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2015年総評案5 大賞:戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~

ここまでで主要なエントリー作品の紹介を終え、いよいよ今回の結果発表に移ることとする。

次点は
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』
『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』
『Love and Peace』
大賞は
『戦極姫6』
とする。

昨年『チーズ』が苦痛の頂点を極めるように圧倒的完成度でもって大賞の座を勝ち取った時、ある種KOTYeは一つの到達点に辿り着いてしまったのかもしれない。
雑談にしろ選評談議にしろ、あらゆる場所において『チーズ』の話題が付いて回るように色を添え、
かの地を目指すクソゲー達は必然的に立ちはだかる王者のクソと比されることを運命づけられてしまっていた。
そんな中でも懸命に存在を訴えようともがいた結果なのか、本年度は「混戦」の一言に尽きる様相を呈した回であったと言えよう。

「嫌いな男から送られてくる好きな子のハメ撮りビデオ」じみた忌むべき絵面を投げつけ、ファンの精神を壊し尽した「稀代のクソ主人公」。
ひたすら低い技巧とおざなりな完成度でもって作品に対する真っ当な期待の全てを裏切り、サイケなセンスを加えて偶発的に誕生した「至高の脱力ゲー」。
エロゲーとしての存在意義にまで踏み込むほどのボリューム不足で各界に衝撃を与えた「ナノ単位の紙ゲー」。
ゲームとしての目的や操作性の部分に圧倒的な不快感を織り込み、物語による救いさえも手放して全てのプレイヤーに一方的なストレスを植え付けた「苦痛の申し子」

本年度のエントリー作は低品質を基本にしつつ各々が違った方角への明確な個性を備えており、トレンドという形で一纏めに出来る様相ではなかった。
加えて個性のぶつかり合いで戦局が定まらない中、それぞれに見逃せない「ゲームとしての美点」が認められた事が、審査を更なる混迷へと誘う。
概ね『姫6』と『LaP』が抜け出し、最有力候補として鎬を削るが、他作品への支持層も依然譲ることはなく、戦局は停滞。
『チーズ』のように隙の全くない完成品と違って全候補作に別方向かつ同程度に見過ごせない美点や弱点がある都合上、
「各々がゲームに対して何を求めているか」という些細な嗜好の差で弱点による加点の加減が違ってしまうため、結局纏まった結論に至れなかったのである。
まさにクソゲー群雄割拠。
多種多様なクソ要素が乱舞し個性を訴えかける中で最もクソな1本を決める事は、かつてなかった程に困難を極めるミッションであったと言えよう。
いつしか支持者同士で一触即発の空気も流れ始め、各住人が疲労で目を虚ろにしていく中、
この混迷を打ち破ったのは「当スレが何のためにあるのか」という根源的な問いへの立ち返りであった。

KOTYeは何のために存在するのだろう。
クソゲーのランク付けをするためか、クソゲーへの憎しみを忘れないためか、はたまた気に入らないゲームを晒し上げて鬱憤を吐き出すためか。
否、そうではない。
それらも全て含め、広く「クソゲーを語る」「クソゲーで語り合う」事が目的ではなかっただろうか。
頂点を決めるというルールも言わばそのために設けられた象徴としての目的に過ぎない。
であれば、各候補作の実力が伯仲し、クソさを掘りつくし味わいつくして尚決着が決まらないなら、最も「語るに値する」、スレの趣旨に適った作品を大賞に据えるべきであろう。

ゲームバランスが壊れている事、作業である事、シナリオの破綻、不快なキャラクター、盛り上がらないHシーン……。
成程『LaP』の根幹を成すこれらはプレイヤーに著しい苦痛を与えるものであるし、一つ所に集まれば何をか言わんやという有様になるとはいえ、どこか既視感があるのも確かである。
『猫撫』や『不条理探偵』も同様に、それらの持つクソ要素はこれまで何度も我々が挑んできた既知の敵である上、現状更なる上層に「極み」の境地が存在するものであった。
つまり「これはひどい」以上の事を語りようがなく、スレに画期的な話題を提供するに足るものではない。
何かが足りない事を主力にすれば、簡素ゆえに酷さが誰にでもわかりやすい反面、クソゲーとしての限界もまた伝わりやすかったのだ。

そんな中今回の候補作でただ一つ、『姫6』だけは確かな独自性と究極性を持ち合わせていた。
「クソゲーがクソ主人公を生むのではなく、クソ主人公がクソゲーを生んだ」というかつてない煌きである。
例えば「今後10年超えるものは現れない」と称された『チーズ』の知空は、ゲームがダメすぎた結果巻き込まれて自身もダメになってしまった被害者的クソ主人公である。
対して『姫6』は颯馬パートのまともさ、SLG部分の最低限の作り込みから見ても本来は決してクソゲーにあらず、クソゲーしか作れない実力不足によるものとは言い難い。
これは他候補作から抜け出せなかった大きな弱点だったが、
逆に言えば「月冴の存在」だけで他のあらゆるクソ要素の合体技に匹敵するほどのマイナスを産み出したという画期的な要素とも取れるだろう。
そもそもエロゲーにおいてジャンル詐欺、コンセプト詐欺等、需要の裏切りは非常に重大なマイナス点であり、
『でにけり』のように、噛み合いによっては「不意打ち」をメインとして大賞を獲得し得る程の禁忌として認識されるものだ。
にもかかわらず『姫6』ではよりによってシナリオの大黒柱となる主人公が全面的にこれを侵した。
ただ足りないのとは違い最初からズレており、コンセプトと相反し、エロゲーの不文律をも踏みにじる形で、伸び伸びと最後まで仕上がっている。
その在り方は「クソエロゲーとは?」という永遠の命題に対し、現時点で出せる答えのひとつを体現し得たといえよう。
当然現状の「クソ主人公」としては唯一無二の独自性を持つタイトルホルダー候補である。

究極性と独自性、クソエロゲーというジャンルのまだ見ぬ可能性。
これらが大いにスレを賑わし、今年度最も多くの住人に「語られた」要素である事は確かであり、
絶対王者不在の状況を最後まで盛り上げたエンターテイナーとして無二の存在であった事もまた事実である。
よって『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』に大賞の栄冠を与え、スレ住人一同より心からの畏怖と敬意、感謝の念を表すものとする。
同時に、最後まで戦場でその存在を示し続け、我々にかつてない苦汁を舐めさせると共に、
曇天を裂き青空を見る瞬間の快感を与えてくれた他候補作達全てにも温かい拍手の雨を贈りたい。