2013年度 総評案7修正版2

2013年総評案7 大賞:明日もこの部室(へや)で会いましょう

ネタスレであることが、クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(通称「KOTYe」)の本質。
2012年、ゲー無の極北『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』と、狂乱のネタゲー『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』による異種クソゲー決戦は、スレの在り方にまで議論が及ぶ大接戦の末に決着した。
終始話題を席巻したsofthouse-sealによる連覇の野望は、達成目前で新鋭スワンアイに阻止されたのである。
そして2013年。修羅の国における新陳代謝の激しさを噛み締めつつ、住人達は新たなクソゲー開拓の第一歩を踏み出してゆく。

その一歩目で、いきなりスレは爆心地となった。
前年の大賞争いも終わらぬ1月のうちにスワンアイが動き、『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』(通称『ずっぷ』)を一番槍として送り込んできたのである。
『SEX戦争』の血を色濃く受け継いだカオスな設定や展開は、理解しようとするのも馬鹿らしいレベルであった。
変身能力の入手経緯は最初から前回のあらすじ以下に圧縮されており、約10秒の話と「そして…僕は変身能力を手に入れたのだった。」で済まされる。
ヒロインのほぼ全員が彼氏持ちで、中にはセフレがいたり彼氏とのエロシーンがある者までいるが、例によって全員処女である。
電波出力が高すぎるエピソードも目白押しだ。
テーマは「コミュ症の主人公が彼氏に変身してヒロインを寝取る」だったはずが、ヒロイン達は騙されていたことを知った途端になぜかデレる。チョロインの集大成である。
偽のハメ撮り写真に変身して脅迫すれば、女生徒同士のハメ撮り自慢に発展。
ヒロインが失禁すれば、男子生徒が集団公開オ○ニーを開始。その罰は全員廊下に立ってオ○ニー。女教師は女生徒共々オカズに志願する。
もはや何が何だかわからないが、これらに大義名分を与え得る特異な舞台設定さえ用意されていないのだ。
挙句の果てに、抜きゲーの命たるエロシーンは、全編コピペの粗製乱造かつ尺が短い最凶のワンパターン。
「ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!」とピストンを重ねて「ああ…もう出そう」で射精するのをベースに、喘ぎ声を混ぜ込み、少量の会話と地の文で形を整えたらエロシーン3分間メイキングの完了だ。
毎回「ああ…もう出そう」とさりげなく射精タイミングを知らせたり、音声を使いまわして声優の負担を軽減する細やかな心配りが忌々しい。
個別ルートはこうしたエロシーンをわんこそばの如く繰り返すだけであり、ボディブローの連発さながらに腹筋を崩壊へと導く。
こうした全方位低品質と魔性のヘビーローテーションに洗脳される住人は後を絶たず、ずっぷの旗のもとに集う門徒を増やした本作は、確固たる支持基盤を獲得するに至った。

かくして歴史は繰り返す。
昨年の『くのいち』がそうであったように、開幕早々に名乗りを上げた規格外の怪物が、そのまま門番となって人外魔境に君臨したのである。

春の訪れとともに、ずっぷ教の専横許すまじと決起する者達が現れた。
余計なものを加えて台無しにする技術で結ばれた、チームによる波状攻撃の開始である。

先陣を切った『星彩のレゾナンス』は特定ルートに限れば名作百合ゲーと評されたが、別ルートに入ると急に頭の悪い文章になってしまう。アクション要素のバランスも大味で、ハメ技を使い続ければ楽勝だが、使わなければ無理ゲーである。
次に発車した『淫獄痴漢列車』は、メーカー同士のコラボ作品でありながら根幹の設定が他社の丸パクリ。つまらないミニゲームや、ターゲットの中に女装した男が密かに紛れている独自要素も誰得であった。
両作とも再プレイ時にはアクションパートをスキップできるため、一段と蛇足感が増す。

さらに、4月に入るとsofthouse-sealの『エルフと淫辱の森』が満を持して流れに乗じた。
sealといえば、まともなCGにゲーム性ならぬ芸無性を付加し、見事なまでにクソゲー化する手際で左に出るもののない強豪である。この状況を黙認するはずがない。
前年の次点『くのいち』の後継作だが、自機のアクションは半減、敵の遠隔攻撃がほぼ無くなってますます簡素になった。
攻撃システムは面倒な武器切替方式に改悪。しかしボス戦は被弾後の無敵時間にゴリ押しが最適解のため、そもそも切り替える必要がない虚しき親切設計である。
画面手前に配置された木や草がせっかくのミニアニメを隠してしまったり、陵辱イベントが敗北時ではなくステージ開始前に強制発生するなど、どこか的外れな印象も否めない。
とはいえ、エロCGやミニアニメ含む回想モードは備わったため、最終的には「いつものseal」の一言で片付けられた。

ならば真のアクションを見せてやると出撃したのが、FULLTIMEの3DガンSTG『UNDEROID -アンダロイド-』だ。
ゲームとして破綻をきたしてはいないものの、細かいツッコミどころが満載された「遊べてしまうクソゲー」である。
まず、ジャンプはできるが飛び越える物体が無く、雑魚が猪武者ばかりで対処法が慎重に各個撃破しかないなど、せっかく豊富なアクションに使い所が少ない。
被弾による脱衣もあるがバランスが悪く、休憩を挟まないと全裸どころか上着が脱げるより先に命が尽きてしまう。
また、CGにも違和感が顔を出している。
ヒロインの口元は今にも光線を吐きそうに怪しく光り、髪・怪物の長い舌・チ○コモザイク・その他諸々は胴体を貫通し、足を挫くと股関節がバルーンアート級に捻れるのである。
ほかにも説明不足に伏線放置、会話はテンポもセンスも悪いが読み飛ばし不可、テキストとCGの不整合、不自然さの際立つリピート映像など、気になり始めると止まらない。
個々のクソ要素はスライム級でも、合体すればキングを目指せることを本作は示してくれた。

梅雨入りを迎える頃、想定外の変調をきたした者がいた。
堅実な作品で一定の評価を得ていたはずのEx-iTが、『逃避行GAME』(通称『逃避行』)を投入してまさかの進撃を開始したのだ。
2連続となるマスターアップ宣言後の延期は稀有な失態だが、中身に比べれば前座であった。
起動と同時にプレイヤーを出向かえるのは、「START」「LOAD」「END」の3種というファミコン並みの項目数を誇るタイトル画面。
本編に入ると、一部ボイスの非再生、背景の暗転、特定のルートに入れないなど多種多様なバグが乱舞する。
とりわけ輝いたのは、モブの台詞がすべて「イラッシャイマセー」と女性の声で再生されるバグだ。
モブは「イラッシャイマセー」の応酬だけで会話。
テキストは「ありがとうございました」なのに音声は「イラッシャイマセー」
いかつい殺し屋があらゆる意志を「イラッシャイマセー」で表現しているとき、地の文で「互いに互いの言葉を押し付けているだけ。これは会話ではなかった。」と真理が示される。
など、デバッグ能力皆無の烙印と引き換えに笑いの死に花を咲かせる悲壮な自爆技に、住人達は喝采を惜しまなかった。
「イラッシャイマセー」は「ずっぷ」と並ぶ流行語として定着し、本作の代名詞になっただけでなく、マスコット的なAAまで誕生して親しまれた。
だが問題はバグだけではない。
シナリオには、ヒロインとの昔の思い出を主人公が最後まで忘れっぱなしといった伏線の未回収が散見され、当初の予定から場面を削った形跡とも見て取れる。
さらにメーカーの対応も不誠実を極めた。
延期理由は特典の不具合だったはずが、蓋を開けてみれば本編もバグまみれ。
特典内容はシーン回想へのヒロイン視点追加だが、本編に回想が無いため機能しない。
その後もパッチ配布の告知と延期を何度も繰り返した末、ようやく改善されたときには発売から2ヶ月が経過していたのである。
一連の騒動はメーカーのリアル逃避行が疑われるまでに発展し、今後に大きな不安の影がよぎるのであった。

次いでKOTYeの舞台に躍り出たのがShelfから発売された『Qualiaffordance-クオリアフォーダンス-』だ。
全編アニメーションがウリなのだが、肝心のエロシーンはムービーとして収録されており、前戯から通して見るか全部スキップして終了するかの2択なので非常に不便である。
作画崩壊や低画質との相乗効果で、とても実用に足るものではない。
さらに本作は一見ありふれた学園萌えゲーだが、個別ルートに入った途端、隠蔽されていたヒロインの裏の顔が判明してしまう。
世話焼き幼なじみは、友人の仇を探すため売春斡旋をしているスーパーハッカー。
小動物系ロリは金で暗殺を請け負う凄腕のスナイパー。
高飛車巨乳は悪徳宗教団体の傀儡教祖。
ヒロインが自ら化けの皮を剥がし、それをあっさり受け入れた主人公と中二妄想級の大活劇を始められては悶絶必至である。
ならばと唯一本人に隠し事のない義妹ルートに救いを求めても、待っているのは姉が正気を失っていることが発覚する鬱展開。逃げ場は無い。
褒めどころは、ツッコミ練習用教材としては非常に有用なことくらいであった。

夏の盛りには、高らかに鳴り響く行進曲の調べに合わせて声なき雌獅子が盛り始めた。
MBS Truth -Cherish Pink-の『クラス全員マヂでゆり?!~私達のレズおっぱいは貴女のモノ・女子全員潮吹き計画~』(通称『マヂゆり』)は、タイトルから察せられる通り、おバカなノリの百合抜きゲーである。
希少な百合ハーレムものとして秀でたところもあるが、主人公とボイス量に問題を有していた。
主人公の中身はほとんど変質者のオッサンであり、見た目が美少女でもキモさは相殺しきれていない。
百合ゲーなのに主人公ボイス無しの不満を「キモいから無くても良いや」と霧散させる発想は斬新と言えよう。だがTPOをわきまえずエロ妄想を炸裂させ、ヒロインのボイス量まで圧迫するのはやりすぎだ。
日常シーンでは、主人公が隠密変態単独行で覗き・盗撮・服泥棒を楽しむだけで会話が全く無い場面が目につく。
あろうことかエロシーンにおいても傾向は変わらない。主人公が「雌ライオン」と呼ぶ己のリビドーを荒ぶらせ、顕著なところでは数十クリックも入念にエロ独白を続けるのだ。妙に壮大なBGMと組み合わさり、雰囲気はぶち壊しである。
度々挿入される無音声幕間劇など、ボイスの少なさを工夫で補う努力の跡は見られるものの、皮肉にもそれが喋らない印象を強めてしまった。
余談ではあるが、誤クリックしやすい位置にある「NEXT」機能は、未読であっても次の選択肢まで強制スキップしゲーム終了以外に中断方法がない。この百合ゲーにあるまじき漢仕様も批判の対象となった。

秋から冬にかけては、数々の有名ブランドが意表をついて大攻勢に転じた。
信頼と実績を金に変える現代の錬金術士達がばら撒いた大型地雷群は、哀れな爆死者の数を急激に増やしていくことになる。

Lassの『少女神域∽少女天獄』は、冗長な観光案内と設定説明の中にわずかな伏線をばら撒き、それを砂金採りの如く収集させてから投げ捨てる鬼畜の所業を見せつけた。
構成はいわゆる金太郎飴で、どのルートでもヒロインがすげ変わるだけで展開は代わり映えしない。行き着く先も、ヒントすらろくに与えないままのちゃぶ台返しフィナーレで統一されている。
「情報量を減らして主要人物は殺しておけば、あとは勝手に深読みしてくれる」とでも言わんばかりの、杜撰な作風が支持されるはずもない。買取価格が一時100円にまで下落した事実が本作の業の深さを端的に示している。

SAGA PLANETSの『カルマルカ*サークル』は、支離滅裂な設定・説明不足・ご都合主義の合わせ技でプレイヤーの精神を蝕んだ。
ストーリー展開の都合で設定を頻繁に付け外ししており、シナリオが不整合の嵐となるのも必然である。
七つの大罪をモチーフにした「カルマルカ」という超常現象にまつわる設定が物語の主軸であったはずが、ルートによっては忘れ去られた挙句に自然消滅。
その代わり、分岐ごとに新設定を追加して超展開が繰り広げられるのだ。
例えば、追手から自分を逃がすために瀕死の重傷を負った主人公に対し、ヒロインが永遠の愛を誓いつつ置き去りにして去る場面は、プレイヤーにシュールな苦笑いを提供した。
またルートごとに至る所で設定が食い違っており、説明不足も重なってどれが真実かわからない。
開かずの間は、あっさり開く。
条件付きで怪力を発揮する主人公は、無条件で小石を圧砕。
父親に束縛されているヒロインは、父親から関心を持たれていない。
カルマルカに執着していたヒロインが、「カルマルカなんてどうでもよくね?」
これらがほんの一例にすぎないほど、矛盾は縦横無尽に散らばっているのである。そして、整合性がとれているわずかな箇所は純粋につまらない。
こうして、シナリオ担当を7人も揃える人海戦術は弊害のみが際立つ結果を招いた。大罪を背負いし七人の罪人とは彼らのことだったのだろうか。
選評者によって「笑いどころのないチャージマン研」と斬って捨てられたシナリオはプレイヤーの憤怒を呼び起こしたが、それに反して本作のテーマは「ハッピー&スマイル!」である。
あまりのギャップが受けてこのフレーズもスレの常套句に加わり、AAも交えて怒れる者達をなだめる役割を担ってゆくのであった。

無慈悲な蹂躙はまだ終わらない。
戯画の『バルドスカイゼロ』は、制作陣を一新した影響で前作とはあまりにも毛色が異なる。タイトルを継承していながら、どこもかしこも劣化。シナリオ・アクションともに手探りの域を出ない試作品状態で発売されてしまった。
遠回しで冗長な会話や、続投キャラへの心ない挑発はプレイヤーの神経を逆撫でする。
アクションも、醍醐味であったはずのコンボの概念が消滅するなど完全に別物である。
しまいには謎を大量に残したまま終了して続編の制作を発表。事前告知が一切ないどころか、単体で完結しているかのように匂わせておいて、実際は事実上の分割商法だったのだ。
これでは、未完成の習作で儲けるために、傑作の名を冠してシリーズファンを騙したと言われても仕方がない。
もっとも不満点の多くは前作からの極端な落差に起因しており、先入観を持たない新規層にはある程度許容された。
前作への思い入れが強いほどハリウッド映画版ドラゴンボールと同種のコレジャナイ感が増大する本作は、ファン殲滅用の指向性戯画マインとして猛威を振るったのである。

ALcot ハニカムの『赤さんと吸血鬼。』は、好きになる過程の薄っぺらさと雑なダイジェスト並みのぶつ切り展開を兼ね備えた、キングクリムゾンシミュレータであった。
次々と脈絡なく股を開いていくヒロイン達と、日常シーンの合間に突然おっぱじめる構成は「エロシーンによる頻繁な奇襲」と評されている。
「夜の寮で委員長と停電ハプニング中に、突然昼の学園屋上にワープしたと思ったら、仲良くなった覚えのないメイドが尻を突き出してくぱぁ」という大転換を3クリックの間にやってのける「停電くぱぁ」はその筆頭であり、プレイヤーの頭上に特大のクエスチョンマークを点灯させた。

そしてブランドの個性を過剰に発揮した問題作が、ニトロプラスの『君と彼女と彼女の恋。』である。
ストレス要因を多く抱えており、ゲームの強制終了、セーブデータの消去、一部でセーブ・ロード不可、ランダムQ&Aを全問正解するまで無限ループ、特定ルートに入れなくなる、回想モードの部分消去、純愛を謳いながらNTR、と種類も豊富だ。
しかしこれらは意図的な演出であり、そうまでして敢行したメタ一発芸のメッセージ性を絶賛する声もあった。
あまりにクセが強いため賛否両論が激しく噴出した、クソゲーならぬ「くさやゲー」とでも呼ぶべきか。

また、シナリオを断捨離しすぎてタイトルが意味深な『ナイものねだりはもうお姉妹』や、現代劇風トンデモ経済ファンタジー『お嬢様はご機嫌ナナメ』が出陣したのもこの時期である。

これらに前後して、お約束を無視するタイプの地雷発見報告も挙がった。
『モテすぎて修羅場なオレ』は、4股状態から1人を選ぶと、残り全員が引き下がって修羅場にならないタイトル詐欺。公式サイトでもクズ呼ばわりされている主人公は本当に真性のクズで、不快感をプレイヤーにもたらした。
『ノブレスオブルージュ』は女装+双子入れ替わりがテーマにもかかわらず、エロシーンで主人公をのっぺらぼうにして女装モノの強みを自ら殺し、ヒロインに惚れた途端に後先考えず正体をばらして公認カップルになるなど、入れ替わりモノの仁義もわきまえていない。
シチュエーションの不文律を理解せずに既存品の上っ面をなぞっているだけでは、クソゲーとの誹りを免れまい。

逆にテーマを極めすぎたのが、スワン系列の黒鳥から発売された『雨音スイッチ~やまない雨と病んだ彼女そして俺~』だ。
副題からヤンデレものと勘違いしそうになるが、本作にデレはない。
ヒロインは「主人公の母の葬式にウェディングドレス姿で乱入し、遺影にブーケトスして結婚式の開始を宣言する」ような、徹頭徹尾病みオンリーの狂人である。
制作者のこだわりも狂い気味で、Hシーンを差し置いて陰湿な暴力やリストカットの場面がアニメで表現されているだけでなく、何を思ったのか回想まで可能。
さらにパケ絵詐欺も完備しており、外箱とサンプル以外で露骨にデッサンが狂っている。
メンヘラものとして光る部分もあるが、包括的狂気仕様が限度を超えてギャグの域に到達したことで、めでたくKOTYeへの参戦資格を手にしたのだった。

こうして本格的な冬に差し掛かる頃には粒揃いのクソゲーが揃い踏みしたが、スレには漠然とした不作感が蔓延していた。
金城鉄壁の門番『ずっぷ』の威容と比べると、並のクソゲーは小粒に見えてしまうからである。
しかし、安々と奈落へのポールトゥウィンを許すほど修羅の国は甘くない。
1年を通して新鮮な怪物や魔物が湧いて出る暗黒領域においても、格別に瘴気の濃い逢魔が刻はこれからやって来るのだから。

そして、年末の魔物は現れたのである。

その魔物は、ド年末の瘴気を浴びて深化を遂げたEx-iTから送り出された。
またもマスターアップ後に発売を延期し、3連続の記録達成とともに世に出たのが『雛といっしょ』(通称『雛遺書』)である。
前作『逃避行』の件もあり、発売前から嫌な予感は渦巻いていたが、はたしてそれは現実となった。
パッケージからしてくたくたという先制パンチに耐え、開封するとまず目に入るのがお詫び状。そこには、不具合によりプロローグ終了後すぐにゲームが進行不可能になってしまう旨が記載されていたのである。
前作は予約特典が機能せずフリスビーと揶揄されたが、同じことを今度は本編でやってのけた本作は「ゲー無」ですらない「 ー 」(横から見たフリスビー)の称号を獲得した。
完全な欠陥品と知りながらの発売強行に「新たな伝説の幕開けか!?」とスレは一時騒然。またしてもリアル逃避行GAMEの開始が懸念された。
メーカー対応は「電気街祭りを優先」「原因がわからない」「ミラーサイトの担当者が不在」「大雪の影響」といった小学生並みの釈明とパッチの公開延期を繰り返すお粗末さで、かえって火に油を注ぐ結果となる。
七転八倒の末に配布されたパッチからは、解析班によって追加データの痕跡が発見され、未完成品である事実を隠蔽するために不具合を装った疑惑まで浮上。
だが概ね明かされた中身はただ薄いだけでネタ性も無かったため、ようやく騒ぎは収まった。
延期して低完成度という露骨な年末の風情が感じられる本作は、血統書付きの魔物であったと言えよう。
その後、お詫びパッチと称してデータを追加するも全ルートの開放の見通しは立たず、代金全額前払いのデアゴス○ィーニ的な独特の未完成商法が確立されつつあるようだ。
かくしてEx-iTは、「逃避行」から「遺書」へと繋ぐ不吉コンボで負のキャリアを積み重ね、一躍汚名を轟かせたのである。

雛遺書の乱が落ち着いたのも束の間、気を緩めていた住人達を未曾有の波乱が待ち受けていた。
年末の魔物を踏み台にして成り上がらんとばかりに、息を潜めて機をうかがっていたクソゲー共が一斉蜂起したのである。その中には、かつての王や遅れてきた怪物の姿もあった。
年末ですら、始まりにすぎなかったのだ。
例年なら予備期間でしかない1月はまさかの主戦場となり、大混戦のバトルロイヤルが勃発。『ずっぷ』に対抗できる真の強者を選定するかの如く、激しさを増していくのであった。

その中でひときわ異彩を放ったのが、あのアーベルの姉妹ブランドRed Labelの『JK辱処女~純粋な心の持ち主ほど処女を好むという法則~』(通称『枝豆』)である。
2011年の大賞獲得を最後に姿を消した悪名高き王は滅んでいなかったのだ。
起動するとロゴ表示よりも早くヒロインの嬌声が響き、本編では主人公と出会う場面よりも前に2人のエロシーンが存在するなど、冒頭から時系列がおかしい。
また主人公はJKを孕ませ実娘もいずれ犯そうとする不純な人物であり、「純粋な変態」とでも解釈しなければ副題と完全に矛盾する有様である。
CG差分の少なさは相変わらずで、テキストでは徐々に脱がせていく場面でも、画面には半裸で横たわり微動だにしないヒロインが表示され続けるのみ。
そんな中で豊富な差分が用意され好待遇なのが、なぜか「枝豆」なのである。
クリ○リスの隠喩としてエロシーンの真っ最中にでかでかと表示される形で初登場。その後も色を変えたり、腕の代わりに注射されたり、主人公のイチモツ代わりに汁気を帯びたりと、異次元のセンスをたぎらせ活躍の場を広げていくのだ。そのシュールな絵面はスレを笑いで激震させ、瞬く間に本作そのものの象徴として認識された。
矛盾系AAを元に作られた枝豆AAが少しも矛盾していないことが、本作における枝豆の万能性を表している。
豆の力で周囲の鬼に立ち向かった本作は、古豪の復活を告げる号砲となるのか。今後に注目したい。

泥沼の戦いは混迷の度合いを深めていく。
『マヂゆり』の姉妹作にあたる『聖ブリュンヒルデ学園少女騎士団と純白のパンティ』は、ヒロインの反応に単発の「!?」や「……」を多用する新機軸のボイス抑制技を引っさげて参戦。全社的なコスト削減意識の高さを存分に見せつけた。
『妹*シスター -My sister-』は、「主人公の部室」「いい肉な妹日」など、エキサイト翻訳以下の滑稽な日本語で脚光を浴びた。しかし義妹を実の妹と詐称して実妹好きを怒らせ、ほかのヒロインは義妹ですらないため妹ゲーとは言い難い。

少々出遅れた年末生まれ、GLaceの『Timepiece Ensemble』も立ち上がった。
バタバタ延期、ギリギリ年内。典型的な魔物生産ラインから排出された結果は、案の定である。
シナリオは、ほぼ教室だけの狭すぎる舞台で単調な話が延々続く罰ゲーム、のち時々超展開。
タイトル画面が無い演出や過去作からの謎キャラ続投も、不便さやモヤッと感が先に立っては制作者の自己満足だ。
またテキスト・立ち絵・一枚絵の間に不整合が多く、時には同じ場面で衣装が瞬時に切り替わるゲリラ手品まで見られる。
納期に追われ突貫作業ででっち上げた、年末産特有の異臭が香り立つ完成度であった。

そして終盤には3Dゲー三連星が相次いで登場し、華麗なる3者凡退を決める。

『プレミアムプレイ ~ダークネス~』はキャラのカスタマイズ性こそ評価されたが、それ以外は総崩れだった。
ストーリーは睡眠導入剤代わりに使えそうなほど退屈で、全9パターンの内容が酷似しているため冗長さも9倍である。
Hフリーモードは「アアッアッアッアッあっははおもしれーなー」「おほぉおおおぉイイノッモノスゴクタノシーワー」など、繋ぎ・抑揚・内容のトリプル違和感ボイスが10秒足らずでループするマインドブラスト仕様だ。

『3D少女カスタムエボリューション』は2008年に発売された『3Dカスタム少女』の後継作だが、前作の命綱であった有志による豊富な独自開発データが一切流用できない。
そのくせ、追加されたのは劣悪な操作性でゴーストタウンを彷徨う箱庭要素のみ。
ピストン毎にボイスがリピート再生されて「気持ちいい」が「キモッキモッキモッキモッ」になる笑いどころも修正された今となっては、前作の純劣化版と言っても過言ではない。

『いたずら学園』は、リアルタイム痴漢シミュレーターを謳っていながら痴漢要素ゼロ。
モブがいてもお互いに無視を決め込み、電車・バスや教室など場所がどこだろうと隠す気のない堂々たる性行為を痴漢とは呼ぶまい。
ほかにも、ランダムすぎて支離滅裂な会話、寝ているヒロインによる睡姦ならぬ夢遊病ご奉仕、車窓の風景が書割、絶頂時にヒロインの頭が消えるバグで畳み掛けてプレイヤーを困惑させ、まともなのは制服カスタムのみであった。

こうした激しい闘争の真っ最中に、夏から眠り続けていた不発弾が発掘された。
ミルクプリンの『明日もこの部室(へや)で会いましょう』(通称『部室』)である。
公式サイトのブランド名ミスや少なすぎるサンプルCGから漂うやる気の無さから、ありきたりな駄作に違いないとスルーされっぱなしだったのだ。
しかし気まぐれに爆破処理が行われた結果、実はゾンビウイルスを内包した未知の細菌兵器だと発覚する。
第一報の着弾後まもなくパンデミックが発生し、情報不足も重なってスレが狂騒の坩堝と化していく中、緊急出動した対策班によって解明された全容は想像を絶していた。
タイトルバーに早速の誤植、クイックセーブ&ロードやバックログの一括表示さえ出来ない化石UI、スキップ開始のタイミング次第で延々とこだまするBGV、全商品エロゲにしか見えないカメラ屋の背景くらいはまだ序の口。
公式サイトにある人物設定の大半が、本編に反映されていないエア設定か矛盾している嘘設定である。主人公の名前からして間違っていては申し開きの余地もない。
システムはヒロイン選択式だが、基本に徹して同じヒロインを選び続けると共通バッドエンドに直行する理不尽仕様だ。
原因は、見ただけで密かにフラグを折られる罠イベントである。ヒロインがモブ男と一緒にいるのを目撃するだけの地味な内容で、発生しても以降の展開には何の変化もない。
唯一の例外が、親睦を深めたはずのヒロインに最後の最後で手の平を返されて振られることなのだ。
これではバッドエンドになる理由に気付くのが困難で、打開するまで繰り返し見せられる結末が主人公の身投げであることも相まってプレイヤーを苦しめた。
シナリオはドラマ性皆無の共通ルートが大半を占めており、寒いパロディが空気を読まずにエロシーンまでも侵食している始末。
また、写真部存続のために部員達が写真展か学園祭での入賞を目指すところから始まっていながら、それらの本番の様子は最後まで少しも描かれない。起承転結を完全無視する0クリック学園祭という新境地を拓いた。
代わりに何が描かれているかというと、奥手なはずの主人公が序盤であっけなく女子部員と打ち解け、学園内でエロ妄想を声に出して垂れ流せるほどに成長し、ついには裸族のDNAを覚醒させて解脱する物語である。
個別ルートに突入するなり部活動そっちのけで性交に耽り始め、あっという間に月日は流れてエンディング。これが本作の基本パターンだ。ただし、サル化してすぐ後日談に飛ぶためエロは薄くCGも少ない。
主人公の成長はメインヒロインルートで特に著しく、卒業後に2人して山奥の洋館での隠遁生活を始め、一切外出せず常に全裸で累計2年もSEX三昧の日々を送っている。この時点ですでにプレイヤーを置き去りにする瞬発力を発揮しているが、さらにあさっての方向へ離陸してしまう。
引きこもっている間に細菌テロが発生し、街がラクーンシティ状態に陥っていることがさらっと明かされるのだ。もちろん前振りは何も無い。
そして、それでもなぜか招待状が届いた学園祭に参加するべく街へ出ようとする場面で、
「――果たして、無事に明日、部室で会えるかどうかは、誰にも分からない」
と、無理やりタイトルに繋げる圧倒的な力技によって本作は幕を下ろすのである。
この「裸族ニートからのバイオハザードエンド」は常人の理解力ヒューズを一発で飛ばし、初見の誰もが茫然自失となった。
果ては主人公の名前を100文字以上に設定できるバグまで発見され、メッセージウィンドウいっぱいに独自の台詞やAAまでも表示可能なネタツールとしても開花する。
まさに至れり尽くせりの充実度であり、スレは新たな大賞級の降臨に熱狂したのであった。

以上、主要なエントリー作品の紹介を終えたところで2013年の結果発表に移ろう。
次点は、
『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』
『逃避行GAME』
『Qualiaffordance-クオリアフォーダンス-』
『JK辱処女~純粋な心の持ち主ほど処女を好むという法則~』
そして大賞は、
『明日もこの部室(へや)で会いましょう』
とする。

今年のKOTYeは12の月からクソゲーが名乗りを上げ、全月制覇が達成されたほどの大豊作となった。個性とネタ性に富んだ骨太なクソゲーが跋扈し、群雄割拠の様相を呈したのである。
それでも、大賞と、次点のうち1つはあっさりと確定した。
『部室』と『ずっぷ』がほかを完全に凌駕していることは、確かな実感として住人達の胸に刻まれていたからである。

その理由は、両作がものの見事にスレの本旨に沿っているためだ。
まず「その年でいちばんクソだったエロゲーを決める祭典」であるからには、絶対的な品質の低さが大前提となる。
その点、両作はエロゲーの中核であるシナリオとエロに単調・薄い・電波の大三元を抱えており、バグやメーカー対応の悪さといったドラに頼らずとも、クソゲーとしての基本点は確固として高く揺るぎない。
さらにそれらが1周して笑いに繋がってるだけでなく、常套句の汎用性や名前バグの応用力の高さは、住人によって活用されてさらなる笑いへと進化した。
もうひとつの趣旨である「クソゲーを掴んでしまった怒りや哀しみを笑いへと昇華する」にも合致しているのだ。
ただし、類似点の多い両作は一部で方向性を異にしている。
『ずっぷ』は薄さと単調さを中核に据えており、ループによる中毒性や電波出力は相当なものだが、比較的狭い範囲に収束してしまった印象は拭い切れない。
対して『部室』は、理不尽・物語の放棄・化石UI・誤植・設定詐欺まで備えた横の広がりに、それらが織り成すクソ要素の深い谷、ネタ性が突き出した高い山による縦の広がりをも併せ持つ。
この「クソゲーとしての雄大さ」が、両雄の勝敗を決定づけた。
クソさと笑いの大パノラマを内包している『部室』は、まさしくKOTYeを体現した存在である。
おまけに名も無き修羅の立場で歴代の王者達を圧倒し、修羅の国の底知れなさをも示してみせた。
その功績と栄誉に報いるには、大賞の授与をもってするしかあるまい。

続いて事実上の3位決定戦には、相手が悪く大賞こそ逃したが実力は確かな者達が群れ集った。
『少女神域』と『カルマルカ』は問題の多いシナリオを主砲に据えて奮闘したし、『クオリア』『マヂゆり』『赤さん』はそれなりにクソ要素とネタ性を兼ね備えている。
『枝豆』や『雨音』は、ズレたことを大真面目にやる面白さがスレと好相性で、そこが特に評価された。ただ、広義のクソゲーではあるが愛すべきバカゲー寄りであり、クソ要素にガッツが足りない。
また、『バルドスカイゼロ』のファンに対する裏切り行為の数々や、『逃避行』『雛遺書』のバグ(に見せかけた未完成商法)とその後の対応に代表される企業倫理の低下は、確かに目に余る非道さであった。しかしクソゲーというよりはクソメーカーであり、スレの本旨とは齟齬があることも否めない。
個々のクソ要素とネタ性、盤外戦であるバグやメーカーの言動をどう評価するか。
それ次第で勝者がたちまち入れ替わる大接戦と言えよう。

問題は何を基準に線引きを行うかだが、あえて「笑い」とする。
今年の主な特徴は、「見栄えだけ取り繕って中身がおざなり」な傾向が顕著になったことであった。
粗製濫造されたクソゲーに笑いが芽吹くことは稀である。当然の成り行きとして、どうにも笑えないクソゲーが数多く排出されてしまった。
思い返せば、一時期スレに蔓延した不作感は、笑いに対する飢餓感でもあったのではないだろうか。
ゆえに、笑えるクソゲーは歓喜をもって迎えられたのである。
自分だけでなく、笑えないクソゲーの業までをも、まとめて水に流そうとする笑いを内に秘めているからだ。
大賞『部室』は年末年始の大乱戦の中心で、早々に次点入りを決めた『ずっぷ』は門番としてほぼ1年を通して、それぞれの役目を見事に果たしてくれた。
『逃避行』のイラッシャイマセーバグは、修正後も色褪せないインパクトのある笑いをもたらした。
『クオリア』の超展開乱舞は、中二病的な痛面白さを随所に備えていた。
『枝豆』の枝豆差分は、全力であさっての方向に突き抜ける奇抜な笑いを提供した。
暗く淀みかけた雰囲気を吹き飛ばし、心を潤してくれたのである。
よって残る次点も、笑えるクソゲーに感謝を込めて贈る。

スワンアイの君臨、sealの衰退、アーベル復権の兆し、様々な新勢力の台頭、そして大賞をさらっていったダークホース。
今年もまた、入れ替わりが激しく先の見えない大荒れの1年となった。
歴戦のシットメーカー達はすでに次弾の発射に向けて動き始めており、激動の時代が続くことを予感させている。
ただでさえ、クソゲーを批評するからには否定的な論調になるのは必然であり、やむをえない。
しかし、だからこそ笑いに繋げることが理念とされているのだ。
この姿勢は、徹底的な検証が難しいエロゲでクソさ競争に特化するリスクへの対応でもある。
クソゲーカーストで最上位ではなくとも、笑いに昇華できそうな作品は積極的に歓迎して話題にする。本家とは異なる路線だが、こうした独自の柔軟性が生み出すエンターテイメントによって、負の感情を払拭せんとすることもまた、ネタスレとしての健全な在り方であろう。
「ネタスレだから」を免罪符に気に入らないものを罵倒するだけでは、否定自体が目的となって公開処刑ごっこに堕しかねない。
無と負がはびこる不毛のクソゲーにさえ、見た者に興味をも覚えさせる笑いを花開かせて「ネタスレだから」と胸を張る。KOTYeはそんな紳士の集う社交場であり続けたい。

最後に、クソゲーを掴んだ怒りや哀しみにとらわれたとき思い出してほしい言葉を、KOTYe2013の結びとして贈ろう。

「――果たして、無事に明日、クソゲーに克てるかどうかは、誰にも分からない。
 それなら、この場所(スレ)で会いましょう。」