2012年度 総評案2

2012総評案2 大賞:JOKER-死線の果ての道化師-


486 自分:総評案2 ● ◆cLVJ1waRY6 [sage] 投稿日:2013/02/13(水) 07:30:02.94 ID:CPYGsfLW0
『あなたがわたしの民を行かせることを拒むなら、さあ見よ、私は明日いなごをあなたの領土に送る。
……(中略)……彼らの来る前には、この国はエデンの園のようであるが彼らの去った跡では荒野となる』
――出エジプト記より

『アイ惨』という無から生まれたスレは、その増長した慢心が神の怒りに触れ主の落とされた『りんかねーしょん☆新撰組っ!』により言葉を乱すこととなった。
各地に散らばったスレ住人達は『色に出でにけり わが恋は』に捕囚され100の選択肢を答える苦役に狩り出されることとなる。
苦役より逃げ出した者たちは偽りの神を拝んで先の見えぬ『学園迷宮』を彷徨うこととなり、
神を失い残った者たちは『ゾンビ』の出す死の間違い探しという苦役の中にいたのである。
かくて約束の地を目指すスレ住人達へと今まさに襲い掛からんとしていたのは大量の虫達であった。

2012年の初頭1月27日、いまだ去年の衝撃も収まらぬスレに訪れたのは、大賞を獲得し勢いにのるsofthouse-sealが送る、
『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』であった。
発売前から某同人作品のパクリと噂されていた本作だったが、
発売してみれば何のことはない、その同人作品にすら劣るというパクリなどどうでも良くなる出来のものであった。

このゲームは横スクロールステージを進みながら現れる敵を倒し躱し、最後に待ち構えるボスを倒すというゲームであるが、
まず難易度のバランスが悪く、回避不能の攻撃をしてくる敵が出てくるため正攻法で進むのはかなり辛い。
しかし、ジャンプ中は無敵になる仕様のため、ジャンプし続けながら進めば運が悪くない限りボスまで倒せるという、
アクションゲームが苦手な人にも簡単にクリアできるような安心設計となっている。
そうやってステージをクリアすることで現れるのだろうと期待されるエロCGであるが、本作では一切存在しない。
エンディングまで行っても存在しない。
このゲームのエロシーンはステージ中の敵忍者などに操作キャラが捕まると
ステージを動き回っているミニキャラが、そのまま犯されるだけのアニメーションが見れると言ったもののみである。
この手のフラッシュゲームでは、同じように操作キャラがゲーム部分で犯されるだけというゲームも多いが、
本作ではそのバリエーションが少なさでも際立っており、敵忍者と複数存在するボスに犯されるだけの数少ないものとなっている。
このようにデバッグで手を抜きエロでも手を抜き、テンプレートのようゲームを劣化させた作品で2012年クソゲーの先陣を切ったsealだったが、
今年は各社「手抜き」という共通意識を持ったかのように、劣化テンプレートのような作品が頻出することとなる。

くのいちの勢いから間を空けず2/10にDevil-sealが世に送り出した
『獣ノ躾 ~本能と理性の狭間で悶えるケモノ~』はまさに手抜きの逸品である。
背景やシナリオも、しっかりと手を抜かれている本作であるが、一番の手抜きどころは肝心のゲームシステムである。
このゲームは、借金返済のためにお金を稼ぎ、一週間ごとに提示された返済額を支払っていくという目標があるが、
パッケージ版では300万を返済したら、所持金は500万減っているというわけの分からないバグに襲われる。
大体返済額の2倍の金が奪われるという、このバグのせいで最終週にはまずクリア不可能な金額を返済しゲームオーバーに陥ることになる。
さすがにメーカーからver1.01パッチが出されたため、この事態は回避されるようになったが、
このパッチすらも、当てるとゲームがエラーを起こすようになると言うバグの嵐を見舞わせることになる。
これらはver1.02のパッチで解消されたが、やはりこのメーカーにデバッグと言う観念は存在しないことを再確認することとなった。

3月には
Aileの『Friends』が「生徒会選挙に勝ったら彼女になる」と言う伏線が引かれたと思ったら選挙そのものが起こらず「彼女になる」という、
起と結だけでシナリオが進む起承転結の承転を抜いた、シナリオ中抜工法をみせ、
同じ月のMeteorの『Princess-Style』はシナリオに山場を作らず絶えず平坦で、かつ起承転結のどれかが抜けていると言う、
こちらもまた、シナリオの手抜き工法を披露し、スレの話題をさらった。
加えて6月にも
黒鳥から発売された『NTR48 ~俺の家族が寝取られるまでの48日間~』は、
タイトルからして48日間をかけて徐々に寝取られていく過程を描いた作品と期待されていたが、
薄い共通シナリオを終えて各キャラルートに入ると、突如として現れたキャラにヒロインが犯され、
延々とHシーンが続いてエンディングと言う、ヒロインに執着すらもてない上に寝取られの焦燥感や屈辱感も希薄で寝取られの何も理解していないような、
ジャンル愛好者を腹立たせる手抜き具合を見せた。
これらの会社からは外から見えない中身ならいくらでも手を抜いていこうと言う、今の日本の建築業界が失った精神を感じ取ることが出来る。

NTR48は更に前作の『濁悪催眠』をインストールしている状態で、ゲームディスクを入れると「インストール」は表示されず、いきなり「ゲームを起動する」が表示され、
それを押しても何も起動せず、「アンインストールする」を押すと前作の『濁悪催眠』を削除しますと言うポップアップが出るというバグが報告されている。
前作のプログラムを、ほぼそのまま流用したことから起きたバグだと考えられるが、どうしてそんな小さな変更すら手を抜くのか。
まさか前作を購入した人が今作を買うなどととは考えぬ謙虚な自信の表れなのだろうか。

こうして多くの企業から手抜き作品が作られていく中、
上半期も終わる6/29に「あかべぇそふとすりぃ」より渾身の一作が世に出されることとなる。
『JOKER-死線の果ての道化師-』である。
企画シナリオを勤めた奇才小山田先生には、他のシナリオライターのような手抜きは一切見られない。
まず体験版をプレイした人々は、小山田先生の綴った、
「ざざーんざざーんごごうごうばばばば」「ごごろぴごーーん、なんてときどき落雷」「どーどーどどどどど。ばらばらばらば」
と言う、斬新極まりない入魂のレトリックに腰を抜かすことになる。
残念ながら、この前衛的な表現が理解できないユーザー達の意見によって体験版の表現は穏やかなものに変えられたが、
その分、製品版では小山田節が遺憾なく発揮されることとなった。
「僕は迷子だ。 世界的迷子だ。 」「そそそそそそそそそそそとセイタカアワダチソウののオーケストラ。」
と言った革新的な文章は、多くのユーザー達の心をがっちりとつかむことになる。
これらの文章を読んだユーザー達の心はある共通の思いを抱くことになるのである、そう、「意味わからねえ!」と。

この圧倒的な文才の前には、両目をえぐられたキャラが朝になるとピンピンしていたり、
結局最後まで明かされない多数の謎、りんかねのような唐突な場面切り替わりなどの細かな内容のお粗末さは全く瑣末な問題である。
手抜きをせずに誠心誠意仕様通りに完成させたらバグの塊にしか見えないと言う、怠慢でバグまみれになる他の企業との格の違いを見せ付けたと言えるだろう。

下半期になりスレは小康状態になり、しばらく有力な選評は届かなかった。
7月に発売されたsofthouse-sealのRPG第3弾となる『魔物っ娘ふぁんたじ~』や、
11月の同社の『欲情トマランナーズ ~エルメロスは絶頂した~』は、「いつものseal」と言うべき出来であり、
テンプレートのような作品を、金と時間がないから手抜きで作ってバグと崩壊したバランスとひどい操作性にまみれた物に仕上げると言う目新しさのないもので、
上半期が同じような手抜き作品が溢れたことからスレは慣れに侵されて、あまり話題にはならなかった。

そんな中、「スワンアイ」の『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~ 』がスレを活気付かせる。
このゲームの特徴は、シナリオ展開の不条理さである。
ジョーカーは文自体がバグのようであったが、こちらはシナリオがバグである。
SEXの強さによって序列が決まる世界なのに、そのトップランカーたちが何故か全員“処女”であるという意味不明な設定に始まり、
逆レイプで強制的に中田氏させるといった描写のあった女性が「どうやら彼女は処女だったようだ」というモノローグが入ったり、
そのヒロインが処女喪失する場面で「使い古しのマ○コなのに気持ちいい!」と発言したりと理解の範疇を超えるシナリオ展開を見せる。
シナリオのボリュームも、起承転結の承転をダイジェストで済ませるような中抜工法の合わせ技で薄さと奇妙さのダブルでユーザーはシナリオに苦しむこととなる。
このゲームのシナリオライターは「NTR48」でもシナリオライターを勤めているばかりか、
2013年のスワンアイのゲームでも早々にやらかしており、クソゲーライターとして見事に地位を固めたようである。

SEX戦争の勢いにのって製作開始から10年のときを経て発売されたと言う「Exception」の『白神子~しろみこ~』の選評もスレに届いた。
このゲームの特徴は何と言ってもノスタルジー溢れる古臭さである。
まず絵が古臭く、10年前のエロゲーと比べても更に古く思える。そこに感じるのは、むしろ90年代の同人の懐かしさのようである。
シナリオもまた古典的な展開で無駄に膨大、萌えが存在しない頃のような純朴さ感じさせるキャラクター造詣など、
本当に2012年に発売されたのか疑わしくなってくるほどだ。
そして、こんな古臭いゲームから学べることは、ただ一つ「あの頃も良くなかった」と言うことである。

そして訪れたるは2012年も年末である。

まずスレに現れたのは「FLATZ」により開発された『CROSS QUARTZ』だった。
このゲームはメトロイドや悪魔城ドラキュラのような探索型アクションゲームであり、
それらの操作性を出来る限り悪くして、情け容赦ない難易度にしたと想像すれば、なんとなくこのゲームが分かるかもしれない。
まず雑魚敵ですら被ダメージ量が高く、被ダメ時の無敵が短いことから初期状態で一気にHPが削られたりする。
更には、触れると即死する針などの即死する地形がいたるところに仕掛けられており、ただ一フロア通り抜けるだけも厳しいが、
敵の攻撃によるノックバックで足場から針床に落とされることも多く、
操作難もあいまって初見ならまず死ぬ、2度目でも死ぬ、3度目でも死ぬ、良し死ね、と言う部屋がいくつも存在している。
一度でもプレイすれば、罠は侵入者殺すためにある、モンスターは侵入者を殺すためにいると言う、
現代の甘やかしゲームが置き忘れてきた物を思い出し、作者達のユーザーをなんとしても殺そうと言う明確な殺意を感じることが出来るだろう。
しかし、これだけならば難易度の高いアクションゲーム程度と言うことも出来るが、
このゲームの最も厄介なところはセーブポイントが極端に少ないと言うことだ。
何度も死んで即死ポイントを乗り越えたとしても、その先にセーブも出来ずまた即死ポイント様が鎮座しておられるである。
折角即死を乗り越えたことが全くの無駄になると言う、まるで賽の河原で何度も石を積むような徒労感に襲われる、
この世の真理の果てに快楽を見出すような真性マゾ専用のゲームとなってしまっているのだ。

続いてスレに現れたのは「ルナソフト」の『深淵のレコンキスタ』、戦略の存在しない戦略ゲームの登場である。
ユニットをつくり拠点を攻めて奪い取る国盗り型SLGなのだが、攻め込むために使用可能な20種類のユニットの各々の強さが分からない。
そのため強さと生産コストを見合わして状況に応じた特殊能力のユニットを生産すると言うことできず、
基本は同じ質なら物量の多いほうが勝つと言う単純極まりない作戦を取ることになる。
しかしそうやって生産したユニットよりも魔法の性能が異常に高く、
弱いユニットを大量に生産して魔法のポイントを溜めて魔法で殲滅したほうが楽などと言われてしまう。
こんなゲームバランスを取るためのデバッグもまともに行われていないような手抜き製品が年末に発売されたのは、今年一年を象徴していると言えるだろう。

さて年末最後に届いた選評は、7月に発売された作品だったが、徐々に徐々にその暴風域を広げ、
その年末には巨大なバグの嵐となっていた「REAL」の『いたずらっ娘 ~うちの娘にかぎって~』であった。
このゲームは3Dエロゲだが、とりあえず重い。
推奨環境がCore2Duo 2.6GHzであるにもかかわらず、
Core2Duo 3.5GHz相当のCPUでも、キャラクターを3人登場すると10fps以下になると言う推奨と言う言葉の意味を見失う程の出来である。
この重さに加えて多くて長いNowLoading地獄にユーザーのストレスは限界ぎりぎりになるが、
それらを乗り越えてようやく楽しもうとしたゲームでユーザーはバグの塊に押しつぶされることになる。
喪失したはずの処女膜が再生する処女継続バグや壁埋まりバグ、中田氏するとゲームが落ちる中田氏バグ、尻が異常な揺れ方をする荒ぶるお尻バグなど
笑えるものから目を疑うようなものまで様々なバグが作品スレ住人により発見されている。
普通ならば、これらのパッチによって改善されるものだが、この企業はこのバグを殆ど放置したままでダウンロードコンテンツ(DLC)の配布を始める。
しかも、このDLCを当てると更にバグが増えると言う苦しめたいのか喜ばせたいのか全く分からないものである。
DLCの合間に修正パッチも細かく配布されていくが、その修正パッチも当てるとバグが増えると言う始末で、
当初確認されていたのは5個程度のバグであったが、年末には30以上のバグを抱え巨大なバグ嵐に発達し、
そのバグの半分以上は放置されたままと言う大変危険な状態になっているのである。

以上で2012年のめぼしいエントリー作品を紹介し終わった。
これらの中から次点と大賞が選ばれることになるが、今年の次点と大賞、次のように定める。
次点は、
『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』
『CROSS QUARTZ』
大賞は、
『JOKER-死線の果ての道化師-』

今年は「くのいち」から始まり多くの手抜き作品の選評がスレに集まった年であった
その手抜きにより多くのバグが報告されたスレは、まるで無数の虫がへばりついたとりもちのようだった。
sealのクソゲーは、それぞれがクソゲーとして高い質を持ち珠玉の逸品であるが、
どれも同じように不完全なだけであり、クソとしての方向性が変わらないため、とりたてて一つが飛びぬけてクソだと言う要素に欠ける。
そして同様に、他のメーカーの手抜きであるだけの作品も飛びぬけて手抜きともいえないのである。
そんな中で「SEX戦争」は手を抜いてないのに、シナリオライターの頭がバグっているため引き起こされるシナリオの不合理さで際立っており、
「CROSS QUARTZ」は手を込めて作ったことが、多くのユーザーを地獄へと導いていると言う点で見事な出来となっている。
しかし、これらの中でも「JOKER」は、才能を発揮し努力した結果が見事なクソとなり、ここまで人々を魅了したと言うことで格別と言って良い。
小山田先生の綴る文章は、シリアスなゲーム設定と相反しユーザーの気分を害する点で、紛れもないクソである。
詰めの甘いゲーム設定や推理、苛立ちの覚える展開やキャラ、意味不明なシナリオなど、シナリオライターとしての力も正しくクソである。
だが、氏の文章は決して暗く陰鬱なものではなく光り輝くものであり、そしてそれはクソゲーとしての煌きだ。
ごごろぴごーーんなのである。
辛い、苦しいと言ったクソゲーとしての強さだけではない、クソ要素がクソ要素でありながら人を惹きつけ魅せたという意味で今年一番だったこのゲームに、
自信を持って大賞贈りたいと思う。

そして、最後に大賞となった『JOKER-死線の果ての道化師-』を開発したあかべぇそふとすりぃに次の言葉を送り2012年を締めたいと思う。

『自分の世界に浸って、僕達の感性を世界的迷子にさせないでください』
最終更新:2014年08月02日 23:07