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2014年総評案5 修正案1 大賞:新世黙示録 ―Death March―

2013年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は、2012年の覇者、スワンアイの先制攻撃により幕を開けた。
『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』――。
その威力は凄まじく、最強の門番として一年を通して君臨。もはやスワンアイの一人勝ちとも思える戦況となっていった。
そんな中、一発の不発弾により、スレはバイオハザードに襲われた。
新米ブランド、ミルクプリンの『明日もこの部室(へや)で会いましょう』――。
それはまさに会心の一撃で、その年の大賞を一瞬にしてもぎ取るに至った。
そして2014年、クソゲーハンターは細菌ウイルスに汚染された身体に鞭を打ち、今日も意気揚々とクソゲーに立ち向うのであった。


2014年の第一波は2月の初頭、piriri!の『きみと僕との騎士の日々 -楽園のシュバリエ』。
オーソドックスな設定が並ぶ中、trueルートでは一転、それらが全て「偽りの設定」だったと明かされる。
しかも個別ルートでは一切の説明がなく、伏線もないままにプレイヤーは新事実が突きつけられることになる。
「実は○○は××だった!」というのは作劇においてはよくある展開だが、何の伏線もなく「実は~」と言われたところで説得力なんてあったものじゃない。
また、学園騎士モノを謳っていながら、学園要素はほとんどない。

一方で、サブヒロインのルートはここまでの設定を完全無視したイチャラブ展開。
今年の切り込み隊長は、エロゲーにおける王道の大切さを教えてくれた。


第一波も終息し、その後は目立った作品は現れず、住人たちは平穏で退屈な一時を過ごしていた。
そして翌3月28日、いつぞやの五惨家を彷彿とさせるも、それを超える六作品が同時エントリー。
大粒小粒の玉石混淆ならぬ石石混淆の魑魅魍魎が迫り、住人の六腑はクソに支配されることになった。


まずは黒鳥の『心壊少女 ~僕は彼女が×××されるのを目撃した』。
前年、『雨音スイッチ ~やまない雨と病んだ彼女そして俺~』でエントリーしたスワン系列の黒鳥。
本作もまた前作と同様、あるいはそれ以上に狂った世界を繰り広げる。
尤も、そういった「狂った世界」が好きな人もいるだろうから、「そういった作風である」という点に文句はない。
じゃあ何が問題かというと、明らかに描写が足りないのである。
一例を挙げると、「ヒロインが主人公を襲った直後にそのヒロインが死亡する」といった具合。
しかし、必要最低限の状況把握程度は可能なので、ヒエログリフを解読するような労力は要さない。
また、誰得アニメーションも引き続き健在だが、そこはそういう方向性なのだと割り切るのが吉である。


続いて、またしても黒鳥……ではなく、本家スワンアイからエントリーした『私たち・花のオシオキ部! ~やられたらヤり返す…エロ返しだ!~』。
某ドラマを意識したタイトルのこの作品、オープニングまでは完ぺきなのである。
これまでに『SEX戦争』『リア充』などの最強クラスの虐殺兵器を送り出してきたあのスワンアイが、まともなシナリオを(わずかにだが)書いたのである。
だがしかし、例によってフルプライス、シナリオの大半が共通ルートなのはお約束だ。

シナリオは前述の通り、オープニングまでは完ぺきなのだが、そこからは「いつものスワンアイ」である。
『SEX戦争』『リア充』および黒鳥でも発揮したダイジェスト仕様はここでも健在。
しかし、スワンアイは勉強した。本作は、同じネタを二度使うという二度手間をかけることで、ダイジェストにより削られた部分を補っているのである。
更に、状況を説明するにも「なんやかんやで」という便利な言葉を使うことで矛盾を生み出すことなく話を結末へと導くことを可能にした。
そしてなにより、それらを総じて「いつものスワンアイ」と呼べてしまうのが本作の魅力である。
『SEX戦争』に『リア充』、そして本作と、ほぼテキストだけのストロングスタイルでKOTYeに挑戦しているスワンアイ。
今回も期待通りのクソゲーを我々に提供してくれた。


そんなスワン系列によりKOTYeが独擅場になるのを阻止すべく、一人の勇気ある騎士が「打倒スワンアイ」を掲げ腰を上げた。
その名も、エフォルダムソフトより派遣され戦場に降り立った『銃騎士 Cutie☆Bullet』である。
前作『恋騎士 Purely☆Kiss』に続く騎士モノとなる本作。
シナリオ自体は至って王道。しかし実際には、凍えるような寒いギャグがところ構わず挿入される。
主人公の父親の友人が一方的に主人公を恨んでいるのだがその理由は、
「若い頃、仕事を抜けて半額セール中のジムに筋トレに行くのを親友だと思っていた主人公の父親に咎められたから」
というもの。
あげく、「だからアイツは友人じゃない(=裏切られた)」といった旨の主張をするものだから呆れた。
他にも、
カラオケで喉を傷め、結果として公務に支障をきたすことになった国王。
ピーナッツアレルギーの父親が、自らピーナッツサンドを食べてアナフィラキシーショックで死亡。
人違いを正そうとすると何故か脳震盪になる事故が発生する。
など、これでも一部である。
それは個別ルートに入ってもなお遺憾なく発揮されており、「乳頭を黒く塗りつぶす事件」が発生したり、「同性愛者になる薬を混ぜたハンバーガーを無料で配る」など、受けを狙ったつもりが盛大に滑ったような様相となっている。
もはや失笑する気すら起きない。

そこに拍車をかけるのが、ヒロインの一人が使う「キサルピナ語」。
作中では空耳外国語として有名なこの言語、空耳と呼ぶには低俗すぎるのだ。
「こんばんわ」の意味を持つ発音が「はなげかーにばる」。
「あなたを愛しています」の意味を持つ発音が「はらませてあげる」。
他にも「あした」が「にどとこない」、「ははおや」が「でぶ」、「わたし」が「にーと」等。
このキサルピナ語のせいで、どんな真面目なシーンも容赦なく台無しになるのである。

だが、一番の問題はシナリオではなく、グラフィックの方にあった。
本作は、総CG数が44枚(SD含む)しかないのである。仮にもフルプライスの作品なのにだ。
結果としてCGの大半はエロシーンとなり、必然的に非エロのCGが少なくなった。
それはすなわち、シナリオの大半が立ち絵だけで進むことを意味している。
戦闘シーンに至っても立ち絵で展開されるため、全くと言っていいほど迫力に欠ける。
それなら立ち絵に工夫があるかと言えば、そんなことは全くない。

絵のクオリティ自体は良いのに、とにかく枚数が足りないのだ。
「シナリオがダメでも画集程度になら……」という淡い願望は、本作の前では見事に砕かれるのである。
このCGの少なさから、エフォルダム改め「絵フォルダ無」と揶揄されるのもやむを得ない話だろう。
一方でオープニングはフルアニメーションになっており、力のいれどころが間違っているとしか言いようがない。
会社が選択を間違えたのか、絵師の怠慢が招いた結果なのか、いずれにしても、この出来で納得するユーザーはいないだろう。
ゲーム全体の容量も前作の半分程度であり、解析班が調査した結果、(ファイル名の通し番号から推測すると)CG総数は73枚の予定だったと思われ、あろうことかテキストとボイスにも未使用のデータが存在することが発覚した。
そう、とどのつまりは未完成の状態で発売したのである。

その後も場外乱闘が続き、親会社であるあかべぇそふとつぅがニコニコ生放送で会見を開き弁明をするも火に油を注ぐ結果となり、最終的にエフォルダムソフトは解散するに至った。
なお、会見をしたのはあかべぇそふとつぅであり、エフォルダムソフトは最後まで無言を貫いたことを特筆しておく。
その後、原画担当を変更し、本作購入者には無償で『新作騎士物(仮)』を配布する旨が発表された。


オンラインの世界から奇襲をかけたのは、KISSの『カスタムメイドオンライン』。
由緒ある3Dエロゲー『カスタムメイド』シリーズのオンライン版である。
元々、2013年の時点でβ版として運営が開始されたが、パッケージとして発売されたのは2014年。

まず、ゲームシステムの根幹となるオンライン要素であるが、はっきり言ってオンラインである必要性はほぼ皆無である。
オンラインの基本は、他のユーザーと協力するなりバトルするなりといったものを思い浮かべるだろう。
ところが、本作ではそんなものは存在しない。
正確には「未実装」なのだが、現状実装される目途は見えない。せいぜいチャットルームが関の山である。
未実装の機能は他にも数多くあり、どうしてこんな状態で発売するに至ったのかに疑問を抱く。

では、オンラインであることを忘れれば面白いのか。答えは「ノー」だ。
まず、初回起動をするとアップデートが自動で行われるのだが、2014年末の時点で9Gという大ボリュームのアップデートが待っている。
通信回線が弱かったら目も当てられない状況だ。
さて、アップデートが終わっても油断はできない。
ゲーム内通貨を入手するためには「仕事」をするのだが、これが実に面倒なシステム。
仕事の成功率は、メイドの服の性能に左右される。
これだけならともかく、同じ服で連続して仕事すると確率はどんどん下がっていく。
これはつまり、定期的に着替えさせなければならないということである。
自分が楽しむために着せ替えさせるのか、仕事をさせるために着せ替えさせるのか、まるで分からなくなる。

更に面倒なのが「夜伽」である。
早い話がエロ要素だが、そこにあるのは快感ではなく計算。
メイドには興奮値と精神値があるのだが、この精神値がゼロになるとメイドが気絶して夜伽が強制終了となる。
精神値が尽きる前に、いかにして興奮値を上げ、射精まで導くか――。
これだけならゲーム性としては十分だ。
問題はその難易度。
なんと、プレイの内容によるパラメーターの上下幅の値がどこにも書かれていないのだ。
しかも、数値も非常にシビアで、エロを普通に楽しみたいなら攻略Wikiと計算機が必須。
確実に事を致すなら、「最初はアレをやって、次はコレで、その次は……」といった具合に、もはやリアルのセックス以上に相手を気遣わなければならない。
加えて疲労値も存在し、概ね一日で5回程度しかHはできない。
エロゲーに求めてるものはそういうのではないだろう。
更に言えば、初期状態では正常位しか出来ず、他の体位やプレイを追加するには夜伽をすることで貯まるポイントを必要とする。
このポイントも曲者で、本番を迎えるには単純計算で効率を重視しても20日以上かかることになる。
課金すれば即時解放できるのが救いと言えるだろう。

オンラインゲームという未来の可能性に挑戦した気概は褒めるに値するが、結果としてオンラインの魅力がどこにもないというのではまるで意味がない。
あげく、不具合には随時対応するのがオンラインゲームでは大切なのに、それすらも怠っている。
オフラインで見ても不便な点が大半を占めており、製品としてクオリティに問題があるとさえ言えよう。
せめて「課金すれば面白い」と言えるものだったら、多少は救いようがあったのかもしれない。
オンラインゲームらしく「基本プレイ無料」を謳っているが、その実態は「無料でもやりたくない」という新境地だった。


さらに、
Rosebleuから『Enldess Dungeon』
牛乳戦車から『くのいちが如く -脱がせ!爆乳ニンジャーズ!-』
がエントリーするも、あまりにハイレベルすぎる戦いを前に呆気なく散っていった。


『Endless Dungeon』は、内容に釣り合わないフルプライス作品。
ヒロインは全員最初から好感度MAXで、シナリオも前作までのあらすじが大半を占める。
『Tiny Dungeon』シリーズの続編(FD)ということもあり、ファン以外が置いてけぼりなのは良いとしても、それでも中身が薄すぎた。


『くのいちが如く -脱がせ!爆乳ニンジャーズ!-』は、「くのいち」の「3Dゲーム」という、言いがかりにも等しいフラグを背負って参戦。
しかしやはりと言うべきか、シナリオ、グラフィック、システム、そのどれをとっても残念な仕上がりであり、くのいちと3Dゲームの合わせ技により立派なクソゲーとして無事エントリーを果たした。


以上六作品が3月28日発売のエントリー作品となる。
各社共に消費税増税前の最後の追い上げはKOTYeの住人にも大打撃を与えた。
しかし、クソゲー自身にとってはそんなことは無関係で、増税後でも勢いが止まることはなかった。


フルコンプが30分で終わる、ぷちぱじゃまの『えろどるっ☆』。
その短さもさることながら、アイドルとマネージャーという設定がほとんど意味をなしていない。


「おっさんの作ったおっさんの為のゲーム」と評された、Potageの『堕姫3 ~エルフ貪り調教編~』。
シナリオは前年『部室』で大賞をとった百合倉かえで改め百合倉のの氏だが、テキストの方は短いながらも思いの外まともである。
しかしフルプライスなのはいただけない。


縁 -yukari-の一部固定ファンが強い『○and○』シリーズの3作目、『Knight&Princess』。
出始めに環境依存バグにより起動できないことにはじまり、二人いる主人公の片割れはプロローグのみで終了する。
本編においても、ゲームブック風であるがゆえに選択肢が多いのは問題ないとして、それでも擁護できないゲームオーバーの嵐。
フラグ管理も杜撰であり、通常プレイのみではフルコンプできない。
そんなフラグバグはシナリオのみならず、システム側でも起きている。
本作はピアスと陰毛のON/OFFをフラグで管理しているが、ピアスのフラグがONになっているとピアスのみが表示される。
言い換えると「ピアス以外が消える」のだ。当然、画面に映るのは黒背景にピアスが浮かんでいるだけの絵である。ピアスだけで興奮できる人にはオススメの機能だ(現在ではパッチで修正可能)。
しかしながら、エロゲーの肝であるエロは実用的であり、同人作品だと思えば納得できるレベルではある。


小粒揃いの4月と5月を抜け、来たる6月、常連さんは今年もやってきた。
softhouse-sealの『繁殖きょうしつ ~女子校ハーレムなら何をヤっても許される!?~』である。
冒頭から「貧乳とは何か?」と問いたくなる画像とテキストの相違に始まり、空気を読まずに現れるパロディにネットスラングの数々。
その勢いはいっそ清々しい程で、ユーザーの感性に合致すればそれなりに楽しめるものではあるかもしれない。
いつものseal……と言いたいところだが、sealにしては上出来な部類ではないだろうか。例によって絵だけは良いのはさすが「いつものseal」である。


時を同じくしてSORAHANEより発売された『はるかかなた』。
処女作である『AQUA』が好評価を得たSORAHANEの3作目だが、その出来は『AQUA』で得た評価を文字通りはるかかなたに飛ばした。
まず最初に直面するのがシステムバグである。
システムを外注したことに起因するのかは不明だが、発売当初はバグがあまりにも頻発した。
メーカーは急きょ対応したものの追いつかず、結果としては発売から約2か月後の7月20日の修正パッチで何とかプレイできる状態となった。
それでも一部のバグは残っているのだから救いようがない。
極めつけに、バグを修正する過程で当初はあったはずのテキストの既読判定がなくなった。
これにより、スキップを使うと未読だろうが容赦なくスキップされる。
「二周目以降でもシナリオはしっかり読んでほしい」というメーカーの意思表示なのだろう。

システムがダメでもシナリオと絵が良ければ……と思うが、そんな期待もはるかかなた。
絵はともかくとして、シナリオはあまりにも好都合なご都合主義が展開。
どのヒロインのルートでも死生観や人間関係といったヒューマニズムが描かれているが、そこにご都合主義すぎる展開はチープさしか生まない。

メインヒロイン(主人公の双子の妹)はルートに入ると突如として余命わずかであることが明かされる。
しかし、それを示唆するような描写なんてない。
治療法はなく、救いようがないかと思えば(一周目ではそのまま死亡するが)trueルートでは主人公の腎臓を移植してあっさり解決。
この時、主人公自身も病弱だったことが明かされる。もちろん、それを示唆する描写はない。
主人公が病弱なためドナーを待つことになるが、その間に(病室で)セックスし、そのまま妊娠する。念を押しておくが双方とも病弱である。
母親の身体のためにも中絶を選ぶべきだが、医者から「子供を産めば臍帯血を用いた治療でヒロインが治る見込みもある」と告げられ出産を決意。
これを機に、「ヒロインと子供のため」と主人公は周囲に告げることなく移植を決意する。
その結果、主人公は昏睡状態になるも最終的には無事に目覚め、子供(双子)も無事に産まれてハッピーエンド。
どう考えても倫理的にアウトとしか思えないが、周囲の人間は二人を受け入れている。
フィクションなのだからある程度は許されるにしても、やはり限度というものはある。
腎移植でも臍帯血でも治る病気とは一体何なのだろうか。それについては最後まで謎のままである。

別のヒロインに至っても、主人公を庇って電車に轢かれて死亡……と思いきや、リハビリはしたものの五体満足で生きていた。
「電車に轢かれて力尽きる血まみれのヒロイン」がCGで描かれたにも関わらず、身体のどこにも欠損がないのである。安っぽい奇跡ほどつまらないものはない。
作品のテーマは「私のために泣いてくれてありがとう」だが、過去の功績から期待していたプレイヤーは違う意味で泣いたことだろう。


そんな奇跡を横目にしながら、女騎士はいつものようにオークに犯されていた。
ルネの『恥辱の女騎士「オークの出来そこないである貴様なんかに、この私が……!!」』である。
「ヒヤヒウアした」「フォロモンでヘロヘロ」「根さん」などの誤字は住人に笑撃を与えた。
システム面でも細かいバグが随所にあるものの、現在は修正パッチによって概ね改善された。


7月、softhouse-sealが得意の軽やかなフットワークで早くも二撃目を繰り出した。
『ビッチ生徒会長のいけないお仕事』である。
この作品、パッケージとDLの二種類の販売形態なのだが、それぞれ内容が一部異なっている。
あらすじは、「とある国の王女(主人公)がエロゲのような体験をするためにメイドを伴って留学する」というもの。
途中まではあらすじの通りに展開されるが、いきなり話が飛んで「主人公たちは未来を救うために未来から送られてきた」という設定が追加される。
更に話が進むと、この二人は実はアンドロイドだったことが判明する。
公式サイトを見ても「未来」「アンドロイド」といった文字はどこにもなく、別のゲームをしているような錯覚にとらわれる。
そんな支離滅裂でまともなシナリオなど期待できる訳もなく、「体育館で乱交」したのち一旦部屋に戻った主人公は、その後着替えるために体育館に戻ろうとする。
無論、再び乱交になったのは言うまでもない。
こんな調子でユーザーを置いてけぼりにしたまま話が進み、最後にはエロシーンが終わって1クリックするとタイトルに戻る。
ルート分岐なんてものはなく純粋な一本道。なのに回想モードの枠は埋まらない。
というのはパッケージ版の話で、DL版ではしっかりと枠が全て埋まる。
それというのも、最初に述べたように販売形態によってシナリオの一部が異なるからだ。
これらは修正パッチのver1.02を当てれば改善されるのだが、これによってシナリオはDL版のものに統一される。
「シナリオそのものを書き換える」というのは、もはや詐欺と言ってもいいだろう。KOTYeの常連はやはり格が違った。
後日、住人が調査したところ、シナリオの唐突な未来からきたアンドロイドその他諸々の設定は過去作からの流用であることが発覚した。


夏も本番に差し掛かった7月下旬、人気ブランドが不意打ちを仕掛けてきた。
WHITESOFTの『ギャングスタ・アルカディア ~ヒッパルコスの天使~』である。
前作『ギャングスタ・リパブリカ』の続編(FD)となる本作。
シナリオはかつて『sense off』『未来にキスを』など、同社では『猫撫ディストーション』を手掛けた元長柾木氏であり、その独特な世界観から前作ファンからは高い期待を持たれていた。
しかし、WHITESOFTは発売前から不穏な動きを見せる。
2か月の延期に始まり、低クオリティのPV、発売5日前のマスターアップ、その後マスターアップの画像が一時的に消失するなど、期待する者に不安を抱かせた。
もちろん、それが現実になるとは露知らずに、だ。

元長氏の作風は良くも悪くも「ハマる人にはハマる」の典型であり、合わない人には絶対に合わないし、合う人には神ゲーにもなりうる具合。
0か100かの賛否両論を地で行くのが元長作品の特徴である。
本作も例外でなくライターの色が強く出ており、そこの良し悪しは各人の判断に委ねるとしよう。

問題はグラフィックで、新規CGが少なく、大部分が前作のものをそのまま使用している。
事実、新規CGに限定すればその総数は『銃騎士 Cutie☆Bullet』を下回る。
加えてそのクオリティも怪しく、本当に原画担当であるミヤスリサ氏が書いたのか疑念の声が上がった。
しかし8月8日、原画にゴーストライターを起用、およびミヤスリサ氏に無断で原画に手を加えていたことがメーカーから謝罪文と共に発表された。
「共和国(リパブリカ)から理想郷(アルカディア)へ」を謳った本作だが、これではとても理想郷とは呼べまい。


大規模な爆撃はまだ終わらない。理想郷が地獄絵図と化すまでに時間は掛からなかった。
ザウス【本醸造】の『新世黙示録 -Death March-』だ。
企画・シナリオに『女神転生』シリーズを手がけた鈴木一也氏を迎え、久々のザウス【本醸造】からの発売ということもあって大きな期待を持たれていた。
しかし、住人たちに待ち受けていたのは前年のバイオハザードですら霞むほどの大災害だった。
調査に向かった対策班も、その大半が返り討ちに遭って帰って来る、もしくはそのまま消息を絶つ、前代未聞のインフェルノがそこにあった。

本作は、RPGパートとADVパートの二つによって展開される。
まずはRPGパートから紹介しよう。
手始めに操作性は最悪で、マウスもしくは方向キーで3Dマップを走らされる。
しかもマップやコンパスも表示されないため、どこに向かうのか、自分が今どこにいるのか、まるで分からないのだ。
道に迷わないように一本道にするという親切心はありがたいが、おかげで単調な展開になったのは言うまでもない。
更に、バトルはエンカウント式のため、マップ上ですることは大半が移動のみ。3Dであることの旨味がなくなっている。
それでいてカメラワークすら最悪なのだから褒められれる点などどこにもない。

バトルシステムにも問題はある。
本作は剣を装備して戦うのだが、防御や回復までもが剣で行われる。盾や鎧といったものは存在しない。
剣の総数は100を超えるが、その大半は攻撃用。
おかげで防御用には後半になっても弱い剣を装備するはめになる。
ただし、一部の攻撃用の剣には自動回復やダメージ吸収などの特殊効果があるものもあるので、一応の安心はできる。
しかしそもそも、体力は戦闘終了時にある程度回復し、装備の性能によっては100%近い回復も可能なため、最終的には「死ななければ問題ない」という結論に至る。
そしてこれらの剣、合刃(合成)をすることで強化することが可能なのだが、そこにも問題はあった。
それが「零の剣」という存在。
合刃事故や一部の敵のドロップで入手できる、それ自体の性能はほぼ皆無の剣。
しかしなんとこの剣、合刃素材に使うことでどんなに弱い剣でも最強クラスの剣に進化させることができるのだ。
元のランクが高い剣に使えば更に強力な剣に進化するため、序盤でこの剣を2本入手できれば無双ゲーの始まりだ。
しかも、合刃はセーブ&ロードで何度でも出来るため、どう考えてもバランスブレイカーである。
ところがどっこい、ラスボスにはイベント入手の特殊な剣「獣(テリオン)」しか通用せず、それどころか攻撃が反射される。
どんなに剣を強くしても獣でなければ無駄な足掻きで、言うまでもなく獣を装備していない主人公以外のキャラは肉壁にしかならない。
「ラスボスを倒すには特殊な武器が必要」はよくある設定かもしれないが、ゲームシステムを否定してしまっては元も子もない。

RPGパートでご覧の有様ながら、ADVパートは更に深い闇が立ち込めていた。
まず主人公の性格からして問題で、
「自分の発言が絶対だとするくせ、いざ行動すると不安になる」
「都合が悪くなると他人のせいにする、もしくは自分を正当化する」
「自分の言葉に責任を持たない」
と、もはや人間としてどうかしている。
自転車の二人乗りやストーカー行為を肯定する主人公がどこの世界にいようものか。少なくとも主人公の器ではないだろう。
シナリオはそんな彼の一人称視点で進むため、終始その思想をプレイヤーは見せられることになる。
それは他の人物も(主人公ほどではないにしろ)大概で、モブキャラが一番まともという始末。
これでキャラクターに魅力を感じろと言われても、到底無理な話だ。

さて、本作は『チーズ』の愛称で親しまれている。
序盤で主人公は妹と共にチーズを買いに行くことになるのだが、このチーズに対する執着心が凄まじいのだ。
流血したおじさんの忠告を受けても、自転車のタイヤが切り刻まれていても、林から異臭がしても、警察から「今すぐ帰れ」と言われても、
それでもチーズの購入をあきらめない。
スポ根漫画もビックリな忍耐力には脱帽である。

話を戻そう。まだまだ問題は残っている。
物語中盤で発生するループ。
このループというのが、「時間を戻す」というものではなく、「世界を移動する」というものなのである。
ループすると、世界の状態はもちろんのこと、登場人物の性格や人物関係までもが変化している。
それまでの話は事実上「なかったこと」にされ、もはや「パラレルワールド」と呼んでも差し支えない。
しかも、ループの原因は誰にも分からず、結局最後まで不明のまま終わる。
何も解決することなく、主人公が新世界の神になり、神の力を発動して今までの出来事を「なかったこと」にし、ゲームは終わりを迎えるのである。

ところでこのADVパート、ここまであえて言わなかったが約30時間にも及ぶ大作だ。
プレイヤーはこの30時間もの間、主人公の謎思想と理解不能の超展開を味わうことになる。
精鋭のクソゲーハンターをして「プレイするのが苦痛」と言わしめ、半ばプレイすることを「任務」としなければやっていられないなど、その苦痛度合から本作は『ゲー務』の称号を得るに至った。
それを証明するように、最初の選評が届いたのは発売から一か月以上後のこと。それもゲーム全体ではなく一部に限った話で、全容の解明には数ヶ月を要した。
間違いなく歴代最強クラスのクソゲーと言えよう。
エロシーンに至っても意味不明なタイミングで挿入され、「エロゲーだから仕方なくエロを入れました」という感が否めない。
そのクオリティに関しても問題ありで、アマテラスを名乗るヒロインが絶頂した際に後光が射す「アマテラセックス」はシュールな笑いをもたらした。

さらにこれらのクソ要素、正面から向き合おうとすればするほど泥沼もとい糞沼にハマっていくという悪循環。
もはやそこかしこにクソが散らばっていると言っても過言ではなく、しまいには「クソとは何か?」というゲシュタルト崩壊に陥る。
クソ度で言えば間違いなく過去最強クラスであり、住人からも満場一致で大賞候補に躍り出た。

12月には本作の外伝として『わたしの勇者は多重神格者 エピソード01「ひもろぎ:グリマルキン」』『わたしの勇者は多重神格者 エピソード02「フルカス:ダモクレス」』がDL販売された。
この外伝、通常価格は645円(+税)だが、エピソード01のみ2015年1月末まで100円(+税)の特別プライスとなっている。
本編の一割未満の価格の本作だが、PCに「msvcr110.dll」が入っていないと起動できない。
当然のように本体に付属しているわけもなく、必要なプログラムは自力で入手する必要がある。
起動する前から面倒を押し付けてくる本作だが、本編と比べると比較的まとも。
シナリオライターを変更したことによる影響か、不愉快な思想や理解不能な超展開はない。
RPGパートは残念ながら本編と同じシステム。全体の尺が短いだけマシかもしれない。
剣のシステムは改善され、剣ごとにランクが設定されている。
ランクは変容合刃の代わりに搭載された昇格合刃をすることで上昇する。
「零の剣」が出る仕様はそのままだが、大幅強化のチート性能は失われており、素材に使った場合は「ランクが3上がる」程度に抑えられている。
ランク上限もエピソード01の時点で28固定になっており、開始早々無双ゲーにはなりづらい。
このように全体的にそれなりの改善が施されており、本編と比べれば本当にまともな仕上がりなのである。
どうせならいっそこのまま全編作りなおしていただきたい。


当然、有名ブランドの猛攻を前にKOTYeの常連が黙っているはずもなく、softhouse-sealは年内3発目となるエントリー作品『セックス あ~ん♪ パンツァー』を繰り出した。
明らかに某アニメを意識したタイトルの本作、もはや恒例と言うべきか、お得意の横スクロールのアクションゲームである。
独自のシステムとして、オナニーをする、もしくは犯されることでゲージが溜まり、ゲージがマックスになると能力が一時的に強化される。
ステージによってはこの強化中でないと越えられない障害があり、つまるところその度にオナニーをすることになる。
敵は全体的に弱いのだが、何故かラスボスだけ異様に強く、油断していたプレイヤーに容赦なく襲い掛かってくる。
普通にプレイしいてはまず勝ち目がなく、ならばどうするかと問えば、「オナニーをしろ」という答えが返ってくる。
そう、「強化する」ために「オナニーをする」のである。
このあまりにも斬新すぎる攻略法は、未曽有の大災害で疲弊した住人に一時の安息を与えた。


しかし安息も長くは続かず、時は11月。
2010年に『Cross Days』で次点入りをし、メーカーの杜撰な対応が物議をかもしたオーバーフローがエントリー。
その名も『ストリップバトルデイズ』。
本作は、過去作におまけとして収録されていたゲームに色々追加、改めて単品として発売したものである。
野球拳で勝って服を脱がし、お触りし、ゲージがマックスになれば本番に移行する。
至ってシンプルなシステムながら、プレイヤーの勝率は終始高く、「グーだけ出してれば勝てる」とまで言われる始末。
ゲージを貯めるにも効率の良いやり方があり、案の定作業ゲーと化している。
あげく、新キャラにはボイスがなく、CGも新キャラ以外は既存のものを使用。
しかし、ボイスについては予めそう告知されており、それが良いか悪いかは別として仕様通りである。
ここまでならファンアイテム程度で済んだのだろうが、オーバーフローはただでは転ばなかった。

本作の真髄はアンインストーラーにある。
ソフトに付属のアンインストーラーを使うと、選んだフォルダの一つ上の階層までアンインストールされる。
場合によってはPCの動作そのものに影響を及ぼす危険性もあり、もはやウイルスまがいの挙動である。

つまるところこの作品は、
実質的に無料配布だった作品に申し訳程度の追加要素を与え、無関係のデータまでも破壊するソフトを付属した、クソゲーの皮を被ってその実破壊工作を行う「ゲー謀」なのである。
かつて『みずいろ』が似たような問題を起こしたが、あちらは作品としての評価は上々な分、こちらの方が悪質と言えよう。


有名ブランドの影に遠慮がちに佇むのは、1月末から潜伏期間を経て顕現した熟女時代の『艶乳 ~ツリ目で淫らでヤバい秘書~』。
公式サイトには「屈服するのか、それとも秘書を堕としこむのか」とあり、MでもSでも満足できる仕様……なんてことはない。
ヒロインの紹介にも「簡単にセックスさせてくれない」とあるが、それは最初だけ。途中からは半ばセフレのような関係になる。
屈服させるにしてもほとんど和姦なので、どうにも設定を活かせていない。
そして、あるエロシーンの途中で現れる「中に出すor外に出す」の選択肢。
それなりにエロゲーの経験を積んだプレイヤーなら、「中出し・外出しの差分だろう」と思うだろう。
だが、現実は非情である。
ここで「中に出す」を選ぶと、なんとバッドエンドに直行。
中出しした結果、主人公に待っていたのは地方に左遷されたあげくの貧乏生活だった。
ちなみに、外に出した場合は和やかなムードになってシナリオが続行される。

しかし、それよりも目を引くのが独創性にとんだテキストである。
「ベロが亀頭全体をテロリン~、テロリン~とローリングしてくる」
「舌がローリングするレロレロ感と唾液にまぶせられたヌルヌルした感覚」
「おまんこ見せたガール」「全自動腰振りマシーン」
などに始まり、
射精音が「ウドピュ~ウドピュ~ウドピュ~」
ピストンの音が「グッチョ、プニュッポ、グッチョ、プニュッポ」
と、非常に個性あふれる才能を見せつけてくれる。
細かい誤字脱字、書式の間違い、CGとテキストの矛盾などを忘れさせてくれる、印象的な作風と言えるだろう。
クオリティ相応にロープライスである点は評価したい。
しかし、前代未聞の大災害を前にしては毒にも薬にもならなかった。


そして時は流れて12月。
「攻略法はセーブ&ロードの繰り返し」と評された、オーバードーズの『強引にされると嬉しくて初めてでもよく喘いじゃう令嬢な幼馴染 優衣 「やめて、脚に触らないで……でも本当は気持ちいいの」』がエントリー。
本作はモブキャラともエッチできるのだが、そのモブキャラは顔を差し替えただけの雑コラ仕様。
年内最後のエントリーは、何とも粗雑なものだった。


そして年が明け1月。
例年のおなじみとなっていた年末の魔物は珍しく現れず、住人はどこか物足りなさを感じていた。
すっかり拍子抜けして暇を持て余した住人は、自主的に不発弾の捜索に向かうのだった。


そうして発見されたのは、Potageの『ヤリ友ペット欲情生活』。
Potageは『堕姫3 ~エルフ貪り調教編~』に引き続き年内2作品目のエントリーとなり、シナリオはまたしても百合倉氏。
本作では「百合倉オーバーロード」を名乗り、『部室』からカウントすると3つ目の名義となる。

物語は、レイプ・監禁の動画を見るのが趣味の主人公が、実際にそれをしていくというもの。
そうしていくはずなのだが、その大半は和姦である。
ヒロイン5人のうち、実際に監禁できたのは1人。
その1人に至っても、ヒロインの同意を受けた上での行為であり、合意のあるセックスを強姦とは呼ばない。
他のヒロインも概ね同様で、ヒロインの同意を受ける、もしくは恋人関係になるので、主人公が無理矢理にセックスするような描写はほとんどない。
エンディングもヒロインとのハッピーエンドであり、タイトルのような関係になることはない。
一応NTRルートも存在するが、中身などまるでなく、ヒロインが次々と犯されるだけである。
性に溺れていく描写などは言うまでもなく存在しないし、犯されたら犯されたでそのままゲームは終わり、犯された後ヒロインがどうなったのかは一切不明。
肝心のエロシーンもスワンアイよろしく短く、概ね20~30クリック、長くても40クリックという早漏向け仕様。
更に、「闇堕ち担当教師・前野」「悪校長・仁藤」「闇堕ち親父」といった目を疑うような登場人物のネーミング。
ヒロインの「前後でぇぇえんんっ……前後ォ前後ぉぉ……」という、いつかのクソゲーを思い起こさせる台詞。
住人からは「狙ったクソゲー」とも言われたが、真実は闇の中である。
しかし、いずれにしてもクソゲーであることに代わりはない。


そしてもう一つ、調査班は眠っていた怪物を起こしてしまった。
6月に発売された、ソフトハウスSORAの『俺がヤマタノオロチなら』である。
印象的なタイトルとあらすじに、発売直前にはそこそこ話題になっていたがいつの間にか終息。
人々の記憶からは忘れられると思われていたが、KOTYe住人によって再び脚光を浴びることとなった。
本作の主題は、主人公の正体に迫る伝奇ロマンである。
自身の正体について悩む主人公の葛藤が描かれており、その正体が判明するのは終盤。
だがその前に気付いてほしい。
本作のタイトルは『俺がヤマタノオロチなら』。
『「俺が」ヤマタノオロチなら』。
そう、タイトルの時点でネタバレしているのである。
あらすじでも『俺は、ヤマタノオロチの生まれ変わりだった……。』とあり、終盤でさも驚愕の事実のように言われても何も盛り上がらない。
更に、シナリオの大半が共通ルートというクソゲーの標準装備もしっかりと装備し、個別ルートの展開もヒロインが違うだけで概ね同じである。
大抵のことはスサノオノミコトが何とかしてくれるため、主人公がすることと言えばヒロインとエッチすることだけ。
主人公が活躍することはほとんどないと言っていい。

シナリオもさることながら、グラフィックにも問題はある。
このゲームの舞台は「須賀町」なのだが、背景画像である駅には「鎌倉駅」と書かれている。
これは実写画像を加工したために発生した問題である。
実写を加工すること自体はよくある手法で、そこに問題はない。
問題なのは、必要な処理を怠っている、ということ。何ともお粗末なものである。
CGの出来も全て同一人物が書いたとは思えないほどに安定せず、シナリオが進むにつれてそのクオリティは下がっていく。
また、立ち絵は基本的に一度に一人しか表示されず、喋る人物が変わる度に画面上の人物が切り替わる。

サウンド面でも粗は目立ち、BGMはトータルで13曲(主題歌などを除けば9曲)。
数が少ないのは明白だが、場面にミスマッチなのもザラである。
あげくBGMどころかSEにも問題があり、ボタンにカーソルを乗せると「カチッ」、クリックすると「チャララーン」と、人の声で再生される。
この効果音はどんなシーンであっても鳴るため鬱陶しいことこの上ない。
それだけにとどまらず、場面場面で使われるSEも古臭く、エロゲー黎明期どころかファミコンのようなレトロなものである。
他にも誤字脱字は言わずもがな、「セーブ・ロード画面が神経衰弱」「文章が繋がって表示される」「テキストで内部指示のような文言が表示される」「コンフィグ画面から戻れない」など、クソゲーたらしめる細かいバグも完全装備。
しかし、これらをして「手抜き」という感はなく、むしろ「頑張ったけどダメでした」といった印象を受ける。
このメーカーがこれから伸びようものなら、それはとても微笑ましいことだろう。


以上をもって2014年KOTYeの主なエントリー作品の紹介を終わりとし、結果発表に移る。
次点は、
『銃騎士 Cutie☆Bullet』『ストリップバトルデイズ』『俺がヤマタノオロチなら』『カスタムメイドオンライン』
大賞は、
『新世黙示録 -Death March-』
とする。


「笑えるクソゲー」が流行った昨年に対し、今年は文字通りの「純然たるクソゲー」が目立った。
これが本来の姿なのであろうがしかし、あえてそれを楽しむのがKOTYeである。
楽しむというからには、クソゲーならではの魅力がそこにはあるのだ。
クソの中に眠るダイヤの原石、その価値は素晴らしいものだ。その輝きを失わせてはいけない。
しかし、元からダイヤが存在しないのならば、それはクソの塊でしかない。
クソの塊に価値はなく、本年はそういった「無価値」を体現した作品が選出された。

『銃騎士 Cutie☆Bullet』は、ひたすら寒いギャグに少ないCGでプレイヤーの興奮を徹底的に冷まし、
『ストリップバトルデイズ』は、過去作の使い回しにデータ破壊ソフトを付属することでユーザーを呆れさせ、
『俺がヤマタノオロチなら』は、あらゆる部分にクソを詰め込むことでクソゲーの見本となることを可能にした。

目指す方向性は違えど、ひたすらにクソを極めたこれらの作品群は、無価値で立派な完成されたクソゲーと言えよう。
そんな中で『新世黙示録 -Death March-』は、プレイに支障をきたす重大なバグはなく、全てが仕様通り。
それなのに、普通にプレイするだけですら最上級の苦痛を感じさせた本作は、ある種ストロングスタイルの究極系であり、ひいては究極のクソゲーである。
『カスタムメイドオンライン』も、ユーザーのやる気をあらゆる角度から徹底的にそぎ落とそうとするその姿勢は称賛に値するし、大賞にも十分成り得た逸品である。
事実、本作品は大賞候補として住人の意見は一致していたし、『新世黙示録 -Death March-』との一騎打ちとまで言われることもあった。

問題となったのは、オンラインゲーム特有の性質だ。
オンラインゲームはユーザーの課金によって発展するゲームでもあり、課金することは謂わば投資である。
長期的な投資を要求するならば、それに見合ったサービスを提供するのが道理というものだ。
しかしどうだろう、『カスタムメイドオンライン』はパッケージの発売から年末までの約9ヶ月、その間にプレイ環境が良くなることはなかった。
この9ヶ月の間、ユーザーは苦痛を味わい続けたのである。
環境が改善されることを期待し、投資し続けるも結果、虚しく何も変わらなかったのである。
そこに残された虚無感は、『新世黙示録 -Death March-』では到底成し得ないものだ。

だがしかし忘れてはいけない。KOTYeはネタスレである。
人間は先の見えない闇を恐れる。時が経つにつれて全容は解明されつつあるものの、終わりの見えない闇は生まれ続ける。
そんな状態では楽しめないのだ。「クソゲーを楽しむ」という上で、そこに闇があってはいけない。
未来に広がる闇と、明るみになった地獄――。
『新世黙示録 -Death March-』は、誰もが認めるレベルの苦痛を有している。それは事実だ。
しかし、万全の準備と地獄に飛び込む勇気、そしてクソゲーを愛する気持ちがあればこそ、十分に楽しむことが可能なのである。
シナリオが冗長? エロが薄い? システムが不便? 主人公が不快? いいだろう、そんなものは上等だ。なぜならここはKOTYeなのだから。
クソゲーがつまらないものなのは至極当然であり、今さら説明することもない。
しかし、どんなクソゲーであろうと、我々はそれを楽しむ。それこそが、KOTYeがネタスレである所以なのだ。
よってここに、『新世黙示録 -Death March-』を2014年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板大賞作品とする。


2008年の「アイ惨ショック」を機に始まったKOTYe。
これまでに幾度となく「クソゲーとは何か?」と追求した住人たち。
今年は昨年のような全月制覇は成し遂げなかったものの、エントリー総数は過去最多を記録。
それぞれの威力もパワーインフレを起こしかねないほどで、未だかつてないハイレベルな頂上決戦が繰り広げられた。
これが表すのは業界の終焉なのか、しかしそんなことはどうでもいい。
我々は、クソゲーを楽しむ――。ただそれだけの存在にすぎない。
楽しむということには嘘も真もなく、ただただ純粋な心を持ち、遊んでいるのだ。
どんなに蔑まれた作品であろうと、我々は心から歓迎する。
クソゲーだからと言って見下すことなく、対等な目線で迎え入れるのだ。
その精神を持ち、クソゲーに光を与えること、それこそが我々の役目であろう。
どんなクソゲーであろうと、我々はその総てを真実愛してやるのだ。
どんなに困難でくじけそうでも、必ず最後に愛は勝つのだ。
たとえそれが混沌の黄昏であろうと、愛があれば打ち勝てるのだ。


最後に、過去最大級の大災害を齎した『新世黙示録 -Death March-』の制作スタッフに、敬服の念を込めた一言を送って2014年のKOTYeを締めくくりたい。
「このゲームをなかったことにしてください」

修正箇所
  • 特別賞の撤回と、それに伴う大賞の理由付け
  • 一部の表現
  • 誤字脱字
最終更新:2015年03月01日 16:52