多の声が聞こえた。 憎悪に堕ちた女性の声が聞こえた。 響き渡る狂騒。脳裏に焼き付いて離れない美しい女性。 事実としてのぼせて浮足立った精神状態に追い打ちをかけるように突如聞こえてきた声。 体内にショゴスとやらを入れてからか。 ある種の体調不良、反動のようなものだと考察するが、むしろ体に訳のわからない代物を注がれて何の異常もない方が不気味なので、この変調には恐ろしさと同時にどこか安心も覚えた。 しかし異常な現象はむべなるかな、心を削る。 半ば放心し、必死に声から耳を逸らそうとしていると。 ひときわ大きな声が聞こえる。 その声を聴いてなぜか思った。天使がいる、と。 声の聞こえる方へ足は向かう。 震える大地を歩み、崩壊した街を超え、奇妙な空間に潜り込んでも進み続けた。 たどり着いたのは戦場だった。 蝶のような多数の怪物を抑えるように銃器を振り回す少女。 白いひげの巨大な男が大地を揺るがし、緑衣の剣士がそれに必死に食らいつく。 自らと契約したアサシンもまた闘っている。昼に見た、狂戦士相手に超常現象を引き起こして。 あ……と小さく声を漏らした。 頭の中で響く声を塗りつぶすような戦闘音に現実に引き戻され、恐怖が湯水のように湧き出る。 血の気が引き、ふらつき、バランスをとるために一歩足が前に出る。 ――薔薇を一輪、踏みつぶした。 ぎょろり、と数十匹の怪物、数百はあろうかという眼がこちらを射抜く。 それに気付くものもはいなかった。 浅羽直之のサーヴァントである狂える暗殺者も。ナワバリを庇護する大海賊も。世界を救う時の勇者も。魔女を滅ぼす魔法少女も。 仮に気付いたとして、目の前の敵を放り出すほど気に留めるかは別だろうが。 けたたましい声を上げて使い魔が浅羽に襲い掛かる。 群がる使い魔が減ったことでようやくほむらがそれに気付く。 時を止め、銃を構えることも少しだけ考えるが、すぐに断念。 敵に囲まれたこの状況で誰とも知れないものを庇っているヒマなどないと。 おびただしい怪物に覆われ、最期を迎えるかと思われた。 次の瞬間、そこには悍ましい色と形の肉塊があった。 ずるり、とその肉塊が蠢く。 てかりのある真っ黒な色合いを基調に、猛毒のカエルやキノコのような極彩色の粘液がそこら中にへばりついている。 深海を揺蕩うタコのようにも、たるみ切ったゴムが火で炙られたかのようにも見える奇妙な質感。 この世ならざる生き物を想起させる、不気味な異物。 その表面が泡立つ。 次の瞬間、泡立った肉が液体のように流動して形を変える。 使い魔から宿主を守っていた外なる存在が、牙をむいた。 肉塊は触手を形成し、それを振り回す。 鞭のようにしなるそれが群がる使い魔を振り払い、さらに変形。 触手の先端が強度と鋭さを増し、数も増し、ズドン!!と弾丸のような速度で撃ちだされる。 使い魔の体に風穴を開け、次々に仕留めていく。 その脅威を認識したか、潮の様に引いていく使い魔。 それを確かめ、肉塊もまた一時矛を収める。 めりめり、と狭い空間を蛇が這いまわるような音が浅羽の体中から響く。 体の中央で不気味な鼓動を打ち鳴らす名残をのこして、どこにでもいるただの男子中学生が再び姿を見せる。 数多の魔女を見たほむらも見るだけで正気を削るような不気味な肉塊には顔をしかめた。 使い魔の動きを感じ、ほむら以外も続々と浅羽に気づき始める。 その誰もが――垣根までもが――大して気にも留めない。 そのうちの一人、一方通行と浅羽が一瞬目を合わせた。 最も強大な声。最も高みにある声。天使のものだと思った。 その戦いを目にする。 翼を打ち鳴らし、様々な事象を引き起こし、ぶつけるアサシン。 その事象を躱し、時折雄叫びを上げながら反撃する天使。 なぜかその羽音や叫びを聞いていると頭が晴れてくる気がした。 羽音は呪文だと、叫びは呪詛だとその意味をリスニングできるようになっていく。 天使に啓示を受けたのかなどと頓狂なことを思っていると 再び使い魔が攻撃を開始する。 その発する声もより深く聞き取れるようになっていた。 「右手の鋏で切りつける」 動作を先読みして、まるでその道の達人の様に余裕をもって躱す。 「飛行の勢いを利用して頭突き」 左右から襲ってきた使い魔を、再び湧き出した肉の槍で迎撃する。 「取り囲んで、鎖で縛る」 肉塊が醜悪な翼のようなものを形成して飛び、廃ビルのような内装の壁面にへばりついて攻撃の範囲外へ。 使い魔の攻撃を容易く回避する浅羽の振る舞いはもはやどこにでもいるただの男子中学生で収まるものではなくなっていた。 とある世界では前兆の感知と呼ばれるもの。 別のある世界では見聞色の覇気を呼ばれるもの。 それに匹敵するレベルで、浅羽は使い魔の声を聞き取っていた。 その力の正体は、目覚めたPSI。 念話も聞き取るレベルに強化された聴覚……『強化』のライズ、その中でも感覚を強化するセンスと呼ばれる分野。 能力を獲得した肉体に、未元物質という超能力の極みを注がれ、脳がそれになじんだことで新たな領域に達したのだ。 強化された聴覚が捉えた様々な言語。 大天使マンセマットの詠唱、魔王ルシファーの強制詠唱、それらの記憶。 垣根帝督の奏でる魔術、一方通行の歌う魔術、魔女の声。 響く声を聞き分け、糧として得た聴覚はその身を守る鎧か具足。 そして、彼は昼の時分で念話を発することもできるようになっていた。 積み上げた経験値が自らの声も強化する。 強化された聴覚が魔女の接近を感知する。 巨大なそれは回避しきれるものではない。 来るな、と声を上げる。 『強化』された声帯で、世界そのものに語り掛ける。 「   」 発した声はすでに人の領域を超えていた。 神代の魔術師が扱う高速言語か。バベルの塔崩落以前の統一言語か。 あるいは天使の詠唱エノキアンか。 言葉一つで外界に干渉し、魔女を退けた。 「え…あれ?」 自分でも何をしたのか分かっていないのか、戸惑った様な声を漏らす。 次の瞬間にごほごほと咳き込み、血の混じった痰を吐く。 やっぱり何らかの副作用かな、と着地しながら反射的に思考。 でもなぜかその代償のような何かもどことなく愛しく思える自分がいて。 それもよし、と息を吸う。 今度は意図して喋ってみよう。 あの天使のように。アサシンの羽音のように。 覚えたばかりの難しい言葉を使いたがる子供の様に、浅羽は天使の言葉を歌った。 それは『咎歌』と呼ばれる天使の詠唱。 一帯の使い魔を、魔女をも吹き飛ばし戦場に存在感を示す。 それと同時に体に宿した未元物質が形を変える。 体内で蠢く異形の生命体から体外を彩る異様な鎧へ。 全ての色を溶かしたような不気味な黒は、あらゆる不純を受け入れないような生粋の白へ。 未元物質本来のそれに近い、ある種の悍ましさすら覚える白へ。 無機質かつ神秘的な白……まるで神話の神々や天使の手になじむ兵器の様に。 二人の狂戦士はそれを黙殺した。 だが他の面々は新たな敵としてその少年を認識する。 ――カラァン、と鐘の音が響いた。 時代の終わりと始まりを告げる鐘の音が。 空気が変質していく……潮風だ。 エドワード・ニューゲートを中心に世界が塗り替えられていく気配。 それに過敏な反応を見せたのは二人。 魔女Gertrudは、天使の出現に加え己の結界が‌より強大な神秘に侵されていくことを実感し完全に尻尾を巻いて逃げ出した。 そしてニューゲートと対峙していたリンクもその出現を、それを防ぐことができないと悟る。 敵の固有結界に囚われれば勝機も薄く、そして離脱もほぼ不可能になると。 ……捕らわれる前に、退く。でなければマスターの仲間の援護に行くことも叶わず敗退することになる。 鐘の音が響く。 ふと、時のオカリナを取り出した。 鐘の音が響く。 ピエールを呼び出す音楽を紡いだ時の様に自然と指が動く。 鐘の音が響く。 バーサーカーの真似た『闇のノクターン』をベースに、白いサーヴァントやマスターらしき少年の歌、魔女の歌も交えたアレンジ。 時代を告げる鐘の音とのセッション。 天使の唱える歌唱に、悪魔の響かせる鐘の音にインスピレーションを受けた詩曲。 名づけるなら聖誕曲、『混沌のオラトリオ』といったところだろうか。 時代の始まりと終わりを告げる16の鐘の音が響き終わる前に、リンクは即興の楽曲を奏で終え、ほむらとともに姿を消した。 垣根帝督と一方通行は目の前の敵にかかりきりでそれを気にも止めなかった。 そして世界が塗り替えられる。 侵入者を拒む薔薇園は崩落した正義の砦に。 蝶のような使い魔は荒くれ物の集団に。 不死鳥が、生きる炎が、金剛石が、魚人が、巨人が、巨大な猫や犬のような戦士が闊歩する世界。 伝説の戦場が再現された…… 「うッ、ぐぁ……!」 のも一瞬のこと。 左胸を抑えうずくまるニューゲート。 (こんなときにコイツ……!) 高齢ゆえに持ち得る経験値と引き換えに保持するざるを得ないバッドステータス、心臓病。 それが固有結界の成立を阻む。 強制的に固有結界が解除されたことでナワバリから集めた魔力も霧散し、敵影もバラバラの地点に放り出されたらしく、地震で崩れた建物の近くにうずくまる自分一人しか姿は見えない。 (敵の固有結界は破れたが、その果てにこれじゃあ世話ねェな……) 周囲を見渡す。 やはり人影が全くない。 (あのガキの『歌』……ありゃ『悪魔』を征する詠唱だ。放っておくと厄介なことになる) 排除すべき脅威と認定した。 あいつのサーヴァントも、目の前の剣士もどけて片づけるには切り札を見せるしかないと。 だがそこでまさかのファンブル。 一気に決着とはいかなくなったが…… (おれの固有結界が解けて全員バラバラに散ったのなら、まだ真っ先にあいつを見つければ勝負には持ちこめる) しかしそこまでするべきか。 もとより襲撃され、巻き込まれたのが今回の戦闘のきっかけ。 いくら悪魔を宿す自分の天敵ができたとはいえ、退いた敵に追撃するよりも味方と合流するべきではないか? 内心の天秤をどちらに傾けるか悩んでいると マスターから念話。 霊体化し、即座に移動。 合流へと即座に天秤は傾いた。 【B-3/北部/二日目・未明】 【ライダー(エドワード・ニューゲート)@ONEPIECE】 [状態]ダメージ(小、右腕は戦闘に支障)、魔力消費(小)、『手出しを許さぬ海の皇のナワバリ(ウィーアーファミリー)』発動中 [装備]大薙刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:刑兆の行く末を見届ける 1.急ぎ刑兆のもとへ合流。 [備考] ※NPCの存在、生活基盤の存在及びテレカのルールは聖杯、もしくは天戯弥勒の目的に必要なものと考えています。 ※キャスター(操祈)と垣根が揃っていたのと同様、ルフィと自身が揃っているのにも意味があるかもしれないと考えています。 ※宿およびその周辺をナワバリとしました。 ※浅羽、バーサーク・アサシン(垣根)、ほむら、セイバー(リンク)を確認しました。 それより僅かに南。 檻から放たれた獣のように声を上げる超能力者(レベル5)。 それをひたすらに目指すもう一人の超能力者(レベル5)。 戦況の外で沈黙を守る超能力者(サイキッカー)。 目覚めた新たな力に酔う超能力者(サイキッカー)。 さらなる科学と、魔術が交わる。 【B-3/北東部/二日目・未明】 【間桐雁夜@Fate/zero】 [状態]肉体的消耗(中)、魔力消費(中)、PSIに覚醒 [装備]多数の自動人形 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を取り、間桐臓硯から間桐桜を救う。 1:間桐桜(NPCと想われる)を守り、救う。 2:セイバー(リンク)とそのマスター(ほむら)を殺害する。 [備考] ※ライダー(ルフィ)、鹿目まどかの姿を確認しました。 ※バーサーカー(一方通行)の能力を確認しました。 ※セイバー(纒流子)の存在を目視しました。パラメータやクラスは把握していません。 ※バーサーカー(不動明)、美樹さやかを確認しました。 ※PSI粒子の影響と一方通行の処置により魔力量が増大しました。 ※PSI粒子の影響により身体能力が一般レベルまで回復しています。 ※生活に不便はありませんが、魔術と科学の共存により魔術を行使すると魔術回路に多大な被害が発生します。 ※学園の事件を知りました。 ※セイバー(リンク)の存在を目視し能力を確認しました。暁美ほむらの姿を写真で確認しました。 ※キャスターのマスター(人吉善吉)と残り主従が6騎になるまで同盟を結びました。善吉に対しては一定の信用をおいています。 ※鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらが知り合いであること・魔法少女であることを知りました。 ※暁美ほむらの魔法の鍵が「盾」であると予測しています。 ※PSI能力「トランス」が使えるようになりました(固有名称未定)  頭部に触れた相手の記憶を読み取る、相手に記憶を流すことが可能です。 【バーサーカー(一方通行)@とある魔術の禁書目録】 [状態]ダメージ(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:■■■■─── 1:───(狂化により自我の消失) 2:垣根帝督を倒す 3:セイバー(リンク)を倒す [備考] ※バーサーカーとして現界したため、聖杯に託す願いは不明です。 ※アポリオンを認識し、破壊することが可能です。 ※闇のノクターンを聞き、また習得しました。 【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】 [状態]魔力消費(中)、魅了状態 [令呪]残り3画 [装備]サンプル・ショゴス(未元物質) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:彼女のため、聖杯の獲得を目指す。 0.多数の埒外の事象に加え、魅了状態に伴う現実感の喪失 1.力を得たこと、伊■■を思わせる副作用に興奮 2.キャスターと共にいるというサーヴァントはアーチャーさんが闘いたいらしいから、できれば相手にしたくない [備考] ※PSI粒子の影響を受け、PSIの力に目覚めかけています。身体の不調はそのためです。 →念話を問題なく扱えるようになりました。今後トランス系のPSIなどをさらに習得できるかは後続の方にお任せします。 →PSI能力「ライズ」が使えるようになりました(名称未定)。  聴覚を強化することで念話を聞き取り、また見聞色の覇気@ONEPIECEに近い効果を発揮します。  また声帯を強化することで念話を発し、天使の歌唱@真・女神転生STRANGEJOURNEYに近い効果を発揮します。ただし魔術に近い技能なので科学と魔術の共存による反発もあるようです。 ※学園の事件を知りました。 ※タダノがマスターであることを知りました。 ※まどか、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※巨人を目撃しました。 ※天戯弥勒と接触しました。 ※モリガンを確認しました。 ※未元物質が体内に入り込み、脂肪、魔術回路の代用となっています。これにより魔力量が増大しています。  また武装にもなり、宿主を守るよう機能します。PSIを利用できればある程度はコントロールもできます。  ただし、脂肪をすべて排泄してしまっているため、これが抜け落ちた場合何らかの対処をしなければ死に至ります。 →天使の歌唱を習得した影響で、聖柱ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEYや、15巻において黒翼をみて変形した未元物質に近い形に進化(?)しました。 ※ほむら、セイバー(リンク)、ライダー(白ひげ)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。 【バーサーク・アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録】 [状態]魔力消費(小) [装備]天使の装い [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:一方通行を殺す。 1.一方通行を殺す。それ以外もはやどうでもいい。 2.もし浅羽が裏切るか、食峰などに操られたら切り捨てるのもいとわない。 [備考] ※鬼龍院皐月がマスターでは無いと分かっています。 ※屋上の異変に気付きました。 ※夜科アゲハがマスターであると断定しています。 ※リンク、犬養、食峰を確認しています。 ※アサシンのころの記憶はほぼ全て覚えています。 ※審判者ゼレーニン@真・女神転生STRANGEJOURNEY のような衣装になっています。  なぜか未元物質が翼の形になってしまうのと同様、デザインを変えることはできないようです。 ※ステータスはアサシン垣根帝督のものとほぼ同様です。  ただし狂化の属性が付与されたことで、知性は保ちつつも、一方通行への復讐に囚われていた時期以上に狂暴化し、思考も短絡化しています。 ※未元物質で唱える魔術(真・女神転生STRANGEJOURNEYのもの)を扱えるようになっています。 「お前たちに問うことがある」 戦場から一時逃げたその先が安全とは限らない。 この地はいずれも聖杯戦争の会場なのだから。 「鹿目まどかは、どこだ」 魔女結界の開いた北の地で、少年少女のもとに悪魔が舞い降りた。 【A-4/南部/二日目・未明】 【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]健康、魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]ソウルジェム [道具]グリーフシード×5@魔法少女まどか☆マギカ、財布内に通学定期 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1:まどかを助ける(罠の可能性を考慮) 2:ほむらと合流してまどかを元の世界に返す 3:まどかを帰還させた後はほむらの動向に警戒 [備考] ※浅羽直之、アーチャー(穹撤仙)を確認、フェザーと名乗られました。 ※暁美ほむらが昔(TV版)の存在である可能性を感じました。 ※暁美ほむらが何かしらの理由で時間停止に制限が掛かっていることを知りました。 ※まどかへの連絡先を知りません。 ※ほむらと連絡先を交換しました。 【不動明(アモン)@デビルマン】 [状態]魔力消費(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が信用できるかどうか調べる 1:さやかに従い行動 2:金のキャスター、銀のキャスターへの対処 3:マスターを守る [備考] ※穢れの溜まったグリーフシードを『魂喰い』しました。今のところ影響はないですが今後何らかの影響があるかは不明です。 ※キャスター(フェイスレス)に不快感を覚えています。 ※世界改変の力を持った、この聖杯戦争の原因として魔法少女(まどか、ほむら、さやか)とサタンを想定しています。 [共通備考] ※マップ外に出られないことを確認しました。出るには強力な精神耐性か精神操作能力、もしくは対界宝具や結界系宝具が必要と考えています ※マップ外に禁人種(タヴー)を確認しました。不動明と近似した成り立ちであるため人間に何かがとりついた者であることに気付いています。NPCは皆禁人種(タヴー)の材料として配置されたと考えています ※間桐雁夜(名前は知らない)、バーサーカー(一方通行)を確認しました。 ※セイバー(リンク)陣営との同盟を結びました ※キャスター(フェイスレス)の真名を獲得しました。 ※学園の事件を知りました。 ※聖杯戦争の会場を作ったのも、願望器自体も世界改変の力と予測しています。 ※キャスター(食蜂操折)の外見と能力、そのマスター(犬飼伊介)の外見の情報を得ました。 【虹村刑兆@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]いつもの学ラン(ワイヤーで少し切れている) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:おやじを殺す手段を探す。第一候補は聖杯。治す手段なら……? 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。 2:天戯弥勒、またはその関係者との接触を予測。その場合聖杯について問い詰める。 3:バッド・カンパニーの進化の可能性を模索。能力の覚醒に多少の期待。 4:公衆電話の破壊は保留。 [備考] ※バッド・カンパニーがウォルターに見え、ランサーに効かなかったのを確認、疑問視しています。 →アーチャーとの交戦を経てサーヴァントにはほぼ効かないものと考えています。 →キャスター(操祈)がほむらと交戦してダメージを受けたのを確認し、対魔力が重要な要素であると確信。 ※サーヴァント保有時に紅いテレホンカードを使用しても繋がらない事を確認しました。 ※サキュバスなどのエネルギー吸収能力ならばおやじを殺せるかもしれないと考えています。 ※学園の事件を知りました。 ※麒麟殿温泉の下見は済ませました。なにかあったか詳細は後続の方にお任せします。 ※夢を通じてニューゲートの記憶を一部見ました。それにより17歳の頃のルフィの容姿を把握しました。 【犬飼伊介@悪魔のリドル】 [状態]疲労(中)魔力消費(微小)微熱、PSIに覚醒 [令呪]残り三画 [装備]ナイフ [道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など)、ベレッタM92F(残弾12発)、コンビニで買った着替え [思考・状況] 基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす 0:食蜂操祈に心を許さない。 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。 2:学園と家にはあまり近付かない。 [備考] ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。 ※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。 ※PSI粒子の影響と食蜂の処置により魔力量が増大。今後能力に覚醒するかは後続の方にお任せします。 →症状は現在完治とはいかないまでも小康状態にあります。 ※操祈の過去を夢に見ましたが、その記憶は消去されました。 [共通備考] ※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。 ※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。 ※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。 ※洗脳した生徒により生徒名簿を確保、欠席者などについて調べさせていました。紅月カレン、人吉善吉、夜科アゲハの名簿確認済み。 ※ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※ランサー(慶次)への絶対命令権を所有しています(宝具による) 【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】 [状態]ダメージ(大)、魔力消費(大) [装備] [道具]ハンドバック(リモコンが一つ)、アッシュフォード学園の制服 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆ 1:目の前の悪魔染みたサーヴァントに対応。鹿目まどかとか今更……? 2:犬飼の体調が安定したら能力を試してみたい。 3:図書館でサーヴァントや聖杯、世界改変について調べてみたい。 4:犬飼には一応警戒する [備考] ※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。 ※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。 ※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。 ※人吉善吉に命令を行いました。後始末として『食蜂操祈』および『垣根帝督』のことを認識できなくしました。現在は操っておりません。 ※ランサー(慶次)とセイバー(流子)の戦闘を目撃した生徒を洗脳し、その記憶を見ました。  それにより、慶次の真名とアゲハの能力の一部を把握しました。流子の名は聞いていませんでした。 ※まどかの記憶を見ました。少なくともインキュベーターのこと、ほむらの容姿、タダノとの同盟、ルフィの真名と能力を把握しています。他にどのようなことを知ったかは後続の方にお任せします。 ※超能力を目覚めさせる因子の存在(PSI粒子)に気づきました。アッシュフォード学園、麒麟殿温泉の近くにあるとほぼ確信しています。 ※ほむら、またはそのサーヴァントは情報収集の能力があると推察。重要事項は胸の内に秘めるつもりです。 ※赤いテレホンカードの完成形はオティヌスの用いた『主神の槍(グングニル)』に近いものと考えています。 ※伊介の能力を心理系(PSIでいうならトランス系)のものと予測しています。 ※以下の情報を刑兆、ライダー(ニューゲート)、操祈は共有しています。 •アゲハ&セイバー(流子)、ルキア&ランサー(慶次)、善吉、カレン&セイバー(リンク)、タダノ&アーチャー(モリガン)、まどか&ライダー(ルフィ)、ほむら、ウォルター&ランサー(レミリア)の容姿と把握する限りの能力(ルフィについては伏せた点有)。サーヴァントならパラメータも把握。 •アゲハ、ルキア、善吉、カレンのこの地での住所、連絡先。 •アゲハはタダノを一撃で倒す程度の能力者である(暴王の月の存在)。 •ルキアは稲妻のような物を放つ能力者である(白雷の存在)。 •善吉の技能と『欲視力』。 •カレンは能力者ではないが、それなりに戦える人物である。 •まどかは強力な魔法少女となり得る才能がある。 •ほむらも魔法少女であり、操祈にダメージを与えることができる。 •タダノはサキュバスのようなものに耐性があるかもしれない。ただし耐久はアゲハに倒されるくらいで、人並みか。 •ウォルターは能力者ではないが、腕の立つ戦闘者。吸血鬼と何らかの因縁がありそう。 •ランサー、真名は前田慶次。巨大な刀が変形(真名解放?)して朱い槍になると予測。逸話、もしくは技能系の宝具持ちと予測。 •セイバー(流子)は『鋏』と『糸』がキーワードになる英霊。文明への反抗者と予測。二刀流の可能性を警戒。 •セイバー(リンク)は剣技や騎乗スキルに加えて結界、炎などの多芸さから『勇者』がキーワードになると予測。 •アーチャー(モリガン)は『サキュバス』と『分身』あるいは『もう一人の自分』がキーワード。 リリム、あるいはリリト?それなら海、出血、原罪、天罰などが弱点で、子供は注意が必要。  何かを撃ち出す宝具を持っているはず。 •ランサー(レミリア)は『吸血鬼』がキーワード。ただしその吸血鬼としての在り方はあまりにベタすぎる。無辜の怪物や幻想上のものの様な迷信に近い存在と予測。宝具であろう槍を警戒。日光は弱点になると予測。 •ライダー、真名はモンキー・D・ルフィ。ニューゲートの知り合いで能力者。キーワードを上げるなら『麦わら帽子』、『ゴムのような体』、『覇気』あたりか。 •刑兆はスタンド使い(バッド・カンパニーと言い、ビジョンも見せた)であり、多くの人物にスタンドを目覚めさせた経験がある。そのリスクなどについてそこそこ詳しい。 •ライダー(ニューゲート)とルフィは知り合い。能力者。 •キャスター(操祈)はアサシン、垣根帝督と同郷の超能力者で、垣根の方が上位。宝具(能力)は心を操ることで、対魔力で抵抗可能。 •能力を覚醒させる何か(PSI粒子)が学園、温泉近くにあり、それにより犬飼が学園都市の超能力に近いものを身に付けつつある。 •麒麟殿温泉は能力獲得時に頻発する体調不良を和らげる効能がある。 •魔力供給、対魔力、獲得のリスクに見る超能力、犬飼の能力(PSI)、スタンドの近似性。 •天上、天国に見る魔術、超能力、スタンドの近似性。 •アゲハ、ルキア他多数のスタンドでも超能力でもなさそうな能力者の存在。 •魔法少女という人型の願望器の存在。その才能を持つ鹿目まどかに、魔法少女である暁美ほむら。 •スタンドを目覚めさせてきた刑兆、学園都市の超能力者で『絶対能力進化』のことを知る垣根と操祈、『フラスコ計画』に関与した善吉など能力覚醒に関する参加者が多い。 •幻想御手(レベルアッパー)、虚数学区などの複数の能力者を束ねてなる超常の存在。 •不明金属(シャドウメタル)という、複数の能力者と天上が関わるであろう存在と、謎の磁性体である赤いテレホンカード。 →以上よりこの聖杯戦争はマスターを能力者として進化・覚醒させ絶対能力者(レベル6)『天之杯(ヘブンズフィール)』とし、サーヴァントも含めぶつけ合わせることで不明金属(シャドウメタル)を獲得。  それによって『元いた世界へ行くテレホンカード』を『平行世界へ行く霊装』、『天上、あるいは根源へ行く霊装』、『英霊以上の超常の存在を連れて来る霊装』などに完成させようとしている、という予測。 「ここは……どこ?」 暁美ほむらとリンクは見覚えのない、幾何学的な空間に迷い込んでいた。 時のオカリナで奏でた音楽が力を発揮し、神殿へと飛ぶように新たな時空へ招かれたのだ。 リンク一人でなくほむらも同行したのはマスターとサーヴァントの契約が、生前ナビィを連れられたように機能したからだろう。 「おや、まさか私以外にも侵入者とは。少し驚きだが、君たち二人なら納得だ」 「誰!?」 背後からの声に振り替える。 そこにいたのは青い瞳に金色の髪の美しい少女。 「私はルイ・サイファー。舞台を眺めるただの観客さ。おおっとそう警戒しないでくれ」 即座に剣を構え立ち塞がるリンクに対して両手を上げて害意はないとアピール。 「時の旅人たちよ。どうやら偶然ここを訪れたようだが……  時期尚早だ。まだここに君たちの目当てのものはない。再び戦場に戻ることを勧める」 そういって右手を真っすぐ二人へ向ける。 そして 「新たな天地を望むか?……なんてね」 眩い閃光。 視界を失い、浮遊感と聴覚の身が残る。 「ぺ天使の留守中に私が勝手に上がり込んでいて運がよかったな。見つかっていたらどうなっていたやら。  ……私は君のファンなんだ。君の狂おしいほどに自由でカオスな愛を、そこでも見せてくれ」 何を言っているのよ、と叫ぼうとする。 だが光が晴れたとき、そこにはもう誰もいなかった。 見えるのは夜の闇と、見慣れてしまった不気味な月。 それと 「電話ボックス……」 結界の中でも謎の空間でもない、元の戦場。 「…………まどか!!!」 しかしここはどこなのか。 あの場にいたサーヴァントたちは、何よりまどかはどうなったのか。 急いで、向かわなければ。 【?-?/電話ボックス近く/二日目・未明】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]疲労(大)、焦り [令呪]残り3画 [装備]ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ [道具]グリーフシード(個数不明)@魔法少女まどか☆マギカ(一つ穢れが溜まりきっている)、オートマチックの拳銃 [思考・状況] 基本:聖杯の力を以てまどかを救う。 0:現在地を把握し、すぐにまどかのもとへ。 1:温泉に向かいまどかを助け、帰還させる。 2:キャスター(フェイスレス)を倒す。 [備考] ※自分の能力の制限と、自動人形の命令系統について知りました。 ※『時間停止』はおよそ10秒。連続で止め続けることは難しいようです。 ※アポリオン越しにさやか、まどか、タダノ、モリガン、アゲハ、流子、ルキア、慶次、善吉、操祈の姿を確認しました。 ※明、ルフィのステータスと姿を確認しました。 ※美樹さやかの存在に疑問が生じています(見たことのない(劇場版)美樹さやかに対して) ※一瞬ソウルジェムに穢れが溜まりきり、魔女化寸前・肉体的に死亡にまでなりました。それによりフェイスレスとの契約が破棄されました。他に何らかの影響をもたらすかは不明です。 ※エレン、さやか、まどかの自宅連絡先を知りました。 ※さやかと連絡先を交換しました ※ジャファル、レミリア、ウォルターを確認しました。 ※天戯弥勒と接触しました。 ※巨人を目撃しました。 ※キャスター(フェイスレス)のマスターは最初の通告で存在が示唆されたマスター(人吉善吉)と予想しています。 ※間桐雁夜が「誰かを守るために聖杯戦争に参加していた」ことを知りました。 【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説時のオカリナ】 [状態]魔力消費(小)、疲労(中)、ダメージ(中、右腕は戦闘に支障あり) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに全てを捧げる 0:カレンの意思を引き継ぎ、聖杯戦争を勝ち抜く。 1:暁美ほむらに従う。 2:アーチャー(モリガン)に対する強い敵意。 [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 ※セイバー(纒流子)を確認しました。 ※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。 ※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。 ※朽木ルキア、ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※ウォルター、ランサー(レミリア)を確認しました。 ※巨人を目撃しました。 ※バーサーカー(一方通行)を確認しました。 ※様々な音楽、魔術をヒアリングしたことで新たな音楽を習得しました。  時のオカリナで演奏することで主催陣営の空間(?)に転移することができるようでしたが、今後も同じように成功するかは不明です。 [共通備考] ※バーサーカー(不動明)陣営と同盟を結びました。 ※浅羽直之、バーサーク・アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※ライダー(白ひげ)を確認しました。 ※ルイ・サイファーを確認しました。 ※電話ボックスの近くであること以外の詳細な現在地は後続の方にお任せします。 【?-?/二日目・未明】 【ルイ・サイファー@真・女神転生STRANGEJOURNEY】 [状態]健康 [令呪]??? [装備]??? [道具]??? [思考・状況] 基本行動方針:神々との闘争に勝利し、混沌に満ちた世界を 0.偶然の出会いに若干高揚。 1.基本的に観客に徹する 2.聖杯戦争を通じて明たち同胞に神を敵としてもらいたい 3.神々との闘争に備えて準備 4.戦力増強のため了と子を産むことも考える [備考] ※ルシファーの女性としての面を強く顕現した分身です。  両性具有の堕天使としての特徴を失うことで神々の一派の目を欺いています。 [全体備考] ※麒麟殿温泉近くの宿が白ひげの地震で倒壊しました。 ※B-3商店街近くの家屋が一方通行の手で倒壊しました。 ※一連の騒ぎは操祈の手で大地震としてNPCに広められ、住民の避難が進んでいます。近隣の住民には伝わるでしょう。 ※魔女Gertrud、およびその使い魔がB-3近辺にいます。 ---- |BACK||NEXT| |061:[[Dはまた必ず嵐を呼ぶ/嵐の中嬉しそうに帆を張った愚かなドリーマー]]|[[投下順>本編SS目次・投下順]]|063:[[呪詛「ブラド・ツェペシュの呪い」]]| |~|[[時系列順>本編SS目次・時系列順]]|~| |BACK|登場キャラ|NEXT| |059:[[心波のトランス]]|[[暁美ほむら]]&セイバー([[リンク]])|| |~|[[間桐雁夜]]&バーサ―カー([[一方通行]])|065-a:[[聖なる柱聳え立つとき]]| |057-b:[[翼をください]]|[[浅羽直之]]&バーサーク・アサシン([[垣根帝督]])|~| |~|ルイ・サイファー|065-b:[[魔なる柱雷のごとく出で]]| |054:[[MEMORIA]]|[[虹村形兆]]&ライダー([[エドワード・ニューゲート]])|~| |~|[[犬飼伊介]]&キャスター([[食蜂操祈]])|~| |058:[[真夜中の狂想曲]]|[[美樹さやか]]&バーサーカー([[不動明]])|~|

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