2012年度 総評案1

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**2012総評案1 大賞:SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~ 145 名前:総評1 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:3) ◆7vFCW65x4U [sage] 投稿日:2013/02/01(金) 20:30:04.39 ID:bsWrQPzl0 [3/16] #blockquote(){クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(通称「KOTYe」)が誕生してから4年目となる2011年、本企画は異例の事態に見舞われていた。 「五惨家」の襲来、そして大賞のダブル受賞・・・ そのあまりの豊作ぶりに、二か月近くものあいだ総評選定の場は紛糾し、 遂には「究極のクソゲーとは何か?」という本質的な問いにまで議論が及ぶこととなった。 2012年1月27日、そんなスレ住人達を嘲笑うかのように、softhouse-seal(通称「seal」)より今年最初の刺客が放たれる。 『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』(通称『くのいち』)の推参である。 前年に大賞を受賞した『学園迷宮』をはじめ、『変態勇者』『淫姫』『学園快談』などを次々と世に送り出し、一躍クソゲー界に勇名を轟かせたseal。 本作も体験版の惨状などから早くよりその存在が危険視され、購入予定者は戦々恐々としながら来たる決戦の日に備えていた――― 本作は『スパルタンX』のように、ステージを横に進みながら敵を倒していくタイプのアクションゲームであるが、 実はジャンプ中は完全無敵であるため、斜め上方向にキーボードを押しっぱなしにしているだけで簡単にボスまで到達できてしまう。 そのボスも大体ボタン連打で倒せるため、ゲーム性はほぼ皆無と言っても過言ではないだろう。 また敵忍者と接触すると、その敵忍者に犯されるアニメーションが流れるのだが、 表示が小さい上に単調なピストン運動を繰り返すだけなので、とても実用に耐えうる代物ではない。 まさに前年覇者としての矜持を見せつけるかのような迷走ぶりを展開していたが、 更にsealは何を思ったのか、「ミニアニメーション以外のエロシーンを全撤廃する」という大暴挙に打って出てしまう。 今までsealは、たとえシステムがどんなにクソでも「絵はいいんだよ」と擁護されることが多かったが、 その絵をかなぐり捨ててしまったら一体何に価値を見出せばいいと言うのか? 「エロゲー」から「エロ」も「ゲーム」も取り払われた本作は、ただただプレイヤーの心の中に虚無だけを残して去って行った。 sealのターンはまだ終わらない。 続いて登場したのは、系列のDevil-sealより2月10日に発売された『獣ノ躾 ~本能と理性の狭間で悶えるケモノ~』(通称『獣ノ躾』)である。 本作は調教SLGであり、ヒロインを娼館で働かせて借金を返済するのがゲームの目的となるが、 表示されている借金の「返済額」と実際の「取立額」が大きく異なっている。 具体的に説明すると、ゲーム画面では「週末までに300万返済しろ」と表示されているのに、 いざ週末になると何故か500万も取り立てられ、所持金が500万に満たない場合は即座にゲームオーバーになってしまうのだ。 この「事前に請求した以上のカネを問答無用で分捕っていく」という鬼畜の所業には、 「どこの悪徳金融業者だ」「あまりにも無慈悲すぎる」などのプレイヤーの怒号が飛び交うことになった。 ちなみに、最終週には「取立額」が1000万に膨れ上がるのだが、 ゲーム内ではどう頑張っても900万程度しか稼げないため、事実上クリア不可能となっている。 本作はこのほかにも、シーン回想で調教シーンの一部が閲覧できない、調教アイテムが勝手に売却されてしまう、素材の入手量が極端に少ない、 初期の修正パッチを当てるとエラー落ちする等のバグがてんこ盛りであり、まともにゲームをプレイすることすら困難な有様であった。 幸い、最新のパッチによってこれらの不具合は概ね解消されたものの、この年明け早々からのsealの大攻勢は、 「今年こそ、単独の大賞受賞を狙いに行く」という彼らの悲壮な決意の表れであったと言えよう。 seal騒動も落ち着いてきた3月、意外なところからクソゲー来襲の報が届けられる。 戯画の『マテリアルブレイブ』(通称『マテブレ』)の登場だ。 3月は多くの企業が決算期を迎えることもあって、年末の魔物ならぬ「年度末の魔物」が潜んでいることでも有名だったが、 まさかTEAM BALDRHEADの新作がKOTYeの門を叩くことになるとは―――まさしく寝耳に水の出来事であったと言えよう。 まずADVパートについてだが、本作は個別ルートが(本番1回の)エロシーンとエピローグぐらいしか分岐しないので、物語は実質的に一本道しかない。 その一本道の部分も非常に短く、多くの伏線が未回収のまま終了するという体たらくである。 この「シナリオの一本糞仕様」に加えて、本作は引継ぎ要素の薄さや探索パートの面倒臭さなどが問題点として挙げられていたが、 そんな中で特に衆目を集めたのが、日常パートにおけるジュースネタの多さだった。 日常パートでは、主人公がヒロインたちと親睦を深める様子が描かれるのだが、その大半に「ヒロインにジュースを奢る」という場面が登場する。 ジュース一本で心も股も開いていくヒロインたちの様子に対し、どこぞのセレブ系インモラルADVよろしく、 「ジュースに媚薬でも混ぜていたのではないか?」との邪推もあった。 ライターの藤原氏は、『英雄*戦姫』においても観光ネタとグルメネタしかないことで物議を醸していたが、 そのあまりの引き出しの少なさには呆れ果てるばかりである。 バトルパートはそれなりに遊べるので大賞候補からは外れたものの、なまじ期待が大きかったこともあって多くの爆死者を生むことになった。 3月は他にも、自分勝手で不愉快な言動を繰り返し、間違っても友達にはなりたくないヒロインが多数登場する『Friends』や、 伏線もエンディングも投げっぱなしで、決算に間に合わせるために見切り発車したとしか思えない『Princess-Style』などの選評が届いたが、 その後は特に話題になる作品も無く、住人達は平穏無事な時を過ごしていた。 そんなある種弛緩した空気が流れていた6月、分厚く覆われた梅雨空の雲間から不気味に舞い降りる二つの黒い影があった。 その一つ目は、黒鳥より発売の『NTR48 ~俺の家族が寝取られるまでの48日間~』(通称『NTR48』)である。 本作はインストーラーがバグっており、ディスクを入れて最初に表示されるのは「ゲームを起動する」と「アンインストールする」の二項目のみ。 当然「ゲームを起動する」をクリックしても何も反応は無く、 「アンインストールする」をクリックすると、何故か「前作『濁悪催眠』を削除します」のポップアップが表示される。 のっけから凶悪な雰囲気を漂わせている本作だが、やはり「48」という不吉な数字を冠したことが祟ったのか、 その中身も語るにおぞましい「ナニカ」で満ち溢れていた。 まずタイトルを見て某アイドルグループを連想した人は多いと思うが、制服がそれっぽいこと以外に全く関連性は無い。 副題にある「寝取られるまでの48日間」もまるで意味を成しておらず、どのルートも唐突にヒロインが凌辱されてお仕舞いである。 また本作は、母、姉、妹などの「家族寝取られ」をコンセプトとしているが、主人公は彼女たち(姉を除く)を単なる家族としか思っていない。 寝取られには様々な形があるとは言え、「主人公側に一切恋愛感情が無い」というのは、流石に寝取られ作品として致命的だろう。 なお、本作はHシーンの尺も非常に短いので、単なる抜きゲーとしても使い物にならない点に留意したい。 寝取られ作品は昨今、凌辱規制の煽りを受けて粗製濫造の様相を呈しているが、そんな中でも群を抜く本作の酷さはひときわ輝いて見えた。 二つ目の影の名は、あかべぇそふとすりぃの『JOKER-死線の果ての道化師-』(通称『JOKER』)である。 同ブランドは、『車輪の国』『G線上の魔王』などの名作を生み出したあかべぇそふとつぅが、 『フェイクアズール・アーコロジー』のあっぷりけ妹や、『暁の護衛』のしゃんぐりら等の姉妹ブランドを統合したものであり、 その第一弾となる本作は、文字通りその切り札的存在として大きな注目を集めていた。 しかし、いざ体験版が公開されると、「ざざーんざざーんごごうごうばばばば」「ごごろぴごーーん、なんてときどき落雷」 などの斬新すぎるテキストが次々とお目見えし、予約者たちの間に激しい動揺が走ることになる。 製品版においても、その狂気的なテキストはとどまる所を知らず、 「びひゅおうおうおうおうひゅうおうおうおうおうおう」「そそそそそそそそそそそとセイタカアワダチソウののオーケストラ」 「見渡す限り緑緑緑緑緑の草草草草草草草」「デDeathDeathででDeathDeathデデンデンDeathデデン」 等々の場面をキャプチャーしたものがネット上で広まり、「エロゲー界に鬼才あらわる!」として各地で大きな話題となった。 肝心のシナリオの方も、ほぼ完全な一本道な上に謎が多く残される有様であり、「デスゲームとしても凡作以下」という評価を受けている。 良くも悪くも、新人ライターの小山田氏ばかりが注目される結果となったが、 果たして本作で大赤字を叩き出してしまった彼に再チャレンジの機会はあるのか? 他人事ながら心配になるところである。 長い梅雨も終わって7月に入ると、softhouse-sealより『魔物っ娘ふぁんたじ~』(通称『魔物っ娘』)が発売された。 『変態勇者』と『学園迷宮』に次ぐseal製RPGの第3弾として製作された本作だが、一言で言ってしまえばまるで成長していない。 宝箱が開かない、敵のグラフィックが表示されない、ボス戦で逃げると勝利扱いになる等の細かいバグから、 唐突なエラー落ち、ボスを倒しても先に進めない、階段やダンジョンの入り口が透明で見えない等の致命的なバグまで完備。 更には、「ダンジョンで逃げると別の場所に強制ワープし、運悪く壁の中にワープすると操作不能になって詰みになる」 という摩訶不思議な現象まで発生する。 ゲームバランスも相変わらず苛烈で、即死級のダメージを与えてくる敵が高いエンカウント率で出現したり、 次の町に進むと武器の値段が10倍以上に跳ね上がったりと、プレイアビリティの欠片も感じられない。 幸い、今作は救済措置として最強装備を初めから所持しているため、それで無双するのが無難だろう。 「同人の方が余程マシ」とまで評されるseal製RPGだが、本作もその低クオリティぶりは健在だったようだ。 このようにsealは、7月の時点で早くも3作目の刺客を送り込んで来ていたが、 そんなsealの盛況ぶりとは裏腹に、今年は地雷の報告はあっても選評が中々届かないという事態が相次いでいた。 その大きな原因となったのが、年初に発売された『くのいち』の存在である。 「HCG0枚」の与えたインパクトはあまりにも強烈で、「最早まともなクソゲーでは太刀打ちできない」と、みな暗黙のうちに認めていたのだ。 「今年のKOTYeはsealの一人勝ちか?」 そんな諦観に満ちた空気がスレ内に広まっていた頃、sealの猛威を食い止めるべく、三つの勇気ある作品が立ち上がった。 その先陣を切ったのが、『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』(通称『SEX戦争』)である。 開発元のスワンアイは黒鳥の姉妹ブランドであり、スワン系列としては『NTR48』に続いてのエントリーとなったわけだが、 発売して即座にメーカーファンから黒歴史扱いを受けるその実力は尋常なものではない。 本作は「バカゲー+抜きゲー」をその主たるコンセプトとしているが、 いずれの見地から見ても、とても商業作品とは思えない―――もとい、作品と呼ぶのも烏滸がましい程の惨憺たる代物であった。 まずバカゲー方面。 本作は「数十年ものあいだ、男女間でSEXによる争いを続けている学園」がゲームの舞台となっているが、 その歴史的経緯や争いの理由などは一切説明されない。 世界観がぶっ飛んでいること自体はエロゲーでは珍しいことではないが、そのことについて何らの理由付けも行われない作品は流石に稀有だろう。 一体誰がこんな学園に入学したがると言うのか・・・ライターに小一時間問い詰めたいところである。 また本作のシナリオは、フラグ管理が破綻している上に「全編ダイジェスト風味」で進行するため、 話が途中で飛んだり、途切れたり、無かったことにされたりといった事態が頻発する。 その結果何が起こったのかと言うと、 ・SEXの強さによって序列が決まる世界なのに、そのトップランカーたちが何故か全員「処女」である。(処女膜の再生) ・SEX勝負に負けたはずなのに、後日談では何故か勝利したことになっている。(記憶の改竄) ・ヒロインの破瓜シーンで、主人公が「使い古しのマンコなのに気持ちいい!」と発言する。(新古品) ・主人公と一度もHをしていないのに、何故か主人公の子供を孕んで(!?)いたりする。(種無し懐胎) ・とあるヒロインのフラグを折ると、そのヒロインが「初めから存在しなかった」ことにされて別のヒロインと摩り替わっている。(世界線の変更) 等の怪現象が次々と発生。 「“バカゲー=何をやっても許される”と製作者が勘違いしているのではないか?」とスレ住人からも危惧される事態となった。 次に抜きゲー方面。 本作はエロシーンまでもがダイジェスト仕立てで構成されており、大抵のシーンが「10~20クリック程度」という涙モノの淡白さで終了してしまう。 物語の中盤において、主人公は学園TOPの性技の持ち主として注目されることになるのだが、 挿れてから僅か数秒で暴発するその姿の前では立つ瀬が無いと言えよう。 このように、シナリオ・エロシーンともにダイジェスト風味で仕立てた甲斐があってか、 本作はフルプライス(9,240円)ながら「クリアまで1時間、コンプに3時間」という犯罪級の短さになってしまった。 肝心のテキストも「ペロッ・・・これは精子!!」などの下品なパロネタに頼り切っており、 選評者をして「こんなに短いのに、クリアするのが苦痛でならない」とまで言わしめる始末。 もはや一体どこに価値を見出せばいいのか分からない有様であったが、 挙句の果てには「おまけシナリオをインストールすると、本編データが上書き消去される」という本末転倒なバグまで披露し、 「メーカー側にとっても黒歴史だったに違いない」というファンの推論を裏付ける結果となった。 二番手を務めたのは、製作期間およそ10年の超大作、Exceptionの『白神子 ~しろみこ~』(通称『白神子』)である。 本作は「前世紀の遺物」とでも言うべき古臭い絵柄が話題となり、発売前から今年のダークホースとして注目を集めていたが、 中身の方も昭和時代を彷彿とさせるような古臭さが前面に出ていたため、購入者から即座に「おじいちゃん向けエロゲ」などと名付けられてしまった。 この作風の古さも然る事ながら、本作が普通の作品と一線を画している所以は、その異常なプレイ時間の長さにある。 本作の予想される総プレイ時間は、一般的なエロゲーの実に4倍近くに当たる45時間。 選択肢の数も優に100を超え、エンディング総数も34個にまで及ぶと言うのだから、まさにそのボリュームは規格外と言っていいだろう。 物語やヒロインに余程の魅力が無ければ耐えられないような冗長さであるが、その肝心の物語は陳腐で平坦な展開が延々と続き、 ヒロインに至っては「肛門の筋肉がゆるゆるで、身体から汚物の匂いを漂わせている」なんて有様なのだからどうしようもない。 本作はレビューサイトやツイッターなどでも殆どその感想を見かけなかったが、 果たしてこの「地獄の耐久マラソン」とまで称された苦行の道程を、完全走破した者は一体何人いたのだろうか・・・? この『白神子』に触発されたのか、7年半もの長い眠りから目を覚ましてしまったモノがいる。 EMUの『パジャマさんこんにちわ』(通称『パジャマさん』)のお目覚めだ。 「フルボイスなのにたった201MBしかなく、しかも体験版と全く容量が同じ」ということで大きな騒動を巻き起こした本作だが、 その中身も「そのまま永眠していれば良かったのに・・・」と言われるほど悲惨極まりないものであった。 本作は「学生寮病みキャラ猟奇純愛ADV」を名乗っており、心の闇を抱えたヒロインたちを主人公が救済する物語だが、 「総プレイ時間=2時間」という分量でまともな展開を書けるはずも無く、各ルートとも僅か十数分で起承転結の全てが終了してしまう。 その展開の速さたるや、さながらジェットコースターのようであり、 「虫けらの如く主人公を見下す→(数分経過)→和解してラブラブH」などの突飛な事態に、プレイヤーは目を白黒させることとなった。 この展開の速さに合わせたのか、イベントCGも一瞬チラ見せしただけでポンポン切り替わる「超贅沢仕様」になっている。 まるで使い捨てるようなCGの扱いにプレイヤーの不審の目が集まったが、その後パッケージ裏に未使用のCGがあることが発覚したため、 この贅沢仕様は、シナリオが大幅に削られたことによる「単なるシワ寄せ」であったことが判明した。 この大幅なシナリオカットの影響はエロシーンにまで及び、 あるヒロインとのエロに至っては、本番シーンが丸々カットされていきなり事後のシーンにまですっ飛ぶ始末。 本作のヒロインは今時珍しく「全員非処女」であるのだが、これらの惨状の前では些細な問題でしかないだろう。 悪夢のような事実が次々と明かされていく中、トドメとばかりに「今までの話は全部主人公の妄想でした」という壮絶なちゃぶ台返しが真√で行われ、 プレイヤーはパッケージ裏に書かれた「嘘だろ?騙された・・・」という言葉を深く心に刻みつけることになった。 かくして、これら三つの作品による大掛かりな反攻作戦が展開されていたが、当然seal側も黙って見ていたわけではない。 11月には『欲情トマランナーズ ~エルメロスは絶頂した~』(通称『メロス』)を発売し、 クソゲー界の盟主としての地位を死守せんと、透かさず反撃に乗り出したのである。 同作品は高速スクロール型のアクションゲームであり、タイミング良くボタンを押すことで敵を倒したり穴を飛び越えたりするゲームだが、 その肝心のボタンの反応が非常にシビアで、ボタンを押しても攻撃が出なかったりジャンプが出来なかったりといった事態が頻発する。 また穴の判定も相当いい加減で、穴の上(空中)を普通に走れてしまうこともあれば、 逆に穴の手前で地面を貫通して落下死してしまうこともあるなど、見た目に頼れないポイントがあちこちに点在している。 このため本作をクリアするためには、何度も死にながら穴の本当の位置を把握する作業が必須となり、 本来は「タイミングゲー」であったはずが、実際には理不尽な「死に覚えゲー」になってしまっていた。 本作は「使うボタンがZ(攻撃)と↑(ジャンプ)の二つのみ」「数十秒で終わるステージがたった五つあるだけ」という非常に簡素なゲームであるが、 そんな短いゲームを少しでも長く楽しんでもらおうと苦心する製作者の御高配には感涙を禁じ得ない。 sealの反撃によって一層の混迷を極めていた年末、『メロス』の邪気に誘われるかのように、ゲーム性重視型のエロゲから次々と選評が舞い込んできた。 まず現れたのは、FLATZの『Cross Quartz』(通称『CQ』)である。 同ブランドは、『シークレットゲーム』シリーズでお馴染みのFLATの姉妹ブランドであるが、 同人業界の「何でもアリ」的な気風がまだ抜け切れていなかったのか、商業エロゲーにあるまじき超絶鬼畜アクションゲームを生み出してしまった。 まず本作の大きな特徴として、「敵から特定の攻撃を受けると、移動リフトなどの一部の床を一定時間すり抜ける」というものがある。 移動リフトの下には大抵針山が待ち構えているため、「攻撃を喰らう→針山でティウンティウン」という即死トラップが至る所に顕現してしまった。 また本作は、ハシゴなどの操作性が極悪な上、イライラ棒のような精密な動作を頻繁に要求されるので、 プレイヤーは否が応でも死亡数を積み重ねていくことになる。 このように即死ポイントが大量に散りばめられているにもかかわらず、 セーブポイントが「全500フロア中、たった30個」しか設置されていない点も特筆すべきであろう。 「ボス部屋の周辺にセーブポイントが無い」なんてこともざらにあるため、 折角苦労してボスを倒しても、その帰り道で死んだらもう一度最初からやり直さなければならないという心折設計になっている。 本作はこのほかにも、シナリオが寒い、謎解きが不親切、攻略手順が不明で迷子になりやすい等の問題点を抱えていたが、 遂には作中キャラまでもが「クソゲーじゃねぇか」とメタ発言で扱き下ろし出す始末。 修験者の心地でこれらの苦難を突破したとしても、 肝心のエロシーンはカクカクのコマ落ちアニメのような低質さであったため、ただただ徒労感のみが募る結果となっている。 これらの悪意に満ちたゲームデザインから、本作は「エロゲー版アイワナ」の称号を賜ることとなったが、 タチの悪いことに体験版では普通のアクションゲームにしか見えないため、そうとは知らない多くのプレイヤーたちを地獄へ叩き落としていった。 続いて登場したのは、往年の名作『ドラゴンフォース』をリスペクトした国盗りSLG、『深淵のレコンキスタ』だ。 開発元のルナソフトは、FLATと同様に同人上がりのブランドであるが、 やはり同人時代の気風が影響したのか、戦略SLGとは名ばかりのバランス崩壊ゲームになってしまっていた。 本作は計20種類のユニットを駆使して戦闘を行うが、ユニットに関する情報が「生産に要するコスト」しかなく、 ユニットごとの能力値やその特性、果ては兵種同士の相性に至るまで一切の情報が開示されない。 これは『信長の野望』で喩えるなら、統率・武勇等の各武将のステータスが一切不明と言うことであり、 戦略を立てるための土台となる情報がすっぽり抜け落ちていることを意味していた。 これではいくら兵種が多くても何も意味は無く、ひたすらユニットを生産して物量でゴリ押すぐらいしか有効な戦術が見いだせないだろう。 このように本作のゲームシステムは、未完成品かと見紛うばかりのお粗末さを誇っていたが、 UIも簡素さと不便さを突き詰めたような「手抜き」に終始しており、『デスクリムゾン』張りの充実したコンフィグ画面が哀愁を誘っている。 ゲームの終盤には、単体で雑兵1000体を鏖殺するチートユニットや、たった一発で戦況を180度ひっくり返す凶悪な戦術魔法まで登場し、 プレイヤーは「戦略とは一体何だったのか?」という根本的な疑問に頭を悩ませる破目になった。 年の瀬も押し詰まった12月28日、総括ムードの漂っていたKOTYeスレに、全く予期せぬ方向から「魔物」の一報が届けられた。 REALの『いたずらっ娘 ~うちの娘にかぎって~』(通称『いたずらっ娘』)が、見るも無惨な姿で発見されたのである。 本作は7月27日に発売された3Dエロゲーであり、当初から「動作激重」「一部環境で起動不可」などの製品失格レベルの不具合を抱えていたが、 「3Dエロゲーではよくあること」として大した話題にはならなかった。 しかし、「修正パッチやDLCを配布するたびに新たなバグを追加する」という斬新なサポート体制が実を結び、 年末になってようやくKOTYeの門を打ち破ることと相成ったのである。 本作は当初確認されていたバグの数は全部で5個だったが、修正パッチが出るたびに9個、14個とその数が加速度的に増えていき、 ver1.06になる頃には30の大台を突破。 バグの内容も、乳房が垂れて地面とくっつく、腕が異様に伸びてあらぬ方向に折れ曲がる、視点が遠くなってキャラが豆粒のように小さくなるなど、 抜きゲーとして致命的なものが大半を占めている。 直せば直すほど悪化していく状況に、メーカー側も遂に匙を投げ、現在も大量のバグを放置したまま沈黙。 当然のように購入者たちの間に阿鼻叫喚が響き渡ったが、そんな惨状を尻目に本作は萌えゲーアワードの3D部門で銀賞を受賞し、 エロゲー業界の業(ごう)の深さを知らしめた。 さて、主要なエントリー作品をすべて紹介し終えたところで、早速今年の大賞と次点の発表に移りたいと思う。 まず次点は、 『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』 『NTR48 ~俺の家族が寝取られるまでの48日間~』 『パジャマさんこんにちわ』 『Cross Quartz』 『いたずらっ娘 ~うちの娘にかぎって~』 そして大賞は、 『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』とする。 寝取られモドキの『NTR48』、極小容量の『パジャマさん』、鬼畜難易度の『CQ』、バグ追加パッチの『いたずらっ娘』・・・ これらはいずれも個性豊かなクソ要素を持ち合わせていたが、部分的に見れば評価できるポイントが有ったこともまた事実である。 全く良いところが見つからないということで、最終的には『くのいち』と『SEX戦争』が大賞の座を賭けて争っていたが、 勝負の決め手となったのは、「特定層の要求を満たせたか否か?」ということであった。 例えば『くのいち』は、普通のエロシーンを求めていた層にとっては紛れもない地雷であったが、 エロドットが好きな層からは、あのミニアニメーションが好評を博しており、一概にはクソゲーと断じられない側面も存在した。 これに対し『SEX戦争』は、 ・エロシーンで地の文や男のセリフが殆ど無く、ただ単調にヒロインが喘いでいるだけ。 ・「SEX勝負」と銘打っておきながら受け攻めの攻防が存在しない。 ・SEX勝負は男3人vs女3人のチーム戦だが、主人公以外の勝負は僅か数行で決着する。 などの理由から、受けシチュ、バトルファック、寝取られ好きなどの各層からも総スカンを食らっており、 全方面に対してそのクソゲーぶりを強く印象付けるほどの高い完成度を誇っていた。 「捨てる神あれば拾う神あり」と言われるほど、エロゲーマーの趣味嗜好は奥深く多岐にわたっているが、 ほぼ全ての層を寄せ付けなかった『SEX戦争』の在り方は、まさしくKOTYeの大賞を受賞するに相応しい威容であったと言えよう。 エロゲー業界全体を見渡してみると、KOTYeに名を連ねるほどではないものの、 戯画の『ホチキス』、Rosebleuの『氷華の舞う空に』、Purple softwareの『しあわせ家族部』、Sphereの『イモウトノカタチ』、 ソフトハウスキャラの『門を守るお仕事』、ILLUSIONの『ハッピーエンドトリガー』、 ensembleの『乙女が紡ぐ恋のキャンバス ~二人のギャラリー~』、eufonieの『恋剣乙女』などから、ややガッカリな出来との報告が上がっていた。 今回はその不名誉を免れたとは言え、来年以降にKOTYe入りすることが無いよう、各メーカーには精進を重ねていただきたいと思う。 また、今年は大きく世代交代をした年でもある。 古豪のアーベルソフトウェアが、菅野氏の逝去によって戦線を離脱し、 「今後のKOTYeはseal作品で埋め尽くされるのではないか?」と危惧する声も一部であったが、蓋を開けてみればそれは杞憂に過ぎなかった。 一つのヒットメーカーが潰えても、また次から次へとその座を狙わんとする新たな野心家が現れる・・・ 2012年はまさしく、そんな修羅の国の懐の深さを象徴する年になったと言えるだろう。 最後に、見事栄冠に輝いた『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』の開発元であるスワンアイに対し、 次の言葉を贈ることでKOTYe2012を締め括りたいと思う。 「ヒロインの男性経験を無かったことにするのは結構だけど、ゲームそのものまで無かったことにはしないでください。」}

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