2015年度 最終総評案

2015年 最終総評案 大賞:戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~

季節が変われば吹き抜ける風は変わり、そしてクソゲーも変わってゆく。
昨年度KOTYeはネタスレとしての立場による決着を概ね排し、単純に「楽しめない事」を突き詰めて進めた、重苦しく陰鬱な回となった。
絶望と苦痛の精神汚染兵器『チーズ』を筆頭に、負の側面に特化したクソゲー共の跋扈がその傾向を吹き入れたわけだが、
果たして今回はどのように腐り果てた風が吹くのだろうか…。

さて、大仰な決意を掲げ、ささやかな挑戦状を叩きつけて褌を締め直した前回の結び。
そのわりに、今年度の先頭爆発は遅咲きであった。
選評自体は4月までに4つと月刊ペースで届いている。
中でも、寒いノリとキ○ガイめいたヒロインの舞い踊りを「面白くないボボボーボ・ボーボボ」と評された『毎日がハーレムすぎて王子は姫を決められないっ!』は、
「パフェとハンバーグにしか見えないコーヒーとショコラケーキのCG」など笑いの提供にも余念がなく、AAまで作成され上々のインパクトを残していった。
とはいえ、昨年のゲヘナはどこ吹く風。
住人達は優しい表情を崩す事なく、本格的な春の空気をまだ遠くに感じていた。

今年は笑いと癒しの年か?
そんな展望も予感させる穏やかな立ち上がりの2015年度。

しかし、時は4月6日。
突如過去の怪物が忌まわしき凱旋を果たし、KOTYe本格開戦の狼煙を上げた。
げーせん18発、『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』の登場である。
『戦極姫』――かつて3つのKOTYで暴れ回った大物クソゲーも今は昔。
幾多の有償デバッガーの犠牲の下で大幅な改善を見せ、昨今では良作シリーズと扱われるまでに成長を遂げていた。
住人にもファンは多く、純粋な期待の声も上がっていたのだが、従来の主人公・颯馬に新主人公・月冴を加えたW主人公制の採用が、およそ最悪の裏切りを招いてしまった。
まず戦極姫は代々ADVにSLGパートが付属した構成で、一貫して「武将少女とイチャラブしつつ天下統一を目指す」内容である。
しかし、本作では目的の天下統一がなぜか月冴でしか達成できない。
果てにヒロイン全88人中82人を月冴が独占し、「Wとは…?」と問い質したくなる破格の優遇を見せた。
そして気になるその人物像は、「発情期のウサギが土下座するレベルで盛ってる真正ゲス」。
ヒロインを性処理道具程度にしか見ておらず、中出しヤリ捨ては当たり前。
性交のために無垢な少女を躊躇なく騙す、体を重ねたヒロインの顔を忘れる等、まるで救いようがない。
にもかかわらず、作中人物達はなぜか彼の言動をカルト教徒の如く全肯定。
どれだけ無体な仕打ちを受けようと「彼が気に入るよう尽くす事が全て」などと微笑みながら語る姿は、もはやちょっとしたサイコホラーだろう。
また公式曰く、彼は軍師の颯馬と対をなす直情型の剣豪らしいのだが、実際はあらゆる能力で作中屈指を誇る2次創作最低オリ主めいたチート万能野郎である。
とりわけ料理スキルの無双ぶりは鮮烈で、「初めまして」→「月冴の料理凄い」→「素敵!抱いて!」という華麗な3段オチが各ルートで流れるようにエンドレスループしていく。
「媚薬飯」と称されるも効能は口説きに限らず、説得の鍵になったり、病を治したり、数日で城が建ったりと天井を知らない。
感情移入などできるわけもなく、Hシーン含め、月冴の登場する場面全てが丸ごと胸クソ要素と成り果ててしまった。
そして最大の問題は、本作がキャラを引き継ぐシリーズもので、購入者の大半がシリーズファンだという事だろう。
愛着ある旧主人公はかませにされ、かつて愛したヒロインが設定も展開も投げ捨てて次々と餌付けで即堕ち2コマ形式に心と股を開いていく……。
完全に「嫌いな男から送られてくる好きな子のハメ撮りビデオレター」、公式による疑似NTR以外の何物でもなかった。
当然ファンは悲痛な叫びを上げつつ暴徒化。
メーカーが早々に非を認め、恒例の遊戯強化版で月冴の存在を完全抹消する珍事に至ったのも何ら不思議ではないだろう。
新規目線で見た所で根本の不快さには大差ない上、ここにきて半ば慣例として流されてきた「低質で不揃いなCG」の問題が立ちはだかる。
SLGも月冴等有力武将一人で大きな兵力差を覆せる脳筋戦極無双に変更されており、出来はお察し。
縋る藁はどこにもない。
かくして、作品どころか関わるキャラの品格すらも消し飛ばす稀代のクソ主人公は、住人の戦慄の傍らで悠々とクソゲー殿堂の碑文にその名を刻むのであった。

旧知の仲でも油断すれば寝首をかかれる戦国の理。
非情なる所業が大きな動揺を産む中、怨嗟の声と共にスレに忌まわしき春の活気が芽生え始める。
同じく過去のKOTYeで名を馳せた英霊達が続けて襲来し、「ここがどこかお忘れかい?」とばかりに、平穏な日常を貫禄の暴風で吹き荒らし始めたのである。

先鋒は13年度大賞作『部室』を排出したミクルプリンの親ブランド、potageによる『超・秘湯めぐり』だ。
自身も前年2作品を送り込み、新たな常連として着実に地盤を固めつつある昨今。
そんな大事な時期に放たれた意欲作の見所は、なんといっても極限まで削ぎ落とされた驚異的スリムボディだろう。
「薄い」を越えて中身が一切なく、1日当たり2~20クリックというツイッター級の短文で日常が過ぎた後、脈絡なく性行為が勃発。
1行もあけずに4枠分程シーンを垂れ流してゲームエンドだ。
エロの内容も定型文のオホォー!が約30クリックと無味乾燥で、フルプライスながらコンプまで2時間弱の泣く子も黙る短さを実現してしまった。
もちろん文章自体の質にも妥協はない。
突如数ヵ月後にタイムリープし、エロを挟んで何の説明もなくまた元の時系列に戻るなど、文脈は崩壊。
空虚な話に反比例するように、雑なパロネタだけは「ボケる→解説」と鉄板の味付けで所狭しと詰め込まれ、住人達を唸らせた。
UIは部室時代の「化石」を流用し、主人公名弄りバグも無念の続投。
クソゲー唯一の癒したる音楽すらフリー素材の約5曲のみでは擁護のしようがなく、この短さにして「去年の『銃騎士』以上に寒くて苦痛」とまで激賞されたのであった。
公式のキャラ紹介を模倣して結論すると、「――ありえないほど《クソゲー》」。
昨年はクソゲーを養殖する姿勢で不興を買ったpotageであったが、事ここに至っては住人も心を改め、
「ここまで酷いゲームを自然に作れるなんて思いたくない。養殖であってくれ!」と、いっそ意図的である事を願い始めるのだった。

新鋭の攻勢に負けじと続く次鋒は、初参戦以降の発売作エントリー率100%を誇るクソゲー界の重鎮アーベルソフトウェア、
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』(通称『不条理探偵』)である。
自社レーベルとして久々の新作はお得意の探偵ADV。
「絶頂で推理力が数倍になる探偵と謎を追う」内容で、この時点でかぐわしいクソの薫りが全く隠せていないのだから恐ろしい。
まずプレイして程なく気になるのが演出の貧弱さだ。
立ち絵の変化がほとんどなく、フェイスウィンドウに至っては差分完全0。
中でも主人公の顔グラはなぜか死んだ魚の目をしたまま固定されており、
決め台詞に脅し文句、喘ぎ声まで、あらゆる発言にシュールな彩りを添える抜群の汎用性で住人の爆笑を買った。
またBGMが地味で、SEは間抜け全開。
傑作CG「無気力キック」、主人公の迷言「今の俺なら、手負いの女なんて瞬殺ですよ」に代表される気の抜けた描写も合わさり、
命がけのシリアスシーンですら牧歌的なゆるふわギャグへと成り下がっている。
では肝心のシナリオはというと、推理物なのに選択肢が存在しない。
推理自体も「長男の死体の傍に蜜蜂」→「三男は蜂が怖い、次男が犯人だ!」等言いがかり同然で、
この程度の謎のためにわざわざ毎回絶頂させられる探偵の悲哀にも涙を禁じ得ない。
流石にヒロインのCGだけは無難に仕上げ、レモネードが紫色な程度しか突っ込み所はないが、
差分を逐一表示する水増しがギャラリーを340枠・38ページにまで膨らませており、ページジャンプできない仕様を加えて地味ながら的確なイラつきを提供してくれる。
全方位で手抜きに手を抜かない姿勢には、流石王者の仕事と舌を巻くしかないだろう。
ただし、本作がわずか5時間で打ち切りとなる短さの中に圧倒的なネタの引き出しを秘め、荒んだ住人の心に恵みの笑いを齎し続けた事は否定できない。
「心入れ替えて面白い作品を作ろうかと思ってます」――
確かに生まれたこの楽しみをアーベル流の「面白さ」だと取るならば、草葉の陰の菅野氏も多少は浮かばれるというものかもしれない。

一息ついたブレークタイムには、アトリエさくら Team.NTRより『繋がらない携帯電話-ただいま他の男とめちゃめちゃセックス中-』が到着する。
NTR専門ブランド発ながらシーンの大半がただの妄想で占められ、NTR感皆無のまま何の憂いもなく幸せな結婚をして終了する盛大な宣伝詐欺を敢行。
寝取り役のイケメンが主人公狙いのホモと判明する衝撃の展開も「誰得」の一言に尽き、基本の大切さを身を持って証明する形となってしまった。

そしてその直後、我々は観測史上最大級の大嵐に襲われる事となる。
「五惨家」「増税の悪夢」と、同日発売作の集団決起は過去にも例があるが、今回はなんと5月29日発売分から新記録となる合計9作ものエントリーを果たしたのだ。

先発は疾き事風の如く、発売日当日。
昨年から連続登板となるWHITESOFTが、神速のストレート『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』(通称『猫撫』)を投げ込んだ。
本作は人気タイトル『猫撫ディストーション』のファンディスクで、あまり先例のないクラウドファンディング形式で制作されたエロゲーである。
魅力的な設定と出資特典で心を掴み、目標額を4日で達成。
無事発売にこぎつけ、期待に胸を膨らませてその日を待ったファンの元に届いたのは、しかしフルコンプ30分にも満たない極薄の手抜き作品であった。
一応シナリオは需要を満たす形で最低限成立しているものの、総CG数5枚、本番なし。
Hシーンは7クリックの自慰と20クリックのペッティングの2つのみ。
更にCG4枚は公式で公開されており、新規分は飛び抜けて低質なたった1枚という体たらくだ。
特殊な形式ゆえ一般的な作品とは並べ辛い面もあるが、参考までにCG枚数で換算すると、
一般販売価格の3000円で約0.5jks、出資コース最高額の10万円では0.016jksという、単純な数字ではあの『アイ惨』をすら凌ぐ驚異的結果が現れてしまう。
新規シナリオ等の出資特典は未だ届いた報告がなく、公式も完全に沈黙。
本編より長いと語られるエンドロールには出資者の名前が墓標のように寂しく並び、戒名を書き間違えられた者もいるとあって、最後まで誠実という言葉の意味を問いかける。
「デッドエンドしたのはメーカーでしたね」と茶化してみても、信頼を売り飛ばす裏切りを前に、微笑の一つでも浮かべられるファンはおそらく存在しないだろう。

飛び込む後続には、
「君よ、活目せよ――これがエロゲーの極北だ!!!」という煽り文句通りに北極級激寒テキストを乱打してあえなくシベリア送りとなった『裏技スペクトラム』、
オナニーを見ているだけで疲労困憊し、拷問対象のヒロインに体調を気遣われるお茶目な主人公が光る『JK聖女淫罰 ~穢れし肢体への裁き~』、
「チーズ買いに行きそう」と評された不快な主人公に加え、未完成を隠すために初期ver.の一部ルートを意図的に塞いで話題を集めた『恋魂』等、
色とりどりの作品が並ぶ。

特に大きな波紋を呼んだのは『毎日がハーレムすぎて王子は姫を決められないっ!』のPeasSoftによる本年2作目、
『中二病な彼女の恋愛方程式(ラブイクエイション)』(通称『中二病』)だ。
問題点は概ね「バグ」に集約される。
どこもかしこも大小様々な不具合で塗れており、一例程度でも、コンフィグが反映されない、文とボイスが一致しない、立ち絵が画面上に残り続ける等、†闇†が垣間見える。
が、何より致命的なのは「高頻度のエラー落ち」と「エラー落ちでデータが消える」の合わせ技であろう。
メモリリークが原因らしいが、発生タイミングは基本的に予見不可。
不意に読みこんだ重いデータが即死トラップと化し、ゲームの起動に関わる部分が壊れて再起不能という極悪コンボが頻発した。
まともにプレイしたければ「スキップを使わず慎重に進め、こまめに再起動しつつバックアップを取る」の徹底以外に方法はなく、完全に作業系死にゲー。
加えてブランドロゴの表示までに1分前後かかる程起動が遅いため、再起動には一々この待ち時間が挟まる事にも要注目だ。
メーカーはこの惨状にも「環境依存です」の一点張り。
一応後日「一部ユーザー向け」にギガパッチが配布されるも、エラーの代わりに謎のファイルが大量増殖する新たなバグを追加してユーザーをひたすら呆れさせた。
ちなみに、痺れを切らした有志による数十KBのパッチでエラーは見事解消された事を付け加えておく。
EDには「デバッグ Peassoft all staff」と責任逃れ臭い表記があるが、結果全スタッフが等しくポンコツであると示してしまったのは何とも皮肉なオチである。

Insyncの『妄想コンプリート!』(通称『毛根』)も忘れてはならない。
流通から「進捗を定期的に公開する」事を義務付けられるという小学生並の管理を受け注目されたInsyncだが、
正体はかつて3連続マスターアップ後発売延期を成し遂げたEx-itの実質的後継ブランドなのだから、待遇にも合点がいくというものだ。
その上ですら当初の予定から半年以上延期。
直前までシナリオが未完成だったりデバッグが0%だったりと安定のお家芸を見せ、どうにか発売された内容は、当然ながら未完成と手抜きの総合商社であった。
花見に行くと言いつつ花見シーンはない、ヒロインに料理を作ると言いつつ作るシーンも食べるシーンもない等、イベント描写は徹底的に省略。
特に共通の最後で立ち上げた「未来予知研究部」が活動の痕跡すらなく個別の頭で解散する様は、「エロゲ史上最短の部活動」として好評を博した。
総プレイ時間は10時間以下で、CGはSDを除くとミドルプライス級の56枚。
意表を突く世界観や主人公の正体といった素材は味付け次第で面白くなったかもしれないが、ここまで肉を抜いてしまえば残るのはただの超展開と後味の悪さのみだ。
分岐の名残と思われる男らしい1択肢を鑑みても、納期のためにあるべきものを削り続けた事は明白だろう。
「in sync」は「一致している」という意味で、もはやブランド名の時点でこれまで通りのExit劇を回避するつもりは毛頭なかったのかもしれない。

勢いはまだまだ止まらない。
Hシーン以外のADV部分が10分程しかなく、バトルスーツを着て戦うヒロインを前にプレイヤーはなぜか麻雀をさせられる『麻雀バトルヒロインズ』、
プリンを食べる様子がシーンにカウントされていたりとあまりにエロ要素が薄い『妹盗撮~自宅ストーカー~』の2作が、
お互いに方向性の違う薄さを武器にエントリー。

そして9回のクローザーを務めるは新鋭ブランドいちゃらぶ堂が贈る『女の子はドSな変態でできている』(通称『ドS』)だ。
名の通りヒロインのドSな罵倒と変態ぶりに特化したニッチゲーだが、あろう事か製作者はユーザーの求める「ドS」の意味を全く理解していなかった。
売り文句の罵倒からして言葉責めですらなく、「クズ」「空気」「ゴミ」といった小学生並の悪口を連呼するだけのもの。
そして酷い調子で詰る癖になぜか好感度は全員最初からMAXで、どんなテンションに自分を置けばいいのかがいまいちわからない。
もちろんドM紳士達がこれに興奮するはずはないが、驚くべきは主人公さえ1ミリも興奮しない点だろう。
終始冷めた顔で口撃を華麗に受け流し、逆に自らがドSに覚醒して屈服を認めさせる姿を前に、コンセプトは完全崩壊。
変態要素の方もズレっ放しで、口々に「チンコが~」「アソコが~」等やはり発想の幼い卑語を連呼し、自動で発情する淫乱バカにしかなっていない。
抜き方面に望みを見ても、大半のシーンが50クリック以下の定型性交。
CGは作画崩壊を含み、全力射精したのに差分変化なしで精液が亜空間に消えるなど、抜きゲーの命たるエロ演出まで片手落ちな始末であった。
サラリーマンにしか見えない主人公の制服がシュールな笑いを誘う程度は、ここにきて救いになる程の爆発力もないだろう。
選評者曰く「sealの方が抜ける分優秀」。
SとMにも作法があり、悦べない所業はただの苦痛である事を、一方的に蹂躙されたドMユーザー達の苦悶の表情からぜひ学び取って欲しいものである。

怒涛の9連戦を終え疲弊したKOTYe。
流石のクソゲー共もねぎらいの意思を示したのか、修羅の地平に年始以来となる一時の安らぎが訪れた。

当然選評は届くものの、濃密な負の空気を感じるには至らない。
『人妻公然恥辱電車 ~携帯一つでお触り即ハメし放題他人の妻を粘着種付け寝取り~』は、巻き寿司に例えられた浴衣の着付けや、
平面的すぎて「絵画の前でヤッてる」と揶揄されたHシーンの背景等、視覚的わかりやすさを引っさげてエントリー。
見かねた有志が「絵画」に手を加えて一瞬で自然な背景に修正してしまったりと話題には困らず、スレにしばしのポジティブな活気を提供したのであった。

また、あの『銃騎士』の補填作として注目された『聖騎士Melty☆Lovers』も持ち込まれたものの、逸脱した出来ではなく、
局部の呼称を変更できる謎の機能が住人の目にとまった結果、「ちんこ」が「ゲルググ」に変えられて爆笑を呼び、同じく明るい空気を運ぶ事に成功している。

そしてこのまま2015年は終わりを迎え、年末の魔物の姿を見る事もなく、荘厳な鐘の音が新たな年の始まりを告げる。
終わってみれば5月29日の大爆発を除いて比較的緩やかに過ぎた1年だったと言えよう。
「たまにはこんな年があってもいいじゃないか!」
平和な幕切れに安堵の表情を浮かべ、祝杯をあげるように各々が掲げたその手は――
しかし何かを探すように虚空を彷徨い続けていた。
そう、やはりクソゲーが足りないのだ。
まだあるんじゃないか?大きな何かを見逃していやしないか…?
焦りにも似た予感と疼きに導かれて方々を彷徨い歩く住人達。

そして、やはりそれは存在した。
選評締め切りまであと1週間という土壇場に、老舗メーカー・ミンク製作の見逃されていた不発弾、『Love and Peace』(通称『LaP』)がようやくその姿を現したのである。
本作のジャンルは「ヤリまくり学園バトルSLG」で、ADVの合間にゲームパートを挟む形式を取っている。
シナリオは爆死した『カルマルカ』の倍近い13人ものライターによる並行執筆となっており、当然の帰結として整合性は完全崩壊。
日本神話かと思えば突如キリスト教用語がコンニチハし、神界に救急車のサイレンが鳴り響くなど世界観はガバガバそのもの。
神話由来の思わせぶりな設定も実際は原義と何ら無関係な上に回収すらされず、余計なミスリードばかりが溢れて物語の理解を極めて困難にしてしまった。
EDで必ず主人公が消滅し、ヒロイン達は黒幕の掌から抜け出せないまま終了する鬱展開も手伝って、見事にストレス要因ばかりを抱えた仕上がりとなっている。
が、本作のストレスはこの程度で終わらない。
地獄の真価は続くゲームパートに潜んでいたのだ。
選評者曰く「1しか出ない人生ゲーム」。
マップに敷き詰められたマスを一歩ずつ進んでゴールを目指すのだが、目的地の指示が間違っていたり、
ノーヒントで決まったルートを進む『コンボイの謎』じみたマップがあるなど無駄に難易度が水増しされており、一筋縄にはいかない。
道中ほぼ全マスでいちいち戦闘が起こるためテンポは最悪。
その戦闘もユニット性能差の酷さと敵の強さゆえ模範解答以外に選択肢がない作業系出来レースだ。
更に敵編成に回復持ちが複数いると火力を上回る回復を掛け合うループが容易に生まれてしまい、最悪だとロードし直しを迫られる理不尽死にゲーの側面まで持ち合わせている。
加えて、本作では「連勝ボーナス」による経験値取得量増加抜きでは後半の攻略が厳しくなるのだが、
セーブしようと準備画面へ戻るとその連勝判定がリセットされてしまうため、こまめなセーブによる心の安寧すら許されない。
そして何より致命的なのが、エロゲーの命たる「キャラ」と「エロ」をこの出来の悪いゲーム性と密接に結びつけてしまった事だろう。
本作のHシーンは戦闘勝利後に確率で発生する敵キャラの「捕獲」と、一定レベル到達後の「進化」時に挿入される。
しかし捕獲の発生率が低く、戦闘の仕様の面倒さも手伝って初見の通常プレイだとまともにヒロインやシーンが揃わない。
つまりご褒美を求める限り勇んで無明の苦痛へと飛びこまねばならないのである。
中には一定数連勝を稼がないと登場しないキャラも存在する上、コンプには最低3周が必須となり、全てのエロを拝む道程は果てしなく遠い。
CG自体は水準以上で枚数も7jksを超え、画集としてなら珠玉であるが、辿り着けなければ意味はない。
修羅の検証魂を備える選評者ですら「コンボイ」で一度詰みを経験し、挙句自力では全キャラ制覇を遂げられなかった事が、
本作の「終わりの見えない苦行」性を如実に物語っていると言えよう。

そして選評締め切り前日にTRYSET MADの『ANOTHER POSSIBILITY』が執念の駆け込み乗車を果たし、2015年度最後のエントリーを掻っ攫った。
公式では記憶喪失の主人公によるシリアス路線を匂わせているが、実際は大きく趣を異にする。
記憶喪失は最初の1日半で無意味に治り、転校初日で初対面のヒロインが授業中にオナニーを見せつけ始めるなど、
とにかく展開やキャラの行動に突拍子がなく、無意味かつ頭の悪い描写に終始するカオスバカゲーだったのだ。
なんと言っても特筆すべきは「絶対に笑ってはいけない」仕様のHシーンだろう。
主人公の喘ぎ声が基本うるさく、「くふぅ!あふぅ!うはァ!」などと癪に障る賑やかしで没入を妨害。
加えて徹頭徹尾存在感を示すのが「う゛ッ!」という発射合図だ。
微妙な変化を加えつつ、連呼したりヒロインに伝染したりとあの手この手で頑なに使いまわされ、下げたパンツを上げる暇もなく腹筋を徹底的に破壊されるハメになる。
またライターにはなにかしら独特の言語センスがあるらしく、心の底から積乱雲級の親近感が込み上げて、気持ちを真夏の清涼感に満ち溢れた青空に変えた後、
あまりの運命的な嬉しさに腰が踊り狂うシーン等が一部住人の心をがっちりキャッチしてしまった。
無論エロゲーとしての需要からは程遠く、CGもヒロインが「一世風靡セピア」の曲でも踊りだしそうな妙ちきりんなポーズを取っていたりと色々怪しい。
通常用途への使用は難しいものの、低質な文章でもとことん突き詰めれば別の可能性が開ける事を示し、
最後の最後で盛大な笑いの死に花を咲かせてくれた事に対しては、全住人が「怪作」として敬意を表してやまないのであった。


では、ここまでで主要なエントリー作品の紹介を終え、いよいよ今回の結果発表に移ろう。

次点は
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』
『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』
『Love and Peace』
大賞は
『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』
とする。

前回『チーズ』が圧倒的完成度で大賞の座を勝ち取った時、我々は一つの到達点に来たのかもしれない。
あらゆる会話に『チーズ』の話題が色を添え続け、新鋭達は必然的に王者のクソと比される運命を強いられてしまった。
それでも懸命に存在を訴えようともがいた結果なのか、本年度は異なる個性同士の壮絶なぶつかり合い、史上稀に見る混戦の様相を呈していた。
絶対強者が現れず、大賞候補として存在感を示したのは皆一長一短ある曲者達だ。

公式最低二次オリ主によってゲームの大半が壊滅しているものの、彼の関わらない部分は凡ゲー程度にまで落ちる『姫6』。
真っ当な期待の一切を裏切る程に拙いが、個々のクソさに重みがなく小柄感が付き纏う『不条理探偵』。
新時代の錬金術と記録的薄さで詐欺寸前に迫るも、最低限の需要だけは満たし、無価値とまでは言い切れない『猫撫』。
ストレス要因の狂い咲きで娯楽として成立していない一方、CGは質も量も十二分の『LaP』。

全てが別方向かつ同程度に見過ごせない美点と欠点を持ち、エロゲー及びクソゲーに求める物次第で評価には個人差が色濃く出てしまう。
果たして支持は分かれ、議論はジャンケンの最強手を決めようとしたかの如く堂々巡りへ。
いつしか支持者間で一触即発の空気も流れ始める中、最終的に混迷を打ち破ったのは、「当スレが何のためにあるのか」という根源的な問いへの立ち返りであった。

KOTYeは何のために存在するのだろう。
クソゲーを格付けするためか、クソゲーへの憎しみを忘れないためか、はたまたクソゲーへの恨みを吐き出すためか。
否、それらもそれ以外も全て含め、広く「クソエロゲーを語る」「クソエロゲーで語り合う」事が目的ではなかっただろうか。
頂点を決めるルールも言わばそのために設けられた象徴に過ぎない。
であれば実力が伯仲し、掘り尽し味わい尽して尚決着が付かないなら、最も「語るに値する」、趣旨に適った作品を大賞に据えるべきであろう。

テキストの崩壊、薄さ、ゲーム性の破綻……。
次点3作の根幹は成程凶悪だが、全てこれまで何度も我々が挑んできた既知の敵である上、現状上層に更なる「極み」の境地が存在する。
つまり「これはひどい」以上の事を語りようがなく、提供される話題に広がりがない。
王道ゆえ酷さがわかりやすい反面、クソゲーとしての限界もまた見えやすかったのだ。

対して『姫6』にだけは語るに値する確かな独自性が潜んでいた。
「クソ主人公の存在だけでクソゲーが生まれた」という煌きである。
『チーズ』同様、クソ主人公は基本的に筆力不足に引きずられてシナリオと共にクソ化した被害者の側面を持つケースが多い。
しかし月冴は公式が行ったような単純な抹消だけでも大方の問題に片が付く程の独立病巣、積極的加害者であり、
そもそも颯馬パートのまともさやキャラ単体での魅力を見るに、ライターの実力不足の産物とは考えにくい。
おそらく要点を違えた挑戦の結果で、根本にズレを抱えたまま伸びやかに壮大に最後まで仕上がってしまった突然変異なのである。
またキャラへの愛着ごとシーンの実用性をも徹底毀損するその在り方は、単純にイチャラブゲー主人公として独自性を超えた「嫌悪感の極み」の域。
総体では抜け出せなかったが、問題単体の画期性・究極性では一線を画していたのだ。
まともな作品に異物を加えるだけでキャラとエロが死ぬ。
ありそうでなかった魔法のレシピ。
「クソエロゲーとは?」という永遠の命題に対し現時点で出せる答えの一つを、新たな角度から見事提示したと言えよう。

この負のオリジナリティがクソゲーのまだ見ぬ可能性を想わせると共にスレを賑わし、最も多く「語られた」。
よって『戦極姫6』に年度代表の証として大賞の座を譲り、心からの畏怖と敬意の念を表すものとする。
同時に最後までエンターテイナーに徹し、曇天を裂き青空を見る瞬間の快感を与えてくれた他の候補作達にも、温かい拍手の雨を贈りたい。


頂点を見た後の一歩は常に虚しく、どこか寂しいものである。
明確な方向性を持たず散発的だった本年度は、何かを極めた13・14年度からの小休止とも囁かれた。
エロゲーの市場規模減少に伴いユーザー数は右肩下がり。
あのsealが連続参戦記録を4年で終え、ライバル筆頭スワンアイまで姿を消してしまった件も寂寞に拍車をかける。
もはや「語る」事すら満足にできない悲しい未来も、さほど遠い先ではないと思わせられる。

しかし今ではない。
依然エントリー数、大賞を争った本格派クソゲーの数と質全て十分であり、年中通して話題にも事欠かなかった。
中でも、場外要素ではあるが、『Sexyビーチ プレミアムリゾート』が空前の盛り上がりを産んだ一幕は多くの者の記憶に焼き付いたに違いない。
「南国で美女とイチャラブ体験」のはずが、実際は「激重の山岳地帯でチンピラの大軍と命がけのサバイバル体験」で大炎上。
検証に手間取る間に鎮静化してエントリーは回避するも、一時は本スレの勢いが安保可決スレを超え 「安保よりチンポ」の名言も爆誕した。
なんだかんだ言いつつ業界の熱気は一定水準に保たれている事の証左であろう。

ならば、大いに語ろう。
独力ではどうにもできない怒りや哀しみも、共感し合えば泥臭いユーモアへと昇華され、笑い流す事ができる。
だからこそ傷つき涙した時、修羅達は自らの想いを伝えるための戦いに身を投じるのだ。
だからこそここに人が集まり、そしてこれからも在り続けるのである。
最後の風が戦場を吹き去るその日まで。

本年度を締めるのは、無念の帰還を果たし、ついに天下統一まで遂げてしまった姫自身の過去の言葉である。
大賞を射止めたげーせん18はじめ全てのメーカーと、エロゲーを愛好する全ての者達へ。
そして我々スレ住人一同自身へ。
初代姫の主題歌に乗せて未来への願いを歌い、長かったこの戦いを結ぶとしよう。


「咲かせて熱く、夢と舞う焔 苦しいほど美しく
この手に強く輝く未来をきっと掴むために――疾風れ」