上記データは全て当該の履修年度における時点でのものです.
以下は私的なまとめです:
基本的に教科書は使用しないが,その時々に応じて適当な参考資料は先生が紹介してくださるスタイルの講義である.また,板書が比較的多いので,ノートをとることを強く勧めるタイプの講義である.経済学の初学者,それこそアダム・スミスやマルクス,ケインズなどの経済学の巨人達の名前や実績の概要を,高校の世界史や政治・経済の授業の水準でしか知らないレベルの学生を対象にした,いわゆる経済学史ないし経済思想史と呼ばれる講義の内容である.
とは言え,現代的な経済学部でやるような従来的な経済思想史,すなわちアダム・スミスまたはその同時代のヨーロッパにおける(スミスが批判した)重商主義を出発点に,資本主義の自己理解という目的で行われる経済思想史の流れとは異なるやり方で,経済思想の系譜を学ぶことを目的としていることが本講義の特徴である.
具体的には,資本主義の思想の基盤を,古代ギリシア・ローマ時代の古典古代にまで遡って見つめなおすこと,すなわちプラトンやアリストテレスといった西洋哲学の源流にまで遡り,彼ら古代の哲学者の思想の中に現れる交易・市場・貨幣などについての考えを検討することが本講義では行われる,そこから中世欧州の思想を経て近代へと至る経済思想の流れを追っていく.加えて,「貨幣とは何か」という素朴で,しかし様々な側面を持つこの問いを常に念頭に置くことも本講義の特徴として挙げられる.
なお,本講義は「経済学IA」で,京都大学ではA/Bという区分がされている科目の場合は,前期でAを,後期でBを連続して履修することが推奨されている.近代以降は(一部は前期でも扱うが)主に後期の「経済学IB」で取り扱われる.