綾辻 結丹

ステータス(評価点数:Lv.700)

  • キャラクター名:綾辻 結丹
  • よみ:あやつじ ゆに
  • 性別:女性
  • 体型:華奢
  • 学年:中等部2年
  • 部活:手芸部
  • 委員:保健委員
  • 武器:特殊糸
  • 初期ステータス
    • 攻撃力:9 防御力:13 体力:4 精神:4 FS(歌唱力):0
    • 移動力:2
  • アビリティ
    • 『戦闘狂』

特殊能力『あかいいと』(発動率:80%)

効果:敵味方の能力をコピー(習得)
時間:一瞬
対象:半径2マス単体
タイプ:瞬間型
スタイル:アクティブ
制約:なし

詳細な説明
Lv.701以上の特殊能力は習得不可
PL転校生・GK転校生の特殊能力は習得不可

能力原理
私の指から君を辿る、繋がり
赤い糸は認識(ココロ)を結わえる

キャラクター説明

山あいの村で生まれ育った13歳。現在は親戚が経営しているカフェの店舗兼住居から通学している。
白シャツとプリーツスカートと肩にかかるくらいの黒髪という容姿は一見素朴だが、ツバキの髪飾りが印象的。
理知的な美しさと、年相応の快活さとを併せ持っており、表情がころころと変わる様子が可愛らしい。
なにかと器用な彼女のマイブームは、友達と行くカラオケに楽器を持ち込んで伴奏すること。

身体能力はその辺の女子中学生と比較しても大差ないので、綾辻の家に伝わる『操絶糸術』を駆使して戦う。
『操絶糸術』とは、糸を用いた切断・拘束・伝動その他の技術体系である。
幼い頃から鍛錬を積んでいる彼女は糸を思いのままに操り、並の魔人では触れることさえできない。
ポケットに入れている変な鳥のポーチには、糸術のための特殊糸や凄くよく切れる糸切鋏などが入っている。

人が死ぬ様子を見慣れているので戦闘に関して慈悲はないが、基本的には面倒見がよくて優しい性格。
家族や友達を大切にしつつ、他の世界との繋がりももっと広げていけたらいいなと思っている。
海にはあまり行ったことがなく、サマーキャンプを楽しみにしていた。

エピソード

あつい。

見渡す限り広がる平野の中を、一本の道路が貫いている。

前も後ろもとめどなく、ただひたすらにまっすぐに。


暑い。

遠くに雄大な峡谷が見える景色は、解放感にあふれている。

私の姿を隠し遮るようなものは何もない。


熱い。

ここはルート66。アスファルトの地面は火にかけられたフライパンのよう。

照りつける日差しが生半可じゃない。もはや殺人光線。



いたいけな中学生である私がどうしてこんな地獄みたいなところにいるかというと、家の仕事というしかない。

カチコミに来た隣村の若い衆をしばいていたら一人逃がしてしまったらしい。

それでどうして私が行かないといけないのか。まったくしょうがない家だ。


とはいえこの仕事、なんだかんだキライじゃない。

物心ついた頃から磨いてきた技術を思う存分発揮できる場所は、他にないから。

流れる汗をぬぐいながら道のど真ん中に立つ。

ほどなくして、地平線の向こうからエンジンの爆音と土煙が押し寄せてくるのを感じる。

情報通りだ。初めからしっかりやれよ。


砂の混じった風が吹き抜ける。

じゃりじゃりして気持ち悪い。

そして晴れた視界に飛び込んできたのは、私の想像をはるかに超えた光景だった。



限りなく広がる大地を埋め尽くすように、バイクに乗ったモヒカンの大群が、私めがけて殺到している。



これはさすがに予想外……。

さっきまでとは打って変わって冷ややかな汗が、頬を伝う。

私の正面、センターラインの上を走るバイクのモヒカンがハンドルから手を離して上体を起こすと、バカみたいに大きな声で叫び始めた。


「ヒャッハー! こいつぁチンケなガキんちょだ! この俺、燗酒最熱〈かんざけもひーと〉様の『虚存性百万熱燗〈イマジナリーミリオンモヒカン〉』でテメェをボロ雑巾にしてやるぜェー!!」


そんな大声をだして喉が渇かないのだろうか。

モヒカンの発言をもとに状況を整理する。

吹きつける風、響く音、撒き上がる土、震える地面そして目前に迫る群勢。

どうやら敵は、本物のおバカさんだったらしい。


「死ねぇぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


叫びながら突っ込んでくるモヒカンを見据え、私は腕をそっと広げる。

手袋から伸びる糸は、私の家に伝わる『操絶糸術』のための特別製。

見た目は普通なのにピアノ線よりも強い。

あと百メートル。


数の多さのわりに音も砂埃もそこまでたいしたことはない。

加えてあいつが口にしたイマジナリーなんちゃらとかいう名前。おそらく特殊能力。

これらを総合すれば大群はまず確実に幻影。本体は名乗りを上げた目の前のやつだろう。

逃げるには便利そうな能力だけど、自分がまだ狩られる側にいるということをわかってないみたい。

あと五十メートル。


だいぶ距離が縮まったので改めてモヒカンを観察してみる。

肩パッドにレザーのジャケット、そしてジーパン。

お前の生き様、超わかりやすいな。

あと二十メートル。

デッドライン!


私は腕を思い切り交差させた。

糸がモヒカンの首に絡みつき、斬り飛ばす。

その他のモヒカン全員とバイクすべてが消滅した。完璧だ。

だが、死体を乗せたバイクは慣性に従ってなおも突撃をやめない。

もちろん想定内だけど。こないだ授業でやったし。

糸をタイヤに咬ませ、一気に跳ね上げる。

同時にかがみ込むと、頭上すれすれをバイクが通りすぎ、数十メートル吹き飛び、地面にぶつかって爆発した。


「!? あっつぅ~~~~~!!!!」

熱い! アスファルトが熱い! 火傷する!!

慌てて立ちあがり、火の手に視線を向ける。

足元には表情を下品に歪めたままのモヒカンの首が転がっている。

戦いは終わった。



ポケットの携帯電話が着信を知らせる。

お母さんからのメッセージだ。


[14:40][おかあさん]:終わった?

[14:41][ゆに]:おわったよ!(^^)! むかえに来て~

[14:41][おかあさん]:もうすぐ着きます


もう? と思って辺りを見渡すと、山を越えるヘリコプターが見えた。

さすがお母さん、仕事が早い。さっさと帰って、シャワー浴びたいな。

太陽は相変わらず殺意を振り撒いている。シャツが肌に貼りつく。

女子中学生にはつらいお仕事だ。




 * * * * *




「ゆにちゃーん! 朝だよー!」


ハッと目が覚めた。

いま何時? 七時! なんだ、全然よゆうじゃん。

鳴る前のアラームを止めて、ねぼけまなこをこすりつつ階段を降りる。

朝からめちゃくちゃ暑い……だからあんな夢を見るんだ。


「うっす」

「まっつんおっはー」


眠そうにあいさつする雰囲気イケメンは、年の離れたいとこの松原誠慈くん。

通称まっつん。


「おはよう結丹ちゃん!」

「おはようございます!」


牛乳を冷蔵庫から持ってきたのは、妻のまほろさん。まっつんとは同い年。

今日もかわいい。


「おはよーございます!!」

「おはよう言えたね~えらいね~」


ふたりの娘、夢美ちゃんの頭をなでる。こないだの四歳の誕生日には、うちでバーベキューをした。

今日も天使。



私の生まれた村は山の中にある。

小さい頃から魔人として覚醒していた私は、もっと能力を活かせる場所にという両親(と私)の希望もあり、中学からは妃芽園学園に通っている。

家からはバスと電車を乗り継いで三時間ぐらいかかるので、街なかでカフェを経営しているまっつんにお世話になることになった。

彼の家族はみんな一般人で、しかも私は物騒な綾辻本家の人間なのに、本当の娘みたいに優しくしてくれて感謝しかない。

家が二つもあるなんて、なんて幸せ者なんだろう。



朝ご飯(さすがの美味しさだ)を食べおわり、学校に行く準備をしていると、呼び鈴が鳴った。

まだ七時半なのに、どうやら外の彼女も今日から始まる臨海学校が待ちきれないみたい。


「はいはい今でます~」

「あ、たぶん亜子だから私が出るよ」


扉を開ける。

やっぱり亜子だった。

大切な友達。



山育ちの私は、海にほとんど行ったことがない。

……という話を新入生合宿で同じ部屋だった彼女にしたらすごく話が合って、あと家も近くて、それからずっと一緒にいる。

海といえばこないだの帰りはビーチに寄るはずだったのに、エアコンの効いたヘリに乗り込むと疲れからか、ふと気づくとうちの前だった。完全に寝てた。

だから臨海学校はもう楽しみで楽しみで、昨日はなかなか眠れなかったのだ。



「やっほー。迎えに来たぞ」

「もー、早すぎ。すぐ行くから待ってて!」


家の中に駆け戻り、亜子にもらった髪飾りをつけて、昨日のうちに準備しておいた鞄をつかむ。

身だしなみオッケー、忘れ物なし。

出発進行!


「おねーちゃん、いってらっしゃい!」

「おやつ、亜子ちゃんのぶんもあるからね」

「ケガには気をつけろよ」


玄関から見送ってくれるみんな。

ほんとうれしい。みんな大好き。


「大丈夫! おやつありがとう! お姉ちゃんいってきます!!」


カランカランと扉のベルが鳴る。

外は夏まっさかりだ。ところかまわぬセミの大合唱。

まるで私たちのためのマーチ? そんなことを考えちゃうくらい心がはずむ。

今日からの日々は、絶対最高の思い出になる!

そう信じていた。




[了]


最終更新:2015年08月03日 19:26