1/7の魔法使い 選評

ブランド Regulus
ジャンル 魔法学園AVG
メディア DVD-ROM
原画 TEL-O、T-Ray(SD原画)
シナリオ たつき
音楽 ALVINE
発売日 2015/01/30
定価 10,584円(税込)

選評

【2015】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1424435826/
639 :1/7の魔法使い 選評  ◆34uqqSkMzs:2015/03/12(木) 01:49:34 ID:sw.scH3g0
本作品は1/30発売の新規ブランド【Regulus】の処女作となる魔法学園ADVである
落ちこぼれと称された主人公が仲間との絆と決して挫けぬ意志を武器にやがて世界を救う魔法使いになる
という超王道物語である…がその内実は
ありがちな展開をなぞってみただけの設定ガバガバ内容ペラッペラの、学芸会としか言いようのない代物であった

まず本編の内容に入る前に作中の固有名詞について軽く触れておきたい

『神』(ウルニル)
この世界における創造主としてのいわゆる神。人間にはその存在は確認されていない
『神人』(ノルニル)
『神』から世界を監視する任を与えられているとされる種族
人間の使う魔法より遥かに強力な神魔法を操り、その力で作られた浮遊島で暮らしている
魔法
この世界での魔法の原理とは「魔法式」という魔方陣のようなものを展開し
そこに「魔法力」を込め「詠唱」により発動する。
この魔法式は最低限の素質さえあれば自分・他人のものを問わず認識が可能なものである
『魔粧』(マギアージュ)
簡単に言えば戦闘形態への変身
魔法使いを志す者は最低条件としてこれが出来なければならず
主人公たちは始めにこれを1か月以内に会得しなければ退学という課題を突き付けられる
『自幅』(メルファ)・『他幅』(トゥルファ)
主人公が自らの魔法力の無さを補うために編み出した独自の技であり
自分、もしくは他者の展開した魔法式を主人公が更に上書きすることでその効果を数倍に引き上げるというもの
また特定のルートではこの「魔法式の重ね書き」をお互いに繰り返す『創造』(クレアール)という発展型も生まれる
なお、落ちこぼれとされていた主人公はこの技術によって周囲の評価を爆上げするのだが
正直言って諸々の設定を聞けば聞く程、この程度の技が魔法史上でも誰も使わなかった世界初の技術である
という持ち上げっぷりに全く説得力を感じられなくなる。

少々長くなってしまったが本編の話に入っていこう
このゲームの問題を一言にまとめると「ライターの語彙と展開の引き出しの少なさ」に集約される
その場その場で「それっぽい展開」を取ってつけるために
さっき言ってたことと辻褄が合わなかったり、似たり寄ったりな状況を何度も見るといったことが頻発する

まず第一に会話のテンポが非常に悪い。なにかとシリアスで難解な話をしているという空気を出すためか
やたら「何だって…!?」「つまり……どういうこと?」と聞き返しては今言ったこととほぼ変わらない話を繰り返す
その上でどんな状況でも(大して笑える訳でもない)キャラ弄りの会話を挟んでくるためこれが更にテンポを悪化させる

こういった質の悪さが更に顕著に表れるのが戦闘シーンであり
主人公は攻撃を食らっては「いでーー!」避ける際には「う、うわぁあ…!」と何かと気の抜けた声を上げ
実戦訓練にて自分の剣を防御魔法で止められた際には「なんか…防御魔法で止められると、寂しいんだけど」だの
ラスボス戦で自分への攻撃を仲間に防いでもらった時は感謝よりもその後の対応よりも、
仲間が『創造』をあっさり使ったことに対して「俺の…専売特許が」とボヤくなどとにかく緊張感が感じられない。
また主人公は「自幅で強化してもやっと人並み程度」と自認する魔法力の乏しさを戦略や駆け引きで補う頭脳派…らしいのだが
いざ戦闘が始まると「強化魔法で加速して突撃」を繰り返すだけの脳筋と化す
しかもどれだけ相手が格上という描写がされてようとこの戦法で十分渡り合ってるため
「お前の何が落ちこぼれだ」とツッコミを禁じ得ない

特にひどいのがクラスメイトの雨宮真優との試合で
つい直前に自分から手の内を明かすわけないと言っていたのに主人公が憶測を呟けば
それが合っていようがいまいが手の内を教えてくれる親切設計
試合の流れも
主「とにかく相手に手番を渡さないように加速して突撃だ」←魔法書による速攻魔法でカウンター
主「速攻魔法は効果が落ちるはずだから強化攻撃で破れるはず」←「速攻の代価は威力じゃなく魔力消費です」とまた反撃受ける
主「もう最大威力の魔法でぶち破るしかない」←「それも読めていました」と反射魔法でカウンター
と余すことなく脳筋ぶりを発揮し
完全に不意を突かれても直撃だけは避ける主人公に対し
狙い通りにカウンターを決めたのに主人公の魔法の余波だけでボロボロになっている真優
互いに魔法力が尽きたので拳での殴り合いを続けるが(主人公の武器双剣だろ、それ使えよ)
「このまま続けても埒が明かないから大技で決着にしよう」と言ってなぜかさっき以上の威力の魔法を使用
しかしこれも僅かに先手を取られたため苦し紛れに狙いを相手の魔法書に変更し
自分は直撃を食らいながらも追撃に移行し魔法書が燃えて即効魔法が使えない隙をついてトドメ
最後に「俺の作戦勝ちだ」とか仰るが
どう見ても主人公補正による不死身性のゴリ押しです本当にありがとうございました

その他にも、分岐後の個別ルートでは各ヒロインをタッグを組み
上位科の代表である神崎えま・早乙女綺乃と2vs2の交流戦を行うのだが、これが毎回
No.2ポジの綺乃を個別撃破→えま「貴方達の相手くらい私1人でも十分よ」→主人公ペアを圧倒→
大技撃ちあって「やったか!?」→ダメでした敗北
の流れで
その後正式にヒロインとパートナーになるくだりでは
ヒロイン「私じゃ勇治のパートナーにふさわしくないの…!」→主「そんなの関係無い!○○がいいんだ」
と、分岐しているにもかかわらず非常にワンパターンな展開や
試合中に他幅を使わなかったルートでも「交流戦で使った他幅が世間から注目されて」上位科に上がったり
人形劇をやってないルートなのに「人形劇の内容が学術的に評価されて」
これまた主人公の仲間たち全員が上位科に上がることになったり
細かいところでは実戦訓練の開始が明日からだったり今週末からだったり来週からだったりと
テキストの辻褄の合わなさを数えだすと本当にキリが無い

このようなテキストでキャラの魅力を引き出せるはずもなく
上記のような頭脳派()な立ち回りに加えて
学会発表を前に「早めに会場に行って挨拶回りとかしなきゃ…」と渋るヒロインを自分でベッドに連れ込んだのを棚に上げ
やることやった挙句「本当は早く会場に行って挨拶回りとかしなきゃいけないのに、○○ときたら……」などとのたまったり
ヒロインの妹が横で寝ている状況で容赦なくセックスを始め「恥ずかしいなら声我慢しなきゃな」とか抜かしたり
妹が寮に戻らないことを仲間に相談されて風呂で安否を心配していたかと思えば
部屋に戻ったらヒロインがオナニーしてたのでそれを覗いてそのままセックスにもつれ込むなど
主にエロ周辺でやたらとクズい言動の目立つ主人公を始め

王道のヒロインらしいシナリオにしたかったのか分からないが
“周囲と自分を比較して自信喪失→主人公に励まされ「勇治くんのことだけは譲れない!」と奮起して解決”
という全く同じ流れを序盤と個別ルートで2度も繰り返す進歩の無い幼馴染系ヒロインに
「無口で毒舌系なキャラ」をどう履き違えてしまったのか
全員の退学がかかっている状況で既に魔粧が出来ることを知らせず、なぜ言わなかったと聞かれれば「聞かれなかったから」。
本来なら上位科に配属されていた所を辞退、しかも正規の手続きを踏まなかったため上位科の枠を1つ潰し
その理由を問われても一切だんまりと、やってることは陰湿ではた迷惑としか言いようのない毒舌系ヒロイン
彼女に関しては本人も本人だが、これを「何か理由があるはず。深くは聞かないでおこう」と庇い
逆に彼女を糾弾するクラスメイトの方を諌める主人公たちも主人公たちである
ついでに個別に入ると「魔法使いと研究者を両立する道もあるはず」と言って主人公とパートナーになったのに
研究者としてのスカウトが来ると「私は勇治とパートナーになったんだから研究者なんてならない!」と固辞
この件を主人公から説得されると「勇治は私とパートナーを解消したくなったの?」と
飛躍思考を叩きつけ泣き出すというメンヘラ気質まで発揮する
その他、終盤で主人公が読むタイムカプセルの手紙の中の「血はつながってないけど」の一文で発覚し
それ以外は一切触れられない妹の義妹設定や
公式HPのキャラ紹介と本編描写が噛み合ってないなど雑さはいたるところに見られる

ここまでで既にウンザリするほどのツッコミ要素に溢れているが
このシナリオを学芸会と評する真骨頂は実質Trueルートと呼べるえまルートにある
なんやかんや有ってえまとパートナーになる過程で
元々緊張状態にあった人間と神人が遠くない将来戦争を開始すること
戦争になると膨大な負の感情を吸収して魔女が復活すること
神託に従って魔女封印のカギとなる『創造』を会得させるため、神人の力で主人公に別世界の記憶を引き継がせていたこと
など様々な事実が明らかとなる。
そしてここで月宮叶羽という謎の新キャラが登場。1週間限定の留学生という体でクラスにやってきて
これといった事件も無く主人公やヒロイン達と過ごして帰国する
その後浮遊島に渡った主人公とえまの2人は神の巫女から
魔女の正体がかつて『神』の一部だった『影神』(グルヴ)のなれの果てであり
変わり果てても神は神なので倒すのではなく封印するよう頼まれるが
封印の条件が主人公が永遠に封印のカギとして残り続けることだったためこれを拒否
すると叶羽が現れ実は神人だったことを明かし「私を倒せないなら魔女を倒すなんて無理」と2人を打ちのめす
この世界線を指輪の力で一旦なかったことにし
「2人きりじゃダメだ。皆にも協力してもらわなきゃ」と今度は仲間たち6人で浮遊島へ向かう

実際は色々ちぐはぐなところもあるのだがここまではまだ良い。問題はここからだ
再び叶羽が現れ「自分は敵じゃない。私も世界を救う7人の魔法使いの一人」と告げる
神の巫女に話を聞けば本当の神託は「『七つの冀望』(セプテン・サルワート)が世界を救う」というものだったという
その真意は分からないけど今ここに7人魔法使いがいるからそういうことでしょうと雑な解釈で叶羽が仲間に加わり
主人公とえまの持っていた2つの指輪で箱を空けたら中に魔法式の書かれた紙が入っていたので
直後に一瞬復活した魔女を巫女が頑張って半日ほど封印している間に7人でその魔法を練習し
人が必死に封印を保ってる間に雑談かましながらこれを完成
さっきは無反応だったくせに何故か今度は封印を解く前から鳴りだす警報を合図に外に出て
復活した魔女との戦いは
1回攻撃を防御して、1回こちらから攻撃して魔女の動きを止めたら件の魔法を一発撃って無事討伐完了
世界に平和が訪れ人間と神人は和解し主人公たち7人は世界を救った『七つの冀望』として世界中から讃えられて大団円

茶番もいいところである

この展開の間、落ちこぼれでも世界を変えられるとか仲間との絆とかをやたらプッシュしだすが
「神人には無い人間の結束の力が~」と言ってもそもそも7人中2人は神人だし
「落ちこぼれでも諦めなければ~」と言いつつどう控えめに言っても4/7は落ちこぼれ扱いすらされてないし
なんだかんだ苦楽を共にしたクラスメイトのサブキャラたちを空気にしておいて
ぽっと出の新キャラを仲間に入れながら絆がどうこうと言われても何の説得力も無い
もっと言えばもしゲームのタイトルが「1/6の魔法使い」だったなら彼女の存在自体が必要なかったレベルなのだから
叶羽関係のシナリオを削ったんじゃないかという邪推が生まれても仕方のない話だろう

本来ならば、ラストバトルで主人公の熱いモノローグと言えば燃える展開の代表であるが
繰り返すとこの状況は
  • ぽっと出の新キャラを仲間に加え
  • 箱を開けたら魔女を倒す魔法が書かれた紙が用意されて
  • 半日練習したらそれが完成し
  • その魔法を魔女に使ったら一発で倒せた
という話であり、ここまで都合よくお膳立てされておきながら
ラスボス戦とエピローグで長ったらしい語りを聞かされてもプレイヤーとしては白けるばかりだ

エピローグだって
本来は『神』の一部だった魔女に対し
「倒すのではなく浄化して正と負の力の均衡を~」とか土壇場でとってつけたように言ってた割に、
結局消滅しちゃったけどまあ何とかなるさみたいな扱いでいいのかとか
「人間と神人の関係が険悪だと負の感情が蓄積して魔女が復活する」という話だったはずなのに
なぜ魔女を倒したら「互いの友好のネックとなっていた事象がなくなり」人間と神人が和解できるのか
そもそも人間にとっては魔女の復活自体が噂程度で、主人公達も誰にも知らせることなく浮遊島に向かったのに
どうして主人公達が魔女を倒したという情報が世界中に広まって信じられているのかと考えると何とも都合のいい話である

本来ならば、全体的にテキストがそもそも面白くないとか
多少ご都合主義や主人公優遇が目立つとか設定に粗があるとか
その程度でクソゲーの烙印を押すのは本意ではない
しかしこれらが積み重なった挙句
「落ちこぼれが世界を救う」というテーマでありながら、よりによって
世界を救うための最終決戦が最もお粗末な学芸会レベルの出来とあっては酷評も免れないだろう

一方でCG・楽曲についてはおおむね上出来であり
これといったバグも(やたら頻発する誤字脱字を除けば)無く
新規ブランドにしてはUI周りもそこそこ洗練されており非常に快適なプレイング環境で
ダメなお手本のようなシナリオを読むことができるため
始めからツッコミ練習教材のつもりで見ていれば
精神にも優しい初心者向けのクソゲーと言えるかもしれない。
是非とも次回以降はこのメーカーが優秀なシナリオライターとの縁に恵まれることを祈るばかりである


なお余談となるが、PCゲームとの連動企画として同ライター・同原画による
「1/7の魔導使い」というライトノベルが創芸社クリア文庫より出版されている(3/11現在1巻既刊)
のっけから「新人」というキーワードについてwebページと本書中で定義が違っていたり
原作主人公達7人の呼称が「七つの冀望」から「1/7の魔法使い」(なお7人を総称してこの呼称である)に変わってたり
主人公の父は原作主人公、一条勇治と明言されてるのに対して母親が全くの新キャラである可能性が高かったり
実戦訓練で一度も負けたことのない主人公を「魔法が使えない落ちこぼれ」と侮蔑してたものが
学園を襲撃した魔物を主人公が撃退した途端、学校中の生徒が熱い手のひら返し
またラノベに移っても減る気配の無い誤字など不安は尽きないが
まだ推定7巻以上あるうちの1巻であることや
原作で放置した部分をこちらで伏線回収する奇跡の目が無いわけでもないため
一応凡作の範疇として様子見する程度のものであった(無論中身がどうだったとしても余談であることに変わりはないが)


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最終更新:2015年08月30日 07:51