2011年 総評案10

2011総評案10 大賞:ゾンビの同級生はプリンセス~不死人ディテクティブ~


クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 28本目
606 名前: 総評10 ◆AjDaHtCCRBNV [sage]: 2012/02/15(水) 23:33:46.93 ID:G+B/Wuxp0
2010年のクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYiE)は「驚嘆」の年であったと言えよう。
『色に出でにけり わが恋は』の襲来……。
それは、萌えゲーの安心ブランドとして親しまれていた「ういんどみる」が突如殺人ピエロと化し、
虚を突かれた信徒達の阿鼻叫喚がこだまする悲しい事件であった。
本家KOTYから「修羅の国」と畏れられる暗黒大陸においては、文字通り「一寸先は闇」なのである。
地雷の埋まったこの大地で、明日をも知れぬ一歩を力強く踏み抜いていく覚悟が新たに試されたのであった。

2011年、戦いの火蓋が切って落とされたのは1月28日のことだった。
ミュスカデによる、『令嬢の秘蜜』(通称『秘蜜』)の登場である。
前年エントリー作『熟処女』のBGMを名前を変えて流用していることからも推して知れるが、この2作は制作スタッフが共通している。
「熟処女」と言えば、他ゲーからのシナリオコピペや、「ひっかかか(中略)うふっ テイクツー」などのNGボイス混入が記憶に新しいが、
ハーフプライスでも許容されなかった前作の惨状を、フルプライスの本作が軽く凌駕するとは誰が予想できただろうか。
内容は「紅茶」と「媚薬」以外の要素が皆無であり、1日目はヒロインが紅茶に媚薬を盛ってH、2日目はヒロインの母親が紅茶に媚薬を盛ってH、
3日目はヒロインの姉が(以下同文)……と、ドリフのオチよりも安心安定のワンパターンな展開が以下延々と続く。
抜きゲーとしても失格であり、Hシーンの音声には「胸だけで満足なの(プツッ)それで(プツッ)よっ!」などのNGボイスが混入。
CGの差分は少ないどころか1枚もなく、テキストでは挿入前の段階なのにCGでは全力で暴発。もはや早漏どころの騒ぎではない。
ともあれ、リアルテイクツーに失敗してしまったスタッフ達の今後の去就に、好事家達の期待が集まることとなった。

二番手を務めたのは、シルエットによって2月25日に発売された『コイ★カツ』である。
まずプレイヤーを歓迎するのは、DVD-ROMにも関わらず686MBというコンパクトさであるが、それを可能にしたのは驚愕の「収納術」だ。
本作では極限の圧縮に挑戦した結果、「一回のHシーンで二通りのシチュが楽しめる」新機軸が打ち出されており、
「CGでは白タイツ、文章では黒タイツ」、「CGでは半脱ぎ、文章では全裸」など、CGと文章を完全分離しているのである。
その収納精神はシナリオ全体にも遺憾なく発揮されており、表題にある「コイカツ(恋愛活動)」からは曖昧な恋愛要素を徹底排除。
「恋愛に憧れるお嬢様サークル」のはずが、初対面からわずか数日でキス、手コキ、本番と流れ作業の如く移行するSEX集団として描かれている。
全方面に隙のない低品質ぶりで見事「クソゲーの優等生」的地位を獲得した本作であったが、それを尻目にメーカーは失踪してしまった。

こうして幸先の良いスタートを切ったKOTYiEであったが、春の訪れに向けてさらに様々な作品が彩ることとなる。
バトル+ADVを名乗りながら3回しかバトルが無い上、その全てが作業系運ゲーという『ろーるぷれいんぐがーる!!』、
主人公が限度を超えてキモ鬱陶しく、「バグ以上に、テキスト自体がバグ」と評された『とらぶる@すぱいらる』などが順当に名を連ね、
製作者が実妹萌えのプレイヤーを煽って炎上した話題作として『White -blanche comme la lune-』の選評も届いた。
そして、スレが温まった3月の終わりに、年度末に合わせてやってきた特大級のクソゲーが門を叩くこととなる。

それが、TEATIMEによる『修羅恋~SeeYouLover~』である。同ブランドは『らぶデス』シリーズなどの3D作品で知られている。
本作のコンセプトは、「自分を奪い合う女の子達がマジ喧嘩する様子を見ながらハラハラドキドキ!?」という塩梅であるが、
その口喧嘩たるや「不潔女」、「メスゴリラ」などの小学生並の語彙が飛び交い、それすら数種類で枯渇する無限ループ仕様。
取っ組み合いでは踵落としやサマーソルトのような大技も見られるが、発泡スチロールで出来たマネキンのような重量感のない動作である。
その間、主人公の出来ることはといえばどちらかの女の子を「応援」するか「両方をなだめる」のみで、延々と茶番を見せられる。
シナリオは金箔を超える「薄さ」の限界に挑戦しており、女の子との会話はBotさながらに数個の持ちネタを繰り返されるのみ。
肝心のエロはというと、本番の体位が3種類しかなく、エレキバンにしか見えない残念乳首も哀愁を誘う。
絶頂時に水洗トイレの効果音を流す不可解なセンスと相まって、TEATIME本スレのファンも会社内情に多大な心配を寄せる事態となった。

続いて、桜の季節の訪れとともに現れたのが『勇者と彼女に花束を』である。
開発元のKLEINは何度やっても学習しない「駄目な子」として知られており、今回も生暖かい目で見守られていた。
いざ発売されると、誤字の嵐、唐突なエラー落ち、BGM消失現象にボイス音量が極小、と大方の予想通りの惨状であったが、
何よりも選択肢の無限ループと進行不能のバグのためパッチが必須となる。
だが、適用後にヒロインの一人が「グレイ(ギョロ目で頭でっかちの宇宙人)」になる驚きの展開には、さしものスレ住民も瞠目することとなった。
シナリオは伏線を張った直後に「それから数日後」で即回収するダイジェスト風味で、設定を読めばその時点で予想が付く代物。
全てが低品質ながらも尖ったところのない「凡打」として扱いが微妙であった本作であったが、
「体験版に修正パッチを当てると最後までプレイ可能」というまさかの大チョンボが発覚し、一躍愛されキャラとしての地位を確立した。

同時期に出たPurplesoftware delightの『PrimaryStep』もまた、「やっぱり駄目な子だなぁ」と思わせる作品であった。
前回、『Orange Memories』でデビュー作がエントリーという不名誉を達成した同ブランドであるが、
今回は「全5キャラ中1キャラしか攻略できない」という前代未聞のバグを入れたまま発売してしまったのである。
ネットがない状況では「8800円で1キャラ、CG15枚のみ」の純然たるぼったくりであるが、公式サイトでは一言触れるのみ。
ファイルを見るとCGが増えていたという報告もあり、「未完成を隠すためにわざとルートを塞いだのでは?」との邪推もあった。
そのCGの枚数もフルプライスを感じさせない少なさで、騎乗位のHシーンで主人公が2m級の巨人化を遂げるなど品質も若干怪しい。
内容はと言えば、四時間経過を「短針が四周」と表現する斬新な筆力によって紡がれるシナリオは「駄文」の一言に尽き、
体調を崩すくらいに面白くない展開が延々と続く中、笑いどころといえばHシーン中にある「俺の膣内から」という誤字しかない。
その破壊力はライターのペンネームにあやかって「tiroフィナーレ」のフレーズで親しまれた。

こうして怒涛の上半期を終えようとしていたKOTYiEスレであったが、それまで以上の大異変が5/27日に訪れることとなる。
その日発売の作品が実に、5作連続でエントリーする異常な事態が起こったのである。

その先陣を切ったのが、softhouse-sealの『変態勇者の中出し英雄記』だ。
2000円ほどの低価格ゲー路線を取りながらも、毎度確かな原画家チョイス、安定した塗りのクォリティで知られる同ブランドであるが、
今回は紙芝居ADVでいいのに無駄にRPGパートをつけるサービス精神が大当たりし、消化不良のクソと化した。
AVGとして見ると、キーボード操作以外不可、バックログ未搭載・ウインドウ消去不可など、DOSゲー時代を思わせる不親切仕様。
RPG部分は苛烈なバランスであり、序盤のスライムで生命の危機に瀕するほどのシビアさであり、中盤以降でも毒沼を数歩行くだけで瀕死。
プレイ時間の水増しのためか、勇者達はフィールド上で『星をみるひと』も顔負けの牛歩戦術を取る。
既存のRPGの文法にことごとく反抗する仕様に「小中学生がRPGツクールで作ったゲームかよ」と毒づきたいところだが、
実際はフリーソフトの「WOLF RPGエディター」で作っており、さらに言えば大部分の素材がデフォルトという衝撃が待っていた。

次に選評が届いたのは、またもTEATIMEの手による『恋愛+H』である。
「恋人になる過程を経てから、H主体の熱愛モード」という本作の着眼点は、当初、18禁版『ラ○プラス』として内外から期待を集めていた。
だが、蓋を開けてみれば、セーブ機能未搭載という『仮面ライダー倶楽部』も真っ青の鬼仕様を断行。
その他数々の仕様も「開発の都合上できなくなりました。ごめんね。」の一言で済ませ、怒号が飛び交う中で火に油を注ぐこととなる。
さて、本作で恋人同士のイチャつきが体験できるかというと、そんな要素は全く無い。
シナリオは時系列を無視して安いエピソードを列挙し、恋人とのミニゲームも、フリーズと隣り合わせの「ジャンケン」など稚拙なラインナップ。
「またね」と書いてあるセリフを「このケーキはすごくおいしいわね!」と喋るなど、音声周りのバグも完備である。
ヒロインの性格はと言えば、Hシーンで体位を変えるごとに性格がランダムで設定される狂気の多重人格仕様。
初体験で足コキされたり、清純派のヒロインから「この犬!」と女王様口調でなじられたプレイヤーから悲鳴が上がる事態となった。
Hに関しても片手落ちであり、前作からのガッカリ乳首に加えて、今作では石のごとく全く揺れないおっぱいに噴飯するハメになる。
効果音も相変わらず意味不明で、調整不足の大音量で「ぐっちゃぐっちゃ…」と鳴り響いた後、絶頂時には「ばりっっ!」という謎の破壊音。
体位はさすがに前作の3つから増えたが、座位を空気椅子で行うなど新たな粗を目立たせる結果となっている。
名門TEATIMEによる2作連続のエントリーはKOTYiEスレを騒然とさせ、3Dゲームによる乱世の到来を予感させることとなった。

こうして居並ぶ群雄の中でも、ひときわ大きく騒動を巻き起こしたのがコンプリーツによる『まままーじゃん』だ。
2年以上の延期の末に結晶した約140MBのDVD-ROMが織り成すは、主婦3人と卓を囲む「脱衣麻雀」である。
麻雀エロゲーといえば『いただきじゃんがりあん』、『おまたせ!雀バラや♪』などの魔境が思い起こされるが、
本作については、落ち着いて紐解いていけば何のことはない。
まず手始めにセーブ機能がないが、麻雀ゲームとしては許容範囲であろう。
そして内容は、公式でご丁寧に「半チャン1回で精算、ビリだった人が服を一枚脱ぎます」と教えてくれる通りである。
相手は3人で各4枚の服を着用。まず全員が脱がなければ別モードには移行せず、本番にはさらに2回の負けが必要な仕様だ。
……さて、たったこれだけの仕様で地獄の耐久麻雀が完成したことにお気づきだろうか。
すなわち、一人の本番を見るのには、全員を全裸にするまでの12回と、お目当ての相手をビリにする2回の計14回分の半チャンが必要だが、
半チャン1回を約15分程度として、最低3.5時間はノーセーブでプレイするほかない。
しかしながら麻雀で狙った相手をビリにする方法などほとんど無く、この理論値通りに相手を脱がせることは至難の業なのである。
結果として、パンツを下ろしたまま5時間以上やっても一枚も本番CGを見られないプレイヤーの怒号が響き渡ることとなった。
麻雀パートの出来も壊滅的で、嶺上開花で即落ちし、『ジャンライン』ばりにカンがバグる「ネオ亜空カン」も発見される始末。
素人のごとく早漏リーチを連発する一方で、チョンボに対しては玄人ばりの厳しい対応を見せる奥様方にもイラつかされる。
結局、パッチが出されることでセーブは可能になり、多大な不満を抱えつつも大賞本命の危機は脱したが、
奇しくも同じ日に同じチョンボをやらかした『恋愛+H』制作陣と共に強烈な印象を与えることとなった。

その後も5月27日発売作の解析が続き、『美衣菜△です!』がほどなくしてエントリー。それに加えて、決して「クソゲー」ではないが、
「純度300%の聖少女ゲー」のふれこみのうち110%くらいが脱糞だった『STARLESS』も「糞ゲー」として選評が届き、
これら同日発売のエントリー5作品は「五惨家」と並び称されることとなった。
6月下旬には、これまた「神ゲーだが『糞ゲー』」の『euphoria』が登場し、夏休み明けには
数々の悪ふざけと攻略不可の疑似餌ヒロインでニッチ需要を踏みにじった『プリンセスX~僕の許嫁はモンスターっ娘!?~』も到来。
中だるみや日照りとは無縁に、KOTYiEは今年も収穫に恵まれることとなった。

そして、12月には待望の……もとい、恐れていた事態がスレに訪れることとなる。
KOTY関連スレにあまねく知られる年の瀬の風物詩、「年末の魔物」が到来したのである。

それがsofthouse-sealの『学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~』(パッケージ版、通称「学園迷宮」)だ。
迷宮モノのRPGであるにも関わらず、プロローグの終了→ダンジョン突入の流れで100%エラー終了という
前人未到のバグを抱える本作であるが、その特徴を一言で言うと、「未実装」である。
公式HPでは魅力的なスクリーンショットが公開されているが、製品版をプレイしながら再度見るとツッコミどころしか無い。
開発版の戦闘画面は「白熱のタイムバトル」を謳い、背景には校内の風景、右スペースには各キャラの行動順を示す大きなバーがあるが、
製品版では背景が真っ暗で、右スペースは枠のみの空白。あまつさえ、モンスター名の取り違えも日常茶飯事であり、
「ライジングエレクト」との戦いの最中に飛んでくる「リキッドトリオスネークの強力ぶっかけ攻撃!」はスレ住人に笑撃を与えた。
では、出来上がっている部分の評価はと言うと、これもまた超低空飛行である。
ゲームバランスという概念は存在せず、コンビニ感覚で点在する店で序盤から最強武器が購入可能。
中でも妹キャラの最強武器は、3,4回連続攻撃で初期装備の十数倍の極大ダメージを与えるというリアル無双状態となる。
パラメータ関連も、100円以上の所持金表示はもれなくバグり、戦闘中は正確なHPを参照不可。製作陣のどんぶり勘定精神が窺い知れる。
極めつきに、ラスボスに関しては最初から9割HPが減った状態で登場し、逃げると勝利、そのままエンディングに突入する。
このように、プレイするたびに発見される珍現象と相まって攻略がヒートアップし、seal本スレともどもKOTYiEスレも熱狂に包まれた。
その様子は近年珍しい「愛されるクソゲー」としての地位を確立するのに十分なものであったと言えよう。

この後もsealは快進撃を続け、系列ブランドのDevil-sealからは、『淫刻の虜姫 ~囚われた没落の姫姉妹、淫教の果てに~』を投入。
『学園迷宮』とは真逆に、ダンジョンを「前に進む」だけの完全な一本道作業にし、最下層にクリア不能の無限ループバグを仕込んだ怪作である。
seal名義では、異様な難度で『大奥記』ごっこをやらされる『世にも気持ちいい学園の快談~オバケになってあの娘に仕返し!~』をリリース。
年末にかけての一気呵成の快進撃で、一躍KOTYiEスレを風靡することと相成ったのであった。

さて、あと数点のエントリー作を付け加える上で、あるゲームクリエイターの話をしなければならない。

その男はかつて、「鬼才」と呼ばれる存在であった。
独創的な世界観、緻密なゲームデザイン、プレイヤーをあっと驚かせる斬新な手法……。
修羅の国と唾棄されたこの辺境の地において、数少ない本物のスターとして賞賛を浴び続けていた。
だが、その男はある時期を境に修羅道に堕ち、クソゲーを連発するようになる。
時期は前後するが、最後に紹介する三作は、そんな《男》の傘下のメーカーによって作られたものである。

一作目は先に触れた「五惨家」の一角である、フィアンセの『美衣菜△です!-Loveイチャ同居生活のススメ-』だ。
主人公は表題の「美衣菜」さんと同棲中の設定であるが、肉欲に負けてあっさり他の女の子と浮気し、当然のごとく痴情のもつれに発展。
三角関係が不可避なこと自体はゲームデザインとして受け入れるとしても、浮気相手との関係をレイプでご破産させようとする行動原理や、
「罪滅ぼしの仲直りセックスは気まずいから我慢しよう。俺は大人の男だから(要約)」などの電波なモノローグがプレイヤーを苦しめる。
クリア後のCG欄は、差分を逐一カウントすることで約5倍の水増しを敢行。
その少ない中にも、姉妹ブランドの別ゲーからの原画流用が発覚したが、これでも《男》傘下のブランド作品としてはマシと評された。

2作目は、ディサベルによって11月末に発売された『魔法少女と恋+』。
見るからに「巷で話題の要素をとりあえず寄せ集めてみました」と言わんばかりの表題であるが、
実際に寄せ集まったのは歴代クソゲーのクソ要素であった。
すなわち、今回エントリーの『美衣菜△』と同様に他ゲーからの原画流用が発覚し、
前回エントリーの『熟処女』と同様にNGボイス混入や他ゲーからのテキスト流用が発覚。
さらには初代大賞を獲得した『アイ惨』と同様に、真っ暗な背景でシナリオが進行する有様でスレを沸かせることとなった。

一体誰がこんなクソゲーばかり作るのだと憤慨したいところであるが、残念ながら、おそらくその名前は多くの人が既に知っている。
種明かしが遅れたが、フィアンセとディサベルは近年KOTYiEにエントリーを続ける「アーベル」の別ブランドであり、
それらを束ねる《男》は、『この世の果てで恋を唱う少女 YU-NO』の菅野ひろゆき氏その人なのである。

アーベル系列ブランドは2009年の『MQ ~時空の覇者~』以来、実に8作のエントリーを果たしている。
大言壮語の新システムで往時の復活を匂わせ、商品未満のクソゲーをフルプライスで売りつけるそのやり方は一貫しており、
旧作ファンが一縷の期待を抱き続けても、それが報われることは決してなかった。
「またいつものアーベル」……
「アーベルには大賞を与える価値すらない」……
いつしかKOTYiEスレもアーベルに対して興味を失い、悪評はすぐ届くのに選評は遅れがちになっていた。
だが、翻って見るにそれは「ゲーム単体として評価する」というKOTYの基本理念にもとるものである。
そうしたマイナス補正を取り払い、いま一度真摯な気持ちで評価に臨まなければなるまい。

ということで最後に紹介するのが、8月に発売されたアーベルクソゲーの集大成、
『ゾンビの同級生はプリンセス~不死人ディテクティブ~』(通称「ゾンビ」)である。
公式HPの設定紹介からして「これは『こ○ゾン』ですか?」と言いたくなる本作であるが、
シナリオは2話を終えたところで「COMING SOON」と表示されて終了。
見ての通りまごう事無き「有料体験版」であるが、追加で配布された3話は明らかに「打ち切り」エンドである。
なお、あくまでもこれは「アドオン」と公称されており、メーカー的には製品版の2話で完成品扱いであることにも注意されたい。
システムの目玉は「探偵ハイパーリンクシステム」であり、テキスト本文中にTIPsや視点変更などのキーワードが埋め込まれている。
だがこれがとんでもない曲者であり、一度のミスで「詰み」状態になる一方で、あらゆる面からプレイヤーを妨害するのである。
バックログからは一切クリックできず、ひとたび見逃したりクリックミスをするとタイトル画面に戻るかロードするしかない。
スキップ機能では普通に飛ばされるため、2回目以降のプレイでも血眼にして一回一回慎重にクリックしなければならない。
前回の『恋刀乱麻』では数分間連打を強いられる「苦行バトル」が取りざたされたが、本作の苦痛はそれを遥かに超えており、
テキストADVなのにも関わらず即死ゲーのような感覚で慎重なクリックを強いられる「全編苦行仕様」が続くのである。
実際それが楽しいかといえば、蛇足や枝葉末節だけが肥大化する一方で、本筋は4時間で終わる内容に過ぎない。
テキストを肯定的に評価しようにも、たった14クリックで終わる大迫力の戦闘シーンの前には立つ瀬がないと言えよう。
七瀬葵女史の手になるキャラデザと作画は一見魅力的だが、本編ではクオリティ低下が著しく、パッケージ詐欺を地で行っている。
肝心のエロCG数も総計で20枚にも満たず、フルプライスとしては寂しい限りだ。
あまりの不評に耐えかねたか、「エロゲー批評空間」では何者かが七瀬女史の情報を削除依頼に出す椿事もあった
だが、多くの人にとってそれ以上に認められない事実は、これがあの菅野氏の遺作であるという事実であろう。

菅野氏は去る12月19日、43歳の若さでこの世を去った。
この時ばかりはクソゲー愛好家としてではなく、一人のゲーマーとして、沈んだ巨星に対して合掌したい。
だが、だからこそ言おう。今こそ彼の作ったゲームに真っ直ぐに向き合うべきであると。
前述の通り、裏切られるたびにファンは傷つき、いつしか誰もが菅野氏のゲームに真面目に向き合わなくなっていた。
誰かが止めていれば今の惨状はなかったという点では、周囲のスタッフもまた彼から目を逸らしていたのかも知れない。
我々とてその心を失っていたことを考えなおさなければならない。
否、敢えて言うならば、クソゲー愛好家たる我々でなければ、彼の最後の作品に真摯に向き合うことはできないのである。

遅きに失してしまったが、今回の結果発表に移ろう。
次点は『学園迷宮』、『秘蜜』、『修羅恋』、『恋愛+H』、
大賞は『ゾンビの同級生はプリンセス~不死人ディテクティブ~』とする。
その理由はただ一つ。
補正を取り払い、真正面から向き合って評価を下した時に、これが最もクソなゲームであったからである。
第一にシナリオを読むことを全力で邪魔するシステムは、テキストとシステムの両面から言って最凶のクソ要素であり、
CGについても枚数・品質ともにエントリー作品中随一の低水準で、エロゲーとしての本分を果たしていない。
加えて本作はパッチによって修正される未完成品ではなく「アドオン追加可能」な完成品であり、評価に一切の修正は必要ない。
以上のことより『ゾンビ』を大賞として決定し、3度目の正直を果たしたアーベルソフトウェアの栄冠を讃えたい。

実際に、菅野氏が何を思って本作に関わっていたかは、神のみぞ知るところである。
信頼を食いつぶし、自転車操業に明け暮れたその晩年が幸せであったとは決して思えない。
我々はまだ彼の死を信じられないでいる。
あるいは心のどこかでは、彼が「事象の狭間」に向かったのではないかと思っているのかも知れない。
そうでなければ「心入れ替えて面白い作品を作ろうかと思ってます」と言っていた彼の呟きは嘘となってしまうのだから。

もちろん、この大賞が栄誉あるものだとも、餞として受け取ってもらえるものだとも思わない。
ただ、彼が死の床までゲームを作り続けた事実を、未来へと続く「ブリンダーの木」の片隅に刻みつけることは出来る。
そんな故人への思いを綴って、あるいは、ついぞ報われなかった一抹の希望を込めて、2011年KOTYiEの結びとする。

「この世の果てでゲームを作り続けていて下さい、菅野先生」


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