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機械化歩兵ABLASの活躍に気を良くしたヒトラー総統。
よせばいいのに、ロンメル中将に対するギリシャ奪還へ向けた攻撃行動を要求してしまう。
これについて参謀本部は、せめて後続の機甲師団が到着するまで待って欲しいと訴えるが、総統閣下は「諸君は恒星間戦争をご存知でない」と謎の自信を見せ、反対を押し切って攻撃を強行。
ABLAS軍団は守りの薄いプロヴィンスに対しては強力かつ迅速な成果を挙げたものの、タワーのそびえ立つプロヴィンスにぶち当たって軽やかに敗走した。
ヒトラー総統はこの後、参謀本部で思い切り説教を受ける事となる。

総統がABLASの真価が攻撃力ではなく機動力にある事を叩き込まれていた1940年2月12日、待ちに待った報告がもたらされた。


来た、国産ABLASだ、これで反撃の準備を進める事が出来る。
6個あった戦車の生産ラインを全てキャンセルし、ABLASの生産に切り替える。
これが量産、配備された暁には、ギリシャや北欧を奪い返す事が出来るだろう。
それまでは無理をしない事にして、南欧戦線のドイツ軍はドナウ川北岸へ移動して異星人を待ち構える態勢を取った。

オーストリア軍が取り残されないように気を付けながら後退を続けていたその頃。


ソ連では何やら土壇場に追い詰められたような雰囲気のするイベントが発生していた。
大慌てでソ連軍の様子を確認してみる。


シベリアはすっかり失ってしまっているようだが、要塞線が建設されたモスクワ周辺は無事である。
インド方面はヒマラヤが最後の砦になってしまっているが、ソ連はまだまだ大丈夫そうだ。

バルカン半島からの撤退が、まだ秩序的に実行されていたパラド暦1940年2月30日。


英仏がアフリカを失陥した事になっているが、アフリカはまだ元気である。
それとギリシャもオーストリア編入を承諾しており、テキストとは若干の齟齬があるようだ。
もしかすると、正史とは違うイベントの進め方をしてしまったのかもしれない。
レールを逸れているのではないか、という不安感に苛まれながら一つクリックを進めると、たった今まだ元気と報じたアフリカが、近い将来においてその元気を喪失する事を知らせるメッセージが表示される。


南アフリカにイギリス軍の姿が見当たらないが、大丈夫なのだろうか。
ギリシャ降下のテキストを見る限り、アフリカ陥落は既定路線なのかも知れない。
よく見ると、この地域を攻撃したのは第二方面軍である。
第三方面軍はどこに出てくるのだろうか。
第一方面軍はシベリア、第二方面軍はアフリカ、特別奇襲部隊はギリシャ、本隊は北欧、中国、インド、インドシナに攻め寄せている。
改めて書き出すと、じわじわと真綿で首を締められる気分になって来たので、この事はあまり考えない事にしよう。

現在のドイツにはアフリカ防衛を手伝っている余裕はないし、手伝いをしてまで守らなければいけない場所でもない。
こちらの防衛はイギリスとフランスに任せ、当面は北欧と南欧の対処に専念する事にしよう。
そもそも南欧のドナウ川流域を守るには、今派遣している36個師団では不足だ。
オーストリア軍の頑張り次第だが、増派も検討しなければいけない。
なんて事を考えていると、寝耳に液体窒素を流し込まれるようなびっくり仰天ニュースが舞い込んできた。


ぎょえー、いくら何でもそこは本格的にマズイんですけど!
まさか本土にダイレクトアタックを決められるとは思っても見なかった総統閣下、さすがに他方面への侵攻を警戒している余裕がなくなり本土に待機していた機甲師団を、すべてユトランド半島へ向かわせる。
その数およそ80個師団、物凄い勢いで石油が消費されていくが、もうなりふり構ってはいられない。
しかしドイツ軍の全速力より、異星人の足の方が早かった。


ごめんフランス、ボールそっち行った。
アフリカ防衛のためか、フランス本土はほぼがら空きである。
沿岸警備隊として配置されていた歩兵師団も命からがら退却を繰り返している。
低地諸国方面からの侵攻に対してポーランド人で編成されたドイツ歩兵師団がフランス国境で防衛戦を展開するという、30年前の人間が見たらひっくり返るような状況となった。

北欧に送っていた機甲師団も本土へ引き上げるよう命じてあったのだが、彼らが海峡を渡り終えるよりも先にリューベックが陥落。
本土との連絡を絶たれた北欧派遣軍36個師団は、コペンハーゲンにて孤立した。

後を絶たない凶報に耐えかねたヒトラー総統は、ついに南欧派遣軍の撤収を決意した。
ABLASなら、ABLASなら何とかしてくれる。
そうは思ってみたものの、真正面からぶつかれば劣勢である事は既に知られている。
エルベ川東岸に戦車を並べられるだけ並べ、ABLASにはエルベ川以西で手薄な場所を狙って走り回らせて小規模な包囲を繰り返す、という地味な局面が続く。

ドイツ軍が去った南欧戦線は各所で異星人の突破を許し、一部は旧ポーランド領へ侵攻。
そのまま北上を続けた異星人にダンツィヒを占領されて東プロイセンが本土と切り離される、というどこかで見た事のある地図になったりしながら迎えた1940年6月22日。


アジアの情勢を気にしている余裕がまったくなかったのだが、ここに来て日本がまだ生きている事が判明。
ガンがパレードでマーチをしているような光景を眺めていると、続く24日には異星人が更に上陸。


最初に牙を剥いた相手であるアメリカにトドメを刺しに来ていた。
太平洋地域での行動を活発化させている異星人だが、その理由は恐らくこれだ。


ドイツ領がムンクの叫びのように細長くなってしまっており、欧州戦線はほぼ終わりかけている。
また、北欧から雪崩れ込んだ異星人部隊にモスクワを陥落させられるなど、明るい兆しがまったく見えない。
異星人の地球侵略は、もはや仕上げの段階に達しつつあると言っていい。

酷使され続けたABLAS6個師団はいずれも充足率が3割を切っており、継戦能力を喪失。
これが人類を救うと信じて量産した戦車も、今は川の対岸に砲を向けてじっと睨み合いを続けるのみ。
南部ではルントシュテット元帥の機甲師団が異星人の攻勢を跳ね返し続けているが、攻勢に出られるほどの余裕はない。
絶望感が漂う中、1940年7月19日には更なる悲報がベルリンに届いた。


こういった事件も、既に戦局に大きな影響を与えるものではなくなってしまった。
アラビア半島の北では、インドから西進してきた部隊とアナトリアから東進してきた部隊がバグダッドで握手を交わしている。
もっと言えば、アナトリアから地中海沿岸を南下して来た異星人部隊の先鋒は、もうスエズに達している。

軽くなったと評判のDHをもってしても挙動に重さが目立ち始めた1940年7月22日、この日を迎えると同時に時の流れを止めたこの世界は二度とその流れを再開させる事はなく、プログラムは一切の応答を絶った。
矢尽き心折れたヒトラー総統、ここで無念の白旗を挙げる事となった。

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最終更新:2014年09月05日 12:56