"最低の竜人"ステラ

ステータス(評価点数:Lv.300)

  • キャラクター名:"最低の竜人"ステラ
  • よみ:さいていのりゅうじんすてら
  • 性別:女性
  • 体型:華奢
  • 学年:中等部3年
  • 部活:なし
  • 委員:なし
  • 武器:仕込み銃
  • 初期ステータス
    • 攻撃力:15 防御力:0 体力:4 精神:4 FS(竜っぽさ):7
    • 移動力:2
  • アビリティ
    • 『慧眼』

特殊能力『それがドラゴンのすることか』(発動率:75%)

効果:全ステータス(攻撃力・防御力・体力・精神・FS)1ダメージ
範囲+対象:周囲1マスから1人
時間:一瞬

制約なし

能力原理
大きく息を吸い込み、「ドラゴンブレスか!?」と相手に思わせておきながら、
息を吸い終わる前に背中の羽に仕込んだ機銃を展開し
不意打ちで大量のペイント弾を叩き込むドラゴンいたずら奥義。
本当は実弾を使いたいが反動に耐えられないので我慢だ。

相手は「そ……それがドラゴンのすることかァァーーー!」と叫ぶが
彼女の返事は決まって「うっせバーカ」である。

キャラクター説明

竜人と人間との間に産まれたクォーター竜人の少女。
申し訳程度に羽や角はあるものの、どれも退化しておりまともな機能は果たせない。
特に身体能力も高くなく、その割にドラゴンキラー的な対竜装備はガッツリ効く。

竜のデメリット部分だけを継承したような竜人であり、むしろ自分の中の竜に恨みすら持っている。
「こっちはなあ!竜人に生まれたせいで切れ痔が治らねーんだよ!」と主張するなど、
竜族としての誇りは皆無である。
竜人の里では最弱と蔑まれ、その性格と口の悪さも相俟って"最低の竜人"と呼ばれていた。

髪は金髪のポニーテール。身体は未発達で細い。
左半身には痛々しい火傷の跡がある。
ある目的のための肉体改造により羽には機銃が仕込まれている。


【竜人ステラの7つの竜っぽさ】

★竜の角(ドラゴンホーン)
短いけど生えている。シャンプーする時めっちゃ邪魔。
たまに指や掌を傷つけてしまいウググってなる。

★竜の牙(ドラゴンファング)
微妙に尖ってて邪魔。とにかくよく舌を噛む。
食事は常に死と隣り合わせだぞ。

★竜の羽(ドラゴンウィング)
小さいが、ある。小指を曲げ伸ばす程度の不自由さで動かせる。飛行などもってのほか。
うっかり背もたれの硬い椅子に座ると痛いので邪魔。

★竜の鱗(ドラゴンスケイル)
首や手足の限られた箇所にしかない。透き通るように薄く、防御性能は皆無。
そのわりに対竜装備はしっかり効く。邪魔。

★竜の爪(ドラゴンクロウ)
爪切りで切れない程度に硬く、かといって岩や鉄を切り裂く強度はない。
トイレでケツのふき方を間違えると即座に切れ痔になる。超邪魔。

★竜の尻尾(ドラゴンテイル)
自在には動かず、遠心力で振り回すくらいしかできない。
電車とか乗ると高確率で踏まれて死ぬほど痛い。完全に邪魔。

★竜の息吹(ドラゴンブレス)
実はちょっとだけ出せるが、拳大の火球と引き換えに舌を火傷するので割に合わない。
欠伸のついでにうっかり出てしまう事も。邪魔オブ邪魔。

エピソード

満身創痍の少女にはもはや立ち上がる力も残っておらず、
最後の気力を振り絞っても、ただ目の前の男を睨み上げるのが精一杯であった。

竜は水神と言われる事もあるそうだが、生傷を雨に晒すのは無論苦痛でしかない。
派手な雨音が風景を支配する中、少女は己を見下ろす男の眼差しを感じていた。
長身の男の顔は遠いが、エメラルド色の瞳は力強く、その視線が持つ意味は自然と少女にも伝わった。

男が口を開く。

「………………なんという事を」


「エイっ」「「「エイっ」」」
「ヤアっ」「「「ヤアっ」」」

少女達の溌剌とした力強い発声。同時に、蹴り足が空を切る鋭い音が響く。
十数本もの健康的な脚が惜しげもなく振るわれ、長短様々なスカートが翻った。

ここは護身術の道場である。流派の名は『拳羅』。
「攻撃こそ最大の護身」「先手必勝」等の理念を掲げており、
護身のためならばいかなる相手をも再起不能になるまで叩きのめす事を旨としている。
稽古場の壁に飾られた額縁の書には、力強い毛筆で「正当防衛」の文字が描かれていた。

流派の格闘スタイルは立ち技による打撃、即ち空手そのものだ。
特に空手特有の遠距離打撃である「波動拳」を重視している事でも知られる。

そしてもう一つ特徴的なのが、「有事の際に着替えている暇はない」として
稽古を平服……すなわち学校の制服や普段着の私服で行う事である。
これは江戸時代に示現流の道場でも用いられた由緒ある手法であり、
確かに護身術を必要とする日常の場を道着で過ごしている者はいないだろう。

さらに「痴漢が現れてもボコボコにできます!」という謳い文句で生徒を集めた事、
道場主=師範が女性である事などから、生徒は主に女子中高生が多い。
武を磨く道場でありながら、オシャレを競うような空気すらある程である。
つまり生徒の過半数はスカートを穿いている。そしてハイキックを繰り出すのだ。

一言でいえば地上の楽園。完璧なる道場の姿がここにあった。
頼むから誰かイラスト化してくれ。

「コラぁ、ちゃんと参加しなさいっ」
「いッてぇ。何すんだよ」

だが物語は稽古場の角、スカートも穿かずジャージ姿で座り込んでいる少女から始まる。
いきなり頭を小突かれ、手にしていたスマホがごとりと落ちる。

「あたしは門下生じゃねェって言ってんだろーが!」
「だーめ。私の子供は全員門下生です。何かあってからじゃ遅いんだからね」

少女はしゃがんだまま反抗的に怒鳴るが、それを見下ろす女性は認めない。
魔人空手家、家乃真々(いえの まま)。ここの道場主にして少女、家乃ステラの母である。
圧倒的なバイタリティで知られる人物であり、男女問わず気に入った人がいれば
猛烈にアプローチをかけ、法律を無視して重婚しまくっている……という事実が
彼女の尋常ならざる生き様を示している。

『素晴らしい人とは家族になりたい』
『世界中が家族になれば争いは無くなる』が彼女のモットーだ。
子供も沢山いる上に養子も大量に引き取っている。が、勿論いう事を聞く子ばかりではない。

「うっせークソビッチ! 今さら体なんて鍛えたって何にもなんねーよ!」
「あら、母さんにビッチは褒め言葉よ? いいから立ちなさい」
「いーやーだー!」

こうなると喧嘩だ。が、ここは一般家庭とは違う。
現役を退いたとはいえ母は空手家。娘の未発達な細身の肢体では敵うはずもない。
あっというまに両腕を掴まれて立たされてしまう。もはやステラにできるのは喚くことだけだ。

「離せーッ! 娘の意思を尊重しろー! 親子虐待だー!」
「ほらー。ちゃんと鍛えれば母さん倒して逃げられるようになるわよー」
「そうだそうだ!」

いつのまに、男の声までが母に加勢し始めていた。
道場破りから成り行きで師範代になった男、万罪泰蔵(ぱんつみ たいぞう)である。

「うるせーうるせー! もうこんなトコ居てたまるか! 外行くから離せよ!」
「えーあんた、いい年してこんなボロいジャージで外出るの? 恥ずかしいから着替えなさいよ」
「そうだそうだ! スカートを穿け!」

「このクソ尻尾のせいですぐめくれるから嫌なんだよスカートは!」
「それが良いのだろうがッ! 貴様自分のアドバンテージを何もわかっていないのか!」
「何がアドバンテージだ! お前、自分の足で尻尾を踏んだことねーだろ!?
 クソ惨めなんだからなアレ! 涙目になんだぞ!?」
「その一連の流れの尊さも理解できんとは! なんたる無知! 許し難い!」

「まぁ、まぁ。落ち着きなさいな。万罪くんの言う事は正しいけど」
息を荒げて睨みあう娘と、筋骨隆々とした師範代の男を、真々は両手で制した。
「殴り倒せればそんな事も考えずに済むのよ? だから……」

真々はそう言って娘のほうを見た。
娘は既にそこには居なかった。
玄関口からドタバタと出て行く音が聞こえる。

「おっと、一本取られた! ちょっと待ちなさい!」
「待ってたまるかクソビッチ!」
「待ちなさいって! ……あ、そうだステラ!」

ステラが遠ざかる。追うのを諦めながら真々は思いつき、一言付け加えた。

「夕飯! 何か食べたいのある!?」

すると遠くなる足音に紛れて、こんな声が返ってきた。

「オムライスーーーーーー……」

真々は困ったような笑顔になり、息を吸うと、大声で知らせながら見送った。

「7時には作っちゃうからねーーーーーーー!!!」


五十メートルも走る頃には息が切れ出した。まったく嫌になる。
行くあてなど無い。ただ、とにかく稽古中は家に居たくなかった。

( 今さら体なんて鍛えたって何にもなんねーよ! )

偽らざる本音だった。

母は何かと理由をつけて空手をやらせたがるが、無駄だという気持ちがどうしても消えなかった。
何をどう鍛えようと、肉体の根本的な強さというものは生まれた時に決定している。
鍛錬など、あの暴虐に出会ってしまえば一切が無に帰すだろう。
そういう理不尽をステラは知っている。種族の差という理不尽を。

彼らよりも脆弱な身体に生まれてしまった以上、自分のすべき事は肉体を強化する事ではない。
それでは彼ら……純粋竜人に対抗できない。
里の奴らを見返してやるには、他の方策が必要だと彼女は考えていた。

あの日、一度全ては潰えた。だがまだ終わってはいない。

竜人の里での生活は地獄だった。周囲には己より優れた存在しか居なかった。
いや、全てにおいてそうであったかは疑わしい。
少なくとも竜人の世界で評価される要素において、彼女は常に最下位だった。
呼吸をするのと見下されるのは同義だった。そのくらいにステラの地位は低かった。

何かを変える必要があった。
彼らが競うのは主に腕力であったり魔術であったり、つまるところ暴力に帰結するものが多かった。
(占術などの科目もあったが、どのみちステラにその才能はなかった)

ならば別方面の暴力を模索すれば良い、と彼女は考えた。

自分は竜よりも人の血が濃い。使うなら人の技だ。
知識を蓄え、それを形にし、実行の日を待った。竜人たちが力を競う祭りの晩を。
そして、その時が来た。

同世代でも屈指と言われる才児のブレスを相手に彼女は、
独学の火炎放射器による科学の炎を浴びせた。油交じりの豪炎は竜の鱗を容易く焼いた。
これまでの屈辱すべてを乗せた、逆襲の味は甘かった。
だが、そこまでだった。

里中の竜人たちが激怒した。

待っていたのは苛烈な制裁だった。囲まれ、数え切れない拳と靴底をその身に受けた。
神聖なる祭を汚した罪人として里中を引きずり回され、雨中の荒野に打ち捨てられた。
何がいけなかったのかもわからないまま、彼女はただ泥にまみれ横たわる。

刑を執行し、彼女の追放を見届けたのは、ステラの実の父である竜人だった。

満身創痍の少女にはもはや立ち上がる力も残っておらず、
最後の気力を振り絞っても、ただ目の前の男を睨み上げるのが精一杯であった。

竜は水神と言われる事もあるそうだが、生傷を雨に晒すのは無論苦痛でしかない。
派手な雨音が風景を支配する中、少女は己を見下ろす男の眼差しを感じていた。
長身の男の顔は遠いが、エメラルド色の瞳は力強く、その視線が持つ意味は自然と少女にも伝わった。

男が口を開く。

「………………なんという事を、してくれたんだ……! それが……」

男――父がその瞳に宿すものは、ただ一つ。
侮蔑であった。

「それが誇り高き、竜の一族のする事か!!」



その言葉は彼女の逆鱗に触れた。



絶対に勝てない彼らのルールで勝負し続けろというのか。それが誇りか。
ここでしか通用しない内輪の誇りに捕らわれて、一生蹂躙され続けろと。
貴様らにとって都合の良い、弱者のままでいろと。なんという矮小なる傲慢!

途切れかけた意識が覚醒する。強烈な怒りは活力となり、結果として彼女を生かした。
父が去って後、執念で這いずり移動したステラは、自力で人里にまで辿り着く。
そして現在の母に拾われ、家乃の性を得て、こうして今も一応は生きているのだ。

だがそれは復讐のためだ。それ以外の用途にこの命を使う気はない。
平和な生活はすぐにそこをぼやかそうとしてくるが、あの怒りは一日たりとて忘れた事はない。
最近は母に邪魔されて兵器の開発も遅々としており、彼女は少しイラついていた。

道場から逃げた公園にて、ステラは小石を蹴る。腹いせにもならない。

「けっ。肉体ばっか強いのがそんなに偉いってのかよ!」

小石は地面の凹凸に遊ばれながら転がり、直線上に居た別の人物の足元へ当たった。
白衣を着た痩身の女性だった。

「……ほう」

女性が興味深そうに息を漏らした。
謝るべきかと女性のほうを見たステラは訝んだ。女性は嘗め回すようにステラを観察している。

「羽と尻尾生やしてそんな事を言う奴がいるとはね。
 ……そうだよなあ、肉の器なんてクソだよなあ。わかるわかる」
「はあ?」

「ああいや、怪しい者ではないよ。ほら」

女性は名刺を見せてきた。名前は「内人 王里(うちひと おり)」。
どう見ても怪しいが、女子校の教員であると書かれている。

「どうだろう。話を聞かせて貰えないだろうか。私も物理肉体にはうんざりしていてね……
 場合によっては、力になれると思うが?」

怪しい女性は眼鏡を外し、白衣の袖で拭く。ようやく見えた瞳は、なぜかステラに共感を抱かせた。
あれは、程度の大小はあれど……虐げられし者の眼だ。

「……少しだけだよ」
「ああ。トンカツくらいは奢ろう」

家乃ステラが妃芽薗学園への転入を決めるのは、この三時間後である。


静かに墓前に手を合わせていた家乃真々は合掌を解いた。

彼女は我が子の決断を妨げない。だが決断の結果、中には帰らなかった子もいる。
かつて世界格闘大会に参加していた愛娘の「いちご」もその一人だ。

あの時は身を裂かれるような痛みに耐えかね、三日ほど大暴れをし、
その後の一週間は廃人同然に動かなかった。しかしそうして十日で立ち直った。
生きている他の家族をないがしろにはできない。

今日は、娘の一人が新たに決断をした。

全寮制の魔人学園。聞き及ぶ範囲でも良からぬ噂はある。
そもそも妃芽薗に限らず、希望崎にしても羅漢にしても、魔人の巣窟は死と隣り合わせだ。
どうしても最悪の想像がよぎる。あの子は、帰らないのかもしれない。

だが、それでも、娘が決断するならば妨げない。
その決断が、己の生を全うするための選択であるならば。

だから何よりもまずは、愛娘が、本意を遂げられますように。
そして願わくば――それでもやっぱり、生きてまた顔を見せてくれますように。

虫や蛙が奔放に歌う。夏の夜空は騒がしい。
一人の母親のありふれた願いは、野生の喧騒に紛れて熱帯夜に吸い込まれた。



最終更新:2015年08月03日 22:53
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