『聖地』




すべて規格外な土地となったため、従来の枠を消去しました。
データ列挙ともいえる横暴ですが、まとめてはいるのでご覧ください。

聖地データ

  • 神殿トギス・ヘル・メルリナゴス
2500年前の三種族による叡智の結晶。
魔素が大陸内をどう循環しているか目視することができる地図や、永遠に時を刻み続ける時計、ありとあらゆる言語が逐次更新される辞書が存在する。
失われし時代の文書が読めるといわれているが、実際に目に入れることができるかどうかは、番人が訪れるか否かによるとされる。

  • 番人フォルディーナ・イデア・ツァトラ
三種族の血が混ざった混血種。
姿を見ることができるのは、代々アガデスタ国王および神子一族、ラステロイ精霊王国王、魔女ミーティケルン・フォン・ケーニギンのみであるとされる。
が、彼らが神殿および聖地の番人である以上、悪しき者や選定を待つ者の前には現れるともいわれている。

  • 精霊王の戴冠
精霊王の戴冠に際して、魔素の力を吸収するため、七日間聖地が封鎖されるときがある。
このときはすべての種族の出入りが禁止され、戴冠に用のある精霊および妖精以外は、いかな魔女やアガデスタ国民であろうとも立ち入ることは許されない。例え他国の王といえど、式が満了するまで封鎖が解かれることはない。
また、この際アガデスタ国民は、2500年前に取り交わした盟約により、聖地を守る役目を担う。

  • 戦いの許されぬ土地
この地では戦が許されない。すべての怒りは消滅し、すべての嘆きは霧散する。
聖なるものは一滴の血をも許容しない。

  • 滞留期間
どれほど長く居座ろうと思っても、人間で感じる一年を超すと、必然的に出なければならなくなる。
番人はやってくるわけでもなく、聖地によってそれ以上の滞留が拒絶されるのである。
いかな研究者であろうとも、これをはねのけることはできない。

  • 食物
いかな食物も存在しえない。持ち込んだものが芽をはぐくむことはあれど、神聖すぎる魔素によって、実を成すことは多くない。
ごく稀に存在する食物は、番人の食事であるといわれ、また、聖地以外の土地の一部の種族によっては、身を滅ぼす食物であるとされる。
赤く丸い果実。瑞々しく甘い果汁であり、悪しき者にとっては、いまはまだ毒である。





歴史


歴史は2500年頃前へと遡る。
かの地は、魔素と呼ばれるエアスター大陸の動力源の根源のひとつであり、悪しき者の吹き溜まりであった。
また、悪しき者は魔素を穢す。穢された魔素を呼吸や動物を介して共に食らう者どもにとって、これほど汚らわしき土地などなかったろう。
当時、かの地の近隣へと住んでいた者たちは、今これを記すわたしのような人間と、そしてラステロイ精霊王国の精霊たちであった。
悪しき魔素を身体にため込み、やがて熟し切った果実のごとく、死へと朽ちていく者ばかりであった。
滅びゆくかの地を、けれど神は見捨てはしなかった。

やがて訪れたるは、魔女、ミーティケルン・フォン・ケーニギン。
そしてまるで彼女の降臨を待っていたかのごとく、精霊王たちの力が最たる処へと到達する。
人間王ツァツォルチアの呼びかけによって、三つの種族がかの地へと呼び寄せられた。

「もはや精霊たちも人間たちも、彼らができるそれぞれの最善は出尽くした。
しかして魔女が訪れたことによって、事態は好転しようとしている。
今こそ手を取り合って魔素を清めなければならない。
どうか力を貸してはくれまいか」

誰が口にしたのかは今となってはわからない。
少なくとも魔女ミーティケルンではないことは定かであろう。

三つの種族は三日三晩祭りを開くことにした。
初めに、人間王ツァツォルチアによる剣舞。そして戦士たちによる武闘会。
次に、精霊王たちによる祝宴。そして精霊たちによる祝福。
最後に、魔女ミーティケルンによる儀式。そして彼女による宣誓。

三つの種族が祭りを終えた瞬間、ありとあらゆるこの世の花が、かの地にて咲き乱れる。
そうしてすべてが収縮され、花は朽ち、木々が枯れ、大輪が咲いた。
そこから生まれいでし種族が、今なおひと目にさらされることなく、かの地にて作られし神殿の中暮らす、フォルディーナ・イデア・ツァトラである。

かの地が聖地になった、最初の理由であるとされる。
(『聖地たる所以』著:ギスターク・ヒルカ)


聖地にて一滴も血は流れない。
浄化されし神聖な魔素溜まりとなった聖地では、何が起きても血が流れることはない。

たとえば子どもが転んだとしよう。
皮膚の薄い子どもは、些細な怪我で血を流す。ぺろりと剥けた皮膚の下から、血潮がこぼれる。
されどこの地では、血は流れない。
痛覚ばかり刺激され、赤い血液は流れることはない。

たとえばこの地で王を狙ったとしよう。
けれど誰もそれを完遂することはできない。
刀を持つ手が震え、怒りが奥底から消えていき、銃の焦点は合うことがない。
戦いにおけるすべての感情を根こそぎ奪いつくし、ただそこには茫然と立ち尽くす刺客の姿があるだけだ。

聖地は、この大陸における感情を持ちうる生き物すべての総意によって、作りだされた抑止力である。
「戦をしてはならぬ」
「ひとを殺してはならぬ」
「無駄な血を流してはならぬ」
そも、これほど血気盛んなアガデスタの者ですら、聖地に足を踏み入れた途端、戦う意欲を失うというのだから、これに嘘はつけない。

清らかな魔素において、すべては痛みもなく永久に在る。
この地において、決して戦が起きぬことを、わたしたちは歴然たる事実として承知すべきである。
(『聖地 戦の起こせぬ神の土地』著:リリアナ・ルイエルン)

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最終更新:2015年04月16日 23:38