2017年 総評

ママとの甘い性活Ⅱ』(7/21)《コンプリーツ》

2016年のKOTYeは、2年振りにクソの両雄が殴り合う構図となった。
常連の一角、げーせん18がKOTYe連覇を狙うべく送り込んだ決戦兵器「戦御村正」と、
新星しろいぱんつが放った奇作「グリモ☆ラヴ」による頂上決戦。
雌雄を決したのは、「クソゲーに向き合い語る」というKOTYeの根本的趣旨。
バグに頼らずゲームの全てを曝け出し、根底からのクソさを見せつけていくグリモの潔さが、勝利をもぎ取ったのであった
毎度の如く問われる「クソゲーとは何か?」の問いに対する考察をまた一つ深めながら、
スレ住人は10年目を迎えるKOTYeを前に心身共に引き締め直すのであった。


1月、スレを賑わせたのは、げーせん18が汚名返上するべく送り出した「戦御村正DX」や、
古豪アーベルソフトウェアの逸品「アッパレーション ~最期の初恋はバッドエンド~」といった錚々たる面子。
強豪来襲の予感に迎撃準備をとるスレ住人だったが、開戦の火蓋が切られると予想外の展開が待っていた。
村正DXは起動時のエラー、システム不具合、別作品のセーブ流用で回想全開放といった多彩なバグを披露するものの、
無印から様々な要素を削られ無味乾燥となった挙句ゲーム自体はパッチを当てればクリア可能となったため、
クソゲーとして小粒になってしまった感が否めない。
また、アッパレーションも触れた感覚はいつものアーベルだろうという扱いであり、
1月の注目株はいずれも選評不着という拍子抜けの結末に終わってしまったのだ。
2月から4月にかけても何作か話題に上がったものの、
選評を書くに値しないと思われたのか、いずれも選評は無し。
1年のうちの1/3が過ぎてなお選評が来ないという異常事態を前に、
スレ住人は前年の次点「なないろクリップ」の進展を玩具に暇を持て余すこととなった。

そんな中、ひとりのある発言が盛大なフラグだとは、当時誰も気づいていなかった……

673: 名無しさん :2017/03/12(日) 21:56:17 ID:fOo2ivhk
もしパッと見で分かるくらい絵がクソだったら商売する気あるのかって話だからな
よくよく見るとなんか酷いってのはしょっちゅうだけどね…

停滞していた状相が動いたのはGW明け、弛緩したスレに初の選評が投下され、
永き仮初の平穏に終止符が打たれることとなった。
4月末にhibiki worksから発売された「新妻LOVELY×CATION」である。
ヒロインから名前を呼んでもらえるシステムと、恋人になる前後に焦点を絞ったシナリオで堅実な展開をしてきたCATIONシリーズ。
今作は原画に本シリーズ初期作を担当した唯々月たすく氏を再び迎え、
シリーズ最終作を有終の美で飾るはずだったのだが、一つの過ちが本作を台無しにしてしまった。
その過ちとは、「発売直前でのエンジン変更」。
体験版で動作確認をし、万全の態勢で臨んだ購入者は、
「インストールして起動する」という当たり前の動作が不具合により出来ない現実に直面する。
何とか自力で認証不具合を抜け出しても、激重な動作、画質劣化、強制終了といった新たな敵と戦わなくてはならない。
これらは全て先のエンジン変更のせいであり、その理由も、
「割れ対策の為に体験版からエンジンを変更した」というものだから購入者からしたら堪ったものではない。
「体験版詐欺」という言葉はエロゲー界ではよく聞くが、
流石に動作確認にすらならない体験版が来ようとは思っていなかっただろう。

この低品質な出来に対し、発売日当日に修正パッチと高画質立ち絵パッチの2種類が公開されたものの、
修正パッチの方は根本的な問題であるプログラムの動作について何一つ改善せず、
高画質パッチも展開すると4GBに膨れ上がるという地味な嫌がらせが仕込まれている。
その後、5月2日に再度修正パッチが公開されるが、これが所謂「バグ追加パッチ」であり火に油を注ぐ顛末となった。
動作改善は相変わらずされないにも関わらず、それまで抱えていたBGV周りが動作しないバグが悪化し新たなバグが爆誕。
これはBGVの読み込みが失敗し、BGVの断片が延々再生されるというもので、
例えばタイトル画面でこのバグが発生すると、
「新妻ラブリケッ 新妻ラブリケッ 新妻ラブリケッ(略)」と壊れたレコードの如くタイトルが流れ続ける。
ヒロインとの情事の際にも発生し、読み込み失敗したBGVの断片が寝室に木霊する様は怒りを通り越して哀愁を誘う。
更に、バグが発生した本作を強制終了すると、時折セーブデータが破損するという超特大のオマケ付き。
この有様にも関わらず、パッチ配布以降はGWによるサポート中断期間となってしまったため、
GWの間恋人といちゃこらできない購入者から絶え間ない怨嗟の声が上がることとなった。

結局、これら不具合のうち致命的なものはGW明けのパッチで概ね修正された。
だが、バグ以外の問題点として、複数ライター間の管理統率が出来ていないために、
ヒロインごとの扱いに差が生じているという問題も見過ごせない。
その結果、純愛主軸のキャラゲーにも関わらず特定のヒロインがシナリオ・回想面で不遇な扱いを受け、
一部の暴徒化したプレイヤーにより担当した外部ライターにまで炎上が及ぶ始末であった。

選評という恵みの雨により俄かに活気づくKOTYeスレに更なる賑わいを齎したのは、
5月末にeufonieより発売された「はにデビ~Honey & Devil」。
淫魔に取り憑かれ発情した女の子を性交渉で鎮めよう!というあらすじの通り、エロ重視が期待されていた本作だが、
パンツをおろしてプレイするプレイヤーの前に立ちはだかるのは、悟りを開いた僧の如き主人公であった。
発情を抑える手段や淫魔の封印方法として主人公との性交渉や類似手段が有効と判明するものの、
「好きな者同士でやることだから出来ない」「行為の後に傷つくのは女性だ」と主人公は頑なに拒否。
あろうことか個別ルートに入りヒロインと恋人同士になった後でさえ、
「がっついていると思われたくない」と行為を拒絶する徹底ぶりであり、
草食系を通り越して不能か超越者のどちらかとしか思えない。
人間としては理解できるという反応も一部であったものの、エロゲーの主人公としては完全に失格であり、
購入者からしたら「裏切られた」以外の何物でもないだろう。
エロ全開な作風を匂わせておきながらエロCG率6割という内容も合わさり、
全体的に何がしたかったのかわからない印象が付き纏う一本となってしまった。

クソゲーの攻勢はまだまだ終わらない。
6月末にDigitalCuteより発売された「タンテイセブン」は、近年増えつつある推理モノであり、
公式が「濃密なストーリー」と謳うこともあって注目されていた。
しかし、いざ発売されると、パッチを当てないと「体験版」と表示される上に、
特定ミッションから先に進めないというまさかのサプライズ。
この心臓を鷲掴みにされるかのような上々な掴みにスレは熱狂、
程なくしてその全容が明らかになるのであった。

まず推理モノの命であるシナリオだが、これがクソの山と化している。
本作のシナリオはミッションシステムというものに沿って展開され、
メイン・サブそれぞれいくつか用意されたシナリオを一つずつ読み進めることで個々のシナリオが連動し、
メインシナリオの展開に影響が及ぶように作られている。
どのサブシナリオがメインに影響するのか推察出来ればまだ救いがあったかもしれない。
しかし、実際のところはシナリオ自体が時系列バラバラで整合性も取れておらず、
そこに至る過程自体省略されているような状態であり、推理の前提にすら立てやしない。
特定のシナリオに限っては関連する話が丸々抜けているのではというばかりのスカスカ具合。
おまけに、途中で出てくる選択肢もノーヒントで正解を選ぶ必要があり、
プレイヤーは正解を引くまでサブシナリオと選択肢の抽選作業を続ける必要がある。
公式が「濃密」と豪語するシナリオの質の面も、推理に必要な探索の描写は皆無に等しく、
プレイヤーが気になる点は悉くスルー。
一方、クソゲーのお約束である食レポにはやたら注力している他、
一部の登場人物が事あるごとにズレた発言をしては他者に突っ込まれるという茶番が繰り広げられ、
まともに読むことさえ苦痛が伴う。
加えて、時と場所を弁えずテキスト上にハートマークが乱舞し、
例えHシーンだろうとお構いなしにアイキャッチが割り込むため、
上記抽選仕様や数々の脱線と合わせテンポの悪さは折り紙付きである。

次にシステム面。
既出のミッションシステムは既出の通りシナリオを読む上での害悪にしかなっておらず、
それに付帯する秘密文書は全てクリアして尚揃うことは無い。
主人公の異能の一つであるシナスタジアビジョンは、探索中に怪しい箇所が目立ち、
より詳細に調べられるようになるという探偵垂涎のチート能力だが、
チュートリアルで登場して以降は一切出番なし。
同じくシナスタジアバトルについても相手の矛盾や弱点を突き論破する形式となっているが、
失敗すればバッドエンドという本来の仕様はどこ吹く風、
例え間違えても直前に戻ってやり直すだけで何事もなく進むため、只の作業となっている。
本質的な部分以外でも、CuteMotion2の不具合により立ち絵の首から上だけが浮遊し、
また特定の選択肢を選ぶと強制終了するなど、バグ方面も強力だ。

以上のように、推理モノの命であるシナリオが低質であり、
そもそもシナリオを読むにも単調な作業を繰り返さなければならないという苦痛を伴う仕様の前に、
多くの者が斃れることとなった。
後々の度重なるパッチで不具合の修正やシナリオ補完などが行われ、
歯抜けで時系列が滅茶苦茶なシナリオも幾分読めるようになったが、
本来購入者が求めたものからの乖離という意味では最後まで解決はされず、
久々の新作を焦がしたDigitalCuteの行く末を好事家が見守るのであった。

少しの間をおいて8月にやってきたのは、まさかの「アッパレーション~最期の初恋はバッドエンド~」。
一度は見過ごされたアーベルの新作であったが、選評空白期に再度見直してみると矢張りクソということで、あえなく御用となった。

アーベルといえば毎度チープなシナリオが目に付くが、御多分に漏れず今作も褒められた出来ではない。
フルプライスながらプレイ時間は4時間、ヒロイン5人でこの文章量という時点でまともな内容は望むべくもない。
また、本作には「死神見習いの能力を使ったセックスによって命を分け与えてヒロインの危機を救う」”命数授与システム”
「運命の分岐点を作り出す」”運命流図システム”等の仰々しい要素が盛り込まれている。
だが、前者は単にHシーン導入の演出、
後者は”強制バッドエンド→バッドエンド回避用の選択肢追加”の流れをそれっぽく演出しているだけのもので、
実際はアーベルお得意の「バッドエンド強制フルコンプ」に基づく一本道展開でしかない。
ルート間による設定の矛盾も日常茶飯事であり、病弱幼馴染のルートでは死による別離は抗えぬ運命としておきながら、
別の後輩ルートではさっぱり設定を忘れ、風前の灯火であった後輩に生命を分け与えながら宿敵を倒して一件落着である。
実質的な大団円エンドであるメインヒロインのルートでは、先程死亡した幼馴染が死神として蘇生するが、
ここでも「死神に生まれ変わった際は前世の記憶を失う」という設定は完全無視。
そのまま最終決戦までご都合主義で突き進むため、他ルートの記憶などという感慨は木端微塵である。

シナリオ以外に目を向けても問題だらけだ。
過去作よりも文章量が減ったはずなのに誤植は増加し、シリアスシーンを度々白けさせてくれる。
エロゲーの肝ともいえるHシーンは実質34回とアーベルにしては破格の多さだが、
その多くが前作の「不条理世界の探偵令嬢」からの使いまわしであることが発覚。
加えて本作新規と思われるテキストすら本作内で使いまわされている。
グラフィック面も抜かりはない。
CGの作画が崩れる程度は朝飯前で、ピンク色のバニラアイスや左右の瞳が同色のオッドアイヒロイン等々探すまでもなく粗が見つかる。
システムも、6年前の当時でさえ時代遅れだった2011年大賞「ゾンビの同級生はプリンセス」からろくに進歩していない。
手堅く低クオリティに纏め上げられた本作のクソゲーぶりは、クソゲーマイスターであるアーベルならではといったところであり、
この点に関しては天晴れの評価を付けて良いのかもしれない。

この流れに乗るように、8月発売の新作も立て続けにスレに攻勢をかける。
先陣を切ったのはソフトハウスキャラの「領地貴族」。
領地の発展と経営に主軸を置いた、キャラお得意のADV+SLG形式のゲームスタイルである。
だが、SLGの部分が、元々当たり外れの大きいブランドであることを差し引いても看過できない出来であった。

ゲームシステムは至って単純で、ターン制を採用したSLG。
ターン毎に行動力を消費し、領地に建物を建設したり、人を雇ったり、イベントを発生させたりというオーソドックスな形式である。
本来であれば限られたターン内で行動力を如何に上手く配分し、
領地経営とイベント消化を両立していくかが問われるスタイルのゲームであるが、
本作においては行動力の仕様が全てのバランスをぶち壊しているため、その心配は不要である。
初期状態では1ターンにつき1行動力、つまり1回しかコマンド実行が出来ないのだが、
雇用の際に騎士を採用すると騎士1人につきターン内の行動力上限が1増加する。
加えて、騎士の雇用による行動力増加に何の制約も無いため、
騎士の頭数を揃えるだけで1ターンのうちにやりたい放題になってしまう。
行動力消費によって各種資源が山のように手に入る上、
人材雇用に対するペナルティもないため、領地経営の問題も騎士さえいればオールOK。
おまけに雇用した人材を2週目にも引継げるため、2週目以降は序盤からゴリ押し可能という親切設計だ。
「行動力を上げて物量で経営すればいい」というスベ理論により薄味になってしまった1本と言えよう。

続いて「恋愛教室」もエントリーを果たす。
新ブランドUnN/Aから発売された本作は、事前投票で16人のヒロインのなかから投票によって攻略対象が選ばれるという画期的なもの。
だが、その中身は詐欺にも等しい何かであった。
第一にフルプライスながら容量は2GBを割り込み、インストーラーすらまともに起動しない。
ようやくインストールして起動すれば、あまりにも質素なメニュー画面がお出迎えしてくれるが、
残念ながら中身の方はメニュー画面が可愛く見える程にボロボロである。

まず投票によって攻略対象が決められたシナリオは、残念ながらティッシュペーパーよりペラペラの薄さと言わざるを得ない。
タイトルにある「恋愛教室」についても、共通ルートで1回やった後は一切出番なしである。
特に個別ルートでは、パッケージヒロインの2人をして、
ルート①:お見合いの話が来ました→俺が話をしに行く!→エンディング
ルート②:この学校が共学になるの嫌!→俺の両親に頼んでみる!→エンディング
という薄さであり、問題の解決についても数クリック触れられる程度である。
投票で選ばれたヒロイン2人の個別ルートに至っては問題すら発生せず、ただ体を重ねるだけ。
公式サイトにあった「厳選されたヒロインとだけ愛を育み、体を重ね合い、
作品の中でしっかりとした恋愛劇を描きます」の一文と実際の落差が涙を誘う。
ちなみに、その体を重ね合うHシーンについても、このゲームには回想モードが実装されていないため、
回想したいシーンには事前にセーブを設けてそこからロードするという前世紀的な対応が求められる。
また、あまりの薄さのせいで霞みがちだが、ヒロインを物扱いする外道主人公や、投げっぱなしの伏線など、
量だけでなく質の面もお粗末極まりない。

本作はバグも強力であり、特定シーンに進行不可能バグが仕込まれている。
また、このバグを修正するパッチについても、メーカー自ら宣言した公開期限を踏み倒しており、
新ブランドにあるまじき豪胆なサポート体制だ。
パッチ適用後も、テキストと全く関係ないボイスが流れるバグ、
会話中の人物の背後に無関係の人物が次々登場しては何も言わずに消えていくバグ、
同じ内容の放課後が2日間繰り返し訪れるバグ、エンディング画面が黒一色でBGMだけ流れるバグ等、
細かなバグは残ったままである点も見逃せない。

なお、発売元のブランドUnN/Aは新ブランドを自称しているが、
その実態は過去にマスターアップ後の延期やパッチ公開遅延、
更には新ブランド設立後の延期連発&発売後の売り逃げなどやりたい放題やってきたEx-iTの残党であることが判明。
そして、本作は発売後暫くして公式サイトもアクセスできなくなり、
またしてもクソゲーの売り逃げであったことが明らかになったのであった。

さて、少々時を前後して、前述のタンテイセブンと同時期に大いに注目された一本があった。
コンプリーツの「ママとの甘い性活Ⅱ」(通称:ママⅡ)。
エロゲーに於いては息の長いジャンルである母親モノであり、
需要がはっきりしていることから大きく外すことは滅多に無いジャンルだ。
では、本作の何が問題かというと、「グラフィック」。
それも、過去に類を見ない低質さである。
トップページに鎮座するヒロインの絵は、その辺の素人を連れてきたのかという酷さの原画に、同じく素人同然の塗り。
サンプルを眺めても同様のロークオリティの絵が並ぶだけで救いは無い。
主人公は主人公でやたら肌が茶色く、公式の文章から23歳以上であることが確定しているにも関わらず小学生同然の幼稚な面構えであり、
ヒロインに負けず劣らず人外の様相を呈している。
この「作画崩壊」という言葉すら生温い出来に加え、ミドルプライスという強気な価格設定を前に、
7月末の発売日を迎えてもスレ住人も購入を躊躇。
決死の覚悟で購入した者が選評を書き上げたのは、秋色深まる9月末になっていた。
それでは、選評によって明らかになった真の実力を見ていこう。

まず本作はミドルプライスのエロゲーであるが、実容量にして僅か260MB。
義母ルートが4つ、サブヒロインのルートが1つとルート分岐は豊富だが、総プレイ時間は僅か1時間。
元々「見えている地雷」であったが、ボリューム面でも文句のない地雷である。
そして、肝心のグラフィックは、想像を絶する魔界であった。
何と、これまでサンプルで公開されていたCGは、「まだマシ」なレベルだったのである。
禁断の扉を開けてみれば、瞳孔は見開き、視線は定まらず、手は歪み、関節があらぬ方向に捻じ曲がった義母の上に、
歪な丸太に手足を生やしたような主人公が冷凍マグロのようなカチコチの姿勢で載せられ、
くんずほぐれつしているCGが次々に出土。
ものによってはバラバラ死体かと思うような出来のものまで混じっており、
これらの惨状の前には義母の胸が可変サイズであることや、主人公の腕が伸縮することなど取るに足らない問題であろう。
この古代文明の壁画ですら裸足で逃げ出すような酷さの前に、最早抜くどころの騒ぎではない。
むしろ「抜けるものなら抜いてみろ」とでも言わんばかりの地獄絵図である。
20年前のエロゲーと比べても本作の絵の低質ぶりは群を抜いており、
絵がダメなエロゲーとして金字塔を打ち立てた「わくわく惑星プリンセス」をもってしても、
スレ住人に「ママⅡとわくプリならわくプリの方がマシ」と言わしめるほど。
選評者が残した「褒める所はこれやったら他のエロゲがすっごい傑作に感じられる位だ」という言葉が、
ママⅡの恐ろしさを端的に表している。

ママⅡの凄絶なグラフィックを前に、スレは一気にヒートアップ。
グラフィックの一点だけで圧倒するママⅡの姿勢に前年大賞のグリモと同様の称賛を送る者や、
買う前からクソと分かりきっている以上買った後に文句を言うべきでないと擁護する者など様々が入り乱れ、
今年一番と言える盛り上がりを見せる。
そして、その盛り上がりの最中に、更に選評が舞い込んできたのだった。
9月末にハイクオソフトから発売された「面影レイルバック」である。
延期に定評のあるブランドであり、本作についても案の定延期を重ねた末の発売となったが、
その中身は長い延期期間のうちに朽ち果ててしまっていた。

本作の問題は、とにかく「話の中身が無い」一点に尽きる。
話のボリュームからして、共通ルートが3時間弱。
しかもそのうちの殆どが山も谷もない日常生活の話題である。
ほぼ唯一の山場ともいえるのは、主人公とヒロインが進行中の事業を会社の重役に妨害されるくらいだが、
それとて早々に解決し、盛り上がる要素はゼロ。
個別ルートもルート次第では30分もあれば終わるスカスカ具合であり、
フルプライス作なのに付き合った後の描写もろくに無い。
行方不明な主人公の父親の件や、主人公の養子先でもある会社内の人間関係などといった伏線も、
回収する素振りすら見せず一切ぶん投げている。
設定自体は魅力的なものがあるが、このボリュームの無さでは活かせるはずもなく
ブランド10周年記念作として集めた期待を裏切る結果となってしまった。

さて、ママⅡの来襲以降大いに沸いたスレであったが、面影レイルバック選評後暫くの間、選評不着が続くことになる。
二度目の選評不作が打開されたのは、2017年も末、大晦日の12月31日。
同日発売の「文芸彼女と僕二人だけの愛の巣だった部室にヤリチンが入部してきた!」が、
その日のうちに滑り込みという前代未聞の離れ業を成し遂げたのであった。
では、税込み756円というKOTYe史上最安値の本作は如何程か見てみよう。

本作はタイトルからわかる通り、「寝取られ(NTR)」作品である。
このジャンルではヒロインが寝取られるHシーンの質が重要であることは勿論であるが、
寝取られる前の日常や恋愛描写も重要となる。
この両者が揃って初めて、「寝取られる」という事実がより際立つのである。
ところが、本作に於ける寝取られ前の日常描写は刺身のツマはおろか添えられた食用菊ほどの価値もない。
主人公とヒロインは恋人関係にも関わらずデート等の浮付いた話は一切なく、
あるのは「目玉焼きにきな粉と黒蜜が合う」といった下らない雑談ばかり。
数刻のうちに間男が現れるため、日常場面は一瞬にして終了する。
そして、本命の寝取られシーンも御座なりな作りである。
「寝取られ」を謳う以上、主人公はヒロインに対して恋慕の情を抱いていなければならないのだが、
主人公の心理描写が希薄この上ないため、本当に好いているのか正直疑わしい。
主人公とヒロインとの恋愛の様子や主人公の心情がまるで把握できないせいで、
主人公を自己の分身と見ることやヒロインへの思い入れを深めるといったことが出来ず、
このため主人公に自分を重ねてヒロインを寝取られた喪失感を味わうことが難しいという
寝取られ作品として致命的な問題が生じている。
ヒロインはヒロインで早々に間男の肉奴隷と化し、積極的に奉仕を行うようになるため、
堕ちていく変化を楽しむことも許されない。
ロープライスという点を鑑みても、ジャンルに沿った需要を満たすことが出来ないようでは、
クソゲーの烙印を押されるのも已む無しであろう。

以上が2017年内に選評が投稿されたクソゲー達になる。
だが、昨今のKOTYeでは恒例になりつつあるが、年が明けてから「申し開き」をする者が今年も現れた。

年明け早々に申し開きを始めたのは、7月に発売されていた「真・恋姫†夢想-革命- 蒼天の覇王」。
10年の歴史を持つ恋姫シリーズの最新作にあたるが、萌将伝以来久々のエントリーとなった。
まず、公式が「真・恋姫†無双のリメイクではない」と宣う本作であるが、残念ながらこれは嘘である。
というのも、過去作の「真・恋姫†無双」から魏ルートのみ抜き出し、
グラフィックの刷新やBGM追加、新キャラ・新エピソード追加を行ったに過ぎないものだからだ。
本編のテキストも過去作からのコピペが中心であり、「真・恋姫†無双の1/3リメイク」と言われても仕方がない。
元々のテキストが良く、また、追加されたエピソードについても内容は面白いのが救いではあるが、
同時に元のテキストと追加エピソードの内容が全く噛み合わないという問題点を抱えており、
折角の良テキストが台無しである。
過去作より続く戦争パートについても、今回新たに「熟練度」という成長システムが採用されたが、
熟練度による恩恵は微々たるものであり、おまけに周回時に引き継げないとあっては、
自ら旨味を殺しているとしか言えない。
1/3リメイクという点に目を瞑れば魅力的な要素が多かっただけに、
それすら潰していく本作にシリーズファンは只嗚咽を漏らすだけであった。

続いての遅刻組は、9月にGaletteより発売された「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」(通称:おに禁2)。
2014年に萌えゲーアワード金賞を受賞した過去作「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!」に、新たにヒロイン2人を加えての続編である。
だが、無印の製作スタッフが1人も残っていないことから警戒信号も同時に点灯しており、
ひと皮捲れば案の定惨憺たる出来であることが発覚したのだった。
まず、イラストについては、無印ヒロインは立ち絵と一部CGはそのまま過去作から流用されているが、
別原画によるそれ以外の新規CGではヒロインの面影は一切残っておらず、
無印プレイ済には只の思い出ブレイカーでしかない。
追加2キャラ分については立ち絵・CG共に一から描いていることもあり、無印組と比べると違和感は少ないが、
それでも質は平均以下であり、作品通しての絵のクオリティはお察しである。
おまけにCG差分も少なく、差分不足のため主人公のナニが下着を貫通してヒロインと結合していることもある。
シナリオについては、文章量自体はそれなりにあるが、質自体はこれも残念レベルである。
第一に、誤字脱字は向こうから勝手に飛び込んでくるくらいの頻度で出現し、
主人公名の取り違えもクソゲーの嗜みとばかりに標準装備。
CGとテキストの状況乖離も日常茶飯事であり、テキスト自体も「7人用のバスを11家族で貸し切り」と
一目でおかしいとわかるものが多数転がっている。
加えて、「主人公が右手を怪我して使えないために、妹たちが右手の代わりにいろいろお世話する」というのがゲームの趣旨にも関わらず、
主人公は平然と右手を風呂に浸し、砂浜で砂遊びに興じ、妹と駅弁スタイルで行為に及ぶなど、何一つ不自由さが感じられない。
怪我した右手に巻かれていた包帯も、知らぬ間に自然消滅したり、そうかと思えば左手に移動したりする有様であり、コンセプトからして破綻している。

本作では過去作から声優も全て入れ替わっているが、これも盛大なクソである。
シリーズ中に声優入れ替えの時点でクソ扱いされても仕方ないのだが、
此度の声優は殆どが素人演技である点がクソさに拍車をかける。
また、声優演技以外にも本作は音声周りに不具合を多々抱えている。
NGボイスはそこかしこに混入しており、声優の咳払いや言い直し、台本捲り等のノイズが複数入っている他、
酷いものでは20分近くに亘って収録現場の音声が録音されたものがそのままゲームに入っている。
他にも本来分けるべき台詞が繋がって収録されていたり、
Hシーン中に本来再生されるべき台詞から全て1つずつずれて再生される等、
エロゲーより声優収録現場を知る資料としての価値の方が高いのではと思われる程。
ゲーム側もこの質の低さに匙を投げたのか、200余りの箇所でボイス再生をサボる始末である。
それ以外にも、CGが表示されるべき場所で表示されずに真っ暗であったり、真っ黒背景に立ち絵だけが表示されたりと、バグもより取り見取り。
一応修正パッチが公開されており、「setup.exeをインストールフォルダのsetup.exeに上書きして下さい」と書かれているのだが、
インストールフォルダにsetup.exe自体が存在しない以上、ゲーム内容の改善はされるわけもない。
元々ブランド前作の出来が散々であったことから内情が危惧されていたGaletteであったが、
人気作品の名を借りて尚、商品未満のものしか作れなかったという事実に、
昨今の制作事情の厳しさが改めて浮き彫りになった1作であった。


さて、エントリー作品を紹介し終えたところで、本年の大賞と次点の発表に移りたいと思う。
まず次点は、
「恋愛教室」
「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」
そして大賞は、
「ママとの甘い性活Ⅱ」
とする。

本年はKOTYe10年目となり、創設された当初とはエロゲー事情も大きく変化している。
当然、今年エントリーしたクソゲー達にも、近年のエロゲー事情が多分に反映されている。
そのなかでも、クソゲーとして高い「質の低さ」を有するのは勿論のこと、
質の低さと現代のエロゲー事情の相関が色濃く表れている2作について、次点とした。
「恋愛教室」は業界内で繰り返される「ブランドロンダリング」の悪しき見本として、
「おに禁2」は原作スタッフ不在のまま商品未満のものを発売せざるを得ないという「人材不足・資金不足」の好例として、
それぞれ現代のエロゲー制作事情の厳しさと、それにより商品未満のものが生まれているという業界の負の面が鮮明に現れていると言えよう。
そして、その究極の例が大賞「ママとの甘い性活Ⅱ」だ。
最低限の体裁だけ作って流通に乗せなければいけないという「大人の事情」が無ければ、
これほどまでの負の逸材が日の目を見ることは恐らくなかったはずである。

疑問を呈す人もいるだろう、「ママⅡは買う前からクソと分かり切っている、クソゲーとして扱うのはおかしい」と。
だが、KOTYeは「その年に発売されたエロゲーから一番のクソゲーを決める」ものである以上、
そのクソゲーが持つ全ての要素を勘案し、総合的な負のポテンシャルで評価すべきものである。
例え見た目からしてクソと明白であろうとも、それがエロゲーとしてこの世に生を受けたからには、
KOTYeも最後までそのクソゲーが持つ要素を余すことなく語り、評価しなければならない。
さて、ゲームの構成要素を語る際、グラフィックというものはエロゲーに於いて非常に重要である。
それは、人が得る情報のうち8割は視覚に頼っていること、ゲームである以上プレイヤーは常に画面と相対し続けること、
例え他の要素が壊滅的な出来栄えでもグラフィックさえ良ければ「画集」として擁護の声が上がることからも想像がつくだろう。
逆に、グラフィックが低質であるゲームは、その他の要素でグラフィックの低評価を挽回できるクオリティを確保しなければ、
真っ当な評価はまず得られない。
では、ママⅡはどうだろうか。
グラフィックの酷さについては既出の通り前代未聞と言ってよく、一度目にしたら当面は脳の片隅に居座り続けるインパクトを誇り、
到底本来の用途に使えないどころか、下手に抜こうと試みようものなら一生もののトラウマさえ負いかねない程である。
この一点のみで他の有象無象を蹴散らすだけの負のポテンシャルを秘めていることは疑う余地も無い。
KOTYe10年目にして、我々は「立ち絵もCGも揃っているのに、出来が酷すぎて使えない」という新たな極地に辿り着いたのだ。
また、ゲームを構成するその他の要素に救いを求めても、残念ながら褒めるべき点は見当たらない。
むしろ、ミドルプライスとしては犯罪級なシナリオの短さによって、
1枚でも精神汚染されかねないCGを1時間の内に30枚ほど立て続けに押し付けられる狂気仕様が生まれている点も、
看過することのできない立派なクソ要素である。
エロゲーとしてのメイン要素に前例なき超特大のクソを抱え、他での擁護も不可能な以上、大賞の冠を戴かせる他ない。
故に、2017年KOTYeの大賞は「ママとの甘い性活Ⅱ」とする。


今年は例年と比べエントリー数が伸び悩み、10年目としては少々寂しい結果となった。
これらの要因としては、前年のグリモ・村正、それ以前の戦極姫6、そしてチーズと、近年のクソゲーが大型化していた点が挙げられよう。
特にチーズに関しては3年前のゲームにも関わらず、
全方位に隙のないクソの御大として未だ多くの民に畏怖の念を植え付け続け、クソの新基準として君臨しつつある。
そのため、「並のクソゲーではこの先生きのこれない」という概念がスレに暗雲のように立ち込め、
普通に見ればクソかもしれないゲームでも選評が届かないという異常事態が発生。
結果、本来はプレイした人がクソと感じれば選評を投稿するエントリー制を採るKOTYeにも関わらず、
4ヶ月間選評なしという状況になったのだ。
だが、人の価値観が千差万別であるように、クソゲーという評価も人によって変わるもの。
エントリー制という形式であるKOTYeだからこそ、クソゲーと感じたら選評を書いてほしい。
貴方の選評を読み、貴方と共にスレでクソゲーを楽しみ抜き、
貴方が感じた哀しみ・怒りを笑い流すことを我々は待っているのだから。

人は問う、何故そこまでしてクソゲーを求めるのか。
それは我々に備わる本能ともいえるものである。
本能が故にクソゲーを求め、余すところなく味わい、共感し、笑いあうのである。
本能が故に、クソゲーが世からなくなるその日まで、クソゲーを求めてしまうのである。
その真理を示す語として、ある僧の格言を拝借し、本年の結びとしたい。

「ココロというものは、穏やかなシアワセという良作よりも、
劇薬のような刺激が一気に得られるクソゲーという餌を、好んでしまうものである」
最終更新:2018年06月09日 10:17