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2015年総評案4 大賞:戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~

2014年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は、暗黒面に堕ちた者共の武闘会となった。
泥沼の激闘に終止符を打ったのは、どんな対象にも最大限に威力を発揮するメギドの火矢。
『チーズ』こと『新世黙示録 ―Death March―』がすべての敵と一部のスレ住人を屠り去り、血塗られた勝利を手にしたのである。
破壊に続くのは創造か、それともさらなる破壊か。
未だ暗雲立ち込める死の大地を踏みしめ、探求の旅は続いてゆく。

ハルマゲドンの後に残った焼け野原で新たな芽吹きが始まったのは、早春のことである。

一番乗りを果たした『エロ本を捨ててから兄の様子がおかしい』は、妹陵辱ゲーというコンセプトからの脱線が問題視された。
特に妹の友人ルートでは顕著であり、人間関係のコペルニクス的転回が連発される。
まず友人が主人公による妹の盗撮を暴こうとするも、盗撮される興奮に目覚めた妹が自らそれを阻止。
性格が豹変した妹から逆に脅迫される友人を主人公が守る純愛路線に移行したかと思えば、今度は妹と友人が百合関係になり、最終的には妹が主人公と友人を結びつけてハッピー(?)エンドとなる。
人体の骨格とパースが狂っているグラフィックも併せれば、様子がおかしいのが兄だけではないことは明白であった。

同時期には、
心理戦ゲーム「人狼」をモチーフにしていながら、敵側が勝利よりも性欲を優先するため主人公側のワンサイドゲームとなる『影狼 -kageroh-』や、
陳腐なバカ抜きゲーとして「滑り倒すボボボーボ・ボーボボ」扱いされるも、肉汁したたるショコラケーキの画像でなんとかオチが付いた『毎日がハーレムすぎて王子は姫を決められないっ!』などが相次いで萌芽した。

こうしていくつかの選評とともに迎えた桜の季節に、ようやく温まってきた空気を凍りつかせる事件が起きる。

『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』による突然の侵攻が始まったのである。
戦極姫シリーズは1作目がKOTYe2008で次点入りし、翌年には修羅の国からの黒船として据置と携帯の両部門を制覇したが、その後は徐々に針路を変更。
陽の当たる場所へと旅立っていったはずだった。
しかし、ある男の手によって舵は切り返され、暗黒大陸へと舞い戻ってしまう。
そう、本作最大の問題点は、W主人公の片割れとして新登場した「榊 月冴(さかき つかさ)」の存在そのものなのである。
基本スペックは非常に高く、猛将を圧倒する武力と軍師並の知力を誇り、料理の腕も超一流で文化人としての教養まで兼ね備えたチート野郎。
しまいには空を飛んで敵の大軍団をかわし、もうひとりの主人公との直接対決に完勝する。
その際のモノローグ「だが俺の身体は空を飛んでそのまま織田家の本陣へと向かう。」は一部で大流行し、様々な状況からそのまま織田家の本陣へと向かう者が続出した。
ただ、飛翔はともかく完璧超人設定自体はありふれており、それだけで非難するには当たらない。
しかし人間性はまさしく下衆の極みで、実は元レイプ常習犯なのである。
一応、ある少女との出会いをきっかけに改心したという設定もあるが、作中ではその少女の存在もろとも有名無実化している。
力づくで襲うことだけはやめたものの、基本的にやり捨て前提で近づいて実行に移し、時には騙してでも処女を奪って悪びれないのでは、無体なことに変わりはない。
そしてこの態度は、実質全員が月冴専用のサブヒロイン勢だけでなく、メインヒロインに対してすら貫き通される。
W主人公を謳っていながら9割以上のヒロインを1人で食い散らかし、責任も取らずに去っていくのである。
そしてヒロイン達は皆、そんな男に餌付けされてあっさり尻尾を振るようになる始末。
前作までは身持ちが固かったとヒロインとて例外ではなく、同じ展開が数十回使いまわされた末に「媚薬飯」と称されるに至った。
やり逃げされても、不思議な魅力があるという理由で怒るどころか雁首揃えて崇拝するようになる様子には、たちの悪いカルトのような嫌悪感すら漂う。
下衆いチャラ男や頭と股の緩いビッチは主な購買層が拒否反応を示す典型であり、それをメインに置いた時点で失敗は約束されていたといえよう。
さらなる問題は、キャラクターを引き継ぐシリーズものでそれをやってしまったことである。
いわば最低系オリ主の公式化であり、ファンであるほど反動によって精神的ダメージは増していく。
なにせ公式シナリオで、愛着のある旧来の主人公は噛ませ犬にされ、思い入れの深いヒロインがやり捨てられて喜ぶ白痴と化してしまうのである。
もはやNTRといっても過言ではない。
シリーズ自体を蹂躙するかのような所業には、当然のように非難が集中。
その結果、追加ディスクの告知には月冴追放が明示され、公式によって事実上の黒歴史に認定される事態となった。
また、SLGパートは仕様変更によりバランスが崩壊。
野戦において隊長武将の能力が極端に重視されるようになり、数十倍の兵力差を独力で覆せる戦極無双になり果てている。
かくして、旧知の仲でも油断すれば寝首をかかれる戦国の理にスレは震撼するのであった。

帰還を果たしたレジェンドに対抗すべく、5月に入ると元王者達が相次いで立ち上がった。

まずは、系列ブランドが『部室』で名を馳せて以来の常連となったpotageからの刺客、『超・秘湯めぐり』が参戦。
相も変わらぬ抜群の「負安定感」を見せつけた。
それもそのはず、本作はシナリオ・エロ・UI・BGMのすべてが淡々と手抜きされている。
『部室』で化石呼ばわりされたUIは未だに現役であり、5曲ほどしか無いBGMはすべてフリー素材。
ストーリーは薄いを通り越して無いに等しく、何の前触れもなく盛り始めるか、突然ヤ○ザが乗り込んできて犯されるかしてそのまま終了する。
そのエロシーンもワンパターンかつ極薄で1回30クリック前後。
こうした文章量不足を過剰なパロネタだけで補おうとしているものの、単発ネタを思い付いた順に片っ端から入れているだけであり寒々しい。
そんな悪あがきもむなしく、最終的なボリュームはコンプまで約2時間とコンパクトに収まった。
これで価格は安定のフルプライス。
全体が低品質でまとまっており、タイトルに反して一切の温もりを感じさせない仕上がりであった。

負けじと3年半の沈黙を破ったのは、2009年の初参戦以降に発売した作品のエントリー率100%を誇る愛されブランド、本家アーベルソフトウェアであった。
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』が着弾し、王座奪還の狼煙が上がったのである。
本作を端的に表現するならば、「稚拙」という言葉がふさわしい。
作品を構成する主要な要素、推理・バトル・エロのことごとくに技巧が欠けているのである。
探偵ものとしては、手がかりを集めて推理するという基本からして相当怪しい。
手がかり集めは、女性を快楽で堕として口を割らせる力技に頼りきり。
しかも得られるのがどうでもいい情報ばかりとあっては、エロをねじ込むための手段にしかなっていない。
そして情報も物証も足りないまま、やっつけ消去法で言いがかり同然に犯人を導き出そうとするのだが、披露する前に毎回犯人が自滅してくれるため問題にはならずに済む。
無論、それが探偵ものとして問題なのは言うまでもないが。
グラフィックも心もとない。
台詞の横に表示される顔グラには差分がなく、主人公は常に覇気のない無表情。
格闘シーンの一枚絵には躍動感の欠片もなく、「無気力キック」などと揶揄された。
毒沼色のレモネード程度はもはやご愛嬌であろう。
絵だけでなく文章による表現力や音による演出力も不足している。
よって、それらを組み合わせて様々な場面を作ろうとしても、せいぜい脱力系ギャグにしかならないのである。
しかし言い換えれば、至る所にネタが潜んでいるということである
わずか5時間で打ち切りとなる短さでありながら、「今の俺なら、手負いの女なんて瞬殺ですよ」などの迷言や面白画像が少しずつ発掘されていき、長らくスレ住人達のティータイムのお供を務め上げることになった。

このどさくさに紛れて『繋がらない携帯電話 -ただいま他の男とめちゃめちゃセックス中-』が間隙を突く。
寝取られをテーマにしながら妄想か睡姦オンリーで寝取られ感が無く、間男筆頭候補が実は主人公狙いのゲイという誰得変化球を投げつけたのである。

その直後、3強対決の余波が次なる事件の呼び水となった。
それこそが、5月29日に発売された作品群による集団決起。
レジェンド達の競演によってスレに渦巻いた戦雲が、観測史上最大級の大嵐を呼び寄せたのである。

初めに、発売日当日のエントリーで『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』が先駆けた。
その早さの理由は、極端なボリューム不足である。
フルコンプまではオートで約1時間。
ボイスを飛ばせばその半分にも満たない時間で読み終わる。
CG数はまさかの5枚で、その大半が公式サイトで確認可能。
挙句、エロはまさかの本番無し。
もはや薄い本より薄く、選評者をして「回想機能は無いが回想する必要も無いので問題無い」と言わしめた。
また、本作はクラウドファンディングで資金を調達して発売に至ったという経緯がある。
結果を見る限り、修羅の国との取り合わせはやはり「混ぜるな危険」であったといえよう。
これではサポーター達も報われまい。
彼らの名前が流れるスタッフロールはさながら墓碑であり、銘の一部に誤植があるという事実が、最後まで誠実という言葉の意味を問いかける。
カス同然の現象に価値をこさえる試みは、文字通りデッドエンドとなってしまった。

次いで、深夜のテンションで暴走しながら『裏技スペクトラム』が登場。
満載された安直なパロディや使い古されたネタが原因で、大規模なスリップ事故を引き起こす。
Hシーンまでもが巻き込まれ、漫才セクロスの様相を呈する惨事となった。
「君よ、活目せよ――これがエロゲーの極北だ!!!」との公式キャッチコピーは、こうした寒さを的確に表現しているといえよう。
シナリオの路面凍結に比べれば、赤い色をした「黒いメイド服」という矛盾などは瑣末な問題である。
最終的に本作は、「このテンションと内容に君はついて来れるか!?」の煽り文句を残して孤独に走り去っていった。

さらに、タイトルとキャラデザに某アニメへのオマージュが満ち満ちている『中二病な彼女の恋愛方程式(ラブイクエイション)』も降臨。
シナリオやグラフィックは概ね及第点に届いており、唯一にして最大の欠点はバグである。
細かいものだと、一部の設定変更の未反映、既読やCG解放のフラグ管理ミス、文章と音声の齟齬などが挙げられるが、これらは前座にすぎない。
致命的なのは頻発するエラー落ちと、それに連鎖して時折発生するセーブデータの消失である。
その威力は凄まじく、最後に正常終了した後に保存したデータはすべて消滅するため、こまめなセーブだけでは対策にならない。
セーブするごとに、いったん終了させるかデータをバックアップしなければ安心できないのである。
後日ギガパッチによる修正が可能となるも、例によってセーブデータに互換性は無し。
こうしてセーブデータが闇の炎に抱かれて消える様子は、思い出すだけでも身震いするような惨劇であった。

続いて『恋魂』が外法を用いて乱入した。
独自の厨二風用語がてんこ盛りの設定には妙な力がこもっているが、それを活かせていないどころか把握しきれていない。
おまけに主人公は、アウトローぶる俺カッケーと思い込んでいるDQNそのもの。
結果、ストーリーは矛盾を散りばめたオラオラ進行となり、力尽きたように打ち切り気味のラストを迎える。
しかも個別ルートのうち2つは、初期状態だと入ることすらできない。
これはバグではなく、もはや恒例となりつつある意図的な未完成ルート隠しであった。
パッチを当ててコンプした後、初期状態に戻してからCGモードに入れば確認できる。
相当数のCGが選んでも表示されず、未収録のSD画像を選ぶと表示されるのはダミー。
さらに、未収録CGを含むHシーンを回想しようとすれば、「黒背景に文字だけのHシーン」という始祖の伝説が今に蘇る。
つまり、初期状態ではデータが入っていない事実が浮き彫りになるのである。
主人公だけでなく、納期を守る手法までアウトローという憎らしい演出であった。

未完成品販売と聞いて呼ばれた気がしたのか、尻を叩かれながら『妄想コンプリート!』がここで到着する。
あの『雛遺書』を生んだEX-ITの流れをくむ新ブランドの処女作であり、発売前から『毛根』の略称を与えられ注目を集めていた。
そして、何かが起こりそうな予感は誰も予想できない形で現実となる。
一向に進まない制作状況に業を煮やした流通に介入され、進捗状況を定期的に晒されてしまったのである。
こうして発売前にもかかわらず盛大に話題をさらった後、当初の予定から半年遅れで発売。
大方の予想通り完成度は低く、明らかに時間切れで無理矢理区切りをつけたハリボテであった。
プレイ時間は共通ルートが約2時間で個別は実質1時間ずつという短さ。
ストーリー展開は疾走感に溢れており、立ち上げた部活動は数日以内にスピード解散。
ほかにも使い切れない設定や伏線を次々とパージしつつ、ストーリー開始から1週間で一気にエロまで駆け抜ける。
これによりヒロインの過半数が極度のチョロイン化。
残る妹と幼なじみには、それぞれ長年の想いが成就するも「実は主人公の精神は別人に変わってました」と後に明かされる罠が用意されており、全ヒロインに対して隙がない。
シナリオ以外も、文章と音声の不整合や一択肢を筆頭に突貫工事の残滓が至る所に残っていたり、縮尺がおかしくヒロインがフィギュアサイズにしか見えない一枚絵があったりと全体的に杜撰である。
欠落部分を妄想で補ってコンプリートすることも難しい完成度であった。

このほかにミドルプライス以下の3作品も続々と集結。
最後に、頭と口が悪いM女達をヒロインに据えてタイトル詐欺となった『女の子はドSな変態でできている』が加わったところで、ようやく嵐は収束した。
同日発売作品の最多エントリー数は、昨年記録した6本を大きく上回る9本を記録したのであった。

こうして怒涛の勢いを見せた上半期が終了。
過去最速のペースで押し寄せてくる選評にスレ住人達は脅威を感じていたが、ここで潮目が変わった。
寄せた波は引いてゆき、新たな挑戦者が現れなくなったのである。

それから2ヶ月。
閉塞感を打開すべく、ついに降臨したメシアこそが『淫らな魔法使いと救性主』であった。
本作は、調教SLGと銘打たれながら、調教ものの要点をまるで押さえていない。
導入からして例外ではなく、ヒロインは失った魔力を取り戻したいがため、その唯一の手段である調教を渋々ながらも受け入れる。
しかし、そもそも調教とは対象が自分に従うように躾けることであり、最初から従っていては調教らしさなど生じようもない。
終盤の調教シーンだけはかろうじて体裁を保っているものの、日常シーンにダークやシリアスな雰囲気は皆無。
ついにはイチャラブを経て逆に主人公が絞られるまでに至り、調教ものとしては破綻してしまう。
また、調教の道具や資金を集めるためのクエストと称し、同じ内容のテキストを繰り返しスキップするだけの余計な要素も搭載。
極めつけは、そのクエストを回想モードに登録しておいて調教シーンは登録しないという暴挙である。
調教したいと望むプレイヤーに対しておあずけ系お仕置きとは、あまりに高度すぎるプレイであった。

さらに時は流れて秋口、スレにひと粒の実りがもたらされた。
CGが醸し出す違和感が目を引く『人妻公然恥辱電車 ~携帯一つでお触り即ハメし放題他人の妻を粘着種付け寝取り』である。
とりわけ目立つのは、帯がまるでのし紙のような浴衣姿。
さらに、とあるHシーンの背景は平面的すぎて「絵画」と呼ばれたが、それもそのはず、通常の背景CGの一部を拡大して流用しているのである。
その背景CGも「食品売り場」で検索すれば最上段に表示される画像のトレスという二段構え。
あまりの惨状を見かねた有志が手を加えると違和感は見事に消え、元絵の拙さがより明確になってしまうのであった。

こうして小さい秋を分けあって糊口を凌ぐスレ住人達であったが、冬を前にして選評は完全に途絶えてしまう。
しかし厳しい寒さの中でも発掘・解体作業は続いており、それは年明けにようやく実を結んだ。

1月上旬には、1+1が1前後しかならない狂ったバランスの合体システムが物議を醸したSRPG『剣聖機アルファライド』がエントリー。

そして締め切り間際。
まずは、デスゲームものとは名ばかりで毎回ゲームマスターの温情に救われる『Closed GAME』が滑り込みを果たす。
それに続いて、ふたつの影が満を持してその姿を現した。

理解するのが困難なため遅い参戦になったのが、『ANOTHER POSSIBILITY』である。
本作はバカ抜きゲーと思われるが、推測の域を出ない。
あまりにもおバカな話が頭の悪い文章で綴られており、狙って作られたのか、それとも結果としてバカゲーに見えるだけなのかが判然としないのである。
全編を通してほとんど会話のみで進行し、わずかな地の文は日本語として間違いだらけ。
仰々しい形容や比喩の乱用がわかりにくさに拍車をかけ、正しく理解するには読解力を越えて解読力を要求される。
ただし名文に見えなくもない箇所もあり、「心の底から積乱雲級の親近感が込み上げて、気持ちを真夏の清涼感に満ち溢れた青空に変える」や「あまりの運命的な嬉しさに、僕の腰も踊り狂ってしまう。」といった表現は一部スレ住人の心を掴んだ。
また、話の流れは突拍子もなく、初対面のヒロインが授業中の教室でオ○ニーを見せつけ始めたり、主人公は何の葛藤もなくノリノリで近親ヒロイン達に手を出す。
できればバカ抜きゲーにはよくある展開として水に流したいが、肝心のエロがまともではないためそれも難しい。
そのHシーンでも、やはり文章の質が問題となる。
とりわけ存在感を示すのが「う゛ッ!」という台詞。
発射の合図として使われるだけでは済まず、1行で4回も5回も連呼したりヒロインに伝染したりと非常にしつこく、クスリでもやっているのかと疑うほどトんでいく。
それでいて、末尾の変更や別の台詞への混入などの絶妙なアレンジがプレイヤーに慣れを許さず、エロへの集中を著しく妨げるのである。
低質な文章でも、とことん突き詰めれば別の可能性が開けることを示した怪作であった。

選評受付最終日にようやくその全貌が明らかになったのは、老舗からの刺客『Love and Peace』である。
メインとなるRPG風パートは、戦術性が無くバランスも悪いため単純作業でしかない。
まず、戦闘システムがあまりにもシンプルすぎる。
キャラクターの数は多いが、取る行動は敵味方全員がバカの一つ覚え。
例えるなら、「たたかう」だけを繰り返す戦士と「ホ○ミ」を延々と唱え続ける僧侶しかいない。
根幹がここまで単純だと、属性相性や距離といった要素を加えたところで焼け石に水である。
戦闘中はフルオートで、戦闘に関してプレイヤーにできることは、事前のメンバー編成と優先攻撃対象の指定のみ。
しかし、キャラクターの性能差が激しく敵も強いため選り好みする余裕はなく、厄介な回復役を真っ先に狙う以外の選択肢もない。
状況に応じて最善手を模索する要素が徹底排除され、もはや火力と耐久力の単純比較でしかなくなっている。
よって、すべての戦闘は少しでも戦力の高い側が必ず勝つ出来レース。
相手によっては、最初の数ターンで勝敗が見ているのに消化試合がだらだら続き、回復偏重の敵を削りきれず引き分けになることも多い。
稀ではあるが、最悪の場合は攻撃と回復がループして戦闘が終わらなくなり、ゲーム自体を強制終了させてやり直すしかなくなってしまう。
しかし、クリアするにはこの戦闘をひたすら繰り返す以外に道はない。
フロアマップにびっしりと敷き詰められたマスの大部分が戦闘マス。
目的地が不明瞭な上にマップ同士の繋がりもわかりにくく、一歩一歩戦闘をこなしながら右往左往する羽目になる。
しかも、Hシーンはこのパートでひとつずつ集めなければならない。
ヒロインの大半は敵として登場し、シーンを回収するには、倒し、捕獲し、育て、進化させるという手順を踏む必要がある。
ポ○モン図鑑を埋める作業に近いが、敵出現のランダム性や最初の三択で選ばなかったヒロインは以降登場しない仕様も重なり、コンプへの道のりは長い。
また、ストーリーは難解な上に鬱エンドしかなく、真エンドを探し求めるデスマーチが徒労に終わる悲劇を招いた。
ただしグラフィックは充実しており、CG数は差分抜きで実に271枚、シーン数は94と標準を何倍も上回る量を誇る。質も問題なく、最大の長所といえよう。
しかし「エロさえ良ければすべて良し」が通用するのはシステムやシナリオが妨げになっていないときだけであり、回収に労力を要する分だけ価値を減じてしまっていることも否めない。
総じて、何をもって「Love and Peace」なのか理解に苦しむ内容であった。

以上をもって2015年の主要なエントリー作品の紹介を終了し、大賞及び次点の発表に移る。

次点は、
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』
『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』
『ANOTHER POSSIBILITY』
『Love and Peace』

そして栄えある大賞は、
『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』
とする。

2015年の大賞争いは、隙の無い絶対強者が現れず混戦模様となった。
最多勢力は粗製濫造された量産型クソゲーである。
品質向上に要する様々な力が足りなかったがために、本来の完成形とは程遠い。
ただそれだけの粗悪品という枠をいかに打ち破るかが、さらなる低みへと至る鍵となる。
次点に選出された作品は、いずれも完成度の低さを殊の外追求することでそれを成した。

コンセプトが成立しないほどの技巧不足。
エロゲー未満に陥りかねないほどのボリューム不足。
物笑いの種になるほどの文章力不足
SLGが単純作業と化すほどの戦略性不足。

中でも『Love and Peace』は、初報の段階では「見返りがなく終わりも見えない単純作業の繰り返し」という拷問そのものの印象すら持たれていた。
しかし、後の検証によってそれが薄れる。
最難関とされていたレアCGは確率ではなく一定数連勝すれば確実に回収できることがわかり、フルコンプまで十数時間という具体的なゴールも示されたことで、実態以上に肥大化していたイメージが払拭されたのである。
何かが足りないことを主力にすれば、簡素ゆえに酷さが誰にでもわかりやすい反面、クソゲーとしての限界もまた伝わりやすいことを象徴する出来事といえよう。

対して『戦極姫6』は、SLG部分については戦略性不足で済むが、シナリオに「根本からズレた完成度の高さ」を有している点で他の候補と一線を画していた。
基部となる新主人公の人物像の時点で、女好きの好漢にするつもりがただの下衆でしかない決定的な齟齬が既に生じている。
にもかかわらず、そのまま王道ハーレムものの枠に落とし込まれた結果、下衆男が好漢として崇め奉られるというおぞましい矛盾に満ちたシナリオが、ものの見事に完成してしまった。
従来通りの王道を望んだユーザーにとっては、感情移入できないどころか見たくもない惨劇となり、ヒロインが簡単に股を開きすぎて鬼畜ものとしても成り立っていない。
そもそもエロゲーにおいては、事前に明確なコンセプトを掲げ、それに合致した内容を保証するのが暗黙のルールとされている。
それに抵触する要素を密かに仕込む不意打ちは禁忌であるにもかかわらず、よりによってシナリオの大黒柱である主人公が全面的にこれを侵した。
ただ足りないのとは違い、最初からズレており、コンセプトと相反し、エロゲーの不文律をも踏みにじる形で、伸び伸びと最後まで仕上がっている。
その在り方は、「クソエロゲーとは?」という永遠の命題に対し、現時点で出せる答えのひとつを体現し得たといえよう。
よって『戦極姫6 ~天下覚醒、新月の煌き~』に2015年KOTYeの大賞を授与し、修羅の国の禁忌に真っ向から挑んだ猪武者への手向けとする。

2015年は、エントリー数と強度の両面において、近年の勢いにやや陰りが見える年となった。
市場規模が年々減少を続けていることも一因であろう。
エロゲーが減り、ユーザーが減れば、KOTYeの屋台骨たる選評も減っていく。
どんな有力候補でも、選評が届かなければ舞台に上がることさえできない。
ゆえに選評者たちは、クソゲーに傷つき涙したとき、自らの見解を伝えるための戦いに身を投じる。
プレイを通して得た実感は、又聞きしてわかった気になっているのとは比較にならない価値を持つと知っているからである。
独力ではどうにもできない怒りや哀しみをもたらすクソゲーでさえ、同志と共感し合えば楽しみと喜びへと昇華できると信じ、彼らは今日も先駆となって修羅道をゆく。
暗闇に差す僅かな光を求め、後に続く者たちの活路を切り開くために。

最後に、戦極姫シリーズの主題歌を借用してスレ住人一同の願いを伝え、KOTYe2015を締めくくる。

「ただ爆破され散るのなら
 いつかきっとスレに選評を届けて
 そのクソゲーをどこまででも伝えるように
 生命の音を鳴らし続けて」