雪月通訳

ステータス(評価点数:Lv.300)

  • キャラクター名:雪月通訳
  • よみ:ニヴォーズ・つうやく
  • 性別:女性
  • 体型:筋肉質
  • 学年:中等部3年
  • 部活:カランドリエ
  • 委員:風紀委員
  • 武器:ベルリンの壁
  • 初期ステータス
    • 攻撃力:14 防御力:3 体力:4 精神:4 FS(言葉の壁):5
    • 移動力:2
  • アビリティ
    • 『普通』

特殊能力『言葉の壁より雪どけを(カーテンウォー⇒オッティェピィェリ)』(発動率:93%)

効果:壁破壊
範囲+対象:隣接一マス
時間:一瞬
制約なし

能力原理
世界は壁で満ちていて。壁はみんなを隔ててる。
あの一枚の壁さえなければ、私はみんなと共にいた。
幸運と思うことはしない、死を願うこともしない。

四つの言語が隔てたあの半島で、壁を破る力を持てなかった私が悪いのだとそう思った。かつて一人の男がより多く壁を取り払ったのに。

硝煙と火薬、そして血の海と肉片の山から壁一枚で守られた彼女がまずしたのは言葉を持たない壁を取り払うことだった。
やり場のない怒りは自分が社会や家族、国家と言う無形の力で守られていたことに気付いたために、拳を向くことがなかった。

八つ当たりと言ってしまえばそれまでだが、こうして非力な少女は魔人として目覚め、言葉を持たない存在を粉砕する力を得た。
言葉を持たない存在とは人でも狼少女でもない、壁として認識されるすべてである。そこにある、手の届かなかった冷たい壁である。

キャラクター説明

身長:155cm、体重:不明
ショートカットによく日に焼けた肌の健康的な少女。
よく笑い、よく泣き、よく怒り、よく叫ぶ、喜怒哀楽激しい子だが意外と礼儀正しく言葉遣いは綺麗。

「カランドリエ」一般メンバーの一人。
旧姓「口舌院」、AD2014年時代の『暦』副部長「卯月言語」の妹の一人でもある。
詐術を専らとする口舌院家に生まれながら尊敬する兄の影響もあって、みんなの役に立ちたいと言う願望を持ち、世界平和のために外交官になると言う無邪気な夢を幼少から抱き続けていた。

しかし、三年前の小学校の修学旅行の時に訪れたバルカン半島で欧州分離・民族派のテロに巻き込まれ、仲の良かったクラスメート五人が粉々になるところを目撃してしまう。

このことから己の無力さを痛感した彼女は戦う外交官、誰よりも強い通訳を目指して鍛錬に励み、習得した英検五段を中心に仏語、露語など五ヶ国語を組み合わせた独自の格闘術の使い手として頭目を表す。
性格は素直で騙されやすいが、気付いたところで内に秘めるか笑って許すタイプ。
ただし、暴力行為には容赦なく培った己の体術で短時間の内に対象を粉砕する。

エピソード

*


 ここ私立妃芽薗学園には弁論部などが用いる修練場がある。
 土煙が立たず空調も効き涼やかで古代ローマを思わせる。白大理石で概ね作られた豪奢な建物。
 けれど大会に際しては舌の根から蒸散される言葉が枯れて、やがて血煙が絞り出される、そんな場所。

 そんな血と涙と涎が染み込んだ弁論場において、競技者が向かい合っている。静寂だ。
 本来ならかすかな音も見逃さないはずの音響を切っているのは、その片割れ、いやもしかしたら両方の持つ語学力の高さを物語っているようだった。
 先手を打ったのは、シルエットが小さい方だった。

 「ダッ(Да:「打つ」という意味のロシア語)!」
 呼吸を内に留め、一挙に吐きだす。英検をはじめとした言語伝達手段においての基本である。
 Д←このキリール文字は口を大きく開いた人を表意する通り、はじまりの一打として大きな意味を持つのだ。さて、そんな私の目の前には等身大の猫のぬいぐるみ、ふざけていると普通なら思うでしょう。

 ですが以前、お手合わせした風紀皇帝「白王みかど」様を上回る重圧を前にすれば、そのような侮りは無用を通り越して害悪であるとわかろうものです。
 はじめに言葉ありき。バベルの塔を失った人類が得た代替手段(ボディランゲージ)は魔王にも届き得ると私は信じます。舌遣いから伝播する表意は、肉の体を憑依(Possession)するものと為す。

 「……遅い、ですわ」
 tausend(タウゼント)、いいえ。当然とばかり受け流し、その勢を借りて一閃するその光撃は神経に通ずる拳。打つ(These)/打たれる(Antithese)→吹き飛ぶ(Synthese)!
 ヘーゲルの弁証法を用い、止揚(Aufheben)を挟んでの吹き飛ばし↑
 みやこ先生のドイツ語にはまこと惚れ惚れするようでした。ですが……。
 昨年まではドイツ語に中二を感じていましたが、語学者の端くれとしては過剰な思い入れは不要。
 「全然、満。足できません!」

 ドイツ語の流れを断ち切るファンシーな単語を織り交ぜ着地する。

 「スラヴ語派の言語はゲルマン語派の英検と組み合わせるには水と油ですわ。
 それをわかって無策で飛び込むのは日本語からやり直した方がよいのではなくて?」
 綺麗な日本語でした。Beautiful! 古典教師だからこそ出来る流麗な唇の動き。

 「私なら、出来――」
 「る、らる」
 それは教え子に助動詞の使い方を教える女教師の姿――。
 受身/可能/自発/尊敬:どれ!?
 答えは――。

 Answer:すべて

 うける/できる/おのずから/うやまう
 刹那の攻防をひっくり返る=私が受けで先生が攻めだ。
 「ああっ!」
 私の母国語は日本語だった。
 「母国語を知らずして国際社会は語れませんわ。社交の場において自国文化を語れない外交官は恥!」

 まどろみのけんを出すまでもなく、白王先生は古典の構えだけで戦っています。いつも通りぽんやりとした話法もそこそこに、静謐さを加えた古典文法相手には真正面から打ち込むしかない英検では届かず、ドイツ、ロシアと言った敵国語でもいなされる。
 胸ポケットに入れたベルリンの壁、そのかけらは押し倒す壁を象徴すると思っています。
 兄様がくださった欧州土産、物に縋るは惰弱であると思いつつも、どうか――!

「ヤー(Я:「私」という意味のロシア語)!」
 決意を新たに、かつて英語と世界を二分したロシア語の基礎にして終焉を発現。
 右フックと見せかけて、左フック! ピョートル大帝はこの一撃でハンマーを振るった!

 迎撃態勢を取る先生、私の乏しい知識でも幾つか考えられる語幹からの変化を、先取りする。
 私――。
 「ニエット(Нет:「いいえ」という意味のロシア語)!」 
 贄と! 

 「掟破り――」
 言葉の壁を壊す掛詞(ダブルミーニング)=捨て身の一撃。
 腕を砕く一撃は、はがねのよろいを上回るまもりを持つぬいぐるみの前に止められる。
 鳥取砂漠で狩った飛び猫からべりべりっと剥ぎ取ったと言う噂とは、実際違う。
 「――ですわ」
 いいえ、止めてくれたのです。
 致死の一撃は私にとって、でした。行き場がなければ、砕くべき壁となるのは私、でした。

 ここ弁論場で、砕けた氷が遥かに舞った。
 とぽりと、ぬいぐるみは本来の水の形になって先生を濡らします。高校生の子どもがいてもおかしくない年頃にも関わらず、少々大人びた高校生と言って通じる若々しさ、です。
 「一撃のみならず、みずきちゃん特製の『みずのはごろも』まで砕くなんて――」
 やっぱり、冷凍庫に入れておいたのが悪かったのかしら?

 あくまで、のんきな先生でした。
 とにかく、これで先生が私用で持ち込んだ巨大冷蔵庫は解放されたことになります。
 風紀委員のみんなには少し感謝してもらわないと、なんてことは先生に言えるわけもないけれど。
 「白王先生、お手合わせありがとうございました(Спасибо за внимание.)」
 夏場だから、ロシア語で少しでも体を冷やしておかないと……なんて戯言は胸に秘めて。

 紹介が遅れました。
 私の名前は口舌院通訳(くぜついん・つうやく)。一応、口舌院一族に連なる者として学園の治安維持のために毎日頑張っています。
 で、こちらの綺麗で可憐でかわいい方が「白王(はくおう)みやこ」先生です。
 なんでも、かの風紀元老院の「白王みつるぎ」様の妹御と言うことで、その関係からかこの学園の風紀委員会で顧問教師を務めていらっしゃいます。
 その姪御方も同じ風紀と言う世界の中でがんばっていらっしゃるとかで、以前お手合わせした事がありましたが、結果について語ることは今はやめておきます。

*


  ちょっと悔しかったのか、私費で作った暗室から「やみのころも」を引っ張り出そうとする先生、大人げないです……。あわてて急ぎの用があると言って別れて、人気のないところに移動します。
 一応、冷蔵庫については釘を刺しましたよ。白王先生、専門以外では――ですから。

 暗室も写真部、などから解放してほしいって嘆願されていますが、あの装備品は先生が借りているものとは言え、文字通り桁が違います。
 四人でパーティを組むくらいじゃないと、と思って頭の中で知り合いを動員してみました。
 うーん、「そうりょ」も「まほうつかい」も「ゆうしゃ」も――。

 とりあえず、こっちの用事を済ませてからにしましょうか。周りには、誰もいませんね。
 辞書をくり抜いて偽装していた黒電話を取り出して、確保していた電話線に接続します。
 盗聴防止の観点からも、こう言った枯れた技術の方がいいと、これから電話をするお兄様もおっしゃってました。
 回す/戻る/回す/戻る×12=つながります

 「Hello」
 「……? (笑)」
 「Excellent! lol」
 「(苦笑) ――?」
 「I see.」
 「(爆)」……(冷笑)  

 防諜の観点から会話の仔細については省かせていただきますが、これからの私は雪月として「カランドリエ」に潜入することになります。
 世界平和と、何よりお兄様のために――。

*


登場人物紹介


【口舌院通訳(くぜついん・つうやく)】(初登場) 
妃芽薗学園中等部三年。風紀委員会と『カランドリエ』に所属。壁破壊代行。兄「言語」の命に従って監視役として潜入した部においては「雪月」の姓を与えられる。兄の事を愛しているが、親愛の情の枠を出るものではない。能力名『言葉の壁より雪どけを(カーテンウォー⇒オッティェピィェリ)』効果:物理的な壁の破壊

【口舌院言語】
『暦』の副部長「卯月」として辣腕を振るい振るった男。天性の先導者。邪神復活に関わったとか、阻止したとか多くの情報が交錯しているが彼自身については良い噂ばかり伝え聞こえる。なお口舌院の姓は捨てているが便宜上この項ではそう表記する。能力名『深心活殺の聲(しんしんかっさつのこえ)』効果: 話術による潜在意識支配

【白王みやこ(はくおう-)】(初登場)
妃芽薗学園古典教師。風紀委員会顧問。ブラコン歴3×年。風紀業界の雄「白王みかど」の実の妹で兄の事を愛しており、今も貰い手がいない。本業以外では徹底した世間&常識知らずで姪っ子の恋路を本気で応援している。能力名『まどろみのけん』効果:触れた者を眠らせる。

【白王みかど】
漂泊の風紀委員。妹のみずきの想われ人。自分の秘密について全く気づいていない叔母に対して色々と複雑な思いを抱いている。その謎に満ちた半生についてはあやまださんお願いします。能力名『ひかりのよろい』効果:光の衣服化/解除

【白王みずき】
白王みかどの実の妹。みかどを想う人。ダンゲロスSS準優勝者。度々家を訪れる叔母については仲の良い女学生同士の距離感で接されており、我に返った後はドン引きしている。SS後、なにやってたかについてはあやまださんお願いします。能力名『みずのはごろも』効果:水の衣服化/解除

【白王みつるぎ】
風紀元老院に属する男。みつるぎ、みずき両名の父であり、みやこの兄。黒幕っぽいし、たぶん魔王っぽいと作者は勝手に思っている。その謎に満ちた人生についてはあやまださんお願いします。能力名:『やみのころも』効果:不明

*



最終更新:2015年08月03日 16:24