本編A-2

開口一番、和田が生田に話しかけた
和田「えりぽんダンス部始めたんでしょ?りなぷーとかななんから聞いたよ」
生田「正確には今日から始める予定です、ねえ?はるなん!」
まるで双子のように和田と手をつないでいる飯窪に聞いた
飯窪「はい生田さん」

ヘッポコ部副部長という肩書の飯窪は、どこに行ってもサブ扱いである
和田「りなぷーもかななんも、すーっごくすーっごく楽しみにしてたからヨロシクね」
大きな黒い瞳と、口元の八重歯が見え隠れするキラキラした笑顔で生田に言った
この自然な笑顔を生田が少しでも持ち合わせていれば、今の状況とは少し違っていたかもしれない

和田「所でえりぽん、前より筋肉ついた?」
生田「自分では分からないけど、この前矢島さんに言われました」
和田「私の好きな京都にある仏像さんも筋肉がすごいんだよーっ」
生田「仏像さん?京都?」
和田「仁和寺の二王門にある金剛力士って言うんだけど、南禅寺三門、知恩院三門とともに京都三大門のひとつに数えら

れてて…」
生田「………………………」
和田が仏像のことを話し終える頃には、生田と和田の二人しか居らず少し陽も傾いていた

生田「あっ!これから部活の初日なんで、今日はこの辺で失礼します」
いつもはマッチョでタフな生田だが、専門外の話で少しお疲れの様子である
和田はコクリとうなずき、おもむろに練習着の入ったバッグから何かを取り出した
和田「これ返すのはいつでもいいから、読んだ感想きかせてね」
そう言って足早にポニーテールを揺らし、鼻歌交じりで階段をかけ降りていった…
もちろん言うまでもなく和田が生田に渡したのは、和田の著書『乙女の絵画案内』だ
おそらく生田は1ページも読むこと無く、飯窪経由で和田にに返却されるのは誰の目にも明らかだ

5時のベルと共に、生田は和田から預かった本を片手にヘッポコ部の待つ部室へ向かうのであった
この時、部室で起こっている出来事を生田は知るよしもなかった…






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最終更新:2014年07月10日 23:11