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2015年総評案1(大賞最終案1) 大賞:戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~

さて、以上で選評が届いた2015年全てのゲームを発表した。いよいよ本年の大賞を発表しよう。

次点は、
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』、『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』、
『妄想コンプリート!』、『Love and Peace』、

そして大賞は、
『戦極姫6』とする。

今年のKOTYeは、万人が認める大賞『核』不在の混戦であった。『チーズ』の爪痕も色濃く、各選評は常に前年王者と比較され、
致命的短所があっても物足りないように見られる宿命を背負ってしまった。
トレンドは多様に渡り、一纏めにするのが困難な中、黒色の個性を持つ者達が負の頂を目指し凌ぎを削り続けた。

不条理世界の亡霊にして貫禄のアーベル節を見せ付けた『不条理探偵』。
クラウドファンディングという手段から文字通りユーザーを絶殺した『猫撫デッド』。
Ex-itの脱国先でも変わらず場外戦の王者ぶりを発揮した『毛根』。これらはいずれも次点に輩出する程の力量を備えている。
しかしこの3作は、プレイすればその全貌が見え、検証を重ねても『負』の部分があまり変化する事はなかった。
またそれぞれのクソ要素も、KOTYeの歴史を紐解けば類似または該当する点があり、「斬新さ」という視点で見るとやや決め手に欠ける節がある。

そんな中最終候補として残ったのは「戦極の陵辱者」たる『姫6』と、「愛と平和の鬼畜者」たる『LaP』。
他次点作が薄さを軸とした酷さであるならば、この2作は濃密な酷さを軸とし、検証を重ねるほど負が膨張した魔性のクソゲーといえる。

ここで一つ補足を挟もう。KOTYeでは家庭用KOTYとは違いエントリー制を採用している。理由は幾つかあるが、エロゲーは本質上嗜好品という意味合いが強く、
より多角的な視点での評価が求められるからだ。では、エロゲーとは何か? 突き詰めればそれはエロと物語を組み合わせ、ゲーム化したものだ。

このエロと物語という重要なファクターにおいて、姫6は「榊 月冴」という最大の汚点がある。
飯一つで女子を堕とし、喰い散らかしては捨て、責任は取らず、また次の獲物を求めるのみ。因果応報を受ける事もなく、境遇に苦しむ事もない。
この傍若無人この上ない立ち振る舞いには誰もが閉口。特に歴代ファンからは嗚咽に似た怒号が飛び交った。
だがこれは所轄古参ファンの多くに該当するものであり、新規ユーザーが感じる「それ」は人によってどうしても異なってしまうのも事実だ。

一方で当初有利とされていたLaPはどうか? もっとも争点となった「エロまでの道程が苦痛で、せっかくのエロに辿り着けない」という点は、
まぎれもなく致命的な問題だ。物語はごちゃ混ぜ世界観で随所に解決されない伏線が重なる上に、ラストはマルチ鬱エンドと救いなし。
ゲーム性は言わずもがな、単純かつ作業的、理不尽な運ゲーに終始し、ご希望のヒロインとのHすらままならない。
だがエロは質こそ単調だが数だけはボリュームに富み、個人差あれど達成感を味わう事が可能な点は見逃せない。
更に検証が続けられた結果、遂にLaPのCGを自力フルコンプする勇者が出現。そして捕獲対象のレア種の出現率が低確率ではなく、
連勝ボーナスを一定数続ける事で出現する事が判明。これにより「作業ゲーだがCGコンプなら十数時間のゲーム」にまで弱体した。
しかし肝心のゲーム内容が面白くない事は変わらず、勝敗を左右する差とは決め難い。

エロ、物語、ゲーム性・・・。ここまではほぼ互角だ。
しかし姫6にはもう一つ、他では見られない独創的なきらめきがあった。
それは、「物語の核たる主人公が、物語の華たるヒロインの株まで下げている」点である。
事実、次々に餌付けで喰われていくヒロイン達は、月冴のご無体に抵抗する事もなく、惚れ込む具体的な理由も明かさず、嫉妬もしない。
ただ「不思議な魅力がある」の一言で済ませてしまい、プレイヤーはどこまでも蚊帳の外である。
つまり「先に世界があり、それに主人公がどう行動し物語を紡いでいくか」ではなく、
「先に主人公があり、その主人公のためだけに都合のいいエロと物語が付属している」のである。
言うなればその存在は、世界の大半を己の欲望の為だけに支配し闇に変えた、主人公ならぬラスボスの如しであった。
クソゲーが駄目主人公を生むのではなく、駄目主人公がクソゲーを生む。これは歴代でも前例がない輝きであり、
ひいては「クソなエロゲー」の新境地を開拓し、「それをネタとして語る」スレの趣旨に充分に値するものと言えよう。

故に2015年は、遊べば遊ぶほどストレスをおかわりさせ続け、本年で最もエロゲーの不文律を踏みにじり、エロと物語を公式が最低同人化させた、
『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』に大賞を授与するものとする。


今年は年末の魔物不在の年となり、数と質どちらにおいても、過去数年に比べるとやや低調だった事は否めない。
5月29日に同日9本の快挙を成し遂げながら、その後は数不足に陥り、ゲーム性を重視したかったゲームも、総じて大コケ。
seal不在でありながら、ロープライス勢がいずれも安かろう悪かろうの不出来揃い。
発売後、バグと不具合のオープンワールドで多くの人々を魅了し、2chスレの勢いが一時安保スレを上回り、
「安保よりチ○ポ」なる名言を生み出した『sexyビーチ プレミアムリゾート』(通称『セクビ』)も、
その仕様の難解さと高すぎる要求スペックが災いし、選評を執筆する者が最後まで現れず、惜しくも競争中止と相成った。

何度も言われているが、クソゲーが減るのは喜ばしい事だ。しかし闇なくして光は輝けないように、クソゲーなくして名作も輝けないのである。
言うなれば、クソゲーもまた、可能性の一つなのだ。