Love and Peace 選評

ブランド ミンク
ジャンル ヤリまくり学園バトルSLG
メディア DVD-ROM
原画 ティータ.J、壽々朗、赤沢祐
シナリオ 銭波迷路庫、劇団剃り残し一本、犬狂い
卯月一葉、坂浦未依、坂元星日
Jan、須々木鮎尾、長瀬蒔、七歌
西田タケヲ、西矢沙広、遊真一希
発売日 2015/09/25
定価 9,504円(税込)

選評

【2015】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 13本目
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1448673047/
929 :枝豆の人 ◆D2NUIMg9q.:2016/01/25(月) 00:19:22 ID:XluahQPk
作品名 :Love and Peace
ブランド :Mink
ジャンル :ヤリまくり学園バトルSLG
価格   :PKG版8,800円,DL版7,500円(いずれも税別)
発売日 :PKG版2015年9月25日,DL版10月30日
容量   :4.17GB(DL版,Gyutto経由)

 はじめに、未クリアの状態で書いた選評であることをお断りしておきたい。というのも、
一ルート目の途中で進む術を失ってしまったからである。なぜそのようなことになってし
まったのか、それを解明する意味でも、本選評を上梓したいと思う。

 私が本作を選定した理由は二点ある。第一は、公式サイトを見る限り、非常に戦術性に
富んだ面白そうなゲームであったこと。第二は、それにもかかわらずエロゲー批評空間に
おいて2015年の最下層に位置していたことである。その謎の真相に迫るべく、本作をプレ
イした私を待ち受けていたのは、ヌくことすら叶わぬ無間地獄であった。

 本作の舞台である「私立渋宿女子学園」では、罹患した生徒が凶暴化する病気が蔓延し
ていた。その病気に罹患するのは処女だけである。主人公である邪香児 猟は、自身の精
液がこの病気に侵された女性を浄化する能力をもっており、その能力を以て学園の浄化を
天から命ぜられる。

 以上が公式サイトで明かされるストーリーである。だがプレイするうちに、何だかよく
分からない新設定が次々追加されていく。
 猟は実は高天原に坐す神の一柱であり、七つの大罪のうち六つまでを犯した咎で盟神探
湯の末投獄される。そこへ看守長の鏑木乃 乙女が現れ、六万年の懲役期間をチャラにす
る代わりに地上で起こってる問題を解決してこいと命ぜられる。地上=葦原中国に降りた
猟は、性交を通じて人の身に溜められた邪気を吸い取ることができる能力を活かし、風紀
委員長の小山内 唯花(乙女の地上での姿)を参謀に天命を遂行する。。
 この他にも、凶暴化の原因は厳密には邪気じゃなかったとか、その謎の気の大本の原因
はカトリックとプロテスタントの対立であったとか、もうすべてが滅茶苦茶である。果て
は猟の口から「櫛名田」という言葉が出ており、昨年に続くアマテラセックスを予感させ
ている(これは外れるかも)。ちなみにシナリオライターはメイン・サブ合わせて13人もい
るのだが、洋の東西がごっちゃになっていることを指摘できる人はいなかったのか。

 だがここから述べる探索・戦闘パートに比べれば、ストーリーのクソさは可愛いもので
ある。一言で言えば苦痛、二言で言えば終わりのない苦痛だ。
 まずはこちらのフロアマップを見て欲しい。ごらんの通り、マップ上にびっしりとマス
が置かれている。ほとんどが戦闘マスだが、まれにシナリオ進行イベントが発生する。実
はこの仕様が、現在進行を妨げている要因である。それはさておき、このようなマップの
上を探索しながらミッション=ボス撃破をこなすのが本作の核である。探索とは言っても
ヒントは一切与えられない。シナリオ進行イベントでヒントが出たかと思うと、実は間違
っていたりする。一例を挙げれば、「本校舎の三階にボスがいる」というヒントが出たの
で探しにいけば、実際にいたのは第二校舎の二階というありさまである。そもそも本校舎
の三階へ行く手段がないので、この時点でプレイヤーの頭上には特大の疑問符が浮かぶこ
とだろう。
 いざ戦闘に突入してみると、公式サイトの内容から期待されたような戦術性は大部分が
鳴りを潜めてしまう。各キャラには四つの属性(エレメンツ。風、土、水、火)と三つの攻
撃レンジ(遠距離、近距離、回復)があり、属性間の強弱、攻撃レンジと戦闘配置による火
力変化等が謳われていた。だが実際には「とりあえず回復キャラをつぶせば何とかなる」
の一点に集約されてしまった。少なくとも私はそれ以外の戦術はとっていない。最悪なの
は敵が三人とも回復キャラの場合で、互いに回復しあうために被弾と回復のいたちごっこ
となり、戦闘がいつまでたっても終わらない。他の場合では引き分けになるのにである。
こうなるとゲームそのものを強制終了しなければならず、再起動後に大幅に戻される羽目
になる。対策としてはこまめにセーブするしかない。

 敵キャラのレベルはこちらの成長とともに上昇していく。自キャラの特殊能力の都合で
新たに育てたい場合も、敵の強さはこちらの最強キャラのレベルに合わせたものとなるた
め、序盤のマップにわざと未攻略マスを残して後で育成に使う、ということも不可能であ
る。幸いと言うべきか、ミッション遂行における道中の敵と比べればボスは圧倒的に弱い
ため、シナリオだけは順調に進めることができる。関連して、回復キャラの育成は非常に
手間がかかる。攻撃手段を持たないためであるが、経験値の配分における配慮等がないた
め、回復キャラだけがいつまでも育たない。
 経験値といえば、本作における経験値計算は完全ランダムである。敵のレベルに応じて
増大するとかそんなことはない。どんなに苦労して敵を倒しても、経験値ゼロなどという
ことはザラにある。ボスであっても例外はない。
 戦闘が終わるとまれに「捕獲」イベントが発生し、セックスの後戦った敵を味方に組み
込むことができる。「終わると」というように書くと、長い戦闘があったように見えるか
もしれないが、大抵は10秒以内に終わる。特に序盤では、ワンパンマンよろしく一撃で敵
を葬っていくことができる。本作の価値はこの捕獲に伴うセックスシーンにある、いや、
そこにしかないと言っても過言ではないだろう。もっとも、捕獲イベントの発生は極めて
稀であるため、お目当てのキャラを探して数十回、時には百回以上の戦闘を繰り返した後
のプレイヤーには、ヌく気力は残っていないだろうが。
 フロアマップや戦闘画面等至る所で発生するフリーズやBGMの再生ミス(止まる、不自然
につながるなど)、ミッションをクリアするごとにリセットされるプレイヤーの位置など、
ストレス要因は他にもたくさんある。

+ ...

 本作に関して他に特筆すべき点は、ユーザーインターフェースの不親切さである。上で
も述べた探索・戦闘パートの最初のミッションは「購買部を解放(開放と誤字っている)す
ること」であるが、フロアマップ上のどこにも購買部の文字はない。イベントが発生する
マスは示されており、そこに到達すると、何事もなかったようにシナリオが進行し、戦闘
準備画面に唐突に購買部メニューが登場する。購買部に入ってみると、五種類のアイテム
が置かれているが、それぞれの説明が短くてわかりづらい。詳細な説明が出るかと期待し
てクリックすれば、ワンクリック詐欺よろしく即お買い上げとなる。そして購買部の出口
は画面上のどこにもない。右クリックで退出できることが分かるまで、プレイヤーはサル
のような顔のおばちゃんとにらめっこを続ける羽目になる。
 購買部で購入したアイテムの使い方もまた分かりにくい。戦闘準備画面で「資材」をク
リックするとアイテム使用画面に遷移するのだが、そこからどのようにアイテムを使うの
かという説明はない。結果から言えばアイテムをクリック後対象のキャラをクリックする
か、あるいはその逆をすることで使用できる。
 致命的なのは、フロアマップの全体的な位置関係を示すワールドマップがないことであ
る。そのせいで、自分が今どこにいるのか、イベントマスはどこなのか等の情報が把握で
きない。現在進行が止まっている原因はまさにそこで、「本校舎四階にボスがいる」との
ヒントを基に探索してみれば、実際にイベントが発生したのは第二校舎三階であり、しか
も空振りだった。本当のところボスがどこにいるのかは今なお不明であり、前述した「マ
スの中にたまーにシナリオ進行イベント発生マスが紛れている」仕様のせいで、しらみつ
ぶしに百以上のマスを探しているところである。

 CGの枚数は差分込で819枚、シーン数も94、登場キャラ数は46とかなり高水準である。
そこに描かれたイラストも非常に魅力的である。このような誰もが羨むであろう好素材を、
13人の手によるシナリオと苦痛しか生まない探索・戦闘パートが台無しにしてしまってい
る。このゲームに価値を見いだせるのは、最低三周はしなければいけない無限の苦痛の果
てに全てのCG・シーンを回収し、ギャラリーを見る時であろう。その時はいつ来るのだろ
うか。今月中には終わらせたいところだ。(執筆日:2016年1月25日)

選評2

【2015】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 14本目
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1453717671/
201 :枝豆の人 ◆D2NUIMg9q.:2016/02/01(月) 00:17:07 ID:XIhKBUIU
作品名 :Love and Peace
ブランド:Mink
ジャンル:ヤリまくり学園バトルSLG
価格 :PKG版8,800円,DL版7,500円(いずれも税別)
発売日 :PKG版2015年9月25日,DL版10月30日
容量 :4.17GB(DL版,Gyutto経由)

1.はじめに
 筆者が本作を選んだ理由は2つある。第1は、公式サイトに載っている情報からは、本作
は戦術性に富んだ面白そうなゲームだと感じられたことである。第2は、そのような自分
の直観とは裏腹に、エロゲー批評空間において2015年の年間ブービーであったことである。
そのギャップの理由を探るべく本作をダウンロードしプレイし始めたが、やはりと言うべ
きか、正しかったのは批評空間であった。

2.ゲームシステム
(1)全般
 本作のジャンルは「ヤリまくり学園バトルSLG」である。だが本作中にSLG要素はほとん
ど見受けられず、むしろADV+RPGと呼ぶ方が妥当であるように思う。これは昨年大賞
「チーズ」と同じ形式である。よって以降では、ADVとRPGという2つの視点から、本作の
評価を行うことにする。なお本作では、ADVでシナリオ進行→RPGでミッションクリア、を
繰り返してエンディングを目指すスタイルとなっている。

(2)ADVパート
 ADVの核となるのは、言うまでもなくシナリオである。本作のストーリーは、公式サイ
トに載っているものを要約すると「処女だけが感染し、対象を凶暴化させる奇病が、私立
渋宿女子学園に蔓延していた。生徒たちは縄張りを作って暴れ回っている。主人公・邪香
児猟は、自身の精液でこの病気に侵された女性たちを浄化できる能力を持っているので、
学園に平和を取り戻す天命を受け、それを盾に欲望のままヤりまくる」というものである。
このストーリー自体はクソであるとこき下ろすほどのものではない。問題は、ストーリー
に深みを持たせる役割の裏設定等があまりに多く、しかも風呂敷をたたみきれていないこ
とである。

 先述したストーリーから期待されるエンディングは「病気の原因が排除され、学園に平
和が戻ること」であろう。確かに平和は戻る。しかしそれは表面的なものであって、かな
り後味が悪い。もう少し詳しく見ていこう。
 本作の真のストーリーは以下のようなものである。「邪香児猟は高天原に坐す神々の人
柱である。彼は「暴食」「強欲」「色欲」「憤怒」「怠惰」「傲慢」の罪を犯したかどで
クガタチの末6万年の懲役刑に処せられる。本来であれば根の国へ堕天させられるところ
をその程度に減刑したのは看守長・鏑木乃乙女であった。牢に入って数日、警報が鳴り響
く中、猟は乙女に引き合わされ、懲役刑を帳消しにする条件を提示される。それは地上―
葦原中国で局地的に発生している病を鎮めることである。この病の原因は『邪気』であり、
猟は邪気を吸い取ることが出来る能力を持つ。乙女に押し切られた猟はその『試験』を受
けることになり、葦原中国へと降臨した。現身の形で地上に先行した乙女こと小山内唯花
が待つ、私立渋宿女子学園へ」
 このストーリー中にも突っ込みどころはある。ご存知の通り、高天原や葦原中国、根の
国は日本神話における概念である。しかし猟が犯した罪は、明らかにキリスト教における
概念である七つの大罪を意識している。他にも、猟が乙女に引き合わされる際看守から
「H21」と呼ばれていたり、警報音がパトカーのサイレンであったりと、世界観に一貫性
がない。また猟の犯した罪には「嫉妬」が抜けているが、それに特に意味はなく、完全な
ミスリードである。この時点でかなりの程度シナリオを読む気が失せてしまったのだが、
それでは本作のクソさを伝えられない。ぐっと我慢して読み進めよう。
 本作における重要な概念は『邪気』である。これは人間誰しもが持つものであり、少量
であれば程よく怠けたり怒ったりすることで精神と肉体のバランスを保つ作用がある。だ
があまりに多いと負の側面が強調され、人を暴力衝動へと駆り立て、力を高め、人間性を
失わせるという面もある。学園で蔓延した『凶暴化病』の正体はこれである、とゲーム中
盤で説明がされる。この設定自体は非常に納得のいくものである。だがその後に超展開が
待ち受けていた。

 この『邪気』はどこから来たのか、それはある日中庭に落ちた『隕石』である。『隕
石』を見た生徒は悉く暴力衝動に駆られ、『凶暴化病』と呼ばれる状態に陥った。しかし
中盤以降に登場するヒロインは大量の邪気を貯め込んでいるにもかかわらず人間性が失わ
れていない。そこで唯花は、これは邪気のような別の何かであり、そしてその作用は人の
意識を乗っ取るものであると仮説(と言う名の答え)を立てた。意識を乗っ取られていたた
め、中盤までのヒロインはその形を覚えていなかった。
 実は『隕石』は石造りの棺桶の形で、それは『蛇の箱』と呼ばれる、高天原の裁判で堕
天判決を受けた者を封印する箱であった。そしてそこに封印されていたのは、葦原中国を
平定した英雄でありながら何らかの理由で封印された高天原きっての大罪人、大国主であ
った。大国主をはじめとする高天原の上層部は、何らかの方法で入手した邪気の改編版、
『瘴気』を地上に振りまき、その兵器としてのデータを取るために今回の一件を計画した
のであった。それを知らない猟はセックス(「櫛名田」と呼ばれる儀式)によって瘴気を吸
い取りまくった結果獣のごとく暴走し、メインヒロインに撃破された後学園中の瘴気を吸
い取って『神化』(体の構造が変化し、根の国の亡者のごとく邪気によってしか生きられ
なくなる。その後に概念ごと消滅する)を起こす。猟が神化したことで全ては終わり、唯
花は現身の楔を抜いて葦原中国から消える。消える直前、地上に猟と似た姿の男性講師を
作り上げ、メインヒロインはそれを見て嬉し涙を流す。で、ハッピーエンド。
 以上は筆者の理解であるが、正直なところ複雑すぎて完全には理解できていない。そも
そも後述するRPGパートがあまりに苦行であったため、シナリオを読み進める気力が失わ
れており、さながら刺身のタンポポのごとくほとんどを読み飛ばしてしまったほどである。
 本作のシナリオに関する特徴は「ミスリードばかりで意味不明」である。「嫉妬」がな
いことが全く意味がないというのは先述したが、他にも、猟は神なのに『神化』とはどう
いうことかと期待してみれば、「神化とは、進化のようなものだ」という台詞を言わせた
いだけのものであったということがあった。また「櫛名田」「大国主」といったキーワー
ドから「お、スサノオか?」との考えが一瞬頭をよぎるが、全く関係がないのだ。これら
は言葉を借りただけの別物と思った方が良いだろう。

 またエンディングに関して言えば、『瘴気』は結局どこから来た何物なのか、またしき
りに大国主から語られる「高天原の総意」とは結局何なのか、そもそもなぜ渋宿女子学園
だったのかなど、語られないままぶん投げられた部分も多い。そして最後の大国主の台詞
からは、結局はこちらの完全敗北でしかないように感じられた。残尿感のようにすっきり
しないエンディングであった。
 シナリオに関して唯一評価できると思った点は、昨今クソエロゲーでは定番となりつつ
ある安易なパロディに頼らないことである。確認できたのは1ヶ所、それも延々引っ張る
のではなく、筆者の中ではちょっとしたクスッとできる要素だった。参考までに引用して
示す。
  • 莉緒奈「ジャキ……?」
  • 麻凛「兄より優れた弟がどうとかですか?」
  • 杏「それ多分違う。邪悪な気ってことでしょ?」

(3)RPGパート
1)探索
 一言で言えば「苦行」、二言で言えば「終わりの見えない苦行」である。ここに1つの
フロアが描かれた画像がある。
+ ...
本作にはこのような、ビッシリとマスが置かれたフロアが11あり、マスの総数は877に
ものぼる。移動のためのポータルやシナリオ進行イベントが発生するマスを除けば、残り
は全て戦闘マスであり、最大で800程度になる。最短コースで行けば半分ほどで済むだろ
うが、そうもいかない事情がある。それはCG・シーン回収に関する事情であるが、捕獲・
進化の項で述べよう。
 探索にあたっては、以下の画像にあるようなマーカー(左上)を目指して一歩ずつ進むこ
とになる。
+ ...
また、各ミッションクリア後のADVパートでは、次のミッションにおけるマーカーの位
置に関するヒントをもらえることもある。中盤までは出されたヒントに従ってマーカーを
目指せばよいのだが、9・10・11番目のミッションについては罠が仕掛けられている。す
なわち、出されたヒントが間違いを含んでいるのである。例えば9番目のミッションでは、
本校舎3階にボスがいるというヒントが出されるが、実際には第2校舎2階にいる、といっ
た感じである。また10番目のミッションでは、マーカーにたどりついた後さらに決まった
順序でフロア内を移動しなければボスに遭遇することができない。公式サイトではこれら
は意図的な仕様であるとされているが、ただでさえ1しか出ない人生ゲームのような苦行
を強いられていることを考えれば、プレイヤーの神経を逆撫でするものでしかない。
 このように苦行でしかない探索であるが、ゲームの仕様上、最低でも3周はしないとCG
やシーンがコンプできない。かのRPGの名作・ポケ●ンと同じように。3人の中から1人の
メインヒロインを選ぶと、残り2人はそのセーブデータでは登場しないのだ。1周で500戦
くらいとすれば、3周で1500戦。気が遠くなるような数字である。
 探索に関する苦痛を少しでも減らしたければ、面倒くさがらずにメモを取ることが肝心
である。ポータルの繋がり方、マーカーの位置、第10ミッションにおける移動順序などを
記録に残すことで、2周目以降の攻略が多少は楽になる…かもしれない。

2)戦闘
 筆者が本作に期待を抱いていた点、それは戦術性の高い戦闘パートであった。各ヒロイ
ンには4つの属性(『エレメンツ』:火→風→土→水→火…という関係にある)と3種類の射
程(『攻撃レンジ』:近距離、遠距離、回復)が設定され、さらにヒロインごとに特徴的な
能力(『特殊技能』と『よくないところ』)が用意されている。戦闘に際してヒロイン3人
を前衛・後衛にどのように配置するかも重要だという。ミッションごとに道中で出てくる
敵にも特徴があるので、万全の対策をした布陣で挑む…それが、理想として筆者の中に抱
かれていた戦闘のイメージであった。
 だが、実際には「とにかく回復キャラを倒す」というたった1つの戦術に集約されてし
まうのである。もちろん、特殊技能として特定レンジの攻撃を無効化する等の敵には、そ
れなりの対策をとらなければいけないが、そのようなケースは稀である。もちろんこの戦
術にも欠点はあり、敵に回復キャラが複数いて、かつ彼我のレベル差がそれほどないとき
には、相互に回復しあうため、戦闘が永遠に終わらない場合が発生する。そうなるとゲー
ムを強制終了し、再度セーブデータをロードする必要があるため、こまめにセーブしてい
ないと大幅に戻される危険もある。だがそれができない事情もある。戦闘において引き分
けもしくは負けがない状態が連続すると、その回数に応じて経験値が増加するチェーン
ボーナスというものがあるのだが、セーブするためにRPGパートの準備画面に戻るとそれ
がリセットされてしまうのだ。育成の早さを重視するか、ゲーム進行の確実さを重視する
か。本来であればその2つは天秤にかけられるものではないはずである。
 特殊技能を考慮することの必要性は先に述べたが、それは敵のみならず味方についても
である。より優れた特殊技能を持つヒロインを使えば攻略は容易になる、すなわち早く苦
行から脱出できるのである。その点、最初に選ぶメインヒロインは3人とも特殊技能を持
っていないので、終盤では苦戦することになり、結局後で味方になったヒロインを使わざ
るを得なくなる。公式サイトに謳われた、「お気に入りのあの子を最後の最後まで贔屓に
する」ことは、少なくともメインヒロイン3人についてはかなり困難だ。

3)捕獲・進化
 戦闘が終わると、極めて稀に捕獲イベントが発生する。これは敵を味方にすることがで
きるものであり、捕獲イベントごとにセックスシーンが挟まれる。だが、あまりにも稀で
あるため、最短ルートで攻略しようとすると、捕獲できずにエンディングを迎えるヒロイ
ンが出てくる可能性もある。確実を期すなら、多少の苦痛に耐えつつ回り道をするのがよ
い。
 戦闘を重ねてレベルが20または40になったヒロインは、購買部で手に入る『進化校章』
を用いて進化させることができる。と言うよりさせなければそれ以上成長しない。ここで
もやはりセックスシーンが挿入される。公式サイトには「進化するためには特殊なアイテ
ムが必要になる場合もあります」とあるが、必要にならない場合が存在しないため、いっ
たい何だったのかと疑問が残る。
 捕獲と進化は、CG・シーン回収において最も重要な役割を持つ。序盤に登場するヒロイ
ンは捕獲時点でレベルが1であるため、2回進化させることで最低3種類のCG・シーンを集
めることができる。だが中盤以降のヒロインは捕獲時点でのレベルが20や40であるため、
進化の回数も減り、CG・シーンの数も減らされてしまう。中盤以降のヒロインがお気に入
りというプレイヤーには受難である。

3.バグ等
 本作では、ADVパート・RPGパートを問わず細かいフリーズが頻発する。またBGMの再生
箇所がずれることもしょっちゅうである。致命的なバグではないので少しイラッとする程
度で済むが。
 逆に致命的なバグは、それが事実上ゲームの進行を不可能にしてしまうものである。以
下の画像をご覧いただきたい。
+ ...
前面にRPGパートの準備画面が、背面にエンドロールが流れているのがお分かりだろう
か。ラスボスである猟を倒した後、最後のADVパートに入ったところでセーブし、その
セーブデータをロードし直すとこのようなバグが発生する。この状態では左半分のメニ
ューは反応せず、ヒロインの画像の隙間をクリックすることでしかゲームが進められない。
改めてセーブすることもできないので、ゲームそのものを一度終了しなければいけなくな
る。対策としては、猟を倒した後は何があってもセーブしないことが挙げられる。だが、
このバグを利用すれば、ハッピーエンドの皮をかぶった鬱エンドを見ることなく、お気に
入りのヒロインを眺めながらエンディングを迎えることができる。

4.おわりに
 これまでに述べてきたのは、主に本作の負の側面についてである。ごく一部の例外を除
き、あらゆるゲームには正・負の両側面があると筆者は考えている。本作も例外ではなく、
グラフィック面が優れているという面を持っている。その証拠に、CG枚数は差分抜きで27
1枚(約7.74jks)、シーン数は94もあるため、大いに目を楽しませてくれる。3名の原画担
当には敬意を表したい。だが、システムとシナリオという、ゲームの中核部分が苦痛・意
味不明であっては、全体としてクソゲーの誹りは免れないだろう。
 改めて本作のタイトルを確認しておこう。Love and Peace、つまり愛と平和である。し
かし主人公とヒロインが結ばれるというようなこともなく、むしろ主人公はヒロインに討
伐されて概念ごと消滅してしまうのである。またそれによって訪れた平和も、あくまで高
天原の掌の中でのものである。名前負けと言わざるを得ないだろう。
 本作を完結に表すならば「羊頭を掲げて腐肉を売る」といったところだろうか。愛と平
和のSLGという羊頭を掲げながら、主人公の概念的消滅と不安定な平和に終わるADV+RPGと
いう、狗肉ですらない腐った肉を売りつける。これ以上腹を壊す人が増えないことを祈り
つつ筆を擱こう。(執筆日:2016年1月31日)
最終更新:2016年02月02日 20:24