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2014年総評案4 大賞:新世黙示録 ―Death March― & カスタムメイドオンライン

131 :総評案4 ◆e117Y.a2a2:2015/02/11(水) 05:13:07 HOST:i114-187-38-51.s42.a016.ap.plala.or.jp
 『明日もこの部室で会いましょう』の戴冠…2013年のKOTYeは衝撃と共に幕を下ろした。
絶対的門番による一党独裁時代…それに対抗すべく立ち上がった年末の魔物…年明け後に発生した前代未聞の最終戦争…『部室』の発掘とともに発生したパンデミック…
そして最終的には、開幕から終始他者を寄せ付けず最底辺を独走していた前年王者が、勝利を目前にしながらぽっと出の名も無き修羅にまくられる…
そんな誰もが予想し得なかった結末にスレは驚きに包まれた。

それ以外の作品を見渡してみても、鉄板だったはずのシリーズ作品や、良作を輩出してきた大手メーカーが大型爆弾を排出したり、
かといって無名のメーカーの作品が大量破壊兵器を有しているなど、クソゲー界のパワーバランスが完全に崩壊した一年でもあった。

最早我々プレイヤーは何を信じていいのかわからない…安牌などどこにもなく、どこに核地雷が埋まっているかわからない混沌…
アーベル、softhouse-seal、スワンアイといったかつての王達の支配構造が崩れた後に幕を開けたのは、大手も無名も各々が我こそが王たらんと立ち上がり、血で血を洗う群雄割拠の戦乱の時代だったのだ。
2014年もきっと荒れる一年になる…そんな覚悟を胸に、スレ住民達は新たな戦場へと足を踏み出したのであった。

 そんな中、我こそが一番槍だと高らかに名乗りを上げた騎士は、『きみと僕との騎士の日々 -楽園のシュバリエ』(きみ騎士)であった。
本作はCG、BGM、ボイスなどは高品質であるにもかかわらず、その全てをぶち壊しにしているのが『設定』の存在である。
本作の登場人物は『騎士』であり、それぞれ幼馴染や双子の姉、母などを救うために『決闘』に参加しており、その過程で主人公と結ばれていくというのがストーリーの基本骨格である。
ところがトゥルールートに入ると、『そもそも、幼馴染じゃなかった』『そもそも、双子の姉なんていなかった』『そもそも、母(ry』と、各キャラの根幹の設定が全て偽りのものであることが明らかになるのである。
本作の主人公は『相手に幻影を見せる』という能力の持ち主なのだが、どうやらこの能力はプレイヤーに対して常時発動されていたようだ。
このまさかのパジャマさんなオールフィクション展開と、イチャラブを謳いながらヒロインによってはトゥルールートでどうやっても救われないなどといった唐突な鬱展開も加わり、本作はめでたく一番手として認められるに至ったのであった。

なお、本作と時期を同じくして、騎士ものが次々と転び続けているという報告もあり、その中のとある発言が大変興味深い。
曰く、「騎士ものは地雷。神様ゲーも微妙」と。
スレに大規模なフラグがセットされたことを、その当時の住人達はまだ知らない。

 その他、1,2月の作品としては、厨二病を窮めた主人公がニ○生主であるヒロイン達を『じゃんけんで勝ったからレイプ』などと適当な理由で蹂躙していく投げやりなシナリオと、
「じゅぶっ、ニチニチニチニチーー!」「ドクーーーーーン!!  大量の精液が散っていく」など個性的すぎる表現でAAまで産み出した『巨乳JK生主生ハメ生中出し』、
ヒロインをレイプした際に中に出すと社長にチクられ左遷されてBADENDだが、外に出すと感謝されてデレるという両極端すぎる謎二択な展開と、
『全自動腰振りマシーン』が『グチョップ、パコップ』とピストンし『ウドピュ~ウドピュ~』と射精する印象的なテキストで笑いを誘った『艶乳 ~ツリ目で淫らでヤバい秘書~』などがあった。

だが、これらのエントリーを経てもなお、スレには低調な空気が漂っていた。
それは絶対的存在感をもった『門番』の不在が原因である。
前年、前々年とスレに君臨した絶対的門番と比べれば上記の作品達ははるかに小粒であり、来たるべき怪物に備えて身構えていたスレ住民は安堵と共に拍子抜けすることとなった。
もしかしたら今年は平和に暮らせるかも…そんな淡い期待すら抱きつつ穏やかな春に想いを馳せる住民達であったが…もちろんこの修羅の国はそんなに甘くはなかった。
住民達はまだ気づいていなかった。増税と年度末という二つの蝕が重なる逢魔が時に合わせるが如く、二体の魔将軍を擁したKOTYe史上最大規模の軍勢が、今まさに侵攻を開始せんと怪気炎を上げていることに。

 そして時は3月28日、ついに戦端は開かれた。
平和ボケし、油断しきっていたスレ住人を突如襲撃したのは、今までこのスレに存在していなかった形態の冥土服をまとった未知なる存在だった。
その名は『カスタムメイドオンライン』(カスオ)、スレの歴史を塗り替えるべく未来からやってきた恐るべきターミネーターである。
本作品は容姿や性格を好きなようにカスタムしたメイドさんとHなことをするという、非常に息の長いシリーズの最新作であるのだが、その最大の特徴はKOTYe史上初の基本プレイ料金無料+課金制のオンラインゲームであるということである。
エロを取り入れたソーシャルゲームというのはこの作品以前にもDMMなどで存在していたが、カスオがそれらのゲームと異なる点は、
『カスタムメイドオンライン ブルジョアパック 9800円』『カスタムメイドオンライン スターターパック 2980円』というパッケージソフトとしても販売されたという点である。
そもそもここに至る以前のクローズドβテストの時点からしてトラブル続きであり、まともにサービス開始できるのかという不安の中、パッケージソフトの販売に合わせてめでたくサービス開始へとこぎつけたわけだが…
いざ蓋を開けてみれば、その実態はそもそもログインすらできないという商品として成立していないナニカであった。
開始してまもなくサーバーがダウン、その後もプレイはおろかログインすらできない状況が続き、挙句の果てには「ログインできた人はどうやったらできたかサポートに連絡してほしい」と公式が言い出す体たらくである。
この前代未聞の事態にスレは沸騰、今までの休眠状態から一気に活動期へと転換することになったが、そもそもプレイ自体が出来ないので検証も出来ず、
その実態の全てがシュレーディンガーという本作の前にはいかに歴戦のスレ住人をもってしても打つ手がなく、続いて襲い掛かった騎士の巻き起こす旋風に紛れるように姿を消すこととなった。
この後、5月の再検証を経て、最終的そのブラックボックスの全てが解明されるまでには永い永い時間を要することになる。

 未知なる脅威の出現からわずか数時間後、困惑する住民達のど真ん中で次なる騎士の放った恐るべき魔弾が炸裂した。
「はなげかーにばる」という異国の言語による挨拶の声と共にスレを爆撃したその狙撃手の名は、エフォルダムソフトが送り出した『銃騎士 Cutie☆Bullet』(銃騎士,JKS35)である。
本作は中世っぽい世界にテクノロジーは現代相当かそれ以上、物語の舞台は学園で登場キャラは騎士というぶれっぶれの設定を携えた『騎士+学園モノ』であり、
同メーカーの『恋騎士 Purely☆Kiss』のシリーズ続編にあたる(話に直接の繋がりはない)。
しかし、前作が絵が良いと言われる以外は壊滅的な評価だったことや、体験版の時点でシナリオが絶望的なクオリティだったこともあり、丸出しの地雷として当初から警戒されていた。
こうした経緯から、プレイヤー達は『絵だけはいいんだし画集だと思えばいい』などと極めて低い期待値を抱いて突撃していったのであるが…
まさかこの『騎士』が、跳び箱1段すら飛び越せないような虚弱体質だとはさすがに予想もしていなかった。

まず本作のシナリオについてだが、端から期待されていなかったとはいえ予想通りの悲惨な出来であった。
ストーリーの骨子は、ブルボン王国の銃士隊『白薔薇学園』に所属する主人公とヒロイン達が、黒幕の陰謀により銃器密造の嫌疑をかけられて解散の危機に追い込まれ、
世間を騒がす怪事件に立ち向かっていくというよく言えば王道な展開なのだが、ほぼ全ての事件で黒幕がライバル部隊『赤薔薇学園』の隊長であるなど、見え見えすぎる展開は王道を通り越して陳腐に成り下がっている。
まあこれだけならただの駄シナリオですんだのだろうが、本作はそれに加えてギャグとシリアスの高次元な完全融合を達成することで新たな境地に達することに成功した。

まず主人公達が立ち向かうべき怪事件の内容からして、『女性の乳頭が黒く塗りつぶされる事件』『ハンバーガーに毒物が混入され食べるとホモになって社会が混乱』などといった意味不明さであり、
これらの事件の裏で糸を引く黒幕の動機が、『仕事をサボってジムに行こうとしたのを主人公の父親に止められて恨んでいたから』というどうしようもなさである。
さらに『白薔薇学園』の元隊長である主人公の父親が病に倒れ、妻と息子に学園を託すという本来感動的な場面であっても、その死因が『本当は病気は治っていたがピーナッツクリームのサンドイッチを食べてアナフィラキシーショックを起こした』
であるなど、本来シリアスであるべき場面にすらあらゆる局面で滑ったギャグがもれなくセットになっているのである。

そしてこの新技法の極致ともいうべき存在が、作中のヒロインの一人サラの話す、『キサルビナ語』である。
このヒロインは異国キサルビナからの留学生であり、作中の舞台ブルボン王国の公用語に堪能ではないため、端々で『キサルビナ語』が出てしまうという設定がある。
ところがこのキサルビナ語では、日本語で「こんにちは」の意味を示す単語が「はなげかーにばる」、「あなたを愛しています」が「はらましてあげる」などわけの分からない発音となっており、これが随所に登場してはプレイヤーを混乱させる。
もちろんこれもシリアスな場面にもしっかり登場し、サラシナリオの一番の見せ場である『過去に誤射で傷つけてしまった女性との和解シーン』においても、
「もってけどろぼー(触ってもいいですか?)」「このつめのあか、せんじてのむわ(いいですよ)」「どんなあじ(痛くない?)」「にがい(平気ですよ)」という頭の痛くなる会話が繰り広げられる。
その他滑っているのはギャグだけに止まらず、作中の短距離走の選手が『ウサイン・ナット』、頭突きをする際の掛け声が「ジダン!」であるなど寒いパロディも随所に散りばめられ、プレイヤーにシリアスな失笑をもたらすことに成功している。

だが多くのプレイヤーにとって上記の惨状は織り込み済みであり、画集を買ったと半ば悟りを開くことで惨劇を乗り越えた彼らを次に待ち受けていたのは、
『立ち絵が基本2種、CGが差分とSDを除いて35枚しかない』というセカンドインパクトであった。
そしてその先に広がっていたのは、立ち絵は全く変わらずイベントCGもロクになく、クソシナリオだけは無駄にフルプライス相当の罰ゲーム紙芝居と、
エンディングすら白/黒一色の背景をスタッフロールが流れるだけという焦土の荒野であった。
さらに検証によりゲーム内のCGを抽出した結果、本来連番になっているはずのCGナンバーが1の次が12に飛ぶなど、大幅に歯抜けになっていることが判明する。
つまり本来この作品には70枚以上のCGが用意されるはずだったのが、35枚という半分にも満たない完成度で販売が強行されたであろうことが明らかになったのだ。
さすがにこの裏切りには画集目的だったプレイヤー達も大激怒し、新たなマスコットキャラ三銃士が産まれるなどスレは一気に炎上、エフォルダムソフトは『絵フォルダ無』と呼ばれるようになった。

このアナフィラキシーならぬ銃キシーショックの前に、メーカーもあわてて追加パッチなどを発表するも時すでに遅く、そのやっつけ感の漂う中途半端なクオリティや親会社社長のニコ生での発言もあいまって、火に油を注ぐだけに終わった。
結局この騒動の責任を取る形でエフォルダムソフトは解散、その後は対応を親会社のあかべぇそふとが引継ぎ、2015年初旬に『新作騎士もの(仮)』を購入者に配布するということでようやく騒動は一時鎮静化した。
しかしこの作品の話題でスレを5つ以上も消費するなどこの作品がスレに与えた衝撃は大きく、騎士の王の真の実力をまざまざと魅せ付けた本作はようやく現れた今年の門番としてスレに君臨することになったのだった。

 こうしてスレには新たな統治者が誕生したが、魔軍の怒涛の進撃はまだ止まらない。
この二体の魔将軍によって完全に破壊された防衛線の間隙を縫って、個性ある異形の魔物達がスレに侵入を果たしていたのだ。

 前年準優勝のスワンアイが送り込んだ『私たち・花のオシオキ部! ~やられたらヤり返す…エロ返しだ!』は、「倍返し…?いや、三倍返しだ!!…やっぱり半返しくらいで…」と相変わらず世間の流行を浅ましくなぞるも、
そこそこ力の入ったOPが終わった時点でライターが飽きたのかその後は急降下一直線と結局いつものスワンアイに落ち着き、メーカースレ住人にすらお粗末と斬って捨てられた。

 『くのいちが如く -脱がせ!爆乳ニンジャーズ!-』は、閃○カ○ラをパクったかのような3Dアクションであるが、パクリ元のようなゲーム性は一切なく、マイ○ラで作られたかの如くチープな舞台に操作性は最悪で、
少ないバリエーションの雑魚を延々狩り続けてHシーンを購入するための金稼ぎを強いられるどこぞの潮干狩りを髣髴とさせる作業ゲーであった。
本来忍者とは創作物によくあるような華々しい仕事ではなく、目立たない地道な作業の繰り返しであるというリアリティを追及した結果なのだろうか?

 こういった魔物たちの中でもとりわけ個性的な漆黒の輝きを放っていたのが、黒鳥が解き放った『心壊少女 僕は彼女が ××× されるのを目撃した』である。
本作は前年にスレ住人を恐怖に叩き落とした『雨音スイッチ』を放った黒鳥による新作であり、本作の方向性もそれと同じ、狂気に満ちたニッチゲーである。
よって本作にはデレはなく徹頭徹尾病みオンリーでハッピーエンドなどといった甘えの象徴は存在せず、コンクリ片を顔面に打ち付けるという極めてニッチなアニメーションを搭載している。
しかしこの作品はそもそも万人向けではなく限られたニッチ層をターゲットにしているので、上記の点自体はマイナス要素ではない。
ではなにが問題なのか? それはニッチ物として考えてもフルプライスに釣り合わないほどクオリティが低い、という点であった。
グラフィックを見ると胴体がなかったり顔面が崩壊したりと一目瞭然な低画質なCGが並んでいる。
シナリオも全編ダイジェスト気味であり、キャラクターが刃物を手に主人公をまさに追い詰めた次の瞬間、『彼女は窓から落ちて死んだ』と何の脈絡もなく突然死する謎展開はプレイヤーの脳天にコンクリ片を叩きつけ、
本作を代表するネタとして親しまれた。
ゲーム全体のボリュームもフルプライスに釣り合うものではなく、ニッチ層にとっても不満の残る残念な結果になってしまったが、一方でシナリオは描写不足だけどそれ自体がつまらないわけではない、といった評価する声もあった。
黒鳥には次こそは是非、ニッチ層から大歓迎されるようなクオリティの作品を開発して頂きたいと願うばかりである。

こうして、3月はカスオから銃騎士への最凶コンボに始まり、最終的にはかつての"五惨家"を超えるKOTYe史上初の6作品がエントリーを果たし、
それまで半ば眠っていたスレを強引にたたき起こす灼熱の春一番が吹き荒れることになったのだった。

 そして、時は流れて初夏。
激動の3月とは対照的に4月の作品に取り立ててインパクトがなかったころから、住民達は未だに3月作品を反芻しつつつかの間の平和を楽しんでいた。
『恥辱の女騎士「オークの出来そこないである貴様なんかに、この私が……!!」』に登場する「ヒアヒウアする」「メテォオ~!」などの妙に印象的な誤字が一時スレの流行語になったのもこの時期である。
このヒアヒウアは様々な派生AAを産み、繰り返しネタにされスレは大いに盛り上がっていたが、そんな平和な時間も永くは続かなかった。
三月帝国の一国独裁を許すまじと、5月生まれの3人の勇敢なレジスタンスたちが今まさに立ち上がらんとしていたのだ。

 まず先陣を切ったのは、未だに銃騎士の呪縛に囚われた住人たちを再教育すべく、天空よりマッハ20でメテォオ~してきた一人(?)の教師であった。
5月作品の選評一番手として現れたそのタコの名は、古豪softhouse-sealの産み出した完璧生物『繁殖きょうしつ女子校ハーレムなら何をヤっても許される!? 』。
本作は最低限のシナリオに価格以上の良質なクオリティの原画を合わせた低価格抜きゲーであり、かつてsofthouse-sealが一定の評価を得ていた得意分野のはずであった。
しかし本作の問題点は、公式HPを開いた時点で明白である。
主人公がマッハ20でお手入れするタコで教師…完璧生物を作ろうとして失敗…あだ名がヤラせんせー…そう、何から何まで『暗○教室』である。
これを始めとした世間で流行っているものを見境なくパクり続けるという最底辺に相応しい物乞い精神は全編に渡って発揮され、寒いパロディやネットスラングが梅雨の長雨のごとく降り注ぐ。
選評者によれば15分間で10以上のパロネタが飛び出し、最後までそのペースは落ちなかったとのことで、このロープライスなら何をヤッても許されるという開き直りはスレに冷笑をもって迎えられることとなった。

さらに困ったことに、このパロディはエロシーンにすら侵食し、「あば、あばばばば……ッ!」と喘ぐヒロインや、「そ、そこに痺れる憧れるぅ!」と叫びつつズキュウウウウウウンの効果音付きで射精するなど、
脱ぎゲーの命である実用性すら阻害している有様である。
sealは余計な芸無性を加えず低価格抜きゲーだけ作っていればいいと言われる中、まさかの安牌であるはずのADVにおいてもその価値を自ら投げ捨て更なる下を目指す飽くなき挑戦精神には、流石はかつての王だと感嘆せざるを得ない。

 触手狂師が粘液でスリップして教室から去っていった2週間後、またしても騎士が誘拐された姫を救うべくスレに殴り込みをかけてきた。
彼女の名は『Knight&Princess』、『ゲームブック風ADV』という極めてレアなジャンルに『2人主人公視点』、また基本的にヒロインは快楽堕ちせず「ちくしょう」と叫んであくまで抵抗するという特徴的なウリを持つことで、
小粒ながら一定のファンを獲得しているシリーズの新作である。
しかし本作はまず特定環境では起動すらできないという先制パンチでプレイヤーを間引き、その関門を潜り抜けても自慢の剣はボロボロに錆びていた。
『2人主人公視点』を謳いながらその配分は極端であり、姫編は実質的にプロローグでしかなく、最短の選択肢を選べば2分で終了、全ての選択肢を網羅しても25分しかないという貧相さである。
『ゲームブック風ADV』として見ても、ステータス+ダイスで成功判定を行うシステムなのはいいが、そのステータスが変動することはなく、そもそも成功=進む、失敗=死亡という安直さではただのプレイ阻害でしかない。
プレイヤーも気づかないうちにいつのまにか入手している『判定に必ず成功&失敗』というアイテムの存在もあって、本作のゲームブックとしてのゲーム性は皆無といっても良い。
フラグ管理も破綻しており、とあるキャラを見捨ててそのキャラの失踪フラグが立ったと明記されるにもかかわらず、後のイベントでは普通にそのキャラに助けを求めることが出来るという有様である。

だが何よりこの作品の名声を確かなものにしたのは、『ピアスバグ』の存在である。
このゲームではピアスや陰毛のON/OFFをフラグで管理しているのだが、どういうわけかピアスフラグがONになると、『該当のCGでピアスしか表示されなくなる』のである。
この真っ白のなかにピアスだけが浮かんでいるCGのインパクトは抜群で、スレを笑いに包むと同時にプレイヤーの「ちっくしょおおおおお」の号泣が響き渡ったのであった。

 レジスタンス三人衆の最後の一人は、少々遅れてやってきた。
『はるかかなた』は、処女作『AQUA』でシリアスなSFラブコメとして高評価を博したSORAHANEの三作目であり、前作のシナリオが酷評されたこともあって名誉挽回なるかと期待されていた。
しかし前作までのウリだった自社製エンジンを脱ぎ捨て、外注のエンジンに換装したことで重篤な問題が発生、バグまみれで内容以前にまともにプレイできないという想定外の方向へロケットスタートを切ることになってしまった。
初期状態では音声ズレやフリーズ、強制終了が頻発、細かくセーブして進めようとしても特定状況でセーブができないという嫌がらせが追い討ちし、
「修正されるまでプレイは控えたほうが良い」とまで言われる始末だ。
その後4度のパッチを経て発売後2ヵ月後にしてようやく何とかプレイできるようになったものの、スキップ時の未読判定機能が削除され、それでもフリーズは完全にはなくならないという体たらくであった。
またパッチごとに以前のバージョンのセーブデータが使用不可になり、前述の細かくセーブして苦痛に耐えながら何とか読み進めようとしたプレイヤーがそのたびに振り出しに戻されることになったことも追記せねばなるまい。

こうして販売と同時に遥か彼方へとコースアウトしていった本作であるが、やっと明らかになったその内容もリアリティを遥か彼方へすっ飛ばした全編ご都合主義スイーツ()シナリオであった。
義妹ルートでは主人公を庇って路面電車に轢かれ血まみれで斃れたはずの義妹が、その直後のEDでは何事もなかったように五体満足でピンピンしているという特売の奇跡でプレイヤーを困惑させ、
メインヒロインである実妹ルートでは唐突に妹の余命が1年という設定が飛び出し、過剰にヒューマニズムを強調したうんざりするシナリオが続いたと思ったら、
最後は主人公が腎移植をして時間を稼ぎ、二人の子供の臍帯血を使って治療をするという常人のヒューマニズムを遥か彼方へ消し飛ばすトンデモ結末でスレの度肝を抜いた。
まさに人の生死をお手軽な感動ジェネレーターとして扱い、半端な医学知識を便利設定として安易に解決させようとするとこうなるというのの典型例であり、"加○+ヨ○ガノ○ラ+恋○"などと揶揄されることになってしまった。

その他、年末に2作品がエントリーするなど5月作品も最終的に6作品がエントリー、3月帝国による独裁体制は崩れ、再び戦乱の時代が幕を開けることとなったが、この混乱に乗じて更なる第三勢力が姿を現した。

 時は7月、前作のタコ教師がイマイチムーブメントを起こせなかったことに危機感を抱いたsofthouse-sealが、ならば今度は色仕掛けで洗脳だとばかり『ビッチ生徒会長のいけないお仕事(パッケージ版)』(ビッチ)を派遣してきた。
本作は、エロゲ脳の外国の姫様がエロゲと同じようなことをしてみたいと思い立ち、日本に留学して男子生徒を食い荒らすという学校をなんだと思っているんだというストーリーであり、極めて珍しい女性視点のビッチものである。
しかしインストーラーに環境依存のバグがあるのか、特定環境ではゲームを開始して2行目で「音声が見つかりません」と出て強制終了するなど、校門で締め出され中に入れてもらえない。
本来ならこの時点ですでに商品失格だが、歴戦の生徒たちはこの程度のことでは動揺することはなく、いつものsealでさらっと流して校内へと忍び込んでいったのだが、
そんな彼らを待っていたのはあしゅら男爵のごときツギハギシナリオであった。

シナリオは最序盤こそ期待通りのビッチシナリオだが、3つ目のHシーンが終わったあたりから話の前後や舞台が繋がらない全編キングクリムゾンモードへと移行し、プレイヤーの思考を置き去りにする。
一例をあげれば、体育館で乱交を済ませた姫が自室に戻って「人のいないところで着替えよう」とつぶやき、何故か「体育館なら人がいないだろう」と体育館へ向かい、全裸になってそこにいる生徒と乱交を始めるというものである。
選評者をして「バグでシーンがループしたのかと思った」と言わしめるこの意味不明展開にプレイヤーが混乱することは必至だが、さらに追い討ちをかけるように
『実は姫とメイドは少子化の未来を救うため現代にエッチをしにやってきたアンドロイドだったんだよ!』という設定が唐突に追加されプレイヤーをポルナレフへと変貌させる。
挙句の果てには姫とメイドが互いのボディを交換するという史上初の人格交換Hイベントが唐突に発生し、その直後日常シーンの真っ最中に突然画面が暗転したかと思えばエンディングもなくタイトル画面に戻るのである。
この超展開からの全てが置き去りな打ち切りエンド、さらにフルコンプ(?)しても回想が13/20しか埋まらないという事実にプレイヤは完全に取り残され、呆然と立ち尽くすしかなかった。

この衝撃の情報にスレは当初混乱したが、やがて検証が進むにつれて驚愕の事実が明らかになった。
前述のこの作品のタイトルにわざわざ(パッケージ版)と書いてあるのには理由があり、実はこのゲームは信じがたいことにパッケージ版とDL版ではゲーム内容が全く異なるのである。
DL版では前述のような時系列の崩壊や場面の混乱などはなく、『未来から来たロボット』云々といった唐突な設定も存在せず、シーン回想もしっかり20枠埋まるというまともな抜きゲーとなっているというのだ。
そしてパッケージ版から未使用CGが発見され、さらにこの『世界を救うため未来から来たロボット』という設定が自社の別ゲーの丸パクりであるということが判明したとき、ようやく住人達は事この次第に至ったカラクリに気づいたのだった。

つまりこういうことである。
元々この作品は未来云々とは関係ない学園抜きゲーとして開発されていたが、納期までに完成はおろか形にすることすらできなかった。
そのため、急遽過去作の設定とテキストを丸パクりしてツギハギにし路線変更を図ったが、結局取り繕うこともできずに打ち切りENDにした。
一方DL版はパッケージ版よりも納期が遅かったため、ちゃんと完成しまともな内容になった、ということなのだった。

この未完成品を何一つ恥じることなく堂々と売り出し、なおかつ修正パッチの修正項目を『フリーズ』とのみ記すなど、相も変わらずロープライスなら何をヤッてもな厚顔無恥っぷりには住人達もただただ呆れ返るよりほかなく、
バグで強制終了するのも未完成を隠してパッチまでの時間を稼ぐために意図的に混入したのではという疑惑が飛び交うなど、選評当初は笑っていた住人達が次第に真顔に戻っていくほどであった。
最終的にパッチでDL版とシステムが統一されてバグは解決しHシーンも同等になったものの、シナリオはさらに意味不明になるなど、
進化したのか退化したのかわからない威容を見せつけ、改めてsealの底(辺)力を思い知らされることとなったのであった。

 プレイヤーに対する背信はその後も続く。
『ギャングスタ・アルカディア ~ヒッパルコスの天使~』(ギャルカディア)は独特な世界観や哲学的なシナリオ、綺麗なグラフィックでファンを獲得した『ギャングスタ・リパブリカ』のファンディスクである。
本作はライターの『書きたいところは力が入っているが、そうじゃないところは適当』という傾向が強く、日常イベントなどが数クリックで終了したり、
総プレイ時間が6時間というフルプライスとしては薄すぎるといった問題はあったものの、シナリオ自体のクオリティは決して悪くはなく、前作のファンにとっては十分満足できるものであった。
しかし本作はCGに重大な問題を抱えており、その罪業によって理想郷より追放されることになってしまった。
具体的にはエロ増量を謳いながら前作より数が減少、CGも前作の使いまわしや背景や立ち絵を加工したもので大幅水増しをしており、純粋な新規CGではかの銃騎士をも下回るという不名誉な記録を更新した。
さらに何より問題だったのが、原画:ミヤスリサを標榜しながら、本人以外によるCGが混入されていることであり、ミヤス絵を期待して購入した絵買いファンを激怒させた事である。
これについて後に公式が原画家名を無断使用したことを認めて謝罪したものの、実質的な補償や修正などは一切行わないことも同時に宣言しており、謝罪文へのリンクが更新履歴の中にこっそり紛れていることも不誠実さを際立たせた。

 こうして度重なる悪逆によってスレに負の瘴気が満ち満ちたところで、それに誘われるように深い霧の中から無数のゾンビの集団が現れ、住民を見境なく襲い始めた。
堕ちた大司教に率いられたこの恐るべき冥府の軍勢の名は、Xuse【本醸造】が満を持して送り出した『新世黙示録 ―Death March―』(チーズ)である。
シナリオにメガテンシリーズで名声を得た鈴木一也氏を迎え、久々の本醸造名義で発表という往年のファンの高い期待値をもって迎えられた本作であったが、その一方で氏の最近の言動に対する評判や、
公式HPの作品タイトルが『新世黙示録 ―Deatch March―』と盛大に誤字をかましている、体験版の出来が絶望的だったという報告などもあって、スレでは早い段階から厳重に監視されていた。

しかし散々注目されており売り上げ自体も悪くなかったにもかかわらず、いざ発売されてみても、ヤバい、苦痛だ、チーズといった断片的な情報は漏れ聞こえてくるものの、肝心の選評は待てど暮らせど一向に届かなかった。
それもそのはず、本作は某批評サイトでギブアップ率が脅威の48%に達しており、住民達の中にも敵の正体を突き止めるべく冥府の霧のなかに突撃しそのまま帰らぬ人となった者が数知れず。
こうして本作は"選評を書くための仕事と割り切らなければ耐えられないゲー務"などと、どこぞの嵐のごとく住人達から恐れられ、ついぞ一人の勇者がその深奥から生還するまでには発売後1ヶ月以上を要した。

では、その衝撃の内容を紹介しよう。
まずはRPGとして。
本作は一言で言えば『強い剣を持ってスキップで殴ればよい』である。
武器と防具を兼ねる剣は100種類以上と十分に数があるが、そのうち9割は能力が高いか低いかの違いしかない攻撃剣であり、回復、支援用の剣は僅かしかなく、そもそも自動回復によって回復自体がほぼ必要ない。
属性による3すくみもあるが、火力が高ければ不利属性でもごり押し可という脳筋仕様のため戦略性は存在しない。
戦闘のUIも非常に煩雑で、攻撃するには一回一回ドラッグする必要がある上、この判定が何故か妙に厳しく不発が頻発するという嫌がらせ仕様である。
こうした戦略性もなくテンポも悪い戦闘はただの苦行でしかなく、中盤で戦闘を自動スキップする機能を手に入れるとそれ以後は(ボスを含め)手動で戦闘をすることは一切なくなるだろう。

またこの苦行に追い討ちをかけるのが、異常に高いエンカウント率である。
数歩ごとにエンカウントが発生し、戦闘はスキップしても5秒程度かかるため、5秒走って5秒休憩、と新世界の牛歩戦術をマスターしている。
3Dマップが見づらく頻繁に迷子になることも相まって、ダンジョン探索自体が耐えがたき苦痛になってしまっている。

ウリであったはずの剣の強化・合成システムも完全に形骸化している。
ほぼ全ての剣が単純に能力値の違いでしかない上に話が進めばどんどん強い剣がドロップし続けるため、より強い剣を敵から奪って持ち替えるだけのバーサーカー思考で事足り、剣を強化する必要は全くない。
剣の合成も基本的に必要ないが、合刃事故を起こすと最序盤から最強クラスの剣を作ることも可能という極端さで、ただでさえ少ないゲーム性を完全に崩壊させている。
極めつけがラスボス戦で、なんと直前に手に入るイベント専用剣以外の攻撃は一切通じない。
この例え愛着を持って剣を育ててきたとしても最後の最後で全てが無意味であることを知るという、本作の最大のウリであるシステムを自らちゃぶ台返しする豪気さには驚嘆せざるを得ない。

以上のようにRPGとして楽しめる部分は一切ない苦行であることが明らかとなったが、ADVとしての要素も火に油を注ぐ…どころか、ニトログリセリンを投げ込むがごとき酷さであった。
本作のキャラクターは主人公・鳥海知空(とりみ ちから)を始めとした登場人物ほぼ全員の脳がクリームチーズと入れ替わっており、『登場人物が全員ミ○トさんなア○リーム製クソゲー』などと評されるほどである。
特に主人公の言動が見るに耐えず、その時々に自分の気分で動いていては誰一人救えはしないといいつつも毎回その場の感情に任せて行動して失敗し、反省して次からは絶対護ると決意した端から同じ失敗を繰り返すの無限ループである。
行動原理も非常に不愉快で、常に自分は正しいというスタンスで他者を見下し、何か問題が起きれば自分を正当化して他人を非難、さらにその非難がブーメランとなって自分に突き刺さるという不快の三段論法だ。
選評者をして「この先10年はこれを超える主人公は現れない」と評された知力が空なルーピーっぷりは作中の登場人物にすら"知能指数の不自由"と馬鹿にされ、Int=0という不名誉なあだ名で嘲笑されることとなった。

その他のキャラクターも、自転車の二人乗りを咎められるとDQN丸出しで逆切れする妹、妹が過呼吸を起こすと即座に喘息の薬をぶち込む幼馴染、
突如変貌し妹を刺し殺し、主人公を親友と思ったことはないと言い放つ"親友"に、お前と付き合ってたのは優越感を味わえるからと言い返して首を絞める主人公…と誰一人萌えることも感情移入もできないというラインナップだ。

シナリオのクオリティも惨憺たるもので、基本的に行き当たりばったりでその場の都合の合わせて行動するため随所で破綻しており、
冒頭の『街がバイオハザード状態の中、警官の制止を振り切って夕食のチーズを買いに行く』という意味不明イベントにはプレイヤーの眼がテンになり、本作を代表するエピソードとして定着した。
また本シナリオの骨子は主人公たちが破滅的結末を迎えるたびに時間が過去に巻き戻り、再びやり直すといういわゆるループものにあたるのだが、これも首を傾げざるを得ないものとなっている。
というのも、本来ループものの醍醐味は以前の失敗した経験を活かすことで破滅を乗り越える、というところにあるはずなのだが、本作では巻き戻った世界ではその時点で破滅に至る原因がすでに解決されてしまっているのだ。
そして主人公だけが都合よく前の世界の記憶を引き継ぎ、前の世界の黒幕(新しい世界では無関係)を私怨で襲撃するというトンデモ行為に及ぶというのもプレイヤーの頭に疑問符を突き立てる。

ギャグとシリアスが合刃事故を起こしているのも問題で、その際たるものが合刃担当の自称ドワーフなネコ型ロボット、アンドヴァリである。
序盤には主人公がゾンビに追い詰められた窮地に突然ギャグ調全開で登場してプレイヤーを唖然とさせ、
最終盤の『ラスボスの攻撃で瀕死を負いながらも最後の力で最強剣を合成して主人公に託して息絶える』という本来感動的なイベントでも、
その直後に内臓が飛び出した程度では死にませんと即座にギャグ調で復活し、それまでの展開を全て茶番へと変える。

システムもシナリオもダメでもせめてグラフィックくらいは…と最後に残されたかすかな希望に縋ろうとしても、それすら無慈悲に捻りつぶされる。
CGは構図のおかしい低品質なものが並び、降って湧いた真ヒロイン、アマテラスと日輪の力を借りたアマテラセックスを繰り広げるシーンが笑いを誘った程度で、到底満足できるクオリティではない。

こうした全方面に渡って苦痛と意味不明さを振りまく本作にスレは戦慄、苦痛の霧はその後もスレに永く滞留し、上半期とは一転して下半期の話題を独占することとなったが、
選評期間終了間近にして、ついぞ一人の賢者がこの正体を解き明かした。

本作のキャラの酷い言動や、シナリオの流れが意味不明なのも、それ自体に意味はなく、ただその場その場で都合のいいように動かされ、しゃべらされているから。
ループの設定が本来の用途から外れ、伏線が回収されない矛盾の温床となっているのも、そもそも伏線を回収する気は始めからなく、その全てをなかった事にして一からシナリオをやり直す(製作者にとって)便利機能だから。
ラスボスを始めとした、ウリであるはずの剣を成長させるシステムが無意味なのも、シナリオの都合上そうする必要があったから。

つまり本作にはキャラクターの一貫した行動原理や、一本筋の通ったシナリオなどというのは始めからなく、作中のあらゆる要素は大司教がその場その場でやりたいことをやるための駒であり、そこに意味などなかったのだ。
この結論にたどり着いたとき、スレを覆っていた深い霧がスッと晴れていき、住民達はようやく販売後半年間に渡って続いた呪いから開放されることとなったのだった。

 このチーズの参戦により、それまで銃騎士が牽引していた戦況は一気に混沌、7月作品も最終的に5作品がエントリーするなど、3月、5月、7月の三陣営が激突する三国時代となった。
しかしその一方で、あまりにも激しすぎる騒乱にスレには疲弊した空気が漂っていた。
もう、これ以上のクソゲーが現れることはあり得ない…。燃え尽き症候群に陥ったスレのテンションと比例するが如く、この後は今までの勢いが嘘のように静かな年末へと向かっていくことになる。

 9月には今度こそ芸無性で勝負だとばかりにsealが『セックス あ~ん♪ パンツァー』で地上部隊を投入してきたが、
攻略法が『とにかくオ○ニーする』という点こそ笑えたものの、所詮は苦ノ一の三番煎じであり、いまさら大して話題にもならなかった。

 11月にはブラックジャックと大貧民のルールを混同した主人公による学園経営物語、『Bunny Paradise ばにぱら ~恋人全員バニー化計画~』が不思議の国の穴からひょっこり顔を出したが、
その実力は"小粒で可愛らしくウサギのクソのようなゲーム"であり、パワーインフレを起こした今年の最前線には到底ついていけるレベルではなかった。

 そんな中で唯一気を吐いたのが、毎度お騒がせオーバーフローの放つ『ストリップバトルデイズ』である。
本作はもともと過去作『SHINY DAYS』のおまけミニゲームにキャラを追加し、単体販売したという野球拳ゲーなのだが、グーを出し続けるだけで勝てると、そもそもじゃんけん自体が成立していなかった。
ウリであったはずのキャラ追加も、追加キャラはまさかのボイスなしと、相も変わらず客をなめ切ったブレない姿勢は流石というほかはない。
そもそもこのゲームのHシーンは自慢のアニメーションではなくCG1枚絵のみなので、要はおまけゲー無+新キャラのCG2枚=2500円というお値打ち価格であり、考え方によっては銃騎士よりも割高といえるだろう。

だがこの程度の駄ゲーで満足することなく、かならず一捻りを加えてくるのが天下のオーバーフローである。
本作はアンインストール時に一つ上の階層のフォルダの中身もまとめて一捻りにしてしまうのである。
この過去の某名作を彷彿とさせるような重大なバグは修正アンインストーラーが公開されても結局直らないまま放置され、"ゲー謀"と呼ばれてスレ住民を嘆息させた。

 そして迎えた年末、上記のような小粒なクソゲーがいくつか名乗りをあげたものの、毎年恒例の年末の魔物が現れる気配は一切なく、スレの話題は相変わらずチーズが牽引していた。
刻一刻と3月帝国の戦況が不利へと傾いていく中、ついにブラックボックスを解析し、決戦兵器の再起動を成功させた一人の技術者がいた。

その決戦兵器は『カスタムメイドオンライン』、3月に衝撃的な登場をしながらその正体は謎に包まれ、その後5月に再検証が行われたものの、結局商品として未完成ということがわかったのみであった。
その後は度々スレで名前が出るも、『クソすぎて誰もプレイしないので内容が分からない』などという話が出てくるばかりで、肝心の中身に関する検証は一向に進まないままであった。
だが年末に再検証が行われた結果、その戦闘力は我々の想像を遥かに超えるものであることが明らかになったのだ。

ではその驚異的スペックを紹介しよう。
まず本作をプレイするには当然の如くインストールする必要があるが、ここに第一の関門があり、ゲームのクライアントがまず7Gb、さらにアップデートが10Gbと、ゲームを始めるだけで6時間待たされる。
そして長時間待たされようやくプレイを終えたプレイヤーを次に待ち受けるのは、未実装の雨嵐である。
メインメニューに並んでいるステータスやコマンドの大半が未実装か事実上無意味、夜伽プレイ時のスキルや性具なども未実装、果てはバックログの音声再生ボタンすら未実装とは誰が予想しただろうか。
果ては公開後9ヶ月以上を経てなお、前述のフルプライスパッケージに付属のチケットすら未実装というあたり、本作の罪深さがうかがい知れよう。

ではゲーム内容はどうか?
本作の内容はタイトルにあるとおり、『自分好みにカスタムしたメイドさんと』『イチャついたりHなことをする』『オンラインゲーム』である。
しかしその実態は、この三要素全てが総崩れともいえる内容になっている。

まず先に言っておくと、本作のカスタム機能に関してはとても優れており、2Dと3Dをうまく融合させたアニメ調の3Dモデルの出来は大変秀逸である。
では何が問題なのかというと、せっかくのカスタム機能をその他のゲームシステムが台無しにしているということにある。
本作ではゲーム内通貨を稼ぐためにメイドに仕事をさせる必要があるが、メイドの服装ごとに設定されている衣装値がこの成功率に影響するため、事実上好みの衣装を着させることができない。
さらにこの衣装値は同じ服装でいると時間経過と共に低下していくため、同じ衣装で固定することもできないという面倒さである。
水増しされたガチャによる衣装獲得も非常に面倒で、本作はせっかくの優れたカスタム機能を搭載しておきながら、ゲームシステムの都合により実際は思うようにカスタムできないというもどかしい仕様となっている。

このゲームのメインであるはずのメイドとの交流や夜伽プレイにおいても、何故かゲームシステムが足を引っ張っている。
まずメイドといちゃつくことが出来る『サロンでの交流』だが、会話パターンが両手の指で収まる程度しかなく1時間もやれば完全網羅、ととてもオンラインゲーとは思えない貧弱なボリュームに止まっている。
また前述の通りゲーム内通貨を稼ぐためにはメイドに仕事をさせる必要があるが、これをするためには何故かゲーム内で高額の酒を購入する必要があり、これを怠るとメイドがストレスで倒れて愛情値が下がる。
つまり『金を稼ぐために金を使って酒を買わねばならない』という矛盾があるわけだが、これを解決するにはどうすればいいのか?
その答えは二つ、『課金してメイドを複数用意し、本命以外を奴隷のように働かせてその金で本命のメイドに貢ぐ』or『愛情値は事実上未実装なので、メイドが倒れようが無視して働かせる』であり、本作のコンセプトを真っ向から否定している。

でも夜伽プレイさえ良ければ…そう思うプレイヤーも多いだろうが、ここにもしっかり芸無性の侵食を許している。
本作の夜伽では、精神値と興奮値という二つのパラメーターがあり、愛撫やピストンといった一つ一つの動作ごとに興奮値が増加し、精神値は減少していく。
興奮が70を超えると射精や絶頂が可能となり、逆に精神が0になるとメイドが気絶してその時点でプレイは即座に終了となる。
つまりは精神が尽きる前にいかに興奮を上げて射精するまで持って行くか、というゲームなわけだが、このシステムのせいでプレイヤーは自分のやりたいようにプレイすることができない。
さらにどのプレイをするとどれだけ興奮が増え、精神が減るかという数値はゲーム内では一切確認できないため、事前情報なしでプレイすれば確実にメイドが気絶することになる。
このため夜伽をするためには攻略サイトと計算機が必須で、一回一回の動作ごとに興奮と精神の値を計算しながら慎重にやる必要があり、発電とマウスと計算機を順番に行き来するという珍奇なプレイスタイルを要求される。
これではとても夜伽に集中することなどできるはずもなく、しかしそれでも射精直前で『精神値が1足りない』といった状況が発生し、メイドを気絶させるかこのまま終了するかという残酷な二択を迫られることとなる。

さらに新しいプレイを習得するためのシステムも非常に煩わしいものとなっている。
初期状態で習得しているプレイが非常に少なく、1カテゴリーを除いて愛撫は出来ても本番ができないといった貧弱な状態となっている。
新しいプレイを習得するには夜伽をすることで手に入る紳士ptと調教ptを溜める必要があるが、普通にプレイすれば一つ習得するだけで最低でも1週間から最大1ヶ月近くも同じプレイをひたすら繰り返し続ける必要がある。
また乱交カテゴリーだけが何故か効率がいいなど、獲得できるポイントもプレイごとにかなりの偏りがあり、効率を重視するなら『挿入して即放尿』×3回1セット×1日5回と言った身も蓋もないプレイを強制される。
オンゲの都合上1日にできる夜伽の回数が制限されていることもなおさら効率重視のプレイを強いられる原因であり、自分のやりたいように夜伽ができないことに拍車をかけている。

オンゲとして見ても、見るべき点はない。
オンゲの最大の魅力はアップデートによる進化と、他プレイヤーとの交流にあるはずだが、サービス開始後9ヶ月を経ても当初からの問題点や未実装は一切改善されず、むしろバグを増やして進化どころか退化している。
衣装や期間限定お仕事など表面的な要素は追加されているものの、それだけならDLCやアペンドディスクなどで事足りる話であり、この点においてオンゲの特徴を活かしているとは到底言えない。
またゲーム内で他プレイヤーとリアルタイムで交流する機能も一切なく、交流は時代遅れの公式掲示板のみ、ウリにしていたはずの他プレイヤーとのメイドの品評会や貸し借り、乱交プレイなども全て未実装のまま、と
オンゲならではの楽しみというのは一切ないといって過言ではない。
しかしその一方で、仕事や夜伽などにリアル時間の制限がかかるシステムや、廃課金仕様など、オンゲならではのデメリットだけは完全網羅している。
つまりこのゲームは、オンゲである必要性が一切なく、むしろオンライン要素は害でしかないのである。

でも今までの話は無課金だからであって、課金すればちゃんと楽しめるんでしょ? そう思う人もいるだろうが、そこにも救いはない。
このゲームで課金することで有利になる点は、課金衣装と課金プレイが購入できる、ほぼそれだけである。
しかし衣装を購入しても好きに着させることができず、新しいプレイを習得しても夜伽に集中はできない…と、プレイヤーの楽しみには何重にも枷がかけられており、
そもそも上記の問題はゲームデザイン自体が歪んでいることに端を発しているため、課金したからといってそれが改善されることはないのだ。

さらにこの課金制度についての問題点も述べなくてはなるまい。
本作の課金に使用する公式のプリペイドカードがあるのだが、このカードは1500円の価格に対してチャージされるptは税分さっ引いた1429ptという前代未聞の仕様になっている。
それどころかこのカードは4月以降増税に伴い、同じカードでも1389ptになると明記されている(注:販売は3/28日)という信じがたいケチくささである。
しかもアイテムの価格は100pt単位であるため端数は全く無駄になるというふざけた仕様の前には、課金しようという気がみるみるうちに失われていくことだろう。

以上のように本作はそもそも未実装で製品として成立しておらず、ウリの要素は自ら芸無性で潰し、課金を始めとした運営の態度は最悪で、それでも課金しても何も救われない…
と、あらゆる面において楽しめる点をチリ一つ残さない、正真正銘のターミネーターであったのだった。

 こうしてカスオによる大規模な反転攻勢によって幕を閉じた2014年だったが、それでも住民達はまだ満足していなかった。
年末の魔物の不在…そして前年度の恐怖の記憶…そんな懲りない住人達は、まだきっと何かあるはずだと、不発弾を発掘してはハンマーで叩いて遊んでいた。

 そんな中年明け早々発掘された第一の不発弾は、前年度大賞『部室』のライターによる『ヤリ友ペット欲情生活』である。
本作のジャンルは『手近な女の子を全員喰いモノにするADV』であるはずが、その内容は大半が和姦からのハッピーエンドという純然たるジャンル詐欺であった。
テキストも全編に渡ってイカれたテンションと寒いパロディ、ネットスラングに満ちた粗製乱造品であったが、その中に「前後ォ前後ぉぉ」という明らかに当スレを意識したネタが仕込まれていることは看過できない。
これは前作の部室がそれまで全く無名だったのが、大賞に輝いたことで逆に注目されたということに味をしめた一種の炎上商法ではと疑われ、"人為的クソゲー"と呼ばれ唾棄された。

 その後も捜索は続いたが、1月13日、海底遺跡を探索していた潜水艇のソナーが「♪カチッカチッチャラララン」という奇怪な反響音を捉えた。
海底よりサルベージされたその不発弾の名は『俺がヤマタノオロチなら』(オロチ)。6月に発売される前後、奇天烈なタイトルとあらすじで一瞬話題になったものの、すぐにチーズの洪水に押し流され海底にて半年間眠っていた代物である。
しかし某批評サイトで驚異的な低得点を叩き出していたことや、奇しくも前年の部室と同日のエントリーであったことなどから、これこそが部室の真の生まれ変わりなのではとスレ住民が身構える中、
緊急出動した対策班によって解明されたその実態は、生物兵器を内包した大量破壊兵器…ではなく、どこか懐かしいエロゲ少年時代のガラクタの詰まったタイムカプセルであった。

まず本作のジャンルは『俺がヤマタノオロチになっちゃったら困っちゃうラブラブADV』であるが、このタイトルとジャンル名から想像されるようなギャグゲーやバカゲーでは全くなく、
主人公の周りで発生する怪異や、神代の時代からの因縁を持ったキャラ達によって主人公の正体が少しずつ明かされていくというサスペンス伝記物である。
しかしそもそもタイトルとジャンルの時点で物語上最も重要な謎であるはずの主人公の正体が真っ先にネタバレされており、
"犯人と手口が表紙に書かれた推理小説""名作『痕』のタイトルを『俺が鬼なら』にし、ジャンル名を『俺が鬼になっちゃったら(ry』と改変するようなもの"と評されるほどのミスマッチっぷりである。

この時点でシナリオの面白さの9割以上が損なわれているが、残り1割のクオリティも極めて低い。
共通ルートは主人公の正体が分かっているのにひたすら思わせぶりな発言が続くうんざりした展開に加え、80年代レベルのお色気イベントなど、呆れるほどセンスの古臭い日常描写が続く。
かといって個別ルートに入れば、今までと打って変わって裏設定が矢継ぎ早に公開され、問題は全てスサノオが解決してくれるため主人公とヒロインの見せ場はなく、カップ麺を作るより短い最終決戦と、見所はどこにもない。
またとあるヒロインルートでは、全てが終わった後に唐突にアマテラスがヒロインの体を乗っ取って乱入し、それまでの展開をコケにした挙句主人公を誘惑してアマテラセックスにもつれ込むという誰得超展開であり、
アマテラスが極めて不快な人物になっていることも相まってプレイヤーを愕然とさせた。

グラフィックも作画、塗りともに同人レベルで、立ち絵をそのまま挿入して差分にするという驚愕のイベントCGがあるなど、極めて低品質である。
背景グラフィックも実写のトレースであり、看板が実在する店舗そのままであるのはまだともかく、作中の『須賀駅』に思いっきり『鎌倉駅』と書いてあるという事実はスレを笑いの渦に包んだ。

クソゲーは音はいい、という法則があるが、クソゲーという概念が誕生する前に産まれた本作はそのような常識には囚われない。
BGMのクオリティ自体は悪くはないが数が少なく、メインヒロインの最大の見せ場をOPテーマが塗りつぶしたり、HシーンのBGMが悪役のテーマにしか聞こえないなど、その使い方が明らかにおかしい。
SEもファミコンの時代に巻き戻ったかと思わせるほどチープだが、何よりも話題となったのはシステムサウンドが何故か人の声であるということだろう。
ボタンにカーソルを合わせると「♪カチッ」、決定すると「♪チャララン」、右クリックすると「♪ピコッ」と鳴るボイスパーカッション仕様は住人一同の腹筋を崩壊させることに成功した。

以上のように本作はあらゆる要素がとても現代の作品と思えないほど低品質かつ古臭く、公式の要求スペックが『PentiumⅢ500Mhz相当』という骨董品レベルになっていることもあって、
"十年以上前に開発されたゲームがそのまま封印され現代になってから発売された"とまで評された。

しかしその一方で、本作からは近年多発しているような、明らかに手を抜いて作った結果産まれた粗製乱造クソゲーというマイナスイメージはあまり受けず、
逆にかつての今から見れば低品質なゲームでも一つ一つに感動することが出来ていたときの熱い気持ちや、エロゲーがこの20年間でこんなに進歩したという感慨を与えてくれる存在であり、
ノスタルジーを感じさせる味わい深いクソゲーとして古参ゲーマー達をしみじみと和ませてくれたのだった。

 以上、主要なエントリー作品を全て紹介し終えたところで、結果発表に移る。
2014年のKOTYeの次点は、
『銃騎士 Cutie☆Bullet』『ビッチ生徒会長のいけないお仕事(パッケージ版)』『俺がヤマタノオロチなら』
大賞は、
『新世黙示録 ―Death March―』『カスタムメイドオンライン』
のダブル受賞とする。

2014年は異例ずくめの一年であり、年始の門番、年末の魔物が不在な一方、3,5,7月に主要作品が集中するという前例のない構図となった。
今までのように分かりやすいクソ要素を抱えた作品だけでなく、検証や考察に膨大な時間と労力を要する大作が現れた、選評者泣かせの年であったことも今年度の特徴である。
その一方で、前年度に危惧されていた業界の地盤沈下はより顕著となり、超えてはならないデッドラインをスキップで飛び越えるような負のクソゲーが跳梁跋扈したことも忘れてはならない。

そんな中で、『ビッチ』は、パッケージ版とDL版で内容が異なるという前代未聞の珍事をやらかし、さらにその原因が未完成を隠すために過去作品をそのまま流用するというあり得ない禁じ手の結果産まれたものであり、
まさに企業のモラルハザードの極地である『負のクソゲー』の象徴として選出した。
一方の『オロチ』は、絶対的に低品質にもかかわらず何故かあまりマイナスイメージがなく、むしろノスタルジーさえ感じさせるという今年度の中でも稀有な笑えるクソゲーであり、『正のクソゲー』の象徴として選出した。

そして残るは3つ、『銃騎士』『チーズ』『カスオ』の3作品だが、これらはクソ度、苦痛度、話題性において他の作品を圧倒し終始スレの話題を席巻した実力者達であり、その序列付けには非常に難航した。
しかしその中で『銃騎士』のクソさを構成する要素に着目したとき、例えばCGの枚数が少なくプレイヤーの期待を裏切ったという点においては『ギャルカディア』に及ばず、
滑ったシナリオの苦痛度においては『チーズ』に及ばず、製品として未完成という点においては『カスオ』や『ビッチ』に及ばないのではないかという結論に達した。
つまり『銃騎士』は、様々な面においてSランクの能力をバランスよく兼ね備えているオールラウンダーではあるものの、他者を圧倒するオンリーワンさに欠けていたことから、他二つには僅かに一歩及ばず、次点とした。

そして最後は『チーズ』と『カスオ』の頂上決戦となったわけだが、この2作品の間に差を見出すことは非常に困難だった。
まず『カスオ』が基本無料のオンゲーであることをどう評価するかだが、本作品はオンゲーではあるものの、有料パッケージを流通を通して販売していることからエントリーの資格は満たしているということでスレでは決着。
次に基本無料については、本作品のクソさはゲームデザインの歪みに起因するもので、無料でプレイするのですら苦痛であり、さらに課金したからといってそれが一切改善されないということから、
基本無料であることは免罪符にならず、減点対象には当たらないと判断した。

では作品としての完成度に着目すると、『カスオ』は未実装だらけの製品未満な状態でサービス開始した上、オンゲというアップデートのしやすい環境にもかかわらず開始後9ヶ月経ってなお改善されるどころか悪化している有様であり、
内容がどれほどクソとはいえ、大きなバグもなく、製品として一応完成をみている『チーズ』と比較すると悪質度が高く、この点においては『カスオ』に分があると言えるだろう。
しかしその一方で、僅かでもほめるべき部分があるかという点に着目すれば、全ての要素が不快と苦痛で、ほめるべき点が何一つ見出せない『チーズ』と比較すると、
たとえゲームシステムによって潰されて結果的に楽しめないとはいえ、カスタム要素の出来だけは秀逸だった『カスオ』のほうがマシとも言え、この点においては『チーズ』に分があると言えるだろう。

このように様々な側面から検討してみたものの、結果的にこの2作品の間の明確な差を導き出せる合理的な論理を構築することが出来ず、途方に暮れていた。
そんな中、原点に返って双方のクソゲーとして最もクソな要因は何かという点をを改めて検討していた時、ふとあることに気づいた。

『チーズ』はキャラ、シナリオ、グラフィック、システムとありとあらゆるクソさが複雑に絡み合った、いわば『クソの総合的な重量』が苦痛の中心である、『重いクソゲー』であった。
一方の『カスオ』は、当初から未実装の嵐で落胆させ、エロですら長時間同じ作業を強いられる苦行と化し、アップデートで改善されると期待しては裏切られるという『クソの時間的継続性』が苦痛の中心である、『長いクソゲー』であった。

つまりこの2作品は始めからクソの向いているベクトルが全く異なっており、同じ土俵の上で戦っていなかったのだ。
『重さ』と『長さ』を比較することはできない。
従って、本年は異例のことながら、2011年以来である『チーズ』と『カスオ』のダブル受賞とすることを決定した。

 KOTYeが始まってから今年ではや7年目、スレも次スレでとうとう100の大台に達するところまで歩んで来た。
思い起こせばこのスレが出来て以来、数多くの個性的なクソゲーたちが流星の如く現れ、あるものは怒りと哀しみを振りまき、あるものは笑いの輝きを放ちながら燃え尽きていった。
しかし近年、エロゲ業界を取り巻く環境は厳しさを増すばかり…2014年も粗製乱造品や負のクソゲーが量産され、当スレの理念である「クソゲーを掴んだ哀しみをエンターテインメントへと昇華し笑い飛ばす」を貫くことも難しくなりつつある。
この収束しつつある未来に対し我々はどう向き合っていけばいいのか、そんなことを考えずにはいられない一年間でもあった。

そんな中、20年前と変わらぬ姿をした1つのクソゲーが、我々に思い出させてくれた。

かつてエロゲーにはOPムービーはおろかOPテーマソングすらなく、グラフィックは稚拙で音楽は電子音丸出し、システムも洗練されずバックログすら存在しない時代さえあった。
しかしそういった稚拙な時代であっても、我々は萌えの魂をもって補完し、精一杯楽しんでいた。
その後エロゲーの進化と共に、エロゲには歌がつき、ボイスがつき、ムービーがつき、その度に我々は感動し、興奮することができていた。
そして現代、エロゲーの進化する余地が少なくなって感動することが減り、業界の先細りがささやかれてなお、我々は毎月諭吉を握り締めてゲームショップへと向かう。

何故か?
そういった全ての時代に共通する精神、それは「エロゲーが好きだ」「エロゲーを精一杯楽しみたい」ではなかったか?
そして当スレの理念も、そこに端を発しているのではなかったか?

良ゲーとクソゲーは表裏一体、良ゲーが産まれる一方で、残念ながら一定のクソゲーが産まれることも避けられない。
ではそういったクソゲーは無価値なのだろうか? 否、そうではないと思う。
かつてとある騎士は言った。
「"犠牲"を支払わない限り、人は前へ進まない。歴史を作ることはできない」と。

そう、クソゲーもエロゲー界を構成する大切な要因であり、エロゲーの歴史の一部なのだ。
そうであれば、我々の使命とは、不幸にして産まれてしまったクソゲーをエンターテインメントへと昇華し、未来の良ゲーの礎として宙へと還すことではないか?

この先どれほど厳しい未来が待ち受けていようとも、我々がエロゲーを愛する心を、エロゲーを楽しまんとする精神を忘れない限り、エロゲーがなくなることはあり得ない。
そして、たとえどんな敵が現れようとも、エロゲーがなくならない限り、クソゲーと向きあい続けるこのスレが終わることも決してないのだ。
その決意を新たにし、エロゲーを愛する全てのプレイヤーと、エロゲーを産み出し続ける全てのメーカーへ、未来からやって来た僕達の永遠のともだちの言葉を借りて激励を送り、2014年のKOTYeを結ぼうと思う。

「未来は、これからかえることができるんだ。あんなにならないようにがんばれ!」
最終更新:2015年02月11日 15:55