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2015年総評案2 大賞:不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~

23 :総評2 ◆Kx43u0bLFs:2016/02/13(土) 19:32:36 HOST:softbank219202046200.bbtec.net
2014年、過去最多のエントリー数を記録したクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(以下、KOTYe)。
2013年の「笑えるクソゲー」から一転、「笑えないクソゲー」が群となって押し寄せ、スレは闇に包まれた。
大賞争いは過酷を極めたが、その王座には歴代クソゲーの臭大成と評された『新世黙示録 ―Death March―』が座し、無事に幕を閉じたのである。
そんな闇を耐え抜いた猛者たちが、チーズの腐海に散った同志の念を背負いながら今日もまた修羅の国を駆け抜けて行くのであった。

年明けは平穏に過ぎ去り、時は3月。
一部エンドで陵辱モノなのに純愛エンドを迎える『エロ本を捨ててから兄の様子がおかしい』、
終始ご都合主義に徹する『1/7の魔法使い』、
がエントリーするも、チーズの腐臭に蹂躙され疲弊した住人の反応は薄いものだった。

昨年、『Kinight & Princess』でエントリーした縁-yukari-が今年もエントリーを決めた。
人狼をモチーフにした『影狼』だ。
前回の反省からか大きなバグはないものの、細かいバグや粗が随所に散りばめられている。
またフルプライスながらシナリオは不相応の短さであり、とても人狼を表現できたものではなかった。

その3日後にはPeasSoftの『毎日がハーレムすぎて王子は姫を決められないっ!』がエントリー。
タイトル詐欺に集約できる本作は、タイトルで「ハーレム」と謳っておきながらハーレムルートが存在しない。
複数人でのプレイもなく、サブヒロインの攻略も不可。そもそも各ヒロインが好意を寄せてくるのはルート突入後なので、ハーレム作品として本末転倒である。
そんな中、肉汁あふれるショコラケーキが住人にシュールな笑いをもたらしたのだった。

そして4月、クソゲーの姫が帰還を遂げた。
2008年の第1回KOTYeで次点、CS版では本家と携帯板でのダブル受賞に至った戦極姫のシリーズ第6弾、『戦極姫6』である。
2を最後にクソゲー界からは離れていた同シリーズ。彼女の帰還を、誰が予想できただろうか。

今作は従来の主人公・天城颯馬に加え、新主人公として榊月冴を迎えたW主人公形式。
しかし、ヒロインの大半は月冴でしか攻略できず、そしてこの榊月冴こそが問題の大元凶なのだ。
公式紹介では「料理が上手く、それを利用して女を口説く」とされており、実際紹介文の通りに料理スキルが大活躍。
月冴の料理を食べたヒロイン達が彼に対して次々と惚れていく様は、選評者曰く「料理に媚薬でも入れているかのよう」とのこと。

さらに、月冴の才能は料理のみに留まらない。
彼は武士としての実力に優れ、軍師としての知力に優れ、茶道や書道といった学問にも精通し、文官としても優れた才能を見せつける。
その姿はまさにチート野郎。ご都合主義の権化である。
また女性の扱いにもゲスを極め、口説いた端から性行為におよび、当然のように中出しをし、無理矢理に処女をうばっても罪悪感を抱かず、挙句の果てにルート次第ではヒロインの顔を忘れるという有様。
これ程までの最低野郎であるが、ヒロイン達は彼を頑なに擁護し続ける。
彼女ら曰く「不思議な魅力がある」「悪印象を受けるのは彼をよく知らないから」とのことだが、全くそうは思えないのが実情である。
もう一方の主人公である颯馬は従来通りの役回りを見せるも、出番そのものが月冴に比べて圧倒的に少なく、実質的に月冴の単独主人公と呼んでも過言ではない。
この月冴に対する不評はメーカーに苦情が入る程で、遂にはTwitterで反省の旨を示すまでに至った。
そして止めを刺すように、その後発売された『戦極姫6 遊戯強化版・壱』では颯馬のシナリオのみが追加され、事実上公式が榊月冴の存在そのものを否定するのだった。

月冴ショックが冷めやらぬ中、『キシ×カノ』が騎士モノのブランドの復権をするべく立ち上がった。
昨年、『銃騎士』を筆頭に多数の騎士がKOTYeを駆け抜けては堕落。
今年こそはと息巻いた騎士だったが、とにかく薄い仕上がりであり、またしてもKOTYeに名を連ねることになってしまった。

5月。クソの源泉が発掘された。Potageの『超・秘湯めぐり』だ。
薄いシナリオ、不快なシステム、つまらないパロディと、昨年のトレンドを網羅。
BGMもフリー素材を利用し、商業製品として首を傾げる手抜き仕様。
ゲームエンジンも『部室』のものを流用しているようで、名前入力のバグも完全再現されている。
まるで学習する気のないその姿に、住人はただ苦笑するのだった。

3月に帰還した姫に続き、かつての王者も帰ってきた。
アーベルソフトウェアの『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』である。
菅野ひろゆき氏の逝去以降、本家からは初の作品となった本作は、これまで同様にミステリー作品で勝負を挑み、これまで同様にエントリーすることになった。
シナリオは案の定と言うべきか褒められた部分はなく、推理の要素は極めて薄い。
推理モノでありながら推理シーンで選択肢がなく、内容も小学生レベルの推理。
それでいて次々と事件を解決していく様はまさに不条理。
エロシーンでも、情報を聞き出すにはセックスだという謎の理論をかざす強引な展開が続く。
戦闘シーンでも表現力に乏しく、場面説明では「避けた」「回りこんだ」程度しか表現されない。
そして主人公は終始無気力な表情で、放たれるキックにも覇気がない。
そのくせ、負傷した敵対する女性に対して「今の俺なら、手負いの女なんて瞬殺ですよ」などと発言する。
他にも、ウォータースライダーがある高級ホテル、紫色のレモネード、無表情で喘ぐ主人公、
そしてエンディングはアーベルお決まりの打ち切りエンド。
回想も差分を逐一表示する水増し仕様と、変わらない姿を見せてくれた。

その後、ホモエンドを迎えるNTRゲー『繋がらない携帯電話 -ただいま他の男とめちゃめちゃセックス中-』がエントリー。
NTR専門ブランドながら、NTRスキーから反感を買う出来になってしまった。

さて、昨年のKOTYeの締めの言葉を覚えているだろうか。
「いかなるデスマーチが待っていようと、我々はクソゲーをなかったことになどしない。かかってきなさい」
我々がクソゲーに対して叩きつけた挑戦状。彼らはその言葉を真に受けてしまったのだ。
5月29日。この日を発売日とするクソゲーたちが、群を成して襲いかかってきた。

その発売日当日に速攻を仕掛けてきたのは、昨年もエントリーしたWHITESOFTの『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』。2011年に発売された『猫撫ディストーション』のファンディスクである。
本作はクラウドファンディングによって制作され、目標金額は4日で達成。ファンの期待は大きなものだった。作品が送られてくるまでは。

そのCG総数、5枚。エロシーンは本番なし。
元よりシリーズ通してエロが薄いタイプの作品ではあるが、それを考慮してもその事実に誰もが驚愕した。
そもそもシナリオ全編通してオートモードでも一時間という短さを誇り、商業作品としてはおそらく史上最短ではないだろうか。
数クリックで終わる濡れ場に実用性はない。過去のクソゲーがそれを証明している。
エロ以外の部分も短すぎるあまりに評価のしようがなく、ファンが書いたショートストーリーのよう。
商品として売るにはどう考えてもとにかく短すぎるのだ。
FDはファンのためのアイテムであるが、これで納得出来るファンはいないだろう。

続いて、くらむちゃうだーから『裏技スペクトラム』。
容量が1GBを下回り、その中身はパロディの宝庫。
日常シーンは当然、エロシーンまでも侵食。昨年のsofthouse-sealの路線を見事に受け継いだ。

アーベルの姉妹ブランド「Red Rebel」より発売された『JK聖女淫罰~穢れし肢体への裁き~』。
魔女裁判を題材にした拷問・陵辱・人体欠損のニッチ向け作品。それゆえに対特殊性癖専用地雷と化した。
オナニー1回で疲れ果てるヒロインに、それを見てるだけで疲れる主人公。
シナリオも破綻しており、回想モードのCGも差分を全て表示する水増し仕様。疲れるのはこちらである。

4番を務めるのは、GLaceの『恋魂』。
舞台は異性交友禁止を掲げる学院で、ヒロイン達もその思想を掲げているが、個別ルートに入ると皆一様にいつの間にか惚れている。
主人公も主人公で、肉体と知能は完璧ながら口調や性格は不良のよう。そして当人はそれを認めない。そしてなぜか周囲は彼を賞賛する。
他にも設定が噛み合わない箇所が多く、制作側が設定を把握していないという推測がなされた。
またヒロイン4人の内、2人はバグで攻略できない。
パッチを当てることで修正されるが、それでも一部のCGは未収録。その結果、一部のシーンで黒背景に文字だけという第一回KOTYeの伝説が蘇った。

3月に引き続き、年内2作目のエントリーをしたPeasSoftの『中二病な彼女の恋愛方程式(ラブイクエイション)』。
絵とシナリオには概ね問題はないのだが、本作のポイントはバグまみれであるところ。
コンフィグが反映されない、テキストの既読が反映されない、未見のCGが解放される、文章とボイスが噛み合わないなどは序の口。最大の問題点は高頻度でエラー落ちする点で、場合によってはセーブデータが消失する。
また、システムもごく普通のADVの形式であるにも関わらずPCのメモリ使用量が多い。
メーカー曰く環境依存のバグとのことだが、そんなものは方便だろう。
それでいてデバッグ担当には「Peassoft all staf」と記載されているのだから、メーカーへの信頼はガタ落ちである。
そして後日、公式からギガパッチが配布されたが、有志が作った修正パッチ(約30KB)が支持される皮肉な結果となった。

Ex-iTの生まれ変わりのInsyncが送り出した『妄想コンプリート!』。
度重なる延期の末、流通業者に怒られるという前人未到の偉業を成し遂げた。
そして生まれ変わった姿を見せつけるべくKOTYeの扉を叩いてきたのだ。

発売前の情報からは、ごく普通の萌えゲーと思われていた。
しかし、蓋を開けてみれば超展開。主人公が実は主人公ではなく、トゥルールートではシナリオがループ物だったと明かされる。
ループ物を匂わせる描写などなく、そもそも全体的に描写が薄い。イベント事は悉く省略され、いつの間にか行ったことにされている。
主人公が自らの正体を明かす際にも「皆に別れのあいさつをした。」だけで済ます具合だ。
共通ルートは「未来予知研究部」なる部活を立ち上げるところまでだが、この部活は分岐後のルート次第ではその日の内に解散する。
個別ルートに入ったところでキャラやシナリオに特に掘り下げがあるわけでもなく、よく分からない内にエンディングを迎える。
この散々なシナリオに加え、グラフィックにも粗が目立ち、異様に巨大なトラックを筆頭に遠近感がおかしなことになっている。
Ex-iTは生まれ変わってもEx-iTなのだと、住人は痛感したのだった。

バトルスーツを着て戦う麻雀ゲー『麻雀バトルヒロインズ』。
麻雀のクソゲーと言うと亜空カンを連想させるが、本作ではバグはない。
問題は意味不明な展開にあり、シナリオの設定としては格闘技なのにプレイヤーは麻雀をすることになる。
本編中で麻雀であることを明言する台詞もなく、麻雀である必要性を見出だせない。

その後、陵辱エンドで終わる盗撮ゲー『妹盗撮~自宅ストーカー~』、
主人公がドSな『女の子はドSな変態でできている』が連日続けてエントリー。
「ニッチジャンルは地雷」という認識を住人に植えつけた。

以上、総勢9作品による5月の乱。
昨年3月に記録した6作品を更新し、怒涛のクソゲーラッシュに住人は恐怖した。
今年はクソゲーの軍勢が襲ってくる。しかし、結果としてそれは杞憂だった。ここから二ヶ月間、選評は届かなかったのだ。

そして9月、住人が退屈し始めた頃、救世主が現れた。
インターハートが送り出した『淫らな魔法使いと救性主』だ。
ジャンル名は分かり易くストレートな「調教SLG」。しかし、そのゲーム性は皆無。
調教をするにあたり、プレイヤーはまず調教項目を解放するためにクエストをクリアする必要がある。
しかし、このクエストは通常のADVと何ら変わりないテキストを読むだけである。
攻撃・防御などのコマンドはなく、戦闘省略もできないため、単調な作業を繰り返すハメになる。

また「調教」の部分にも難がある。
調教をテーマにした作品の醍醐味は、対象が変化していく過程であるが、本作はその大部分が省かれている。
調教項目は約20個と豊富だが、回数によって内容が変化することはない。
アイテムを使用することによる差分は存在するものの、しかしそれだけである。
調教の仕方で4つの成長タイプに分かれるが、それもエンディング以外ではほぼ無意味なパラメータ。
そもそも全体的にほのぼのとした緊張感のない展開で、調教モノという印象をまるで感じない。
しかも、調教シーンは回想モードに登録されない。完全に本末転倒である。
調教というジャンルを理解していないそのスタイルは、まさにKOTYeにとっての救世主だった。

その後、256MBの薄っぺらい『人妻公然恥辱電車 ~携帯一つでお触り即ハメし放題他人の妻を粘着種付け寝取り~』が華を添え、
昨年の『銃騎士 Cutie☆Bullet』の補填的な作品『聖騎士 Melty☆Lovers』がエントリーするも、評価は凡作程度に留まった。

そして再びの沈黙が訪れる。
いつしか季節は冬となり、しかし年末の魔物は昨年に引き続き現れなかった。
今年は平和に終わる。住人がそう確信した矢先、クソゲーが息を吹き返した。

年が明けて一週間。『剣聖機 アルファライド』が参戦。
輝光翼戦記のシリーズ3作目にあたり、売上も好調とユーザーの期待が高かったことが伺える。
しかし同時にいくつかの不安要素も抱えており、その予感はKOTYeへのエントリーという形で現実のものとなった。

メーカーが売りとしているシステム「合体システム」は、攻略する上で非常に効率が悪い。
ステータスが上昇することに間違いはないが、その上昇幅は微妙なもの。
使い勝手が悪いため、合体させずに個別に運用した方が有用との結論に至った。
しかしながら、ゲームバランスそのものは程よい塩梅であったため、歴戦の住人を刺激することはなかった。

そして選評の締め切りは一週間に差し迫った頃、最後の追い込みが始まった。
MinkのSLG『Love and Peace』。細々と話題に上がっていた本作が、遂にエントリーを果たした。
舞台は女子学園。処女のみが感染し、症状として凶暴化する病気が蔓延していた。
そして主人公は自身の精液でこの病気を治せる、という設定である。
これだけなら大きな不満はないのだが、蓋を開けてみれば雑な作り込みの出来だった。
シナリオでは七つの大罪や日本神話からいくつかの単語が意味ありげに使われているが、それらは名前だけで特に意味はない。
ミスリードなのかよく分からない継ぎ接ぎのような展開は、シナリオライターが13人もいることによる弊害と判断されたが、それ以上に問題だったのがSLGパート。
基本システムは、マスを進みながら戦闘やイベントをクリアしていくもの。
ただしほぼノーヒントであるため、大部分が戦闘マスを占める中、プレイヤーは闇雲に目的のマスを探すことを強要されるのだ。
戦闘システムも、曰く「回復キャラをつぶせば何とかなる」との評価で、属性や攻撃レンジはあまり意味を成していない。
戦闘が終了すると、稀に捕獲イベントが発生する。これはエロシーンに繋がるものでもあり、エロゲーとしては肝となる部分である。
が、その確率は低く、場合によっては数百回の戦闘を余儀なくされる。
CGそのものは全271枚という贅沢な枚数であり、本作はまさしくシステムとシナリオがダメにした好例であろう。

締め切り最終日には二作がエントリー。
一つ目は、Empressの『Closed GAME』。
かつて糞ゲーとしてエントリーをしたEmpressが、今度は本来の意味のクソゲーとしてエントリーを果たした。
上級市民の遊びとして下級市民を駒に行われるデスゲームが舞台。
下級市民への勝利報酬は、上級市民になれる権利。しかし、この上級市民の世界がどういうものなのかは描写されない。
シリアスな展開がメインとはいえ、日常描写も薄く、世界観を理解しにくい。
またワンパターンな展開に整合性のないシナリオと、プレイヤーが置いてきぼりになるのは必至である。

二つ目は、TRYSET MADの『ANOTHER POSSIBILITY』。
物語冒頭、主人公は記憶喪失で始まるが、およそ36時間で全てを思い出す。
また主人公含む大半の登場人物が突拍子もない行動を取ることが多く、展開の理不尽さに頭を抱えることになる。
地の文も圧倒的に不足しており、プレイヤーには脳内補完のスキルが必須となる。
エロシーンに至っては選評者曰く「絶対に笑ってはいけないHシーン」。
主人公は大部分で「う゛ッ!」という台詞が入り、他は「う゛ッ!?」「う゛ッ!!?」「う゛ッ!!」 といったアレンジが大半を占める。
あとはヒロインの台詞とちょっとの地の文を入れれば、『ずっぷ』よろしく簡単Hシーンの出来上がりである。
企画段階ではシリアスな物語を想定していたのだろうが、どこで何を間違えたのか完成したものは壊滅的なものとなった。

以上をもって紹介を終わり、大賞と次点の発表に移る。
次点は、
『戦極姫6』
『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』
『ANOTHER POSSIBILITY』
『Love and Peace』
大賞は、
『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』
とする。

昨年のトレンドである「薄い」「不快」「つまらない」は、今年においても継続された印象を受ける。
しかし違うのは、大きな打力を持ったクソゲーがなかった点である。
誰にとってもクソゲーである。特定方向に抜きん出た個性がある。そういったものが今年はない。
しかし、実際にエントリー作品があるという事実は、その作品をクソゲーだと思う人がいたということである。
愛がある。悲しみもある。そして、悲しみゆえに愛する。それがKOTYeの在り方。
そのことを踏まえ、「期待と現実の落差」というKOTYeの原点に立ち返って選出した。

投資に対する裏切りを行った『猫撫ディストーション 恋愛事象のデッドエンド』。
面白くなる可能性を大きく外れた『ANOTHER POSSIBILITY』。
愛と平和を謳いながらも至れなかった『Love and Peace』。
これらの作品群は、エロゲーという癒やしと希望を否定する、クソゲーとして呼ぶに相応しい器を持っている。

『不条理』と『戦極姫6』も同様に、しかしレベルは群を抜いている。
一度は泥沼から羽ばたき、しかし再び墜落した『戦極姫6』。
シリーズの歴史を鑑みれば、落胆した者は多いだろうし、愛の深さゆえに憎しみも大きいだろう。
加え、ラノベも驚くチート主人公の存在がそこに拍車をかけている。
それを看過するなど不可能であり、まさにクソゲーとして確固たる地位を築いている。

しかし、嘆くばかりではいけない。負の感情を笑いに変えよう――それもまたKOTYeの一つの在り方。
そしてそれを体現しているのが『不条理世界の探偵令嬢 ~秘密のティータイムは花園で~』なのだ。
粗だらけの推理、レトリックに欠ける戦闘、強引すぎるエロ、終始無気力な表情の主人公……。
不条理で塗り固められた世界。けれど、多角的に見た場合、その瞬間ネタの宝庫となるのである。

ただ不快なだけでは究極へは至れない。
悲しみと、それを愛に換えることができてこそが、我々が求めるクソゲーの形ではないだろうか。
その点で、『戦極姫6』の要因の大部分は主人公の存在が占めている。
ダメ男しか愛せないという女性は少なからずいるだろう。しかし、作品の販売対象はあくまでも男性である。
男の頭で考えた場合、彼の言動に納得がいくかと訊かれれば、答えはノーだ。
古今東西の物語において、主人公が占めるウェイトは大きく、まずは主人公を愛せなければ物語を楽しむなど不可能だろう。
ゆえに軍配は『不条理』に上がる。我々クソゲーを嗜む紳士に、最高のティータイムを用意してくれたのだから。

今年は比較的穏やかな年だった。
5月に同時エントリーの最多記録を更新したものの、その悉くが決め手には欠けていた。
姫の帰還、アーベルの復活と話題こそあったものの、どうにも物足りなさを否めない。
softhouse-sealがいないこと。スワンアイがいないこと。昨年の『チーズ』が強すぎたこと。
いずれにせよ、多くの住人が不作感を抱いていた。
しかし、例年語っているように、我々はクソゲーを愛しているだけの集団である。
たとえ不作であろうとも、そこにクソゲーがあるのなら、その遍く総てを愛してみせよう。
ゆえに我々は渇望する。新たなクソゲーを求め、歴戦の屍を超え、今日も修羅の国を生きてゆくのだ。

最後に、復活を遂げたアーベルソフトウェアと、これから現れるだろう新たなるクソゲー達に、この言葉を送って2015年のKOTYeを締めよう。

「今の我々なら、手負いのクソゲーなんて瞬殺ですよ」
最終更新:2016年02月13日 19:55