2018年 総評

孕ら・ポコ! ~異能催眠で女学園を孕ませ征服~』(10/26)《みるきーポコ》

10年に一度の災害。
KOTYe2017大賞の「ママとの甘い性活Ⅱ(通称ママⅡ)」は、まさにその言葉の通りであった。
エロゲーというものを知らない人ですら一目見てわかる酷さは、絵の評価基準を大きく狂わせて認識災害を引き起こし、数多のクソゲーをも「ママⅡと比べたら神作画」として許してしまいかねない異様な空気を生み出していった。
「エロCGはきっちりあるのに使い物にならない」ママⅡは、KOTYeの生みの親であり「エロゲーなのにエロCGが無い」アイ参に対するアンチテーゼとして己の立ち位置を確固たるものとし、「クソゲーとは何か?」の解を求めるKOTYeを更なる混沌へと誘う。
かくして、スレ住人は今年も先の見えない不毛の大地をあてどなく彷徨うこととなる。

2018年のKOTYeは、前年同様遅咲きであった。
何作か話題には上がるものの、いずれも選評が上がらない。
チーズやママⅡの残滓に蝕まれ沈黙したスレに雪解けが来たのは、暦の上ではとうに春が過ぎ去った4月の末。
4月27日にApricotCherryより発売された「催眠調教姉妹」の選評がスレに寄せられた。
姉妹から虐められてきた主人公が催眠の力を手にして姉妹に復讐するという、「お約束」なあらすじの本作。
だが、CD1枚に収まる容量や不安を覚える程簡素なタイトル画面から察せられる通り、中身の方もクソゲーとしての「お約束」を手堅く押さえた出来である。
まず目につくのはグラフィックだ。
立ち絵の時点で微妙さが隠せていないが、CGになるとデッサンの崩れが顕著に現れ、骨格が人外になるものも混ざり込む。
シナリオの方は「尋常じゃない舌技」「射精中枢」など独特の言い回しにライターの拘りを感じるが、それより遥かに誤字が目立つ時点で評価に値しない。
中盤以降は掘り下げの無さと展開の雑さが光り、姉妹にかけた催眠の効力が弱まるという展開も活きることはなく、最後は催眠をかけ続けたヒロインと主人公が共に壊れるか壊れたヒロインに殺されるかの二択だけという打ち切りENDだ。
また、当の主人公は「苦しめるのは姉妹だけだ、他を傷つければ姉妹と同じクズだ。」と宣う一方でのっけからモブを凌辱し、催眠のせいで広まった「近親相姦姉弟」の噂を紛らわすために「モブ男子共がホモ乱交していた」という噂を流布するクズ野郎。
それ故に壊れようと死のうと同情の念は湧かないのだが、そのせいで余計にシナリオが面白くないという二重苦になっている。
姉妹もののくせに姉妹丼も無く、更には回想モードすら未実装とエロ方面でも隙が無い。
一撃の破壊力こそ無いものの程よく整ったクソゲーぶりに、選評に飢えていたスレ住人達は「こういうのでいいんだよ」と温かく迎え入れるのであった。

6月の始めに届いた2つ目の選評は「人妻ざかりの性指導」。
インカローズより5月25日に発売された本作であるが、ミドルプライス(税抜6,800円)の抜きゲーという点を鑑みても擁護が厳しい。
先制攻撃とばかりに調整不足の大音量SEが鼓膜に突き刺さるのは序の口。
頻出するNGボイス、人妻モノなのに旦那が居る背徳感を全く感じさせないシナリオ、テンキー側のEnterキーを使うと必要以上に文章をスキップするバグなど、多芸なクソさを見せる。
抜きゲーの肝であるグラフィックは同一のキャラですらまともに描き分けられない不安定さであり、なかでも「一番年上で胸の大きさも一番」なヒロインは、顔・体型・胸の大きさの全てがCGごとに変化するスペシャル仕様。
笑いどころは射精のSEが「シンクにカップ焼きそばをぶちまけた音」な点のみであり、ブランドのコンセプトである「明るいエッチ」とは対照に、苦々しさが付き纏う出来であった。

7月の頭には、3月30日にCarol Worksから発売された「夏色ラムネ」の検証が終わり、無事エントリーとなった。
幼少期の仲間と絆を再び深めるのが本作のコンセプトで、塗りが美しいCGやゲームコンセプトに合った素敵なOPが花を添える。
だが、そこにかぐわしいクソの香りを加えるのがコンセプトを蔑ろにしたシナリオだ。

本作の粗筋は、幼い頃に過ごした田舎で友人達と再会し、思い出の場所である駄菓子屋を閉店の危機から救おうというもの。
真っ当に作れば良作ともなり得るこのシナリオを台無しにしたのは、主人公の存在と個別ルートの薄さである。
問題の主人公は駄菓子屋の閉店を人一倍嫌がるのだが、その実態はただ駄々をこね続けるだけで、結局見かねた友人達が折れて夏休みの間駄菓子屋を手伝うことになる。
それ以外の面でも主人公は意見を主張するだけで何もせず、具体的な解決案は周りの人間が出すという展開が殆どであり、言動の幼稚さや学習能力の無さに苛立ちが募る。
友人達は最初から好感度振り切り状態のため、そんな主人公をたしなめつつも協力を惜しまないのだが、そのせいで猶更主人公の存在意義が薄まり、只のストレス要因となってしまっている。
個別ルートについても殆どのルートが適当にいちゃつくだけで、共通ルートで散々揉めた駄菓子屋について真剣に描いているのは僅か1ルートのみという始末。
酷いものでは駄菓子屋の店番中にHする有様で、思い入れとは何だったのかと再考させられる。
素材は良いものを揃えたのに本筋を蔑ろにして存在意義を失っていく様を前に、スレ住人も呆れるばかりであった。

猛暑の中だるみを挟み、8月には「サイミンヂカラ~催眠術をめぐる淫らな白濁の物語~」がエントリー。
白濁系から5月25日に発売された本作はオムニバス形式をとり、頻繁に視点が入れ替わる仕様となっているが、実際は低価格同人エロゲー3本を無理やり継ぎ足し、ほんの少し新規要素を追加しただけの詐欺商品だ。
公式HPや流通のサンプルでも新規描きおろし要素のみを公開するあたり、購入者を騙す悪意に満ち溢れていることに疑いの余地はない。
単体として見ても低価格同人エロゲーのCGが多くを占める以上、フルプライスとしてはクオリティが低いと言わざるを得ないが、過去の同人3作購入者にとっては税別8,800円で新規CG20枚を買ったようなものであり、そのコスパは0.57jksと犯罪的な値となる。
コアなエロゲー支持者ほどダメージを負う罪作りな仕様に、エロゲー制作のモラルを改めて問わずにはいられない。

9月には、実りの秋とばかりに選評が3作続けてKOTYeに押し寄せる。
一番手はキャラメルBOXより2月に発売されていた「処女はお姉さまに恋してる 3つのきら星」。
女装主人公モノとして不動の地位を得た「おとボク」シリーズの8年振りとなる新作。
本作をクソたらしめる主因は演出の杜漏さだ。

女装モノの核は「男バレ」。
男であることを受け入れてもらえるかどうかの葛藤、男とわかった主人公への接し方に戸惑うヒロイン、逆にヒロインがあっさり受け入れてしまい焦る主人公など……作品によって展開こそ違えども最大の山場と言っても過言ではない。
だが、本作ではこともあろうに特定のヒロインに対し、「男バレのイベントが起きていないのに男バレした状態で話が進む」状況が複数ルートで発生してしまう。
誤字や説明不足の多さにコピペを織り交ぜたシナリオに加え、音声ファイルの抜け落ちや攻略対象外女性ボイスを全てモブ男性に括る斬新な音響も合わさって、演出は全編通してボロボロだ。
ファンからすれば無かったことにしてしまいたい本作だが、過去シリーズからのBGM使いまわしや無印ヒロインの登場により、過去シリーズと同一世界という事実を突きつけられるため、否が応でもシリーズの凋落を直視させられてしまうのであった。

制作サイドの動向もきな臭い。
DL版には特定ルートで進行不能になるバグがあり、メインライターが早々に個人twitterにて非公式修正パッチを公開したものの、公式側は発売後も長期間沈黙し公のサポートを放棄し続けた。
体験版ではフルボイスだった主人公についても、発売3週間前に突然パートボイス化を発表。
過去作に存在した「主人公のみパートボイス」記載が無いことから高まったフルボイスへの期待を見事に打ち砕いたのであった。
一方で、制作スタッフが予算について含みを持たせた内容や「売れてほしいけど読まずに積んでほしい」といった支離滅裂な発言をツイートし、クリア後のスタッフルームでは「過去二作と比べるとややこぢんまりした印象」と弁明していることから、パートボイス化やシナリオの低質さは予算のせいではないかと邪推する者もいた。

それに続くは同じく2月にウシミツソフトより発売された「厨二姫の帝国」だ。
原画・シナリオが「遥かに仰ぎ、麗しの」で有名な藤原丸谷ペアであることや、かねてより発売延期を繰り返した上に制作スタッフが出入りしていることから、スレ住人からも色々な意味で注目を集めていた。
本作はCG73枚、回想数21、シーン抜きの総プレイ時間は約15時間と、体裁だけ見れば至極真っ当だが、その真っ当さが本作では悪い方に作用してしまう。
文量こそあるシナリオだが、その中身はスカスカ。
山もオチもなく伏線を放り投げたシナリオだけが積み重なり、ひたすらに虚無感が積み上がっていく。
特に、メインヒロインである厨二姫に関連する「勇者」と「魔王」の設定はぶれまくりで、ルートが変われば別人と言っていいほどの変わりようだ。
タイトルに含まれる「帝国」要素も無いに等しく、クソゲーの嗜みである主人公名の取り違えもしっかり完備。
当初売りだったCGもまともなのは幼馴染ルートだけで、他のルートでは明らかに別人と思われる低質なものが並び、酷いものではママⅡを彷彿させるものや立ち絵を改変した程度のものまで混入している。
絵とシナリオの大切さを改めて問いかける一本と言えよう。

トリを務めるのは、5月25日にみらーじゅそふとより発売された「君とつながる恋フラグ」
ルート間で展開の齟齬が目立つ、登場人物の行動原理が意味不明、ヘタレなくせに性欲にはすぐ流され無責任な言動が目立つ主人公など、読者を苛つかせるツボをきちんと押さえている。
話の核となる「強制縁結び」の力についても、効力の対象範囲だけでなく発動するか否かも場面ごとに都合よく決まるため、何の価値も持たない。
だが、本作を印象付けるのは、頻出するオナニー展開だろう。
ヒロインとの関係が進展する際に何かとオナニーを見るor見られるワンパターンの展開が挟まり、その既視感から選評者に「君に見つかるオナフラグ」とタイトルを改変されてしまう。
更には、タイトルで「フラグ」と謳っているにも関わらずフラグ立ての要素は皆無で、選択肢は最後のひとつだけ。
そして、止めとばかりに攻略済のヒロイン選択肢にはその証として花マークと共に「USED」と表示され、見た目の酷さとクソゲーに使い捨てられたヒロイン達への憐憫から引き攣った笑いが零れるのであった。
みらーじゅそふとは近年KOTYeへのエントリーが目立つすたじお緑茶の転生体なのだが、どうやら第二の人生も失敗に終わったようだ。

9月に引き続き、10月もクソゲー共が我も我もと押し寄せ、更なる賑わいを見せる。
先陣を切るのは、9月28日に発売されたばかりの「ボクのあまやかせいかつ -星湘町観光課、毎日えっちなロコドル活動!」。
夏色ラムネでエントリーした新星Carol Worksが、押しの一手をかけてきたのだ。

前作の夏色ラムネが「見た目は完璧」だったのを反省してか、本作は外見の時点で攻めている。
真っ先に目に入るのは、段ボール2枚でディスクを挟んだだけ、パッケージ包装はペラ紙、サポート用紙はペラ紙の裏面に印刷というエコ精神溢れる梱包。
横から見たら段ボールが丸見えという質朴な体裁は、環境破壊著しい今日において資源を節約することの大切さを思い出させてくれるが、税込で7,000円以上払っておきながらディスクの保管もままならない紙ごみを押し付けられては、当の購入者からしたら堪ったものではない。

中身の方も負けず劣らず薄さへの挑戦に満ち溢れている。
シナリオはロープライス作品顔負けの減量に成功し、それを無理やり誤魔化す超展開の嵐が終始吹き荒れる。
辛い物を食べたヒロインのエロさに興奮した、酔った姉を迎えにいったらバーでいきなり息子を弄られたといった雑で強引なエロ要素の導入が繰り返され、おまけにCGも1.2jks程度ではいくら抜きゲーといえども擁護しきれない。
一方、他作品よりボリュームがあるのがメモリ使用量で、只の紙芝居ゲーでありながらGB単位でメモリを占有し、終いにはエラー落ちを引き起こす。
発売日当日のギガパッチによるCG差分追加、発売1ヶ月後にはアペンドと称して回想追加など未完成商法の疑いも上がっており、あらゆる面でプレイヤーを苦しめるストレステストの如き出来に、住人も思わず唸るのであった。

続いてエントリーしたのは、Chienより3年振りに発売された「委員界の異端者~IINCHO-Re.co~」。
同ブランド作「委員長は承認せず!」のリブートにあたる本作の売りは、異端者の名の通り一般からかけ離れたセンスにある。
まず、本作のシナリオは、「起こった事象を最初に叙述し、後からその過程を述べる」という手法が多々用いられる。
だが、ライターの技量不足によって説明が要領を得ないどころか時系列の矛盾が多々発生。
加えて個別ルート内では平均して約1/4の文章が使い回されている他、リブート前作から一部の文章を流用しており、その対応としてキャラ配置や固有名称だけ無理やり弄った影響で過去の改変や記憶喪失など怪奇現象が多発し、更なる混乱を齎している。
名前のついた登場人物は僅か9人と脅威のコンパクトさを誇る一方、いずれの人物も人間性や一般常識が欠落しており、頻繁に犯罪に走ったり裸族に目覚めたりと常人には理解不能。
これらの問題点を抱えながら話自体は起伏に乏しく面白さは皆無、唯一の癒しは男のアレを「ポニス」と表現するなど個性的な誤字が多い点のみ。
理解できない・理解できても価値が無いというダブルパンチの前に、プレイヤーは悉く精神を磨り減らされるのである。

一方、作品の舞台設定だけはやたら豪華。
本作の学園は委員会による自治が行われており、流通やライフラインまでも委員会によって運営される一方で、一般の学園でいう部室に当たる執務室を持たない生徒がヴィランとして暴れまわるなど、設定だけは人一倍凝っている。
勿論、クソゲーのお約束としてこれらについての具体的な説明も無ければ納得できる背景も用意されておらず、過剰設定も甚だしい。
また、補足説明としてTIPS機能がついているが、こちらも本筋に関わらない委員会やありふれた一般名詞の説明ばかりが目立つ不用品で、あまつさえ体験版では黒幕の正体をネタバレしているという無能ぶりだ。
本筋と関係ない説明ばかり充実させた結果、かえって作品スケールの小ささを自白してしまう様は、本家KOTYの反逆者に通じるものを感じずにはいられない。

やや間をおいて、アパタイトより発売の「妻の祖母は、まだまだ現役超美熟女~孫婿ちゃん、寂しい時にはいつでもいらっしゃい~」もエントリーを果たす。
ヒロインが妻の祖母と、設定からまず無理のある本作。
しかしそのあたりはロープライスの免罪符。Hの質が肝となるため、ユーザーはシナリオの内容など端から期待していないだろう。
だが、本作はそのHに問題がある。
ヒロインは皺の寄った顔にやたら若々しい胴体を継ぎ接ぎしたキメラのようなビジュアルで、気持ち悪い乳首ややたら頑張った年増演技など、属性を持たない者が下手に手を出せばトラウマを負いかねない代物だ。
その一方で、回想の内容は老婆であることを全く活かしておらず、義理とはいえ祖母と関係を持ったのに一切の葛藤が無いなど、属性を持ったものが求める物とも違い、ターゲット層が全くもって不明である。
しかし、本作一番の問題はエンディングの内容であろう。
エンディングは2種類あり、片方はロープライスらしく五月雨式Hシーンの末に特に波風立たず終わるだけなのだが、もう一方は祖母と死に別れるバッドエンドだ。
この問題の後者では突如数年後に飛ばされ、地の文で祖母が逝去していた事が語られる。
怒涛の超展開に困惑するプレイヤーをよそに、物語は「祖母の遺志を汲んでこれからも頑張ろう」と強引に締めくくられるのだが、最後に祖母の遺影が映り、遺影のなかから祖母が主人公に笑顔でVサインを決めてくるという強烈なオチが待っている。
この「遺影がイエーイ」のせいで雰囲気は完全にぶち壊しであり、そのインパクトと語感もあって一瞬にしてスレ住人の心を掴んでしまうのであった。
とはいえ、低価格の抜きゲーという点を鑑みても、主題を疎かにした挙句エンディングで茶化すような真似をされては、クソのレッテルを貼られても致し方ないだろう。

10月参入組の殿を務めるのは、1月から潜伏し続けていた伏兵「懺悔島 純潔~処女の血をもって償え!~」だ。
過去に「ろーるぷれいんぐがーる!!」や「ANOTHER POSSIBILITY」でエントリー経験のあるTRYSET系列の新ブランド、「TRYSET Break」から発売された本作は、処女作という大役にあるまじきやっつけ仕事ぶりが輝く一本だ。

本作の舞台は無人島。
地元の観光会社に誘われ、主人公やクラスの友人達、教師などが一泊二日の探検ツアーに訪れるという流れで話が始まる。
勿論エロゲーのお約束通り、罠にかかってエロ展開を迎えるというものなのだが、肝心のエロ展開がクソの山であった。
黒幕の組織により監視下におかれたヒロイン達が過去の罪をタネに脅され、調教されていくのが本作の真の姿なのだが、描写不足が深刻で、調教によりヒロイン達が堕ちる様子が全く描かれない。
ヒロイン達はいくら犯されようとも言動が変わらず、監視下に置かれているはずなのに島内で呑気にバカンス気分に浸る姿さえ見られる。
紹介で好き勝手しそうに描かれていた主人公も、実際は何の主体的行動も取らず、組織の存在を知るや即服従し、命じられるままにヒロイン達を犯すだけの犬と化す。
この主人公に対してプレイヤーが数多ある選択肢で反逆しようにも、Hシーンの分岐に意味がある選択肢は最初の一つのみ、一方でエンディング分岐に意味のある選択肢は最後の一つのみという漢仕様の前には無力である。
当然、ゲームの途中で誰に何を調教しようが、一切分岐には影響を及ぼさない。

ストーリー以外もクソが目白押しだ。
CGはパースが歪み放題で体の構造もしばしば狂い、トリックアートの絵画展を見ているかのよう。
テキストも内容が薄い上に誤植は百を超え、「自動自得」「ガンバローで寛ぐ」など新たな日本語も創造されており、日雇い外国人にでも書かせたのかという惨状だ。
また、本作にはデラックス版と称した有料の追加コンテンツが用意されており、各ヒロインのアフターストーリーが追加されるのだが、こちらの内容もヒロインごとに導入が使い回しだったり、CGが本編の流用だったり、本編と話が繋がらなかったりと散々な出来。
売り文句で「倫理観? そんなもの俺には必要ない!」と煽る本作だが、真に倫理観が無かったのは校閲や良識を投げ捨てた制作スタッフということにプレイヤーは気づくのであった。

上半期の寂しさを吹き飛ばす秋のクソゲー大騒乱。
この騒ぎにより、魔物も一足早く目を覚ます。
10月26日に発売された「孕ら・ポコ! ~異能催眠で女学園を孕ませ征服~」が、冬の寒さと共にKOTYeにやってきたのだ。

本作は、2012年大賞「SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~」や2013年次点「リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~(通称『ずっぷ』)」を排出したスワンアイが原点回帰を掲げて立ち上げた新ブランド「みるきーぽこ」の処女作にあたり、スワンアイ初期の核であった「催眠」と「孕ませ」に焦点を当てたものとなっている。
ヒロインに催眠をかけてエッチするという至極普通の作風をとる本作には、確かにその両者が備わっており、その点に嘘偽りは無い。
だが、作風こそ普通であれ、実際の中身が普通でないことが問題だった。

本作は催眠をかけるヒロインを選択して攻略を進めるシステムなのだが、攻略対象のヒロインを闇雲に選び続けると、ヒロインが催眠に抵抗したり、別のヒロインが妨害に入ったりし、進行不能イベントに切り替わってしまう。
ヒロインの自衛を崩し妨害ヒロインを無力化するには、「ヒロインごとに特定の妨害ヒロインを予め一定回数選択しておく」という仕様を把握する必要がある。
幸い、予め選択するヒロインについては先の進行不能イベントであからさまに分かるため、大抵の場合「ヒロインを選ぶ→進行不能イベントを見る→妨害ヒロインを潰す」攻略を採るわけだが、これこそがメーカーが仕組んだ非情の策謀であった。
本作には明記されない仕様として選択肢を選べる回数に制限があり、制限に達して尚ルートが確定していない場合はバッドエンドとなる。
だが、先述の進行不能イベントを見ても選択回数が消費されてしまう上に、1人を除いて進行不能イベントを見た瞬間にバッドエンドが確定する程に回数制限に余裕が無い。
つまり、本作の攻略では「進行不能イベントを見ないで妨害ヒロインを察し、予め潰す」必要がある。
バックログジャンプなどという気の利いたものも無いため、セーブを細かく刻んでいなかった場合は詰み。
本作は抜きゲーのはずだが、小賢しい罠を抜けない限り、満足に抜くことすらままならないのだ。

無事に攻略が進んだとしても、別の問題が待ち構えている。
僅か20分で終了する共通ルートは、SEX戦争やずっぷに比べると異能入手の経緯に触れているものの、本作の舞台のことや攻略するヒロインについては全く掘り下げず、公式サイトの方が情報に溢れている程だ。
ゲーム進行をプレイヤーと共にする主人公は学生時代の虐めを根に持ち、女を見返すために教師になって女学生を孕ませて学園を征服したいという野望を抱くサイコパス。
ところが、この狂人は催眠でヒロインにやりたい放題するくせに、いざ事が済むと「催眠を解かないのは人の道を踏み外している」だとか「教え子で性処理するのは間違っている」など、唐突に良心の呵責に苛まれ純愛に目覚める。
ヒロインもそんな主人公に対して「私の気持ちを引き出してくれた」「ひどいことされた気もするけど、同じかそれ以上に導いてくれた」と不可解なデレを見せ、急速に電波出力を高めながら妊娠出産を迎えてハッピーエンド一直線。
攻略対象の1人であるビッチは、セフレがいるものの久しく致していないが『処女』というスワンアイのお約束パターンで、加えて本作では「ビッチ本人の異能のせいで性行為の快楽が不快感に変ってしまうため、ビッチだがHが嫌い」なんて言い訳まで完備している。

抜きゲーの最後の砦、オカズとしての用途に目を向けても救いは無い。
安っぽい塗りや差分の少なさが目立つのは序の口。
要らぬ範囲まで出張するモザイク、見た目が*そのままのアナル、妊娠後のはずなのにボテ腹でないなど、抜きゲーとして致命的な欠陥を数多く抱え、やたら処女に拘る割にCGでは破瓜の出血が描かれておらず、己の価値を下げることに余念がない。
回想全体として評価しようにも、SEやBGVを悉く削った影響であらゆる効果音がテキストで表現される仕様が足を引っ張り、ピストン表現として頻出する「グインっ!グインっ!」「にゅるるるーっ、にゅぷぷーっ!」といった童貞の妄想に等しいテキストが行為への没入をひたすら阻害する。
王の帰還とも言うべき逃げ道を残さないクソの作り込みように、スレ住人も久しく忘れていた感嘆と畏怖と侮蔑の情を取り戻すのであった。

12月14日にはスレ住人に一足早めのクリスマスプレゼントが届いていた。
2年連続登板、ソフトハウスキャラの「悪魔聖女」である。
今回のキャラは40ターンをかけたSLG…風のパズルゲーム。
事前に示される相手の行動に対して自分の行動を選択して相手のHPを削る内容なのだが、行動選択の余地が少な過ぎてすぐにパターン化する。
昨今のゲームに蔓延る高難度を嫌う風潮を汲み取って戦闘の事前シミュレーションを完備する全力介護仕様が、僅かに残された思考機会すら奪おうというのだから皮肉という他ない。
制作スタッフもこのゲー無性に気づいていたのか、本番の戦闘のみ出現するランダムコマンドをから「触手」を選ばないと見られないCGを忍ばせたり、ランダムで敵の攻撃力を倍にしたりと、ランダム要素でプレイ時間の水増しを図る。
ヒロインルートのフラグも戦闘中の特殊コマンド使用回数に依存するため、「勝つためのコマンド」と「見たいルートのコマンド」が一致しない歯痒い場面が多々発生。
周回引継ぎも無く作業感溢れるテンポの悪い攻略を毎周迫られ、その対価に得られるものが茶番塗れのシナリオでは明らかに吊り合っていない。
チャレンジ精神とバランス調整を放棄した手抜きの集大成ともいえる内容に、本作は選評者から「ここ10年のソフトハウスキャラで見て、間違いなく最低の出来」と断罪されてしまうのであった。

例年に比べ穏やかな年末年始となったKOTYe2018
1月には毎年恒例お待ちかねのクソゲー共による「申し開き」が行われる……筈が、今回ばかりは少し様子がおかしい。
年が明けてもなお、決起するクソゲーは現れず、気づけば1月31日。
選評締め切りの一時間前、誰もがこのまま終わりかと悟ったその時、前代未聞のギリギリ滑り込みを果たした者がいた。
10月26日にNamelessより発売された「Deep One」である。

魔導書を巡り主人公とその妹が敵対者と戦うバトルノベルというのが本作の大筋。
パッチ込で14GBを超える容量を誇り、演出面やグラフィックで相応以上のクオリティを見せるが、肝心の話の中身は一言で言って「未完成」。
主人公一族の近親婚を隠す為に偽装結婚を行っていたという設定は、外部の人間が当たり前のように知っており全くの無意味。
主人公は実妹に手を出さないと言っておきながら、妹が許嫁であり且つ実体が魔導書であることを知ると豹変してセックスしたがるなど、話の中で整合を取ろうという意思を感じられない。
極め付きは、20時間程のシナリオの末に突如明かされる唐突なループ要素&続編告知。
プレイヤーはここに来て、事前告知無しでの分割詐欺だったことを知るのである。
分割の割を食ったのはプレイヤーだけではない。
攻略対象となりうるヒロインは4人いるが、本作で攻略できるのはそのうち2人だけ。
しかもライターが「力を入れている」と豪語したシーン数は2人合わせて実質3とフルプライスとしては明らかに不足しており、中身の方もシーン中にいきなり過去の回想が入るなど、実用面にも難ありだ。
公式の謝辞が全く謝辞になっていない、シナリオ自体もライターが8年前に出した同人ゲームの体験版と全く同じなど、上記問題点の他にも火種はそこかしこに散らばっている
処女作から札付きとなったNamelessだが、今のところ売り逃げの構えは見られないため、反省と今後の贖罪を期待したい。

さて、2018年の全エントリー作の紹介を終えたところで、次点、そして大賞の発表に移りたい。
次点は
「懺悔島 純潔~処女の血をもって償え!~」
「悪魔聖女 ~ デーモンガール・ステップ ~」

大賞は
「孕ら・ポコ! ~異能催眠で女学園を孕ませ征服~」

とする。


今年のクソゲーの特徴は、「エロゲーとして真摯でない」が挙げられよう。
エロゲーは字の通り“エロ”と“ゲーム”、つまり、エロ(アダルト)要素とゲームが合わさって成り立つもの。
だが、今年のクソゲーは際立つ一点の不快感こそ無いものの、その2要素に不誠実であるためプレイヤーをじわじわ苦しめるものが目立つ。
その中でも、上記の傾向が色濃いものから次点、そして大賞を選出した。
まず前者だが、全年齢ゲームではなくエロゲーを買う以上、購入者はエロを求めているのは自明の理である。
制作者にはその想いに応え満足のいくエロ要素もしくは相応のアダルト要素を用意することが求められ、逆に需要に応えられない場合はクソと切って捨てられても致し方ない。
有名な「エロゲーはエロで抜くものであって手を抜くものではない」は正にこれを言い当てていると言えよう。
また、後者については、エロゲーといえどゲームであることからプレイヤーが快適に楽しめることが大前提であり、娯楽の提供に相応しい環境として機能することが求められている。
同時に、ゲームという商品を世に売り出す以上、真っ当な体裁を整え、その中身について正しく告知を行うことも当然ながら必要であり、それが出来ないメーカーは不誠実として糾弾されるのも当たり前である。
見た目からして商品のレベルに達しない「あまやかせいかつ」や、近年稀にみる清々しいまでの詐欺商法の「DeepOne」などはまさにこれに当たる。

これらの視点で見た時、次点以上の作は、一方だけでなく両者において不誠実であることが如実に現れている。
「懺悔島」は単純にエロCGの質が低いだけでなく、無人島設定を全く活かさない点や有料コンテンツのエロを使い回しで済ますなど、エロに不誠実なことは明白であり、ゲームとして見ても無意味な選択肢が並び展開の分岐を活かせておらず、テキスト自体が誤字に塗れ読むに堪えないなどその低質さは目を見張るものがある。
「悪魔聖女」はゲーム性を主軸にしながらゲーム内容が詰まらない作業という時点でゲームとしての需要を満たせておらず、エロについても攻略対象の深堀りを放棄しCGの入手にランダム性をつける悪質さを見る限り、エロを求めるプレイヤーに真摯に向き合ったとは言い難い。
そして、「孕ら・ポコ!」はエロ、ゲーム、いずれの面でも誠実さが微塵も感じられない。
エロについては、催眠モノなのに主人公が真人間に戻ったり唐突に純愛要素を入れてジャンル詐欺をかます点、キャラの掘り下げが薄い上に中盤から電波化させることでヒロインの魅力を削ぐ点、低質なCGや童貞効果音テキストでエロを茶化す点など、エロの実用性は言うまでもなく、本来購入者が求めていた需要に応えたとは到底思えない。
また、ゲームとしても、抜きゲーというジャンルを無視した攻略要素によってストレスを与える点や、バックログジャンプを実装せず攻略難度を底上げする点など、抜きゲーとしての需要をまるで分かっていない。

「懺悔島」、「悪魔聖女」、「孕ら・ポコ!」……いずれも“エロ”と“ゲーム”に対し不誠実であることは明白である。
これらの争いの中、最終的に混迷を打ち破ったのは「最も不誠実とは何を指すか」という根本的な問いかけであった。

人は誰でも過ちを犯す。
確かに、「懺悔島」や「悪魔聖女」は、手抜きや見当違いの仕様によって凄まじいクソゲーとして世に降り立った。
それらの生みの親であるTRYSETやソウトハウスキャラが、KOTYeへのエントリーは今回が初めてではないことも重罪である。
だが、「懺悔島」も「悪魔聖女」も、過去それらのブランドがエントリーさせたクソゲーとは傾向が異なることから、“エロ”と“ゲーム”に不誠実という意味では今回が初犯という見方も出来る。
彼らが自らの過ちを反省し、同じ過ちを繰り返すまいという成長に繋がるのであれば、それは少なくとも未来への糧になる。

最も不誠実な人間とは、物事に対し真摯に取り組まず、その上で自らの非を認めずに小手先の誤魔化しを重ね、同じ過ちを繰り返す者のことである。
「孕ら・ポコ!」は、系列過去作となるSEX戦争やずっぷにおいて指摘をされた数々のクソ要素【舞台説明が希薄・登場人物の掘り下げが無い・シナリオ展開が電波・エロシーンが抜けない】について、性懲りもなく同じ過ちを繰り返している。
矛盾塗れの「ビッチなのに処女」についても、過去作から省みるどころか御託を並べて正当化し続投する図々しさだ。
これらに加え、理不尽な攻略難度や、ブランドの原点回帰を謳って多くの者を沼に沈めた狡猾さなどが合わさり、「孕ら・ポコ!」のクソゲーとしての基盤を盤石なものにしている。
体裁上はコンセプト通りに仕上がっていながら、制作者に誠実さというものが欠落していた一点が招いた悲劇。
2018年で最も“エロ”および“ゲーム”の要素に不誠実であり、最も購入者の需要に応えなかった「孕ら・ポコ!」こそ大賞に相応しい。
よって、KOTYe2018の大賞は「孕ら・ポコ! ~異能催眠で女学園を孕ませ征服~」とする。

樹木が朽ち花枯れ果てても新しい生命が芽吹くように、ママⅡに蹂躙された荒野にも個性あふれる数多のクソゲーが咲き誇った。
KOTYe2018は、クソゲーの存在に打ち据えられながらも、同時に希望を抱ける一年となった。
永遠の課題である『クソゲーとは何か』に向き合い、歩みを止めない限り、道は続くという希望だ。
ならば、クソゲーが無くなるその日まで、例え道が長く険しいとしても歩み続けようではないか。
最後に、惜しくも選外となったDeep Oneの販促メッセージを捩り、2018年のKOTYeの締めくくりならびに今後の抱負とする。
「ただ一つの底辺を求めて――」
最終更新:2019年08月17日 14:40