Dies irae-Also sprach Zarathustra- 選評

【2013】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 65本目 http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1396286877/

451 名前:Dies選評 ◆Zncr3rD4Vk [sage] 投稿日:2014/04/08(火) 23:06:12.35 ID:LjzN5Njc0 [2/10]
 今からさかのぼり2007年12月21日、今のクソゲーの先駆けともなり大騒動を起こした作品がある。
それがlightから発売された「Dies irae-Also sprach Zarathustra -」である。この選評では本作が巻き起こした騒動の顛末も含めて記そうと思う。

 本作は町に突如現れた聖槍十三騎士団というナチの軍人達から日常を取り戻すために異能を身につけバトルを行う学園バトルオペラADVである。
ライター正田崇(以下、正田)の前作である「Paradise Lost」がバトル物として隠れた良作と評価され、シナリオ、美麗なグラフィックなどで期待されていた作品で、
体験版も高評価だったために大きな期待を寄せられていた。しかし一年以上延期を行っており、ファンは不安を覚えつつ発売を待っていた。

しかし発売後蓋を開けてみれば5章以降、説明不足ゆえの置いてきぼりなシナリオとつまらないバトルで頭を悩ませることとなる。

箇条書きになってしまうがルート別に筆者が特に気になる点をあげていく。
◎マリィルート
・主人公との戦闘中に自問自答しだし、六十年願い続けた願いをあっさり諦め改心するシスター
・シスターを粛正しかっこよく登場した元ドイツ軍人で幹部の赤騎士。
 しかし直後に急に目覚めた主人公の能力により出オチになりそうになる(幹部の一人黒騎士に助けてもらうも悪態をつく)
 その後最終決戦で同盟国日本の十八番であったカミカゼを予想できず死亡
・初登場時、頭のネジが飛んでるやばいヤツと思われていたが、戦闘中バイクに乗り「ぶーん」とかいいだすような精神しか持っていなかった幹部の白騎士。
 最終的に赤騎士の攻撃に巻き込まれることを悟り、もがこうともせず「あ~こりゃ死んだね」といってあっさり死亡。
・ラスボスとの戦闘開始直前に「いくぞ!」と声を上げ、突然最終段階に覚醒。(本作では能力が4段階に分けられるが、直前の戦闘で3段階目をマスターしたばかり。)
・ラスボスを倒したら突然主人公は元の世界へ押し返され、別世界に残るマリィと離ればなれになるが、どうして別れなければならないのか説明は無い。

◎香純ルート
・平団員のチンピラに無能力の味方が立ち向かい、銀による攻撃が通ることが判明するも、
 どうして通るか説明されず。(敵は基本的に能力の攻撃でしかダメージを受けない。)
・60年かけられて作られた生贄である先輩の代わりとして香純が生け贄の代役に選ばれたが、なぜ香純が代役たり得たかは不明。
・終盤チンピラが攻撃をよけない舐めプ。その後なぜかドイツのヴィルヘルム教会から輸入されていた巨大な十字架に心臓つぶされチンピラ死亡。
 (これもなぜ攻撃が通ったか不明のまま、ちなみに輸入していたのは騎士団)
・ルートボスと戦闘後で主人公が昏睡状態になる。その後最後の敵が死んだことで突如目覚め花園をバックに香純がおかえりと言ってエンディング。
といった具合である。

特に香純ルートではシナリオの説明不足が多く、どうしてそうなったのかサッパリわからないことばかりでエンディングも感動どころではない。
また、期待されていたバトルも上述の他、液体窒素を空中でぶちまけなぜか敵が凍るなどの酷い有様であった。
ただひとつの救いはマリィルートの親友vs平のチンピラだけは正田が書いたようで、
最終的にチンピラが敵の中で一番強かったんじゃね?と言われる程度には評価が高かった。
さらに発売前は、ヒロインは4人と思われていたが実際に攻略できるのは香純とマリィの2人だけで、
さらにHPで公開されていたCGの一部が未使用であることが判明。
残りのふたりのルートを期待した人はだまされたと嘆く羽目になった。

ソフト単体で見れば駄目な要素は以上で、CG・BGMの評価は高かったため、
ただのクソゲーの部類であったのだが、真に問題となったのがメーカーであるlightの対応である。

前述の通り中盤以降急激にテキストが劣化するため本当に正田が書いたのかと疑問に思われていたが、
EDになると告知されていたライターは正田1人だったはずが実際には7人いたことが判明(パッケージには正田1人のみ、彼らは七英雄と蔑まれることになった)。
発売日当日になり、HPの商品概要欄を変更、さらに公開されていた未使用CGをHPから抹消し、違うCGに黙って差し替え、
未完成を隠蔽しようとする暴挙にでたためネットで大炎上。この騒動はタイトルにちなんで「ユーザー怒りの日」と呼ばれた。
さらに代表が「元々ルートはマリィ1つだったが要望によりルートを増やそうとした、しかしまとめられず初心に返りまとめられるように作り直した。
要望が多いようなので追加パッケージを出す。」という言い訳がましいメッセージをだし、元々入っていたはずのシナリオを分割して販売する分割商法のようなやり方を行うことで精神を逆撫でするも、
追加パッケージを出すと公言したためとりあえず炎上は鎮火された。

しかしその後追加パッケージの続報はないまま、約半年後書き下ろしドラマCD入りのサウンドトラックが発売。
さらにそれとは別に正田書き下ろしの前日譚ドラマCDが8月に発売され、追加パッケージ書けよ、と早くと本編を期待していたファンの気持ちを逆撫でし続けた。

最終的には正田がリライトした新装版・完全版(新装版は2ルートのみ、完全版は4ルート)の発売(それぞれ2009年7月と12月に発売)。
幸いにも、2007年版を持っていて、同封のIDを登録すればタダで新装版・完全版をプレイできたが、アクティベーションのネット認証がややこしい、
店舗別特典のドラマCDの数が多い、そもそも新装版ださずに最初から完全版出すべき、等最後までファンを舐めくさった対応をとり続けた。

余談ではあるが、lightの作品を手がけていたライター早狩武志が本件に触れ、
問題の本質とは全く別方向のユーザー批判を繰り出し炎上したという珍事も発生したことを記述しておく。

(まとめ)
BGM、CGはすばらしかったのにシナリオ、あんまりにあんまりなメーカー対応により作品の価値を大型クソゲーへと落とした作品。
本作最大の罪は本作が発売された次の月にCUFFSの「Garden」と合わせて後の未完成商法と呼ばれるやり方を示してしまったことである。

以前から「それは舞い散る桜のように」のように2部作にして結果的に未完成になってしまうこと、「おたく☆まっしぐら」のようなシナリオは入っているのにバグでプレイできずパッチも不完全、
打ち切りエンドはあっても、ルート削除・シナリオライター変更等大きな変更を隠蔽して発売する詐欺のようなことを行う事態はなかったため後の業界に大きな爪痕を残すことになってしまった。

なお現在の本作の価値は、本作と傑作と言われる程度に評価の高い完全版を読み比べ笑い飛ばすものであり、
それと同時にADVにおけるライターの重要性を学ばせる教本であるのでエロゲ初心者には是非両方買うことを薦めよう。

最終更新:2014年08月03日 14:46