クロスクオリアセット 選評

ブランド 10mile


ジャンル NVL
メディア DVD-ROM
原画
シナリオ J-MENT
音楽 松本慎一郎
発売日 2014/07/25
定価 6,480円(税込)
CG数

選評

【2014】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 85本目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1406473083/

タイトル クロスクオリアセット
ブランド 10mile
発売日 2013年4月25日⇒2014年7月25日発売
価格 6,000円(税別)
β版マスターアップという単語で有名になった本作品はエロゲ界でも色々な意味で有名なカタハネの二人が手がけた物である。
当初、本作品はクロスクオリアという名称で進められていたものの、「ひとりのクオリア」「ふたりのクオリア」(以降、「ひとり」「ふたり」と略す)と言った二つの作品として別れた、言わばエロゲ界のポケットモンスターである。
そしてセールスポイントとしては「こだわりの二人が1年半を懸けて練り上げた意欲作!」と言うものである。
こだわりの二人が1年半延期した意欲作ではないかと思われるかも知れないが、それもきっとポケットモンスター金・銀を意識した結果なのだろう。

先に断っておくが私は二人の暗黒時代と呼ばれるRococoの作品は所持しているもののプレイはしていない。故にこの二人の作品はカタハネしかプレイしていない。
「クロスクオリア」を説明する前に簡単にカタハネの説明をしようと思う。
カタハネは、今は亡きTarteより出された作品であり、「クロスクオリア」の計画を立てた二人によって作られた。
その構成は「シロハネ」「クロハネ」となり、シロハネは現在、クロハネは過去として作られている。詳しく知りたいならば非公式ミラーを見ていただければわかるだろう。
そして本作品は「ひとり」「ふたり」という構成からなり、配布されたリーフレットに書かれた「少女心中物語」というフレーズがカタハネを思い出させ、大いに期待させてくれた。
しかしそれが大きな罠であることをまだ私や予約者達は知らなかった。

まず襲い掛かるのは延期の嵐。それも直前発表である。
しかしこれはエロゲ界ではよくあること。気にせずに期待を続ける。
その甲斐もあってか、「クロスクオリア」のページがリニューアルされ、デモムービーを見た時は感激した。再びカタハネのような作品に逢えるのだと歓喜した。
発売を待ちきれなく思っていた私への贈り物は二度の延期。もうわかっていたことだから気にはならなかった。
そして体験版を発表しないまま満を持したのか、ようやく2014年7月25日に発売した。

今しがた探したところ見当たらなかったのだが、私は「クロスクオリア」の最初の企画は「ひとり」であり、どちらか迷ったのならば「ひとり」からプレイすることをお勧めするという文を以前見た。
それを抜きにしても個人的に花梨の容姿が好みだったので「ひとり」から始めるつもりでいた。
当然ながらそれは後悔する結果となった。

「ひとり」の大まかなストーリーは事故に遭いかけた真希理を謎の少女花梨が救う。真希理はお礼と称し仲良くしていこうとする。
当初はお礼をしてもらうはずであった花梨であるが、真希理の私生活を知り、同居させてもらいながらも改善しなくてはという使命感に駆られるものである。
駄目駄目な女の子が謎の美少女と同棲をし、あれやこれやと努力しながら真人間になる。ギャグものとしてもシリアスものとしても料理の仕方一つでどちらにも転ばせることができる。

最初のシリアスシーンはもちろん真希理が事故に遭いかけるところ。現場でのシーンやその後の心境もよくできていたと思う。
しかし問題点が一つだけあった。
真希理は早朝に牛丼屋へ朝食を取りに出掛けた。しかし蓋を開けてみたらどうだろう。
+ ...
ごらんのありさまである。
ディアボロも素っ裸で逃げ出すレベルのキングクリムゾンだ。
悲しいことにこれに気付いた瞬間笑いがこみ上がってしまい、シリアスシーンが台無しである。

なおこのCGは最初のパッチによって朝に戻されたものの、キングクリムゾンが頭を離れなかった結果再び笑うこととなり、真剣にはプレイできなくなってしまった。(そもそもこのシーンで倒れている真希理の表情もどうかと思うが)
しかし修正した努力は素直に褒められる出来である。
+ ...

ちなみにパッチであるが、フェイスアイコンという名の生首が搭載されたからか、当てるとパッチを当てる前のセーブデータが正常にロードできず、落ちてしまう。お陰でCGが修正されたことに気付いたわけだが。
フェイスアイコンはこんな感じである。
+ ...
当然ながらこの程度では屈さぬ私はプレイを続行した。
花梨の怒声やシステムの不備に悩まされながらも背景ではココやソマリアの鬼神こと46号などと言った知る人ぞ知る個性豊かなキャラクター達のお陰で微笑みを忘れずにいられた。
しかしその微笑みはになって終盤になると消えることとなった。

中盤までのあらすじは
花梨が真希理の家に居候する(信憑性はないがドイツからの帰国子女らしく、ホテルに母親と住んでいるらしい)
真希理が学校へ行かないことを不思議に思った花梨はゲームを通じて真希理の友人であるZiziことナツメと知り合い、真希理には秘密で相談をする。
花梨は真希理に自分の私物には触れないよう約束するが、真希理はそれを忘れて触り、花梨がナツメと接触していることを知る。花梨が触ったことを知ると激怒して出て行くことに。(ただし数日後に真希理の上の階に住む)

単刀直入に言ってしまうが、真希理が学校へ行かなくなったのは唐突の失顔症設定とこれまた唐突なライカの姉であるちーちゃん(どうでもいいが「ひとり」では本名が出ない、本名はチハル)を自分が殺してしまったという理由かららしい。
殺したといってもちょっとした事故で、ライカは気にしているものの真希理のせいとは思っていないらしい。しかし真希理は自分のせいだと考える。すれ違いの状態であった。
チハルが原因ではないか? それを花梨が知れたのはナツメからの連絡だった。
花梨はどうやってそのことを知ったのかと問うがナツメははぐらかす。まるで真犯人かのようであったので印象に残っている。
そうこうしていると最終的に花梨はライカと会い、事情を詳しく聞くこととなった。ライカは真希理と同じマンションに住んでいるからか、真希理のマンションの前で待ち合わることになった。こいつらはアホなのだろうか。
しかも本来はこの場にいるべきであるナツメは事情によって来られないと直前になって連絡が来る。親切なことにナツメのパートナーであるギンザがナツメに「早く行こう」という急かす声を残し。お前らはなにをしている。
そして必然として密会を真希理に見られ、逃げられる。物語であることを考えると仕方のないことであるだろう。
しかし結果的には成功。花梨は真希理から事情を聞け、その上彼女が失顔症であることを知った。
ここまで来れば後は失顔症をどうにかするだけ。しかしこの失顔症が曲者だ。そう私は考えていた。

しかし現実以上にフィクションは甘かった。次の日にナツメと顔を合わせた真希理。その場には二人のやかましいクラスメイトがいた。
最初は区別のつけられない真希理であったがなんと友情パワーによって二人が区別できるではないか!
まあこれはいい。よくはないが気にしては負けだ。その後はライカが訪問する。ライカは真希理がいると聞いて真希理の元へすっ飛んでいく。
おかげでお茶を運んでいた真希理は慌ててしまい自分の手に掛けてしまう。そして熱さのせいでで湯飲みを放り出してしまい、制服を着ていたクラスメイト1にお茶をぶつけてしまう。
コミュ障である彼女は謝るなり事情を話さず家へ全力疾走。
自分の制服を代わりに貸そうと考えたらしいのだがフィクションは厳しかった。マンション前でライカに会い、お茶で汚しておきながら逃げるなんて最低だと彼女は言い放った。お前のせいだ。

ちなみにこの後は花梨と真希理のエロシーンに入るわけだが二度もやっておきながらほとんど本番無しといえる寸止めプレイを披露してくれる。
+ ...
そんなライカのお陰でようやく学校へ行こうとしていた真希理は決心を鈍らせる。しかし自分が変わるために一歩を踏み出した。
ようやく駄目な子が更生された。涙無しには語れないこの作品は終わりかと思われた。しかしここでシナリオ上では最も酷い問題が生じる。
電車の前で気付く。真希理はなんと財布を落としてしまったのだ。
慌てて引き返す真希理であるが、見つからない。どうしようもなくなってしまった彼女であった。
+ ...

そして場面は花梨に変わる。
花梨は真希理が来ることを期待しながら学校の最寄の駅で待機していた。もちろん遅すぎる真希理に花梨は心配していた。それ以上に心配するのはプレイヤーであるが。
早く真希理を助けに行ってくれと願う私であるがフィクションは甘くない。花梨は真希理が来ないと考え、次の電車で来なかったら諦めようという。
そしてなぜか真希理はやってきた。
さらに駅を出るなり第一声がこれである。
+ ...
能天気もほどほどにしろ。
ちなみに文では書かれないものの真希理の呟きによって財布は本当に落としていたらしい。どう発見したのかは永遠の謎である。

ちなみに学校についたらお茶の件で真希理がクラスメイト1に謝るシーンもしっかりある。しかしなぜかクラスメイト1は制服を取りに行ったと知っていた。
なぜかというとライカが教えてくれたらしい。しかしライカが知った理由はナツメが教えてくれたからだ。
当然の如く誤魔化すナツメ。やはり彼女が真犯人なのだろう。
それにしてもライカのウザさはどうにかならなかったのだろうか。

こうして無事に問題は終わり、シナリオも終わった。途中理解不能な部分も多かったがそれでも駄作には行かない程度だろうと思われた。
しかし最後の最後に地雷が二つ仕掛けられていた。

一つは既に有名であるが「おわりのクオリア」という存在。実はBGMにもその名は存在する。
突然の分割宣言に戸惑うばかりである。しかし私はそれより少し前の方に意識が向き、それどころではなかった。
それがここだ。
+ ...

知らなければ超展開かよ、はいはい後付後付、花梨さんマジババアで済むだろう。むしろそれで終わらせてほしいものだった。
しかしここに書かれる最初の恋人“Christina”はまぎれもなくカタハネのキャラクター、クリスティナ・ドルンである。
そしてクリスティナの恋人はエファである。
もちろんカタハネは「ひとり」と同じライターであり、名前を出す分には問題ない。むしろドンと来いというつもりであった。
しかし逃げ出してしまう、という表現。それが癪に障った。
まるでクリスティナを恨むかのような言い回し。カタハネにはそんな表記が一切無い。会いたいという気持ちは後継機ベルによって告げられていた。しかし決してクリスティナに逃げたなどということは言っておらず、ただ愛していた、ずっと一緒にいたかったと言っていた。
確かにそれは逃げられたと考え、寂しいという気持ちから言ったのかもしれない。しかしエファも現状を知っていた。クリスティナに選択肢がなかったことも知っていた。
そしてEDでは二人の物語はハッピーエンドとまで言われていた。だというのにそれを今更蒸し返す必要があったのだろうか。
花梨がエファを意識して作られているのではないかというのは髪型や発売記念イラストのワンピースを見ればなんとなくわかる。
しかしエファである必要は決してなかったはず。少なくとも綺麗に終わっていたカタハネに泥を塗る必要は決してなかったはずだ。

ちなみに「ふたり」の方ではナツメが事故を知った理由、花梨とライカの話し合いの場に迎えなかった理由が明かされる。そこだけを見れば「ふたり」は後にやって正解だったかもしれない。
しかし問題はギンザがいなくなるというシーンにある。
ギンザがいなくなるのは11月22日。そのシーンは「ひとり」を含めても最も緊迫するシーン――のはずだった。
問題は11月22日という日。実は「ひとり」を先にプレイしていると11月25日にギンザの無事な声が聞こえてしまう。おかげで茶番でしかない。
「ふたり」では「ひとり」での真希理の結末には触れないでくれていたというのに先にプレイすることを推奨されていた「ひとり」に「ふたり」の盛り上がりシーンのネタバレをさせるのはどうだったのだろうか。
もちろんこれを除けば「ひとり」をプレイしたことによって終盤をネタバレされることはほとんどない。それでも山場の一つが盛り上がりに欠けるのは少々配慮が足りなかったと思われる。

しかしそれを除けば「ふたり」は優秀な作品であった。CGはもちろん、「ひとり」では終了するとフルスクリーンが解除されるというありがた迷惑システムが無く、シナリオも悪くなく、「おわりのクオリア」への布石も「ひとり」ほど酷くはなかった。
「ひとり」では不満だらだらのエロシーンもこちらはましになっていた。もちろんましなだけで、これからが本番というところでキングクリムゾンをされたが。
+ ...

強いて問題を上げるならば「ひとり」での真希理への対応で苛立たされたライカの登場回数くらいだろう。
全体的に淡々とシリアスに進んでいく作品に思えていたので意味のないノロケ話の水差し具合は中々酷いものであった。

まとめ
  • 財布を落としてしまい焦るという大切なシーンが次のシーンで解決済み
  • エロは本番無しに近い
  • 最後の最後に分割宣言
インパクトがあるのはその程度なので総合的に見るとはやり駄ゲーの領域を超えられていない作品である。
それは「おわりのクオリア」によってどちらかに化けるだろう。この作品には最後の超展開を除いても謎な部分が残っているからだ。
もちろん「おわりのクオリア」が良作であろうともこちらの作品は単体として決して良いわけではない。
しかし私はJ-MENT氏と笛氏のファンであるので「おわりのクオリア」にも期待させてもらうことにする。
クオリアの終わりにならないように待ち続けるつもりだ。

おまけ1
この視点変更の場所であるが、花梨とギンザに妙な線がある。
+ ...
imageプラグインエラー : ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (010.jpg)
最初はラフ画かと疑ったものだが、どうも同じものらしく、私には理解できなかった。
共に現れるのは最後のシーンのみなのでもしかしたら「おわりのクオリア」でその話も出る可能性がある。なんにせよ現状では意味がわからない。

おまけ2
デモムービーやリーフレットには花の中に花梨がいる、まるで棺に納められるかのような絵があるのだが、もちろんそんな描写は「ひとり」にも「ふたり」にも出ていない。
これは「命を懸けてかかってこい!」と言いたいのか、やはりこの作品はポケットモンスターを意識しているのかもしれない。

※注意
以下のコメントフォームは、誰でも好き勝手にコメントを残せるので、その程度のものだとお察しください。またここに何を書こうが本スレには無関係です。

過去のコメントはコチラ
最終更新:2014年09月29日 20:12