修羅恋~SeeYouLover~ 選評

概要

タイトル 修羅恋~SeeYouLover~
ジャンル アドベンチャー
発売日 2011/3/31
ブランド TEATIME
価格 9240円(税抜き8800円)


選評

594 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2011/04/28(木) 09:18:44.59 ID:DyMhg5DO0
 TEATIMEから発売された、フル3D作品。

1.物語性
 このゲームの最大の売りは、街中にいる女の子と仲良くなり、3Dで描きだされた女の子とHを楽しむことにある。また、そこに至るまでの過程をどのように乗り越えるか、女同士のバトルをどのように捌いていくか? という、二点に集約される。
 しかし、最初の問題として立ちはだかるのは、なんの脈絡もなく自分のアパートに放り出されることだ。一人暮らしということもあって、説明も、会話もなく、いきなり本編が始まる不適切仕様である。
 今日日、ファミコンのドラゴンクエストであっても、導入部で最低限の助言や、説明、物語の動機付けくれるというのに、本作ではなにもない――まるで、たけしの挑戦状 バリの始まり方だ。※ただしゲームオーバーはない。
 外にいる女の子全員とは、互いに知り合い程度、恋人未満の関係で始まる。
 彼女がどういう性格なのかは、数度のいい加減な会話モードからしか推測できない。それも、中身スカスカにテゴライズされた[ツンツン][(歴女)お姉さん][(アニメ)オタク][おっとり]というステレオタイプが、お触り程度にみえてくるだけで、奥行きはなく感情移入ができない。
 また、彼女達の個性は物語とまったくリンクせず、フラグにもまったく影響を与えない。コスプレHがあるわけでもないし、そこから話しが膨らむわけでもない。女の子同士の横の繋がりや、敵対する男との関係などもまったく覗けないため、ますます心の入らない仏像状態である。
 結果として3Dの女の子から生活感が感じられない。
 また、普通の社会をベースに作っているはずなのに、プレイヤーから女の子の位置は筒抜け(GPS仕様)で、監視社会真っ青な仕様になっている。
 この仕様は、探すのが大変なユーザーに優しい設定なのかと思いきや、そもそもマップ5つと少ない。よって、あてもなく適当に探していても、目的の女の子をすぐに発見できるイージーモードである。
 続いて、登場キャラのなかには女の子のほかに、敵対する茶髪のお兄さんが登場する。ちょっかいを出したりすると、殴りかかってきたり、追いかけてきたり、二人の恋を邪魔してくる。ただし、彼は一言も喋らない。(音声が入っていないのではなく、テキスト自体が存在しない)その変わり、都合が悪いといきなり殴ってくる低脳仕様。追われることはあるが、プレイヤーの方が足が速いので、キスシーンなど移動できない強制イベントで殴られる以外は問題は起きない。寝取られないように、パラメーターを注意する程度の能力で十分である。

 なお、ゲーム中にでてくるのは絡んでくるキャラのみで、いわゆるMOBといったものは一人も現れない。

 さて――ここに至るまで、物語らしい物語が一切語られていないが、そもそも、このゲームにまともなストーリーなど存在しない。街中で女の子に接近し、任意に右クリックして会話を展開したり、キスをしたり、身体をもみもみしたりする以外にすることがない。また、各キャラの持ちネタは両手で数えて余る程度。それも極短い会話で、前後見境なく使われるため、基本的に会話らしい会話が成立しない。また、数度出合えばすべて見きれる内容と数自体もとても少ない。
 さらに、会話モードを数度繰り返し、キス等を繰り返せば、後は任意のタイミングで自分の部屋、さらに彼女の部屋へ呼ばれる仕組み。気をつけることといえば、男と女キャラとはち合わせしない程度のことで足り、後はやることをやれば、終了だ。
 ここまで来るとどうでもいいことかも知れないが、街中Hの時は、誰とも遭遇しないようになっている。それどんなカードキャプター○くらだ。

 このように、TEATIME好きが想像するような、鬼畜要素もなければ、代わりとなるストーリーもない。まったくもって肩透かしを食らわせてくれる。


2.ゲーム性
 修羅恋のオフィシャルページをみれば一目瞭然であるが、本作の見せ所は、

[主人公を取り合う女の子同士のバトル]

 である。
 男一人に対し、好かれている女の子が大勢いれば、当然いざこざがあって当然である。本作は、そこに焦点を絞って、そのやりとりを男の視点で楽しみ、そして攻略することで達成感を味わえる……というカラクリである。
 だが、この作品では、そうしたハラハラ感は、ほぼ間違いなく味わえない。
 仮に味わえたとして、それは1回限りで、その後はただだるいだけのシーンが繰り返されるだけの落胆にかわる。

 中身について順を追って説明する。
 先ず二人以上の女の子と仲良くなる必要がある。その後、片方の女の子と会話をしているところに、もう一人の好きになっている女の子とはち合わせする。
 そこで、お互いが火花を散らし罵り合うことで、修羅場がスタートする。
 先ず、画面構成であるが、簡単にいうと[格ゲー]のあれである。
 HP MP EP っぽいグラフが存在し、何かしらの攻撃があるとダメージが蓄積され、最後までHPが残った方の勝ちである。
 なお、最初の選択肢は、
[煽り]
[黙認]
[逃亡]

 だけである。
 対応を間違えると、両方から平手打ちをくらい、修羅場が集結する。
 両者が一歩も引かないと、今度は、[女の子Aを応援][女の子Bを応援][両方をなだめる]といった具合の選択肢がでる。いっておくが、選択肢はこれしかない。格ゲーっぽい画面から連想するような要素はまったくない。基本、半自働で戦闘が繰り広げられるのを、ただ見ていることしかできないシステムである。
 しかも、女達の修羅場がどのような状態化といえば、ステレオタイプのたわいもない言葉による罵り合いときたもんだ。会話があまり噛み合わず、1回の修羅場で、あっさりネタを使い切ってしまい、追い打ちをかけるように言葉のキャッチボールは電波子状態。取っ組み合いも含めて、まるっきり小学生の口喧嘩レベルで悪寒が走る。
 結果、短い間に二度三度と同じ掛け合いを聞かされるはめに陥る。
 そして、AかBの女の子が勝利する。AとBから嫌われる、痛み分け――3種類の結末によって、パラメーターが変化し、次の行動に移れるようになる。後は、永遠これを繰り返していき、終わりのないゲームが続くようになる。
 ここで書くのも気が引けるが、何度か電波トークをかわして、キスして、胸もみもみ、Hシーンを通過しただけの恋人のために――電波暴言(妄言)戦争に巻き込まれるのは、さすがに、白けるのではないか? ※アニメスクールデイズのような没入感はさらさらない。

 TEATIMEページを見る限り、もっともゲーム的魅力である修羅場がこのような散々な結果だ。

 続けて、やり込み要素――というものが、本作には存在する。簡単にいうと、決められた条件を達成すると、それに伴い称号がもらえるというもの。一般的なAVGなどでも、特定のパラメーターを得たり、実行することで、[完全無欠の肉体]など称号がえられて、すべてコンプするたやり込み要素があったりするが、基本は同じである。
 ただ、ここでのやり込み要素はもっと投げやりで、おまけ程度と思った方がいい。
 まず、ゲームのシステム的に、繰り返しているようにシナリオがない。さらに用意されているパラメーターは[主人公好き好きメーター][寝取られ男好き好きメーター][今の気分][H回数などログ]等で、物語がないので、パラメーターによって影響するのは、即物的な反応にすぎない。
 よって、得られる称号の規準も、適当といわざる得ないものが大半を占めていて、
[一定時間走る]
[キスを沢山する]
[ジャンプを繰り返す]
[全員の服を着替える]*一人3種類のみ × 5人 初期からすべて装備できる
[全員とHする]
[密告](密告王 密告キング)

 等で、それとなく目星を付けて遊んでいったら揃うだろう的な内容ばかりがつらなる。
 ただ、これらもゲーム進行に関係ないものが多く、みつけたからといっていいことが起こるわけでもない。こんな所に凝る前に、やるべきものが山積みであることは、一言付け加えておこう。


3.3D要素
 言わずと知れずTEATIMEはIllusionと同様、フル3Dで遊べることを売りにしている。
 また、双方で協力関係にあることもあり、Illusionをみても、TEATIMEをみても、過度にCPU依存していたり、相変わらずマルチコア対応になっているのが少なかったり問題は少なくないが、少なくても背景からキャラまで一定の質に定評がある。
 しかし――そうした過去作ですらなかった、Windows95已然とした突貫工事のようなのっぺりCGなのが本作である。本作の街並みはもちろん、彼氏、彼女のアパートの造りなど、1990年代ならともかく、2011年の作品とは思えない、杜撰で大ざっぱなテクスチャで覆われているのが、本作の特徴だ。
 なまじ、キャラクタがそこそこ可愛くしっかり描けているだけに、そのギャップに苦しむ。
まるで写真女の子のバックに、小学生が書いた背景がが映りこんでいるかのようだ。結果として、ゲームの内容に入り込むことをとても効率的に阻害している。
 しかも、マップをみれば一応わかることであるが、公園にいくと、芝生に入れないなど、行動制限が非常に多く、街並みには、一応それっぽいお店が描かれているが、当然入れない。というか、入れる場所は酷く限られており――
[主人公の家]
[女の子の家]
[マップ切り替えポイント]

 のみである。
 RPGで例えるなら、宿屋と街と女の子Aの建物だけ入れます――状態である。
 当然、会社に乗り込んで、私の夫を取らないでみたいな物語に発展することはないし、カフェテラスでお茶会を楽しんでたらほかの女が乱入なんてこともない。存在するシナリオは、[公園(歩道のみ)][街中(車道・歩道のみ)][住宅街(車道のみ)][主人公or彼女の家]のHと修羅場と、とても潔い
 移動に関しては、基本左クリックで前に進む。[>Control]駆け足。[C]汁出し。[Space]ジャンプ。など、ほかにいくつかの行動パターンがある。
 なお、ジャンプに至っては、ハイパーふんわりエクストラジャンプと呼ぶべきもので、浮いている間も、左クリックで押した分だけ前に進み、途中で離すと止まるというスーパーマリオですらドッキリの高性能ジャンプである。当然、浮いている間に[>Control]で進めば早くなる。
 2階の主人公の部屋から廊下から一気にジャンプ降下しても問題ない。仮に彼女がいても彼女も無傷で、足腰がとても強いお二方、というありさまである。また、走ることに関して追加すれば、茶髪の対立する男から逃げるときも、主人公“達”の圧倒的速さの前にはたじたじになる。
 女の子が一緒でも、茶髪のお兄ちゃんの方が足が圧倒的に遅く、また体力といった概念がないため、その気になれば容易に逃げ続けることが可能。道さえ覚えておけば、捕まることは先ずなく、難易度がとても低い状態になっている。
 で、結局全体的な操作性はいいのか? といえば、そうでもない。
 左クリック前進というのは、WASDに慣れていないユーザーが多いと推定されるエロゲーなら許されるかも知れない。だが、マウスの感度がオカシイ。一般的なマウス感度で左右に移動するときは、想像を絶する移動距離を必要とされ、でかいマウスパットか、空間がないと無理という緩さだ。

 また、謎の難易度にセーブがある。
 セーブは主人公の部屋で行うのだが、外から戻ってきて、セーブポイントに直行しても、セーブすることはできない。移動不可ゾーン(長いす)があり、それを左なり、右なり迂回して、ブログ(セーブポイント)を書くいく必要があるのだ。また、ブログが書けるスペースが狭く、少しでも行き過ぎると書けなくなるので、謎の慣れが必須となっている。

4.H
 テキストベースのHシーンだと、色々情緒豊かなプロの声優さん様々であることをいつも実感する筆者であるが、3Dになると、途端に萎えるのは、今回も同じであった。紙芝居AVGだと、読ませる言葉と順序と、シーンとして会話が加わり、状況が興奮をより盛り上げてくれる。
 堕ちる、堕とせ、堪える――と、声がシーンが進むと、それによって声が徐々に変わっていき、最後に! フィニッシュ!! と、やってる方も没入していくからだ。
 だが! 3DのリアルタイムHにそれを求めてはいけない。
 先ず持って、いくつかのボイスを適当に繋ぎ合わせたような、不自然に盛り上がらない声が、ループされ続ける。ここまで来たら自棄で書くが、物語がないので、好き、あんあんあん とってもだいすきと、いわれるだけである。
 前座(シナリオ)の大事さを思い知らせるのには十分な不出来である。
 さらに、先に書いたように、服は1キャラ3種類×5人であり、最初からすべて選べるという、コンプリートする楽しみすらない仕様である。好きな女の子をコンプしたり、服を集めて、よし、それでHだという達成感すらない。
 また、Hできるマップは[主人公の住まい][彼女の住まい][その他の移動可能エリア]という少なさに続き、感情移入シナリオレスな環境などが重なる。電波子達が必至に腰を振ってる行為を、画面の先でどういう心境で見つめればいいのか――プレイヤー(男の子)自身に襲う、哀愁のやり場にこまる状況にお悔やみ申し上げます。
 過去の作品――人工少女、箱等は、あくまでファンタジーの世界なんだと、プレイヤーとの距離感を意図的に保ち、それを許容して楽しむ内容であるからよかったが、今回は絶対に違う。なのに、このざまだよ。
 本作は、何を楽しめばいいのか?


総評
 10年前であれば、新しい世界観として受け入れることができたであろう本作も、今の時代にそぐわない完全なクソゲーである。継続性のないやりとりは、ぶっちゃけ人工少女ばりに電波である。しかし、明確な攻略法が求められるあたり、人工少女とはコンセプトは違うはずだ。
 見所であるはずの修羅場が完全に転けたとき、本作の魅力は完全に地に堕ちた。
 残滓であるH部分を楽しみたいなら、素直にカスタムメイト3Dという既存ゲームに行けば解決する。こちらは従来通りパラメーター式の攻略が通用し、なにより雄志達による膨大なMAD素材があり、キャラクタメイキングを思う存分楽しめる。
 それに付け、修羅恋で褒められるのは、街中を歩く女の子を攻略するという、手間のかかる作業の割に合わない、永遠に続く茶番劇だけという哀愁漂う仕様は圧巻だ。
 フルプライスでなく、低価格ゲーであればともかく、これは得てして虚無ゲーを作りましたといった方がしっくりくる。

 修羅恋に次の言葉を捧げて、締めくくろうと思う――

 ちゃんとしたティータイムに刺激的な修羅が来い!


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最終更新:2014年08月02日 16:05