恋魂 選評

ブランド GLace
ジャンル 支配体制からの大逆転ADV
メディア DVD-ROM
原画 Massan、みずき佑真
シナリオ きーたん、髪ノ毛座
発売日 2015/05/29
定価 9,504円(税込)


選評

【2015】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 6本目
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1433410729/
496 :恋魂 選評 ◆Ra9j1sVq3.:2015/06/11(木) 01:52:08 ID:i57DfNS20
恋魂
ジャンル 支配体制からの大逆転ADV
ブランド GLace
発売日 2015年5月29日
価格  8800円+税

2013年度の年明けラッシュにTEを送り込み華々しいデビューを果たしたGLaceの新作である。
前回はダルいシナリオ、チグハグな文章といった技で苦しめたが、本作はそれらを更に凶悪化させてリベンジを果さんとする出来栄えであった。

○用語
注:非常に多くの用語を解説する事になるがご了承願いたい。これを知らなければ話も問題点も分からない。

  • 神堂学院
 本作の舞台。落ちこぼれを『矯正』する為に有る教育機関。大名家である天上院家が運営を行う。
 徹底した抑圧体制により、心身共に完璧な『学聖』に生まれ変わらせる事を旨とする。
 学院敷地外に出る事の禁止、異性交友禁止、娯楽禁止、絶対服従と正に奴隷状態。
 全国テストで赤点だったり素行不良の学生が強制的に入学させられる『矯正入学』と、特待生枠狙いの『推薦入学』と2パターンの経路が有る。

  • ラブペンタゴン(以下LP)
 矯正対象の一般学生を統率する使命を課せられたエリート集団。
 様々な特権が有るばかりでなく、後述の『校則具』を利用し一般学生を折檻する事も出来る。
 何故ラブペンタゴン等というふざけた名称なのかは作中ではまるで不明。
 公式サイトの4コマ漫画には学生総長の愛華のネーミングセンスが駄目な為と言ったネタが有るが、それは作中で説明すべき事のはずである。

  • 学年長
 各学年を束ねるエリート学生。もれなくLPに所属している。
 学年長のみ『校則具』を一部解除できる端末を保有している。

  • 校則具
 一般学生が常に装着する義務を負う装置。
+ ...
 首、手首、足首の都合5個装着がスタートとなる。年度末に成績優秀と認められる事で一箇所ずつ外される。
 位置情報提供等も出来るが、最大の目的は拘束と折檻、異性交友の防止である。
 特待生及びLPの保有する端末により手足の拘束や、電気ショックによる折檻を行う事で学院にそぐわない行動を抑制する。
 また異性と一定時間以上の身体接触をしている場合も警告が発せられる。
 もっとも一瞬キスする分にはスルーだったりとザル警備な所も有る。
 首輪のセンスは元より、手首足首の方もただの大きいナットにしか見えないと、なんとも無骨である。
+ ...

  • 矯正ノ書
 おそらく本作で最も重要な要素。
 天上院家と主人公の実家である祁答院家が共同で作成した書物。
 その内容は読む事で読者を洗脳、人格を再形成する『再製』を行うという物。
 曰く魔書の領域にまで効能が達しているらしい。
 完成目前に悪用を恐れた祁答院家により分割、細工され各地に廃棄されたが、天上院家が回収し今に至る。
 現在は『心』『技』『体』の3つに分割された状態となっているが、その状態でもオカルトパワーを持つ。
 魔書だから焼却処分も出来無かったとの事だが、どういうロジックなのかは不明。

  • 矯正ノ書『心』
 矯正ノ書の一編。心理面についての記述が有る部位である。
 コレを保有していると他人に必ず命令をきかせられるという絶対服従のギアスばりの超能力を得る。
 他にも幻覚を見せたり、読心術が可能だったりと実に凶悪。

  • 矯正ノ書『技』
 同じく矯正ノ書の一編。身体能力についての箇所である。
 保有する事で身体能力が劇的に向上し、超スピードでの移動や気配を完全に殺しての接近等が可能となる。
 描写的にはメイド・イン・ヘブン発動状態のプッチ神父のようである。
 しかし素の体力が向上する訳ではないので、動きまくればその分疲れるといった弱点もある。

  • 矯正ノ書『体』
 筋力、体力に関する箇所の一編。
 保有する事で筋力が向上し、ボコボコなろうが屁とも思わない無限のタフネスが得られる。
 コレの発動時に殴られた腕が二度と動かなくなる程の破壊力である。

  • 矯正ノ書『愛』
 最後に残された矯正ノ書の未完部分。
 見つからないと思われていたが、実は主人公の頭の中に刷り込まれる形で存在していた。
 全ての矯正ノ書の上位存在であり、他の矯正ノ書の効果を完全に無効化する。

  • 矯科書
 学院の授業で使用される本。
 書いてある事は一見普通の教科書であるが、実は矯正ノ書の効果を刷り込める様巧妙に文字を並べてある。
 曰くコレを使って授業を繰り返せば洗脳が可能との事。
 しかし耐性が有る主人公はおろか、一般クラスメイトすら特段影響を受けている様子も無く、果てには馬鹿には効かない疑惑すら出て来る。

  • 矯正ノ書(コピー)
 愛華ルートでのみ出て来る矯正ノ書のコピー品。
 主人公らは劣化コピー品と見なしているが、保有すればオリジナルと遜色無い効果を得られる。
 愛華ルート終盤ではコレを持つ強化人間軍団と対峙する。

  • 死設
 しせつ と読む。
 学院の矯正についてこれない落ちこぼれ中の落ちこぼれや、矯正不能な素行不良学生を送り込む施設らしい。
 一度入れば死ぬまで出られないという噂が名称の元だが、作中には実物は登場しない。

○登場人物
 ・祁答院 恋(けどういん れん)
  本作の主人公。作中では一貫してレン表記だが、漢字だと恋になるらしい。
  走れば100mを10.23秒、跳べば7.63mの身体能力を持ち、古武術もマスターしている。
+ ...
  更にはイケメンで頭脳明晰らしいと、厨二ラノベテンプレの結晶体の様な設定である。
  祖父から天上院愛華を『獲れ』との役割を受けて学院に入学する。
  極めて性格が悪く不快な人物。
  口を開けば「面倒」「だりぃ」「気に食わない」「嫌だね」と徹底的に口が悪い。
  喋り方もDQNや不良そのものであり、学校をガッコ、先生をセンセーと一々表記する。その癖自分は不良では無いと公言する。
  自分が優秀な事を過信し、とにかく気に食わない事に突っ掛かり返り討ちに合う鳥頭。
+ ...
  その不快さ、馬鹿さはそのままチーズでも買いに行きそうな程である。
  公式サイトの説明では「女に弱い」「女の涙、嘘にとにかく弱い」と有るが、全くそんな事は無い。
  初対面の愛華にすらナンパをかける程の軽い男で、追うのは女だけと抜かしたり
+ ...
  告白もこんな調子である。
+ ...
  女の嘘や涙もかなでの物を尽く読み切ったり何処が弱いのか全く分からない。

 ・天上院 愛華
  神堂学院の学生総長を務める才女。LPの頂点にも立つ。
  一切の自由を禁じ、徹底的に落ちこぼれを鍛え直す学校方針を進める。
  恋愛などは堕落した人間の行う事でクソだというのが信条らしい。
  武術もマスターしていると文武両道である。

 ・聖 那帆(ひじり なほ)
  2年生の学年長を務めるLPの一員。
  確かな能力を持つが、読書以外の何もかもが面倒くさいという極めて怠惰な性格。
  読書の障害となる物を排除してくれると約束してくれた愛華に忠誠を誓っている。
  矯正ノ書『技』を保有しており、知らぬ間に接近していたりする。
  実は天上院家が愛華を監視する為に送り込んだスパイであるが、個人的には愛華の味方をしている二重スパイ。
  彼女が解除できる校則具は足首。

 ・影守 かなで(かげもり かなで)
  1年生の学年長を務めるLPの一員。
  権力や立場と言った物に執着を示し、LPに居るのもその為である。
  奪われる立場よりは奪う立場でいたいという丑嶋社長のような思想を持つ。
  必要以上に矯正ノ書や校則具を利用し、優越感に浸っている。
  保有している矯正ノ書は『心』であり、この力で下僕を作って侍らせている。
  解除できる校則具は手首。

 ・芹沢 希乃(せりざわ のの)
  主人公と同じクラスの一般学生。
  完璧なアホの子で勉強運動共に最低クラス。
  異常なポジティブ思考のお陰で、あまり学院の生活に不満は無い様子。

 ・出鱈目 頑強(でたらめ がんきょう)
  3年生の学年長を務めるLPの一員。
  身長2mオーバーのマッチョマンで殺人的な戦闘能力を持つ。通称岩男。
  学院というよりは愛華個人に忠誠を誓い、完全に心酔している。ハマーン様に対するマシュマーのような男。
  融通が効かず、愛華を侮辱するとブチ切れるが、根はなかなかいい男である。
  所有する矯正ノ書は『体』であるが、マッチョなのも強いのも本人の能力である。
  他キャラと比べて塗りが致命的に適当なのが玉に瑕。
+ ...
  解除できる校則具は首。

 ・庵堂 遠子(あんどう とおこ)
  主人公の担任教師。
  実に適当な性格だが、実際は政府機関に雇われているスパイである。
  天上院家が矯正ノ書を悪用する事を阻止するのが目的。
  詳細は一切不明だが、ショットガンを乱射している時は前線時代を思い出して楽しい等と口走る。
+ ...

 ・祁答院 ガク(けどういん がく)
  主人公の祖父。矯正ノ書の作者である。

 ・赤瀬川(あかせがわ)
  愛華ルートでのみ登場する特待生。
+ ...
中央の金髪
  愛華の許嫁で天上院家の親戚、愛華を蹴落として王にならんとする典型的な小物悪役だが、愛華ルート以外には一切出てこない。
  その愛華ルートですら途中まではモブ扱いで、途中からいきなり固有名詞を得る。

○シナリオ
 本作の分岐は多少特殊である。選択肢により後で分岐するのでは無く、選択肢1回で直後から個別ルートに入る。
 すなわち始めの方に選択肢が有るキャラと後の方に有るキャラでは倍ほど共通部の長さが違う。
 所要時間としては10時間強といった所。
 最近のエントリー作としては2桁に乗ってるだけ長い方だが、フルプライスとしては致命的な短さである事に変わりはない。
 ・共通ルート
  入学からかなでの端末を奪うまでが全ルート共通で通る箇所となる。
  入学早々持ち前のDQNぶりで頑強を始めとするLPに目を付けられるレン。以後事有る毎に折檻を食らいいきり立つ。
  校則具さえなければLP等ぶっ飛ばせると息巻いていた所、学年長の端末を利用することで解除が可能と知ると以後はその奪取に血道を上げる。
  同時に遠子先生より矯正ノ書の存在を知らせられ、その対策を講じるのであった。
  最初に狙ったのはかなでで、買い物に付き合うフリをして隙を見て奪取しようと試みるが、矯正ノ書の効果によりアッサリ行動を封じられる。
  その後公園でデートごっことして恋人を演じるよう命令され、レンはノリノリで命令に従いキスを迫るが、予想外の行動に慌てたかなでは命令を解除してしまう。
  その隙にレンは端末を奪取、ヘビメタ全開のイヤホンで命令を聞こえなくし矯正ノ書『心』も奪う。
  端末で早速手首の拘束具を外したレンはそれをかなでに取り付け、復讐として電気ショックを加えるか迷う。
+ ...

 ・かなでルート
  電気ショックを加えない事にすると直ちに分岐する。
  許してやったレンだが、帰りがけにアッサリと矯正ノ書を奪い返されるものの特に気にかける様子も無い。
  翌日よりLPをクビになったかなでが端末を取り返すため様々なリベンジを試みるが、あえなく全敗。
  遂にはレンに敵わないと悟ったかなでは逆にレンをLPに勧誘するが断られる。
  以後はリベンジと関係なくレンに付き従う事を宣言したかなでと共に次なる端末奪取を計画していた矢先に、愛華が突然の総長引退を宣言し決闘で後継者を決める事となる。
  レンはお山の大将に興味無しと断った為、最終的に次期総長に立候補したのはかなでのみとなり、直接対決となる。
  決闘前日にいつの間にか惚れていたかなでとセックスを済ますと、レンは応援にも行かず何処かへ行ってしまう。
  かなではレンから教わった古武術の型で愛華の攻撃を凌ぐが、防戦一方となる。
+ ...
  その頃レンは学院内に侵入した敵兵を蹴散らしていた。
  かなでの防戦もこれまでかと思われたその時、レンが颯爽と登場。アッサリ思い出してた矯正ノ書『愛』により愛華の能力を無効化する。
  その隙にかなでが愛華を押し出し、リングアウトで勝利するのであった。
  晴れて学生総長となったかなではレンと一緒に学院を良くして行こうと宣言する所でバッサリ終わる。

 ・半共通ルート1
  かなでに電気ショックを食らわせると分岐。書を取り返される所までは同じ。
  次は足首を解除すべく那帆に狙いをつける。学外オリエンテーリングで先にゴールした方が勝利との運びになる。
  オリエンテーリングではレンが数々の近道等を使用するも、矯正ノ書『技』の効果でアッサリ追いつかれてしまう。
  しかし終盤に仕掛けていた網に那帆を引っ掛けると、その隙に端末を奪い勝利宣言をするのであった。
  外した足首の校則具を那帆に取り付け、電気ショックを食らわすか迷うが・・・。

 ・那帆ルート
  同じく電気ショックを食らわせないと直ちに分岐。
  「初めて私に追いついてきた人だから」との理由で翌日よりデレッデレになる那帆。レンと一緒に居る為とLPを辞め校則具を付けて一般学生に戻る。
  初めは「俺には愛華を獲る義務がある」と突っぱねていたレンであったが、少し経つと「やっぱ愛華とかそんなに好きでも無かった。想いに応える」と考えを変える。
  翌日人物紹介の画像の通りあっけらかんと告白し那帆と恋人になる。
  付き合い始めは一緒に過ごすだけで満足していたが次第に先に進みたくなり、それを阻害する校則具を無力化する計画を立てだす。
  那帆が難しいと言いながら1日2日で作りあげたジャミング装置とダミー信号発信機により一時的にスキンシップが可能となるのであった。
  最後には学院のサーバーをハッキングし、パッチで徐々に改竄を繰り返した結果、校則具を外すことさえ可能となる。
+ ...
  外れたのを良い事にすぐさま保健室でセックスを済ますレンと那帆だったが、その後レンが愛華に呼び出しを食らう。
  那帆に恋愛という堕落した人間がやる行為を教えた事にカンカンとなっていた愛華だったが、レンは恋しててもキチンと出来ると啖呵を切る。
  心配になり駆けつけた那帆の手を引いてレンが駆け出すと同時に、俺達の学院生活はこれからだとばかりに打ち切りエンドを迎える。

 ・半共通ルート2
  那帆に電気ショックを食らわすと、次の相手は頑強だと覚悟を決めるレン。
  すぐさま頑強から果たし状が届き決闘をするが事故により引き分けとなる。
  決闘で頑強のパンチを食らったレンの右腕は再起不能と思われていたが、全治3日の打撲で済む不思議現象が発生。
  見舞いに来た頑強はレンが優秀である事を認めLPに勧誘するが・・・

 ・希乃ルート
  頑強の提案に一般学生の待遇を改善する事を条件として提示するレン。
  その場に現れた愛華が2週間後の全国テストで学院がトップ10に入れば受け入れると約束する。
  学院は一位常連であったが、それは愛華を始めとするLPが平均を引き上げている為であったが今回は参加しない事を条件とする。
  レンは学内放送でこの事を一般学生達に伝え、トップ10目指して努力する。
  テストが終わった後屋上で愛華にトップ10には入れない結果だったと伝えられると「そんな事は分かっていた」と言い切るレン。
  自分はどうなっても構わないから仲間は許してくれと懇願するレンに、愛華は「学生の意識は変えられたからトップ10じゃ無くてもいい」と謎の譲歩をする。
  その後教室に戻ったレンに希乃が告白。その場でセックスをし、行為が終わると突如エンディングを迎える。

 ・愛華ルート
  頑なに頑強の提案を断わるレン。その後すぐさま頑強との再戦を取り付ける。
  しかし愛華が天上院家に拉致された事でお流れとなる。愛華は天上院家の運営方針に反対していた為らしい。
  愛華の代わりに天上院家に忠実な赤瀬川が学生総長となり、矯正ノ書のコピーを持たせた強化人間を使い学院を支配する。
  赤瀬川に捕らえられたレンは地下牢で愛華と再会。頑強らの助けにより愛華とレンは体育倉庫まで逃げる。
  そこでの会話でレンが愛華を昔「愛ちゃん」と呼んで慕っていた幼馴染だと急に思い出すと、愛華は急速にデレ始め、その場で餞別のキスをしだす。
  赤瀬川らに見つかりそになった為、レンは囮として先行するが愛華は呆気無く捕まり、矯正ノ書の効果により赤瀬川の手下となってしまう。
  殺意の波動に目覚めた愛華に襲撃されるレン達。
+ ...
  もはやこれまでと思われた時にレンは矯正ノ書『愛』を思い出し覚醒。その後はご高説を垂れながら反撃に出る。
+ ...
  見事愛華を正気に戻す事に成功したレン達だったが、天上院家との戦いはこれからが本番だと意気込む・・・が実は遠子先生の根回しにより全て解決済みであった。
  その後赤瀬川は逮捕、レンは愛華と婚約と怒涛の勢いで展開が進む。
+ ...
  最後はセックス疲れで寝坊し愛華と裸で寝ている所を発見されて大騒ぎになる所でエンディングを迎える。

○問題点
 非常に問題点が多い為、順に追っていく。

 ・厨二バトルが認められる理由が意味不明
  先の通りシナリオ中の多くは学年長の端末を奪うべく展開される厨二バトルなのだがそもそもコレが平然と行われているのが理解出来ない。
  まず一般学生に装着されている校則具は「学院の方針に従わせる」のが目的で取り付けられている物である。
  つまり素行不良学生を折檻する事も目的の一つのはずであり、レンの様に強奪や窃盗を企てる事を阻止してナンボのはず。
  にも関わらずその計画を阻止するどころか、「奪った者は奪われた者より優秀な証拠」という愛華の謎裁定により正当化されてしまう。
  この方法による解除を認めたら誰も勉学等せず、窃盗と暴力が支配する世紀末が到来する事は火を見るよりも明らかである。
  無論その場合は学院の教育方針を貫く事など到底無理だろうと思われるのだが・・・。
  この校則具システムは厨二バトルを展開する上では矛盾を孕むと思わなかったのだろうか。

 ・制作側すら把握しきれていない設定
  最初に述べた通り本作は異常なまでに独自の用語が多く、これらを基盤として世界観を作っている。
  しかしこれらの設定を制作側すら把握しきれていないと思われる場面が散見される。
  例えば校則具に関して言えば、かなでは「手首」を解除する端末を保有している設定のはずだが、かなでルートでは「足首を外した」と記述されていたりする。
  また授業で使うと洗脳されるとやたら設定は怖い矯科書も、それを使っている一般学生が別に優秀になってもいないし人が変わっている様な描写は無い。
  他に細かい事まで挙げると、序盤は異性と一緒に歩くだけで執拗に警告される割には那帆ルートで堂々と告白したり食べさせっこしてもお咎め無し等様々な設定がとにかくブレる。
  加えて単純な話として、臭いネーミングセンスの独自用語の濫用は話の理解が著しく阻害される。

 ・コロコロ変わるキャラクター性
  複数ライターが原因なのかは不明だが、とにかくキャラクターの考えや行動がコロコロ変わる。
  特に顕著なのは恋愛沙汰に関してである。前述のとおりヒロインの殆どは「恋愛とかクソ」という思想を持っている。
  勿論本作はそんなキャラクターをヒロインに据えているエロゲーなので、何処かでこの考えを改めなければ話は進まないが、この心変わりが余りにも性急かつ知らぬ間に進んでいる。
  最もたる例は愛華であり、那帆ルートでは恋愛を教えやがって殺すと言わんばかりな嫌いっぷりであるにも関わらず、自分に関しては幼馴染だと思い出して貰っただけで
  一瞬でデレデレしだしてキスまでする始末。
  那帆もクーデレと言えば聞こえは良い物の、それまでのめり込んでいた読書や愛華との約束も全て投げ出してデレる理由も過程も一切不明なままベタベタな態度になってしまう。
  かなでや希乃も終盤に差し掛かると思い出したかのように好きだと言い出したりと何もかもが適当な描写である。

  また色恋沙汰以外でも「矯正ノ書は使いたくない」と他ルートで言う割にはかなでとの決闘では愛華が容赦無く矯正ノ書を使用したりする。
  矯正ノ書も遠子先生から話を聞いたレンは「絶対回収しなくては」と思う癖に、イザとなると簡単に奪い返されたりそもそも要らねえ等と言い出す。
  シンプルな故か最もブレないのは頑強であり、プレイしているといつの間にか頑強への好感度はうなぎ登りとなる。

 ・極めて不快な主人公
  登場人物紹介でも述べた通りだが、とにかく主人公の祁答院レンが不快である。
  お上に反抗する事やアウトローぶる事がカッコイイと勘違いしているDQNの言動そのもので、とにかく頭が悪い。
  古武術をマスターしている為にやたらと好戦的でトゲトゲしい行動に出る。
  なまじ無駄に完璧性能の為に周囲が優秀優秀と囃し立てるのも不快さに一役買っている。
  当然の事ながらこんな人物に好感等感じるはずもなく、副作用としてこいつに惚れるヒロインの株を下げてしまっている。

 ・意味不明な主題歌
  ゲーム本編とは違うが主題歌にも触れる。
  本作の主題歌は「Love Destiny」という物だが、これの歌詞が意味不明として注目されていた。
  馬力(ちから)、神速(わざ)、言霊(こえ)といった無理矢理過ぎる読み方や、無駄に抽象的で小難しい言葉を乱用している為、何を言ってるのかまるで分からない。
  一応本作をプレイする事で無理な読み方は矯正ノ書の効果に基づく物だと言う事は判明するが、正直だからどうしたというレベルである。
  また後述するパッチを当てないとこの張り切って作ったであろう主題歌に乗せたオープニングムービーが収録されていないのもシュールである。

 ・グラフィック
  まず最近のチェックポイントである枚数だが、パッチを当てないと21枚+SD等11枚と1jksにも満たない。
  パッチを当てれば70枚+15枚とフルプライスとしては最低限の領域には達する。
  クォリティに目を向ければ単体では致命的な程崩れている物は無いが、全体的に塗りのクォリティが不安定である。
  頑強を始めとする男キャラは軒並み適当だし、下着と言うにはやたらと光沢が有ったりする。
+ ...
  またTEと同じく場面と絵が合っていない事が多く、体位を変えただけで下着が変わる。
  特に本作は校則具の有無がコロコロ変わり、場面的に装着しているべきなのに着いていなかったり、体位を変えると出現したり消滅する事もよく見られる。
  校則具に関して言えば、大きいナットの様な単純さなのにやたらと大きさや形状がバラついている。中には明らかに中心円がズレている物も有る。

 ・未完成品
  しかし何と言っても最大の問題点はコレである。
  本作は明らかな未完成品である。まず初期バージョンでは愛華ルート及び那帆ルートには入れない。
  コレは自称バグの為との事だが、検証の結果を見れば未完成の為意図的に塞いだことは明らかである。
  まず普通にプレイして分かる範囲としてはシナリオがあまりに短く、打ち切りエンド風な事だ。
  まだ一応形になっている愛華ルートはさておき、那帆ルートはテンプレの如きこれからだエンドを迎え、希乃ルートに至ってはセックスしたかとおもいきや
  なんの締めも無くいきなりエンディングになる始末。

  極めつけは回想モードで見られる小咄だろう。
  本作は本編中にエロシーンが一回しか無いにも関わらず、ルートをクリアするとそのキャラクターの回想枠が4つとも開放される。
  そして見ていないはずなのに開く回想は本編には全く収録されていない。
  内容もエロシーンの回想というレベルではなく、まともに読めば30分はかかるような文量を誇る。
  その為エロシーンを見ようと思っても前後が余りにも長いので不便さが尋常では無い。
  アフターシナリオなのでは?とも思うかも知れない。確かに中にはそういった趣向の物もあるが、明らかに本編中の時間軸に存在するシーンもある。
  要は本来本編中で使うはずだったエロシーン前後であったが、それに繋げる文を書けなかった為に独立してぶち込んだのであろう。

  さてここからはパッチ後のセーブデータをパッチ前に戻して使用する事で判明する実態についてである。
  CGコンプしたセーブデータを初期バージョンで使用すると、CGモードのサムネイルは埋まっているが、相当数のCGが選んでも表示出来ない未収録状態となっている事が確認できる。
  具体的にはメインのはずの愛華のCGはおよそ半数が未収録であり、SDやその他CGは殆ど壊滅状態である。
  未収録のSD画像を選ぶとダミー画像が表示されるのが何とも不気味だ。
+ ...
  また未収録CGを含むエロシーンを再生しようとすると、かのアイ惨のような真っ暗背景にエロシーンという伝説が蘇る。
+ ...
  バージョンに差異で他に挙げられる物は「既読判定が飛び飛びになる」「旧バージョンのセーブデータがセーブ画面に残り続け、選ぶとスクリプトエラーで落ちる」といった不便な点がある。
  余談となるが本作を構成するファイルは「data1.noa」~「data9.noa」となっているが、内初期バージョンで中身が有るファイルは4番目までで、パッチで5番が追加される。
  すなわち6~9番に収録される分が今尚未完成という事で、ファイル数で見ればおよそ4割近くが放棄された形となる。

  しかし仮に完成品となるほど作りこんだとしても、先までの問題点のせいで面白くなるとは全く思えないのが何とも物悲しい。

○まとめ
 企画会議が製造過程で一番盛り上がったのだろうという事がありありと分かる一作。
 「ぼくのかんがえたさいきょうのせってい」ばかりが先行し、他の全てが面倒になって放棄されたとしか思えない。
 昨年エントリーした「イケナイお仕事」が使用した禁断の手を用いて発売された本作は、2013年よりもクソゲーメーカーとして大きく成長したGLaceを象徴するかのようである。
 一応良い点としてはヒロインに多少の魅力はある事、声優陣の腕は確かだと言う事位だろうか。特に頑強はキャラが立っており、筆者お気に入りである。
 しかしそんな良点等霞んでしまう全方面クソ要素が山積みなのである。
 最後に冒頭で愛華が放つ台詞をGLaceにはお返ししたいと思う。

 「甘ったれるなッ!!」

補足

566 :恋魂 選評補足 ◆Ra9j1sVq3.:2015/06/11(木) 23:31:22 ID:XhCgXFRc0
分かりづらい箇所が有ったようなので補足と追加説明しておく

  • TOP10入り
 ここでいうTOP10は学院内の話ではなく、定期的に行われている全国テストの学校別ランキングでTOP10を目指すという意味。
 全国テストとは言っても学力だけでなく体力テストも兼ねている。
 つまりレンがバカの一般学生をまとめてTOP10入り出来るまで鍛えろという事。

  • 腕破壊について
 頑強に殴られたレンの右腕は確かに一度は完全に壊れている。
 曰く骨は砕け散り、肉はメタメタ、あり得ない方向に曲がり、感覚も無くなっているらしく、当の本人もこりゃ終わったと悟っている。
 しかし教師の車に乗せられ病院に着くまでの短時間に意識下で発動していた矯正ノ書『愛』の無効化能力により打撲まで急回復していた。
 既に起きた出来事を過去に遡って無効化したのはこの時のみで、そもそも無効化能力で治癒する理由も不明。
 更にはこれ程の怪我がみるみる治癒したのにも関わらず、本人はいつの間に治ってたんだ?等とあまりに鈍感。

  • オリエンテーリングについて
 レンは矯正ノ書『技』による超スピード移動を行える那帆より先にオリエンテーリングをクリアする為、下見をしてショートカットルートを開拓していた。
 ところでこの勝負の後に「私に追いついてきてくれた初めての人」という理由で那帆はレンに惚れだすが、この理由だけ見ると「常に全速で移動する那帆に食い付き続けた」のかと思うが実際は全く違う。
 二人揃って付かず離れずでトコトコ歩き、レンがショートカットすれば那帆が追いつけるだけ超スピード移動し、チェックポイントが近づいて来たら僅かに那帆が先行して先に到達という舐めプ勝負にしか過ぎない。
 最終的には計画通りに罠に嵌めたから良かった物の、レンが那帆に互角に追いついたといえるような展開では決して無い。
 そもそも「オリエンテーリングで先にゴールしたら、那帆の端末を貰い受ける」という賭け勝負の最中に端末を奪取すると言うのは如何な物か。
 最後の罠も希乃に手伝って貰っている上に、「誰も俺一人で戦うとか言ってねーし」と何とも卑怯な輩である。


※注意
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最終更新:2015年08月30日 07:53