2011年 総評案2

2011総評案2 大賞:学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~


クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 27本目

301 名前:総評の人2 1/8 ◆emBAlUISBg [sage] 投稿日:2012/02/01(水) 15:06:25.54 ID:2Q4H54v50
クソの山なれど、登り極めんとするならば一筋縄ではいかないのがKOTY。
今年も実に多彩なクソたちが咲き乱れた。
各々が様々なアプローチでもって頂上を目指した彼らの挑戦を振り返ってみよう。

年明けから春にかけて猛威をふるったのが、「伝統主義」の作品群の波状攻撃である。
この「伝統主義」は、基本に忠実に、スタンダードなクソ要素をADVに満載したスタイルを基本とするクソゲー界の優等生である。
定番ともいえるクソさを網羅する手段を取るため、インパクトに欠けるが、ジャブも重ねればダウンを狙えるように、
小さなクソ要素も、積み重ねれば大賞を狙える。
ある意味で堅実なその姿は、大賞への一番の近道とも言えるだろう。

2010年の熱冷めやらぬ一月、早速やって来たのは1/28の『令嬢の秘蜜』
誤字、虚偽の製品仕様、差分無しのCG、決して100%にならない回想、BGMの流用、このあたりは当然のごとく完備している。
中でも、本作において特筆すべきはたたみかけるような怒涛のクソ展開だ。
以下はプロローグからの抜粋である。
 一日目、媚薬入りの紅茶を飲ませSEX
 二日目、媚薬入りの紅茶を飲ませオッパイぱふぱふ
 三日目、媚薬入りの紅茶を飲ませSEX
以降もひたすら媚薬入りの紅茶を飲ませ続ける主人公。
結局最後までインモラルADVの片鱗すら見せつけることのないまま、唐突に訪れるとってつけたようなエンディングはどこまでも投げやりで
それがマスターアップ後一切更新されることなく放置された公式サイトの寂寥感とダブって見えるのは気のせいではないだろう。

二月は2/25の『コイ★カツ!』
本作は「伝統主義」において近年主流となりつつある「手抜き」に力を入れた仕様となっている。
ヒロインと主人公が惹かれあう過程は可能な限り排除され、ルート決定後はひたすらエロシーンの連続、加えて整合性を無視したCGとテキスト、
無名声優によるたどたどしい演技、安っぽいBGMに不愉快な主人公などのポイントもしっかりと押さえている。
無難なクソさという他言葉が見当たらない。
外側だけある程度整えているので遠目にはそれっぽく見えるが、近づいてみればなんてことはないただのハリボテである。
「安心してプレイできる正統派クソゲー」は、「伝統主義」まっただ中の本作にとって最高の賛辞であろう。

三月は3/31の『とらぶる@すぱいらる』
本作も「手抜き」の範疇に含まれるのだろうか。
プロットの段階で空っぽなのは大前提で、本作は特にテキストの気持ち悪さが際立っている。
会話の成り立たない妄想主人公の鬱陶しさ、ちょっとしたマイナスポイントとのギャップ演出を狙ったつもりが、マイナスポイントばかり強調されてしまった
ヒロインたちの壊滅的なまでの魅力のなさ、そしてそれらを前面に押し出すべく展開されるワンパターンな日常シーンが不快感を増幅させる。
噛めば噛むほど吐き気を催すビーフジャーキーがあるとすれば本作の名前をつけるべきだろう。
ギャグを狙った日常シーンをことごとく外し、ひたすらに寒いかけ合いを延々と消費しなければならないこれは一つの拷問である。
しかしながら、外れの萌え系作品ではよくあることという理由で、相対的に見て「そこまでクソじゃなくね?」という評価に落ち着き、
改めて住人の感覚がおかしくなっていることを露呈するにとどまった。

四月は4/8の『勇者と彼女に花束を』
「伝統主義」四連投の最後を飾る本作は、まさに破壊的というに相応しい威力を伴ってスレを襲った。
空っぽのシナリオ、誤字脱字、ガタガタの前世紀レベルのシステム、人体構造を無視したCG、音声ミスなどなど、
当然基本は抑えているのだが、加えて強烈なネタ性が、本作をただの「ストロングスタイル」とは一線を画するものへと押し上げている。
先に上げた不備を改善すべくメーカーであるKLEINはパッチを配布した(それでも焼け石に水であったが)。
だが、困ったことにそのパッチを当てると、一部のCGが改悪されるのだ。
具体的にはヒロインの一人であるシンシアの立ち絵が「限りなく別人に近い同一人物」になる。
進行不能で我慢するか、劣化立ち絵で妥協するか、まさに究極の選択だ。
無論、進行不能で惜しむほど価値のあるストーリーなど存在しないのであるが。
加えて、本作がスレを湧かせたもう一つの要素として、体験版を簡易製品版へと進化させる裏技が存在することが挙げられる。
公式に配布されている修正パッチを体験版に当てると、なんとエピローグまでプレイ出来てしまうのだ。
インパクトに欠ける教科書通りの優等生「伝統主義」に、二つの強烈な個性が加わるによって、本来のクソさを一層際立たせ、
ありがちなクソゲーは戦士へと変貌を遂げた。

「伝統主義」の脅威が去ったのもつかの間、春から初夏にかけて3D元年といわれた2010年の余波がkotyeにも押し寄せた。
すなわち、「3D」の襲来である。
まずは3/31の『修羅恋~SeeYouLover~』
本作の売りとして二点挙げられているのが「街中でヒロインと仲良くなってからのエロシーン」と「修羅場での女の子同士のバトル」である。
しかし残念ながら、その両方がことごとく残念な仕上がりだ。
街中でヒロインと仲を深めようにも、ステレオタイプイメージをなぞっただけのキャラクターはどこまでも薄っぺらく、
物語が存在しないため各ヒロインの過去を掘り下げるなんてこともない。
加えて、会話をしようものなら数パターンしか用意されていないごく短いやり取りが繰り返される。
エロシーンには演出というものが欠如しており、適当に繋ぎ合わされた音声から一を聞いて十を知る脳内補完能力がユーザーには要求される。
バトルにおいても、今日日小学生でももっと達者だろうと突っ込みたくなる低次元な罵り合いが延々と続くのみだ。
本当に主人公を取り合う気が彼女らにはあるのだろうか。
また、取り合いはヒロイン間のみではなく、時には主人公がヒロインを奪い取らなければならない。
本作には間男が一人登場する。
主人公とヒロインの恋路を邪魔する茶髪の彼は、全くしゃべらず、都合が悪くなると殴ってくるという、本物以上の低能DQN仕様。
非常にモブ臭い出来だが、他にモブは存在せず、主人公とヒロイン以外では彼が唯一の登場人物である。
これに安っぽいフィールドのテクスチャや限定的な移動可能箇所が合わさり、まさしくユーザーにとっての修羅の世界が展開された。

次にやってきたのが5/27の『恋愛+H』
『修羅恋』から立て続けのTEATIME作品であるが、「18禁ラブプラス」との前評判に、「なんだこっちが本命か、修羅恋なんてなかった」と
心躍らせたユーザーを待ちかまえていたのは、「修羅恋」を越える修羅の世界だった。
なんとこのゲーム、セーブという機能が存在しない。
バグでセーブできないという意味ではなく、最初から仕様として搭載されていなのである。
つまり、一度ゲームを開始したら、クリアするまでプレイしないといけないというファミコン時代のクオリティである。
後にパッチが公開され、なんとかセーブ機能を搭載し、かろうじてゲームとしての体裁は整えたものの、屋外限定で体位を変える度に性格もランダムで変わるエロシーン、
頻発するロード、超絶難易度のミニゲームなどのインパクトが住人達に与えた衝撃は計り知れない。
『修羅恋』から引き続き、やる気のない前時代レベルの背景も健在であり、ついに追加されたモブもシルエットで、しかも一部にはあたり判定すらない。
あるクソ要素がゲーム全体をクソゲー化させているのではなく、全面的にクソをかき集めてゲームの形にしたのが本作である。
問題があるのではない、問題しかないのだ。
セーブできるだけでありがたいと思える、この恐ろしさを分かっていただけるだろうか。

5/27にスレを襲ったのは『恋愛+H』だけではなかった。
二本の「ゲーム」の襲来である。
ADVが主流であるエロゲ―業界において、ちゃんとしたゲームを搭載するというのはそれだけで尊い試みだ。
しかしその挑戦が空回りし、あろうことかユーザーに牙をむいたという結果は、ただただ無念である。

一本目は安定して安価なバカゲーを量産するsofthouse-sealからのまさかの刺客『変態勇者の中出し英雄記』
同ブランドのRPG初挑戦ということもあり、バランス調整に失敗している。
序盤に30しかHPがないのに、最低でも4ダメージを与えてくるモンスターが五体出現した時の絶望感といったら。
加えて深刻な毒ダメージ、町では可能なのになぜかワールドマップでは出来ないダッシュ、キーボードオンリーの操作環境等々、
全体的に荒っぽい作りになっており、さながら周りすべてを傷つけずにはいられない面倒な思春期少年のようなその出来は、
「リアルな冒険を再現する演出」と揶揄された。

二本目は『まままーじゃん』
脱衣麻雀という開拓し尽くされたと言っても過言ではないジャンルにおいてしっかりとやらかしてくれた。
脱衣麻雀とは、麻雀で対戦しその結果如何によって対戦相手を脱がし、エロい思いをしようという夢とロマンにあふれた知的遊戯であるが、
本作に知性は欠片も感じることは出来ない。
AIが徹底的にアホであることはもはや突っ込むまい。
ここにおいてはあまりに些細に過ぎる問題だ。
本作における脱衣麻雀の問題点は、服を脱ぐのが四人打ちで最下位のヒロインであるところにある。
半荘の最下位が、しかも一枚だけ。
ヒロインは四枚の服を着ており四回、そこからエロい事をするためにさらに二回の半荘を戦わなくてはならない。
しかもヒロインは三人おり、全部で六つあるエロシーンのうち二つを回収すると強制的にエンディング送りになるため、最低でも三周が必要と、絶望的に時間がかかる。
そして本作最大の問題点だが、それらしい痕跡は見受けられるものの、セーブ機能が実装されていない。
これだけ絶望的に時間がかかる作りでありながら、中断は許されないのだ。
なお、比較的早くパッチが配布されセーブは実装されたが、何故それを二年以上の延期を経た発売日までにできなかったのか。
少々理解に苦しむ。
しかしまさか、同じ日にセーブ未実装のゲームが二本も同時に発売されてしまおうとは、完全に我々の理解の外側である。

そして、スレ住人誰もが待ち望んだあいつがやってきた。
春先まで猛威をふるった「伝統主義」における絶対王者にして、KOTYの顔ともいえるあいつが、今年もついに動き出したのだ。
奇しくもそれは『恋愛+H』『変態勇者』『ままま』と同じ、5/27発売であった。
この日発売されたもう一本のソフト『美衣菜△です!』
これを送り込んできたあいつとは、そう

         アーベル

2011年のアーベルがついに動き出した。
ブランド名こそ「FIANCEE」であるが、中のスタッフや事務所の住所は紛うことなきアーベル。
しかしながら内容については、アーベルの匂いこそ感じさせるものの、育成の意味がほとんどない、CG数が少ない、
主人公の浮気が回避不能、程度にクソさが抑えられており、むしろアドオンがない分進歩すら感じさせる。
ただし、冷静に考えてクソと言われれば否定しがたく、アーベルはやはりアーベルであった。
この四本のクソが同時降臨した5/27という日の悪夢は、永く語り継がれることだろう。

そして八月、再びのアーベルである。
やってきたのは『ゾンビの同級生はプリンセス -不死人ディテクティブ-』
本作の売りは、テキスト中に現れるピンク色の文字をクリックすると別視点のシナリオにジャンプすることが出来るという「探偵ハイパーリンクシステム」なのだが、これがクソである。
このリンクを見逃したりして読み飛ばしてしまうと、その視点でのシナリオをもう一度最初から読み直さなければならず、
バックログで戻ろうにもそこからはリンクできず、スキップで問題の場所まで飛ばそうにも当然無視される。
結果として、非常にゲームテンポを悪くすることになってしまった。
さらに今回もアドオン頼りの姿勢は変わらず、ソフト単体だと四時間程度で終了する全二話の構成になっている。
二話分追加される予定であったアドオンも、何故か第三話が追加されたところで終了し、四話目が無かったこととなった。
これをフルプライスで売りつけるアーベルにはさすがと言うほかないが、これに対し「ああ、いつものアーベルだな」で済ませてしまう住人たちも大概末期である。

例の魔の5/27以降、いくつか小粒の報告があったものの、これといって目立ったものは『ゾンビ』のみであり、
住人たちも充実しすぎた上半期に、この中から大賞を選ぶものだと半ば思いこみつつあった。
そんな晩秋、あわてんぼうの年末の魔物は、12月前にやってきた。
11/25、「ゲーム」方向からの三本目『学園迷宮エロはぷにんぐ学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~(パッケージ版)』である。
半年前に発売された『変態勇者』を受け、RPG第二弾と言うからにはsealによる名誉挽回を図る自信作なのだろうと、
誰もが思ったこれが、まさか我々への挑戦状であったとは、誰が想像しただろうか。
ゲームを始めると、何の脈絡もないまま学園に現れた魔物たちが主人公をかばった先生を襲うというプロローグの終了とともにゲームもエラー落ちで終了する。
公式ページでパッチという鍵を獲ってくるところからがダンジョン探索だとでもいうのだろうか。
相変わらず冒険の演出には妥協を許さないその姿に感動である。
パッチを当てたとしても、お金さえ用意すれば序盤に手に入るバランス崩壊必至の最強装備品は一ターンに妹を四回行動させ、
先輩の装備は上手くパラメーターに反映されず、使ったアイテムとは違うアイテムが減っていき、
必殺技やスキルは使ってみないと効果が分からないという地獄仕様がプレイヤーを待ちかまえる。
戦闘画面についても、公式サイトやパッケージ裏の開発画面は見る影もない真っ暗な背景、終ぞ実装されなかったターンテーブル、表示されないHP数値や、
「敵」とだけ表記される「一体俺は誰と戦っているんだ」と頭を抱えたくなるテキストなど、足りないものを探せばキリがない。
もはや、マップが超見づらいとか、お金をためて装備で殴れとか、そういうところにツッコミを入れている段階ではない。
スクラップ置き場の鉄屑をかき集めて車を作ってパリ・ダカに参戦しているといってもまだ生ぬるい。
このボロボロのシステムでもエンディングにたどり着けるようになっているというのは、一つの奇跡と言っていいだろう。

『学園迷宮』に触発されたように、この年末には各陣営からの刺客が入り乱れることとなった。
「伝統主義」からは、絶対王者アーベルからの今年三本目、『魔法少女と恋+』が届いた。
「3D」からはFULLTIMEの『肉体契約書』、「ゲーム」からは『学園迷宮』に続き、『淫刻の虜姫 ~囚われた没落の姫姉妹、淫教の果てに~』と、
まさに一年のクソをかき集めるが如しであったが、残念なことにどれも『学園迷宮』の前では決め手に欠けた。

大激戦の末、『でにけり』が大賞を獲得した小粒ぞろいの2010年、もしや今後、突き抜けたクソゲーは生まれないのではないかという危機感が住人たちを襲った。
「クソゲーなど生まれない方がいい」
確かに至言である。
だが、クソゲーと良ゲーは表裏一体、クソゲーは業界繁栄のバロメータであるというのもまた事実だ。
クソゲーの衰退はすなわち、良ゲーの衰退をも意味する。
無難に形だけまとめた、クソゲーにも良ゲーにもなりえない、三カ月でユーザーの記憶から消えてしまうような作品ばかりの不毛の荒野、それこそエロゲ―業界終わりの日だ。
この憂いを2011年の猛者たちは見事に払拭してくれた。
皆、一様に強敵であった。

今年度の次点を

『勇者と彼女に花束を』
『修羅恋~SeeYouLover~』
『恋愛+H』
『まままーじゃん』
『ゾンビの同級生はプリンセス -不死人ディテクティブ-』

以上の五本とする。
そして大賞を『学園迷宮エロはぷにんぐ学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~(パッケージ版)』に贈りたい。

ただ出来が悪いだけなら星の数、それを越えてユーザーにダメージを与えうる何かを持っていて初めて、この業界ではクソゲーの域に足を踏み入れることが出来る。
ADVでの限界に挑戦した『勇者と彼女に花束を』、3Dでありながら奥深さを捨て極限の薄さを追求した『修羅恋~SeeYouLover~』、
セーブ未実装という我々の理解を越えた仕様を見せてくれた『恋愛+H』と『まままーじゃん』、
もはやアーベルとしか言いようのない低品質とユーザーを舐めきった態度でやはり怒りを買った『ゾンビの同級生はプリンセス -不死人ディテクティブ-』
いずれ劣らぬ一騎当千のクソであった。
だが、クソすぎて逆に面白くなる『学園迷宮』の前では、そんな彼らも霞んでしまおう。
そう、面白いのだ。
何もかも崩壊しているくせに、何故か我々を惹きつけてやまない。
いつも通りADVでバカゲーを作っていれば一定数売れるのに、どうして余計なゲーム性を加えるのか。
「sealならいつか何かやってくれそうな気がする」
そう思わせてくれるクソさを、我々は間違いなく感じた。

最後に、エロゲ―黎明期における偉大なるクリエイターにして、晩年はクソゲーマイスターとして活躍した故・菅野ひろゆき氏に次の言葉を贈り、
クソゲーオブザイヤー2011を締めるとともに、追悼の意を表したい。

                              クソゲー
「菅野さん聞こえますか?オレ達から貴方への鎮魂曲です」



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最終更新:2014年08月02日 22:14