水夏弐律 選評


概要

タイトル 水夏弐律
ジャンル 夏涼薫風NVL
発売日 2011/9/30
ブランド CIRCUS
価格 初回限定版 9,240円(税込) 通常版 8,190円(税込)

選評

598 名前:水夏弐律[sage] 投稿日:2011/10/13(木) 07:12:36.34 ID:82JqqLjn0 [1/4]
アニメから来た層にとってD.C.は、出会ってからまだ1ヶ月も経ってない新作萌ゲでしかないものね
だけどD.C.は… 私にとっての曲芸は…
作品を繰り返せば繰り返す(D.C.)ほど、ユーザーと曲芸が過ごした時間はずれていく。
気持ちもずれて、ユーザーと言葉も通じなくなっていく。
たぶん曲芸は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う
曲芸を救う。それが私の最初の気持ち。今となっては…たった一つだけ最後に残った、道しるべ
わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて

曲芸商法と呼ばれる魔女の法で儲と呼ばれる使い魔から搾取を繰り返す(D.C.)、知らぬ者は居ない巨大エロゲ企業:Circus
薄いエロと焼き直しシナリオの繰り返し、なまじ有名になった故にオリジナルから逸脱して過去ファンに叩かれる事への恐怖
一度味を占めたら離れられぬファンディスク商法と逆輸入商法という名の円環の理……
 D.C.ブランド以外のオリジナル作品は、鳴かず飛ばずどころか余りに、あまりの操作性の悪さ、システムの酷さにKOTYeへのエントリーすら過去数回あった。
 過去の遺産を使い切った曲芸に残された「最後に残った、道しるべ(遺産)」……それが、かって業界を震撼させた名作:水夏(すいか)であった。
しかしながら、当時の原画家とはケンカ別れ。 無印に携わったスタッフの9割は会社に残されていない

「シナリオを読み込んでチェックしている時にも8回、泣きました。自信作です予約して下さい!!」
                        tororo団長(水夏弐律:公式PVより抜粋)

代表取締役自ら、太鼓判を押す曲芸団の総力戦ともいう布陣そんな中、紡がれた弐つ目の律とは……

旧作信者を釣るために、あえて古くさい仕様に拘ったノスタルジーあふれるモノであった。一言で言うなら「出涸らし」を乾燥させて再利用したような…
無印と比べると薄く酷い”泣ける”出来であった


【システム廻り】
まず、パッチを当てないとオートモードがまともに動作しない(或いはオート状態なのかどうか判断つかない)ことが挙げられる
その他、クイックセーブが無い。スキップが遅い、ゲーム中ウインドウズモード時にウインドウを閉じるとオートの進行が止まる(バックグラウンド動作機能無)、ワイド画面以外動作無し
そして、ログ機能が実質無いという。その他、ボイスの設定、音量管理とか細かいことは多々に不備調整不足がある。
まるで5~6年前のゲームを掘り起こしたかのような環境レベルに、制作側の点検不足なのか技術不足なのか
それともまさか「昔風のシステム構成を敢えてねらった!」とでもいうのか!?
どちらにしても、前作を発売時にやっていたファンは”泣ける”だろう

【キャラクター・グラフィック】
他者のトレスすらあり得るこの修羅の国で今更、パクリパクリと晒し挙げるのもなんだが……… 
メインヒロインの中にハルヒとドラッカー好きなマネージャーさんが居るのは気のせいだろうか?
また外注側が描いた背景と、一枚絵イベントで曲芸側が描いた背景のレベル差が激しい
普通は外注のレベルが……という所だが、外注の方が圧倒的に綺麗である。この差に”泣ける”

【ストーリー】
前作は、4章が関係しつつも完全独立し完結していた造りであったが、今回は同じ4章仕立てだが
進行途中で「1章→4章→1章→4章→1章→2章……」という感じで章が移動する。当然明確な主人公たる個人が存在しないために、場面(章)移動で登場人物が一変して混乱を来すこともある。
加えて、公式にも取説でも表記されていないが「選択肢がないノベル構成」一本道シナリオである。
そもそも素直に、4つのカップルが織りなす群像劇とでも銘打てばいいのに、章仕立てというオムニバスを彷彿とさせる書き方は少々不親切である。
もしかして、ルート分岐する手間を省いたのか? いや、それすら組み上げる構成力すら失われてしまったのか!? それともこの美しいシナリオ以外ないという自己満足の賜か!?
嫌な邪推をしたくなる全体構成に”泣く”しかない。

さて、視点移動というのは上手く使えば色々としたトリック・演出として様々な切り口が出来る
が、今作では良いところでCM!という使い方が多く、かつ同時間軸で物語がすすめている為
  • 別章のキャラが出張してきて問題を解決する
  • ストーリーの謎の根幹が原則同じであるため、一旦種明かしされるとそれが繰り返される
  • 上記の選択肢無し、章移動が行われるため、破滅が確定しているキャラを悶々と見続ける
 「志村、後ろ後ろ~」というか、エロゲ特有の好感度MAXなヒロインを前に「俺は彼女が本当に好きなのか」「彼女は何で俺に構うのだろう」と悶々と
 悩む主人公をみている気分になる。当然ながら回避手段も介入油断もない。
 (※このやるせなさを、助長させる「終わりを告げるカウントダウンシステム」が搭載されているが、これの評価は人次第であろう)
加えて、テキスト廻りの動作も整備されて居らずストレスを与えることに一役かっている
もちろん、4組のカップル等々が人間関係を構築するという意味ではメリットがあったのだろうが……
世界はままならぬ、そういった焦燥感もどかしさを体験、表現するために水夏弐律が造られたとするなら大した物である。 
何も解らぬまま物語が進み徐々に解き明かされ最後に収束する前作の流れを望んだ場合は、手抜きとも採れる手法に”泣きたく”なる

【エロ】
各キャラエロイッカイダケ 中には、レイプイッカイダケのキャラもいる
あと、イベント1枚絵で動体は固定のまま、差分で頭部だけが上下する新形式フェラへの挑戦があったことはここで伝えておきたい
また、特筆すべきはエロゲでは標準仕様となった「回想」シーンが存在しない!
――いや、正確には「シナリオ回想」はあるのだが、エロだけ抽出した回想は存在しない。
(実用性については個人の嗜好ため議論は避けるが)例えばエロシーンをみるためにわざわざ快適さの足りないskipで数分読み飛ばさなければならない。下手するとエロ自体も読み飛ばしてしまう危険性もある。
「水夏弐律はエロゲじゃねぇんだよ!ブンガクなんだよ!」とでもいいたいのだろうか?
スタッフの思い上がりなのか、手抜きなのか?
前作にはあったエロゲとしての大前提たる機能すらオミットする英断に、”泣く”ことを止められない

【お約束】
パッケージの中に、今後のメディアミックス展開、FD製作準備について描かれたチラシが入っておりました☆
ああ、捕らぬ狸の皮算用……”泣ける”

後…さやか先輩ご結婚おめでとうございます。”泣ける”w 
なお、前作キャラが出てくる必然性はありません。故郷捨てたのか…哀れ、律先生(前作の重要キャラ)

【私見総評】
素直に群像劇仕立ての漫画かアニメで製作すれば良いシナリオ構成であった。
さらに旧作との関連性は無いと入っても等しく、水夏関係を臭わせる別タイトルで出した方が古参層にヘタな幻想を抱かれない分二次購買に繋がったのではないかと思われる。
総合的にPC形式のゲームという利点を生かし切って居らず、逆にノベル形式ADVゲームという媒体が足を引っ張っている要にしか見えない。
例えば、旧EVEにある任意の視点変更、あるいはフローチャートやツリー形式のようにすれば謎解き型シナリオとして活かすことが出来たと思われる
旧作と比較すれば質量共に比較するのも失礼なくらいのレベルであり、システムの出来の悪さもありキャラ萌か執念がなければ多分最初の1章で挫折する。
とはいえ、シナリオ自体は「凡百」な量産型学園ADVに比べればまだマシな出来であることは記したい。
「水夏」というブランド目当てで買った者にとっては相当なクソゲーであり、確実に八回は血涙慟哭できるゲームである。
ノミネートを狙える聳え立つようなクソの巨塔でないとは解りつつ、まさに曲芸商法の模範例ともいえる構成の行き着いた先と
かって無名に近かった曲芸の名を一気に高めた巨作の死を追悼する送り火として選評を記したい。


過去のコメントはこちら

タグ 2011年の作品
最終更新:2014年08月02日 16:27